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▶ カルシメディカ,インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116577
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】膵炎処置
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/04 20060101AFI20230815BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C07D417/04 CSP
A61K31/506
A61K31/444
A61P1/18
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091769
(22)【出願日】2023-06-02
(62)【分割の表示】P 2021138203の分割
【原出願日】2016-02-26
(31)【優先権主張番号】62/126,386
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510064462
【氏名又は名称】カルシメディカ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】べリセレビ,ゴナル
(72)【発明者】
【氏名】スタウダーマン,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ダン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルース,ジャック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カルシウムシグナル伝達の薬学的操作による膵炎の改善に関連する化合物を提供する。
【解決手段】ヒトの膵炎の症状を改善するための医薬の製造における化合物の使用であって、前記化合物が、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、又はN-(5-(7-クロロ)-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、又はその薬学的に許容される塩である、使用を提供する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの膵炎の症状を改善する方法であって、
膵炎の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、
前記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を前記ヒトに投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記症状は急性膵炎の症状である、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記症状は、膵臓の炎症と浮腫、背中への放散上腹部痛、背中への放散左上腹部痛、悪心、嘔吐、摂食により悪化する嘔吐、高い心拍数、頻脈、高い呼吸数、高血圧、血圧低下、脱水、腹部圧痛、発熱、悪寒、腹膜炎、血行動態不安定、および反射性の腸麻痺の少なくとも1つを含む、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記症状は重症急性膵炎の症状である、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記症状は、膵壊死と膵臓外の臓器の損傷の少なくとも1つを含む、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記症状は慢性膵炎の症状である、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記症状は、持続性腹痛、消化異常、脂肪の吸収不良、食物摂取中の疼痛、体重減少、血清アミラーゼ活性の上昇、血清リパーゼ活性の上昇、CRPの炎症マーカーの上昇、重炭酸塩産生の低下、糞便のエラスターゼレベルの上昇、血清トリプシノゲンレベルの上昇、膵臓の石灰化、血清ビリルビンレベルの上昇、およびアルカリホスファターゼレベルの上昇の少なくとも1つを含む、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記症状は、ESRレベルの上昇、IgG4レベルの上昇、リウマチ因子の増大、ANA抗体の存在、および、抗平滑筋抗体の存在の少なくとも1つを含む、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記症状は、脂肪便、100gの脂肪食での24時間にわたる7グラム以上の糞便または糞便脂肪排泄物のズダン化学染色、および、200μg/g未満の値の糞便サンプル中の糞便のエラスターゼの少なくとも1つを含む、請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記症状は、腹痛、血中アミラーゼレベルの増加、血液リパーゼレベルの増加、膵臓の拡大、悪心、嘔吐、内出血、腸麻痺、発熱、黄疸、体重減少、および心拍数の上昇の少なくとも1つを含む、請求項1-12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記症状は、アミラーゼの血中濃度の上昇を含む、請求項1-12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記症状は、リパーゼの血中濃度の上昇を含む、請求項1-12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記症状は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによる壊死の発見物を含む、請求項1-12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記症状は早熟な消化酵素活性化を含む、請求項1-12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記早熟な消化酵素活性化は前記ヒトの膵臓で生じる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
酵素はトリプシンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
膵臓障害のリスクのあるヒトにおける膵臓障害に関連した症状を予防または改善する方法であって、
前記方法は、
膵臓障害に関連する危険因子を抱えるヒトを特定する工程、および、
副作用を予防または改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化学名2,6-ジフルオロ-N-(1-(4-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-3-イル)ベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記膵臓障害は急性膵炎の症状を含む、請求項23-27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記膵臓障害は慢性膵炎の症状を含む、請求項23-27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
前記ヒトは、コルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピンの少なくとも1つの投与を含む、投薬レジメンを受けた結果として膵炎を患っている、請求項23-29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトは膵炎の遺伝型を抱えていると特定される、請求項23-29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
前記ヒトは、トリプシノゲンをコードするトリプシン1、トリプシン阻害剤をコードするSPINK1、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の少なくとも1つの変異対立遺伝子を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒトは、高血中カルシウム、低体温、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、膵管癒合不全、膵臓の先天性奇形、2型真性糖尿病、膵癌、膵管内結石、脈管炎、膵臓中の微小血管の炎症、コクサッキーウイルス感染、および、急性間欠性ポルフィリン症と赤芽球増殖性プロトポルフィリン症などのポルフィリン症の少なくとも1つに苛まされた結果として膵炎を患っている、請求項23-29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
前記ヒトの身体の健康状態は、胆石、エタノール中毒、アルコール中毒、外傷、ムンプス、自己免疫障害、サソリ刺傷、高脂血症、低体温、副甲状腺機能亢進症、および内視鏡的逆行性胆道膵管造影、アザチオプリン、およびバルプロ酸の少なくとも1つの影響を受けている、請求項23-29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
前記ヒトの身体の健康状態は、サイトメガロウィルス、B型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ムンプス、水痘-帯状疱疹ウイルス、レジオネラ菌、レプトスピラ属細菌、ミコプラズマ細菌、サルモネラ細菌、アスペルギルス属真菌、回虫寄生虫、クリプトスポリジウム細胞、およびトキソプラズマ属細胞の少なくとも1つの影響を受けている、請求項23-29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤と膵臓の活性に対する否定的な影響を有する少なくとも1つの薬物とを含む組成物。
【請求項37】
前記薬物は、コルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピン、アザチオプリン、およびバルプロ酸からなるリストから選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOC阻害剤である、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRAC阻害剤である、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項36-39のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項41】
膵臓の活性に対する否定的な影響に関連する薬物の個体への投与と、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤の投与を含む、投薬レジメン。
【請求項42】
前記薬物は、コルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピン、アザチオプリン、およびバルプロ酸からなるリストから選択される、請求項41に記載の投薬レジメン。
【請求項43】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOC阻害剤である、請求項41に記載の投薬レジメン。
【請求項44】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRAC阻害剤である、請求項41に記載の投薬レジメン。
【請求項45】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項41に記載の投薬レジメン。
【請求項46】
膵炎の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、前記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を前記ヒトに投与する工程を含む、ヒトの膵炎の症状の改善に使用される組成物。
【請求項47】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項46に記載の組成物。
【請求項51】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項46に記載の組成物。
【請求項52】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項46に記載の組成物。
【請求項53】
鎮痛薬をさらに含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項54】
前記鎮痛薬はオピエートを含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記鎮痛薬はモルヒネを含む、請求項53に記載の組成物。
【請求項56】
前記症状は急性膵炎の症状である、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項57】
前記症状は、膵臓の炎症と浮腫、背中への放散上腹部痛、背中への放散左上腹部痛、悪心、嘔吐、摂食により悪化する嘔吐、高い心拍数、頻脈、高い呼吸数、高血圧、血圧低下、脱水、腹部圧痛、発熱、悪寒、腹膜炎、血行動態不安定、および反射性の腸麻痺の少なくとも1つを含む、請求項46-56のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項58】
前記症状は重篤な膵炎の症状である、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項59】
前記症状は、膵壊死と膵臓外の臓器の損傷の少なくとも1つを含む、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項60】
前記症状は慢性膵炎の症状である、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項61】
前記症状は、持続性腹痛、消化異常、脂肪の吸収不良、食物摂取中の疼痛、体重減少、血清アミラーゼ活性の上昇、血清リパーゼ活性の上昇、CRPの炎症マーカーの上昇、重炭酸塩産生の低下、糞便のエラスターゼレベルの上昇、血清トリプシノゲンレベルの上昇、膵臓の石灰化、血清ビリルビンレベルの上昇、およびアルカリホスファターゼレベルの上昇の少なくとも1つを含む、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項62】
前記症状は、ESRレベルの上昇、IgG4レベルの上昇、リウマチ因子の増大、ANA抗体の存在、抗平滑筋抗体の存在、ヒトの慢性膵炎を特定し得る症状のいずれかのアッセイの少なくとも1つを含む、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項63】
前記症状は、脂肪便、100gの脂肪食での24時間にわたる7グラム以上の糞便または糞便脂肪排泄物のズダン化学染色、 および、200μg/g未満の値の糞便サンプル中の糞便のエラスターゼの少なくとも1つを含む、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項64】
前記症状は、腹痛、血中アミラーゼレベルの増加、血液リパーゼレベルの増加、膵臓の拡大、悪心、嘔吐、内出血、腸麻痺、発熱、黄疸、体重減少、および心拍数の上昇の少なくとも1つを含む、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項65】
前記症状は早熟な消化酵素活性化を含む、請求項46-55のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項66】
前記早熟な消化酵素活性化は前記ヒトの膵臓で生じる、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記酵素はトリプシンを含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項68】
膵臓障害に関連する危険因子を抱えるヒトを特定する工程、および、副作用を予防または改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程を含む、膵臓障害のリスクのあるヒトにおける膵臓障害に関連する症状の予防または改善に使用される組成物。
【請求項69】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項68に記載の組成物。
【請求項72】
前記膵臓障害は急性膵炎の症状を含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項73】
前記膵臓障害は慢性膵炎の症状を含む、請求項68-72のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項74】
前記ヒトはコルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピンの少なくとも1つの投与を含む投薬レジメンを受ける、請求項68-73のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項75】
ヒトは膵炎の遺伝型を抱えていると特定される、請求項68-73のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項76】
前記ヒトは、トリプシノゲンをコードするトリプシン1、トリプシン阻害剤をコードするSPINK1、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の少なくとも1つの変異対立遺伝子を有する、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
前記ヒトは、高血中カルシウム、低体温、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、膵管癒合不全、膵臓の先天性奇形、2型真性糖尿病、膵癌、膵管内結石、脈管炎、膵臓中の微小血管の炎症、コクサッキーウイルス感染、および、急性間欠性ポルフィリン症と赤芽球増殖性プロトポルフィリン症などのポルフィリン症の少なくとも1つに苛まされている、請求項68-73のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項78】
前記ヒトの身体の健康状態は、胆石、エタノール中毒、アルコール中毒、外傷、ムンプス、自己免疫障害、サソリ刺傷、高脂血症、低体温、副甲状腺機能亢進症、および内視鏡的逆行性胆道膵管造影、アザチオプリン、およびバルプロ酸の少なくとも1つの影響を受けている、請求項68-73のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項79】
前記ヒトの身体の健康状態は、サイトメガロウィルス、B型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ムンプス、水痘-帯状疱疹ウイルス、レジオネラ菌、レプトスピラ属細菌、ミコプラズマ細菌、サルモネラ細菌、アスペルギルス属真菌、回虫寄生虫、クリプトスポリジウム細胞、およびトキソプラズマ属細胞の少なくとも1つの影響を受けている、請求項68-73のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項80】
ヒトにおいてウイルス感染の症状を改善する方法であって、
ウイルス感染の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、
前記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を前記ヒトに投与する工程を含む、方法。
【請求項81】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項80に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
ウイルス感染は出血熱ウイルスである、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
前記症状は出血熱ウイルス症状である、請求項80-87のいずれか1つに記載の方法。
【請求項89】
前記症状は、発熱、出血性素因、顔面紅潮、胸部紅潮、点状出血、毛細管漏出、出血、膨潤、浮腫、低血圧、ショック、倦怠感、筋肉痛、頭痛、嘔吐、および、下痢の少なくとも1つを含む、請求項80-87のいずれか1つに記載の方法。
【請求項90】
前記症状は細胞ウイルスレベルの上昇を含む、請求項80-87のいずれか1つに記載の方法。
【請求項91】
Th17誘発性の疾患の症状を改善する方法であって、
Th17誘発性の疾患の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、
前記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を前記ヒトに投与する工程を含む、方法。
【請求項92】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する、請求項91に記載の方法。
【請求項97】
前記細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、
N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである、請求項91に記載の方法。
【請求項98】
前記症状は急性膵炎の症状である、請求項91-97のいずれか1つに記載の方法。
【請求項99】
前記症状は、発赤、腫脹、熱、疼痛、凝り、発熱、悪寒、疲労、頭痛、または食欲不振の少なくとも1つである、請求項91-97のいずれか1つに記載の方法。
【請求項100】
患者の前記症状が胴、腕、手、指、脚、足、つま先、頭、首、骨、関節、咽喉、洞、目、またはその組み合わせで生じる、請求項91-97のいずれか1つに記載の方法。
【請求項101】
Th17誘発性の疾患は炎症性疾患である、請求項91-97のいずれか1つに記載の方法。
【請求項102】
炎症性疾患は、枯草熱、歯周炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、または癌を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
Th17誘発性の疾患は自己免疫疾患である、請求項91-97のいずれか1つに記載の方法。
【請求項104】
自己免疫疾患は、関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、乾癬、シェーグレン症候群、リウマチ性多発生筋痛、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、脈管炎、または側頭動脈炎を含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
治療上有効な量の請求項7の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項106】
治療上有効な量の請求項23の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項107】
治療上有効な量の請求項40の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項108】
治療上有効な量の請求項45の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項109】
治療上有効な量の請求項52の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項110】
治療上有効な量の請求項71の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項111】
