(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116544
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】異種スパイクタンパク質を有するH52 IBVワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/50 20060101AFI20230815BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C12N15/50
C12N7/01 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087705
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2021543581の分割
【原出願日】2019-10-28
(31)【優先権主張番号】18203637.6
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー-キュール アニカ
(72)【発明者】
【氏名】ムント エグベルト ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ハンス-クリスティアン
(57)【要約】
【課題】本発明は、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)に関する。さらに、本発明は、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBVを含む免疫原性組成物に関する。さらに本発明は、発明の免疫原性組成物を対象に投与する工程を含む、対象を免疫する方法に関する。さらにまた本発明は、本発明の免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、IBVによって引き起こされる臨床的徴候を治療又は予防する方法に関する。
【解決手段】異種IBV(伝染性気管支炎ウイルス) S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種IBV(伝染性気管支炎ウイルス) S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV。
【請求項2】
異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のIBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物。
【請求項4】
異種Sタンパク質又はそのフラグメントが以下から成るリストから選択される遺伝子型又は血清型を有するIBVに由来する、請求項1から3のいずれか1項記載のIBV又は免疫原性組成物:アーカンサス(例えばArkansas 99)、ブラジル(例えばBR-1、BR-2、23/2013、IBV/Brasil/351/1984)、カリフォルニア(例えばCalifornia 1734/04、California 99)、コネチカット、デラウェア(例えばDelaware 98)、ダッチ(例えばD207、D212、D274、D3128、D3896、D8880、D1466)、フロリダ、ジョージア(例えばGeorgia GA-07、GA-08、GA-12、GA-13)、グレー、ホルテ、アイオワ(例えばIowa 97及びIowa 69)、イタリア(例えばItaly 02)、JMK、LDT3、メーン(例えばMaine 209)、ペンシルバニア(例えばPennsylvania 1220/98、Pennsylvania Wolg/98)、PL84084、Qu(例えばQu-mv)、QX(例えばGB341/96)、Q1、SE 17、ヴァリアント2(例えばIS/1494/06、IBV/Ck/EG/CU/4/2014、gammaCoV/Ck/Poland/G052/2016)及び4/91(793B, CR88)。
【請求項5】
異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型又は血清型のリストから選択されるIBVに由来する、請求項1から4のいずれか1項記載のIBV又は免疫原性組成物。
【請求項6】
異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型又は血清型のリストから選択されるか、又は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15若しくは16に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか若しくはそれらアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか1項記載のIBV又は免疫原性組成物。
【請求項7】
異種Sタンパク質が完全長スパイクタンパク質であるか、又は異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントが少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する、請求項1から6のいずれか1項記載のIBV又は免疫原性組成物。
【請求項8】
IBVが弱毒化されているか、又は、IBVが組換えIBVである、請求項1から7のいずれか1項記載のIBV又は免疫原性組成物。
【請求項9】
ワクチンである、請求項2から8のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載のIBV又は免疫原性組成物を含むキット。
【請求項11】
請求項2から9のいずれか1項記載の免疫原性組成物を対象に投与する工程を含む、対象を免疫する方法。
【請求項12】
請求項2から9のいずれか1項記載の免疫原性組成物の治療的に有効な量を対象に投与する工程を含む、IBVによって引き起こされる臨床的徴候を対象において治療又は予防する方法。
【請求項13】
必要がある対象において、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して繊毛静止を減少させる方法であって、請求項2から9のいずれか1項記載の免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項14】
対象が家禽である、請求項11から13のいずれか1項記載の方法又は使用。
【請求項15】
同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して、以下から成る群から選択される有効性パラメーターの改善をもたらす、請求項11から14のいずれか1項記載の方法又は使用:繊毛静止の予防若しくは減少、ラ音の予防若しくは減少、産卵低下の予防若しくは減少、腎臓障害の予防若しくは減少、水様下痢の予防若しくは減少、体重減の予防若しくは減少、より低いウイルス負荷、減少するウイルス排泄又はそれらの組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表)本出願は、37 C.F.R. 1.821-1.825にしたがい配列表を含む。本出願に付随する当該配列表は、参照によってその全体が本明細書に含まれる。
(技術分野)
本発明は、異種IBV(伝染性気管支炎ウイルス) S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBVに関する。
【背景技術】
【0002】
トリ伝染性気管支炎ウイルス(IBV)は、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ニドビラレス(Nidovirales)属のガンマコロナウイルスプロトタイプである。伝染性気管支炎ウイルスは主としてニワトリの上気道上皮に感染し、呼吸器疾患(通常は二次性細菌性病原体によって複雑化する)を引き起こす(Cook et al. 2012. Avian Pathol. 41:239-250)。いくつかのIBV株は追加的に尿細管、卵管及び胃腸管の部分を冒し、これらの器官系で病巣及び臨床的症候を生じる。当該ウイルスは、産業的及び個人的飼育鶏の両方で世界中に存在する。ゲノム変異性が大きいために、IBVは多種多様な遺伝子型、血清型及び防御型に区別される。IBVは、これまでのところ養鶏業では経済的にもっとも問題とされるウイルス病原体の1つとみなされる。
伝染性気管支炎ウイルスは、27.6kbのプラスセンス一本鎖RNAゲノムを有するエンベロープをもつウイルスである(Cavanagh 2007. Vet. Res. 38:281-297)。ウイルスゲノムの最初の2/3は大きなコード領域(遺伝子1とも称される)を含み、前記領域は2つのオープンリーディングフレーム1a及び1bに分割され、RNA複製、編集及び転写に関与する15の非構造タンパク質をコードする。ウイルスゲノムの最後の1/3は、以下の構造タンパク質をコードする:スパイクタンパク質(S、遺伝子2によってコードされる)、エンベロープタンパク質(E、遺伝子3cによってコードされる)、膜タンパク質(M、遺伝子4によってコードされる)、及びヌクレオキャプシド(N、遺伝子3cによってコードされる)。タンパク質S、E及びMはウイルスエンベロープの部分であり、一方、タンパク質NはウイルスRNAと一緒にリボヌクレオタンパク質コアを形成する。コロナウイルススパイクタンパク質は宿主種親和性を決定する(Kuo et al. 2000. J. Virol. 74:1393-1406)。前記タンパク質はダイマー性又はトリマー性トランスメンブレンタンパク質であり、タンパク質分解により2つのサブユニット(S1及びS2)に切断される。重度にグリコシル化されたS1ドメインはスパイクタンパク質の“ヘッド”を形成し、宿主細胞表面の2,3-結合シアル酸と相互反応する受容体結合ドメインを含む(Promkuntod et al. 2014. Virology. 448:26-32)。S2ドメインは、エクトドメイン(“軸”)の残余部分、トランスメンブレンドメイン及び細胞質に局在するエンドドメインを含む。
【0003】
今日までもっとも広く用いられている生弱毒化IBVワクチン株は、マサチューセッツ様IBV株の連続継代によってオランダで1960年代に開発された(Bijlenga et al. 2004; Avian Pathol. 33:550-557)。しかしながら、1970年代以来新規なIBV血清型が出現し、前記に対しては伝統的なマサチューセッツ様ワクチンは十分には防御を示さなかった(Cook et al. 2012. Avian Pathol. 41:239-250)。したがって、他のIBV血清型に対抗する新規かつ高度に有効なIBVワクチンが希求されている。
IBVボーデット(Beaudette)(Geilhausen et al. 1973. Arch Gesamte Virusforsch.: 40 (3) (1973), pp. 285-290)及びH120(G. Bijlenga et al. 2004. Avian Pathol.: 33 (6); pp. 550-557)は弱毒化IBVである。しかしながら、弱毒化は免疫原性の低下をもたらす可能性がある。
さらに、組換えIBVが作製された。Zhouら(Zhou et al. 2016, Arch Virol., 161:3179-3187)は、ボーデット(マサチューセッツ遺伝子型)スパイクタンパク質を有するH120(マサチューセッツ遺伝子型)を開示する。Hodgsonら(Hodgson et al., 2004, J Virol 78: 13804-13811)は、M41(マサチューセッツ遺伝子型)スパイクタンパク質を有するボーデット(マサチューセッツ遺伝子型)IBVを開示する。Armestoら(Armesto et al., 2011, PLoS One: 6(8):e24352)は、4/91(4/91遺伝子型)由来の異種スパイクタンパク質を有するIBVボーデット(マサチューセッツ遺伝子型)を開示する。
しかしながら、Zhouら(2016)及びHodgsonら(2004)で開示された組換えIBVは異種スパイクタンパク質を有するIBVとみなすことはできない。なぜならば、両方(IBV及び挿入スパイク)とも同じ遺伝子型/血清型(マサチューセッツ)に由来するからである。さらに、言及された全てのワクチンはボーデット系骨格を土台にするか、又はボーデット由来スパイクタンパク質を有する。
【0004】
さらに、ボーデットワクチンはすでに何十年も前に記載され、ボーデットを用いる組換えアプローチは10年以上前から公知であるが、ボーデット系ワクチン及びそのような組換えワクチン(異種スパイクタンパク質を有する)のいずれも市場では入手できない。ボーデットを土台にする組換えIBVはワクチンとして適切ではない。Weiら(Wei et al., 2014, Apl Microbiol Biotechnol 98)はH120のS1サブユニットを有するボーデットIBVを開示する。
Ellisら(Ellis et al., 2018, J. Virol. 92(23))、Hodgsonら(Hodgson et al., J. Virol. 78(24))及びArmestoら(Armesto et al., 2011, PLoS One: 6(8):e24352)はいずれもM41又は4/91スパイクタンパク質を有するボーデットIBVを開示する。しかしながら、Ellisら(Ellis et al., 2018, J. Virol. 92(23))は、ボーデットスパイクS2サブユニットと一緒にM41又はQXの異種S1サブユニットを有するキメラスパイクをもつ組換えボーデットは、S1同種チャレンジに対して十分な防御を付与しないと記載している(“病毒株M41又はQXのS1を発現するrIBV(BeauR-M41(S1)及びBeauR-QX(S1))の特異的病原体をもたないニワトリへの一回ワクチン接種は、繊毛活性及び臨床的徴候に基づけば、同種チャレンジに対して不完全な防御を与える”要約)。さらに、Ellisら(Ellis et al., 2018, J. Virol. 92(23))は、完全長S遺伝子(M41のS1及びS2)は、同種血清型のIBVによるチャレンジに対して部分的防御しか与えないことを記載し(ページ12)、IBVボーデット株は組換えIBVワクチンの骨格として適切でないことを示唆する。Hodgsonら(Hodgson et al., J. Virol. 78(24))はさらに、ボーデット株は“免疫原性もまた貧弱であると考えられており”、結果として“ワクチン株として用いられてこなかった”(13802ページ、左欄、第二パラグラフ)と開示している。したがって、新規かつ高度に有効なIBVワクチンベクターが希求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規かつ高度に有効なIBVワクチンベクターが希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
異種IBV(伝染性気管支炎ウイルス) S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】組換え野生型ウイルスH52及びCR88と比較されるH52 rIBV CR88 S ectoのin ovo複製カイネティクスである。1つのデータ点は各時点における5つのサンプルの平均を表す。誤差バーは標準偏差を示す。
【
図2】繊毛静止の採点の概要である。1匹の動物の10の輪についてそれぞれ10のスコアの合計を計算し、グラフでは1つの点によって表される。最大の繊毛静止はスコア40と一致し、一方、繊毛静止が存在しない場合はスコア0で表される。平均及び有意差は、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)及び通常の一元配置ANOVA検定を用いて計算される(p<0.007)。
【
図3】腎臓組織のRT-qPCRの結果の概要である。個々の各トリは1つのデータ点によって示される。
【
図4】後鼻孔スワブ溶出物のRT-qPCRの結果の概要である。個々の各トリは1つのデータ点によって示される。
【
図5】繊毛静止の採点の概要である。1匹の動物の10の輪についてそれぞれ10のスコアの合計を計算し、グラフでは1つの点によって表される。最大の繊毛静止はスコア40と一致し、一方、繊毛静止が存在しない場合はスコア0で表される。平均及び有意差は、グラフパッドプリズム及び通常の一元配置ANOVA検定を用いて計算される(p<0.0001)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特徴を記載する前に、以下のことが特記されなければならない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示さないかぎり複数の参照物を含む。したがって、“an antigen(抗原)”の参照は複数の抗原を含み、“virus(ウイルス)”の参照は1つ以上のウイルス及び当業者に公知のその同等物を参照する、等々である。特段に規定されないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、本発明が属する業界の業者の一人が通常的に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と同様ないずれの方法及び材料又は同等物も本発明の実行又は試験に用いることは可能であるが、好ましい方法、装置及び材料が今や記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、当該刊行物で報告される細胞株、ベクター及び方法論(本発明との関係で用いえよう)を記載及び開示する目的のために参照によって本明細書に含まれる。本明細書に記載のいずれの事項も、先発明のために本発明がそのような開示に先行する資格が無いことを容認すると解釈してはならない。
【0009】
組成物
本発明は従来技術に内在する問題を解決し、最先端技術において明確な進歩を提供する。
概して、本発明は、異種IBV S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を提供する。
