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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116610
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】PD-L1に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230815BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230815BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230815BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230815BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230815BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20230815BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20230815BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12N15/13
C12P21/08 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/63 Z
C07K16/42
C12N15/62 Z
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
G01N33/48 M
C12Q1/02
C12Q1/66
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093618
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2019548675の分割
【原出願日】2018-03-09
(31)【優先権主張番号】PA201700164
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201700408
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アルティンタス イシル
(72)【発明者】
【氏名】サティン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ブリンク エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルジル デニス
(72)【発明者】
【氏名】ラデメイカー リク
(72)【発明者】
【氏名】パレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】デ フーイ バート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトPD-L1に結合することができる新規の抗体クラス、及びヒトPD-L1に結合することができ且つヒトCD3に結合することができる二重特異性抗体を提供する。
【解決手段】ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、且つ、ヒトPD-L1との結合について、特定のアミノ酸配列で示したVH配列及びVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、特定のアミノ酸配列で示したVH配列及びVL配列を含む抗体とは競合しない、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体であって、
ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、かつ、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]とは競合しない、
前記抗体。
【請求項2】
ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と競合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体[476]によって置換されない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項4】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列を含む抗体[625]の結合によってブロックされない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]によってブロックされる、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、
請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1~4および6のいずれか一項に記載の抗体と、SEQ ID NO:94における位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)、位置123に対応する位置にあるアミノ酸残基(Y123)、および位置125に対応する位置にあるアミノ酸残基(R125)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1との結合と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[338]、請求項1~4および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~2、および6のいずれか一項に記載の抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置113におけるアミノ酸残基(R113)、位置123におけるアミノ酸残基(Y123)、および/または位置125におけるアミノ酸残基(R125)を含む、請求項1~2、および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1、3、4、および6のいずれか一項に記載の抗体と、SEQ ID NO:94における位置19に対応する位置にあるアミノ酸残基(F19)、位置42に対応する位置にあるアミノ酸残基(F42)、位置45に対応する位置にあるアミノ酸残基(E45)、位置46に対応する位置にあるアミノ酸残基(K46)、位置94に対応する位置にあるアミノ酸残基(L94)、および位置116に対応する位置にあるアミノ酸残基(I116)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[511]、請求項1、3、4、および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1、3、4、および6のいずれか一項に記載の抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置45におけるアミノ酸残基(E45)、位置46におけるアミノ酸残基(K46)、および/または位置94におけるアミノ酸残基(L94)からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、請求項1、3、4、および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の抗体と、SEQ ID NO:94における位置58に対応する位置にあるアミノ酸残基(E58)および位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[547]、請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置58におけるアミノ酸残基(E58)および/または位置113におけるアミノ酸残基(R113)を含む、請求項1、5、および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、および SEQ ID NO:21に示した配列からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[338]、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[511]、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、 SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列 DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[547]
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[547]
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
前記VH配列および前記VL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VH配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VL配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列が変異していない、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
抗体依存性細胞障害(ADCC)を介して、腺がんの上皮細胞の用量依存的溶解、例えば、MDA-MB-231の用量依存的溶解を誘導することができる、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
細胞溶解の結果として前記上皮細胞の培養物中の細胞数を少なくとも5%、例えば、少なくとも6%、7%、8%、9%、または少なくとも10%低減することができる、請求項19に記載の抗体。
【請求項21】
ADCCが、51Cr放出アッセイ法、例えば、実施例14に開示されるアッセイ法においてインビトロで測定される、請求項19または20に記載の抗体。
【請求項22】
ADCCが、請求項19または20に記載の抗体とエフェクター細胞、例えば末梢血単核球(PBMC)とを含む組成物と共に前記上皮細胞を37℃、5%CO2で4時間インキュベートすることによってインビトロで測定され、該組成物中の抗体の量が0.1~1μg/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比が100:1である、請求項19または20に記載の抗体。
【請求項23】
上皮細胞の前記溶解が、ADCCの代わりとしてのルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、実施例14に開示されるルミネセンスADCCレポーターバイオアッセイ法においてインビトロで測定される、請求項19または20に記載の抗体。
【請求項24】
ADCCが、
(i)前記上皮細胞の培養物を、請求項23に記載の抗体とFcγRIIIa(CD16)およびホタルルシフェラーゼを安定発現するジャーカットヒトT細胞(エフェクター細胞)とを含む組成物と、1:1のエフェクター細胞:上皮細胞比で接触させ、
(ii)該上皮細胞の培養物および該エフェクター細胞を15分間室温に調節し、
(iii)該上皮細胞の培養物および該エフェクター細胞をルシフェラーゼ基質と共にインキュベートし、かつ
(iv)該細胞培養物におけるルシフェラーゼ生成を測定する
ことによって、インビトロで測定され、
該組成物中の抗体の量が0.5~250ng/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比が1:1である、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
前記上皮細胞のADCCが、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、請求項23または24において定義されたレポーターアッセイ法において測定され、次いで、請求項19、20、23、および24のいずれか一項に記載の抗体を含む試験組成物と共に該上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCが、参照抗体を含む組成物と共に該上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCの少なくとも1.5倍であり、ADCCが相対発光量(RLU)として測定され、該試験組成物中の抗体濃度と参照抗体を含む該組成物中の抗体濃度が同じでありかつ20~250ng/mlの範囲内であり、かつ該参照抗体が、
