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特開2023-11655F*及びW質別のアルミニウム合金製品及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011655
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】F*及びW質別のアルミニウム合金製品及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/04 20060101AFI20230117BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
C22F1/04 A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 694B
C22F1/00 684C
C22F1/00 623
C22F1/00 685Z
C22F1/00 630A
C22F1/00 691A
C22F1/00 685A
C22F1/00 692Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022164902
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2020560267の分割
【原出願日】2019-05-14
(31)【優先権主張番号】62/671,677
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/753,442
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ブザンソン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・レヴラ
(72)【発明者】
【氏名】オード・セリーヌ・デポワ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・アール・ワグスタッフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルミニウム合金製品の製造方法を提供する。
【解決手段】方法は、熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、鋳造アルミニウム合金を加熱することと、鋳造アルミニウム合金を300℃~540℃の温度で熱間圧延して圧延製品を製造することと、10℃/s~500℃/sの焼入れ速度で、15℃~250℃の温度にまで圧延製品を焼入れすることと、圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を得ることと、アルミニウム合金製品を400℃~580℃の温度に加熱し、前記温度で5分以下維持することとを含んで成る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、
前記鋳造アルミニウム合金を加熱することと、
前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと、
約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で前記圧延製品を焼入れすることと、
前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を得ることと、
を含んで成る、方法。
【請求項2】
前記焼入れ速度は、約200℃/s~約1000℃/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼入れ速度は、約500℃/s~約1000℃/sである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼入れは、前記鋳造アルミニウム合金の熱間圧延直後または前記鋳造アルミニウム合金の熱間圧延中に実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記焼入れは、空気、水、油、水-油エマルション、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実施される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼入れ後に前記圧延製品を冷間圧延することをさらに含んで成る、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
焼なまし工程は実施されない、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理可能なアルミニウム合金は、2xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミニウム合金製品は、モノリシックアルミニウム合金製品またはクラッドアルミニウム合金製品を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金製品を400℃~580℃の温度に加熱し、前記アルミニウム合金製品を前記温度で5分以下維持することをさらに含んで成る、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記維持は、3分以下実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記維持は、1分以下実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記維持は、30秒以下実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱及び前記維持を実施するためのサイクル時間は、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも20%短い、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱及び前記維持を実施するための前記サイクル時間は、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも30%短い、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱及び前記維持を実施するための前記サイクル時間は、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも40%短い、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱及び前記維持を実施するための前記サイクル時間は、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも50%短い、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
400℃~580℃の温度での前記維持の後、前記アルミニウム合金製品を成形することをさらに含んで成る、請求項10~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、
任意に前記鋳造アルミニウム合金を加熱することと、
前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することであって、前記熱間圧延は、複数のスタンドを有して成る熱間圧延機で実施され、各スタンドに焼入れシステムが後続する、圧延製品を製造することと、
前記熱間圧延工程において前記複数のスタンドのうちの少なくとも1つのスタンドから出た前記圧延製品を約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で焼入れすることと、
必要に応じて前記圧延製品を冷間圧延することと、
前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を得ることと、
を含んで成る、方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法に従って製造されたアルミニウム合金製品であって、前記アルミニウム合金製品は、シートを含む、前記アルミニウム合金製品。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法に従って製造されたアルミニウム合金高温帯。
【請求項22】
前記アルミニウム合金高温帯は、前記熱間圧延の直後に焼入れされる、請求項21に記載のアルミニウム合金高温帯。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年5月15日に出願された米国仮出願第62/671,677号、及び2018年10月31日に出願された米国仮出願第62/753,442号の利益を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、アルミニウム合金、アルミニウム合金から調製された製品、及びそれを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