治療上有効な量の請求項86の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項112】
治療上有効な量の請求項97の化合物、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<相互参照>
本出願は、2015年2月27日に出願された米国仮特許出願62/126,386号の利益を主張するものであり、当該文献は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
急性膵炎は、米国における胃腸が理由の入院と主要なコスト負担の第一位の理由である。急性膵炎は、重篤な患者で10-25%の死亡率と全体で3-5%の死亡率を示している。この疾病の被害者が利用可能な治療法を改正した疾患はまだ存在しない。
【発明の概要】
【0003】
ヒトなどの哺乳動物において膵炎の症状を改善する方法に関連する実施形態が本明細書で提供される。他の実施形態では、ヒトなどの哺乳動物においてウイルス感染の症状を改善する方法が本明細書に記載されている。さらなる実施形態において、Tヘルパー17細胞(Th17)誘発性の炎症と自己免疫疾患の症状を改善する方法が本明細書に記載される。
【0004】
いくつかの実施形態では、該方法は、膵炎の症状の改善を必要とするヒトを特定し、上記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を上記ヒトに投与する工程を含む。他の実施形態では、該方法は、ウイルス性疾患の症状の改善を必要とするヒトを特定し、上記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を上記ヒトに投与する工程を含む。さらなる実施形態では、該方法は、Th17誘発性の疾患の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、上記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を上記ヒトに投与する工程を含む。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する。
【0005】
いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、以下の構造を有する化合物:
【0006】
【化1】
(まとめて、「化合物A」)、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの基からの構造を有する化合物、またはナノ粒子懸濁液あるいはエマルジョンを含むそのナノ粒子製剤である。
【0007】
いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、以下の化合物(まとめて「化合物A」):N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル) -3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、または、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミド、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグの中から選択される。いくつかの態様では、症状は急性膵炎の症状である。いくつかの態様において、症状は、膵臓の炎症と浮腫、背中への放散上腹部痛、背中への放散左上腹部痛、悪心、嘔吐、摂食により悪化する嘔吐、高い心拍数、頻脈、高い呼吸数、高血圧、血圧低下、脱水、腹部圧痛、発熱、悪寒、腹膜炎、血行動態不安定、および反射性の腸麻痺の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は重症急性膵炎の症状である。いくつかの態様では、症状は、膵壊死と膵臓外の臓器の損傷の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は慢性膵炎の症状である。いくつかの態様において、症状は、持続性腹痛、消化異常、脂肪の吸収不良、食物摂取中の疼痛、体重減少、血清アミラーゼ活性の上昇、血清リパーゼ活性の上昇、CRPの炎症マーカーの上昇、重炭酸塩産生の低下、糞便のエラスターゼレベルの上昇、血清トリプシノゲンレベルの上昇、膵臓の石灰化、血清ビリルビンレベルの上昇、およびアルカリホスファターゼレベルの上昇、の少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、症状は、ESRレベルの上昇、IgG4レベルの上昇、リウマチ因子の増大、ANA抗体の存在、抗平滑筋抗体の存在、ヒトの慢性膵炎を特定し得る症状のいずれかのアッセイの少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は、脂肪便、100gの脂肪食での24時間にわたる7グラム以上の糞便または糞便脂肪排泄物のズダン化学染色、および、200μg/g未満の値の糞便サンプル中の糞便のエラスターゼの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、症状は、腹痛、血中アミラーゼレベルの増加、血液リパーゼレベルの増加、膵臓の拡大、悪心、嘔吐、内出血、腸麻痺、発熱、黄疸、体重減少、および心拍数の上昇の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は、アミラーゼの血中濃度の上昇を含む。いくつかの態様では、症状は、リパーゼの血中濃度の上昇を含む。いくつかの態様では、症状は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによる壊死の発見物を含む。いくつかの態様では、症状は早熟な消化酵素活性化を含む。いくつかの態様では、上記早熟な消化酵素活性化は前記ヒトの膵臓で生じる。いくつかの態様では、酵素はトリプシンを含む。
【0008】
いくつかの実施形態は、膵臓障害のリスクのあるヒトにおける膵臓障害に関連した症状を予防または改善する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、以下の工程を含む:膵臓障害に関連する危険因子を抱えるヒトを特定する工程;および、上記副作用を予防または改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、膵臓障害は急性膵炎の症状を含む。いくつかの態様では、膵臓障害は慢性膵炎の症状を含む。いくつかの態様では、ヒトは、コルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピンの少なくとも1つの投与を含む、投薬レジメンを受けた結果として膵炎を患っている。いくつかの態様では、ヒトは膵炎の遺伝型を抱えていると特定される。いくつかの態様において、ヒトは、トリプシノゲンをコードするトリプシン1、トリプシン阻害剤をコードするSPINK1、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の少なくとも1つの変異対立遺伝子を有する。いくつかの態様では、ヒトは、高血中カルシウム、低体温、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、膵管癒合不全、膵臓の先天性奇形、2型真性糖尿病、膵癌、膵管内結石、脈管炎、膵臓中の微小血管の炎症、コクサッキーウイルス感染、および、急性間欠性ポルフィリン症と赤芽球増殖性プロトポルフィリン症などのポルフィリン症の少なくとも1つに苛まされた結果として膵炎を患っている。いくつかの態様では、上記ヒトの身体の健康状態は、胆石、エタノール中毒、アルコール中毒、外傷、ムンプス、自己免疫障害、サソリ刺傷、高脂血症、低体温、副甲状腺機能亢進症、および内視鏡的逆行性胆道膵管造影、アザチオプリン、およびバルプロ酸の少なくとも1つの影響を受けている。いくつかの態様では、上記ヒトの身体の健康状態は、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ムンプス、水痘-帯状疱疹ウイルス、レジオネラ菌、レプトスピラ属細菌、ミコプラズマ細菌、サルモネラ細菌、アスペルギルス属真菌、回虫寄生虫、クリプトスポリジウム細胞、およびトキソプラズマ属細胞の少なくとも1つの影響を受けている。
【0009】
いくつかの実施形態は、ウイルス性疾患のリスクのあるヒトにおいてウイルス性疾患に関連した症状を予防または改善する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、以下の工程を含む:ウイルス性疾患に関連する危険因子を有するヒトを特定する工程;および、上記副作用を予防または改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程。いくつかの実施形態は、ウイルス性疾患の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、上記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を上記ヒトへ投与する工程を含む、ヒトのウイルス性疾患の症状の改善に使用される組成物に関する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、ウイルス性疾患の出芽を阻む。いくつかの態様では、ウイルス性疾患は出血熱ウイルスである。さらなる態様では、出血熱ウイルスは、アレナウイルス、フィロウイルス、ブンヤウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、またはその組み合わせである。さらなる態様では、出血熱ウイルスは、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、ロタウイルス、西ナイルウイルス、ジカウイルス、コクサッキーウイルス、B型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、デング熱ウイルス、またはリフトバレーウイルスである。いくつかの態様では、症状は熱または出血性素因である。さらなる態様において、ウイルス性疾患の症状は、顔面紅潮、胸部紅潮、点状出血、毛細管漏出、出血、膨潤、浮腫、低血圧、ショック、倦怠感、筋肉痛、頭痛、嘔吐、下痢、またはその組み合わせの少なくとも1つである。
【0010】
いくつかの実施形態は、Th17誘発性の疾患のリスクのあるヒトにおいて、Th17誘発性の疾患に関連する症状を予防または改善する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、以下の工程を含む:Th17誘発性の疾患に関連する危険因子を有するヒトを特定する工程;および、上記副作用を予防または改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程。いくつかの実施形態は、膵炎の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、上記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を上記ヒトに投与する工程を含む、ヒトにおけるTh17誘発性の疾患の症状の改善に使用される組成物に関する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はTh17細胞の分化を阻む。いくつかの態様では、Th17誘発性の疾患は慢性の炎症性疾患である。さらなる態様では、慢性の炎症性疾患は、枯草熱、歯周炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、または癌である。他の態様では、Th17誘発性の疾患は自己免疫疾患である。さらなる態様では、自己免疫疾患は、関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、乾癬、シェーグレン症候群、リウマチ性多発生筋痛、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、脈管炎、または側頭動脈炎である。いくつかの態様では、Th17誘発性の疾患の症状は、局所発赤、腫脹、熱、疼痛、凝り、発熱、悪寒、疲労、頭痛、または食欲不振の少なくとも1つである。いくつかの態様では、症状が胴、腕、手、指、脚、足、つま先、頭、首、骨、関節、咽喉、洞、目、またはその組み合わせを含むヒトの身体で生じる。
【0011】
いくつかの実施形態は、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤と膵臓の活性に対する否定的な影響を有する少なくとも1つの薬物とを含む組成物に関する。いくつかの態様では、薬物は以下からなるリストから選択される:コルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピン、アザチオプリン、およびバルプロ酸。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOC阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRAC阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。
【0012】
いくつかの態様は、膵臓の活性に対する否定的な影響に関連する薬物の個体への投与と、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤の投与を含む、投薬レジメンに関する。いくつかの態様では、薬物は以下からなるリストから選択される:コルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピン、アザチオプリン、およびバルプロ酸。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOC阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRAC阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。
【0013】
いくつかの実施形態は、膵炎の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程と、上記症状を改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を上記ヒトに投与する工程を含む、ヒトの膵炎の症状の改善に使用される組成物に関する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSTIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はOrai1タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、組成物は鎮痛薬をさらに含む。いくつかの態様では、鎮痛薬はオピエートを含む。いくつかの態様では、鎮痛薬はモルヒネを含む。いくつかの態様では、症状は急性膵炎の症状である。いくつかの態様において、症状は、膵臓の炎症と浮腫、背中への放散上腹部痛、背中への放散左上腹部痛、悪心、嘔吐、摂食により悪化する嘔吐、高い心拍数、頻脈、高い呼吸数、高血圧、血圧低下、脱水、腹部圧痛、発熱、悪寒、腹膜炎、血行動態不安定、および反射性の腸麻痺の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は重篤な膵炎の症状である。いくつかの態様では、症状は、膵壊死と膵臓外の臓器の損傷の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は慢性膵炎の症状である。いくつかの態様において、症状は、持続性腹痛、消化異常、脂肪の吸収不良、食物摂取中の疼痛、体重減少、血清アミラーゼ活性の上昇、血清リパーゼ活性の上昇、CRPの炎症マーカーの上昇、重炭酸塩産生の低下、糞便のエラスターゼレベルの上昇、血清トリプシノゲンレベルの上昇、膵臓の石灰化、血清ビリルビンレベルの上昇、およびアルカリホスファターゼレベルの上昇、の少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、症状は、ESRレベルの上昇、IgG4レベルの上昇、リウマチ因子の増大、ANA抗体の存在、抗平滑筋抗体の存在、ヒトの慢性膵炎を特定し得る症状のいずれかのアッセイの少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は、脂肪便、100gの脂肪食での24時間にわたる7グラム以上の糞便または糞便脂肪排泄物のズダン化学染色、 および、200μg/g未満の値の糞便サンプル中の糞便のエラスターゼの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、症状は、腹痛、血中アミラーゼレベルの増加、血液リパーゼレベルの増加、膵臓の拡大、悪心、嘔吐、内出血、腸麻痺、発熱、黄疸、体重減少、および心拍数の上昇の少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、症状は早熟な消化酵素活性化を含む。いくつかの態様では、早熟な消化酵素活性化は上記ヒトの膵臓で生じる。いくつかの態様では、酵素はトリプシンを含む。
【0014】
いくつかの態様は、膵臓障害のリスクのあるヒトにおいて膵臓障害に関連する症状の予防または改善に使用される組成物に関し、以下の工程を含む:膵臓障害に関連する危険因子を抱えるヒトを特定する工程;および、上記副作用を予防または改善するのに十分な投与量で細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物Aの群からの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物である。いくつかの態様では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、または、その薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、あるいは薬学的に許容可能なプロドラッグである。いくつかの態様では、膵臓障害は急性膵炎の症状を含む。いくつかの態様では、膵臓障害は慢性膵炎の症状を含む。いくつかの態様では、ヒトはコルチコステロイド、プレドニゾロン、HIV薬、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲンなどのステロイド、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、抗高血糖薬、メトホルミン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンのようなグリプチン、非定型抗うつ薬、クロザピン、リスペリドン、およびオランザピンの少なくとも1つの投与を含む投薬レジメンを受ける。いくつかの態様では、ヒトは膵炎の遺伝型を抱えていると特定される。いくつかの態様において、ヒトは、トリプシノゲンをコードするトリプシン1、トリプシン阻害剤をコードするSPINK1、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子の少なくとも1つの変異対立遺伝子を有する。いくつかの態様では、ヒトは、高血中カルシウム、低体温、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、膵管癒合不全、膵臓の先天性奇形、2型真性糖尿病、膵癌、膵管内結石、脈管炎、膵臓中の微小血管の炎症、コクサッキーウイルス感染、および、急性間欠性ポルフィリン症と赤芽球増殖性プロトポルフィリン症などのポルフィリン症の少なくとも1つに苛まされている。いくつかの態様では、上記ヒトの身体の健康状態は、胆石、エタノール中毒、アルコール中毒、外傷、ムンプス、自己免疫障害、サソリ刺傷、高脂血症、低体温、副甲状腺機能亢進症、および内視鏡的逆行性胆道膵管造影、アザチオプリン、およびバルプロ酸の少なくとも1つの影響を受けている。いくつかの態様では、上記ヒトの身体の健康状態は、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、単純疱疹ウイルス、ムンプス、水痘-帯状疱疹ウイルス、レジオネラ菌、レプトスピラ属細菌、ミコプラズマ細菌、サルモネラ細菌、アスペルギルス属真菌、回虫寄生虫、クリプトスポリジウム細胞、およびトキソプラズマ属細胞の少なくとも1つの影響を受けている。
【0015】
<参照による組み込み>
本明細書で言及されるすべての出版物、特許、および特許出願は、あたかも個々の出版物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示される程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
とりわけ、2011年11月10日に公開されたPCT出願公開第WO2011/139489A2は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2009年3月19日に公開されたPCT出願公開第WO2009/035818号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2010年6月17日に公開されたPCT出願公開第WO2010/025295号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2010年6月10日に公開されたPCT出願公開第WO2010/027875号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2011年7月28日に公開されたPCT出願公開第WO2011/034962号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2012年1月26日に公開されたPCT出願公開第WO2011/139489号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2012年3月8日に公開されたPCT出願公開第WO2011/139765号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2012年5月18日に公開されたPCT出願公開第WO2012/027710号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2013年2月21日に公開されたPCT出願公開第WO2012/170931号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2013年4月25日に公開されたPCT出願公開第WO2012/170951号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2013年4月25日に公開されたPCT出願公開第WO2013/059666号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2013年4月25日に公開されたPCT出願公開第WO2013/059677号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、2014年3月20日に公開されたPCT出願公開第WO2014/043715号は全体として参照により本明細書に組み込まれ、および、2014年4月17日に公開されたPCT出願公開第WO2014/059333号は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の新しい特徴は、とりわけ添付の請求項で説明される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
図1A】TLCSによる処置後のマウス腺房細胞壊死を示す。
図1B】TLCSによる処置後のヒト腺房細胞壊死を示す。
図2A】セルレイン誘発性の急性膵炎に関する組織病理学的スコアを示す。
図2B】TLCS誘発性の急性膵炎に関する組織病理学的スコアを示す。
図2C】FAEE誘発性の急性膵炎に関する組織病理学的スコアを示す。