(a)SEQ ID NO:74に示したVH配列およびSEQ ID NO:78に示したVL配列を含む抗体;ならびに
(b)SEQ ID NO:81に示したVH配列およびSEQ ID NO:85に示したVL配列を含む抗体
より選択される、請求項19、20、23、および24のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列[547]
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体であって、
(i)SEQ ID NO:33に示したCDR1配列、SEQ ID NO:34に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:35に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:37に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、SEQ ID NO:38に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[321]、または
(ii)SEQ ID NO:47に示したCDR1配列、SEQ ID NO:48に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:49に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:51に示した配列を有するCDR1、配列 DVIを有するCDR2、およびSEQ ID NO:52に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[421]、または
(iii)SEQ ID NO:54に示したCDR1配列、SEQ ID NO:55に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:56に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:58に示した配列を有するCDR1、配列 RDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:59に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[476]、または
(iv)SEQ ID NO:61に示したCDR1配列、SEQ ID NO:62に示したCDR2配列、および SEQ ID NO:63に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:65に示した配列を有するCDR1、配列 DDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:66に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[516]、または
(v)SEQ ID NO:107に示したCDR1配列、SEQ ID NO:108に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:109に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:111に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、SEQ ID NO:113に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[625]、
(vi)SEQ ID NO:68に示したCDR1配列、SEQ ID NO:69に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:70に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:72に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:73に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[632]
を含む、該抗体。
【請求項28】
(i)SEQ ID NO:32に示したVH配列およびSEQ ID NO:36に示したVL配列[321]、または
(ii)SEQ ID NO:46に示したVH配列およびSEQ ID NO:50に示したVL配列[421]、または
(iii)SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列[476]、または
(iv)SEQ ID NO:60に示したVH配列およびSEQ ID NO:64に示したVL配列[516]、または
SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列[625]、
(v)SEQ ID NO:67に示したVH配列およびSEQ ID NO:71に示したVL配列[632]
を含む、請求項27に記載の抗体。
【請求項29】
一価である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項30】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体が、ヒトPD-L1に結合することができる2つの抗原結合領域を有する二価抗体であり、かつ、該2つの抗原結合領域が同一の可変領域配列を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項31】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体が、二価二重特異性抗体であり、ヒトPD-L1に結合することができる(第1の)前記抗原結合領域に加えて、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる(第2の)抗原結合領域を含み、該第2の抗原がヒトCD3εでない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項32】
ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域と、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域とを含む二重特異性抗体であって、
ヒトPD-L1に結合することができる該抗原結合領域が、前記請求項のいずれか一項に示した特徴を有する、該二重特異性抗体。
【請求項33】
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項32に記載の二重特異性抗体。
【請求項34】
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[338]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[338]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1配列、配列DDNを有するCDR2配列、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[547]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域
を含む、請求項32または33に記載の二重特異性抗体。
【請求項35】
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項36】
(i)前記二重特異性抗体が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含むことができる抗原結合領域を有する抗体と比較して、ヒトCD3ε結合についてのより低い親和性を有し、好ましくは、該親和性が、少なくとも1/2倍、例えば、少なくとも1/5倍、例えば、少なくとも1/10倍、例えば、少なくとも1/25倍、例えば、少なくとも1/50倍であり、かつ
(ii)該二重特異性抗体が、例えば、本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、PBMCまたは精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介することができる、
請求項32に記載の二重特異性抗体。
【請求項37】
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:99に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:100に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:101に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iv)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:102に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(v)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:103に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vi)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:104に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:105に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、請求項36に記載の二重特異性抗体。
【請求項38】
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:39に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:40に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:41に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iv)SEQ ID NO:42に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:43に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vi)SEQ ID NO:44に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vii)SEQ ID NO:45に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列
を含む、請求項36または37に記載の二重特異性抗体。
【請求項39】
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
ヒトPD-L1に結合することができる該抗原結合領域が請求項1~31のいずれか一項に示した特徴を有する、該多重特異性抗体。
【請求項40】
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4[338]、SEQ ID NO:11[511]、およびSEQ ID NO:21[547]に示した配列からなる群より選択される、請求項39に記載の多重特異性抗体。
【請求項41】
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[338]、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[511]、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[547]
を含む、請求項40に記載の多重特異性抗体。
【請求項42】
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1[338]、SEQ ID NO:8[511]、およびSEQ ID NO:18[547]に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む、請求項40または41に記載の多重特異性抗体。
【請求項43】