“H52 IBV”という用語は当業者には周知である。“IBV”という用語は伝染性気管支炎ウイルスを指す。“H52”という用語は特定のIBV株を規定する。H52株は当業者に周知であり、マサチューセッツ遺伝子型に属する。IBV株は、典型的にはスパイクタンパク質のS1サブユニットのコード配列によって弁別されるが(Valastro et al. 2016. Infect Genet Evol. 39:349-364)、ウイルスの完全なヌクレオチド配列又は特定のタンパク質(例えばスパイクタンパク質、ヌクレオキャプシドタンパク質、エンベロープ(E)タンパク質又は膜(M)糖タンパク質)の配列によってもまた弁別されえる。スパイクタンパク質はIBVの宿主親和性及び抗原性を決定するので、IBV遺伝子型はスパイクタンパク質のサブユニット1のコード配列によって分類される。また別に、IBV株はそれらの血清型によって弁別できる。血清型分類は中和抗体によるウイルスの処理を含む。
さらに、H52は若いニワトリへの適用時におけるより強い病原性によってH120と弁別することができる。
【0010】
H52 IBVをどこで入手できるかは当業者の一般的知識である。H52 IBV株は市場で購入でき、例示すれば、例えばNobilis IB H52(MSD Animal Health)、AviPro IB H52(Lohmann Animal Health GmbH & Co. KG)、Bronchovac(Ceva)などである。さらに、McDonaldら(McDonald et al., 1980, Avain Pathology 9:245-259)は、H52 IBVはロッテルダム中央獣医学研究所(Central Veterinary Laboratory Rotterdam)により入手できることを開示し、Kusters(Kuster, J. gen Virol 68:343-352)は、H52 IBVはオランダのドルン家禽衛生研究所(Poultry Health Institute Dorn)(現在はGD Animal Health)により入手できることを開示し、Chenら(Chen et al., 2007, Avian Pathology 36(4):269-274)は、H52 IBVは中国獣医薬剤管理院(China Institute of Veterinary Drug Control)により入手できることを開示する。さらに、H52 HBVは数十年間ワクチン株として用いられ(Bijlenga et al. 2004, Avian Pathology 33 (6): 550-557)、したがって野外から単離することができる。H52 IBV株を単離する方法及びH52 IBV株を特徴付ける方法は当業者には周知である。例示すれば、H52 IBV株は以下に記載されるように特徴付けることができる:Zwaagstra et al. 1992, J. Clin. Microbiol. 30 (1): 79-84;Handberg et al. 1999, Avian Pathology 28: 327-335;又はCallison et al. 2006, Journal of Virological Methods 138: 60-65)。Zwaagstraら(1992)及びHandbergら(1999)は、RT-PCRのために例えばマサチューセッツ特異的プライマー(それぞれS及びNタンパク質のためのプライマー)を、並びに比較のために配列決定及び参照配列を開示する。さらに、H52 IBVは配列決定され、当該ゲノム配列(例えばEU817497)は入手可能である。したがって、ウイルスゲノムはその配列を合成することによって作製することができ、逆遺伝学系の適用時に作製することができる。
【0011】
“スパイク”という用語は、当業者に周知であるIBVに特異的なタンパク質を指す。スパイクタンパク質は、抗体及び防御免疫応答の主要な誘導物質である。さらに、スパイク(S)タンパク質は、宿主細胞の細胞性受容体と結合することによって、また宿主細胞とのウイルス-細胞膜融合を媒介することによってIBVの細胞進入を促進する。加えて、スパイクタンパク質はウイルス株の組織及び細胞親和性を決定する。
“異種S(スパイク)”という用語は、H52 IBVに導入されているスパイクタンパク質又はそのフラグメントが、H52 IBVとは異なる遺伝子型又は血清型に由来することを意味する。H52はマサチューセッツ遺伝子型及び血清型であるので、異種スパイクは非マサチューセッツ遺伝子型又は血清型である。
“タンパク質”、“アミノ酸”及び“ポリペプチド”という用語は互換的に用いることができる。“タンパク質”という用語は、天然に存在するアミノ酸と同様にその誘導体を含むアミノ酸の配列を指す。天然に存在するアミノ酸は当業界で周知であり、生化学の標準的教科書に記載されている。アミノ酸配列内では、アミノ酸はペプチド結合によって連結される。さらに、アミノ酸配列の両端は、カルボキシル末端(C-末端)及びアミノ末端(N-末端)と称される。“タンパク質”という用語は、本質的に精製されたタンパク質又は加えて他のタンパク質を含むタンパク質調製物を包含する。さらに、当該用語はまたタンパク質フラグメントにも関連する。さらにまた、この用語には化学的に改変されたタンパク質が含まれる。そのような改変は、人工的改変でも天然に存在する改変(例えばリン酸化、グリコシル化、ミリストイル化など)でもよい。
【0012】
さらに本発明はまた、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物を提供する。
さらにまた、本発明はまた本明細書に記載するIBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物を提供する。したがって、提供されるものは、異種IBV S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物である。
“免疫原性組成物”という用語は、少なくとも1つの抗原(当該免疫原性組成物が投与される宿主において免疫学的応答を誘導する)を含む組成物を指す。そのような免疫学的応答は、本発明の免疫原性組成物に対する細胞性及び/又は抗体媒介免疫応答でありえる。好ましくは、免疫原性組成物は免疫応答を誘発し、より好ましくは、IBV感染の臨床的徴候の1つ以上に対して防御免疫を付与する。宿主はまた“対象”と表現される。好ましくは、本明細書に記載若しくは言及される宿主又は対象はいずれも鳥類又は家禽である。
通常は、“免疫学的応答”には1つ以上の以下の作用が含まれる(ただしそれらに限定されない):本発明の免疫原性組成物に含まれる1つの抗原又は複数の抗原に特異的に対する抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/又は細胞傷害性T細胞、及び/又はガンマ-デルタT細胞の産生又は活性化。好ましくは、宿主は防御性免疫学的応答又は治療的応答を示すであろう。
“防御性免疫学的応答”又は“防御免疫”は、感染宿主が通常示する臨床的徴候の減少若しくは欠如、より速やかな回復時間及び/又は短縮される感染性持続期間又は感染宿主の組織、体液若しくは分泌物におけるより低い病原体力価のいずれかによって提示されるであろう。
新規感染に対する耐性が増強される、及び/又は当該疾患の臨床的重篤性が減少するような防御性免疫学的応答を宿主が示す場合、免疫原性組成物は“ワクチン”と表現される。
【0013】
タンパク質コード配列によるH52-IBVの定義づけ
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、EU817497(配列番号:78)に示されるヌクレオチド配列、又は前記ヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する。
“核酸”又は“核酸配列”又は“ヌクレオチド配列”という用語は、DNA分子、RNA分子、cDNA分子又は誘導体を含むポリヌクレオチドを指す。当該用語は、一本鎖とともに二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。本発明の核酸は、単離されたポリヌクレオチド(すなわちその天然の環境から単離される)及び遺伝子改変形を包含する。さらにまた、天然に存在する改変ポリヌクレオチド(例えばグリコシル化又はメチル化ポリヌクレオチド)又は人工的に改変されたもの(例えばビオチン化ポリヌクレオチド)を含む化学的に改変されたポリヌクレオチドもまた含む。さらに、“核酸”又は“ポリヌクレオチド”という用語は互換的であり、任意の核酸を指す。“核酸”又は“ポリヌクレオチド”という用語にはまた、具体的には5つの生物学的に存在する塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン及びウラシル)以外の塩基を含む核酸が含まれる。
“RNA”という用語は任意のリボ核酸を指す。当該用語は、一本鎖とともに二本鎖RNAを包含する。本発明のRNAは、単離RNA(すなわちその天然の環境から単離される)及び遺伝子改変形を包含する。さらにまた、天然に存在する改変RNA(例えばメチル化RNA)又は人工的に改変されたもの(例えばビオチン化RNA)を含む化学的に改変されたRNAもまた含む。“RNA”という用語にはまた、具体的には4つの生物学的に存在するヌクレオチド/塩基(アデニン、グアニン、シトシン及びウラシル)以外の塩基を含むRNAが含まれる。
【0014】
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBV株は、AF352315(配列番号:79)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するスパイク(S)タンパク質を有する。
当該スパイクタンパク質又は核酸配列を用いて、任意のIBV株がH52起源であるか否かを決定できることは理解されるであろう。しかしながら、H52 IBVは骨格として用いられ、H52スパイクタンパク質又は核酸配列は異種スパイク若しくはそのフラグメントによって置き換えられるので、異種スパイクを有する最終的なIBVはH52スパイクを全く含まないか、又はH52スパイクの残余部分のみを含む。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、配列番号:1に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有する配列を有するスパイク(S)タンパク質を有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、AY044185(配列番号:80)に示されるアミノ酸配列、又は上記に言及の配列の少なくとも1つと少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するヌクレオキャプシド(N)タンパク質を有する。
【0015】
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、AF352310(配列番号:81)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するヌクレオキャプシド(N)タンパク質を有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するヌクレオキャプシド(N)タンパク質を有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、AF317210(配列番号:82)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するエンベロープ(E)タンパク質を有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、配列番号:3に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するエンベロープ(E)タンパク質を有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、AF286185(配列番号:83)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する膜糖タンパク質(M)タンパク質を有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、H52 IBVは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する膜糖タンパク質(M)タンパク質を有する。
【0016】
“同一性”又は“配列同一性”という用語は当業界では公知であり、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列、すなわち参照配列及び当該参照配列と比較されるべき与えられた配列間の関係を指す。配列同一性は、与えられた配列を参照配列と、これら配列を最適にアラインメントして最高度の配列類似性(そのような配列の文字列間のマッチングによって決定される)を達成した後で比較することによって決定される。そのようなアラインメントに際して、配列同一性は一位置毎に確認される。例えば、ある特定の位置でヌクレオチド又はアミノ酸残基が同一であるならば、当該配列は当該特定の位置で“同一”である。そのような位置同一性の総数を参照配列のヌクレオチド又は残基総数で割って%配列同一性が得られる。配列同一性は公知の方法によって容易に計算することができる。前記方法には以下に記載された方法が含まれる(ただしそれらに限定されない):Computational Molecular Biology, Lesk, A. N., ed., Oxford University Press, New York(1988);Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinge, G., Academic Press(1987);Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York(1991);及びCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073(1988)(前記文献の教示は参照によって本明細書に含まれる)。配列同一性を決定する好ましい方法は、被検配列間で最大のマッチングを生じるために設計される。配列同一性を決定する方法は、与えられた配列間の配列同一性を決定する公開コンピュータプログラムで成文化されている。そのようなプログラムの例には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410(1990)。BLASTXプログラムは、NCBI及び他の供給源(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894;Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410(1990)、前記文献の教示は参照によって本明細書に含まれる)から公開されている。これらのプログラムは、与えられた配列と参照配列との間の高レベルの配列同一性を達成するために規定値ギャップ重を用いて配列を最適にアラインメントする。例示として、参照ヌクレオチド配列に対して例えば少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%の“配列同一性”を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、与えられたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドにつき最大15、好ましくは最大10、より好ましくは最大5つの点変異を有するという点を除いて当該参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照配列に対して少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドでは、参照配列のヌクレオチドの最大15%、好ましくは10%、より好ましくは5%が欠失若しくは別のヌクレオチドで置換されえるか、又は参照配列の総ヌクレオチドの最大15%、好ましくは10%、より好ましくは5%のヌクレオチド数が参照配列に挿入されえる。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置に又はそれら末端位置の間の任意の場所に生じるか、参照配列のヌクレオチド中に個々に又は参照配列内で1つ以上の連続するグループで散在しえる。同様に、参照アミノ酸配列に対して例えば少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%の配列同一性を有するあるアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、当該あるポリペプチド配列は、参照アミノ酸配列の各100アミノ酸につき最大15、好ましくは最大10、より好ましくは最大5つのアミノ酸変異を含みえるという点を除いて、当該ポリペプチドのあるアミノ酸配列は参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%配列同一性を有するあるポリペプチド配列を得るために、参照配列のアミノ酸残基の最大15%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%が欠失若しくは別のアミノ酸で置換されえるか、又は参照配列のアミノ酸残基総数の最大15%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%のアミノ酸数が参照配列に挿入されえる。参照配列のこれらの変異は、参照アミノ酸配列のアミノ若しくはカルボキシ末端位置に又はそれら末端位置の間の任意の場所に生じるか、参照配列の残基中に個々に又は参照配列内で1つ以上の連続するグループで散在しえる。好ましくは、同一ではない残基位置は保存的アミノ酸置換で相違する。しかしながら、保存的置換は、配列同一性を決定するときにはマッチングに含まれない。
【0017】