輸送(例えば、自動車)及び電子機器用途に使用するためのアルミニウム合金は、高強度で良好な成形特性を示すべきである。いくつかの場合では、アルミニウム合金の比較的低い成形性は、望ましい部品設計を得ることの困難性につながり得る。低い成形性はまた、破断またはシワに起因する製品不良を引き起こし得る。アルミニウム合金は高温で増大した成形性を示すため、これらの課題を克服するために自動車産業ではアルミニウム合金シートの熱間成形が使用されている。一般に、熱間成形は、高温で金属を変形させるプロセスである。熱間成形は、金属の可鍛性を最大化し得るが、その独自の課題を生み出し得る。例えば、加熱されたアルミニウム合金製品は、成形オペレーション中に低下した強度を示し得、低下した強度特性は、アルミニウム合金製品の冷却後も持続し得るので、加熱は、アルミニウム合金製品の機械的特質に悪影響を及ぼし得る。アルミニウム合金製品の加熱はまた、成形オペレーション中にアルミニウム合金部品の薄肉化の増大につながり得る。例えば、アルミニウム合金の加熱は、アルミニウム合金内での析出及び溶解プロセスを促進し、これは、アルミニウム合金の構造を変化させ、その機械的特性に悪影響を及ぼし得る再結晶及び粒成長につながり得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の包含される実施形態は、この概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって定義される。この概要は、本開示の様々な態様の高レベルの概説であり、以下の詳細な説明の項でさらに説明される概念の一部を導入する。この概要は、特許請求された主題の主要なまたは必須の特徴を特定することは意図されておらず、特許請求された主題の範囲を決定するために孤立して使用されることも意図されていない。主題は、本開示の明細書全体、あらゆる図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本明細書には、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、熱処理可能なアルミニウム合金(例えば、2xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxのシリーズのアルミニウム合金、7xxxのシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金)を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、鋳造アルミニウム合金を均質化することと、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと、約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で圧延製品を焼入れすることと、圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を提供することと、を含む、方法が開示されている。いくつかの場合では、焼入れ速度は、約200℃/s~約1000℃/s(例えば、約500℃/s~約1000℃/s)である。焼入れは、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延した直後に実施され得る。焼入れは、空気、水、油、水-油エマルション、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実施され得る。アルミニウム合金製品は、モノリシックアルミニウム合金製品またはクラッドアルミニウム合金製品であり得る。
【0006】
アルミニウム合金製品を製造する方法は、焼入れ後に圧延製品を冷間圧延することをさらに含み得る。任意に、焼なまし工程は実施されない。任意に、方法は、アルミニウム合金製品を約400℃~約580℃の温度に加熱することと、アルミニウム合金製品をその温度で約5分以下(例えば、約3分以下、約1分以下、または約30秒以下)維持することとをさらに含み得る。いくつかの場合では、加熱及び維持を実施するためのサイクル時間は、熱間圧延工程の後に圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも約20%短い(例えば、熱間圧延工程の後に圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも約30%短い、少なくとも約40%短い、少なくとも約50%短い)。方法は、約400℃~約580℃の温度での維持の後、アルミニウム合金製品を成形(forming)することをさらに含み得る。
【0007】
また、本明細書には、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、任意に鋳造アルミニウム合金を加熱することと、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することであって、その熱間圧延は、複数のスタンドを含む熱間圧延機で実施され、各スタンドに焼入れシステムが後続する、製造することと、熱間圧延工程において複数のスタンドのうちの少なくとも1つのスタンドから出た圧延製品を約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で焼入れすることと、任意に圧延製品を冷間圧延することと、圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を提供することと、を含む、方法が記載されている。
【0008】
また、本明細書に記載の方法に従って調製されたアルミニウム合金製品であって、アルミニウム合金製品が、シートを含む、アルミニウム合金製品が本明細書に記載されている。
【0009】
さらに本明細書には、熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、鋳造アルミニウム合金を均質化することと、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと、約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で圧延製品を焼入れすることと、圧延製品を巻回してアルミニウム合金高温帯を提供することと、を含む方法に従って調製されたアルミニウム合金高温帯である。任意に、アルミニウム合金高温帯は、熱間圧延の直後に焼入れされる。
【0010】
さらなる態様、対象、及び利点は、後に続く非限定的な例の詳細な説明を考慮すると明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書に記載の比較用アルミニウム合金加工方法の熱履歴を示すグラフである。
図2】本明細書に記載のアルミニウム合金加工方法の熱履歴を示すグラフである。
図3】本明細書に記載のアルミニウム合金加工方法の熱履歴を示すグラフである。
図4】本明細書に記載のアルミニウム合金加工方法の熱履歴を示すグラフである。
図5】比較用方法に従って及び本明細書に記載の方法に従って加工されたアルミニウム合金の降伏強度を示すグラフである。
図6】比較用方法に従って及び本明細書に記載の方法に従って加工されたアルミニウム合金の降伏強度を示すグラフである。
図7】比較用方法に従って及び本明細書に記載の方法に従って加工されたアルミニウム合金の破断前伸びを示すグラフである。
図8】本明細書に記載の比較用方法に従って加工されたアルミニウム合金の粒構造を示す顕微鏡写真である。
図9】本明細書に記載の方法に従って加工されたアルミニウム合金の粒構造を示す顕微鏡写真である。
図10】本明細書に記載の方法に従って加工されたアルミニウム合金の粒構造を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書には、アルミニウム合金、より具体的には、熱処理可能なアルミニウム合金を加工するための方法であって、そのような合金を高強度かつ高度に成形可能な製品に成形する時間及び費用の効率を改善する方法が記載されている。その方法は、アルミニウム合金製品を下流の熱加工(例えば、塗装焼付けプロセス)に供する際にその製品の特性を改善する焼入れ技術を含む。焼入れ技術は、熱間圧延後、熱間圧延機上で鋳造アルミニウム合金材料に対して実施されて、溶体化したアルミニウム合金材料が製造される。そのようにして得られた材料は、F*質別にあると称される。代替的に、焼入れ技術は、鋳造アルミニウム合金材料が鋳造アルミニウム合金材料の溶体化温度を超える温度であるときに開始され、急速に実施される。そのように得られる材料は、W質別にあると称される。F*またはW質別のアルミニウム合金製品は、従来の方法と比較した場合、熱間成形するのにより少ないエネルギーを必要とし得る。例えば、F*またはW質別のアルミニウム合金製品を熱間成形するエンドユーザーは、F*またはW質別のアルミニウム合金製品を熱間成形するために約5%~約20%少ないエネルギーを使用し得る。いくつかの場合では、そのアルミニウム合金は、熱間成形温度を超える温度ではなく、熱間成形温度に加熱され得るので、アルミニウム合金製品を熱間成形温度に加熱することは、より少ない時間及びより少ない費用を必要とし得る。このように、その後のアルミニウム合金製品の熱間成形温度への冷却は必要とされない。また、F*またはW質別の材料はすでに溶体化されているので、その方法は、F*またはW質別の材料を供給しない方法によって必要とされるように、アルミニウム合金製品を熱間成形温度で長期間(例えば、15分以上)加熱して製品をさらに溶体化することを必要としない。よって、本明細書に記載の方法は、所望の形状に効率的に熱間成形され得る優れたF*またはW質別の材料を製造する。
【0013】
定義及び説明:
本明細書で使用される場合、「発明」、「その発明」、「この発明」及び「本発明」という用語は、本特許出願の主題及び以下の特許請求の範囲のすべてを広く指すことが意図されている。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載の主題を制限するものでも、以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を制限するものでもないことが理解されるべきである。
【0014】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈が別段明らかに指示していない限り、単数及び複数の参照を含む。
【0015】
本明細書において、「7xxx」及び「シリーズ」などの、AA番号及び他の関連する記号によって識別される合金に対する言及がなされる。アルミニウム及びその合金を命名及び識別するために最も一般的に使用されている番号記号システムの理解のために、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」(いずれもThe Aluminum Associationによって発行されている)を参照されたい。
【0016】