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:5[338]、SEQ ID NO:15[511]、およびSEQ ID NO:22[547]に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む、請求項40~42のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項44】
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[547]
を含む、請求項40~43のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項45】
前記VH配列および前記VL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VH配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VL配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列が変異していない、請求項40~44のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項46】
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列[547]
を含む、請求項40~45のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項47】
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、
該多重特異性抗体。
【請求項48】
ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する、請求項47に記載の多重特異性抗体。
【請求項49】
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
該抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない、該多重特異性抗体。
【請求項50】
ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、請求項49に記載の多重特異性抗体。
【請求項51】
ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合する、請求項49または50に記載の多重特異性抗体。
【請求項52】
請求項49~51のいずれか一項に記載の多重特異性抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる、請求項49~51のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項53】
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
該第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、
該多重特異性抗体。
【請求項54】
二重特異性である、請求項40~53のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項55】
二価である、請求項54に記載の多重特異性抗体。
【請求項56】
請求項40~55のいずれか一項に記載の多重特異性抗体が第2の抗原に結合することができ、かつ該第2の抗原がヒトCD3εではない、請求項40~55のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項57】
完全長抗体である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
完全長IgG1抗体である、請求項57に記載の抗体。
【請求項59】
抗体断片である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項60】
請求項32~59のいずれか一項に記載の抗体が、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がキメラであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子が、存在する場合にはキメラである、
請求項32~59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項61】
(i)ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域がヒト化されており、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる前記抗原結合領域が、存在する場合にはヒト化されている、
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項62】
(i)ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域がヒトであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる前記抗原結合領域が、存在する場合にはヒトである、
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項63】
前記抗原結合領域のそれぞれが重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ該可変領域がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項64】
2つの重鎖定常領域(CH)と2つの鎖定常領域(CL)とを含む、請求項63に記載の抗体。
【請求項65】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖のそれぞれが、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、該第1の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ該第2の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ、該第1の重鎖および該第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項66】
(i)前記第1の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がLであり、かつ、前記第2の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がRであるか、または(ii)前記第1の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がRであり、かつ、前記第2の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がLである、請求項65に記載の抗体。
【請求項67】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、かつ
該抗体が、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含む以外は同一の抗体と比べてより少ない程度まで、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、一方の重鎖または両方の重鎖が改変されている、
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項68】
前記Fcを介したエフェクター機能が、Fcを介したCD69発現を判定することによって測定されるか、Fcγ受容体への結合によって測定されるか、C1qへの結合によって測定されるか、またはFcを介したFcR架橋結合の誘導によって測定される、請求項67に記載の抗体。
【請求項69】
請求項67または68に記載の抗体が、野生型抗体と比較した場合に、Fcを介したCD69発現を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%低減するように、重鎖定常配列および軽鎖定常配列が改変されており、
該Fcを介したCD69発現が、PBMCに基づく機能アッセイ法において測定される、
請求項67または68に記載の抗体。
【請求項70】
前記請求項のいずれか一項に記載の抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項71】
前記第1の重鎖および前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEである、請求項70に記載の抗体。
【請求項72】
請求項71に記載の抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである、請求項71に記載の抗体。
【請求項73】
前記第1の重鎖および前記第2の重鎖おいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAである、請求項70に記載の抗体。
【請求項74】
請求項73に記載の抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである、請求項73に記載の抗体。
【請求項75】
ヒトPD-L2に結合しない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項76】
本明細書中の実施例8に記載の通りに測定した場合に、約10-8Mまたはそれ未満、例えば、約10-9Mまたはそれ未満、例えば、約10-10Mまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項77】
本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介する、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項78】
(i)請求項1~31のいずれか一項において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および/または
(ii)請求項1~31のいずれか一項において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
を含む、核酸構築物。
【請求項79】
(i)請求項33~38のいずれか一項において定義されたヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および
(ii)請求項33~38のいずれか一項において定義されたヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
をさらに含む、請求項73に記載の核酸構築物。
【請求項80】
請求項78または79において定義された核酸構築物を含む、発現ベクター。
【請求項81】
請求項78もしくは79において定義された核酸構築物または請求項80において定義された発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項82】
チャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞である、請求項81に記載の宿主細胞。
【請求項83】
請求項1~77のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項84】
医薬として使用するための、請求項1~77のいずれか一項に記載の抗体または請求項83に記載の薬学的組成物。
【請求項85】
がんの治療において使用するための、請求項1~80のいずれか一項に記載の抗体または請求項70に記載の薬学的組成物。
【請求項86】
固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患の治療において使用するための、請求項1~77のいずれか一項に記載の抗体または請求項70に記載の薬学的組成物。
【請求項87】
黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患の治療において使用するための、請求項1~78のいずれか一項に記載の抗体または請求項70に記載の薬学的組成物。
【請求項88】
それを必要とする対象に、請求項1~75のいずれか一項に記載の抗体または請求項83に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、疾患を治療する方法。
【請求項89】
がん、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患を治療するための医薬などの医薬を製造するための、請求項1~77のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項90】