“同一性”、“配列同一性”及び“パーセント同一性”という用語は本明細書では互換的に用いられる。本発明の目的のためには、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は最適な比較を目的としてアラインメントされる(例えば、第一のアミノ酸又は核酸の配列に第二のアミノ酸又は核酸配列との最適なアラインメントのためにギャップを導入することができる)。続いて、対応するアミノ酸又はヌクレオチド位のアミノ酸又はヌクレオチド残基が比較される。第一の配列の位置が、第二の配列の対応する位置と同じアミノ酸又はヌクレオチド残基によって占められるとき、当該分子は当該位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、当該配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数(すなわち重なり合う位置)x100)。好ましくは、2つの配列は同じ長さである。
配列比較は、比較される2つの配列の全長にわたって、又は2つの配列のフラグメントにわたって実施されえる。典型的には、比較は、2つの配列の完全長にわたって実施されるであろう。しかしながら、配列同一性は、例えば20、50、100又はこれを超える連続するアミノ酸残基の領域にわたって実施されえる。
【0018】
種々のコンピュータプログラムが2つの配列間の相同性を決定するために利用可能であるという事実を当業者は承知しているであろう。例えば、配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。好ましい実施態様では、2つのアミノ酸又は核酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanとWunsch(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. (48):444-453(1970))アルゴリズムを用いて(前記アルゴリズムは、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で入手できる)のGAPプログラムに取り入れられている)、Blosum 62マトリックス又はPAM250マトリックスのどちらか並びに16、14、12、10、8、6又は4のギャップ重及び1、2、3、4、5又は6の長さ重を用いて決定される。当業者は、これらすべての異なるパラメータはわずかに相違する結果を生じるが、2つの配列の全体的パーセンテージ同一性は異なるアルゴリズムを用いたときに有意には変化しないことを認識するであろう。
本発明のタンパク質配列又は核酸配列はさらに、公開データベースの検索を実施するために“クェリー配列”として用いられ、例えば他のファミリーメンバー又は関連配列を識別することができる。そのような検索は、Altschulら(Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10)のBLASTN及びBLASTPプログラム(バージョン2.0)を用いて実施できる。BLASTタンパク質検索はBLASTPプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施され、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を入手することができる。比較目的のためにギャップ有りアラインメントを達成するために、文献(Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402)に記載されているようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えばBLASTP及びBLASTN)の既定値パラメータを用いることができる。アメリカ国立生物工学情報センターのホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照されたい。
本明細書で用いられるように、“配列番号:Xの配列と同一”という用語は、それぞれ“配列番号:Xの長さにわたって配列番号:Xの配列と同一”という用語、又は“配列番号:Xの全長にわたって配列番号:Xの配列と同一”という用語と同等である。本文脈では、配列番号:X”は本明細書で言及する任意の配列番号を表せるように、“X”は1~85から選択される任意の整数である。
【0019】
異種Sタンパク質
IBV株
IBV株は血清型及び遺伝子型によって分類できる。血清型分類は中和抗体によるウイルスの処理を含むが、一方、遺伝子型分類は一般にS1(スパイク)タンパク質の配列を調べることを含む。しかしながら、種々のIBV株が当業者に周知である。伝染性気管支炎ウイルスは最初米国で1930年代に発見された。同定された最初のIBV血清型はマサチューセッツであったが、米国ではいくつかの血清型(アーカンサス及びデラウェアが含まれる)が最初に同定されたマサチューセッツ型に加えて識別されていた。
IBV株ボーデットはマサチューセッツ型であり、ニワトリ胚で少なくとも150継代後に取り出された。IBV株ボーデットは最初Beaudette and Hudson(Beaudette and Hudson, J. Am. Vet. Med. A. 90, 51-60, 1937)によって単離され、ニワトリ胚で継代された。ボーデットの他のマサチューセッツ型IBV株はH120、H52及びM41である。H120株は120回継代された。
IBV QXは、中国で最初に単離されたIBVの病毒性野外単離株と記述されている。しかしながら、当該ウイルスはヨーロッパに拡散され、西ヨーロッパで(もっぱらオランダであるがドイツ、フランス、ベルギー、デンマーク及びUKでもまた)識別されている。加えて、QX遺伝子型又は血清型はアジア及びアフリカの数か国で記載されている。
IBV4/91(一般的に793Bとも呼ばれている)は90年代初期にUKで最初に報告され、現在では世界の多くの部分に分布している。CD88は、本遺伝子型に属する弱毒化株であり、ワクチンとして市販されている。
“Italien-02”又は“Italy-02”と呼称される株は、イタリアで1990年代後期に単離された。これら単離株の1つの配列分析は2002年に公表された(NCBI-BLAST、番号AJ457137)。しかしながら、複数の研究は、本Italian-02株はヨーロッパに広く拡散し、IBV変種株4/91は別として、UK、スペイン、フランス及びオランダでもっとも優勢な遺伝子型の1つとなったことを示している。
【0020】
1996年以来、新規な伝染性気管支炎ウイルス(IBV)遺伝子型(Q1と称する)が中国で循環し、イタリアでは2011年に初めて報告された。Q1は死亡率の増加、腎臓障害及び前胃炎と関係がある。
さらにまた、D274、B1648/D8880、D1466、V1397及びArkansasも同様にヨーロッパで識別された。
どこでいずれのIBV株が入手できるかは当業者の一般的知識である。IBV株は市場で購入するか、学術的研究所から入手することができる。又は、IBVは配列決定され当該配列は公表されているので、ゲノムを相補性DNAとして合成することができ、したがって入手可能である。さらにまた、IBV株は野外から単離することができる。IBVを単離し、当該IBV株を特徴付ける方法は当業者には周知である。以下の論文には種々のIBV株を如何に単離及び弁別するかが記載されている:Valter Leonardo de Quadros 2011, Dissertation, Das Infektiose Bronchitis Virus (IBV): Molekularbiologische Untersuchungen zur Diagnostik und zum Vorkommen sowie zur Pathogenitat des Genotyps IBV QX in spezifisch pathogenfreien (SPF) Broilern, Freie Universitat Berlin;Worthington et al. 2009, Avian Pathology 37(3), 247-257:Liu et al. 2009, Virus Genes 38: 56-65;Dolz et al. 2006, (vian Pathology 35 (2): 77-85;Farsang et al. 2002, Avian Pathology 31: 229-236;及びFeng et al. 2014, Virus Genes 49: 292-303。
【0021】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種スパイクは非マサチューセッツ遺伝子型又は血清型である。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、以下から成るリストから選択される遺伝子型又は血清型を有するIBVに由来する:アーカンサス(例えばArkansas 99)、ブラジル(例えばBR-1、BR-2、23/2013、IBV/Brasil/351/1984)、カリフォルニア(例えばCalifornia 1734/04、California 99)、コネチカット、デラウェア(例えばDelaware 98)オランダ(Dutch)(例えばD207、D212、D274、D3128、D3896、D8880、D1466)、フロリダ、ジョージア(例えばGeorgia GA-07、GA-08、GA-12、GA-13)、グレー、ホルテ、アイオワ(例えばIowa 97及びIowa 69)、イタリア(例えばItaly 02)、JMK、LDT3、メーン(例えばMaine 209)、ペンシルバニア(例えばPennsylvania 1220/98、Pennsylvania Wolg/98)、PL84084、Qu(例えばQu-mv)、QX(例えばGB341/96)、Q1、SE 17、ヴァリアント2(例えばIS/1494/06、IBV/Ck/EG/CU/4/2014、gammaCoV/Ck/Poland/G052/2016)及び4/91(793B、CR88)。
【0022】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、以下から成る遺伝子型又は血清型のリストから選択されるIBVに由来する:4/91、QX、Q1、Italy 02、アーカンサス、コネチカット、ジョージア、LDT3、PL84084、ヴァリアント2又はブラジル。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、以下から成る遺伝子型又は血清型のリストから選択されるIBVに由来する:4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジル。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、4/91株は以下から成るリストから選択される:Spain/98/328、Spain/92/35、IR-3654-VM、FR-CR88061-88、FR-85131-85、UK-1233-95、UK/3/91、Spain/00/336、UK/7/91、4/91-病原性、4/91弱毒化、IB4-91及びCR88。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、QX株は以下から成るリストから選択される:FR-L1450T-05、FR-L1450L-05、NL-L1449T-04、NL-L1449K-04、IBV/Ck/SP/170/09、IBV/Ck/SP/79/08、IBV/Ck/SP/248/09、HBN、IBVQX、LX4、BJQ、CK/CH/LGD/03及びGB341/96。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、Q1株は以下から成るリストから選択される:CK/CH/LDL/98I、CK/CH/LSD/08-10、J2、Q1、AR08ER22、AR08BA21及びChile-295-10。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、アーカンサス株は以下から成るリストから選択される:Ark99、ArkGA、ArkDPI、AL/5364/00、ARKDPI11、AL/0803/01、AL/7149/00、ArkDPI101、AL/1221/01、AL/1793/01及びAL/4614/98。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、ヴァリアント2株は以下から成るリストから選択される:IS/1494/06、IBV/Ck/EG/CU/4/2014、gammaCoV/Ck/Poland/G052/2016、Eg/CLEVB-2/IBV/012、D1344/2/4/10_EG、TR8及びIB VAR2-06。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、ブラジル株は以下から成るリストから選択される:BR-1、BR-2、23/2013及びIBV/Brasil/351/1984。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは4/91遺伝子型又は血清型由来である。
【0023】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:5又は6と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有する4/91遺伝子型又は血清型に由来する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:7又は8と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するQX遺伝子型又は血清型に由来する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:9又は10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するQ1遺伝子型又は血清型に由来する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:11又は12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアーカンサス遺伝子型又は血清型に由来する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:13又は14と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するヴァリアント2遺伝子型又は血清型に由来する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:15又は16と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するブラジル遺伝子型又は血清型に由来する。
【0024】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16から成るリストから選択される。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質は完全長スパイクタンパク質である。
本実験のデータは、スパイクタンパク質配列のフラグメント(例えばスパイクタンパク質のエクトドメイン)を用いることができることを示す。しかしながら、完全長スパイクタンパク質配列も同様に用いることができる。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質フラグメントは、少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質フラグメントは、N-末端から少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する。
“N-末端”という用語は当業者には周知である。N-末端はまた、アミノ末端、NH2-末端、N-ターミナルエンド又はアミン末端と呼ばれる。タンパク質がメッセンジャーRNAから翻訳されるとき、当該タンパク質はN-末端からC-末端へと生成される。したがって、N-末端は、前記アミン基(-NH2)を含むアミノ酸鎖(タンパク質又はポリペプチド)の開始部である。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントは、少なくとも1000アミノ酸の長さを有する。
【0025】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントは、スパイクタンパク質のエクトドメインである。
“エクトドメイン”という用語は当業者には周知である。スパイクタンパク質は、(N-末端からC-末端まで)種々の機能性部分(シグナル配列、エクトドメイン、トランスメンブレンドメイン及びエンドドメイン)を含む。したがって、シグナル配列の切断後、スパイクタンパク質のN-末端はエクトドメインで開始する。IBVスパイクエクトドメインは約1077アミノ酸の長さを有し、IBV株に応じて長さが数アミノ酸ずつ相違する。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、同種Sタンパク質又はそのフラグメントは異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントに置換される。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、天然に存在するSタンパク質又はそのフラグメントは異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントに置換される。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、H52 IBVの同種Sタンパク質又はそのフラグメントは異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントに置換される。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、IBVは弱毒化されている。