本出願では、合金の質別または状態に対する言及がなされる。最も一般的に使用されている合金質別の記述の理解のために、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F状態または質別は、製作されたままのアルミニウム合金を指す。本明細書で使用される場合、F*質別は、熱間処置(例えば、熱間圧延、押し出し、鍛造、または引き抜き)され、溶体化状態のままで直ちに焼入れされ、任意に冷間処置された熱処理可能なアルミニウム合金を指す。W状態または質別は、アルミニウム合金のソルバス温度を超える温度で溶体化熱処理され、次いで焼入れされたアルミニウム合金を指す。O状態または質別は、焼なまし後のアルミニウム合金を指す。本明細書でH質別とも称されるHxx状態または質別は、熱処理(例えば、焼なまし)の有無にかかわらず、冷間圧延後の熱処理可能ではないアルミニウム合金を指す。好適なH質別には、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9質別が含まれる。T1状態または質別は、熱間処置から冷却され、(例えば、常温で)自然時効させたアルミニウム合金を指す。T2状態または質別は、熱間処置から冷却され、冷間処置され、自然時効させたアルミニウム合金を指す。T3状態または質別は、溶体化熱処理され、冷間処置され、自然時効させたアルミニウム合金を指す。T4状態または質別は、溶体化熱処理され、自然時効させたアルミニウム合金を指す。T5状態または質別は、熱間処置から冷却され、(高温で)人工時効させたアルミニウム合金を指す。T6状態または質別は、溶体化熱処理され、人工時効させたアルミニウム合金を指す。T7状態または質別は、溶体化熱処理され、人工過時効させたアルミニウム合金を指す。T8x状態または質別は、溶体化熱処理され、冷間処置され、人工時効させたアルミニウム合金を指す。T9状態または質別は、溶体化熱処理され、人工時効させ、冷間処置されたアルミニウム合金を指す。W状態または質別は、溶体化熱処理後のアルミニウム合金を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、プレートは一般に、約15mmを超える厚さを有する。例えば、プレートは、約15mmを超え、約20mmを超え、約25mmを超え、約30mmを超え、約35mmを超え、約40mmを超え、約45mmを超え、約50mmを超え、または約100mmを超える厚さを有するアルミニウム製品を指し得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、シェート(シートプレートとも称される)は一般に、約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、シェートは、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmの厚さを有し得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、シートは一般に、約4mm未満の厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm、または約0.3mm未満(例えば、約0.2mm)の厚さを有し得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含み得る。
【0021】
本明細書に開示されるすべての範囲は、そこに含まれるあらゆる副次的範囲を包含するものと理解されたい。例えば、「1~10」という記載範囲は、最小値1と最大値10との間の(それらを含む)任意の及びすべての副次的範囲、すなわち、1以上の最小値から始まり(例えば、1~6.1)、かつ10以下の最大値で終わる(例えば、5.5~10)すべての副次的範囲を含むと考えられるべきである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製品」、「鋳造製品」、「鋳造アルミニウム合金製品」などの用語は、互換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、二重ベルト鋳造機、二重ロール鋳造機、二重ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法によって製造された製品を指す。
【0023】
作製方法
本明細書には、F*またはW質別のアルミニウム合金製品を作製する方法が開示されている。F*質別は、熱間圧延後のアルミニウム合金製品を急速に焼入れすることによって達成される。W質別は、アルミニウム合金製品が溶体化温度を超える温度にある間に、熱間圧延後または熱間圧延中にアルミニウム合金製品を急速に焼入れすることによって達成される。上述したように、F*またはW質別で提供されるアルミニウム合金製品により、エンドユーザーは、比較用方法より少ない時間を使用し、より少ないエネルギーを必要とするアルミニウム合金のさらなる加工(例えば、高温での成形)をすることが可能となる。所定の例では、アルミニウム合金を熱間成形する比較用方法は、アルミニウム合金を約460℃~約480℃の温度に加熱し、その温度を約5分~約15分の期間維持して、アルミニウム合金を溶体化することを含み得る。加熱後、アルミニウム合金は、次いで約440℃~約480℃の熱間成形温度に冷却され得る。いくつかの非限定的な例では、熱間圧延後に例示的な焼入れを採用し、F*またはW質別のアルミニウム合金製品を提供することは、アルミニウム合金を熱間成形温度を超える温度に加熱すること、アルミニウム合金を熱間成形温度を超える温度でソーキングすること、またはアルミニウム合金を熱間成形温度に冷却することの必要性を排除し得る。
【0024】
本明細書に記載の方法で使用するための好適なアルミニウム合金は、熱処理可能なアルミニウム合金を含む。例えば、本明細書に記載の方法で使用するためのアルミニウム合金は、2xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、及び/または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含み得る。
【0025】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金記号のうちの1つに従う2xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る:AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199。
【0026】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金記号のうちの1つに従う6xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る:AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092。
【0027】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金記号のうちの1つに従う7xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る:AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099。
【0028】
任意に、アルミニウム合金は、以下のアルミニウム合金記号のうちの1つに従う8xxxシリーズのアルミニウム合金であり得る:AA8024、AA8090、AA8091、またはAA8093。
【0029】
いくつかの例では、本明細書に記載の方法で使用するための合金は、モノリシック合金である。他の例では、本明細書に記載の方法で使用するための合金は、コア層及び1つまたは2つのクラッド層を有するクラッドアルミニウム合金製品である。コア層は、本明細書に記載されるような2xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金から調製され得る。クラッド層は、それぞれ独立して、2xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金から調製され得る。
【0030】
鋳造
本明細書に記載の合金は、当業者に知られているような鋳造方法を使用して鋳造され得る。例えば、鋳造プロセスは、直接チル(DC)鋳造プロセスを含み得る。任意に、DC鋳造アルミニウム合金製品(例えば、インゴット)は、後続の加工の前に皮剥ぎ(scalped)され得る。任意に、鋳造プロセスは、連続鋳造(CC)プロセスを含み得る。次いで、鋳造アルミニウム合金製品は、さらなる加工工程に供され得る。1つの非限定的な例では、加工方法は、均質化、熱間圧延、及び焼入れを含む。いくつかの場合では、加工工程は、所望により、冷間圧延をさらに含む。任意に、焼なまし工程は、本明細書に記載の方法では実施されない。
【0031】
A.DC鋳造アルミニウム合金の加工
均質化
均質化工程は、本明細書に記載の合金組成物から調製されたインゴットなどの鋳造アルミニウム合金製品を、約、または少なくとも約500℃(例えば、少なくとも約520℃、少なくとも約530℃、少なくとも約540℃、少なくとも約550℃、少なくとも約560℃、少なくとも約570℃、または少なくとも約580℃)のピーク金属温度(PMT)を達成するように加熱することを含み得る。例えば、インゴットは、約520℃~約580℃、約530℃~約575℃、約535℃~約570℃、約540℃~約565℃、約545℃~約560℃、約530℃~約560℃、または約550℃~約580℃の温度に加熱され得る。いくつかの場合では、PMTまでの加熱速度は、約100℃/時以下、約75℃/時以下、約50℃/時以下、約40℃/時以下、約30℃/時以下、約25℃/時以下、約20℃/時以下、または約15℃/時以下であり得る。他の場合では、PMTまでの加熱速度は、約10℃/分~約100℃/分(例えば、約10℃/分~約90℃/分、約10℃/分~約70℃/分、約10℃/分~約60℃/分、約20℃/分~約90℃/分、約30℃/分~約80℃/分、約40℃/分~約70℃/分、または約50℃/分~約60℃/分)であり得る。
【0032】
次いで鋳造アルミニウム合金製品は、所定期間ソーキングされる(すなわち、指示された温度で保持される)。1つの非限定的な例によれば、鋳造アルミニウム合金製品は、最大で約18時間(例えば、約30分~約18時間(両端含む))ソーキングされ得る。例えば、鋳造アルミニウム合金製品は、少なくとも約500℃の温度で約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、もしくは約18時間、またはこれらの間の任意の時間ソーキングされ得る。