図3A】N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミド(「化合物I」)のIC50測定値を示す。
図3B】2,6-ジフルオロ-N-(1-(4-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-3-イル)ベンズアミド(「GSK-7975A」)のIC50測定値を示す。
図4A】CRAC阻害剤のない状態でのカルシウムの取り込みを示す。
図4B】CRAC阻害剤のある状態でのカルシウムの取り込みを示す。
図5A】CRAC阻害剤化合物Iのある状態でのカルシウム流入を示す。
図5B】CRAC阻害剤GSK-7975Aのある状態でのカルシウム流入を示す。
図6A】CRAC阻害剤のない状態でのカルシウム流入を示す。
図6B】対照と比較してCRAC阻害剤化合物IとGSK-7975Aのある状態での相対的なカルシウム流入を示す。
図7】多くのサイトカインに対する化合物IのIC50値を示す。
図8A】化合物Iの様々な濃度に対する組織病理学的スコアを示す。
図8B】投与量に応じた膵臓中の化合物Iの濃度を示す。
図9A】CRAC阻害剤のある状態とない状態で、急性膵炎を誘発されなかった(標準)マウスと、急性膵炎を誘発されたマウスにおける血清アミラーゼレベルを示す。
図9B】CRAC阻害剤のある状態とない状態で、急性膵炎を誘発されなかった(標準)マウスと、急性膵炎を誘発されたマウスにおける血清リパーゼレベルを示す。
図10】急性膵炎の誘発時に治療的および予防的に処置されたマウスの組織病理学的スコアを示す。
図11】TLCS誘発性のカルシウムレベルを示す。
図12】マウス腺房細胞アミラーゼ放出レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示される方法と組成物は、細胞内カルシウムを調節して、膵炎の症状を改善又は予防するために使用される。幾つかの態様において、膵炎は急性膵炎である。幾つかの態様において、膵炎は慢性膵炎である。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される方法と組成物は、細胞内カルシウムを調節して、ウイルス性疾患の症状を改善又は予防するために使用される。幾つかの態様において、ウイルス性疾患は出血熱ウイルスである。幾つかの態様において、出血熱ウイルスは、アレナウイルス、フィロウイルス、ブンヤウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、又はその組み合わせである。出血熱ウイルスは、限定しない例として、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、ロタウイルス、西ナイルウイルス、ジカウイルス、コクサッキーウイルス、B型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルスなどを含む。更なる実施形態において、本明細書に開示される方法と組成物は、細胞内のカルシウムを調節して、Th17誘発性の疾患の症状を改善又は予防するために使用される。幾つかの態様において、Th17誘発性の疾患は炎症性疾患である。更なる態様において、Th17誘発性の疾患は自己免疫障害である。幾つかの態様において、本明細書で提供される化合物はSOCチャネル活性を調節する。幾つかの態様において、本明細書で提供される方法と化合物はCRACチャネル活性を調節する。別の態様において、本明細書で提供される化合物はSTIMタンパク質活性を調節する。別の態様において、本明細書で提供される方法と化合物はOraiタンパク質活性を調節する。別の態様において、本明細書で提供される方法と化合物は、STIMタンパク質とOraiタンパク質との機能的相互作用を調節する。別の態様において、本明細書で提供される方法と化合物は、機能的SOCチャネルの数を減らす。別の態様において、本明細書で提供される方法と化合物は、機能的CRACチャネルの数を減らす。幾つかの態様において、本明細書に記載される方法と化合物はSOCチャネル遮断薬である。幾つかの態様において、本明細書に記載される方法と化合物は、CRACチャネル遮断薬又はCRACチャネルモジュレータである。
【0019】
カルシウムは、細胞の機能と生存において重大な役割を果たす。例えばカルシウムは、細胞の中への、及び細胞内でのシグナルの導入における重要な要素である。成長因子、神経伝達物質、ホルモン、及び様々な他のシグナル分子に対する細胞の反応は、カルシウム依存のプロセスを介して開始される。
【0020】
事実上、全ての細胞の種類は、幾つかの方法において、細胞機能を調節する又は特異反応を引き起こすために細胞質のCa2+信号の生成に依存する。細胞質Ca2+シグナルは、収縮及び分泌などの短期的な反応から、細胞の成長と増殖のより長期的な調節にまで及ぶ、多くの細胞機能を制御する。通常、このようなシグナルは、小胞体(ER)などの細胞内ストアからのCa2+の放出と、原形質膜にわたるCa2+の流入との一部の組み合わせに関係する。1つの例において、細胞活性化は、表面膜受容体へのアゴニスト結合から始まり、これはGタンパク質機構を介してホスホリパーゼC(PLC)に結合される。PLC活性化は、イノシトール1,4,5-三燐酸塩(IP)の生成に繋がり、次々にIP受容体を活性化してERからCa2+の放出を引き起こす。その後、ER Ca2+の減少(fall)は、原形質膜のストア感受性カルシウム(SOC)チャネルを活性化するようにシグナル伝達を行う。
【0021】
ストア感受性カルシウム(SOC)流入は、限定されないが細胞内のCa2+の再充填(Putney et al. Cell, 75, 199-201, 1993)、酵素活性の活性化(Fagan et al., J. Biol. Chem. 275:26530-26537, 2000)、遺伝子転写(Lewis, Annu. Rev. Immunol. 19:497-521, 2001)、細胞増殖(Nunez et al., J. Physiol. 571.1, 57-73, 2006)、及びサイトカインの放出(Winslow et al., Curr. Opin. Immunol. 15:299-307, 2003)といった前述の多様な機能を制御する細胞生理学におけるプロセスである。幾つかの非興奮性の細胞、例えば血液細胞、免疫細胞、造血細胞、Tリンパ球、肥満細胞、膵腺房細胞(PAC)、他の腺(例えば唾液腺)の上皮細胞及び導管細胞、内皮細胞及び内皮前駆細胞において、SOC流入は、SOCチャネルの一種であるカルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルを介して生じる。
【0022】
カルシウム流入機構は、ストア感受性カルシウム流入(SOCE)と称されてきた。間質相互作用分子(STIM)タンパク質は、細胞内ストアからのカルシウムの枯渇を検出するための、及びSOCチャネルを活性化するためのセンサーとして機能する、SOCチャネル機能の不可欠な構成要素である。
【0023】
<カルシウム恒常性>
細胞内カルシウム恒常性は、細胞内カルシウムの濃度及び移動の制御に関係する調節系の合計の結果である。細胞内カルシウム恒常性は、カルシウム結合により、原形質膜からの及び原形質膜へのカルシウムの移動により、及び、例えば小胞体、筋小胞体、ミトコンドリア、及び、エンドソームとリソソームを含むエンドサイトーシス小器官(endocytic organelles)を含む、細胞内小器官の膜にわたるカルシウムの移動により細胞内で、少なくとも部分的に達成される。
【0024】
細胞膜をわたるカルシウムの移動は特殊なタンパク質により行なわれる。例えば、細胞外空間からのカルシウムは、様々なカルシウムチャネル及びナトリウム/カルシウム交換体を通って細胞に侵入することができ、カルシウムポンプ及びナトリウム/カルシウム交換体により細胞から活発に押し出される。カルシウムはまた、内部ストアから放出されイノシトール三リン酸又はリアノジン受容体を通り、且つ、カルシウムポンプによりこのような小器官によって取り上げられ得る。
【0025】
カルシウムは、カルシウムの様々な通常の分類の何れかにより細胞に侵入することができ、該分類は、限定されないが、電位作動型カルシウム(VOC)チャネル、ストア感受性カルシウム(SOC)チャネル、及び反転モードで作動するナトリウム/カルシウム交換体を含む。VOCチャネルは膜脱分極により活性化され、神経及び筋肉のような興奮性細胞にて見出され、且つ大部分は非興奮性細胞には見出されない。一部の条件の下では、Ca2+は反転モードで作動するNa+-Ca2+交換体を介して細胞に侵入することができる。
【0026】
エンドサイトーシスは、細胞が細胞外培地からエンドソームを通ってカルシウムを取り上げることができる、別のプロセスを提供する。加えて、幾つかの細胞、例えば外分泌細胞は、エキソサイトーシスを介してカルシウムを放出することができる。
【0027】
サイトゾルのカルシウム濃度は、哺乳動物細胞において約0.1μMで通常は推定される静止レベルでしっかりと調節され、一方で細胞外カルシウム濃縮は典型的に約2mMである。このしっかりとした調節は、原形質膜及び細胞内小器官の膜をわたる一時的なカルシウム流を介して、細胞への、及び細胞内でのシグナルの導入を促進する。細胞内カルシウムシグナルを形成し、且つ低い静止細胞質カルシウム濃度を維持する役目を果たす細胞には、様々な細胞内カルシウム輸送及び緩衝システムがある。静止時の細胞において、基礎のカルシウム濃度の維持に関係する主な構成要素は、小胞体と原形質膜の両方におけるカルシウムポンプ及び漏出経路である。細胞質カルシウム濃度の静止の妨害は、カルシウム依存性のシグナルの伝送に影響を及ぼし、多くの細胞プロセスに欠陥を生じさせることができる。例えば、細胞増殖は、カルシウムシグナル伝達配列の延長に関係する。カルシウムシグナル伝達に関係する他の細胞プロセスは、限定されないが、分泌、転写因子のシグナル伝達、及び受精を含む。
【0028】
ホスホリパーゼC(PLC)を活性化する細胞表面受容体は、細胞内及び細胞外のソースから細胞質Ca2+信号を作成する。[Ca2+]i(細胞内カルシウム濃度)の最初の一時的上昇は、ERにおけるPLC生成物、イノシトール-1,4,5-トリスホスファート(IP)、開口部IP受容体により引き起こされる、小胞体(ER)からのCa2+の放出に起因する(Streb et al. Nature, 306, 67-69, 1983)。その後、原形質膜にわたる除放性のCa2+流入の後の段階は、特殊なストア感受性カルシウム(SOC)チャネル(免疫PAC細胞のような非興奮性細胞の場合、SOCチャネルがカルシウム放出活性化カルシウム(CRAC)チャネルである)を介して、原形質膜において起こる。ストア感受性Ca2+流入(SOCE)は、Ca2+ストア自体を空にすることが、ストアの再充填を支援するように原形質膜においてCa2+チャネルを活性化するプロセスである(Putney, Cell Calcium, 7, 1-12, 1986; Parekh et al., Physiol.Rev. 757-810; 2005)。SOCEは、ストアを再充填するためにCa2+を単に提供するばかりではなく、遺伝子発現、細胞代謝、及びエキソサイトーシスなどの不可欠な機能を制御する、徐放性のCa2+シグナルを生成することができる(Parekh and Putney, Physiol. Rev. 85, 757-810 (2005))。
【0029】
リンパ球と肥満細胞において、抗原又はFc受容体の活性化はそれぞれ、次々に原形質膜におけるCRACチャネルを介したCa2+流入に通じる、細胞内貯蔵からのCa2+の放出を引き起こす。細胞内Ca2+の後の上昇は、カルシニューリン、即ち転写因子NFATを調節するホスファターゼを活性化する。静止細胞において、NFATはリン酸化され、細胞質に存在するが、カルシニューリンにより脱リン酸化された時、NFATは核に移動し、刺激条件と細胞型に依存して異なる遺伝子プログラムを活性化する。感染に応じて、及び移植拒絶反応中に、NFATは、「エフェクター」T細胞の核において転写因子AP-1(Fos-Jun)と組み、それにより、サイトカイン遺伝子、T細胞増殖を調節する遺伝子、及び活性な免疫応答を組織化する遺伝子のトランス活性化を行う(Rao et al., Annu Rev Immunol., 1997;15:707-47)。対照的に、自己抗原を認識するT細胞において、NFATは、AP-1が無い状態で活性化され、自己免疫反応を抑止する「アネルギー」として知られる転写プログラムを活性化する(Macian et al., Transcriptional mechanisms underlying lymphocyte tolerance. Cell. 2002 Jun 14;109(6):719-31)。自己反応性のエフェクターT細胞により媒介される自己免疫を抑止する調節性T細胞として知られるT細胞のサブクラスにおいて、NFATは、サプレッサー機能に起因する遺伝子を活性化するために転写因子FOXP3と組む(Wu et al., Cell, 2006 Jul 28; 126(2):375-87; Rudensky AY, Gavin M, Zheng Y. Cell. 2006 Jul 28;126(2):253-256)。
【0030】
小胞体(ER)は様々なプロセスを行なう。ERは、Ca2+シンクとアゴニスト感受性Ca2+ストアの両方としての役割を持ち、タンパク質のフォールディング/処理はそのルーメン内で生じる。後者の場合、多数のCa2+依存性のシャペロンタンパク質は、新たに合成されたタンパク質が正確にフォールディングされ、その適切な行き先に送られるのを確実にする。ERはまた、ベシクルの輸送、ストレスシグナルの放出、コレステロール代謝の調節、及びアポトーシスに関係する。このようなプロセスの多くは、管腔内のCa2+を必要とし、タンパク質の誤ったフォールディング、ERストレス応答、及びアポトーシスは全て、長時間にわたるCa2+のERの枯渇により誘発され得る。それは有限量のCa2+を含むため、ER Ca2+の内容物が刺激中にCa2+の放出の後に低下しなければならないことは明白である。しかし、ERの機能的統合性を保存するために、Ca2+の内容物があまり低く低下しない、或いは少なくとも低レベルで維持されることが、重大である。それ故、Ca2+によるERの補充は、全ての真核細胞への中央処理である。ER Ca2+の内容物の低下が原形質膜においてストア感受性Ca2+チャネルを活性化するので、このCa2+侵入経路の主要な機能は、適切なタンパク質合成とフォールディングに必要なER Ca2+レベルの維持であると考えられる。しかし、ストア感受性Ca2+チャネルには他の重要な役割がある。
【0031】
ストア感受性カルシウム流入についての理解は、ストアを空にするプロセスがCa2+放出活性化Ca2+電流又はICRACと呼ばれる、肥満細胞におけるCa2+電流を活性化することを確実にする、電気生理検査によりもたらされた。ICRACは、電圧により活性化されず、内部に整流し、Ca2+には著しく選択的なものである。それは、主に造血起源(hemapoietic origin)の様々な細胞タイプに見出される。ICRACは、唯一のストア感受性電流ではなく、現時点で、ストア感受性流入は、異なる細胞タイプにおいて異なる特性を持つCa2+透過性チャネルのファミリーを包含することが明らかである。ICRACは、記載される第1のストア感受性Ca2+電流であり、ストア感受性流入を研究するための人気の高いモデルのままである。
【0032】
ストア感受性カルシウムチャネルは、ER Ca2+ストアを空にする任意の手順により活性化され得、どのようにストアが空にされるのかは重要ではないと考えられており、正味の効果はストア感受性Ca2+流入の活性化である。生理学的に、ストアを空にすることは、IP又は他のCa2+放出シグナルのレベルの増加、その後のストアからのCa2+放出により誘発される。しかし、ストアを空にするための他の様々な方法が存在する。このような方法は以下を含む:
1)サイトゾルにおけるIPの上昇(受容体刺激、又は、IP自体又は非代謝型アナログIns(2,4,5)Pのような関連する同種によるサイトゾルの透析後);
2)ER膜を透過性にするCa2+イオノフォア(例えばイオノマイシン)の適用;
3)ストアから漏出し、従ってストアの再充填を妨げるCa2+をキレート化する、高濃度のCa2+キレート剤(例えば、EGTA又はBAPTA)による細胞質の透析;
4)タプシガルジン、シクロピアゾン酸、及びジ-tert-ブチルヒドロキノンのような筋形質/小胞体Ca2+-ATPアーゼ(SERCA)阻害剤への曝露;
5)チメロサールのような薬剤による、InsP3の静止レベルに対するIP受容体の感作;及び
6)N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン(TPEN)のような膜透過性金属Ca2+キレート剤の、ストアへの直接の充填。
質量作用を通じて、TPENは、合計のストアCa2+を変化させることなく遊離管腔内Ca2+濃度を低下させ、それによりストアの枯渇に依存するシグナルが生成される。
【0033】
ストアを空にするこのような方法は、潜在的な問題を欠くものではない。ストア感受性Ca2+流入の重要な機能は、ストア内のCa2+内容物の低下であり、チャネルを活性化する細胞質Ca2+濃度における後の上昇ではない。しかし、イオノマイシンとSERCAのポンプブロッカーは通常、ストア枯渇の結果として細胞質Ca2+濃度の上昇を引き起こし、そのようなCa2+の上昇は、Ca2+に対して透過性であるCa2+活性化カチオンチャネルを開くことができる。そのような問題を回避するための1つの方法は、EGTA又はBAPTAなどの高濃度のCa2+キレート剤により細胞質Ca2+が強く緩衝化された条件下で、薬剤を使用することである。
【0034】
<ストア感受性カルシウム流入>
細胞内カルシウムストアからのカルシウムの放出から結果として生じる小胞体などの細胞内カルシウムストアにおけるカルシウム濃度の減少により、細胞外培地から細胞へのカルシウムの流入のためのシグナルがもたらされる。このカルシウムの流入は細胞質カルシウム濃度の持続した「プラトー」上昇をもたらすものであり、通常、電位依存性原形質膜チャネルには依存せず、カルシウムによるカルシウムチャネルの活性化に関係しない。このカルシウム流入機構は、容量性カルシウム流入(CCE)、カルシウム放出活性化、ストア感受性、又は枯渇感受性(depletion-operated)のカルシウム流入と称される。ストア感受性カルシウム流入は、独特な特性を持つイオン電流として記録され得る。この電流は、ISOC(ストア感受性電流)又はICRAC(カルシウム放出活性化電流)と称される。
【0035】
ストア感受性又はカルシウム放出活性化電流の電気生理学的解析は、これらの電流の別個の生物物理的な特性(例えば、Parekh and Penner (1997) Physiol. Rev. 77:901-930を参照)を明らかにした。例えば、電流は、(例えば、タプシガルジン、CPA、イオノマイシン及びBAPTAなどの非生理学的活性化因子、並びにIPなどの生理的活性化因子による)細胞内カルシウムストアの枯渇により活性化され得、生理溶液又は生理条件において一価イオンよりもカルシウムなどの二価カチオンに選択的であり、細胞質カルシウム濃度の変化により影響を受け、及び低い細胞外濃度の二価カチオンの存在下で変えられた選択性及び伝導性を示すことができる。電流はまた、(濃度に依存して)2-APBにより遮断又は増強され、SKF96365とGd3+により遮断される場合があり、及び厳密に電位依存性ではないカルシウム電流として通常は説明され得る。
【0036】
肥満細胞及びJurkat白血病性T細胞におけるパッチクランプ研究は、独特な生物物理的特徴を持つイオンチャネルとしてCRAC流入機構を確立し、これは、非常に低い導電率と対になったCa2+に対する高い選択性を含む。更に、CRACチャネルは、ストア感受性となるための厳格な基準を満たすと示され、これは単に、細胞質Ca2+又はPLCにより生成される他のメッセンジャーよりもむしろ、ERにおけるCa2+の減少による活性化である(Prakriya et al., In Molecular and Cellular Insights into Ion Channel Biology (ed. Robert Maue) 121-140 (Elsevier Science, Amsterdam, 2004))。
【0037】
<細胞内カルシウムストアによるストア感受性カルシウム流入の調節>
ストア感受性カルシウム流入は、細胞内カルシウムストア内のカルシウムのレベルにより調節される。細胞内カルシウムストアは、ストアからのカルシウムの放出を活性化する又はストアへのカルシウムの取り込みを阻害する、生理的又は薬理学的なものであり得る薬剤への感受性を特徴とし得る。異なる細胞が細胞内カルシウムストアの特性付けにおいて研究されてきており、ストアは、IP、及び、IP受容体、タプシガルジン、イオノマイシン及び/又は環式のADPリボース(cADPR)に影響を与える化合物を達成するIPと化合物を含むがこれらに限定されずない、様々な薬剤に敏感なものとして特徴付けられた(例えば、Berridge (1993) Nature 361:315-325; Churchill and Louis (1999) Am. J. Physiol. 276 :C426-C434; Dargie et al. (1990) Cell Regul. 1 :279-290; Gerasimenko et al. (1996) Cell 84 :473-480; Gromoda et al. (1995) FEBS Lett. 360 :303-306; Guse et al. (1999) Nature 398 :70-73)。
【0038】
小胞体及び筋小胞体(SR;横紋筋における小胞体の特殊なバージョン)の貯蔵小器官内のカルシウムの蓄積は、一般的にカルシウムポンプと称される筋形質小胞体カルシウムATPアーゼ(SERCA)を介して達成される。シグナル伝達中(即ち、小胞体チャネルが小胞体から細胞質までのカルシウム放出をもたらすように活性化される時)、小胞体カルシウムは、細胞外培地から細胞に侵入した細胞質カルシウムによるSERCAポンプによって補充される(Yu and Hinkle (2000) J. Biol. Chem. 275:23648-23653; Hofer et al. (1998) EMBO J. 17:1986-1995)。
【0039】
IP及びリアノジン受容体に関連したカルシウム放出チャネルは、細胞質カルシウム濃度の一過性増加の結果として生じる、内部原形質及び筋小胞体から細胞質へのカルシウムの制御放出をもたらす。IP受容体媒介性カルシウム放出は、原形質膜Gタンパク質に結合した受容体又はチロシンキナーゼに対するアゴニストの結合により活性化される、ホスホリパーゼCの作用を介した原形質膜ホスホイノシチドの破壊により形成されたIPによって引き起こされる。リアノジン受容体媒介性カルシウム放出は、細胞質カルシウムの増加によって引き起こされ、カルシウム誘発性カルシウム放出(CICR)と称される。(リアノジン及びカフェインに対する親和性を持つ)リアノジン受容体の活性も、環式のADPリボースにより調節される場合がある。
【0040】
故に、ストア及び細胞質におけるカルシウム濃度は、変動する。例えば、ER遊離カルシウム濃度は、HeLa細胞がヒスタミン、即ちPLC結合ヒスタミン受容体のアゴニストにより処置される場合、60-400μMから約1-50μMの範囲に低下し得る(Miyawaki et al. (1997) Nature 388:882-887)。細胞内ストアの遊離カルシウム濃度が減少すると、ストア感受性カルシウム流入が活性化される。故に、サイトゾルカルシウム濃度の付随的な増加と同様に、ストアカルシウムの枯渇も、細胞へのストア感受性カルシウム流入を調節することができる。
【0041】
<細胞質カルシウムの緩衝化>