“弱毒化”という用語は、野生型単離株と比較して減少した病毒性を有する病原体を指す。本発明では、弱毒化IBVは、病原性が減少し、IBV感染の臨床的徴候を引き起こさないが、標的動物で免疫応答を誘発できるものを指すが、前記用語はまた、非弱毒化IBVに感染しかつ弱毒化ウイルスを投与されていない“コントロールグループ”の動物と比較して、弱毒化IBV感染動物で臨床的徴候が発生率又は重篤性において減少することを意味することができる。本状況では、“減少する/減少される”という用語は、上記定義の非弱毒化IBVに感染したコントロールグループと比較して、少なくとも10%、好ましくは25%、さらに好ましくは50%、さらに好ましくは60%、さらに好ましくは70%、さらに好ましくは80%、さらに好ましくは90%、さらに好ましくは95%、もっとも好ましくは100%の減少を意味する。したがって、弱毒化IBV株は、改変生IBVを含む免疫原性組成物への組み入れに適切である。
【0026】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、IBVは不活化されている。
任意の通常的な不活化方法を本発明の目的のために用いることができる。したがって、不活化は、当業者に公知である化学的及び/又は物理的処理によって実施できる。好ましい不活化方法には、2-ブロモエチレンアミンヒドロブロミド(BEA)(バイナリーエチレンイミンに環化されてある)の溶液の添加を含む環化バイナリーエチレンイミン(BEI)の添加が含まれる。好ましい更なる化学不活化剤は、トリトンX-100、デオキシコール酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、β-プロピオラクトン、チメロサール、フェノール及びホルムアルデヒド(ホルマリン)を含むが、ただし前記に限定されない。しかしながら、不活化はまた中和工程を含むことができる。好ましい中和剤にはチオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなどが含まれるが、ただし前記に限定されない。
好ましいホルマリン不活化条件には以下のホルマリン濃度が含まれる:約0.02%(v/v)-2.0%(v/v)、より好ましくは約0.1%(v/v)-1.0%(v/v)、さらに好ましくは約0.15%(v/v)-0.8%(v/v)、さらに好ましくは約0.16%(v/v)-0.6%(v/v)、もっとも好ましくは約0.2%(v/v)-0.4%(v/v)。インキュベーション時間はIBVの耐性に左右される。一般に、反応プロセスは、適切な培養系でIBVの増殖が検出できなくなるまで実施される。
好ましくは、本発明の不活化IBVはホルマリンで不活化され、好ましくは上記に記載の濃度が用いられる。
本発明の不活化IBVは、例えば以下に記載されている公知技術を用いて、リポソームに組み入れることができる(Nature, 1974, 252:252-254;又はJ. Immunol., 1978, 120:1109-13)。本発明の別の実施態様では、本発明の不活化IBVは、適切な生物学的化合物(例えば多糖類、ペプチド、タンパク質など又は前記の組合せ)と共役させることができる。
【0027】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、IBVは遺伝的に操作される。
“遺伝的に操作された”という用語は、“逆遺伝学”アプローチを用いることによって変異させられてあるIBVを指す。好ましくは、本発明のIBVは遺伝子的に操作されている。逆遺伝学技術は、合成組換えウイルスRNAの調製を必要とする。しかしながら、“逆遺伝学”技術は当業者には周知である。
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、IBVは組換えIBVである。
本明細書で用いられる“組換え体”という用語は、RNAゲノム(又はRNA配列、cDNA配列若しくはタンパク質)であって、当該対応するRNAゲノム(又はRNA配列、cDNA配列若しくはタンパク質)に天然には存在しない任意の改変を有するものに関連する。例えば、RNAゲノム(又はRNA配列、cDNA配列若しくはタンパク質)が、(例えば人間の介入によって)人工的に導入された挿入、欠失、倒置、再配置又は点変異を含む場合、“組換え体”と考えられる。したがって、当該RNAゲノム(又はRNA配列、cDNA配列若しくはタンパク質)は、天然の状態では結合している配列(又はRNA配列、cDNA配列若しくはタンパク質)の全て又は一部分と結合していない。ウイルスに関して用いられる“組換え体”という用語は、ウイルスゲノムの人工的操作によって生じるウイルスを意味する。“組換えウイルス”という用語は遺伝的に改変されたウイルスを包含する。
【0028】
本発明のIBV又は免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、IBVはキメラである。
“キメラ”という用語は、別のコロナウイルス、好ましくは別のIBV株に由来する1つ以上のヌクレオチド配列を含むIBVを指す。例示すれば、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするIBV H52はキメラIBVである。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物はワクチンである。“ワクチン”という用語はすでに本明細書のどこか他に記載されてある。しかしながら、宿主が防御免疫学的応答を示し、新規な感染に対する耐性が増強され及び/又は疾患の臨床的重篤性が減少する場合、当該免疫原性組成物は“ワクチン”と表現される。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は医薬的に許容できる担体を含む。
“医薬的に許容できる担体”という用語には、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、安定化剤、希釈剤、保存料、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、アジュバント、免疫刺激剤、及び前記の組合せが含まれる。
“希釈剤”には、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれえる。等張剤には、とりわけ塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースが含まれえる。安定化剤にはとりわけアルブミン及びエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が含まれる。
本発明の免疫原性組成物のまた別の具体的な特徴では、医薬的に許容できる担体はリン酸緩衝生理食塩水である。
好ましくは、免疫原性組成物はさらにシュクロースゼラチン安定化剤を含む。
好ましくは、医薬的に許容できる担体はキトサンである。
キトサンは、甲殻類(例えばエビ、カニ)、昆虫、及び他の無脊椎動物のキチン由来の天然の脱アセチル化多糖類である。最近、Rauwら(Rauw et al. 2009, Vet Immunol Immunop 134:249-258)は、キトサンはニューカッスル病生ワクチンの細胞性免疫応答を増強し、その防御作用を促進することを示した。さらにWamgら(Wang et al., Arch Virol (2012) 157:1451-1461)は、生弱毒化インフルエンザワクチンで使用されるアジュバントとしてのキトサンの潜在能力を明らかにする結果を示した。
好ましくは、免疫原性組成物は、さらに1つ以上の他の免疫調節剤(例えばインターロイキン、インターフェロン、又は他のサイトカイン)を含むことができる。本発明の関係で有用なアジュバント及び添加物の量及び濃度は当業者が容易に決定することができる。
【0029】
いくつかの特徴では、本発明の免疫原性組成物はアジュバントを含む。本明細書で用いられる“アジュバント”には、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc., Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals, Inc., Birmingham, AL)、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、水中油中水エマルジョンが含まれえる。エマルジョンは特に以下を基剤にすることができる:形質流動パラフィン油(欧州薬局方タイプ);イソプレノイド油、例えばスクァラン又はスクァレン;アルケン(特にイソブテン又はデセン)のオリゴマー化から生じる油;直鎖状アルキル基を含む酸又はアルコールのエステル、より具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ-(カプリレート/カプレート)又はプロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステル。油はエマルジョンを形成させるために乳化剤と一緒に用いられる。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタンのエステル、マンニドのエステル(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリコールのエステル、ポリグリセロールのエステル、プロピレングリコールのエステル、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸のエステル(場合によってエトキシル化される)、並びにポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、具体的にはプルロニック製品、特にL121である。以下を参照されたい:Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94, 1995;及びTodd et al., Vaccine 15:564-570, 1997。例示的なアジュバントは、M. Powell and M. Newman編集の著書“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”, Plenum Press, 1995)の147ページに記載されているSPTエマルジョン及び同書の183ページに記載されているエマルジョンMF59である。
【0030】
アジュバントの更なる例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー並びに無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物はアクリル酸又はメタクリル酸のポリマーであり、特に糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋される。これらの化合物は、カルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる(少なくとも3つのヒドロキシル基(好ましくは8個を超えない)を有し、少なくとも3つのヒドロキシルの水素原子が少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪酸基によって置き換えられている、ポリヒドロキシル化化合物で架橋されたアクリル酸ポリマーを記載する)。好ましい基は、2から4個の炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリル及び他のエチレン系不飽和基である。不飽和基はそれ自体他の置換基、例えばメチルを含むことができる。カルボポール(BF Goodrich, Ohio, USA)の名称では販売される製品が特に適切である。それらは、アリルシュクロース又はアリルペンタエリトリトールで架橋される。それらの中ではカルボポール974P、934P及び971Pを挙げることができる。カルボポール971の使用がもっとも好ましい。無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーではコポリマーEMA(Monsanto)があり、無水マレイン酸及びエチレンのコポリマーである。これらのコポリマーの水への溶解は酸性溶液を生じ、前記酸性溶液は好ましくは生理学的pHに中和されて、免疫原性、免疫学的又はワクチン組成物それ自体がその中に組み入れられるアジュバント溶液を生じるであろう。
【0031】
更なる適切なアジュバントには多くのアジュバントの中で以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx, Atlanta GA)、SAF-M(Chiron, Emeryville CA)、モノホスホリル脂質A、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌(E. coli)由来易熱性エンテロトキシン(組換え体又は他の形態)、コレラトキシン、IMS 131又はムラミルジペプチド、又は天然に存在するか若しくは組換え体のサイトカイン又はそのアナローグ、又は内因性サイトカイン放出刺激剤。
アジュバントは、約100μgから約10mg/用量の量で、好ましくは約100μgから約10mg/用量の量で、より好ましくは約500μgから約5mg/用量の量で、さらに好ましくは約750μgから約2.5mg/用量の量で、もっとも好ましくは約1mg/用量の量で添加できると期待される。また別には、アジュバントは、最終生成物の体積で約0.01から50%の濃度、好ましくは約2%から30%の濃度、より好ましくは約5%から25%の濃度、さらに好ましくは約7%から22%の濃度、もっとも好ましくは10%から20%の濃度で存在しえる。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、必要がある対象において、IBVによって引き起こされる臨床的徴候の治療及び/又は予防で有効である。“治療及び/又は予防”、“臨床的徴候”及び“必要がある”という用語は、どこか他で定義されてある。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、異種スパイクタンパク質の遺伝子型又は血清型のIBV株によるチャレンジに対して防御する。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2又はブラジル遺伝子型の株によるチャレンジに対して防御する。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、4/91遺伝子型の株によるチャレンジに対して防御する。
【0032】
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は一用量投与のために処方される。
一用量のための体積は本明細書のどこか他で定義されてある。
さらにまた、本発明の免疫原性組成物の一用量は、そのような免疫原性組成物のそのような一用量の投与後に有効であることが示されてある。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、皮下に、筋肉内に、経口的に、in ovoで、スプレーを介して、飲料水を介して、又は点眼によって投与される。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、1から10 log10 EID50/用量のIBVを含む。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、2から5 log10 EID50/用量のIBVを含む。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、免疫原性組成物は、2から4 log10 EID50/用量のIBVを含む。
【0033】
キット
所望の場合、組成物はパックで又はディスペンサー装置で提供され、活性成分を含む1つ以上の単位剤形を含むことができる。パックは、例えば金属箔又はプラスチック箔(例えばブリスターパック)を含むことができる。パック又はディスペンサー装置は、投与のための指示、好ましくは対象(特に家禽)への投与のための指示を伴うことができる。そのような容器に付随するものは、医薬品又は生物製剤の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された様式の通知であることができ、前記通知は製造、使用又は人間への投与のための当該機関による販売の承認を反映する。
したがって、本発明は、本明細書に記載するIBV又は免疫原性組成物を含むキットを提供する。
本発明のキットのある具体的な特徴では、キットはさらに、鳥類の疾患の治療及び/又は予防のための指示書を含む。
本発明のキットのある具体的な特徴では、キットはさらに、家禽の疾患の治療及び/又は予防のための指示書を含む。
本発明のキットのある具体的な特徴では、キットはさらに、IB(伝染性気管支炎)の治療及び/又は予防のための指示書を含む。
【0034】
治療方法
さらに、本発明は対象を免疫する方法を提供し、前記方法は、そのような対象に本明細書記載の免疫原性組成物を投与する工程を含む。
“免疫する”という用語は、免疫されるべき対象に免疫原性組成物を投与し、それによってそのような免疫原性組成物に含まれる抗原に対して免疫学的応答を引き起こすことによる能動免疫に関する。
好ましくは、免疫は、群れにおける特定のIBV感染の発生の低下、又は特定のIBV感染により引き起こされるか若しくは感染に付随する臨床的徴候の重篤性の減少を生じる。
さらに、必要がある対象の本明細書で提供される免疫原性組成物による免疫は、対象のIBVによる感染の予防をもたらす。さらに好ましいことには、免疫は、IBV感染に対抗する有効で長期持続性の免疫学的応答をもたらす。持続期間は、1ヶ月を超えて、好ましくは2ヶ月を超えて、好ましくは3ヶ月を超えて、より好ましくは4ヶ月を超えて、より好ましくは5ヶ月を超えて、より好ましくは6ヵ月を超えて持続するであろうということは理解されよう。免疫は、免疫される全ての対象において有効であるとは限らないことは理解されるべきである。しかしながら、当該用語は、群れの対象の有意な部分が効果的に免疫されることを必要とする。