【0033】
熱間圧延
均質化工程に続いて、熱間圧延工程が実施される。特定の場合では、鋳造アルミニウム合金製品は、約370℃~約540℃の熱間圧延機入口温度を有する熱間圧延機で熱間圧延される。熱間圧延機入口温度は、例えば、約370℃、約375℃、約380℃、約385℃、約390℃、約395℃、約400℃、約405℃、約410℃、約415℃、約420℃、約425℃、約430℃、約435℃、約440℃、約445℃、約450℃、約455℃、約460℃、約465℃、約470℃、約475℃、約480℃、約485℃、約490℃、約495℃、約500℃、約505℃、約510℃、約515℃、約520℃、約525℃、約530℃、約535℃、または約540℃であり得る。特定の場合では、熱間圧延機出口温度は、約250℃~約380℃(例えば、約330℃~約370℃)の範囲であり得る。例えば、熱間圧延機出口温度は、約255℃、約260℃、約265℃、約270℃、約275℃、約280℃、約285℃、約290℃、約295℃、約300℃、約305℃、約310℃、約315℃、約320℃、約325℃、約330℃、約335℃、約340℃、約345℃、約350℃、約355℃、約360℃、約365℃、約370℃、約375℃、または約380℃であり得る。いくつかの非限定的な例では、熱間圧延は、圧延製品(例えば、アルミニウム合金高温帯)を提供する。
【0034】
特定の場合では、アルミニウム合金高温帯は、約1mm~約15mm(例えば、約4mm~約12mm)の厚さ(すなわち、ゲージ)を有し得る。例えば、約1mmのゲージ、約2mmのゲージ、約3mmのゲージ、約4mmのゲージ、約5mmのゲージ、約6mmのゲージ、約7mmのゲージ、約8mmのゲージ、約9mmのゲージ、約10mmのゲージ、約11mmのゲージ、約12mmのゲージ、約13mmのゲージ、約14mmのゲージ、約15mmのゲージ、またはこれらの間の任意のゲージを有するアルミニウム合金高温帯が提供され得る。特定の場合では、アルミニウム合金高温帯は、約15mmを超える厚さのゲージを有し得る。
【0035】
熱間圧延後の焼入れ
熱間圧延工程の後、焼入れ工程が実施される。「焼入れする」という用語は、本明細書で使用される場合、アルミニウム合金製品(例えば、アルミニウム合金高温帯)の温度を急速に低下させることを含み得る。焼入れ工程では、アルミニウム合金製品は、液体(例えば、水、油、または水-油エマルション)及び/または気体(例えば、空気)または別の選択された焼入れ媒体で焼入れされる。焼入れ工程は、最終熱間圧延の通過前に、または最終熱間圧延の通過直後に(例えば、熱間圧延機を出るアルミニウム合金高温帯に)実施され得る。上述したように、焼入れ工程をこの手法で実施することは、予想外の特性を有するアルミニウム合金製品を提供し得る。また、熱間圧延機を出るアルミニウム合金高温帯を焼入れすることは、熱間圧延機を出るアルミニウム合金高温帯を焼入れする工程を採用しない方法と比較して、後続の高温での成形のために準備されるより少ないエネルギーを必要とするアルミニウム合金製品を提供し得る。
【0036】
いくつかの非限定的な例では、焼入れは、約10℃/秒(℃/s)~約1000℃/s(例えば、約20℃/s~約1000℃/s、約50℃/s~約900℃/s、約100℃/s~約800℃/s、約200℃/s~約700℃/s、約250℃/s~約600℃/s、または約300℃/s~約550℃/s)の速度で実施され得る。例えば、焼入れは、約10℃/s、約15℃/s、約20℃/s、約25℃/s、約30℃/s、約35℃/s、約40℃/s、約45℃/s、約50℃/s、約55℃/s、約60℃/s、約65℃/s、約70℃/s、約75℃/s、約80℃/s、約85℃/s、約90℃/s、約95℃/s、約100℃/s、約150℃/s、約200℃/s、約250℃/s、約300℃/s、約350℃/s、約400℃/s、約450℃/s、約500℃/s、約550℃/s、約600℃/s、約650℃/s、約700℃/s、約750℃/s、約800℃/s、約850℃/s、約900℃/s、約950℃/s、約1000℃/s、またはこれらの間の任意の速度で実施され得る。いくつかの態様では、アルミニウム合金高温帯は、アルミニウム合金製品の温度を約250℃~約室温の温度に低下させるように焼入れされ得る。例えば、アルミニウム合金高温帯は、約250℃、約240℃、約230℃、約220℃、約210℃、約200℃、約190℃、約180℃、約170℃、約160℃、約150℃、約140℃、約130℃、約120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約70℃、約60℃、約50℃、約40℃、約30℃、約20℃、約15℃、またはこれらの間の任意の温度に焼入れされ得る。
【0037】
任意の加工工程:冷間圧延工程
特定の態様では、アルミニウム合金高温帯は、熱間圧延工程の後の焼入れの後、かつ任意の後続の工程の前(例えば、巻回工程の前及び/または成形、コーティング、塗装焼付けなどを含む、エンドユーザーによって実施される任意の工程の前)にさらなる加工に供され得る。さらなる加工工程は、薄いゲージのアルミニウム合金製品(例えば、約0.2mm~約4.0mm)を提供するために、アルミニウム合金高温帯のゲージをさらに縮小させるための冷間圧延工程、またはアルミニウム合金高温帯のゲージを縮小させるための任意の他の好適な冷間処置工程を含み得る。例えば、薄いゲージのアルミニウム合金製品は、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1.0mm、約1.5mm、約2.0mm、約2.5mm、約3.0mm、約3.5mm、または約4.0mmのゲージを有するシートまたはシェートであり得る。
【0038】
最終ゲージ及び巻回
本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、任意の好適なゲージを有し得る。上述したように、製品は、シート(例えば、およそ0.20mm以上約4.0mm未満)、シェート(例えば、およそ4.0mm~約15.0mm)、またはプレート(例えば、およそ15.0mmを超える)などの様々なサイズ及び厚さに鋳造及び加工され得るが、他の厚さ及び範囲も同様に使用され得る。いくつかの例では、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、中間ゲージ(例えば、所望により、顧客またはエンドユーザーによってさらに縮小されるゲージ)で顧客またはエンドユーザーに提供され、供給され得る。いくつかの例では、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、最終ゲージで顧客またはエンドユーザーに提供され、供給され得る。アルミニウム合金製品は、製造ラインの終点に集められて、アルミニウム合金巻回物を形成し得る。
【0039】
B.連続鋳造アルミニウム合金の加工
鋳造後の加熱
連続鋳造機(例えば、二重ベルト鋳造機、二重ロール鋳造機、二重ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機)を出た後、鋳造アルミニウム合金製品は、炉内に投入され得る。いくつかの場合では、鋳造アルミニウム合金製品を炉内に投入することは、鋳造アルミニウム合金製品の幅にわたって温度を平衡化し得る。例えば、鋳造アルミニウム合金製品は、連続鋳造機を出るとき、鋳造アルミニウム合金製品の中央部で第1の温度を有し得、鋳造アルミニウム合金製品の1つ以上の端部で第2の温度を有し得る。さらに、鋳造アルミニウム合金製品は、鋳造アルミニウム合金製品の中央部から鋳造アルミニウム合金製品の少なくとも1つの端部まで広がる温度勾配を有し得る。いくつかの場合では、鋳造アルミニウム合金製品は、連続鋳造機を出るとき、鋳造アルミニウム合金製品の幅にわたって複数の温度を含む任意の熱的プロファイルを有し得る。よって、鋳造アルミニウム合金製品を連続鋳造機を出た後に炉内に投入することは、鋳造アルミニウム合金製品の熱的プロファイルを平衡化し得る。
【0040】
鋳造アルミニウム合金製品を炉内に投入すると、鋳造アルミニウム合金製品が加熱される。鋳造アルミニウム合金製品を加熱することは、鋳造アルミニウム合金製品を熱間圧延のために調製し得る。いくつかの場合では、鋳造アルミニウム合金製品を熱間圧延のために加熱することは、鋳造アルミニウム合金製品を約370℃~約540℃の温度に加熱することを含む。熱間圧延機入口温度は、例えば、約370℃、約375℃、約380℃、約385℃、約390℃、約395℃、約400℃、約405℃、約410℃、約415℃、約420℃、約425℃、約430℃、約435℃、約440℃、約445℃、約450℃、約455℃、約460℃、約465℃、約470℃、約475℃、約480℃、約485℃、約490℃、約495℃、約500℃、約505℃、約510℃、約515℃、約520℃、約525℃、約530℃、約535℃、または約540℃であり得る。
【0041】
任意に、鋳造アルミニウム合金製品を加熱することは、鋳造アルミニウム合金製品を溶体化し得る。鋳造アルミニウム合金製品を溶体化することは、鋳造アルミニウム合金製品を約、または少なくとも約450℃(例えば、少なくとも約460℃、少なくとも約470℃、少なくとも約480℃、少なくとも約490℃、少なくとも約500℃、少なくとも約510℃、少なくとも約520℃、少なくとも約530℃、少なくとも約540℃、少なくとも約550℃、少なくとも約560℃、少なくとも約570℃、または少なくとも約580℃)のPMTに加熱することによって実施され得る。例えば、鋳造アルミニウム合金製品は、約520℃~約580℃、約530℃~約575℃、約535℃~約570℃、約540℃~約565℃、約545℃~約560℃、約530℃~約560℃、または約550℃~約580℃の温度に加熱され得る。
【0042】