細胞中のシグナル伝達プロセスのアゴニスト活性化は、例えば、IP受容体チャネルの開口部、及びストア感受性カルシウム流入を介した、原形質膜を通る小胞体のカルシウム透過性の劇的な増加に関係し得る。このようなカルシウム透過性の増加は、2つの成分に分離され得るサイトゾルカルシウム濃度の増加に関連する:IP受容体の活性化中の小胞体からのカルシウム放出の「スパイク」、及び、細胞外培地からの細胞質へのカルシウムの流入から結果として生じるカルシウム濃度の持続的上昇であるプラトー相。刺激の後、約100nMの静止する細胞内遊離カルシウム濃度は、1μMより多く、且つ細胞の微小ドメインにおいてより高く、全体的に増加し得る。細胞は、ミトコンドリア、小胞体、及びゴルジなどの小器官による生理的な緩衝作用を含む、内因性のカルシウムバッファーによりこれらカルシウムシグナルを調節する。内膜中の単輸送体を介したカルシウムのミトコンドリアの取り込みは、大きな負のミトコンドリア膜電位により生じ、蓄積されたカルシウムは、ナトリウム依存性且つそれに依存しない交換体、及び一部の条件下で膜透過性遷移孔(PTP)によりゆっくり放出される。故に、ミトコンドリアは、細胞の活性化の期間中にカルシウムを取り上げることによりカルシウムバッファーとして作用することができ、後にそれをゆっくりと放出することができる。小胞体へのカルシウムの取り込みは、筋形質及び小胞体カルシウムATPアーゼ(SERCA)により調節される。ゴルジへのカルシウムの取り込みは、P型カルシウム輸送ATPアーゼ(PMR/ATP2C)により媒介される。加えて、IP受容体活性化後に放出された著しい量のカルシウムが、原形質膜カルシウムATPアーゼの作用により細胞から押し出されるという証拠が存在する。例えば、原形質膜カルシウムATPアーゼは、ヒトT細胞及びJurkat細胞におけるカルシウム除去のための支配的な機構を提供するが、ナトリウム/カルシウム交換も、ヒトT細胞におけるカルシウム除去に寄与する。カルシウムを貯蔵する小器官内で、カルシウムイオンは、例えばカルセクエストリン、カルレティキュリン、及びカルネキシンなどの、特殊なカルシウム緩衝化タンパク質に結合することができる。加えて、カルシウムスパイクを調節し、且つカルシウムイオンの再分布を助けるサイトゾルには、カルシウム緩衝化タンパク質がある。故に、サイトゾルカルシウム濃度が減らされ得るこれら及び他の機構の何れかに関与する、タンパク質及び他の分子は、細胞質カルシウム緩衝化に関係し、関与し、及び/又はそれを提供するタンパク質である。故に、細胞質カルシウム緩衝化は、SOCチャネルを通った除放性カルシウム流入、又はCa2+放出の突発の期間中に、細胞質Ca2+レベルを調節するのを支援する。細胞質Ca2+レベルの増加、又はストア再充填により、SOCEが不活性化される。
【0042】
<下流のカルシウム流入により媒介される事象>
カルシウムストアにおける細胞内の変化に加えて、ストア感受性カルシウム流入は、ストア感受性の変化による、又はそれに加えて、複数の事象に影響を及ぼす。例えば、Ca2+流入は、セリンホスファターゼカルシニューリンを含む、多くのカルモジュリン依存性酵素の活性化を結果としてもたらす。細胞内のカルシウムの増加によるカルシニューリンの活性化は、肥満細胞脱顆粒反応などの急性の分泌プロセスを結果としてもたらす。活性化肥満細胞は、ヒスタミン、ヘパリン、TNFα、及びβ-ヘキソサミニダーゼなどの酵素を含む、予め形成された果粒剤を放出する。B細胞及びT細胞の増殖などの幾つかの細胞事象は、細胞内カルシウムの持続的な増加を要求する持続的なカルシニューリンシグナル伝達を必要とする。多くの転写因子が、NFAT(活性化T細胞の核因子)、MEF、及びNFκBを含むカルシニューリンにより調節される。NFAT転写因子は、免疫細胞を含む多くの細胞タイプにおいて重要な役割を果たす。免疫細胞において、NFATは、サイトカイン、ケモキネス、及び細胞表面受容体を含む多くの分子の転写を媒介する。NFATのための転写要素は、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-8、IL-13などのサイトカインのプロモータ、同様に腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、及びγ-インターフェロン(γ-IFN)内で見出された。
【0043】
NFATタンパク質の活性は、次々にカルシニューリン及びNFATキナーゼの両方により調節される、それらのリン酸化レベルにより調節される。細胞内カルシウム濃度の増加によるカルシニューリンの活性化は、NFATの脱リン酸化及び核への流入を結果としてもたらす。NFATの脱リン酸化(Rephosphorylation)は、NFATの核局在配列を覆い、それが核へ侵入するのを妨げる。局在化及び活性のためのカルシニューリン媒介性脱リン酸に対するその強力な依存症により、NFATは細胞内遊離カルシウムレベルの高感度な指標である。
【0044】
<カルシウムチャネル阻害剤>
本明細書には、本明細書に開示される方法、組成物、投与レジメン、及び使用のための組成物に一致する、多くのカルシウムチャネル阻害剤が開示される。幾つかの実施形態において、カルシウムチャネル阻害剤はSOC阻害剤である。幾つかの実施形態において、カルシウムチャネル阻害剤はCRAC阻害剤である。幾つかの実施形態において、カルシウムチャネル阻害剤は、STIM1タンパク質を含むチャネルを阻害する。幾つかの実施形態において、カルシウムチャネル阻害剤は、Orai1タンパク質を含むチャネルを阻害する。幾つかの実施形態において、カルシウムチャネル阻害剤は、Orai2タンパク質を含むチャネルを阻害する。
【0045】
幾つかの実施形態において、前記化合物は、以下の構造を持つ化合物:
【0046】
【化2】
或いは、それらの薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、又は薬学的に許容可能なプロドラッグである。幾つかの実施形態において、化合物は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミド以下から成る化合物の一覧から選択される。幾つかの態様において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、N-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミドの化合物、或いはその薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、又は薬学的に許容可能なプロドラッグである。幾つかの態様において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、以下の化合物、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(2-エチル-6-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-3,5-ジフルオロイソニコチンアミド、N-(4-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-2-フルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-1-メチル-N-(4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(4-(3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロフェニル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、4-クロロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド、3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-((3-メチルイソチアゾール-4-イル)メチル)アニリン、N-(5-(7-クロロ-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、3,5-ジフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(3-メチル-1-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)フェニル)イソニコチンアミド、5-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2,4,6-トリフルオロベンジル)ピリジン-2-アミン、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,4,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(5-クロロ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)ピラジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、N-(5-(6-エトキシ-4-メチルピリジン-3-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、N-(5-(1-エチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド、2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド、2,6-ジフルオロ-N-(4-(5-メチル-2-(トリフルオロメチル)オキサゾール-4-イル)フェニル)ベンズアミド、又はN-(5-(6-クロロ-2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)ピラジン-2-イル)-2-フルオロ-6-メチルベンズアミド、或いはそれらの薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な溶媒和物、又は薬学的に許容可能なプロドラッグの中から選択される。
【0047】
<カルシウムシグナル伝達及び膵臓の健康>
カルシウムシグナル伝達は、健康な膵臓の活性の中心となる。食品は、アセチルコリン(ACh)とコレシストキニン(cholecyctokinin)(CCK)の放出を刺激し、これらは、膵腺房細胞(PAC)上でホスホリパーゼC(PLC)に結合した受容体と相互に作用する。健康なPACにおいて、ACh又はCCKの受容体は、IP、1,4,5-イノシトール3リン酸の形成を引き起こし、これは、先端の領域に広まるとともに、制御された拍動性の方式でCa2+を放出するように小胞体(ER)上でIP受容体を刺激する。Ca2+振動は、膵管への酵素前駆体(プロ酵素)の放出を刺激する。経時的に、ER Ca2+は補充される必要があり、これは細胞の基底外側の領域におけるCRACチャネルの穏やかな活性化により達成される。
【0048】
特定の状況(例えば、アルコール中毒又は飲みすぎ、胆石など)において、アルコールから形成される脂肪酸エチルエステル(FAEE)、又は胆石により蓄積する胆汁酸は、PACへと拡散する。PACの内部で、FAEEと胆汁酸は、IP受容体の活性化によりER Ca2+の大規模な放出を引き起こす。CCK受容体の過剰刺激も、ERストアからの頑丈なCa2+放出を誘発することができる。Ca2+ストアを空にすることは、CRACチャネルの超活性化に繋がり、これによりCa2+の過剰な流入を引き起こす。大きなCa2+流入は、チモーゲン顆粒からの酵素の放出と細胞内トリプシンの不適当な活性化を引き起こし、それ自体は後に、他の膵臓の消化酵素を活性化し、化合物I、GSK-7975A、N-(5-(2,5-ジメチルベンゾ[d]オキサゾール-6-イル)チアゾール-2-イル)-2,3,6-トリフルオロベンズアミド(化合物II)、又は2,3,6-トリフルオロ-N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-5-イル)フェニル)ベンズアミド(化合物III)などのCRACチャネル阻害剤により遮断され得る、膵臓の自己消化及び壊死を発生させる。
【0049】
対処されない場合、チモーゲン顆粒からのトリプシンといった消化酵素の不適当な放出及び活性化は、膵臓細胞の自己消化に通じ、結果膵炎に通じる。上述のように、急性又は慢性膵炎は、個体の健康に対する実質的に負の効果を備え得る。
【0050】
<膵炎の症状と原因>
急性又は慢性の膵炎は、背中に広がる上腹部又は左上腹部の重度の焼灼痛、吐き気、及び摂食により悪化する嘔吐に関連する。疾病の重症度により、内出血も生じ得る。血圧、心拍数、及び呼吸数は頻繁に上昇するが、脱水症は血圧の上昇ではなく低下に通じ得る。腹部は頻繁に圧痛があるが、膵臓自体における疼痛ほどの痛みは無い。反射的な腸麻痺(Reflex bowel paralysis)は一般的に膵炎の場合に見られ、発熱又は黄疸は珍しくない。膵炎の一般的な症状及び徴候は、背中に広がる重度の上腹部痛(心窩部痛)、吐き気、嘔吐、食欲不振、発熱、悪寒(身ぶるい)、血行動態不安定(ショックを含む)、頻拍症(速い鼓動)、呼吸窮迫、及び腹膜炎を含む。
【0051】
重度の疾患を示す、あまり一般的に観察されない症状は、激しい腹部苦悶を示す多くの医学的な「兆候」:グレー-ターナー徴候(側腹部の出血性変色)、カレン徴候(臍の出血性変色)、胸膜滲出(胸膜腔の塩基における流体)、グリュンワルド兆候(血管の局所の中毒性病変による、臍の周囲の斑状出血、大きな挫傷の出現)、Korte兆候(膵頭が(上腹部、即ち臍の6-7cm上に)位置する領域における疼痛又は抵抗)、Kamenchik兆候(剣状突起の下の圧力による疼痛)、メイヨー-ロブソン点(左上腹部の二分を表わす線の外部1/3を備えた内部2/3の境界上の点であり、そこでは圧力に対する圧痛が膵臓の疾患に存在する。この点では、膵尾は腹壁上で突出する)などのメイヨー-ロブソン兆候(脊柱起立筋の側方、及び左の12番目の肋骨(左の脊柱角(CVA)の下の角度の頂部での押しつけ中の疼痛)を含む。
【0052】
膵臓炎に苦しむ人は、前述の症状の一部、全て、又は少数から無までを実証することもある。場合によっては、腹痛が前記疾病の唯一の症状の場合もある。
【0053】
慢性膵炎は、糖尿病又は膵臓癌に通じることもある。トリプシンなどの消化酵素の送達における欠陥は、体重減少に繋がる消化の悪化に通じることもある。
【0054】
膵炎の症例の80パーセントも多くが、アルコール及び胆石により引き起こされる。胆石は、急性膵炎の1つの最も一般的な病因である。アルコールは、慢性膵炎の1つの最も一般的な病因である。
【0055】
しかし、アルコールと胆石に加えて、多くの付加的な膵炎の原因が存在する。一部の薬物が膵炎に関連する場合もある。膵炎に関連する薬物の例は、プレドニゾロンなどのコルチコステロイド、ジダノシン及びペンタミジンなどのHIV薬物、利尿薬、バルプロ酸などの抗痙攣薬、L-アスパラギナーゼ及びアザチオプリンなどの化学療法剤、エストロゲン、血中トリグリセリドを上昇させる薬物、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、メトホルミンのような高血糖治療薬、及び、ビルダグリプチン、シタグリプチン、サキサグリプチン、及びリナグリプチンなどのグリプチン、テトラサイクリン、スルホンアミド、アザチオプリン、メルカプトプリン、ペンタミジン、グリメトプリム-スルファメトキサゾール(Grimethoprim-suilfamethoxazole)、及びサリチル酸塩を含む。場合によっては、膵炎の増大された事象に関連した疾病を処置するために使用される薬剤も、膵炎に付随的に関連付けられることもある。その例は、脂質異常症におけるスタチン、糖尿病におけるグリプチンを含む。加えて、クロザピン、リスペリドン、及びオランザピンなどの幾つかの非定型抗精神病剤も膵炎を引き起こす原因となる場合もある。この一覧は完全なものではない。
【0056】
膵炎の非医薬的な原因も知られている。例えば、膵炎の遺伝型は、膵臓内のトリプシノゲンの活性化を結果としてもたらし、自己消化を引き起こすと知られている。遺伝性の膵炎に関係する遺伝子は、トリプシノゲンについてコード化を行うTrypsin1、トリプシン阻害剤についてコード化を行うSPINK1、及び嚢胞性繊維症の膜貫通性伝導率レギュレータを含む。
【0057】
膵炎の他の一般的な非医薬的原因は、外傷、耳下腺炎、自己免疫疾患、高血圧カルシウム、低温症、及び内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法(ERCP)の経験を含む。膵管癒合不全は、幾つかの再発性の症例の基礎となり得る膵臓の一般的な先天性奇形である。穿通性潰瘍も膵炎に関連する。2型糖尿病は、膵炎の症状を進行させる危険性が2.8倍高いと関連付けられている。膵炎に関連する更なる疾病は、膵臓癌、膵管内結石、血管炎(膵臓における微小血管の炎症)、コクサッキーウイルス感染症、及びポルフィリン症、特に急性間欠性ポルフィリン症と骨髄性プロトポルフィリン症を含む。場合によっては妊娠も膵炎に関連する。マラソンの繰返し、食欲不振、及び大食症(bulemia)、同様に脂肪壊死、膵嚢胞性線維症、及びサソリ毒も、一部の膵炎の場合に関係する。
【0058】
多くの感染因子が膵炎に関係している。その例は、とりわけ、サイトメガロウイルス、B型肝炎、単純ヘルペスウイルス、ムンプスルブラウイルス、水痘帯状ヘルペスウイルスなどのウイルスによるウイルス感染;レジオネラ属、レプトスピラ属、マイコプラズマ、又はサルモネラの細菌などによる細菌感染;アスペルギルス属の真菌などによる真菌感染;又は、回虫属の線虫による、又はクリプトスポリジウム属及びトキソプラズマ属のアピコンプレクサ・アルベオラータによる寄生虫感染を含む。
【0059】
医学生の記憶を助ける「GETSMASHED」は頻繁に、膵炎の一般的な原因の一部を記憶するために使用される:G-胆石、E-エタノール、T-外傷、S-ステロイド、M-ムンプス、A-自己免疫性膵炎、S-サソリ刺症、H-高脂血症、低温症、副甲状腺機能亢進症、E-内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法、D-薬物(一般的にアザチオプリン、バルプロ酸)。
【0060】
膵炎は特発性の場合もあり、この場合には、原因は特定されていない。
【0061】
<膵炎の分類>
膵炎、特に急性膵炎は頻繁に、細胞傷害に対する主な反応に依存して、「軽度」、「中度」、又は「重度」として分類される。このような分類は全て、大抵は、トリプシンへのトリプシノゲンを活性化するトリプシノゲン成熟酵素カテプシンでの共局在化によって、膵臓の内部のトリプシノゲンなどの膵臓酵素前駆体の誤った活性化により特徴付けられる。3つの分類は全て、膵臓の炎症及び浮腫を特徴とする。中度及び重度の膵炎は更に、膵壊死、及び膵臓外の器官への二次的な損傷を特徴としており、中度の急性膵炎患者が一時的(<48時間)な臓器不全に悩む一方、重度の急性膵炎患者は持続的(>48時間)な臓器不全に悩む。
【0062】
前述の問題に応じて、膵臓は、炎症反応及び膵臓への好中球の動員に関連して、又は、細胞成分の壊死及び漏出により、TNF-α及びIL-1などの炎症性メディエーターを直接合成し、その他に免疫系を活性化する場合がある。炎症反応は、毛細血管透過性からの血液量減少症、急性呼吸窮迫症候群、汎発性血管内凝固、腎不全、心血管不全、及び消化管出血などの、膵炎の二次的症状に繋がる場合もある。
【0063】
急性膵炎(急性の出血性の膵臓壊死)は更に、膵臓実質の急性炎性及び壊死、膵臓脂肪の病巣の酵素壊死、及び膵酵素の膵臓内活性化から結果として生じる血管壊死(出血)を特徴とする。リパーゼ活性化は、血管損傷と同様に、膵臓の間質及び膵周囲の空間における脂肪組織の壊死をもたらすこともある。脈管壁の消化は結果として血栓症及び出血をもたらす。炎症性浸潤物は好中球において豊富である。嚢を欠く膵臓により、炎症及び壊死は、膵臓の直ぐ付近において筋膜の層を含むように広がることができる。
【0064】
慢性膵炎は、器官の標準組織と機能を変更する持続性の膵臓炎である。慢性膵炎は、急性膵炎の発症、持続的な腹痛、又は消化の欠陥に関連し得る。慢性膵炎患者は通常、持続的な腹痛、又は食物中の脂肪の吸収不良を実証する。食物摂取中の疼痛、特に脂肪又は高タンパク質食品の摂取が一般的である。食物摂取の吸収不良、又は不快感による食物摂取の減少による体重減少も一般的である。
【0065】
慢性膵炎の一般的な合併症は糖尿病である。
【0066】
トリプシノゲンの処理と安定性における、アルコール中毒、喫煙、栄養失調、外傷、高カルシウム血症、石灰化された石、膵嚢胞性線維症、及び遺伝的欠損は、一般的に慢性膵炎に関連する。
【0067】
慢性膵炎は典型的に、膵臓の構造と機能の試験に基づいて診断される。血清アミラーゼとリパーゼは、生殖細胞の損傷の不確かなレベルに起因する、慢性膵炎の症例において中度に上昇されることもあれば、上昇しない場合もある。リパーゼの上昇が、この2つの中で見出される可能性が高い。アミラーゼとリパーゼはほぼ常に、疾病の重症度に広く従う上昇したCRP炎症性マーカーと合わせて、急性疾病において上昇したことが分かった。
【0068】
セクレチン刺激試験は恐らく、慢性膵炎の診断のための最も正確な機能試験である。疾患(95%の感度)の初期にある人を特定するために、慢性膵炎における早期の重炭酸塩の生成の障害を使用する。慢性膵炎を判定するために使用される追加試験は、便、血清トリプシノゲン、コンピューター断層撮影(CT)、超音波、EUS、MRI、ERCP、及びMRCPにおける糞便のエラスターゼ測定である。膵臓の石灰化が、CTスキャンと同様、腹部X線上でも見られる場合がある。しかし、著しいことに、ERCPとX線は急性膵炎を引き起こしかねない。
【0069】
多くの追加試験は、慢性膵炎のためのアッセイに利用可能である。上昇した血清ビリルビン及びアルカリフォスファターゼのレベルは慢性膵炎を示し、場合によっては、浮腫、繊維症、又は癌による総胆管の狭窄を示すこともある。自己免疫反応関連の慢性膵炎には、ESR、IgG4、リウマチ因子、ANA、及び抗平滑筋抗体の上昇が付随し、その何れかのアッセイは、ヒトの慢性膵炎を示すこともある。慢性膵炎の古典的症状、即ち脂肪便症又は食品吸収不良は、2つの異なる研究により診断される場合がある:100gの脂肪食上の24時間の期間にわたる7グラム以上の便又は糞脂肪の排出のSudan化学染色。膵臓の外分泌腺の機能不全をチェックするために、典型的な感度がよく且つ特異的な試験は、1つの糞便サンプルにより行われる糞便のエラスターゼの測定であり、200μg/g未満の値は膵機能不全を示す。
【0070】
ヒトの膵炎の重症度を評価するための多くの方法が知られている。一般的な試験は、BISAP、Ranson’s、APACHE-II、及びCTSIを含む。BISAP試験は、例えば、承認後最初の24時間で評価された以下の基準に基づく:血中尿素窒素>25mg/dL(8.92mmol/L);次の通り定められる、損なわれた精神状態:見当識障害、嗜眠、傾眠、昏睡、又は昏迷;≧2の全身性炎症反応症候群基準;年齢>60;及び胸膜滲出の存在。これらの基準の何れかに対する正の評価は、0~5に及ぶ合計スコアにおける「点」を結果的にもたらす。試験の幾つかの実施態様において、死亡率は、最小の危険性の群においては1%未満、最高の危険性の群においては20%より上にまで及んだ。
【0071】
多くの引用文献は、膵炎重症度の試験について議論を行い、その各々は、引用により本明細書に組み込まれる:Wu BU, Johannes RS, Sun X, Tabak Y, Conwell DL, Banks PA. The early prediction of mortality in acute pancreatitis: a large population-based study. Gut. 2008 Dec; 57(12):1698-703. doi: 10.1136/gut.2008.152702. Epub 2008 Jun 2. PubMed PMID: 18519429; Papachristou GI, Muddana V, Yadav D, O’Connell M, Sanders MK, Slivka A, Whitcomb DC. Comparison of BISAP, Ranson’s, APACHE-II, and CTSI scores in predicting organ failure, complications, and mortality in acute pancreatitis. Am J Gastroenterol. 2010 Feb; 105(2):435-41; quiz 442. doi: 10.1038/ajg.2009.622. Epub 2009 Oct 27. PubMed PMID: 19861954; and Gompertz M, Fernandez L, Lara I, Miranda JP, Mancilla C, Berger Z. [Bedside index for severity in acute pancreatitis (BISAP) score as predictor of clinical outcome in acute pancreatitis: retrospective review of 128 patients]. Rev Med Chil. 2012 Aug; 140(8):977-83. doi: 10.1590/S0034-98872012000800002. Spanish. PubMed PMID: 23282769。