【0035】
好ましくは、本状況では、対象の群れは、通常的には(すなわち免疫がなければ)、IBV感染により通常引き起こされるか又はIBV感染に付随する臨床的徴候を発達させるであろうと想定される。当業者は、更なる骨折りを伴うことなく群れの対象が有効に免疫されているか否かを決定できる。好ましくは、免疫されていないか又は本発明の前に入手可能であった免疫原性組成物で免疫されたが、その後で特定のIBVに感染した対象と比較して、ある群れの対象の少なくとも33%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%及びもっとも好ましくは100%で、臨床的徴候が、発生率又は重篤性において少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっとも好ましくは100%減少するならば、当該免疫は有効であろう。
【0036】
さらに、本発明は、本明細書に記載の免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、IBV感染によって引き起こされる臨床的徴候を必要がある対象において治療又は予防する方法を提供する。
“治療又は予防する”という用語は、群れにおける特定のIBV感染の発生率の減少又はIBV感染によって引き起こされるか若しくはIBV感染に付随する臨床的徴候の重篤性の減少を指す。したがって、“治療又は予防する”という用語はまた、本明細書で提供される免疫原性組成物の有効量を与えられた対象グループで、そのような免疫原性組成物を与えられなかった対象グループと比較して、群れにおける特定のIBVの感染対象数の減少(=特定のIBV感染の発生率の減少)、又はIBV感染に通常付随するか若しくは引き起こされる臨床的徴候の重篤性の減少、又は特定のIBV感染後のウイルス排泄の減少、又は特定のIBV感染後の産卵鶏の産卵低下の予防若しくは減少を指す。
“治療又は予防する”は、一般に、必要があるか又はそのような治療/予防から利益を受ける可能性がある対象又は対象の群れに本発明の免疫原性組成物の有効量を投与することを要する。“治療する”という用語は、対象又は群れの少なくとも数匹の対象がそのようなIBVにすでに感染し、そのような対象がそのようなIBV感染によって引き起こされるか若しくはIBV感染に付随するいくつかの臨床的徴候をすでに示す場合に、有効量の免疫原性組成物を投与することを指す。“予防する”という用語は、IBVによるそのような対象の何らかの感染の前に又はそのような対象若しくは対象グループ内の対象のいずれもそのようなIBVによる感染によって引き起こされるか若しくは付随する臨床的徴候を全く示さない場合に対象に投与することを指す。“予防”及び“防止”は本出願では互換的に用いられる。
【0037】
本明細書で用いられる“有効量”という用語は、対象において免疫応答を誘引する又は誘引することができる抗原の量を意味する(ただし前記に限定されない)。そのような有効量は、群れにおける特定のIBV感染の発生率を減少させるか、又は特定のIBV感染の臨床的徴候の重篤性を減少させることができる。
好ましくは、臨床的徴候は、処置されていないか又は本発明の前に利用可能であった免疫原性組成物で処置されているがその後で特定のIBVに感染した対象と比較して、発生率又は重篤性において少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっとも好ましくは100%減少する。
本明細書で用いられる“臨床的徴候”という用語は、IBVに由来する対象における感染徴候を指す。そのような臨床的徴候の例には、呼吸窮迫、腎炎、卵管炎(salphingitis)、異常産卵、羽毛逆立ち、抑うつ、成長速度の低下、及び食欲の低下が含まれるが、ただし前記に限定されない。呼吸窮迫の徴候は、息切れ、咳、くしゃみ、気管ラ音、鼻内及び眼内分泌、気管病変及び気管の繊毛静止(ciliostasis)を包含する。腎炎の徴候は腎臓障害及び水様下痢を包含する。異常産卵の徴候は、産卵低下、サイズの小さい卵、不良卵殻、内部の卵の品質悪化、希薄なアルブミンを有する卵、及び卵管の繊毛静止を包含する。しかしながら、臨床的徴候にはまた生きている動物で直接観察される臨床的徴候が含まれる(ただし前記に限定されない)。生きている動物で直接観察される臨床的徴候の例には、鼻内及び眼内分泌、咳、息切れ、くしゃみ、気管ラ音、羽毛逆立ち、結膜炎、体重減、成長速度の低下、食欲の低下、脱水、水様下痢、跛行、無気力、消耗、及び発育不全などが含まれる。
好ましくは、処置されていないか又は本発明の前に利用可能であった免疫原性組成物で処置されているがその後で特定のIBVに感染した対象と比較して、治療された対象において発生率又は重篤性が減少する臨床的徴候は、繊毛静止の減少、ラ音の減少、産卵低下の減少、腎臓障害の減少、水様下痢の減少、体重減の減少、低いウイルス負荷、ウイルス排泄の減少又は前記の組合せに関連する。
【0038】
本明細書で用いられる“必要がある”又は“必要な”という用語は、投与/処置が、本発明の免疫原性組成物を与えられた対象の健康状態若しくは臨床的徴候における後押し若しくは改善、又は健康状態における任意の他の正の医学的効果を伴うことを意味する。
“減少させる”、”減少した”、“減少”又は“より低い(lower)”という用語は本出願では互換的に用いることができる。“減少”という用語は、処置されていない(免疫されていない)が後で特定のIBVに感染した対象と比較して、臨床的徴候が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっとも好ましくは100%減少することを意味する。
さらに、本発明は、本明細書に記載の免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して、必要な対象において繊毛静止を減少させる方法を提供する。
実施例に示されるように、本明細書で提供される免疫原性組成物は繊毛静止の減少で有効であることが立証されている。
【0039】
“繊毛静止”という用語は気管の繊毛運動の低下を指す。したがって、繊毛静止は、気管輪の内部被膜を繊毛運動について試験することによって決定できる。気管の繊毛の運動をどのように決定するかは、当業者の一般的知識の範囲内である。
好ましくは、繊毛の運動は、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して、IBVによるチャレンジ又は感染後10日目から、より好ましくはチャレンジ又は感染後5日目から、より好ましくはチャレンジ又は感染後4日目から、より好ましくはチャレンジ又は感染後3日目から、もっとも好ましくはチャレンジ又は感染後1日目又は2日目から低下しない。
“繊毛静止の減少”という用語は、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して、繊毛静止が少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっとも好ましくは100%減少することを意味する。繊毛静止の減少をどのように決定するかは、当業者の一般的知識の範囲内である。
【0040】
本発明のある特徴では、対象は鳥類である。
“鳥類”という用語は当業者には周知である。“鳥類”という用語は家禽を含むすべてのトリを包含する。
本発明のある特徴では、対象は家禽である。
“家禽”という用語は当業者には周知である。“家禽”という用語は、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、ホロホロチョウ、ガチョウ、及びアヒルを包含する。さらに、“ニワトリ”という用語は、肉用鶏、産卵鶏、及び両方の繁殖用ストック(繁殖用種畜とも称される)を含む。
本発明のある特徴では、対象はニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ又はキジから成るリストから選択される。
本発明のある特徴では、対象はニワトリである。
【0041】
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は1回投与される。
単一用量はただ1回投与されると理解される。実施例で示されるように、本明細書で提供される免疫原性組成物は、必要な対象への単一用量の投与後に有効であることが立証されている。
家禽当たりの当該用量体積はワクチン接種のルート及び家禽の齢に左右される。
典型的には、点眼ワクチンは、任意の齢において1から100μL/用量で投与される。好ましくは、点眼ワクチンのための一用量は、約5μLから70μLの間、より好ましくは約20μLから50μLの間の総体積を有し、一用量20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL又は50μLが好ましい。もっとも好ましくは、点眼ワクチンのための一用量は、約30μLから50μLの間の総体積を有し、一用量30μL、35μL、40μL、45μL又は50μLが好ましい。
スプレーワクチンは、1日齢家禽のために25から1000μLの体積で当該用量を含むことができる。好ましくは、スプレーワクチンのための一用量は、約50μLから5000μLの間、より好ましくは約75μLから2000μLの間、より好ましくは約100μLから1000μLの間、さらに好ましくは約200μLから900μLの間、さらに好ましくは約300μLから800μLの間、さらに好ましくは約400μLから700μLの間の総体積を有し、一用量400μL、425μL、450μL、475μL、500μL、525μL、550μL、575μL、600μL、625μL、650μL、675μL又は700μLが好ましい。もっとも好ましくは、一用量は、400μL、450μL、500μL、550μL、600μL、650μL、又は700μLの総体積を有する。
in ovo(卵内)ワクチン接種のためのワクチンは50から100μL、好ましくは50μLの体積で当該用量を含むことができる。好ましくは、in ovoワクチンのための一用量は、約10μLから250μLの間、より好ましくは約15μLから200μLの間、さらに好ましくは約20μLから150μLの間、さらに好ましくは約30μLから100μLの間、さらに好ましくは約30μLから75μLの間の総体積を有し、一用量30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL又は75μLが好ましい。もっとも好ましくは、一用量は、40μL、45μL、50μL、55μL又は60μLの総体積を有する。
筋肉内または皮下ワクチン接種のためのワクチン、または飲料水ワクチンの一用量は30μLから1000μLの体積中に一用量を含むことができる。好ましくは、一用量は約30μLから1000μLの間、より好ましくは約75μLから約250μLの間、さらに好ましくは約100μLから200μLの間の総体積を有し、一用量100μL、110μL、120μL、125μL、130μL、135μL、140μL、145μL、150μL、160μL、170μL、175μL、180μL、190、155μLまたは200μL用量が最も好ましい。
【0042】
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は2用量以上で投与される。
しかしながら、免疫原性組成物は2用量以上で投与することができ、第一の用量は第二の(ブースター)用量の投与の前に投与される。
2回投与レジメンの好ましい特徴では、免疫原性組成物の第一及び第二の用量の両方は同じ量で投与される。好ましくは、各用量は上記に規定した好ましい量である。第一及び第二用量レジメンに加えて、また別の実施態様は更なる後続用量を含む。例えば、第三、第四、又は第五用量をこれらの特徴では投与することができよう。好ましくは、後続の第三、第四、及び第五用量レジメンは、第一の用量と同じ量で投与され、用量間の時間枠は、上記で述べた第一と第二の用量との間のタイミングと一致する。
好ましくはワクチンの最初の投与は、最初の3週齢以内、より好ましくは最初の1週齢以内、もっとも好ましくは1日齢で下記に記載の方法によって実施される。第二の投与は、最初の20週齢以内、好ましくは16-18週齢以内、より好ましくは6-12週齢の間で実施できる。例示すれば、最初の(第一の)ワクチン接種は1-10日齢で実施され、第二のワクチン接種(ブースター)は6-12又は16-18週齢で生又は不活化ワクチンを用いて実施される。より好ましくは、最初の(第一の)ワクチン接種は1日齢で実施され、第二のワクチン接種(ブースター)は6-12又は16-18週齢で生又は不活化ワクチンを用いて実施される。
【0043】
in ovoワクチン接種が用いられる場合は、好ましくは第一の投与は、胚が15から19日齢の間、好ましくは17、18又は19日齢、もっとも好ましくは18日齢にあるときに実施される。第二の投与は、最初の3週齢以内に、好ましくは最初の10日齢以内に実施できる。
本発明のある特徴では、前記免疫原性組成物は、皮下に、筋肉内に、経口的に、in ovoで、スプレーで、飲料水で、又は点眼によって投与される。
免疫原性組成物は、好ましくは局所的に又は全身的に投与される。通常的に用いられる適切な投与ルートは、経口又は非経口投与、例えば鼻内、静脈内、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、皮下と同様に、吸入、in ovo、スプレー、飲料水、又は点眼による投与である。しかしながら、化合物の性質及び作用態様にしたがって、免疫原性組成物は他のルートによって同様に投与されえる。例えば、そのような他のルートには、皮内、静脈内、血管内、動脈内、腹腔内、髄腔内、気管内、皮内、心臓内、肺葉内(intralobally, intralobarly)、髄内、肺内、直腸内、及び膣内が含まれる。しかしながら、もっとも好ましくは、免疫原性組成物は、皮下、筋肉内、経口、in ovo、スプレー、飲料水又は点眼によって投与される。
生IBVワクチンは、好ましくは個々に点眼、鼻内、筋肉内又は皮下投与される。
より好ましくは、集団適用法(飲料水及びエーロゾルスプレーワクチン接種を含む)が用いられる。下記でさらに記載する胚ワクチン(いわゆるin ovoワクチン)としてのワクチンの使用もまた好ましい。
例えば、ブロイラーは1日齢又は1-3週齢で、特にブロイラーのためには高レベルのMDAを用いてワクチン接種できる。産卵鶏ストック又は繁殖用ストックは最初に1-10日齢でワクチン接種し、7-12又は16-18週齢でワクチンをブースター投与しえる。
【0044】
in ovo投与
上記に概略したように、本発明はまた、in ovoルートにより安全に投与され同時に防御免疫応答を誘発しえるIBVワクチンを提供する。in ovo投与は当業者には周知であり、当業者は更に骨を折ることなくin ovo投与を実施することができる。ワクチンのin ovo投与は、卵に収容されたままで鳥類の胚にワクチンを投与することを含む。in ovoワクチン接種の概要については以下を参照されたい: Ricks et al., Advances in Vet. Med. 495-515, 1999。ワクチンは、当業界で説明されているように(Sharma; Am. J. Vet. Res. 45 1619-1623,1984)、卵の任意の適切な区画に(例えば、尿嚢液、卵黄嚢、羊膜、空気室又は胚に)投与できる。好ましくは、ワクチンは卵殻膜の下(気室)及び漿尿膜に投与される。
好ましくは、ワクチンは、胚形成の後期、一般には孵卵期間の最後の四半期の間に、好ましくは孵化3-4日前に胚形成卵に注射される。好ましくは、胚が15から19日齢の間、好ましくは17、18又は19日齢、もっとも好ましくは18日齢であるときに投与を実施する。続いて、孵化させるためにワクチン接種胚形成卵をインキュベーターに移す。in ovo投与のプロセスは、従来技術で記載されている自動注射プロセスを用いて自動化することができる。
家禽を孵化後にワクチン接種するための慣習的なワクチンは、通常はin ovoワクチン接種には用いることができない。なぜならば、後期胚は、調べたほとんどのワクチンウイルスによる感染に対して高度に感受性だからである。しかしながら国際出願WO 01/64244は、IBVワクチンを非常に低用量で適用することを条件としてIBVワクチンはin ovo投与のために使用できることを開示する。さらに、Wakenellら(Wakenell et al., 1986, Am. J. Vet. Res., 47 933-938)は、組織培養におけるIBワクチンウイルスの継代は胚に対してウイルスを非病原性にすることを開示する。
【0045】
本発明のある特徴では、前記免疫原性組成物は点眼により投与される。
典型的には、孵化後投与のためのワクチンは、1用量当たり101から108 EID50(50%の卵が感染する用量)の濃度、好ましくは102から105 EID50/用量の濃度、より好ましくは102から104 EID50/用量の濃度、さらに好ましくは102から103 EID50/用量の濃度の弱毒化IBVを含む。
in ovo投与のための生ワクチンは、典型的には102から107 EID50/胚、好ましくは102から103 EID50/胚の弱毒化IBVを50から100μL、好ましくは50μLの体積に含む。
好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、約1から約10 log10 EID(卵感染用量)50/用量、好ましくは約2から約8 log10 EID50/用量の量、より好ましくは約2から約6 log10 EID50/用量の量、さらに好ましくは約2から約5 log10 EID50/用量の量、さらに好ましくは約2から約4 log10 EID50/用量の量、もっとも好ましくは約2から約3 log10 EID50/用量の量の本発明のIBVを含む。より好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5 log10 EID50/用量の量で本発明のIBVを含む。
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は1から10 log10 EID50/用量のIBVを含む。