1種類または複数種類のさらなる治療用物質との組み合わせ、例えば、化学療法剤との組み合わせを含む、請求項83~89のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項91】
(a)請求項1~13のいずれか一項において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ培養物から該第1の抗体を精製する工程;
(b)異なるPD-L1エピトープにまたは異なる抗原に結合することができる抗原結合領域、例えば、請求項14~19のいずれか一項において定義されたヒトCD3ε結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ該培養物から該第2の抗体を精製する工程;
(c)ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;および
(d)二重特異性抗体を得る工程
を含む、請求項1~77のいずれか一項に記載の抗体を産生するための方法。
【請求項92】
請求項1~77のいずれか一項において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規の抗体および医学におけるその使用に関する。特に、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができかつヒトCD3に結合することができる二重特異性抗体に関する。ヒトPD-L1に結合することができる新規の抗体クラスも提供される。本発明はさらに、本発明の抗体の使用に関し、かつ本発明の抗体を産生するための方法、核酸構築物、および宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
プログラム死リガンド1(PD-L1、PDL1、CD274、B7H1、B7-H1)は33kDa 1回膜貫通I型膜タンパク質である。選択的スプライシングに基づいて3種類のPD-L1アイソフォームが述べられている。PD-L1は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、1つのIg様C2型ドメインと1つのIg様V型ドメインを含有する。新鮮に単離されたT細胞およびB細胞は、ごくわずかな量のPD-L1を発現し、CD14+単球のほんの一部(約16%)しかPD-L1を構成的に発現しない(Rietz and Chen, 2004 Am J Transplant 4: 8-14(非特許文献1))。インターフェロン-γ(IFN-γ)が腫瘍細胞上のPD-L1をアップレギュレートすることが知られている(Abiko et al., 2015 Br J Cancer 112:1501-1509(非特許文献2); Dong et al., 2002 Nature Medicine 8(8): 793-800(非特許文献3))。
【0003】
PD-L1は、(1)活性化T細胞上のPD-L1の受容体PD-1(CD279)に結合することで腫瘍反応性T細胞を寛容化することによって(Dong et al., 前記; Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6(非特許文献4))、(2)腫瘍細胞が発現したPD-L1を介したPD-1シグナル伝達により、腫瘍細胞を、CD8+T細胞およびFasリガンドを介した溶解に対して耐性にすることによって(Azuma et al., 2008 Blood 111, 3635-43(非特許文献5));(3)T細胞が発現したCD80(B7.1)を介した逆向きのシグナル伝達によりT細胞を寛容化することによって(Butte et al., 2007 Immunity 27, 111-22(非特許文献6); Park et al., 2010 Blood 116, 1291-8(非特許文献7));ならびに(4)誘導されたT調節性細胞の発達および維持を促進することによって(Francisco et al., 2009 J Exp Med 206, 3015-29(非特許文献8))抗腫瘍免疫を妨害する。PD-L1は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、および結腸がんを含む多くのヒトがんにおいて発現している(Dong et al., 前記)。
【0004】
PD-L1ブロッキング抗体は、PD-L1を過剰発現することが知られている数種類のがん(黒色腫、NSCLCを含む)において臨床活性を示した。例えば、アテゾリズマブは、PD-L1に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。アテゾリズマブは、現在、様々なタイプの固形腫瘍を含む数種類の適応症に対する免疫療法剤として臨床試験中である(例えば、Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265(非特許文献9)を参照されたい)。PD-L1抗体であるアベルマブ(Kaufmanet al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385(非特許文献10))は、転移性メルケル細胞がんに罹患した成人および12才以上の小児患者の治療剤としてFDAにより承認されており、現在、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、中皮腫、NSCLC、卵巣がん、および腎臓がんを含む数種類のがん適応症において臨床試験中である。PD-L1抗体であるデュルバルマブは局所進行性または転移性の尿路上皮がん適応症に対して承認され、複数種類の固形腫瘍および血液がんにおいて臨床開発中である(例えば、Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25(非特許文献11)を参照されたい)。さらなる抗PD-L1抗体が、WO2004004771(特許文献1)、WO2007005874(特許文献2)、WO2010036959(特許文献3)、WO2010077634(特許文献4)、WO2013079174(特許文献5)、WO2013164694(特許文献6)、WO2013173223(特許文献7)、およびWO2014022758(特許文献8)において説明されている。
【0005】
がん根絶の面で大幅な進展があったが、抗体に基づくがん療法のさらなる改善が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2004004771
【特許文献2】WO2007005874
【特許文献3】WO2010036959
【特許文献4】WO2010077634
【特許文献5】WO2013079174
【特許文献6】WO2013164694
【特許文献7】WO2013173223
【特許文献8】WO2014022758
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Rietz and Chen, 2004 Am J Transplant 4: 8-14
【非特許文献2】Abiko et al., 2015 Br J Cancer 112:1501-1509
【非特許文献3】Dong et al., 2002 Nature Medicine 8(8): 793-800
【非特許文献4】Latchman et al., 2004 Proc Natl Acad Sci USA 101, 10691-6
【非特許文献5】Azuma et al., 2008 Blood 111, 3635-43
【非特許文献6】Butte et al., 2007 Immunity 27, 111-22
【非特許文献7】Park et al., 2010 Blood 116, 1291-8
【非特許文献8】Francisco et al., 2009 J Exp Med 206, 3015-29
【非特許文献9】Rittmeyer et al., 2017 Lancet 389:255-265
【非特許文献10】Kaufmanet al Lancet Oncol. 2016;17(10):1374-1385
【非特許文献11】Massard et al., 2016 J Clin Oncol. 34(26):3119-25
【発明の概要】
【0008】
第1の局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む新規の抗PD-L1抗体を提供する。本発明のこの第2の局面の抗体は単一特異性でもよく多重特異性でもよく、多重特異性であれば、前記多重特異性抗体は、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含んでもよいかまたは含まなくてもよい。
【0009】
本発明はさらに、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域と、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域とを含む、二重特異性抗体を提供する。このような二重特異性抗体には以下の2つの効果がある。
【0010】
第一に、前記抗体はそのPD-L1結合領域を介して、PD-L1を発現する腫瘍細胞に結合する。それと同時に、前記抗体はそのCD3結合領域を介してT細胞に結合する。そのため、前記抗体はT細胞を腫瘍細胞のすぐ近くに引き寄せ、それによってT細胞による腫瘍細胞死滅を容易にする。さらに、どの特定の理論にも限定されないが、PD-L1発現細胞とエフェクターT細胞を互いのすぐ近くに引き寄せるとインターフェロン-γ放出が開始する可能性があり、その結果として腫瘍細胞上のPD-L1がアップレギュレートされ、そのため、さらに多くの抗体が腫瘍に動員され、その死滅がさらに強化できる可能性がある。
【0011】
第二に、本発明の二重特異性抗体はヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、従って、PD-L1がPD-1を介して抗腫瘍免疫を妨害するのを防ぐ。
【0012】
CD3×PD-L1二重特異性抗体は、特異的標的化およびT細胞によるPD-L1発現細胞死滅が望ましい治療の場で特に有用である。CD3×PD-L1二重特異性抗体は、PD-L1発現細胞、一部の態様では、低PD-L1コピー数の細胞を含むPD-L1発現細胞の死滅を媒介する効率が高い。
【0013】
本発明の抗体は、PD-L1発現細胞、例えば、MDA-MB-231細胞、PC3細胞、またはHELA細胞に結合することができる。さらに、本発明の抗体はPD-L1とPD-1との相互作用を阻害し、かつ、精製したT細胞またはPBMCによるMDA-MB-231細胞、PC3細胞、および/またはHELA細胞の死滅を媒介することができる。
【0014】
さらなる局面において、本発明は、医学における本発明の抗体の使用、特に、がんを治療するための本発明の抗体の使用に関する。
【0015】
[本発明1001]
ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体であって、
ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、かつ、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]とは競合しない、
前記抗体。
[本発明1002]
ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と競合する、本発明1001の抗体。
[本発明1003]
前記本発明のいずれかの抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体[476]によって置換されない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1004]
前記本発明のいずれかの抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列を含む抗体[625]の結合によってブロックされない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1005]
前記本発明のいずれかの抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]によってブロックされる、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1006]
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、
本発明1001の抗体。
[本発明1007]