加熱された鋳造アルミニウム合金製品は、任意に、炉を出た後に焼入れされ、上述したように、最終ゲージまたは中間ゲージまで熱間圧延され得る。いくつかの場合では、熱間圧延機は、最終スタンドの後を含む各スタンドの下流に任意の焼入れシステムを有する複数のスタンドを有し得る。熱間圧延機における各スタンド後の(例えば、熱間圧延工程における複数のスタンドのうちの少なくとも1つのスタンドから出るとき)の焼入れは、約10℃/秒(℃/s)~約1000℃/s(例えば、約20℃/s~約1000℃/s、約50℃/s~約900℃/s、約100℃/s~約800℃/s、約200℃/s~約700℃/s、約250℃/s~約600℃/s、または約300℃/s~約550℃/s)の焼入れ速度で実施され得る。例えば、焼入れは、約10℃/s、約15℃/s、約20℃/s、約25℃/s、約30℃/s、約35℃/s、約40℃/s、約45℃/s、約50℃/s、約55℃/s、約60℃/s、約65℃/s、約70℃/s、約75℃/s、約80℃/s、約85℃/s、約90℃/s、約95℃/s、約100℃/s、約150℃/s、約200℃/s、約250℃/s、約300℃/s、約350℃/s、約400℃/s、約450℃/s、約500℃/s、約550℃/s、約600℃/s、約650℃/s、約700℃/s、約750℃/s、約800℃/s、約850℃/s、約900℃/s、約950℃/s、約1000℃/s、またはこれらの間の任意の速度で実施され得る。いくつかの態様では、アルミニウム合金製品は、アルミニウム合金製品の温度を約300℃~約室温の温度に低下させるように焼入れされ得る。例えば、アルミニウム合金製品は、約300℃、約290℃、約280℃、約270℃、約260℃、約250℃、約240℃、約230℃、約220℃、約210℃、約200℃、約190℃、約180℃、約170℃、約160℃、約150℃、約140℃、約130℃、約120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約70℃、約60℃、約50℃、約40℃、約30℃、約20℃、約15℃、またはこれらの間の任意の温度に焼入れされ得る。いくつかの非限定的な例では、熱間圧延は、圧延製品(例えば、アルミニウム合金高温帯)を提供する。
【0043】
任意の加工工程:冷間圧延工程
特定の態様では、アルミニウム合金高温帯は、熱間圧延工程の後の焼入れの後、かつ任意の後続の工程の前(例えば、巻回工程の前及び/または成形、コーティング、塗装焼付けなどを含む、エンドユーザーによって実施される任意の工程の前)にさらなる加工に供され得る。さらなる加工工程は、薄いゲージのアルミニウム合金製品(例えば、約0.2mm~約4mm)を提供するために、アルミニウム合金高温帯のゲージをさらに縮小させるための冷間圧延工程、またはアルミニウム合金高温帯のゲージを縮小させるための任意の他の好適な冷間処置工程を含み得る。例えば、薄いゲージのアルミニウム合金製品は、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約2.5mm、約3mm、約3.5mm、または約4mmのゲージを有するシートまたはシェートであり得る。いくつかの場合では、冷間圧延工程は、アルミニウム合金高温帯のゲージを縮小させて、中間ゲージのアルミニウム合金製品(例えば、約4mmを超え約15mm以下)を提供し得る。例えば、中間ゲージのアルミニウム合金製品は、約4mm超、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmのゲージを有するシェートであり得る。いくつかの場合では、複数の冷間処置工程が実施されて、アルミニウム合金のゲージを縮小させ得る。例えば、第1の冷間圧延工程は、中間ゲージのアルミニウム合金製品を提供するために実施され得、第2の冷間圧延工程は、いくつかの場合では、第2の中間ゲージのアルミニウム合金製品及び/または最終ゲージのアルミニウム合金製品を提供するために中間ゲージのアルミニウム合金製品のゲージをさらに縮小させるために実施され得る。
【0044】
圧延アルミニウム合金の特性
本明細書に記載されるように、DC鋳造合金の場合は熱間圧延後にアルミニウム合金を焼入れすること、またはCC合金の場合は熱間圧延中に焼入れすることは、成形プロセス(例えば、熱間成形及び/または温間成形)の前の急速加熱工程のために最適化された微細構造を有するアルミニウム合金を提供する。特定の態様では、最適化された微細構造は、熱間成形温度に加熱され、その後、熱間成形温度での長いソーキング期間を伴わずに熱間成形され得るアルミニウム合金を提供する。例えば、比較用F質別で提供されるアルミニウム合金は、熱間成形温度(例えば、約480℃)に加熱され、熱間成形温度で約60秒間ソーキングされる。逆に、例えば、F*質別で提供される、本明細書に記載の方法に従って加工されたアルミニウム合金は、熱間成形温度に加熱され、その後、60秒よりも短い期間(例えば、30秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、または5秒以下)またはソーキングなしで熱間成形され得、これは本明細書では、成形工程へのフラッシュ加熱と称される。
【0045】
いくつかの非限定的な例では、F*質別のアルミニウム合金を提供し、成形工程へのフラッシュ加熱を実施することは、驚くべき機械的特性を示すアルミニウム合金を提供し得る。例えば、本明細書に記載の方法に従ってアルミニウム合金を提供することは、F質別で提供され、熱間成形温度に加熱され、成形前にソーキングされるアルミニウム合金と比較した場合、増大した降伏強度を有するアルミニウム合金を提供し得る。特定の態様では、降伏強度は、最大で約400MPa増大し得る。例えば、降伏強度は、約50MPa、約60MPa、約70MPa、約80MPa、約90MPa、約100MPa、約110MPa、約120MPa、約130MPa、約140MPa、約150MPa、約160MPa、約170MPa、約180MPa、約190MPa、約200MPa、約210MPa、約220MPa、約230MPa、約240MPa、約250MPa、約260MPa、約270MPa、約280MPa、約290MPa、約300MPa、約310MPa、約320MPa、約330MPa、約340MPa、約350MPa、約360MPa、約370MPa、約380MPa、約390MPa、または約400MPa増大し得る。
【0046】
いくつかの非限定的な例では、アルミニウム合金が溶体化温度(すなわち、ソルバス温度)を超える温度にあり、かつ十分な速度(例えば、約10℃/秒(℃/s)~約1000℃/s)で実施されるときに焼入れ工程を開始することは、W質別のアルミニウム合金を提供し得る。
【0047】
下流加工工程:成形
アルミニウム合金製品(例えば、アルミニウム合金高温帯または薄いゲージのアルミニウム合金製品)は、成形プロセスに供され得る。成形プロセスに供されているアルミニウム合金製品は、「出発製品」または「出発材料」と呼ばれ得る。いくつかの例では、成形プロセスのための出発材料には、アルミニウム合金高温帯、薄いゲージのアルミニウム合金製品、F*質別またはW質別で提供されるチューブ、パイプ、プロファイル、及び他のものが含まれる。成形プロセスは、任意の熱処理可能なアルミニウム合金製品に使用され得る。記載されたプロセスで出発材料として使用され得るアルミニウム合金製品は、所望のゲージで、例えば、自動車部品の製造に好適なゲージで、平面形態で製造され得る。
【0048】
アルミニウム合金巻回物は、記載されたプロセスの実施前に展開または平坦化され得る。いくつかの例では、製品は、予め成形され得るか、または記載されたプロセスに従って成形する前に他の手順、プロセス、及び工程に供され得る。例えば、アルミニウム合金高温帯または薄いゲージのアルミニウム合金製品は、前駆体アルミニウム合金製品または「ブランク」と称される形態、例えば、刻印のための前駆体を意味する「刻印ブランク」に切断することによって分割され得る。ブランクまたは刻印ブランクは、記載されたプロセスに従って処理され得る製品の中に含まれる。任意に、製品は、後に成形され得るか、または記載されたプロセスに従って成形した後に他の手順、プロセス、及び工程に供され得る。
【0049】
製品は、1つ以上の成形工程を使用して最終形状に成形され得る。製品は、記載されたプロセスの後に、成形後熱処理またはコーティングに供され得る。別の例では、製品は、その強度を増大させるために時効され得る。記載されたプロセスを実施する過程で製造された、成形製品と称され得るアルミニウム合金製品は、本開示の範囲内に含まれる。
【0050】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品を成形することは、アルミニウム合金製品を加熱し、任意に製品をその温度で所定期間維持することを含む。加熱温度、加熱速度、及び/またはそれらの範囲は、「加熱パラメータ」と称される。熱間成形プロセスでは、アルミニウム合金製品は、約400℃~約580℃、約410℃~約570℃、約420℃~約560℃、約430℃~約550℃、約440℃~約540℃、約450℃~約530℃、約460℃~約520℃、約480℃~約510℃、または約490℃~約500℃の温度に加熱され得る。例えば、アルミニウム合金製品は、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃、約510℃、約520℃、約530℃、約540℃、約550℃、約560℃、約570℃、または約580℃の温度に加熱され得る。
【0051】
アルミニウム合金製品は、約3℃/s~約90℃/s、約10℃/s~約90℃/s、約20℃/s~約90℃/s、約30℃/s~約90℃/s、約40℃/s~約90℃/s、約50℃/s~約90℃/s、約60℃/s~約90℃/s、約70℃/s~約90℃/s、または約80℃/s~約90℃/sの加熱速度で加熱され得る。いくつかの例では、約90℃/sの加熱速度が採用される。他の例では、約3℃/sの加熱速度が採用される。いくつかの例では、約3℃/s~約100℃/s、約3℃/s~約110℃/s、約3℃/s~約120℃/s、約3℃/s~約150℃/s、約3℃/s~約160℃/s、約3℃/s~約170℃/s、約3℃/s~約180℃/s、約3℃/s~約190℃/s、または約3℃/s~約200℃/sの加熱速度が採用され得る。他の例では、約90℃/s~約150℃/sの加熱速度が採用され得る。他の例では、約200℃/s~約600℃/sの加熱速度が採用され得る。例えば、約200℃/s、約250℃/s、約300℃/s、約350℃/s、約400℃/s、約450℃/s、約500℃/s、約550℃/s、または約600℃/sの加熱速度が採用され得る。当業者は、シートまたは他の製品の所望の特性に応じて、利用可能な機器で加熱速度を調節し得る。