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は2から5 log10 EID50/用量のIBVを含む。
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は2から4 log10 EID50/用量のIBVを含む。
【0046】
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は、最初の1週齢以内に、最初の3日齢以内に、最初の2日齢以内に、又は最初の1日齢以内に対象に投与される。
好ましくは、免疫される対象は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21日齢である。より好ましくは、前記免疫される対象は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14日齢である。もっとも好ましくは、前記免疫される対象は、1、2、3、4、5、6又は7日齢である。
しかしながら、数日齢の対象へのワクチン接種後、当該家禽の免疫系がIBV感染に対して免疫を立ち上げるためには数日を要することは理解されるべきである。したがって、好ましくは、対象は最初の24時間齢以内に免疫される。
本発明のある特徴では、免疫原性組成物は最初の1日齢以内に対象に投与される。実施例に示されるように、本明細書提供の免疫原性組成物は、1日齢の家禽に投与されるとき安全で有効であることが立証されてある。
本発明のある特徴では、前記方法は、同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して以下から成る群から選択される有効性パラメーターの改善をもたらす:繊毛静止の予防若しくは減少、ラ音の予防若しくは減少、産卵低下の予防若しくは減少、腎臓障害の予防若しくは減少、水様下痢の予防若しくは減少、体重減の予防若しくは減少、より低いウイルス負荷、減少するウイルス排泄又は前記の組合せ。
【0047】
“治療及び/又は予防”という用語はどこか他で定義されてあり、ここで“予防”及び“予防する”又は“防止”という用語は本出願では互換的に用いられる。さらに、“ウイルス排泄”という用語もまたどこか他で定義されてある。
“減少させる”、“減少した”、“減少”又は“より低い(lower)”という用語は、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して、有効性パラメーター(繊毛静止、ラ音、産卵低下、腎臓障害、水様下痢、体重減、ウイルス負荷、ウイルス排泄)が少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっとも好ましくは100%減少することを意味する。どのようにして有効性パラメーターの改善を測定するかは当業者の一般的知識の範囲内である。
【0048】
“ウイルス負荷”という用語は当業者には周知である。本明細書では、ウイルス負荷という用語はウイルス力価という用語と互換的に用いることができる。ウイルス負荷又はウイルス力価は活動的ウイルス感染の重篤性の測定値であり、当業者に公知の方法によって決定できる。当該決定は、ウイルスタンパク質の検出(例えばウイルスタンパク質と結合する抗体によって)、及びまた別には増幅方法(例えばRT-PCR)によるウイルスRNAの検出による更なる検出を基準にすることができる。核酸増幅方法による血漿中のビリオン不随ウイルスRNAのモニタリングは、レトロウイルス性疾患の状況及び進行を評価し、予防的又は治療的介入の有効性を評価するために広範囲に用いられるパラメーターである。例示すれば、ウイルス負荷又はウイルス力価は、関係する体液中の生存ウイルス量、例えば血漿1ミリリットル当たりのRNAコピー数を概算することによって計算できる。
“繊毛静止”という用語は当業者には周知である。気管の表面は特殊化された上皮細胞で覆われ、前記細胞には多数の運動性を有する毛様構造物(繊毛と呼ばれる)が並んでいる。“繊毛静止”という用語は、繊毛の減少又は消失及び/又は繊毛活性の消失又は部分的消失を包含する。当業者は、更なる骨折りを伴うことなく繊毛静止を決定できる。
“ラ音”という用語は当業者には周知である。しかしながら、“ラ音”という用語は気管ラ音を包含し、気管支から発する音を指す。当業者は更なる骨折りを伴うことなくラ音を決定できる。
“産卵低下”という用語は当業者には周知である。“産卵低下”という用語は卵生産の低下を包含する。
【0049】
本発明のある特徴では、治療又は予防は、同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して、繊毛静止の予防又は減少をもたらす。
本発明のある特徴では、治療又は予防は、同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して、腎臓障害の予防又は減少をもたらす。
本発明のある特徴では、治療又は予防は、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して、産卵低下の予防又は減少をもたらす。
本発明はさらに、治療的使用のために、本明細書に記載のIBV又は免疫原性組成物を提供する。
本発明はさらに、免疫原又はワクチンとしての使用のために、本明細書に記載のIBV又は免疫原性組成物を提供する。
本発明はさらに、医薬としての使用のための、本明細書に記載のIBV又は免疫原性組成物を提供する。
本発明はさらに、医薬の製造のための、本明細書に記載のIBV又は免疫原性組成物の使用を提供する。
本発明はさらに、対象におけるIBV感染の治療及び/又は予防のための、本明細書に記載のIBV又は免疫原性組成物の使用を提供する。
【0050】
本発明はさらに、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物を提供し、前記H52 IBVはヌクレオキャプシド(N)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質又はメンブレン糖タンパク質(M)を含み、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、AY044185(配列番号:80)、AF352310(配列番号:81)、AF317210(配列番号:82)若しくはAF286185(配列番号:83)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有する配列を有し、かつ、異種Sタンパク質又はそのフラグメントは、4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型若しくは血清型のリストから選択されるか、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15若しくは16に示されるアミノ酸配列若しくは前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有する配列から選択される。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質は完全長スパイクタンパク質である。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントはN-末端から少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントはスパイクタンパク質のエクトドメインである。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、IBVは弱毒化される。
【0051】
本発明は、下記の工程を含む、対象においてIBV感染を治療及び/又は予防するための免疫原性組成物を調製する方法を提供する:
a)スパイク(S)タンパク質、ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質又はメンブレン糖タンパク質(M)を含むH52 IBVを提供する工程であって、前記H52 IBVが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、AF352315(配列番号:79)、AY044185(配列番号:80)、AF352310(配列番号:81)、AF317210(配列番号:82)若しくはAF286185(配列番号:83)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、前記工程;及び
b)4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型若しくは血清型のリストから選択されるか、又は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15若しくは16に示されるアミノ酸配列若しくは前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される異種Sタンパク質又はそのフラグメントを提供する工程;及び
c)a)のH52 IBVのスパイクタンパク質又はそのフラグメントをb)の異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントで置換して、異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有するH52 IBVを保有する工程;及び
d)異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有する前記H52 IBVを入手する工程;及び
e)医薬的に許容できる担体を添加する工程。
【0052】
“入手する”という用語は、異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有する前記H52 IBV の採集、単離、精製、及び/又は処方(例えば仕上げ処理、不活化及び/又は混合)を含む。
“採集する”という用語は、異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有する前記H52 IBVをトランスフェクトした又は感染させた細胞若しくは細胞株から収集又は回収することを指す。当業界で公知の通常的ないずれの方法(例えば任意の分離方法)も用いることができる。当業界で周知の方法は遠心分離又はろ過を含み、ろ過は、例えば一定の孔サイズを有する半透膜を使用する。
“単離”という用語は、異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有する前記H52 IBVの単離工程を含む。トランスフェクトした又は感染させた細胞若しくは細胞株から単離する方法は当業者には公知である。それらの方法は物理的及び/又は化学的方法を含み、前記には凍結融解の繰返し、超音波による処理などが含まれる(ただしそれらに限定されない)。
異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有する前記H52 IBVを単離株から“精製する”方法は、当業者には公知であり、例えば以下の文献に記載された方法による:Protein purification methods - a practical approach(E.L.V. Harris and S. Angel, eds., IRL Press at Oxford University Press)。それら方法には以下が含まれる:遠心分離及び/又はろ過による分離、沈澱、サイズ排除(ゲルろ過)クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、金属キレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、共有結合クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーなど(ただし前記に限定されない)。ベクターは、精製された純粋な形で、又は他の細胞性物質若しくは培地などを含まない若しくは実質的に含まないで入手できる。前記単離及び/又は精製後に、抗原は、少なくとも80%、好ましくは80%-90%、好ましくは90%-97%、もっとも好ましくは97%を超えて最大で完全な純粋形(一切の夾雑物を含まない)の純度を示す。
更なる特徴にしたがえば、本明細書で用いられる“入手する”にはまた、最終的な処方プロセスの部分としての仕上げ処理工程、例えば緩衝剤の添加、不活化、中和工程などが含まれる。
【0053】
本発明の免疫原性組成物の調製方法の別の具体的な特徴では、異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントはスパイクタンパク質のエクトドメインである。
本発明の免疫原性組成物の別の具体的な特徴では、前記医薬的に許容できる担体は以下から成る群から選択される:溶媒、分散媒体、コーティング、安定化剤、希釈剤、保存料、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、アジュバント、免疫刺激剤、及び前記の組合せ。
本発明の免疫原性組成物の調製方法の別の具体的な特徴では、異種Sタンパク質は完全長のスパイクタンパク質である。
本発明はさらに、異種IBV S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントを含む、部分的なH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)ゲノムをコードする核酸を含むプラスミドに関し、例えばpUC57-s H52 rIBV CR88 S Ectoドナープラスミド(配列番号:21)である。
【0054】
項目
以下の項目もまた本明細書に記載される:
1.異種IBV S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)。
2.異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物。
3.項目1に記載のIBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物。
タンパク質コード配列によるIBV H52の定義
4.H52 IBVが、EU817497(配列番号:78)に示されるヌクレオチド配列、又は前記ヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有する配列を有するか、又は前記ヌクレオチド配列から成るか若しくは前記ヌクレオチド配列を含む、項目1から3のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
5.H52 IBV株が、AF352315(配列番号:79)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含むスパイク(S1)タンパク質を有する、項目1から4のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
6.H52 IBV株が、配列番号:1に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含むスパイク(S)タンパク質を有する、項目1から5のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
7.H52 IBVが、AY044185(配列番号:80)又はAF352310(配列番号:81)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有する配列を有するか、又は前記から成るか若しくは前記を含むヌクレオキャプシド(N)タンパク質を有する、項目1から6のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
8.当該H52 IBVが、配列番号:2に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含むヌクレオキャプシド(N)タンパク質を有する、項目1から7のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
9.H52 IBVが、AF317210(配列番号:82)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含むエンベロープ(E)タンパク質を有する、項目1から8のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
10.H52 IBVが、配列番号:3に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含むエンベロープ(E)タンパク質を有する、項目1から9のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
11.H52 IBVが、AF286185(配列番号:83)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含む膜糖タンパク質(M)タンパク質を有する、項目1から10のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
12.H52 IBVが、配列番号:4に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含む膜糖タンパク質(M)タンパク質を有する、項目1から11のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
【0055】
異種Sタンパク質
13.異種スパイクが非マサチューセッツ遺伝子型又は血清型である、項目1から12のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