本発明1001~1004および1006のいずれかの抗体と、SEQ ID NO:94における位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)、位置123に対応する位置にあるアミノ酸残基(Y123)、および位置125に対応する位置にあるアミノ酸残基(R125)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1との結合と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[338]、本発明1001~1004および1006のいずれかの抗体。
[本発明1008]
本発明1001~1002、および1006のいずれかの抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置113におけるアミノ酸残基(R113)、位置123におけるアミノ酸残基(Y123)、および/または位置125におけるアミノ酸残基(R125)を含む、本発明1001~1002、および1006のいずれかの抗体。
[本発明1009]
本発明1001、1003、1004、および1006のいずれかの抗体と、SEQ ID NO:94における位置19に対応する位置にあるアミノ酸残基(F19)、位置42に対応する位置にあるアミノ酸残基(F42)、位置45に対応する位置にあるアミノ酸残基(E45)、位置46に対応する位置にあるアミノ酸残基(K46)、位置94に対応する位置にあるアミノ酸残基(L94)、および位置116に対応する位置にあるアミノ酸残基(I116)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[511]、本発明1001、1003、1004、および1006のいずれかの抗体。
[本発明1010]
本発明1001、1003、1004、および1006のいずれかの抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置45におけるアミノ酸残基(E45)、位置46におけるアミノ酸残基(K46)、および/または位置94におけるアミノ酸残基(L94)からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、本発明1001、1003、1004、および1006のいずれかの抗体。
[本発明1011]
本発明1001、1005、および1006のいずれかの抗体と、SEQ ID NO:94における位置58に対応する位置にあるアミノ酸残基(E58)および位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[547]、本発明1001、1005、および1006のいずれかの抗体。
[本発明1012]
本発明1001、1005、および1006のいずれかの抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置58におけるアミノ酸残基(E58)および/または位置113におけるアミノ酸残基(R113)を含む、本発明1001、1005、および1006のいずれかの抗体。
[本発明1013]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、および SEQ ID NO:21に示した配列からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1014]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[338]、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[511]、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、 SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列 DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[547]
を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1015]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1016]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1017]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[547]
を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1018]
前記VH配列および前記VL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VH配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VL配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列が変異していない、本発明1017の抗体。
[本発明1019]
抗体依存性細胞障害(ADCC)を介して、腺がんの上皮細胞の用量依存的溶解、例えば、MDA-MB-231の用量依存的溶解を誘導することができる、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1020]
細胞溶解の結果として前記上皮細胞の培養物中の細胞数を少なくとも5%、例えば、少なくとも6%、7%、8%、9%、または少なくとも10%低減することができる、本発明1019の抗体。
[本発明1021]
ADCCが、51Cr放出アッセイ法、例えば、実施例14に開示されるアッセイ法においてインビトロで測定される、本発明1019または1020の抗体。
[本発明1022]
ADCCが、本発明1019または1020の抗体とエフェクター細胞、例えば末梢血単核球(PBMC)とを含む組成物と共に前記上皮細胞を37℃、5%CO2で4時間インキュベートすることによってインビトロで測定され、該組成物中の抗体の量が0.1~1μg/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比が100:1である、本発明1019または1020の抗体。
[本発明1023]
上皮細胞の前記溶解が、ADCCの代わりとしてのルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、実施例14に開示されるルミネセンスADCCレポーターバイオアッセイ法においてインビトロで測定される、本発明1019または1020の抗体。
[本発明1024]
ADCCが、
(i)前記上皮細胞の培養物を、本発明1023の抗体とFcγRIIIa(CD16)およびホタルルシフェラーゼを安定発現するジャーカットヒトT細胞(エフェクター細胞)とを含む組成物と、1:1のエフェクター細胞:上皮細胞比で接触させ、
(ii)該上皮細胞の培養物および該エフェクター細胞を15分間室温に調節し、
(iii)該上皮細胞の培養物および該エフェクター細胞をルシフェラーゼ基質と共にインキュベートし、かつ
(iv)該細胞培養物におけるルシフェラーゼ生成を測定する
ことによって、インビトロで測定され、
該組成物中の抗体の量が0.5~250ng/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比が1:1である、本発明1023の抗体。
[本発明1025]
前記上皮細胞のADCCが、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、本発明1023または1024において定義されたレポーターアッセイ法において測定され、次いで、本発明1019、1020、1023、および1024のいずれかの抗体を含む試験組成物と共に該上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCが、参照抗体を含む組成物と共に該上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCの少なくとも1.5倍であり、ADCCが相対発光量(RLU)として測定され、該試験組成物中の抗体濃度と参照抗体を含む該組成物中の抗体濃度が同じでありかつ20~250ng/mlの範囲内であり、かつ該参照抗体が、
(a)SEQ ID NO:74に示したVH配列およびSEQ ID NO:78に示したVL配列を含む抗体;ならびに
(b)SEQ ID NO:81に示したVH配列およびSEQ ID NO:85に示したVL配列を含む抗体
より選択される、本発明1019、1020、1023、および1024のいずれかの抗体。
[本発明1026]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列[547]
を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1027]
ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体であって、
(i)SEQ ID NO:33に示したCDR1配列、SEQ ID NO:34に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:35に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:37に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、SEQ ID NO:38に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[321]、または
(ii)SEQ ID NO:47に示したCDR1配列、SEQ ID NO:48に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:49に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:51に示した配列を有するCDR1、配列 DVIを有するCDR2、およびSEQ ID NO:52に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[421]、または
(iii)SEQ ID NO:54に示したCDR1配列、SEQ ID NO:55に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:56に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:58に示した配列を有するCDR1、配列 RDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:59に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[476]、または
(iv)SEQ ID NO:61に示したCDR1配列、SEQ ID NO:62に示したCDR2配列、および SEQ ID NO:63に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:65に示した配列を有するCDR1、配列 DDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:66に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[516]、または
(v)SEQ ID NO:107に示したCDR1配列、SEQ ID NO:108に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:109に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:111に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、SEQ ID NO:113に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[625]、
(vi)SEQ ID NO:68に示したCDR1配列、SEQ ID NO:69に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:70に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:72に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:73に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[632]
を含む、該抗体。
[本発明1028]
(i)SEQ ID NO:32に示したVH配列およびSEQ ID NO:36に示したVL配列[321]、または
(ii)SEQ ID NO:46に示したVH配列およびSEQ ID NO:50に示したVL配列[421]、または
(iii)SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列[476]、または