【0052】
加熱プロセスでは様々な加熱パラメータが採用され得る。一例では、約400℃~約580℃の温度まで約90℃/sの加熱速度が採用される。別の例では、約410℃~約550℃の温度まで約90℃/sの加熱速度が採用される。さらに別の例では、約420℃~約525℃の温度まで約90℃/sの加熱速度が採用される。別の例では、約400℃~約580℃の温度まで約3℃/sの加熱速度が採用される。別の例では、約420℃~約525℃の温度まで約3℃/sの加熱速度が採用される。これらの例は、本明細書に記載の異なる温度及び加熱速度を限定するのではなく、例示的な目的のためだけに提供される。
【0053】
また、温間成形プロセスでは、アルミニウム合金製品は、約250℃~約400℃、約260℃~約390℃、約270℃~約380℃、約280℃~約370℃、約270℃~約360℃、約280℃~約350℃、約290℃~約340℃、約300℃~約330℃、または約310℃~約320℃の温度に加熱され得る。例えば、アルミニウム合金製品は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、または約400℃の温度に加熱され得る。
【0054】
加熱パラメータは、アルミニウム合金またはアルミニウム合金製品の特性の所望の組み合わせなどの様々な要因に基づいて選択される。上記の温度及び温度範囲は、「加熱される」温度を表すために使用される。記載されたプロセスでは、加熱プロセスは、「加熱される」温度が達成されるまで製品(例えば、シート)に適用される。すなわち、「加熱される」温度は、成形工程の前にアルミニウム合金製品が加熱される温度である。「加熱される」温度は、適切な加熱プロセスによって成形工程中に維持され得るか、または加熱プロセスは、成形工程の前に停止され得、この場合、成形工程中のアルミニウム合金製品の温度は、特定される「加熱される」温度よりも低い場合がある。アルミニウム合金製品の温度は、適切な手順及び機器によってモニターされてもよいし、モニターされなくてもよい。例えば、温度がモニターされていない場合、「加熱される」温度は、計算された温度及び/または実験的に推論された温度であり得る。
【0055】
加熱速度は、アルミニウム合金製品を加熱するための適切な熱処理、加熱プロセス、またはシステムを選択することによって達成され得る。一般に、採用される加熱プロセスまたはシステムは、上記で特定された加熱速度を達成するのに十分なエネルギーを供給すべきである。例えば、加熱は、誘導加熱によって達成され得る。採用され得る加熱プロセスのいくつかの他の非限定的な例は、接触加熱、抵抗加熱、赤外線放射加熱、ガスバーナーによる加熱、及び直接抵抗加熱である。一般に、加熱システム及びプロトコルの設計及び最適化は、熱流を管理するため、及び/またはアルミニウム合金製品の所望の特徴を達成するために実施され得る。
【0056】
アルミニウム合金製品は、熱間成形プロセスにおいて、約5分以下(例えば、約4分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、約30秒以下、または約10秒以下)の期間、約400℃~約580℃の温度で維持され得る(すなわち、ソーキングされ得る)。いくつかの場合では、アルミニウム合金製品は、温間成形プロセスにおいて、約5分以下(例えば、約4分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、約30秒以下、または約10秒以下)の期間、約250℃以上約400℃未満の温度でソーキングされ得る。任意に、ソーキング工程は実施されない(例えば、上述したようなフラッシュ加熱工程が実施される)。特定の態様では、ソーキング工程は、アルミニウム合金の強度に影響を及ぼさない(例えば、人工時効が生じない)ほどの十分な時間で実施される。
【0057】
本明細書に記載されるような熱間成形のための加熱及び維持工程は、サイクル時間と称される。成形のためのサイクル時間は、本明細書に記載の方法以外の方法(すなわち、熱間圧延工程の後に圧延製品を焼入れすることを含まない方法)に従って調製されたアルミニウム合金製品を熱間成形するのに必要なサイクル時間よりも少なくとも20%短い。いくつかの場合では、サイクル時間は、熱間圧延工程の後に圧延製品を焼入れすることを含まない方法に従って調製されたアルミニウム合金製品を熱間成形するのに必要なサイクル時間よりも少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%短い。次いで、上述したような成形が実施され得る。
【0058】
所定の態様では、本明細書に記載の成形する方法(例えば、熱間成形及び/または温間成形)及び/または後続の熱加工(例えば、塗装焼付け、成形後熱処理、焼なまし、または任意の他の好適な熱処理)は、T4、T5、T6、T8、またはT9質別のアルミニウム合金を提供し得る。また、本明細書に記載の方法は、分散質を欠いたアルミニウム合金を提供し得る。例えば、熱間圧延直後にアルミニウム合金を焼入れすること(例えば、上述したようなDCルート)及び/または熱間圧延中にアルミニウム合金を焼入れすること(例えば、上述したようなCCルート)は、分散質形成元素がアルミニウムマトリックス内に析出して分散質を形成する高温でアルミニウム合金が滞留するのに不十分な時間を提供する。例えば、アルミニウム合金中に存在するTi、Sc、Zr、Cr、V、Hf、及び/またはErは、熱間圧延直後に焼入れすることによって及び/または熱間圧延中に焼入れすることによって溶体化状態で凍結され得る。いくつかの場合では、Ti、Sc、Zr、Cr、V、Hf、及び/またはErは、本明細書に記載のアルミニウム合金中には存在せず、分散質の形成をさらに阻止する。
【0059】
使用方法
本明細書に記載の質別で提供される開示されるアルミニウム合金製品は、熱間成形されたアルミニウム製品(例えば、熱間成形された自動車構造部材)などのアルミニウム合金製品の製造のための既存のプロセス及びラインに組み込まれ、これによりプロセス及び得られる製品を合理化された経済的な手法で改善し得る。成形プロセスを実施し、本明細書に記載の製品を製造するためのシステム及び方法は、本開示の範囲内に含まれる。
【0060】
記載されたプロセスは、有利には、自動車製造、トラック製造、船舶及びボートの製造、列車の製造、飛行機及び宇宙船の製造を含むがこれらに限定されない輸送産業において採用され得る。自動車部品のいくつかの非限定的な例には、フロアパネル、後壁、ロッカー、モーターフード、フェンダー、ルーフ、ドアパネル、Bピラー、ボディサイド、ロッカー、または衝撃部材が含まれる。本明細書で使用される「自動車」という用語及び関連用語は、自動車に限定されず、様々な車両分類、例えば、自動車、車、バス、バイク、船舶、オフハイウェイ車両、軽トラック、トラック、またはローリーを含む。しかしながら、アルミニウム合金製品は、自動車部品に限定されず、本出願に記載のプロセスに従って製造された他の種類のアルミニウム製品が想定される。例えば、記載されたプロセスは、有利には、武器、工具、電子装置の本体、ならびに他の部品及び装置を含む、機械的及び他の装置または機構の様々な部品の製造に採用され得る。
【0061】
好適な方法及び製品の例示
例示1は、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、前記鋳造アルミニウム合金を均質化することと、前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと、約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で前記圧延製品を焼入れすることと、前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を提供することと、を含む、前記方法である。
【0062】
例示2は、前記焼入れ速度が、約200℃/s~約1000℃/sである、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0063】
例示3は、前記焼入れ速度が、約500℃/s~約1000℃/sである、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0064】
例示4は、前記焼入れが、前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延した直後に実施される、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0065】
例示5は、前記焼入れが、空気、水、油、水-油エマルション、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実施される、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0066】
例示6は、前記焼入れ後に前記圧延製品を冷間圧延することをさらに含む、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0067】
例示7は、焼なまし工程が実施されない、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0068】
例示8は、前記熱処理可能なアルミニウム合金が、2xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0069】
例示9は、前記アルミニウム合金製品が、モノリシックアルミニウム合金製品またはクラッドアルミニウム合金製品を含む、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0070】
例示10は、前記アルミニウム合金製品を約400℃~約580℃の温度に加熱し、前記アルミニウム合金製品を前記温度で約5分以下維持することをさらに含む、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0071】
例示11は、前記維持が、約3分以下実施される、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0072】
例示12は、前記維持が、約1分以下実施される、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0073】