14.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、アーカンサス(例えばArkansas 99)、ブラジル(例えばBR-1、BR-2、23/2013、IBV/Brasil/351/1984)、カリフォルニア(例えばCalifornia 1734/04、California 99)、コネチカット、デラウェア(例えばDelaware 98)、ダッチ(例えばD207、D212、D274、D3128、D3896、D8880、D1466)、フロリダ、ジョージア(例えばGeorgia GA-07、GA-08、GA-12、GA-13)、グレー、ホルテ、アイオワ(例えばIowa 97及びIowa 69)、イタリア(例えばItaly 02)、JMK、LDT3、メーン(例えばMaine 209)、ペンシルバニア(例えばPennsylvania 1220/98、Pennsylvania Wolg/98)、PL84084、Qu(例えばQu-mv)、QX(例えばGB341/96)、Q1、SE 17、ヴァリアント2(例えばIS/1494/06、IBV/Ck/EG/CU/4/2014、gammaCoV/Ck/Poland/G052/2016)及び4/91(793B, CR88)から成るリストから選択される遺伝子型又は血清型を有するIBVに由来する、項目1から13のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
15.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、4/91、QX、Q1、Italy 02、アーカンサス、コネチカット、ジョージア、LDT3、PL84084、ヴァリアント2又はブラジルから成る遺伝子型又は血清型のリストから選択されるIBVに由来する、項目1から14のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
16.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型又は血清型のリストから選択されるIBVに由来する、項目1から15のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
17.4/91株が、Spain/98/328、Spain/92/35、IR-3654-VM、FR-CR88061-88、FR-85131-85、UK-1233-95、UK/3/91、Spain/00/336、UK/7/91、4/91-病原性、4/91弱毒化、IB4-91及びCR88から成るリストから選択される、項目16に記載のIBV又は免疫原性組成物。
18.QX株が、FR-L1450T-05、FR-L1450L-05、NL-L1449T-04、NL-L1449K-04、IBV/Ck/SP/170/09、IBV/Ck/SP/79/08、IBV/Ck/SP/248/09、HBN、IBVQX、LX4、BJQ、CK/CH/LGD/03及びGB341/96から成るリストから選択される、項目16に記載のIBV又は免疫原性組成物。
19.Q1株が、CK/CH/LDL/98I、CK/CH/LSD/08-10、J2、Q1、AR08ER22、AR08BA21及びChile-295-10から成るリストから選択される、項目16に記載のIBV又は免疫原性組成物。
20.アーカンサス株が、Ark99、ArkGA、ArkDPI、AL/5364/00、ARKDPI11、AL/0803/01、AL/7149/00、ArkDPI101、AL/1221/01、AL/1793/01及びAL/4614/98から成るリストから選択される、項目16に記載のIBV又は免疫原性組成物。
【0056】
21.ヴァリアント2株が、IS/1494/06、IBV/Ck/EG/CU/4/2014、gammaCoV/Ck/Poland/G052/2016、Eg/CLEVB-2/IBV/012、D1344/2/4/10_EG、TR8及びIB VAR2-06から成るリストから選択される、項目16に記載のIBV又は免疫原性組成物。
22.ブラジル株が、BR-1、BR-2、23/2013及びIBV/Brasil/351/1984から成るリストから選択される、項目16に記載のIBV又は免疫原性組成物。
23.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが4/91遺伝子型又は血清型由来である、項目1から22のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
24.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:5又は6と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有する4/91遺伝子型又は血清型に由来するか、又は、当該異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:5又は6に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又は前記アミノ酸配列を含む、項目1から23のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
25.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:7又は8と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するQX遺伝子型又は血清型に由来するか、又は、異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:7又は8に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又は前記アミノ酸配列を含む、項目1から24のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
26.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:9又は10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するQ1遺伝子型又は血清型に由来するか、又は、当該異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:9又は10に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又は前記アミノ酸配列を含む、項目1から25のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
27.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:11又は12と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアーカンサス遺伝子型又は血清型に由来するか、又は、当該異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:11又は12に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又は前記アミノ酸配列を含む、項目1から26のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
28.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:13又は14と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するヴァリアント2遺伝子型又は血清型に由来するか、又は、異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:13又は14に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又は前記アミノ酸配列を含む、項目1から27のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
29.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:15又は16と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するブラジル遺伝子型又は血清型に由来するか、又は、異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:15又は16に示されるアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%又は99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか又は前記アミノ酸配列を含む、項目1から28のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
【0057】
30.異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16から成るリストから選択される、項目1から29のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
31.異種Sタンパク質が完全長スパイクタンパク質である、項目1から30のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
32.異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントが、少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する、項目1から31のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
33.異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントが、N-末端から少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する、項目1から32のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
34.異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントが少なくとも1000アミノ酸の長さを有する、項目1から33のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
35.異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントがスパイクタンパク質のエクトドメインである、項目1から34のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
36.同種Sタンパク質又はそのフラグメントが、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントに置換されている、項目1から35のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
37.天然に存在するSタンパク質又はそのフラグメントが、異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントに置換されている、項目1から36のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
38. H52 IBVの同種Sタンパク質又はそのフラグメントが異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントに置換されている、項目1から37のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
39.IBVが弱毒化されている、項目1から38のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
【0058】
40.IBVが不活化されている、項目1から39のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
41.IBVが遺伝的に操作されている、項目1から40のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
42.IBVが組換えIBVである、項目1から41のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
43.ワクチンである、項目2から42のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
44.医薬的に許容できる担体を含む、項目2から43のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
45.医薬的許容できる担体がリン酸緩衝生理食塩水である、項目44に記載の免疫原性組成物。
46.必要がある対象において、IBVによって引き起こされる臨床的徴候の治療及び/又は予防で有効である、項目2から45のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
47.異種スパイクタンパク質の血清型のIBV株によるチャレンジに対して防御する、項目2から46のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
48.4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2又はブラジル遺伝子型の株によるチャレンジに対して防御する、項目2から47のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
49.4/91遺伝子型の株によるチャレンジに対して防御する、項目2から48のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
【0059】
50.一用量投与のために処方される、項目2から49のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
51.皮下に、筋肉内に、経口的に、in ovoで、スプレーを介して、飲料水を介して、又は点眼によって投与される、項目2から50のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
52.1から10 log10 EID50/用量のIBVを含む、項目2から51のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
53.2から5 log10 EID50/用量のIBVを含む、項目2から52のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
54.2から4 log10 EID50/用量のIBVを含む、項目2から53のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
55.項目1から54のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物を含むキット。
56.さらに鳥類の疾患の治療及び/又は予防のための指示書を含む、項目55に記載のキット。
57.さらに家禽の疾患の治療及び/又は予防のための指示書を含む、項目55に記載のキット。
58.さらにIB(伝染性気管支炎)の治療及び/又は予防のための指示書を含む、項目55に記載のキット。
59.対象を免疫する方法であって、項目2から54のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物をそのような対象に投与する工程を含む、前記方法。
【0060】
60.必要がある対象においてIBVによって引き起こされる臨床的徴候を治療又は予防する方法であって、項目2から54のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、前記方法。
61.必要がある対象において、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して繊毛静止を減少させる方法であって、項目2から54のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、前記方法。
62.対象を免疫する方法で使用される項目2から54のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物であって、前記免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、前記免疫原性組成物。
63.IBVによって引き起こされる臨床的徴候を必要がある対象において治療又は予防する方法で使用される項目2から54のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物であって、前記免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、前記免疫原性組成物。
64.必要がある対象において、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して繊毛静止を減少させる方法で使用される項目2から54のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物であって、前記免疫原性組成物の治療的に有効な量を当該対象に投与する工程を含む、前記免疫原性組成物。
65.対象が鳥類である、項目59から64のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
66.対象が家禽である、項目59から65のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
67.対象が、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ又はキジから成るリストから選択される、項目59から66のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