(iv)SEQ ID NO:60に示したVH配列およびSEQ ID NO:64に示したVL配列[516]、または
SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列[625]、
(v)SEQ ID NO:67に示したVH配列およびSEQ ID NO:71に示したVL配列[632]
を含む、本発明1027の抗体。
[本発明1029]
一価である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1030]
前記本発明のいずれかの抗体が、ヒトPD-L1に結合することができる2つの抗原結合領域を有する二価抗体であり、かつ、該2つの抗原結合領域が同一の可変領域配列を有する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1031]
前記本発明のいずれかの抗体が、二価二重特異性抗体であり、ヒトPD-L1に結合することができる(第1の)前記抗原結合領域に加えて、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる(第2の)抗原結合領域を含み、該第2の抗原がヒトCD3εでない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1032]
ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域と、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域とを含む二重特異性抗体であって、
ヒトPD-L1に結合することができる該抗原結合領域が、前記本発明のいずれかに示した特徴を有する、該二重特異性抗体。
[本発明1033]
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、本発明1032の二重特異性抗体。
[本発明1034]
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[338]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[338]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1配列、配列DDNを有するCDR2配列、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[547]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域
を含む、本発明1032または1033の二重特異性抗体。
[本発明1035]
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含む、本発明1032~1034のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1036]
(i)前記二重特異性抗体が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含むことができる抗原結合領域を有する抗体と比較して、ヒトCD3ε結合についてのより低い親和性を有し、好ましくは、該親和性が、少なくとも1/2倍、例えば、少なくとも1/5倍、例えば、少なくとも1/10倍、例えば、少なくとも1/25倍、例えば、少なくとも1/50倍であり、かつ
(ii)該二重特異性抗体が、例えば、本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、PBMCまたは精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介することができる、
本発明1032の二重特異性抗体。
[本発明1037]
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:99に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:100に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:101に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iv)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:102に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(v)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:103に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vi)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:104に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:105に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、本発明1036の二重特異性抗体。
[本発明1038]
ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:39に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:40に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:41に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iv)SEQ ID NO:42に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:43に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vi)SEQ ID NO:44に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vii)SEQ ID NO:45に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列
を含む、本発明1036または1037の二重特異性抗体。
[本発明1039]
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
ヒトPD-L1に結合することができる該抗原結合領域が本発明1001~1031のいずれかに示した特徴を有する、該多重特異性抗体。
[本発明1040]
ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4[338]、SEQ ID NO:11[511]、およびSEQ ID NO:21[547]に示した配列からなる群より選択される、本発明1039の多重特異性抗体。
[本発明1041]
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[338]、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[511]、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[547]
を含む、本発明1040の多重特異性抗体。
[本発明1042]
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1[338]、SEQ ID NO:8[511]、およびSEQ ID NO:18[547]に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む、本発明1040または1041の多重特異性抗体。
[本発明1043]
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:5[338]、SEQ ID NO:15[511]、およびSEQ ID NO:22[547]に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む、本発明1040~1042のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1044]
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[547]
を含む、本発明1040~1043のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1045]
前記VH配列および前記VL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VH配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VL配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列が変異していない、本発明1040~1044のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1046]
ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列[547]
を含む、本発明1040~1045のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1047]
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、
該多重特異性抗体。
[本発明1048]
ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する、本発明1047の多重特異性抗体。
[本発明1049]
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
該抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない、該多重特異性抗体。
[本発明1050]
ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、本発明1049の多重特異性抗体。
[本発明1051]
ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合する、本発明1049または1050の多重特異性抗体。
[本発明1052]
本発明1049~1051のいずれかの多重特異性抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる、本発明1049~1051のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1053]
ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
該第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、
該多重特異性抗体。
[本発明1054]
二重特異性である、本発明1040~1053のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1055]
二価である、本発明1054の多重特異性抗体。
[本発明1056]
本発明1040~1055のいずれかの多重特異性抗体が第2の抗原に結合することができ、かつ該第2の抗原がヒトCD3εではない、本発明1040~1055のいずれかの多重特異性抗体。
[本発明1057]
完全長抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1058]
完全長IgG1抗体である、本発明1057の抗体。
[本発明1059]
抗体断片である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1060]
本発明1032~1059のいずれかの抗体が、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がキメラであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子が、存在する場合にはキメラである、
本発明1032~1059のいずれかの抗体。
[本発明1061]
(i)ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域がヒト化されており、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる前記抗原結合領域が、存在する場合にはヒト化されている、