例示13は、前記維持が、約30秒以下実施される、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0074】
例示14は、前記加熱及び前記維持を実施するためのサイクル時間が、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも約20%短い、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0075】
例示15は、前記加熱及び前記維持を実施するための前記サイクル時間が、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも約30%短い、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0076】
例示16は、前記加熱及び前記維持を実施するための前記サイクル時間が、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも約40%短い、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0077】
例示17は、前記加熱及び前記維持を実施するための前記サイクル時間が、前記熱間圧延工程の後に前記圧延製品を焼入れすることなく調製されたアルミニウム合金製品のサイクル時間よりも少なくとも約50%短い、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0078】
例示18は、約400℃~約580℃の温度での前記維持の後、前記アルミニウム合金製品を成形することをさらに含む、任意の先行または後続の例示の方法である。
【0079】
例示19は、アルミニウム合金製品を製造する方法であって、熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、任意に前記鋳造アルミニウム合金を加熱することと、前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することであって、前記熱間圧延は、複数のスタンドを含む熱間圧延機で実施され、各スタンドに焼入れシステムが後続する、前記製造することと、前記熱間圧延工程において前記複数のスタンドのうちの少なくとも1つのスタンドから出た前記圧延製品を約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で焼入れすることと、任意に前記圧延製品を冷間圧延することと、前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を提供することと、を含む、前記方法である。
【0080】
例示20は、任意の先行または後続の例示の方法に従って調製されたアルミニウム合金製品であって、前記アルミニウム合金製品が、シートを含む、前記アルミニウム合金製品である。
【0081】
例示21は、熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、前記鋳造アルミニウム合金を均質化することと、前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと、約10℃/s~約1000℃/sの焼入れ速度で前記圧延製品を焼入れすることと、前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金高温帯を提供することと、を含む方法に従って調製されたアルミニウム合金高温帯である。
【0082】
例示22は、前記アルミニウム合金高温帯が、前記熱間圧延の直後に焼入れされる、任意の先行の例示のアルミニウム合金製品である。
【0083】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、同時に、そのいかなる限定も構成するものではない。それどころか、その様々な実施形態、改変、及び均等物に頼ることができ、これらは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者にそれら自体を示唆し得ることを明確に理解されたい。
【実施例0084】
実施例1:加工方法
図1は、上述した比較用加工方法の熱履歴を示すグラフである。アルミニウム合金を加熱工程110で熱間圧延温度120に加熱し、期間130ソーキングする。次いでアルミニウム合金を熱間圧延工程140で熱間圧延し、冷却工程150で冷却し、これによりF質別のアルミニウム合金を提供する。任意に、冷間圧延工程160を採用してアルミニウム合金のゲージをさらに縮小させる。製造後(時間範囲A)、F質別のアルミニウム合金は、エンドユーザーに供給され、そこでアルミニウム合金は、例えば、熱間成形を含むさらなる加工工程(時間範囲B)を受け得る。
【0085】
アルミニウム合金を熱間成形する比較用方法では、アルミニウム合金を加熱工程170で熱間成形温度以上の温度、例えば、約460℃~約480℃に加熱する。次いでアルミニウム合金を期間180(例えば、約5分~約15分)ソーキングし、その後、熱間成形工程190で熱間成形する。いくつかの場合では、期間180ソーキングした後、アルミニウム合金を熱間成形温度に冷却し、これによってより長い加工時間を必要とする。
【0086】
図2は、上述した例示的な加工方法の熱履歴を示すグラフである。アルミニウム合金を加熱工程210で熱間圧延温度220に加熱し、期間230ソーキングする。次いでアルミニウム合金を熱間圧延工程240で熱間圧延し、焼入れ工程250で焼入れし、これによりF*質別のアルミニウム合金を提供する。冷間圧延工程260を任意に採用してアルミニウム合金のゲージをさらに縮小させる。製造後(時間範囲A)、F*質別のアルミニウム合金は、エンドユーザーに供給され、そこでアルミニウム合金は、例えば、熱間成形を含むさらなる加工工程(時間範囲C)を受け得る。F*質別のアルミニウム合金を供給することは、時間及びエネルギーを含むエンドユーザーの加工要件の縮小をさらに提供する。
【0087】
例示的なF*質別のアルミニウム合金を熱間成形する方法では、アルミニウム合金を加熱工程270で熱間成形温度におおよそ等しい温度、例えば、約400℃~約450℃に加熱する。したがって、例示的なF*質別のアルミニウム合金は、いかなるソーキング時間も必要とせず、熱間成形工程280で直ちに熱間成形され得る。よって、例示的なF*質別のアルミニウム合金を提供することは、アルミニウム合金を熱間成形温度を超える温度に加熱すること、アルミニウム合金を熱間成形温度を超える温度でソーキングすること、及び/またはアルミニウム合金が熱間成形温度を超える温度に加熱することを必要とした場合はアルミニウム合金を熱間成形温度に冷却することの必要性を排除する。
【0088】
実施例2.実験室試験
鋳造、均質化、及び熱間圧延を含む上述の方法に従って7xxxシリーズのアルミニウム合金(AA7075)を調製して、10.5mmのゲージを有するアルミニウム合金高温帯を提供した。アルミニウム合金高温帯からサンプル(すなわち、高温帯サンプル)を採取し、さらに加工して、本明細書に記載の方法を評価した。高温帯サンプルを3つの異なる加工ルートに従ってさらに加工した:(a)本明細書に記載のF*質別のアルミニウム合金の完全スケールの製造を模倣するための加工ルート(「ルートA」と称される)(b)最終ゲージ(例えば、2ミリメートル(mm))までさらに熱間圧延することを含む加工ルート(「ルートB」と称される)及び(c)熱間圧延後に最終ゲージまで冷間圧延することを含む比較用ルート(「ルートC」と称される)。
【0089】
F*質別への加工を模倣するルートAは、実験室でさらに熱間圧延して高温帯サンプルを熱間圧延後の冶金状態に戻すことを含んだ。次いで高温帯サンプルを480℃の温度で30分間溶体化し、水で焼入れし、直ちに最終ゲージまで冷間圧延し、中間W質別のサンプルを提供した。図3は、ルートAに従って加工されたサンプルの熱履歴を示すグラフである。高温帯サンプルを加熱工程310で溶体化温度320(例えば、480℃)に加熱し、30分間維持し、続いて焼入れ工程330で焼入れした。次いで高温帯サンプルを冷間圧延工程340で最終ゲージ(すなわち、シートゲージ)まで冷間圧延した。
【0090】
アルミニウム合金高温帯を最終ゲージまで熱間圧延することを模倣するルートBは、実験室で熱間圧延して高温帯サンプルを熱間圧延後の冶金状態に戻し、480℃の温度で30分間溶体化し、さらに熱間圧延して最終ゲージを達成することを含んだ。図4は、ルートBに従って加工されたサンプルの熱履歴を示すグラフである。高温帯サンプルを加熱工程410で溶体化温度420(例えば、480℃)に加熱し、30分間維持し、続いて熱間圧延工程430で熱間圧延し、空気焼入れ工程440で空気で焼入れした。
【0091】
ルートCは、高温帯サンプルを最終ゲージまで冷間圧延することを含んだ。ルートCは、本明細書に記載の方法を採用することの利点を示す、アルミニウム合金サンプルを加工するための比較用方法である。
【0092】
ルートA、B、及びCからの製品の最終ゲージは同じであった。最終ゲージを達成した後、各サンプルを様々な溶体化プロセスに供して、上述した熱間成形プロセスを模倣した。溶体化プロセスは、(i)サンプルを約20℃/sの速度で420℃に加熱し、直ちに焼入れすることと、(ii)サンプルを約22℃/sの速度で460℃に加熱し、直ちに焼入れすることと、(iii)サンプルを約23℃/sの速度で480℃に加熱し、直ちに焼入れすることと、(iv)サンプルを約23℃/sの速度で480℃に加熱し、この温度を60秒間維持し、続いて焼入れすることとを含んだ。比較用プロセスとして、本明細書に記載のF*質別のアルミニウム合金に必要とされる熱間成形温度(例えば、熱間成形が、少なくとも約480℃の代わりに最大で約460℃にアルミニウム合金を加熱することによって実施され得る)を超える温度で熱間成形を実施した溶体化プロセス(iv)を採用した。また、溶体化プロセス(iv)は、標準的な方法に従って加工されたアルミニウム合金に必要とされる溶体化温度を60秒間維持すること(すなわち、ソーキングすること)を含んだ。
【0093】