【0072】
<膵炎の治療上の改善>
本明細書には、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤の投与などを介した、膵炎及びその症状の治療上の改善のための組成物及び方法が開示される。幾つかの実施形態において、膵炎は急性膵炎である。幾つかの実施形態において、膵炎は慢性膵炎である。幾つかの実施形態において、ヒトの膵炎の症状を改善する方法が開示される。幾つかの実施形態において、ヒトの膵炎の症状を改善する方法が開示され、該方法は、膵炎の症状の改善を必要とするヒトを特定する工程、及び、前記症状を改善するのに十分な投与量で前記ヒトに細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程を含む。
【0073】
前記ヒトは、例えば、BISAP、Ranson’s、APACHE-II、及びCTSIなどの膵炎の症状の一般的な試験を用いて特定されてもよい。試験はBISAPでもよい。試験はRanson’sでもよい。試験はAPACHE-IIでもよい。試験はCTSIでもよい。幾つかの実施形態において、ヒトは、5、4、3、2、又は1のBISAPスコアを持つことにより、膵炎の症状の改善を必要性とするヒトとして特定される。幾つかの実施形態において、ヒトは2のBISAPスコアを持つとして特定される。幾つかの実施形態において、ヒトは3のBISAPスコアを持つとして特定される。幾つかの実施形態において、ヒトは4のBISAPスコアを持つとして特定される。幾つかの実施形態において、ヒトは5のBISAPスコアを持つとして特定される。幾つかの実施形態において、ヒトは、本明細書に開示される膵炎の症状といった、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は9より多くの膵炎の症状を有していると特定される。幾つかの実施形態において、ヒトではなく、被験体は非ヒト哺乳動物である。
【0074】
幾つかの実施形態において、症状は急性膵炎の症状である。幾つかの実施形態において、症状は慢性膵炎の症状である。
【0075】
症状は、腹痛、血中アミラーゼレベルの増加、血液リパーゼレベルの増加、膵臓の拡張、吐き気、嘔吐、内出血、腸麻痺、発熱、黄疸、体重減少、及び心拍数の上昇の、少なくとも1つを含む場合がある。症状は、早熟な消化酵素活性化を含み得る。早熟な消化酵素活性化は例えば、前記ヒトの膵臓に生じる場合もある。幾つかの実施形態において、酵素はトリプシンを含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤は化合物Iを含む。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤はGSK-7975Aを含む。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤は化合物IIを含む。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤は化合物IIIを含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、オピエートを含む鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、モルヒネを含む鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、フェンタニルを含む鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、トラマドールを含む鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、メペリジンを含む鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物のために決定されたインビトロのIC50値に等しい、同じ程度、又はそれよりも高い組織レベル濃度を達成するために送達される。幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物のために決定されたインビトロのIC50値の1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、11x、12x、13x、14x、15x、16x、17x、18x、19x、20x、21x、22x、23x、24x、25x、26x、27x、28x、29x、30x、31x、32x、33x、34x、35x、36x、37x、38x、39x、40x、41x、42x、43x、44x、45x、46x、47x、48x、49x、50x、51x、52x、53x、54x、55x、56x、57x、58x、59x、60x、61x、62x、63x、64x、65x、66x、67x、68x、69x、70x、71x、72x、73x、74x、75x、76x、77x、78x、79x、80x、81x、82x、83x、84x、85x、86x、87x、88x、89x、90x、91x、92x、93x、94x、95x、96x、97x、98x、99x、100x、又は1xから100xまでの任意の非整数倍算である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0078】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物のために決定されたインビトロのIC50値の1x~100x、2x~80x、3x~60x、4x~50x、5x~45x、6x~44x、7x~43x、8x~43x、9x~41x、又は10x~40x、或いは前記範囲の任意の非整数に及ぶ、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0079】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、21μM、22μM、23μM、24μM、25μM、26μM、27μM、28μM、29μM、30μM、31μM、32μM、33μM、34μM、35μM、36μM、37μM、38μM、39μM、40μM、41μM、42μM、43μM、44μM、45μM、46μM、47μM、48μM、49μM、50μM、51μM、52μM、53μM、54μM、55μM、56μM、57μM、58μM、59μM、60μM、61μM、62μM、63μM、64μM、65μM、66μM、67μM、68μM、69μM、70μM、71μM、72μM、73μM、74μM、75μM、76μM、77μM、78μM、79μM、80μM、81μM、82μM、83μM、84μM、85μM、86μM、87μM、88μM、89μM、90μM、91μM、92μM、93μM、94μM、95μM、96μM、97μM、98μM、99μM、100μM、又は約1μM~約100μMに及ぶ任意の非整数倍算である、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0080】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM~100μM、2μM~90μM、3μM~80μM、4μM~70μM、5μM~60μM、6μM~50μM、7μM~40μM、8μM~30μM、9μM~20μM、又は10μM~40μM、或いは前記範囲内の任意の整数又は非整数に及ぶ、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0081】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、9.5μM~10.5μM、9μM~11μM、8μM~12μM、7μM~13μM、5μM~15μM、2μM~20μM、又は1μM~50μM、或いは前記範囲内の任意の整数又は非整数に及ぶ、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0082】
幾つかの実施形態において、膵炎の改善は、少なくとも1つの膵炎の症状の重症度の低減を含む。幾つかの実施形態において、膵炎の改善は、少なくとも1つの膵炎症状の重症度の低減を含み、その結果、前記症状はこれ以上、以前に影響を受けたヒトに対し影響を及ぼさない。幾つかの実施形態において、改善は、ヒトに対する効果が無くなるような、少なくとも1つの症状の低減を含む。幾つかの実施形態において、改善は、前記症状の10%、20%、30%、40%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%の低減を含む。幾つかの実施形態において、改善は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は9より多くまでの症状といった、複数の症状の重症度の低減を含み、前記症状は全ての症状を含み、前記低減は、前記症状の10%、20%、30%、40%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%の低減を含む。
【0083】
幾つかの実施形態において、改善は、急性膵炎又は慢性膵炎などの膵炎の進行を止めることを含む。幾つかの実施形態において、改善は、臓器不全、膵臓壊死、又は死といった、より重度の症状が生じないように、急性膵炎又は慢性膵炎など膵炎の進行を止めることを含む。
【0084】
<急性膵炎及び慢性膵炎の予防的な改善>
本明細書には、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤の投与などを介した、急性膵炎及びその症状の予防的な改善のための組成物及び方法が開示される。幾つかの実施形態において、ヒトの膵炎の症状を改善する方法が開示される。幾つかの実施形態において、ヒトの膵炎の症状を改善する方法が開示され、該方法は、膵炎の予防的な症状の改善を必要とするヒトを特定する工程、及び、前記症状を予防的に改善するのに十分な投与量で前記ヒトに細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を投与する工程を含む。
【0085】
幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤は化合物Iを含む。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤はGSK-7975Aを含む。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤は化合物IIを含む。幾つかの実施形態において、CRACチャネル阻害剤は化合物IIIを含む。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の改善は、オピエートなどの鎮痛剤薬物を投与することを更に含む。モルヒネは、幾つかの実施形態において典型的な鎮痛剤である。
【0086】
幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物のために決定されたインビトロのIC50値に等しい、同じ程度、又はそれよりも高い組織レベル濃度を達成するために送達される。幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物のために決定されたインビトロのIC50値の1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、11x、12x、13x、14x、15x、16x、17x、18x、19x、20x、21x、22x、23x、24x、25x、26x、27x、28x、29x、30x、31x、32x、33x、34x、35x、36x、37x、38x、39x、40x、41x、42x、43x、44x、45x、46x、47x、48x、49x、50x、51x、52x、53x、54x、55x、56x、57x、58x、59x、60x、61x、62x、63x、64x、65x、66x、67x、68x、69x、70x、71x、72x、73x、74x、75x、76x、77x、78x、79x、80x、81x、82x、83x、84x、85x、86x、87x、88x、89x、90x、91x、92x、93x、94x、95x、96x、97x、98x、99x、100x、又は1xから100xまでの任意の非整数倍算である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0087】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物のために決定されたインビトロのIC50値の1x~100x、2x~80x、3x~60x、4x~50x、5x~45x、6x~44x、7x~43x、8x~43x、9x~41x、又は10x~40x、或いは前記範囲の任意の非整数に及ぶ、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0088】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、21μM、22μM、23μM、24μM、25μM、26μM、27μM、28μM、29μM、30μM、31μM、32μM、33μM、34μM、35μM、36μM、37μM、38μM、39μM、40μM、41μM、42μM、43μM、44μM、45μM、46μM、47μM、48μM、49μM、50μM、51μM、52μM、53μM、54μM、55μM、56μM、57μM、58μM、59μM、60μM、61μM、62μM、63μM、64μM、65μM、66μM、67μM、68μM、69μM、70μM、71μM、72μM、73μM、74μM、75μM、76μM、77μM、78μM、79μM、80μM、81μM、82μM、83μM、84μM、85μM、86μM、87μM、88μM、89μM、90μM、91μM、92μM、93μM、94μM、95μM、96μM、97μM、98μM、99μM、100μM、又は約1μM~約100μMに及ぶ任意の非整数倍算である、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0089】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM~100μM、2μM~90μM、3μM~80μM、4μM~70μM、5μM~60μM、6μM~50μM、7μM~40μM、8μM~30μM、9μM~20μM、又は10μM~40μM、或いは前記範囲内の任意の整数又は非整数に及ぶ、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0090】
幾つかの実施形態において、カルシウムシグナル伝達阻害剤は、9.5μM~10.5μM、9μM~11μM、8μM~12μM、7μM~13μM、5μM~15μM、2μM~20μM、又は1μM~50μM、或いは前記範囲内の任意の整数又は非整数に及ぶ、組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0091】
幾つかの実施形態において、前記方法は、急性膵炎の症状を予防的に改善することを含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、慢性膵炎の症状を予防的に改善することを含む。
【0092】
膵炎の症状の予防的な改善は、膵炎の少なくとも1つの症状の重症度、発生の可能性、又は症状の期間の減少を含み得る。膵炎の症状の予防的な改善は、膵炎の少なくとも1つの症状がヒトに生じなくなる時点まで、膵炎の少なくとも1つの症状の重症度、発生の可能性、又は期間を減少させることを含み得る。幾つかの実施形態において、膵炎の症状の予防的な改善は、2、3、4、5、6、7、8、9、又は9より多くの膵炎の症状の重症度、発生の可能性、又は期間を低下させることを含み、及び、本明細書に開示される膵炎の症状といったヒトの膵炎の全ての症状の重症度、発生の可能性、又は期間を低下させることを含む。幾つかの実施形態において、ヒトではなく、被験体は非ヒト哺乳動物である。
【0093】
幾つかの実施形態において、ヒトは、胆石を有していると診断される。幾つかの実施形態において、ヒトは、約30分から数時間にわたり着実に増加し得る、疼痛、例えば腹部の右上側の激痛、及び/又は悪心嘔吐といった、胆石がある場合の症状を示す。患者はまた、肩甲骨間の、又は右肩より下に関連痛を経験する場合もある。
【0094】
幾つかの実施形態において、ヒトはアルコール中毒に悩んでいる。幾つかの実施形態において、ヒトは慢性的なアルコール摂取に悩んでいる。幾つかの実施形態において、ヒトは急性アルコール中毒の少なくとも1つの例に悩んでいる。
【0095】
幾つかの実施形態において、ヒトは薬物レジメンに晒され、該薬物レジメンは、コルチコステロイドなどのステロイド、プレドニゾロン、HIV薬物、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲン、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、高血糖治療薬、メトホルミン、ビルダグリピン及びシタグリピンなどのグリピン、非定型抗精神病剤、クロザピン、リスペリドン、及びオランザピンの少なくとも1つの投与を含む。
【0096】
幾つかの実施形態において、ヒトは、膵炎の遺伝型を抱いていると特定される。幾つかの実施形態において、ヒトは、遺伝した膵炎に関連するTrypsin1の突然変異対立遺伝子を抱いている。幾つかの実施形態において、ヒトは、膵炎に関連するトリプシノゲン変異型酵素を抱いている。幾つかの実施形態において、ヒトは、遺伝した膵炎に関連するSPINK1の突然変異対立遺伝子を抱いている。幾つかの実施形態において、ヒトは、遺伝した膵炎に関連する嚢胞性線維症膜通過伝導率レギュレータの突然変異対立遺伝子を抱いている。
【0097】
幾つかの実施形態において、ヒトは、高血圧カルシウム、低温症、内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法(ERCP)、分割膵、膵臓の先天性奇形、2型糖尿病、膵臓癌、膵管内結石、血管炎、膵臓における微小血管の炎症、コクサッキーウイルス感染症、及び、急性間欠性ポルフィリン症と骨髄性プロトポルフィリン症などのポルフィラ属(porphyra)の少なくとも1つに悩んでいる。
【0098】
幾つかの実施形態において、前記ヒトの身体の健康状態は、胆石、エタノール中毒、アルコール中毒、外傷、ムンプス、自己免疫障害、サソリ刺症、高脂血症、低温症、副甲状腺機能亢進症、及び内視鏡的逆行性胆管膵管撮影、アザチオプリン並びにバルプロ酸の少なくとも1つの影響を受けている。
【0099】
幾つかの実施形態において、前記ヒトの身体の健康状態は、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ムンプス、水痘帯状ヘルペスウイルス、Legionella菌、Leptospira菌、Mycoplasma菌、Salmonella菌、Aspergillus真菌、Ascaris寄生虫、Cryptosporidium細胞、及びToxoplasma細胞の少なくとも1つにより影響を受けている。
【0100】
<膵炎に関連した薬物との併用投与>
本明細書には、カルシウムチャネル阻害剤と、膵炎に関連した薬物との併用投与のための組成物及び投与レジメンが開示される。幾つかの実施形態において、投与レジメンは、膵臓の活性二対する負の影響に関連した薬物の個体への投与、及び細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤の投与を含む。
【0101】
幾つかの実施形態において、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物は、以下から成る一覧から選択される薬物である:コルチコステロイドなどのステロイド、プレドニゾロン、HIV薬物、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲン、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、高血糖治療薬、メトホルミン、ビルダグリピン及びシタグリピンなどのグリピン、非定型抗精神病剤、クロザピン、リスペリドン、及びオランザピン、アザチオプリン、並びにバルプロ酸。
【0102】
幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOC阻害剤である。幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRAC阻害剤である。典型的なCRAC阻害剤は化合物Iを含む。典型的なCRAC阻害剤はGSK-7975Aを含む。典型的なCRAC阻害剤は化合物IIを含む。典型的なCRAC阻害剤は化合物IIIを含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、投与レジメンは、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物と合わせて、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤の投与を含む。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物として同日に投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物として同じ週に投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物の投与と同時に投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物のための投与パターンとは無関係の投与レジメンのパターンで投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物として、経口又は静脈内といった同じ送達経路を介して投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物とは別の投与経路を介して投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、例えば血中アミラーゼ活性の増加、又は本明細書に開示される少なくとも1つの膵炎の症状の発症を介して、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物の影響の少なくとも1つの兆候を示した直後にのみ、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物を受けるヒトに投与される。幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくともつといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、例えば血中アミラーゼ活性の増加、又は本明細書に開示される少なくとも1つの膵炎の症状の発症を介して、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物の影響の少なくとも1つの兆候に関連したヒトにおいて、又は該ヒトから何の証拠も存在しない場合に、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物を受けるヒトに投与される。
【0104】