前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1062]
(i)ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域がヒトであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる前記抗原結合領域が、存在する場合にはヒトである、
前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1063]
前記抗原結合領域のそれぞれが重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ該可変領域がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1064]
2つの重鎖定常領域(CH)と2つの鎖定常領域(CL)とを含む、本発明1063の抗体。
[本発明1065]
前記本発明のいずれかの抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖のそれぞれが、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、該第1の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ該第2の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ、該第1の重鎖および該第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1066]
(i)前記第1の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がLであり、かつ、前記第2の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がRであるか、または(ii)前記第1の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がRであり、かつ、前記第2の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がLである、本発明1065の抗体。
[本発明1067]
前記本発明のいずれかの抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、かつ
該抗体が、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含む以外は同一の抗体と比べてより少ない程度まで、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、一方の重鎖または両方の重鎖が改変されている、
前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1068]
前記Fcを介したエフェクター機能が、Fcを介したCD69発現を判定することによって測定されるか、Fcγ受容体への結合によって測定されるか、C1qへの結合によって測定されるか、またはFcを介したFcR架橋結合の誘導によって測定される、本発明1067の抗体。
[本発明1069]
本発明1067または1068の抗体が、野生型抗体と比較した場合に、Fcを介したCD69発現を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%低減するように、重鎖定常配列および軽鎖定常配列が改変されており、
該Fcを介したCD69発現が、PBMCに基づく機能アッセイ法において測定される、
本発明1067または1068の抗体。
[本発明1070]
前記本発明のいずれかの抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1071]
前記第1の重鎖および前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEである、本発明1070の抗体。
[本発明1072]
本発明1071の抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである、本発明1071の抗体。
[本発明1073]
前記第1の重鎖および前記第2の重鎖おいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAである、本発明1070の抗体。
[本発明1074]
本発明1073の抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである、本発明1073の抗体。
[本発明1075]
ヒトPD-L2に結合しない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1076]
本明細書中の実施例8に記載の通りに測定した場合に、約10-8Mまたはそれ未満、例えば、約10-9Mまたはそれ未満、例えば、約10-10Mまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1077]
本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1078]
(i)本発明1001~1031のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および/または
(ii)本発明1001~1031のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
を含む、核酸構築物。
[本発明1079]
(i)本発明1033~1038のいずれかにおいて定義されたヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および
(ii)本発明1033~1038のいずれかにおいて定義されたヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
をさらに含む、本発明1073の核酸構築物。
[本発明1080]
本発明1078または1079において定義された核酸構築物を含む、発現ベクター。
[本発明1081]
本発明1078もしくは1079において定義された核酸構築物または本発明1080において定義された発現ベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1082]
チャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞である、本発明1081の宿主細胞。
[本発明1083]
本発明1001~1077のいずれかの抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[本発明1084]
医薬として使用するための、本発明1001~1077のいずれかの抗体または本発明1083の薬学的組成物。
[本発明1085]
がんの治療において使用するための、本発明1001~1080のいずれかの抗体または本発明1070の薬学的組成物。
[本発明1086]
固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患の治療において使用するための、本発明1001~1077のいずれかの抗体または本発明1070の薬学的組成物。
[本発明1087]
黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患の治療において使用するための、本発明1001~1078のいずれかの抗体または本発明1070の薬学的組成物。
[本発明1088]
それを必要とする対象に、本発明1001~1075のいずれかの抗体または本発明1083の薬学的組成物を投与する工程を含む、疾患を治療する方法。
[本発明1089]
がん、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患を治療するための医薬などの医薬を製造するための、本発明1001~1077のいずれかの抗体の使用。
[本発明1090]
1種類または複数種類のさらなる治療用物質との組み合わせ、例えば、化学療法剤との組み合わせを含む、本発明1083~1089のいずれかの方法または使用。
[本発明1091]
(a)本発明1001~1013のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ培養物から該第1の抗体を精製する工程;
(b)異なるPD-L1エピトープにまたは異なる抗原に結合することができる抗原結合領域、例えば、本発明1014~1019のいずれかにおいて定義されたヒトCD3ε結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ該培養物から該第2の抗体を精製する工程;
(c)ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;および
(d)二重特異性抗体を得る工程
を含む、本発明1001~1077のいずれかの抗体を産生するための方法。
[本発明1092]
本発明1001~1077のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
本発明のこれらの局面および他の局面が下記でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】二重特異性CD3×PD-L1抗体およびb12×PD-L1抗体ならびにその単一特異性二価PD-L1対応物とMDA-MB-231細胞との結合。(A)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEARの結合、(B)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEARの結合、(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARの結合、(D)bsIgG1-b12-FEALx338-FEARの結合、(E)bsIgG1-b12-FEALx547-FEARの結合、(F)bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARの結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって測定された、1つの代表的な実験の平均蛍光強度(MFI)である。
図1B図1Aの説明を参照のこと。
図1C図1Aの説明を参照のこと。
図1D図1Aの説明を参照のこと。
図1E図1Aの説明を参照のこと。
図1F図1Aの説明を参照のこと。
図2A】二重特異性CD3×PD-L1抗体およびb12×PD-L1抗体ならびにその単一特異性二価PD-L1対応物とPC3細胞との結合。(A)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEARの結合、(B)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEARの結合、(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARの結合、(D)bsIgG1-b12-FEALx338-FEARの結合、(E)bsIgG1-b12-FEALx547-FEARの結合、(F)bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARの結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって測定された、1つの代表的な実験の平均蛍光強度(MFI)である。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図2C図2Aの説明を参照のこと。
図2D図2Aの説明を参照のこと。
図2E図2Aの説明を参照のこと。
図2F図2Aの説明を参照のこと。
図3】二重特異性CD3×PD-L1抗体およびb12×PD-L1抗体ならびにその単一特異性二価PD-L1対応物とHELA細胞との結合(A)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEARの結合、(B)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEARの結合、(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARの結合、(D)bsIgG1-b12-FEALx338-FEARの結合、(E)bsIgG1-b12-FEALx547-FEARの結合、(F)bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARの結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって測定された、1つの代表的な実験の平均蛍光強度(MFI)である。