68.対象がニワトリである、項目59から67のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
69.免疫原性組成物が1回投与される、項目59から68のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
【0061】
70.免疫原性組成物が2用量以上で投与される、項目59から68のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
71.免疫原性組成物が、皮下に、筋肉内に、経口的に、in ovoで、スプレーを介して、飲料水を介して、又は点眼によって投与される、項目59から70のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
72.免疫原性組成物が点眼によって投与される、項目59から71のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
73.免疫原性組成物が1から10 log10 EID50/用量のIBVを含む、項目59から72のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
74.免疫原性組成物が2から5 log10 EID50/用量のIBVを含む、項目59から73のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
75.免疫原性組成物が2から4 log10 EID50/用量のIBVを含む、項目59から74のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
76.免疫原性組成物が、1週齢以内、3日齢以内、2日齢以内、又は1日齢以内に対象に投与される、項目59から75のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
77.免疫原性組成物が1日齢以内に対象に投与される、項目59から76のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
78.同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して、繊毛静止の予防若しくは減少、ラ音の予防若しくは減少、産卵低下の予防若しくは減少、腎臓障害の予防若しくは減少、水様下痢の予防若しくは減少、体重減の予防若しくは減少、より低いウイルス負荷、減少するウイルス排泄又は前記の組合せから成る群から選択される有効性パラメーターの改善をもたらす、項目59から77のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
79.治療又は予防が、同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して、繊毛静止の予防又は減少をもたらす、項目59から78のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
【0062】
80.治療又は予防が、同じ種の非処置コントロールグループの対象と比較して、腎臓障害の予防又は減少をもたらす、項目59から79のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
81.治療又は予防が、同じ種の非免疫コントロールグループの対象と比較して、産卵低下の予防又は減少をもたらす、項目59から80のいずれかの項目に記載の方法又は使用。
82.治療的使用のための、項目1から54のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
83.免疫原又はワクチンとしての使用のための、項目1から54のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
84.医薬としての使用のための、項目1から54のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物。
85.医薬の製造のための、項目1から54のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物の使用。
86.対象におけるIBV感染の治療及び/又は予防のための、項目1から54のいずれかの項目に記載のIBV又は免疫原性組成物の使用。
87.異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントをコードするH52 IBV(伝染性気管支炎ウイルス)を含む免疫原性組成物であって、前記H52 IBVがヌクレオキャプシド(N)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質又はメンブレン糖タンパク質(M)を含み、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、AY044185(配列番号:80)、AF352310(配列番号:81)、AF317210(配列番号:82)若しくはAF286185(配列番号:83)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有する配列を有し、かつ、当該異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型若しくは血清型のリストから選択されるか、又は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15若しくは16に示されるアミノ酸配列若しくは前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から選択されるか、又は当該異種Sタンパク質又はそのフラグメントが、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15若しくは16に示されるアミノ酸配列若しくは前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含む、前記免疫原性組成物。
88.異種Sタンパク質が完全長スパイクタンパク質である、項目87に記載の免疫原性組成物。
89.異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントがN-末端から少なくとも500、750、1000又は1077アミノ酸の長さを有する、項目87に記載の免疫原性組成物。
【0063】
90.異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントがスパイクタンパク質のエクトドメインである、項目87又は89に記載の免疫原性組成物。
91.IBVが弱毒化されている、項目87から90のいずれかの項目に記載の免疫原性組成物。
92.下記の工程を含む、対象のIBV感染の治療及び/又は予防のための免疫原性組成物の調製方法:
a.)スパイク(S)タンパク質、ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質又はメンブレン糖タンパク質(M)を含むH52 IBVを提供する工程であって、前記H52 IBVが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、AF352315(配列番号:79)、AY044185(配列番号:80)、AF352310(配列番号:81)、AF317210(配列番号:82)若しくはAF286185(配列番号:83)に示されるアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、又は前記アミノ酸配列から成るか若しくは前記アミノ酸配列を含む、前記工程;及び
b.)4/91、QX、Q1、アーカンサス、ヴァリアント2及びブラジルから成る遺伝子型若しくは血清型のリストから選択されるか、又は、配列番号:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15若しくは16に示されるアミノ酸配列若しくは前記アミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.95%、99.98%若しくは99.99%配列同一性を有するアミノ酸配列から選択される、異種Sタンパク質又はそのフラグメントを提供する工程;及び
c.)a.)のH52 IBVのスパイクタンパク質又はそのフラグメントを前記b)の異種S(スパイク)タンパク質又はそのフラグメントで置き換えて、異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有するH52 IBVを所持する工程;及び
d.)異種Sタンパク質又はそのフラグメントを有するH52 IBVを入手する工程;及び
e.)医薬的に許容できる担体を付加する工程。
93.当該異種S(スパイク)タンパク質のフラグメントがスパイクタンパク質のエクトドメインである、項目92に記載の方法。
94.医薬的に許容できる担体が、溶媒、分散媒体、コーティング、安定化剤、希釈剤、保存料、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、アジュバント、免疫刺激剤、及び前記の組合せから成る群から選択される、項目92又は93に記載の方法。
95.異種Sタンパク質が完全長のスパイクタンパク質である、項目92又は94のいずれかの項目に記載の方法。
【0064】
配列概覧
配列番号:1:H52 IBVスパイク(S)タンパク質。
配列番号:2:H52 IBVヌクレオキャプシド(N)タンパク質。
配列番号:3:H52 IBVエンベロープ(E)タンパク質。
配列番号:4:H52 IBV膜糖タンパク質(M)タンパク質。
配列番号:5及び6:4/91遺伝子型又は血清型の異種Sタンパク質又はフラグメント。
配列番号:7及び8:QX遺伝子型又は血清型の異種Sタンパク質又はフラグメント。
配列番号:9及び10:Q1遺伝子型又は血清型の異種Sタンパク質又はフラグメント。
配列番号:11及び12:アーカンサス遺伝子型又は血清型の異種Sタンパク質又はフラグメント。
配列番号:13及び14:ヴァリアント2遺伝子型又は血清型の異種Sタンパク質又はフラグメント。
配列番号:15及び16:ブラジル遺伝子型又は血清型の異種Sタンパク質又はフラグメント。
配列番号:17:IBV CR88スパイクの核酸コード配列。
配列番号:18:IBV H52スパイクエクトドメインの核酸コード配列。
配列番号:19:pUC57-s H52 rIBVドナープラスミド。
配列番号:20:IBV CR88スパイクエクトドメインの核酸コード配列。
配列番号:21:pUC57-s H52 rIBV CR88 S Ectoドナープラスミド。
配列番号:22から配列番号:77:プライマー。
配列番号:78:EU817497(H52 IBVヌクレオチド配列)。
配列番号:79:AF352315(H52 IBV Sタンパク質のアミノ酸配列)。
配列番号:80:AY044185(H52 IBV Nタンパク質のアミノ酸配列)。
配列番号:81:AF352310(H52 IBV Nタンパク質のアミノ酸配列)。
配列番号:82:AF317210(H52 IBV Eタンパク質のアミノ酸配列)。
配列番号:83:AF286185(H52 IBV Mタンパク質のアミノ酸配列)。
配列番号:84及び85:プライマー。
【0065】
実施例
下記実施例は、本発明の具体的な実施態様を例示するために下記に示される。これらの実施例は単なる例示であり、本発明の範囲又は根本原理を制限すると理解されてはならない。
【実施例0066】
H52スパイク又はスパイクエクトドメインのコード配列が異種スパイク又はスパイクエクトドメインのコード配列によって置換されている組換えIBV H52の作製
ドナープラスミドの構築
例示的に、H52スパイクエクトドメインのCR88エクトドメインによる置換を詳細に記載する:IBV CR88スパイクの核酸コード配列(配列番号:17)は市場の供給業者によって合成される。これを鋳型として用いて、Beurdenら(Beurden et al., Virol J. 2017;14(1):109)が記載したpUC57-s IBV-5-1b-S-SIR-3Tドナープラスミド中のIBV H52スパイクエクトドメイン核酸コード配列(配列番号:18)を置き換え、これを以降ではpUC57-s H52 rIBVドナープラスミド(配列番号:19)と称する。配列番号:19の塩基1717から4941を対応するIBV CR88スパイクエクトドメイン核酸コード配列(配列番号:20)で置き換える(配列番号:15の塩基55から3285にそれぞれ対応する)。これによってpUC57-s H52 rIBV CR88 S Ectoドナープラスミド(配列番号:21)が作製される(前記ドナープラスミドではIBV CR88スパイクエクトドメインが塩基1717から4947によってコードされる)。このために、H52スパイクコード配列に近い只一カ所の制限部位5’(EcoRV)及び3’(PmlI)を用いてpUC57-s H52 rIBVドナープラスミド(配列番号:19)を消化して当該プラスミドを線状化し、H52スパイク及びフランキング配列を取り除く。QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いて、H52スパイクコード配列を含まないpUC57-s IBV H52骨格に対応するバンドを精製する。CR88スパイクエクトドメイン核酸コード配列及びフランキングする5’及び3’IBV H52配列を、別々の3つのPCR反応でQ5(商標)ハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(NEB;プライマーについては表1参照)を用いて増幅する。PCR生成物をQIAquickゲル抽出(Qiagen)によって精製し、Gibsonアッセンブリーのために用いる。前記アッセンブリーでは、NEBuilder(商標)HiFi DNAアッセンブリークローニングキット(NEB)を当該キットのプロトコルにしたがって用いて、pUC57-s H52 rIBV CR88 S Ectoドナープラスミドが作製される。
【0067】
表1:pUC57-s H52 rIBV CR88 S EctoドナープラスミドアッセンブリーのためのPCR生成物を作製するためにNEBのNEBuilderオンラインツールを用いて設計され使用されたGibsonアッセンブリープライマー
【0068】
標的化RNA組換え及び組換えIBVのレスキュー
組換えIBVの作製のために、van Beurdenら(van Beurden et al., Virol J. 2017;14(1):109)が記載した標的化RNA組換えの方法を適用する。簡単に記せば、H52マウス化(m)IBVを記載のように作製する。H52 rIBV CR88 S Ectoの作製のために、LR7細胞にH52 mIBVを感染させ、pUC57-s H52 rIBV CR88 S Ectoドナープラスミドから生成されたin vitro転写物をエレクトロポレートし、続いて8日齢胚のSPFニワトリ卵(VALO BioMedia)に注射する。37.5℃、60%湿度で最大9日間インキュベートした後、全卵の尿膜腔液を別々にRNA単離後の組換えIBVのレスキューについて分析する。分析には、QIAampウイルスRNAミニキット(Qiagen)及びSuperScriptTM III One-Step RT-PCR系を、PlatinumTM Taq DNAポリメラーゼ(ThermoFisher)とともに用いる。H52 IBV 1ab及びCR88 IBV Sエクトドメインに結合するプライマーPO1323及びPO1729を用いる(組換えIBVには特異的であるがmIBVに対して特異的でない)(表2)。8日齢SPF卵における2ラウンドのエンドポイント希釈について、LR7細胞の最高希釈を接種した卵の陽性尿膜腔液を選別する。限界希釈サンプルから核酸単離を実施する。前記核酸単離では、MagMAXTMコア核酸精製キット(ThermoFisher)をKingFisherTM Duo Prime精製系(ThermoFisher)とともに用い、続いて上記に記載したRT-PCRによってrIBVの存在について分析する。二回目の限界希釈の後で、最高希釈接種卵のうちで陽性の被検尿膜腔液を10日齢胚のSPFニワトリ卵中での増殖に用いる。尿膜腔液をPBSで1:1000に希釈し、卵当たり100μLを注射する。接種後48時間で尿膜腔液を採集し、デブリから浄化して-80℃で保存する。ドナープラスミドに由来する配列を生成されたrIBVで確認するために、QiAampウイルスRNAミニキットを用いてウイルス核酸を単離し、続いて表3に列挙したプライマーを用いてSuperScript III One-Step RT-PCR、QIAquick PCR精製を実施し、その後で同じプライマーを用いてSanger配列決定を実施する(市場の供給業者によって実施される)。
【0069】
表1:レスキュー後の組換えIBV同定のためのプライマー
【0070】
表2:H52 rIBV CR88 S Ectoのドナー領域の配列確認のための配列決定プライマー
【0071】
H52組換えIBV(H52スパイク又はスパイクエクトドメインが別のIBV遺伝子型のスパイク又はスパイクエクトドメインのコード配列によって置換されている)の作製及び特徴付け
H52 rIBV CR88 S Ectoの作製について記載した方法と同じものを適用して、組換えH52 IBVを作製及び特徴付けする。前記組換えH52 IBVでは、スパイクコード配列(配列番号:19の塩基1663から5151)又はH52スパイクエクトドメインコード配列(配列番号:19の塩基1717から4941)は、表4に列挙される血清型又は遺伝子型のIBVスパイク又はスパイクエクトドメインのコード配列で置換されている。
【0072】
表3:異種スパイク又はスパイクエクトドメインを有するH52 rIBVドナープラスミドのGibsonアッセンブリーのために用いられるプライマー
表2及び表3のプライマーを種々の組換えウイルスの識別及び配列決定に用い、必要な場合にはそれぞれのスパイク配列に適合させる。