溶体化による熱間成形プロセスを模倣した後、サンプルを120℃に加熱し、この温度で24時間維持することによってT6質別まで人工時効させた。図5は、T6質別での降伏強度(「T6での最終Rp[MPa]」と称される)に対する、本明細書に記載の方法に従ってアルミニウム合金を加工することの効果を示すグラフである。ルートA(各群における左のヒストグラム)、ルートB(各群における中央のヒストグラム)、及びルートC(各群における右のヒストグラム)に従って加工されたサンプルを様々な模倣熱間成形プロセスに供し、引張試験により評価した。図5に示されるように、本明細書に記載の方法に従って加工され、最大で480℃の温度での模倣熱間成形プロセスに供されたサンプルは、比較用方法(ルートC)に従って加工されたサンプルよりも大きな降伏強度を示した。よって、本明細書に記載の方法を採用してF*質別のアルミニウム合金を提供することは、アルミニウム合金の機械的特性に悪影響を及ぼすことなく、製造後の加工(例えば、成形)に関連する費用を削減し得る。
【0094】
また、本明細書に記載の方法に従って加工されたサンプルは、図5におけるヒストグラムの右の群(「480℃60秒ソーキング(参照プロセス)」と称される)に示されているように、標準的なT6質別の実務(アルミニウム合金が熱間成形温度に加熱され、成形前にその温度で少なくとも60秒間維持される)に従って調製及び加工されたアルミニウム合金と同等の降伏強度を達成した。よって、本明細書に記載されるように、F*質別のアルミニウム合金を提供することにより、エンドユーザー(例えば、相手先ブランド製造者(original equipment manufacturer))は、アルミニウム合金部品を、強度を犠牲にすることなく、低下した温度及び削減された時間で熱間成形することが可能となり得る。
【0095】
実施例3:フラッシュ加熱実験室試験
F*質別のアルミニウム合金を提供することは、F質別で提供されるアルミニウム合金と比較した場合、増大した強度を示すアルミニウム合金を提供する。引張試験のために6つのアルミニウム合金サンプルを調製した。比較用アルミニウム合金サンプルの第1の組をF質別で提供し(「標準F」と称される)、アルミニウム合金サンプルの第2の組をF*質別で提供し(「Fアスタリスク+0%CW」と称される)、アルミニウム合金サンプルの第3の組をF*質別で提供し、冷間圧延に供して80%のゲージ縮小を達成した(「Fアスタリスク+80%CW」と称される)。各組のサンプルについて、第1のサンプルを熱間成形温度に加熱すること及び60秒間ソーキングすることに供し、第2のサンプルを420℃に加熱することによるフラッシュ加熱に供し、熱間成形前にソーキングしなかった。サンプルを熱間成形温度に加熱し、変形工程が必要とするであろう期間(例えば、最大で約5秒、最大で約4秒、最大で約3秒、最大で約2秒、最大で約1秒、最大で約0.5秒、またはそれらの間の任意の秒数)ソーキングし、焼入れすることによって実施される熱間成形模倣工程にすべてのサンプルを供した。次いでサンプルを上述の方法に従って最終的なT6質別まで人工時効させた。図6に示されるように、熱間成形温度に加熱すること及びソーキングすることに供されたすべてのサンプル(各組における左のヒストグラム、「完全溶体化」と称される)は、約500MPa~約520MPaの降伏強度を示した。フラッシュ加熱工程(「成形温度へのフラッシュ加熱」と称される)に供されたサンプルは、様々な降伏強度を示した。比較用標準Fアルミニウム合金サンプルは、模倣成形後に約120MPaの有意により低い降伏強度を示した。驚くべきことに、Fアスタリスク+0%CWアルミニウム合金サンプルは、約470MPa(例えば、F質別のアルミニウム合金よりも約350MPa高い)の降伏強度を示した。また、Fアスタリスク+80%CWアルミニウム合金は、標準Fアルミニウム合金よりも高い(例えば、約430MPa、すなわち、F質別のアルミニウム合金よりも310MPa高い)降伏強度を示した。
【0096】
上述したT6質別のアルミニウム合金サンプル(標準F、Fアスタリスク+0%CW、及びFアスタリスク+80%CW)を引張試験にも供して破断前伸びを分析した。図7に示されるように、熱間成形温度に加熱すること及びソーキングすることに供されたすべてのサンプル(各組における左のヒストグラム、「完全溶体化」と称される)は、約8%~10%の範囲の同等の破断前伸びを示した。フラッシュ加熱工程(「成形温度へのフラッシュ加熱」と称される)に供されたサンプルは、様々な破断前伸びを示した。比較用標準Fアルミニウム合金サンプルは、加工後に有意により高い破断前伸びを示した(例えば、約13%)。Fアスタリスク+0%CWアルミニウム合金サンプルは、約9%の破断前伸びを示し、Fアスタリスク+80%CWアルミニウム合金サンプルは、約6%の破断前伸びを示した。よって、F*質別のアルミニウム合金を提供することは、熱間成形プロセスを最適化し、破断前伸びの有意な損失を伴わずに高い強度のアルミニウム合金を提供し得る。
【0097】
図8~10は、本明細書に記載の方法によって提供される様々な粒構造を示している。上述した熱間成形されたアルミニウム合金サンプル(標準F、Fアスタリスク+0%CW、Fアスタリスク+80%CW)を粒構造分析に供した。比較用標準Fアルミニウム合金は、図8に示されるように、微細で等軸の粒構造を示した。Fアスタリスク+0%CWアルミニウム合金は、図9に示されるように、せん断帯を有する繊維状の粒構造を示した。Fアスタリスク+80%CWアルミニウム合金サンプルは、図10に示されるように、繊維状の粒構造を示した。せん断帯を有する繊維状の粒構造及び/または繊維状の粒構造を有するF*質別で提供されるアルミニウム合金(Fアスタリスク+0%CW及びFアスタリスク+80%CW)は、熱間成形工程中に亀裂が生じなかった。よって、F*質別で提供されるアルミニウム合金は、熱間成形温度に加熱し、ソーキングすることなく、熱間成形に適する高い強度のアルミニウム合金である。本明細書に記載されるようなアルミニウム合金は、有益には、削減された時間で実施され得る最適化された熱間成形プロセスに供され得、その結果、エネルギー消費量が減少し、費用が減少する。
【0098】
上記で引用したすべての特許、刊行物、及び抄録は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の達成において記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理を例示するに過ぎないことが認識されるべきである。それらの多数の改変及び適応は、以下の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者に容易に明らかになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、
前記鋳造アルミニウム合金を加熱することと、
前記鋳造アルミニウム合金を300℃~540℃の温度で熱間圧延して圧延製品を製造することと、
10℃/s~500℃/sの焼入れ速度で、15℃~250℃の温度にまで前記圧延製品を焼入れすることと、
前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を得ることと、
前記アルミニウム合金製品を400℃~580℃の温度に加熱し、前記アルミニウム合金製品を前記温度で5分以下維持すること
を含んで成る、方法。
【請求項2】
前記焼入れ速度は、200℃/s~500℃/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼入れは、前記鋳造アルミニウム合金の熱間圧延直後または前記鋳造アルミニウム合金の熱間圧延中に実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼入れは、空気、水、油、水-油エマルション、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実施される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記焼入れ後および前記巻回前に前記圧延製品を冷間圧延することをさらに含んで成る、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
焼なまし工程は実施されない、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理可能なアルミニウム合金は、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルミニウム合金製品は、モノリシックアルミニウム合金製品またはクラッドアルミニウム合金製品を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記維持は、3分以下実施される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記維持は、1分以下実施される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記維持は、30秒以下実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
400℃~580℃の温度での前記維持の後、前記アルミニウム合金製品を成形することをさらに含んで成る、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アルミニウム合金製品を製造する方法であって、
熱処理可能なアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、
任意に前記鋳造アルミニウム合金を加熱することと、
前記鋳造アルミニウム合金を300℃~540℃の温度で熱間圧延して圧延製品を製造することであって、前記熱間圧延は、複数のスタンドを有して成る熱間圧延機で実施され、各スタンドに焼入れシステムが後続する、圧延製品を製造することと、
前記熱間圧延工程において前記複数のスタンドのうちの少なくとも1つのスタンドから出た前記圧延製品を10℃/s~500℃/sの焼入れ速度で、15℃~250℃の温度にまで焼入れすることと、
必要に応じて前記圧延製品を冷間圧延することと、
前記圧延製品を巻回してアルミニウム合金製品を得ることと、
前記アルミニウム合金製品を400℃~580℃の温度に加熱し、前記アルミニウム合金製品を前記温度で5分以下維持することと
を含んで成る、方法。
【外国語明細書】