幾つかの実施形態において、化合物I、GSK 7975A、化合物II、及び化合物IIIの少なくとも1つといった、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤は、膵臓の活性に対する負の影響に関連した薬物の投与を含む1つの組成物において投与される。従って、本明細書に開示される幾つかの実施形態は、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤と、膵臓の活性に対する負の影響に関連した少なくとも1つの薬物とを含む組成物に関連する。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの薬物は、次のものから成る一覧から選択される:コルチコステロイドなどのステロイド、プレドニゾロン、HIV薬物、ジダノシン、ペンタミジン、利尿薬、バルプロ酸、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、エストロゲン、コレステロールを低下させるスタチンなどのスタチン、高血糖治療薬、メトホルミン、ビルダグリピン及びシタグリピンなどのグリピン、非定型抗精神病剤、クロザピン、リスペリドン、及びオランザピン、アザチオプリン、並びにバルプロ酸。
【0105】
幾つかの実施形態において、前記組成物の細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOC阻害剤である。幾つかの実施形態において、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRAC阻害剤である。幾つかの実施形態において、前記CRAC阻害剤は化合物Iを含む。幾つかの実施形態において、前記CRAC阻害剤はGSK-7975Aを含む。幾つかの実施形態において、前記CRAC阻害剤は化合物IIを含む。幾つかの実施形態において、前記CRAC阻害剤は化合物IIIを含む。
【0106】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値に等しい、その近くである、またはそれを超える組織レベル濃度を達成するために送達される。幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値の、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、11x、12x、13x、14x、15x、16x、17x、18x、19x、20x、21x、22x、23x、24x、25x、26x、27x、28x、29x、30x、31x、32x、33x、34x、35x、36x、37x、38x、39x、40x、41x、42x、43x、44x、45x、46x、47x、48x、49x、50x、51x、52x、53x、54x、55x、56x、57x、58x、59x、60x、61x、62x、63x、64x、65x、66x、67x、68x、69x、70x、71x、72x、73x、74x、75x、76x、77x、78x、79x、80x、81x、82x、83x、84x、85x、86x、87x、88x、89x、90x、91x、92x、93x、94x、95x、96x、97x、98x、99x、100x、または1xから100xまでの範囲の非整数倍である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0107】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値の、1xから100x、2xから80x、3xから60x、4xから50x、5xから45x、6xから44x、7xから43x、8xから43x、9xから41x、または10xから40xの範囲、あるいは前述の範囲内の非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0108】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、21μM、22μM、23μM、24μM、25μM、26μM、27μM、28μM、29μM、30μM、31μM、32μM、33μM、34μM、35μM、36μM、37μM、38μM、39μM、40μM、41μM、42μM、43μM、44μM、45μM、46μM、47μM、48μM、49μM、50μM、51μM、52μM、53μM、54μM、55μM、56μM、57μM、58μM、59μM、60μM、61μM、62μM、63μM、64μM、65μM、66μM、67μM、68μM、69μM、70μM、71μM、72μM、73μM、74μM、75μM、76μM、77μM、78μM、79μM、80μM、81μM、82μM、83μM、84μM、85μM、86μM、87μM、88μM、89μM、90μM、91μM、92μM、93μM、94μM、95μM、96μM、97μM、98μM、99μM、100μM、または約1μMから約100μMの範囲の非整数倍である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0109】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μMから100μM、2μMから90μM、3μMから80μM、4μMから70μM、5μMから60μM、6μMから50μM、7μMから40μM、8μMから30μM、9μMから20μM、または10μMから40μMの範囲、あるいは前述の範囲内の整数または非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0110】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、9.5μMから10.5μM、9μMから11μM、8μMから12μM、7μMから13μM、5μMから15μM、2μMから20μM、または1μMから50μMの範囲、あるいは前述の範囲内の整数または非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0111】
幾つかの実施形態では、組成物は、賦形剤、可溶化剤、界面活性剤、崩壊剤、および緩衝液の少なくとも1つをさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、液体またはエマルジョンである。幾つかの実施形態では、組成物は、液体、ナノ粒子、ナノ粒子懸濁液、またはナノ粒子エマルジョンである。幾つかの実施形態では、組成物は錠剤である。
【0112】
<カルシウムシグナル伝達およびウイルス病>
病原ウイルスが生物の身体(宿主)に侵入するときに、ウイルス病が生じる。ビリオンと呼ばれる感染性ウイルス粒子は、宿主の感受性細胞に付着し、入る。カルシウムシグナル伝達は、宿主細胞中のウイルスの進入、産生、および伝染を調節し、それによって、ウイルス病が蔓延する。例として、宿主細胞のカルシウムシグナル伝達は、STIM1媒介性およびOrai媒介性のカルシウム流入の活性化によるウイルス病によって引き起こされ、これによって、ウイルスは、宿主細胞内で出芽し、増殖することがさらに可能になる。
【0113】
ウイルス病は、多種多様であり、ゲノム型、ビリオン形状、増殖部位などの構造特性によって分類される。特定の限定しない例として、ウイルス病は出血熱ウイルスを含む。幾つかの態様では、出血熱ウイルスは、アレナウイルス、フィロウイルス、ブンヤウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、またはそれらの組み合わせである。出血熱ウイルスは、限定しない例として、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、ロタウイルス、西ナイルウイルス、ジカウイルス、コクサッキーウイルス、B型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、デング熱ウイルス、リフトバレーウイルスなどを含む。
【0114】
本明細書には、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤の投与などによる、ウイルス病およびその症状の予防的改善のための組成物および方法が開示される。幾つかの実施形態では、人におけるウイルス病の症状を改善する方法が示される。幾つかの実施形態では、人におけるウイルス病の症状を改善する方法が開示され、該方法は、ウイルス病の症状の予防的改善を必要とする人を特定する工程、および細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を、前記症状を予防的に改善するのに十分な用量で前記人に投与する工程を含む。
【0115】
幾つかの実施形態では、ウイルス病の共通の症状は、発熱または出血性素因を含む。さらなる実施形態では、ウイルス病の症状は、顔面紅潮、胸部紅潮、点状出血、毛細管漏出、出血、膨潤、浮腫、低血圧、ショック、またはそれらの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、ウイルス病の症状は、倦怠感、筋肉痛、頭痛、嘔吐、下痢、またはそれらの組み合わせを含む。
【0116】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤は化合物Iを含む。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤はGSK-7975Aを含む。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤は化合物IIを含む。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤は化合物IIIを含む。幾つかの実施形態では、ウイルス病の症状の改善は、抗ウイルス薬またはワクチンを投与する工程をさらに含む。
【0117】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値に等しい、その近くである、またはそれを超える組織レベル濃度を達成するために送達される。幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値の、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、11x、12x、13x、14x、15x、16x、17x、18x、19x、20x、21x、22x、23x、24x、25x、26x、27x、28x、29x、30x、31x、32x、33x、34x、35x、36x、37x、38x、39x、40x、41x、42x、43x、44x、45x、46x、47x、48x、49x、50x、51x、52x、53x、54x、55x、56x、57x、58x、59x、60x、61x、62x、63x、64x、65x、66x、67x、68x、69x、70x、71x、72x、73x、74x、75x、76x、77x、78x、79x、80x、81x、82x、83x、84x、85x、86x、87x、88x、89x、90x、91x、92x、93x、94x、95x、96x、97x、98x、99x、100x、または1xから100xの範囲の非整数倍である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0118】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値の、1xから100x、2xから80x、3xから60x、4xから50x、5xから45x、6xから44x、7xから43x、8xから43x、9xから41x、または10xから40xの範囲、あるいは前述の範囲内の非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0119】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、21μM、22μM、23μM、24μM、25μM、26μM、27μM、28μM、29μM、30μM、31μM、32μM、33μM、34μM、35μM、36μM、37μM、38μM、39μM、40μM、41μM、42μM、43μM、44μM、45μM、46μM、47μM、48μM、49μM、50μM、51μM、52μM、53μM、54μM、55μM、56μM、57μM、58μM、59μM、60μM、61μM、62μM、63μM、64μM、65μM、66μM、67μM、68μM、69μM、70μM、71μM、72μM、73μM、74μM、75μM、76μM、77μM、78μM、79μM、80μM、81μM、82μM、83μM、84μM、85μM、86μM、87μM、88μM、89μM、90μM、91μM、92μM、93μM、94μM、95μM、96μM、97μM、98μM、99μM、100μM、または約1μMから約100μMの範囲の非整数倍である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0120】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μMから100μM、2μMから90μM、3μMから80μM、4μMから70μM、5μMから60μM、6μMから50μM、7μMから40μM、8μMから30μM、9μMから20μM、または10μMから40μMの範囲、あるいは前述の範囲内の整数または非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0121】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、9.5μMから10.5μM、9μMから11μM、8μMから12μM、7μMから13μM、5μMから15μM、2μMから20μM、または1μMから50μMの範囲、あるいは前述の範囲内の整数または非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0122】
幾つかの実施形態では、該方法は、急性ウイルス病の症状を予防的に改善する工程を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、慢性ウイルス病の症状を予防的に改善する工程を含む。
【0123】
ウイルス病の症状を予防的に改善する工程は、ウイルス病の少なくとも1つの症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を低下させる工程を含む。ウイルス病の症状を予防的に改善する工程は、ウイルス病の少なくとも1つの症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を、前記少なくとも1つの症状が人に生じないポイントまで低下させる工程を含む。幾つかの実施形態では、ウイルス病の症状を予防的に改善する工程は、本明細書に開示されたウイルス病の症状などの、人におけるウイルス病のすべての症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を低下させる工程を含む、ウイルス病の2、3、4、5、6、7、8、9、または9を超える症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を低下させる工程を含む。幾つかの実施形態では、被験体は、人よりもむしろヒト以外の哺乳動物である。
【0124】
<カルシウムシグナル伝達およびTh17誘発性疾患>
Tヘルパー細胞(Th細胞)は免疫系機能に重要である。Th細胞は、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子、またはそれらの組み合わせを含む、T細胞サイトカインを放出することによって免疫系を調節する。Tヘルパー17細胞(Th17)は、炎症性促進性Th細胞のサブセットであり、インターロイキン17(IL-17)のそれらの産生によって定義される。Th17の調節異常は、炎症性および自己免疫性の疾患に関連する。カルシウムシグナル伝達は、Th17分化の調節に重大な役割を果たす。
【0125】
本明細書には、CRAC阻害剤などのカルシウムチャネル阻害剤の投与などによる、Th17誘発性疾患およびその症状の予防的改善のための組成物および方法が開示される。幾つかの実施形態では、人におけるTh17誘発性疾患の症状を改善する方法が開示される。幾つかの実施形態では、人におけるTh17誘発性疾患の症状を改善する方法が開示され、該方法は、Th17誘発性疾患の症状の予防的改善を必要とする人を特定する工程、および細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤を、前記症状を予防的に改善するのに十分な用量で前記人に投与する工程を含む。
【0126】
幾つかの実施形態では、Th17誘発性疾患の症状は、急性炎症を含む。人における炎症の症状は、局所発赤、腫脹、熱、痛み、硬直、発熱、悪寒、疲労、頭痛、食欲不振、またはそれらの組み合わせを含む。幾つかの態様では、症状は、胴体、腕、手、指、脚、足、つま先、頭、首、骨、関節、咽喉、鼻腔、目、またはそれらの組み合わせを含む、人の身体上に生じる。
【0127】
他の実施形態では、Th17誘発性疾患は、慢性炎症または慢性炎症性疾患を含む。慢性炎症性疾患は、限定しない例として、枯草熱、歯周炎、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、または癌を含む。
【0128】
さらなる実施形態では、Th17誘発性疾患は自己免疫性疾患を含む。自己免疫性疾患は、身体の免疫系が正常細胞を攻撃する疾患である。自己免疫性疾患は、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、内分泌腺、外分泌腺、消化器系、組織、血液、神経系、または脈管系に生じる。限定しない例として、自己免疫性疾患は、関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、乾癬、シェーグレン症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、脈管炎、側頭動脈炎などを含む。
【0129】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はSOCチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤はCRACチャネル阻害剤である。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤は化合物Iを含む。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤はGSK-7975Aを含む。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤は化合物IIを含む。幾つかの実施形態では、CRACチャネル阻害剤は化合物IIIを含む。幾つかの実施形態では、Th17誘発性疾患の症状の改善は、抗炎症薬を投与する工程をさらに含む。
【0130】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値に等しい、その近くである、またはそれを超える組織レベル濃度を達成するために送達される。幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値の、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、7x、8x、9x、10x、11x、12x、13x、14x、15x、16x、17x、18x、19x、20x、21x、22x、23x、24x、25x、26x、27x、28x、29x、30x、31x、32x、33x、34x、35x、36x、37x、38x、39x、40x、41x、42x、43x、44x、45x、46x、47x、48x、49x、50x、51x、52x、53x、54x、55x、56x、57x、58x、59x、60x、61x、62x、63x、64x、65x、66x、67x、68x、69x、70x、71x、72x、73x、74x、75x、76x、77x、78x、79x、80x、81x、82x、83x、84x、85x、86x、87x、88x、89x、90x、91x、92x、93x、94x、95x、96x、97x、98x、99x、100x、または1xから100xの範囲の非整数倍である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0131】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、化合物に対して判定されたインビトロでのIC50値の、1xから100x、2xから80x、3xから60x、4xから50x、5xから45x、6xから44x、7xから43x、8xから43x、9xから41x、または10xから40xの範囲、あるいは前述の範囲内の非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0132】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、21μM、22μM、23μM、24μM、25μM、26μM、27μM、28μM、29μM、30μM、31μM、32μM、33μM、34μM、35μM、36μM、37μM、38μM、39μM、40μM、41μM、42μM、43μM、44μM、45μM、46μM、47μM、48μM、49μM、50μM、51μM、52μM、53μM、54μM、55μM、56μM、57μM、58μM、59μM、60μM、61μM、62μM、63μM、64μM、65μM、66μM、67μM、68μM、69μM、70μM、71μM、72μM、73μM、74μM、75μM、76μM、77μM、78μM、79μM、80μM、81μM、82μM、83μM、84μM、85μM、86μM、87μM、88μM、89μM、90μM、91μM、92μM、93μM、94μM、95μM、96μM、97μM、98μM、99μM、100μM、または約1μMから約100μMの範囲の非整数倍である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0133】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、1μMから100μM、2μMから90μM、3μMから80μM、4μMから70μM、5μMから60μM、6μMから50μM、7μMから40μM、8μMから30μM、9μMから20μM、または10μMから40μMの範囲、あるいは前述の範囲内の整数または非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0134】
幾つかの実施形態では、細胞内カルシウムシグナル伝達阻害剤は、9.5μMから10.5μM、9μMから11μM、8μMから12μM、7μMから13μM、5μMから15μM、2μMから20μM、または1μMから50μMの範囲、あるいは前述の範囲内の整数または非整数である組織レベル濃度を達成するために送達される。
【0135】
幾つかの実施形態では、該方法は、急性のTh17誘発性疾患の症状を予防的に改善する工程を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、慢性のTh17誘発性疾患の症状を予防的に改善する工程を含む。
【0136】
Th17誘発性疾患の症状を予防的に改善する工程は、Th17誘発性疾患の少なくとも1つの症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を低下させる工程を含む。Th17誘発性疾患の症状を予防的に改善する工程は、 Th17誘発性疾患の少なくとも1つの症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を、前記少なくとも1つの症状が人に生じないポイントまで低下させる工程を含む。幾つかの実施形態では、Th17誘発性疾患の症状を予防的に改善する工程は、本明細書に開示されたTh17誘発性疾患の症状などの、人におけるTh17誘発性疾患のすべての症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を低下させる工程を含む、Th17誘発性疾患の2、3、4、5、6、7、8、9、または9を超える症状の重症度、発症の可能性、または持続時間を低下させる工程を含む。幾つかの実施形態では、被験体は、人よりもむしろヒト以外の哺乳動物である。
【0137】
<特定の用語>
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、請求される主題が属する一般に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書の用語に複数の定義がある場合、このセクションの定義が優先される。本明細書で言及される、すべての特許、特許出願、公報、および公開されたヌクレオチドおよびアミノ酸配列(例えば、GenBankまたは他のデータベースにおいて入手可能な配列)は、引用によって組み込まれる。URLまたは他のそのような特定子あるいはアドレスが言及される場合、そのような特定子が変わる場合があり、インターネットに関する特定の情報が現れたり消えたりする場合があるが、同等な情報をインターネット検索により発見できることが理解される。そのようなものに対する言及は、そのような情報の利用可能性および公的な普及を証拠づけるものである。
【0138】
前述の一般的な記載および以下の詳細な記載は、典型的且つ例示的なものにすぎず、請求される主題を限定するものでないことが理解される。本出願では、単数形の使用は、特に他に明記されない限り、複数形を包含している。本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容が特に他に明確に指示していない限り、複数の指示対象を包含することが留意されなければならない。本出願では、「または」の使用は、特に他に明記されない限り、「及び/又は」を意味する。さらに、用語「含む(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」といった他の形態と同様に限定されない。
【0139】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成的な目的のみであり、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。
【0140】
標準の化学用語の定義は、限定されないが、Carey and Sundberg ”Advanced Organic Chemistry 4th Ed.” Vols. A (2000) and B (2001), Plenum Press, New Yorkを含む、参考文献で見られ得る。他に指示がない限り、質量分光法、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換DNA技術および薬理学の従来の方法が使用され得る。
【0141】
具体的な定義が提供されない限り、本明細書に記載される、関連して利用される命名法、検査法、検査技術、分析化学、有機合成化学、医薬品化学、および薬化学は、当該技術分野で認識されるものである。標準的な技術が、化学合成、化学分析、薬剤調整、処方、送達、および患者の処置に使用され得る。標準的な技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織の培養と形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用され得る。反応および精製の技術は、例えば、メーカーの仕様書のキットを用いて、または当該技術で一般に遂行されるように又は本明細書に記載されるように行われ得る。前述の技術および手順は、一般に、従来の方法で及び本明細書全体にわたって引用および議論される様々な一般的且つより具体的な参考文献で記載されるように行うことができる。
【0142】
本明細書に記載される方法および組成物が、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、構築物、および試薬に限定されず、そのようなものは変わり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみについて記載する目的にあり、本明細書に記載される方法、化合物、組成物の範囲を限定するようには意図されないことも理解されるべきである。
【0143】
用語「キット」および「製品」は、同義語として使用される。
【0144】
用語「被験体」または「患者」は、哺乳動物および非哺乳動物を包含する。哺乳動物の例は、限定されないが、以下の哺乳動物の分類のメンバーを含む:ヒト、チンパンジーなどのヒト以外の霊長類、および他の類人猿並びにサル類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物;ラット、マウスおよびモルモットなどの、げっ歯類を含む実験動物。非哺乳動物の例は、限定されないが、鳥、魚などを含む。本明細書で提供される方法および組成物の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0145】
用語「処置する(treat)」、「処置している(treating)」、および「処置(treatment)」は、本明細書で使用されるように、予防的及び/又は治療的に、疾患または疾病の症状を軽減、減少、または改善すること、 さらなる症状を予防すること、 症状の根底にある原因を改善または予防すること、 疾患または疾病を阻害すること、 例えば、疾患または疾病の進行を阻止すること、 疾患または疾病を緩和すること、 疾患または疾病を退行させること、 疾患または疾病により生じる状態を緩和すること、 あるいは疾患または疾病を止めることを含む。本明細書で使用されるように、用語「標的タンパク質」は、化合物Aの群からの構造を有する化合物などの、本明細書に記載される化合物によって結合することができる、またはそれと相互作用することができる、タンパク質またはタンパク質の一部を指す。特定の実施形態では、標的タンパク質はSTIMタンパク質である。特定の実施形態では、標的タンパク質はOraiタンパク質である。
【0146】
本明細書で使用されるように、「STIMタンパク質」は、限定されないが、ヒトおよびげっ歯類(例えば、マウス)STIM-1、キイロショウジョウバエのD-STIM、線虫(C.elegans)のC-STIM、 ガンビアハマダラカのSTIMなどの、哺乳動物のSTIM-1、およびヒトおよびげっ歯類(例えば、マウス)のSTIM-2などの、哺乳動物のSTIM-2を含む。(US2007/0031814の段落番号[0211]から[0270]、および表3を参照し、これらは引用によって本明細書に組み込まれる。)本明細書で記載されるように、そのようなタンパク質は、ストア感受性カルシウムの流入またはその調節、細胞質カルシウム緩衝化、及び/又は細胞内カルシウムストア(例えば小胞体)におけるカルシウムレベルまたは細胞内カルシウムストアへの、内の又はそこから出るカルシウムの移動の調節に関係する、関与する、及び/又はそれらを提供するものとして特定されている。
【0147】
本明細書で使用されるように、「Oraiタンパク質」は、Orai1(WO 07/081804に記載されるSEQ ID NO:1)、Orai2(WO 07/081804に記載されるSEQ ID NO:2)、またはOrai3(WO 07/081804に記載されるSEQ ID NO:3)を含む。Orai1核酸配列は、GenBank accession number NM_032790に対応し、Orai2核酸配列は、GenBank accession number BC069270に対応し、およびOrai3核酸配列は、GenBank accession number NM_152288に対応している。本明細書で使用されるように、Oraiは、Orai遺伝子のいずれか1つ、例えば、Orai1、Orai2、Orai3を指す(WO 07/081804の表Iを参照)。本明細書で記載されるように、そのようなタンパク質は、ストア感受性カルシウムの流入またはその調節、細胞質カルシウム緩衝化、及び/又は細胞内カルシウムストア(例えば小胞体)におけるカルシウムレベルまたは細胞内カルシウムストアへの、内の又はそこから出るカルシウムの移動の調節に関係する、関与する、及び/又はそれらを提供するものとして特定されている。
【0148】
タンパク質(例えばSTIM、Orai)に言及するときの用語「フラグメント」または「誘導体」は、少なくとも1つのアッセイにおいて天然タンパク質と同じ生物学的機能または活性を本質的に保存するタンパク質またはポリペプチドを意味する。例えば、参照されたタンパク質のフラグメントまたは誘導体は、例えば、カルシウム流入アッセイによって判定されるように、天然タンパク質の活性の少なくとも約50%、少なくとも75%、または少なくとも約95%を維持する。
【0149】
本明細書で使用されるように、特定の化合物または医薬組成物の投与による、特定の疾患、障害、または疾病の症状の「改善」は、化合物または組成物の投与に起因または関連して、恒久的または一時的、永続的または瞬間的であろうと、重症度の低下、発症の遅れ、進行を減速、または持続期間の短縮を指す。
【0150】
用語「調節する(modulate)」は、本明細書で使用されるように、ほんの一例として、標的の活性を阻害する、あるいは標的の活性を限定する又は減少させることを含む、標的タンパク質の活性を変更するように、直接または間接的に、標的タンパク質と相互作用することを意味する。
【0151】
本明細書で使用されるように、用語「モジュレーター(modulator)」は、標的の活性を変更する化合物を指す。例えば、モジュレーターは、モジュレーターがない状態での活性の規模と比較して、標的の特定の活性の規模の増大または縮小を引き起こし得る。特定の実施形態では、モジュレーターは、標的の1つ以上の活性の規模を縮小させる阻害剤である。特定の実施形態では、阻害剤は、標的の1つ以上の活性を完全に防ぐ。
【0152】
本明細書で使用されるように、細胞内カルシウムに関する「調節(modulation)」は、限定されないが、細胞質及び/又は細胞内カルシウム貯蔵小器官、例えば、小胞体におけるカルシウム濃度の変更、および細胞への、細胞から出る及び細胞内のカルシウム流の動態の変更を含む、細胞内カルシウムの変更または調整を指す。態様では、調節は減少を指す。
【0153】
本明細書で使用されるように、用語「標的活性」は、モジュレーターによって調節することができる生物活性を指す。特定の典型的な標的活性は、限定されないが、結合親和性、シグナル伝達、酵素活性、腫瘍増殖、炎症または炎症関連のプロセス、および疾患または疾病に関連する1つ以上の症状の改善を含む。
【0154】
本明細書で使用されるような、用語「阻害する(inhibits)」、「阻害すること(inhibiting)」、またはSOCチャネル活性またはCRACチャネル活性の「阻害剤(inhibitor)」は、ストア感受性カルシウムチャネル活性またはカルシウム放出依存性カルシウムチャネル活性の阻害に言及している。
【0155】
本明細書で使用されるような、製剤、組成物または成分に関する用語「許容可能な」は、処置されている被験体の健康状態に対する持続的な有害効果がないことを意味する。
【0156】
本明細書で使用されるような、用語「薬学的に許容可能な」は、化合物の生物活性または特性を抑制しない、および比較的無毒である、つまり、物質が、望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、または含まれる組成物の成分のいずれかと有害な方法で相互作用することなく個体に投与され得る、担体、希釈剤、または製剤などの物質に言及している。
【0157】
本明細書で使用されるような用語「医薬組成物」は、1つを超える有効成分の混合または組み合わせから結果として生じる、および有効成分の固定および非固定の組み合わせの両方を含む生成物を意味する。用語「固定の組み合わせ」は、1つの有効成分、例えば化合物Aの群からの構造を有する化合物および助剤が、特定の干渉する時間制限なしで、同時に、共に又は連続して、別個の存在として患者に投与されることを意味し、ここで、そのような投与は患者の身体に有効レベルの2つの化合物を提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば3つ以上の有効成分の投与にも当てはまる。
【0158】
用語「医薬組成物」は、本明細書に記載される化合物Aの群からの構造を有する化合物と、担体、安定剤、賦形剤、界面活性剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は添加剤などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を促進する。限定されないが、以下を含む、化合物を投与する複数の技術が当該技術分野に存在する:静脈、経口、エアロゾル、非経口、眼、皮下、筋肉内、肺および局所の投与。
【0159】
本明細書で使用されるような、用語「有効な量」または「治療上有効な量」は、処置されている疾患または疾病の症状の1つ以上をある程度緩和する、投与されている薬剤または化合物の十分な量を指す。その結果、疾患の徴候、症状、または原因が減少及び/又は軽減され得るか、または生物系の他の望ましい変更がもたらされ得る。例えば、治療用途のための「有効な量」は、疾患症状の臨床的に有意な減少を提供するのに必要とされる、化合物Aの群からの構造を有する化合物を含む組成物の量である。個々の場合における適切な「有効な」量は、用量漸増試験などの技術を使用して判定され得る。
【0160】
本明細書で使用されるような用語「増強する(enhance)」または「増強する(enhancing)」は、効能または持続時間のいずれかにおいて望ましい結果を増大させる又は延長することを意味する。したがって、治療剤の効果を増強することに関して、用語「増強する」は、効能または持続時間のいずれかにおいて、系に対する他の治療剤の効果を増大させる又は延長する能力に言及している。本明細書で使用されるような「増強する有効な量」は、望ましい系において別の治療剤の効果を増強するのに十分な量を指す。
【0161】
本明細書で使用されるような、用語「同時投与」などは、1人の患者に対する選択された治療剤の投与を包含するように意図され、同じ又は異なる投与経路または同じ又は異なる投与時間で薬剤が投与される処置レジメンを含むように意図されている。
【0162】
本明細書で使用されるような、用語「担体」は、細胞または組織の中への化合物の取り込みを促進する、比較的無毒な化学化合物または薬剤を指す。
【0163】
用語「希釈剤」は、送達前に対象の化合物を希釈するために使用される化学化合物を指す。希釈剤はまた、より安定した環境を提供することができるため、化合物を安定させるためにも使用され得る。(pHの制御または維持も提供することができる)緩衝液中に溶解された塩が、限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液を含む、当該技術分野における希釈剤として利用される。
【0164】
本明細書に開示される化合物の「代謝物」は、化合物の代謝時に形成される、その化合物の誘導体である。用語「活性代謝物」は、化合物が代謝される時に形成される、化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。本明細書で使用されるような、用語「代謝した(metabolized)」は、生物によって特定の物質が変化させられるプロセス(限定されないが、加水分解反応、および酵素によって触媒される反応を含む)の全体に言及している。したがって、酵素は、化合物への特定の構造的変化をもたらし得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化反応および還元反応を触媒する一方で、ウリジン2リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、および遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の転移を触媒する。
代謝に関するさらなる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw-Hill (1996)から得られる。本明細書に開示される化合物の代謝物は、宿主への化合物の投与および宿主からの組織サンプルの分析によって、または肝細胞を用いた化合物のインビトロでのインキュベーションおよびその結果生じる化合物の分析によって特定され得る。
【0165】
「バイオアベイラビリティ」は、試験されている動物またはヒトの全身に循環して送達される、本明細書に開示される化合物(例えば化合物Aの群からの化合物)の重量のパーセンテージを指す。静脈内に投与されたときの薬物の総曝露(AUC(0-∞))は、通常、100%バイオアベイラブル(bioavailable)(F%)であるとして定義される。「経口バイオアベイラビリティ」は、静脈注射と比較した、医薬組成物が経口で服用さるときに本明細書に開示される化合物が全身に循環して吸収される程度を指す。
【0166】
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分中の化合物Aの群からの構造を有する化合物の濃度を指す。代謝及び/又は他の治療剤との考えられる相互作用に関する変動性のため、本明細書に記載される化合物の血漿濃度は、被験体間で著しく変わり得ることが理解される。本明細書に開示される一実施形態に従って、本明細書には開示される化合物の血漿濃度は、被験体間で変わり得る。同様に、最大血漿濃度(Cmax)または最大血漿濃度に達する時間(Tmax)、あるいは血漿濃度時間曲線下の合計領域(AUC(0-∞))などの値は、被験体ごとに異なり得る。この変動性のため、化合物の「治療上有効な量」を構成するのに必要な量は、被験体ごとに変わり得る。
【0167】
本明細書で使用されるような、「カルシウム恒常性」は、細胞内の、カルシウムシグナル伝達を含む、細胞内カルシウムのレベルおよび移動の全体的なバランスの維持を指す。
本明細書で使用されるように、「細胞内カルシウム」は、特定の細胞位置の規定なしで細胞中に位置するカルシウムを指す。対照的に、カルシウムに関連する「サイトゾル(cytosolic)」または「細胞質(cytoplasmic)」は、細胞の細胞質に位置するカルシウムに言及している。
【0168】
本明細書で使用されるように、細胞内カルシウムに対する効果は、限定されないが、細胞内カルシウムのレベル、および細胞または細胞内カルシウムストアまたは小器官への、それらから出る、またはそれら内のカルシウムの位置および移動の変更を含む、細胞内カルシウムの態様の変更である。例えば、細胞内カルシウムに対する効果は、例えば、細胞またはその一部に生じるカルシウム流または移動の動態、感度、速度、振幅、および電気生理学的特徴などの、特性の変更であり得る。細胞内カルシウムに対する効果は、ストア感受性カルシウム流入、サイトゾルカルシウム緩衝化、および細胞内カルシウムストアにおけるカルシウムレベルまたは細胞内カルシウムストアへの、そこから出る、またはその中のカルシウムの移動を含む、細胞内カルシウム調節のプロセスの変更であり得る。これらの態様はいずれも、限定されないが、カルシウムまたは他のイオン(特にカチオン)レベルの評価、カルシウムまたは他のイオン(特にカチオン)の移動、カルシウムまたは他のイオン(特にカチオン)レベルの変動、カルシウムまたは他のイオン(特にカチオン)流の動態、及び/又は膜を通るカルシウムまたは他のイオン(特にカチオン)の輸送を含む、様々な方法で評価することができる。変更は、そのような統計的に有意である変化であり得る。したがって、例えば、被検細胞および対照細胞中の細胞内カルシウムが異なると言われている場合、そのような差は統計的有意差であり得る。
【0169】
本明細書で使用されるような、タンパク質と細胞内カルシウムまたは細胞内カルシウム調節の態様との間の関連性に関する「関係する(involved in)」は、細胞中のタンパク質の発現または活性が減少、変更または除去されるときに、細胞内カルシウムまたは細胞内カルシウム調節の1つ以上の態様が共に又は関連して減少、変更または除去される。発現または活性のそのような変更または減少は、タンパク質のレベルを変更することによるタンパク質をコードする遺伝子の発現の変更によって生じ得る。例えば、ストア感受性カルシウム流入などの細胞内カルシウムの態様に関係するタンパク質は、それ故、細胞内カルシウムまたは細胞内カルシウム調節の態様を提供する又はそれに関与するタンパク質であり得る。例えば、ストア感受性カルシウム流入を提供するタンパク質は、STIMタンパク質及び/又はOraiタンパク質であり得る。
【0170】
本明細書で使用されるように、カルシウムチャネルの成分であるタンパク質は、チャネルを形成する多タンパク質複合体に関与するタンパク質である。
【0171】
本明細書で使用されるような、サイトゾルカルシウムのレベルに関連する「基礎」または「静止」は、細胞への又はそこから出る又は細胞内のカルシウムの移動を結果としてもたらす症状にさらされていない、例えば未刺激細胞などの、細胞の細胞質中のカルシウムの濃度に言及している。基礎または静止のサイトゾルカルシウムのレベルは、細胞への又はそこから出るカルシウムの移動を結果としてもたらす症状にさらされていない、例えば未刺激細胞などの、細胞の細胞質中の遊離カルシウム(つまり、細胞のカルシウム結合物質に結合されていないカルシウム)の濃度であり得る。
【0172】
本明細書で使用されるような、カチオン、例えばカルシウムを含む、イオンに関する「移動」は、細胞への、細胞から出る、または細胞内の、イオンの移動または再配置(例えば、流れなど)を指す。したがって、イオンの移動は、例えば、細胞外培地から細胞への、細胞内から細胞外培地への、細胞内小器官または貯蔵部位からサイトゾルへの、サイトゾルから細胞内小器官または貯蔵部位への、1つの細胞内小器官または貯蔵部位から別の細胞内小器官または貯蔵部位への、細胞外培地から細胞内小器官または貯蔵部位への、
細胞内小器官または貯蔵部位から細胞外培地への、および細胞の細胞質内の1の位置から別の位置へのイオンの移動であり得る。
【0173】
本明細書で使用されるような、細胞への「カチオン進入」または「カルシウム流入」は、細胞の細胞質などの細胞内位置への又は細胞内小器官または貯蔵部位の内腔へのカルシウムなどのカチオンの進入を指す。したがって、カチオン進入は、例えば、細胞外培地から或いは細胞内小器官または貯蔵部位からの細胞の細胞質へのカチオンの移動、あるいは細胞質または細胞外培地からの細胞内小器官または貯蔵部位へのカチオンの移動であり得る。細胞内小器官または貯蔵部位からの細胞質へのカルシウムの移動はまた、細胞内小器官または貯蔵部位からの「カルシウム放出」とも呼ばれる。
【0174】
本明細書で使用されるような、「細胞内カルシウムを調節するタンパク質」は、細胞内カルシウムの調節、制御及び/又は変更に関係する細胞タンパク質を指す。例えば、そのようなタンパク質は、限定されないが、静止または基礎の細胞質カルシウムのレベルの維持、または静止または基礎の状態からの細胞内カルシウムの偏向(deviation)を含む機構を介して細胞中に伝達されるシグナルに対する細胞反応への関与を含む、様々な方法で、細胞内カルシウムの変更または調整に関係し得る。「細胞内カルシウムを調節するタンパク質」との関連で、「細胞(cellular)」タンパク質は、例え、細胞質タンパク質、細胞膜関連タンパク質または細胞内膜タンパク質などの、細胞に関連するタンパク質である。細胞内カルシウムを調節するタンパク質は、限定されないが、イオン輸送タンパク質、カルシウム結合タンパク質、およびイオン輸送タンパク質を調節する調節タンパク質を含む。
【0175】
本明細書で使用されるような、用語「改善する(ameliorate)」は、疾患、症状または疾病の影響を縮小し、予防し、緩和し、及び/又は減少させて、前記影響がゼロまたは有効にゼロであるような完全な減少を含む、疾患または疾病の改善または疾患または疾病に関連する症状の少なくとも部分的な軽減を引き起こすことを意味する。
【0176】
本明細書で使用されるように、「細胞反応」は、細胞への又はそこから出る又は細胞内のイオン移動に起因する細胞反応を指す。細胞反応は、少なくとも部分的に、例えばカルシウムなどのイオンに依存する細胞活性に関連し得る。そのような活性は、例えば、細胞活性化、遺伝子発現、エンドサイトーシス、エキソサイトーシス、細胞輸送およびアポトーシス細胞死を含み得る。
【0177】
本明細書で使用されるように、「免疫細胞」は、限定されないが、T細胞、B細胞、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、形質細胞、白血球細胞、抗原提示細胞およびナチュラルキラー細胞などの、免疫系の細胞および免疫反応において機能または活性を実行する細胞を含む。
【0178】
本明細書で使用されるように、「サイトカイン」は、分泌細胞または別の細胞の挙動または特性を変更することができる細胞によって分泌された小さな可溶性タンパク質を指す。サイトカインは、サイトカイン受容体に結合し、細胞内の挙動または特性、例えば、細胞の増殖、死、分化を引き起こす。典型的なサイトカインは、限定されないが、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-1α、IL-1β、およびIL-1 RA)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、オンコスタチンM、エリトロポイエチン、白血病阻害因子(LIF)、インターフェロン、B7.1(CD80としても知られる)、B7.2(B70、CD86としても知られる)、TNFファミリーメンバ(TNF-α、TNF-β、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail)、およびMIFを含む。
【0179】
「ストア感受性カルシウム流入」または「SOCE」は、細胞内ストアからのカルシウムイオンの放出が細胞膜にわたるイオン流入で調整される機構を指す。
【0180】
「SOCチャネル活性の選択的阻害剤」は、阻害剤がSOCチャネルに選択的であり、他のタイプのイオンチャネルの活性に実質的に影響しないことを意味する。
【0181】
「CRACチャネル活性の選択的阻害剤」は、阻害剤がCRACチャネルに選択的であり、他のタイプのイオンチャネル及び/又は他のSOCチャネルの活性に実質的に影響しないことを意味する。
【0182】
本明細書で使用されるように、用語「カルシウム」は、元素または二価カチオンCa2+を指すために使用され得る。
【0183】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され記載されるが、そのような実施形態が例示目的のみで提供されることは当業者にとって明白となる。多くの変更、変化、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到される。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、これらの請求項の範囲内の方法および構造並びにそれらの同等物が、それによって包含されるものであることが意図されている。
【実施例0184】
実施例1:GSK-7975AによるCRACチャネル阻害は、マウスおよびヒトの膵腺房細胞中の壊死をブロックする(Blocks)
マウスの膵腺房細胞(PAC)を抽出し、GSK-7975Aの存在下または不存在下で担体(対照)または天然の胆汁酸TLCS(タウロリソコール酸 3-硫酸塩)でインキュベートした。細胞を、ヨウ化プロピジウムと接触させ、細胞壊死に関して分析した。インビトロでの個々の細胞に対するTLCS処置は、胆石、またはインビボでの膵液分泌中の他の閉塞(blockage)の効果を模倣する。
【0185】
図1Aで示されるように、TLCSは、実験機関の間に細胞の約45%において壊死を誘発した。10μMのGSK-7975Aの添加は、このパーセント壊死を半分の約23%に減少させた。アスタリスクは統計的に有意な変化を示す。TLCSで処置されてない細胞は、約10%の壊死を実証した。この結果は、GSK-7975Aが、マウスPACに対するTLCSの壊死誘発性効果を低下させることを実証している。
【0186】
ヒトPACを抽出し、GSK-7975Aの存在下または不存在下で担体(対照)または天然の胆汁酸TLCSでインキュベートした。細胞を、ヨウ化プロピジウムと接触させ、細胞壊死に関して分析した。インビトロでの個々の細胞に対するTLCS処置は、胆石、またはインビボでの膵液分泌中の他の閉塞の効果を模倣する。
【0187】
図1Bで示されるように、TLCSは、実験機関の間に細胞の約45%において壊死を誘発した。10μMのGSK-7975Aの添加は、このパーセント壊死を約30%に減少させた。アスタリスクは統計的に有意な変化を示す。TLCSで処置されてない細胞は、約23%の壊死を実証した。この結果は、GSK-7975Aが、ヒトPACに対するTLCSの壊死誘発性効果を低下させることを実証している。
【0188】
実施例2:CRACチャネル阻害剤(GSK-7975A)は、APのマウスモデルにおいて組織病理学的変化をブロックする
膵臓の組織病理学的進行に対するCRAC阻害剤の効果を評価するために、マウスの急性膵炎モデルを使用した。マウスの膵臓において標準のカルシウムシグナル伝達経路におけるCCK受容体を過剰刺激するために、セルレインを使用する。胆石誘発性急性膵炎において経験されるように、過剰の胆汁酸のシミュレーションによって急性膵炎を誘発するために、TLCSを使用する。アルコール誘発性急性膵炎をシミュレートするために、脂肪酸エチルエステル(FAEE)を使用する。マウスを、急性膵炎用試薬(セルレイン(図2A)、TLCS(図2B)、またはFAEE(図2C))単独で、またはCRAC阻害剤のIC50の10xまたは40xでのCRAC阻害剤GSK-7975Aで処置した。
【0189】
GSK-7975Aが、CRAC阻害剤がない状態で試薬で処置したマウスと比較して、処置したマウスの合計の組織病理学的スコアを大きく低下させることが観察されている。この効果は、統計的に有意であり、10xIC50よりも40xIC50で実質的により顕著であったが、より低い濃度で観察された。アスタリスクは統計的に有意な変化を示す。そのインビトロでのIC50値の10倍または40倍を超える組織レベルを達成する用量でのGSK-7975Aは、膵臓の病理組織診断(histopathology)の著しい低下をもたらす。
【0190】
図2A、2Bおよび2Cで示された結果は、CRAC阻害剤が急性膵炎の組織病理学的症状を改善することができることを示している。この効果は、誘発剤またはモデル化されている急性膵炎のタイプとは無関係に観察される。
【0191】
実施例3:化合物IおよびGSK-7975Aは、CRACチャネルを阻害する
化合物IおよびGSK-7975Aを、CRACチャネルに対するそれらの阻害効果に関して分析した。Orai1/STIM1およびOrai2/STIM1を含むチャネルを分析した。図3Aで示されるように、化合物Iが、119nMの平均のIC50でOrai1/STIM1チャネルを、および895nMの平均のIC50でOrai2/STIM1チャネルを阻害したと判定された。図3Bで示されるように、GSK-7975Aが、398nMの平均のIC50でOrai1/STIM1チャネルを、および1453nMの平均のIC50でOrai2/STIM1チャネルを阻害したことが判定された。化合物Iは、GSK-7975Aと比較して、Orai1タイプのCRACチャネルに対して約4倍より強力である。両方の化合物は、Orai2タイプのCRACチャネルよりもOrai1に対してより強力である。
【0192】
これらの結果は、カルシウムシグナル伝達に対するGSK-7975Aのために観察された効果が、CRAC阻害剤に対して一般化することができること、およびGSK-7975A以外のCRAC阻害剤が、幾つかのパラメーターでGSK-7975Aよりも優れているかもしれないことを示している。
【0193】
実施例4:化合物Iは、マウスの膵腺房細胞においてストア感受性Ca2+流入(SOCE)をブロックする
マウスPACを分離し、ERへのカルシウム再取り込みに対するCRAC阻害剤の効果に関して分析した。細胞を、シクロピアゾン酸(CPA)単独で(図4A)、またはCRAC阻害剤化合物Iと組み合わせて(図4B)処置して、CRACチャネルを活性化し、Ca2+を放出する。カルシウム放出の15分後、細胞に過剰のカルシウムを提供し、ERへのカルシウム取り込みに関してモニタリングした。CRACの阻害剤で処置した細胞が、カルシウムの再取り込みを実証しないことが観察される。
【0194】
この結果は、CRAC阻害剤が、シグナル伝達の続くラウンドのためにERをカルシウムで再充填する細胞の能力をブロックし得ることを示す。
【0195】
実施例5:化合物IおよびGSK-7975Aは、用量依存的にマウスの膵腺房細胞中のSOCEをブロックする
マウスPACを、CRAC阻害剤化合物I(図5A)またはGSK-7975A(図5B)で処置し、カルシウム取り込みのそれらの速度に関してモニタリングした。両方のCRAC阻害剤は、700nMの阻害剤での処置後に、50%の対照レベルに対するERへのストア感受性カルシウム流入の速度を低下させた。化合物Iは、10mMで再取込みの100%をブロックする。
【0196】
本実施例は、複数のCRAC阻害剤が各々、哺乳動物PACにおいてSOCEを阻害するように作用することを実証している。
【0197】
実施例6:化合物Iは、マウスの膵腺房細胞においてCCK誘発性Ca2+流入をブロックする。
マウスPACを、10nMのCCKでの処置後に、それらのカルシウム取り込みに関してモニタリングした。細胞をCCKで処置し、その後、細胞に1.8mMのカルシウムを提供し、カルシウム再取り込みをモニタリングした。CRAC阻害剤で予め処置された細胞(図6B)が、未処置の細胞(図6A)と比較して、実質的に縮小したカルシウム再取り込みを実証したことが観察された。化合物Iでの予めの処置は、カルシウム再取り込みを対照のほぼ0%に低下させた。GSK-7975Aは、カルシウム再取り込みを対照の約30%に低下させた。
【0198】
これらの結果は、CRAC阻害剤が、PAC中の過活動性のカルシウムシグナル伝達の減少において効果的であり得ることを示している。
【0199】
実施例7:化合物Iは複数のサイトカインを阻害する
化合物Iを、多くのサイトカインに対するその阻害効果に関して試験した。サイトカインのINF-ガンマ、IL-4、およびIL-4受容体を腺房細胞上で発現させ、サイトカインのIL-1ベータ、IL-6、IL-10およびTNF-アルファを腺房細胞中で発現させ、およびT細胞機能において重要なサイトカインである、IL-2およびIL-7を、CRAC阻害剤化合物Iの阻害効果に関して試験した。バルクの(bulk)ヒトPBMCのけるT細胞を、48時間、緩衝液+10%の血清中でプレート結合した抗CD3/抗CD28で刺激した、 放出されたサイトカインを、MilliporeのLuminexによって測定した。結果を図7に示す。ヒトPBMCでは、化合物Iは、T細胞において重要な役割を果たす複数のサイトカインの放出を強力に阻害する。
【0200】
これらのサイトカインデータは、PACデータと一緒に、化合物Iが急性膵炎において二重効果を有しており、免疫細胞および膵腺房細胞のシグナル伝達経路と死の両方を阻害するという結論を支持している。
【0201】
実施例8:化合物Iは、急性膵炎のマウスのカルシニューリンモデルにおいて強い効果を示す。
マウスを、予防的にCRAC阻害剤またはビヒクルで処置し、その後、CCKで負荷を与え(challenged)、急性膵炎を引き起こす。予防的に腹腔内(i.p.)投与された化合物Iは、マウスの膵臓(C57B6マウス)においてセルレイン誘発性病態の著しい及び用量依存的な減少をもたらした。この効果は、5mg/kgでの陽性対照CsAより著しく下回っており、用量依存的には増大した。図8Aを参照。該処置は、腹腔内注射後の膵臓における化合物Iレベルの用量比例的な増加を実証し(図8Bを参照)、これは上記の図8Aでの陽性結果に対応している。
【0202】
これらの結果は、急性膵炎を引き起こす又は急性膵炎のリスクを増大させる疑いのある第2の薬物の前に又はそれと共に、CRAC投与が、急性膵炎のリスクから予防的に保護し得る又はそれを低下させ得ることを示している。
【0203】
実施例9:化合物Iは、急性膵炎のマウスのセルレインモデルにおいて血清アミラーゼおよび血清リパーゼのレベルを低下させる
マウスを、処置しなかったか(標準)、CCKのみで処置したか(ビヒクル)、または示された用量でCsAまたはCRAC阻害剤と組み合わせたCCKで処置した。血清アミラーゼ活性(図9A)および血清リパーゼ活性(図9B)(IU/L)を測定した。
【0204】
CRAC阻害剤化合物Iは、20mg/kgの最大濃度で陽性対照CsAと同様に又はそれより優れて作用した。化合物Iは、セルレイン誘発性の血清アミラーゼおよび血清リパーゼ活性の著しい及び用量依存的な減少をもたらした。
【0205】
実施例10:化合物Iは、治療上のマウスのセルレインモデルにおいて膵臓の病態を減少させる。
7回の1時間ごとのセルレインの腹腔内注射を、膵炎を誘発するために行い、1回目の注射の8時間後に動物を屠殺した。化合物Iを、第1のセルレイン注射(予防)の30分前、または3回目の注射(治療)後に腹腔内投与した。CsAを、化合物Iと同じスケジュールで経口(p.o.)投与した。結果を図10に示す。
【0206】
組織病理学的スコアを、腺房細胞の変性、凝固壊死、および炎症の観察および浮腫の測定値(measurements)に照らして測定した。化合物Iは、3回目のセルレイン注射後に投与されたときに、膵臓中のセルレイン誘発性病態の著しい35%の減少をもたらし、これは、治療モードでの効果と一致していた。化合物Iでの予防処置はまた、病態を26%減少させた。
【0207】
その結果は、化合物IなどのCRAC阻害剤が、予防的または治療的に投与されたときに、膵臓の組織病理学的スコアに対して相当な効果があることを示している。
【0208】
実施例11:化合物Iは、マウスの膵腺房細胞においてTLCS誘発性Ca2+流入をブロックする。
マウスPACを、500μMのTLCSおよび0.1μMまたは3μMのCRACの阻害剤化合物Iで処置した。サイトゾルカルシウムのレベル(F345/F380比率として測定された)を、各処置のために測定した。TLCSは、細胞内ストア(図示せず)からCa2+を放出し、SOCEを開始する。この実験では、1μMまたは3μMの化合物Iは、TLCS誘発性Ca2+流入を完全にブロックした。結果を図11に示す。
【0209】
この結果は、CRAC阻害剤が、哺乳動物における胆石関連の急性膵炎においてカルシウムシグナル伝達に正の効果をもたらすことに有効であり得ることを示す。
【0210】
実施例12:化合物Iおよび他のCCIは、マウスの膵腺房細胞においてTLCS誘発性アミラーゼ放出を阻害する
PACからのアミラーゼ放出には、ERカルシウム依存性およびCRAC/サイトゾルカルシウム依存性の要素(component)がある。カルシウム依存性要素を、二価カチオンのキレート剤EGTAの導入によってブロックする。マウスの腺房細胞を、TLCS、および化合物I、GSK-7975Aまたは化合物IIなどの、ビヒクル、EGTA、またはCRAC阻害剤で処置し、アミラーゼ放出に関してモニタリングした。CRAC阻害剤がアミラーゼ放出に対するそれらの効果においてEGTAを模倣したことが観察されている。図12を参照。
【0211】
この結果は、CRAC阻害剤が、TLCS誘発性のカルシウム放出後にERへのカルシウムの再取り込みをブロックし、それによって、アミラーゼ放出の阻害に対するEGTAの効果を模倣することを示している。
【0212】
実施例13:化合物Iは、マウスの膵腺房細胞においてTLCS誘発性壊死を阻害する
マウスPACを、DMSO、DMSO+500μMのTLCS、またはDMSO+500μMのTLCS+1μMのCRACの阻害剤化合物Iで処置した。細胞壊死を、%PI取り込みとして測定した。CRAC阻害剤化合物Iは、マウスPACにおいてTLCS誘発性壊死を阻害する。
【0213】
これらのデータは、Ca2+およびアミラーゼのデータと一緒に、化合物IがAPのTLCSモデルにおいて効果的であることを示している。
【0214】
実施例14:急性膵炎の患者における化合物I、GSK-7975A、および化合物IIの化合物の安全性および効果の第II相試験
この第II相試験の目的は、急性膵炎および付随するSIRSの患者における、化合物I、GSK-7975A、および化合物IIなどのカルシウムシグナル伝達阻害剤、または化合物Aの群から選択される化合物の単回および繰り返しの静脈注射の安全性、耐性、PK、PD、および効果を調査することにある。
【0215】
患者:試験は、試験のエントリーで2以上のSIRSスコアと評価された、中程度または重度の膵炎を進行させる高リスクの30人の患者を登録する。
【0216】
基準:
包含基準:
・ すべての被験体は、試験の間に、および男性に関しては投薬後少なくとも12週間および女性に関しては投薬後32週間、妊娠していないことを保証するために、許容可能な避妊を使用しなければならない。
・ 55-95kgの体重範囲に加えて、18.5-35kg/mの範囲内の肥満度指数。
・ 被験体は、インフォームドコンセントを与えることができなければならず、試験要件およびタイムテーブルに従うことができる;
・ 18歳以上の男性および女性の被験体が適格である。
・ 被験体は、急性膵炎の発症が生涯で初めでなければならない。
・ 急性膵炎の診断は、以下の3つの基準の2つに基づいていなければならない:(1)典型的な上腹部痛;(2)正常上限の少なくとも3倍の血清アミラーゼ及び/又はリパーゼの上昇;(3)造影剤強調のCTスキャンまたは腹部の超音波画像が急性膵炎の変化を実証している。
・ 被験体は、現在の膵炎発症のアルコール性、高トリグリセリド血症、または胆汁性の病因を支持する病歴を実証しなければならない(胆管膵炎については、超音波画像は試験のスクリーニング時に結石閉塞(stone obstruction)を除外しなければならない)。
・ 被験体は、3以上のBISAPスコアを実証しなければならない。
・ 試験の処置開始が、症状発症の48時間以内に可能である。
【0217】
除外基準:
・ 翌週に侵襲的胆管内介入(例えばERCP)の高い可能性。
・ 膵炎の再発。
・ 試験のエントリーでの膵臓壊死のCT証拠。
・ 重度の慢性腎不全(30mL/分の処方での又は腎透析に依存した、腎臓病における食事の変更)。
・ クラスIIまたはそれ以上のニューヨーク心臓協会心不全。
・ 酸素依存性の慢性閉塞性肺疾患(COPD)。
・ 肝硬変。
・ 重度の貧血症(8g/dL未満のヘモグロビン)。
・ 試験のエントリー時に35%未満の又は45%を超えるヘマトクリット(試験の処置が症状の発症の48時間以内に開始する限り、無作為化の前にヘマトクリットを補正するために、流体が投与され得る)。
・ 試験のエントリーでの250IU/Lを超える血清アラニンアミノトランスフェラーゼ。
・ 試験のエントリーでの上行性胆管炎の臨床的疑い。
・ 活動性の消化管出血。
・ 寛解中ではない現在の悪性腫瘍(皮膚の基底細胞癌以外)。
・ 精神状態の変化。
・ 現在の授乳または妊娠。
・ 十分且つ有効な避妊方法を使用しようとしない、出産の可能性のある女性(閉経後2年未満または外科的に滅菌されていない)。
・ 治験薬の成分に対する既知の過敏性。
・ 研究者またはスポンサーとの依存した関係性。
・ 本臨床試験の間、または本臨床試験の開始前30日以内の治験薬の試験への参加。
【0218】
試験デザイン:試験は、プラセボ群を7日間連続で毎日2回CRAC阻害剤で静脈内に処置したCRAC阻害剤の群と比較する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設、多国籍、パラレルアームの試験である。
【0219】
試験は、試験のエントリーで2以上のSIRSスコアと評価された、中程度または重度の膵炎を進行させる高リスクの45人の患者を登録する。
【0220】
試験の主要エンドポイントは、SIRSスコアまたはC反応性タンパク質(CRP)の血漿レベルの変化によって反映された、急性膵炎中の全身炎症に対するCRAC阻害剤の効果である。
【0221】
臨床試験での物質の投与は、急性膵炎症状の発症の24時間以内、または入院の18時間以内に開始する。被験体は、2回の投与のうち1回の投与でCRAC阻害剤を、またはプラセボを受けるために、1:1の比率で無作為化される。各2時間の注入の終わりのCRAC阻害剤の血清レベルもモニタリングされる。
【0222】
個々の被験体当たりの試験の持続時間は14日間であり、スクリーニング評価、少なくとも7日間の院内の観察期間の一部である、その後の最大7日間の二重盲検の処置期間、および14日目の最終的なフォローアップ訪問で構成される。
【0223】
主要評価項目:
・ C反応性タンパク質の血清中濃度。
・ 48時間でのSIRSの変化。
・ 血液アミラーゼおよびリパーゼのレベル。
【0224】
副次的評価項目、CRAC阻害剤対プラセボ:
・ 慣例の安全性臨床検査によるこの患者集団におけるCRAC阻害剤の安全性。
・ 身体検査および生命徴候のモニタリング、ECGおよび有害事象報告。
・ 他の血漿炎症性マーカー(インターロイキン-6、マトリックスメタロプロテアーゼ9、腫瘍壊死因子アルファなど)に対するCRAC阻害剤の効果。
・ 膵炎の臨床経過に対するCRAC阻害剤の効果(急性膵炎の重症度に対するベッドサイド指標(BISAP)、全身性炎症反応症候群(SIRS)および急性・慢性生理学的分類評価II(APACHE II)のスコアなどの、臨床的な評定尺度の変化、および造影剤強調の腹部コンピューター断層撮影(CT)に基づく)
・ 経時的臓器不全評価(SOFA)スコアの進行
・ 多臓器機能不全スコア(MODS)の進行
・ 全身性炎症反応症候群の進行
・ 炎症性および抗炎症性のメディエーター(IL-1RA、IL-10、IL-6、IL-18、TNF-α、ICAM-1、IL-10など)の進行。
・ 高い依存性または集中治療室および入院の長さに対する注意の増大。
【0225】
実施例15:化合物Iは、感染したVeroE6細胞のフニンウイルスの出芽を阻害する。
弱毒生Candid-1 JUNVに感染したVeroE6細胞を、DMSO、DMSO+500μMのTLCS、DMSO+500μMのTLCS+1μMのCRAC阻害剤化合物I、DMSO+500μMのTLCS+10μMの化合物I、DMSO+500μMのTLCS+25μMの化合物I、またDMSO+500μMのTLCS+50μMの化合物Iで処置する。これらの細胞から産生された感染性ビリオンを、フォーカス形成アッセイ中で定量化する。JUNVフォーカスの列挙(Enumeration)は、化合物Iによる処置後のJUNVウイルス産生の統計的に有意な、用量依存性の減少を明らかにしている。
【0226】
これらのデータは、Ca2+データと一緒に、化合物Iが、JUNVウイルスのウイルスの出芽の阻害に効果的であることを示している。
【0227】
実施例16:化合物Iは、ストア感受性Ca2+流入依存性のTh1、Th2、およびTh17の分化を特異的に阻害する。
Th1、Th2、およびTh17の極性化状態下で培養されたナイーブな刺激されたネズミT細胞を、DMSO、DMSO+500μMのTLCS、またはDMSO+500μMのTLCS+1μMのCRACの阻害剤化合物Iで処置する。ストア感受性Ca2+流入(SOCE)を各処置において定量化する。化合物Iは、ナイーブ、Th1、またはTh2の細胞におけるよりも、分化されたTh17細胞において、より強くSOCEをブロックする。さらに、Th17細胞によるIL-17A産生は、化合物Iの存在下において、Th1およびTh2の細胞による、それぞれ、IFN-γおよびIL-4の産生と比較したときに、より深刻に影響される。
【0228】
これらのデータは、Ca2+および追加の転写因子(つまり、IL-17A、RORα、およびRORγt)の発現データと一緒に、化合物Iが、Th17分化の阻害に効果的であることを示している。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学名N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミンである化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項3】
ヒトの膵炎の症状を改善するための医薬の製造における化合物の使用であって、前記化合物が、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、又はN-(5-(7-クロロ)-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、又はその薬学的に許容される塩である、使用。
【請求項4】
前記化合物が、N-(2,6-ジフルオロベンジル)-5-(1-エチル-3-(チアゾール-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ピリミジン-2-アミン、又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記化合物が、N-(5-(7-クロロ)-2,3-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジン-6-イル)ピリジン-2-イル)-2,6-ジフルオロベンズアミド、又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の使用。
【外国語明細書】