図4】二重特異性b12×PD-L1抗体およびその単一特異性二価PD-L1対応物とSK-MES-1細胞との結合。(A)bsIgG1-b12-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEARの結合、(B)bsIgG1-b12-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEARの結合、(C)bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARの結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって測定された、1つの代表的な実験の平均蛍光強度(MFI)である。
図5A】二重特異性CD3×PD-L1抗体およびb12×PD-L1抗体ならびにその単一特異性二価PD-L1対応物と、カニクイザルPD-L1をトランスフェクトしたCHO細胞との結合。(A)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEARの結合、(B)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEARの結合、(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARの結合、(D)bsIgG1-b12-FEALx338-FEARの結合、(E)bsIgG1-b12-FEALx547-FEARの結合、(F)bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARの結合。示したデータは、フローサイトメトリーによって測定された、1つの代表的な実験の平均蛍光強度(MFI)である。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図5C図5Aの説明を参照のこと。
図5D図5Aの説明を参照のこと。
図5E図5Aの説明を参照のこと。
図5F図5Aの説明を参照のこと。
図6A】抗体クロスブロック。バイオレイヤー干渉法を用いて抗体クロスブロックの判定を行った。全ての抗体をFEAR IgG1バックボーンで産生した。この表では、0.1nm以上の応答を非ブロッキング抗体ペアとみなし(結果を、表中の装飾のない数字で示した)、0.1未満の応答をブロッキング抗体ペアとみなした(結果を、表中の太字の数字で示した)。これに対して、ブロッキングでも非ブロッキングでもない、いくつかの応答は、置換(displacing)挙動を示した抗体だと示される(結果を、表中の星印(*)で示した)。MEDI=MEDI4736;MPDL=MPDL3280A。(A)置換、(B)ブロッキング、および(C)非ブロッキング抗体ペアについて代表的な数字を示した。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図6C図6Aの説明を参照のこと。
図7】PD-1/PD-L1相互作用に対する二重特異性b12×PD-L1抗体およびその単一特異性二価PD-L1対応物の効果。(A)bsIgG1-b12-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEAR、(B)bsIgG1-b12-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEAR、(C)bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARの効果をPD-1/PD-L1遮断(blockade)バイオアッセイ法において判定した。示したデータは、1つの代表的な実験の、対照(抗体を添加していない)と比べた誘導倍率である。
図8A】インビトロでのMDA-MB-231細胞におけるCD3×PD-L1二重特異性抗体による細胞障害性の誘導。MDA-MB-231細胞を、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARとインキュベートした。精製したT細胞(A)またはPBMC(B)をエフェクター細胞として使用した。示したデータは、1つの代表的な実験の生細胞%である。
図8B図8Aの説明を参照のこと。
図9A】インビトロでのPC-3細胞におけるCD3×PD-L1二重特異性抗体による細胞障害性の誘導。PC-3細胞を、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARとインキュベートした。精製したT細胞(A)またはPBMC(B)をエフェクター細胞として使用した。示したデータは、1つの代表的な実験の生細胞%である。
図9B図9Aの説明を参照のこと。
図10A】インビトロでのHELA細胞におけるCD3×PD-L1二重特異性抗体による細胞障害性の誘導。HELA細胞を、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARとインキュベートした。精製したT細胞(A)またはPBMC(B)をエフェクター細胞として使用した。示したデータは、1つの代表的な実験の生細胞%である。
図10B図10Aの説明を参照のこと。
図11】CD3×PD-L1二重特異性抗体によるT細胞増殖および活性化。T細胞の活性化および増殖を測定するために、標的細胞としてMDA-MB-231細胞を使用し、精製したT細胞をエフェクター細胞として使用したインビトロアッセイ法においてCD3×PD-L1二重特異性抗体を試験した。(A)T細胞の総数、(B)CD69posT細胞数、(C)CD25posT細胞数。図12:PD-L1抗体と、位置42~131にアラニン変異を有するPD-L1変種との結合の変化倍率。変化倍率を、Log10(標準化されたgMFI[ala変異体]/標準化されたgMFI[wt])と定義した。結合の変化倍率が変化倍率の平均 - 1.5×SD(点線で示した)より小さかった残基を、「結合変異体の消失」とみなした。結合のプラスの変化倍率がある残基は、IgG1-625-FEAR-A488対照抗体に対する結合残基(残基75および86)の消失である。x軸上の数字はアミノ酸位置を指す。
図12】PD-L1抗体と、位置42~131にアラニン変異を有するPD-L1変種との結合の変化倍率。変化倍率を、Log10(標準化されたgMFI[ala変異体]/標準化されたgMFI[wt])と定義した。結合の変化倍率が変化倍率の平均 - 1.5×SD(点線で示した)より小さかった残基を、「結合変異体の消失」とみなした。結合のプラスの変化倍率がある残基は、IgG1-625-FEAR-A488対照抗体に対する結合残基(残基75および86)の消失である。x軸上の数字はアミノ酸位置を指す。
図1351Cr放出アッセイ法において測定された、PD-L1抗体によるMDA-MB-231細胞の抗体依存性細胞障害。MDA-MB-231細胞のADCCを、健常ヒトドナーから新鮮に単離されたPBMCをE:T比100:1で用いたインビトロ51Cr放出アッセイ法において測定した。各データ点について、3つの複製試料の平均および標準偏差を示した。1人のドナーのPBMCを用いた代表例を示した。
図14】ルミネセンスADCCレポーターバイオアッセイ法において測定された、PD-L1抗体によるMDA-MB-231細胞の抗体依存性細胞障害。PD-L1抗体によるMDA-MB-231細胞のADCCを、FcγRIIIa結合時にルシフェラーゼを発現するFcγRIIIa発現ジャーカットレポーター細胞を用いて定量した。ルシフェラーゼの生成は相対発光量(RLU)によって示される。各データ点について、2回繰り返した実験の平均および標準偏差を示した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
「免疫グロブリン」という用語は、一対が低分子量の軽鎖(L)、一対が重鎖(H)の二対のポリペプチド鎖からなり、4本全てがジスルフィド結合で相互接続されている、構造上関連する糖タンパク質のクラスをいう。免疫グロブリンの構造ははっきりと特徴決定されている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡単に述べると、それぞれの重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと略す)と重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCHと略す)で構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。ヒンジ領域は重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインの間にある領域であり、可動性が高い。ヒンジ領域におけるジスルフィド結合は、IgG分子にある2本の重鎖間の相互作用の一部である。それぞれの軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと略す)と軽鎖定常領域(本明細書ではCLまたはCLと略す)で構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLで構成される。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(または配列が著しく変化し得る、かつ/もしくは構造が規定されたループの形をとり得る超可変領域)にさらに細分することができ、超可変性領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、超可変性領域より保存された領域が点在している。それぞれのVHおよびVLは、典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並べられている(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901-917(1987)も参照されたい)。特別の定めのない限り、または文脈と相反しない限り、本明細書におけるCDR配列は、IMGT規則に従い、DomainGapAlign バージョン4.9.2(2016-09-26)を用いて特定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010);インターネットhttpアドレスhttp://www.imgt.org/も参照されたい)。特別の定めのない限り、または文脈と相反しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸位置についての記載はEUナンバリングに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85; Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. 1991 NIH Publication No. 91-3242)。例えば、本明細書においてSEQ ID NO:93は、EUナンバリングに従って、IgG1m(f)重鎖定常領域のアミノ酸位置118-447を示す。
【0018】
本明細書で使用する「位置…に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置番号をいう。他の免疫グロブリンにおける対応するアミノ酸位置はヒトIgG1とアラインメントすることによって見出されることがある。従って、別の配列にあるアミノ酸またはセグメント「に対応する」、ある配列にあるアミノ酸またはセグメントは、標準的な配列アラインメントプログラム、例えば、ALIGN、ClustalW、または類似物を用いて、典型的にはデフォルト設定を用いて他方のアミノ酸またはセグメントと一列に並び、かつヒトIgG1重鎖との少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸またはセグメントである。配列内の配列またはセグメントをアラインメントし、それによって、本発明によるアミノ酸位置と対応する、配列内の位置を決定する手法は当技術分野において周知だとみなされる。
【0019】
本発明の文脈において「抗体」(Ab)という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、これらは、代表的な生理学的条件下で、かなり長い時間の半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間またはそれ以上、約48時間またはそれ以上、約3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、またはそれ以上など、あるいは他の任意の関連する、機能によって規定された期間(例えば、抗体と抗原との結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を高めるのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用する「抗体結合領域」という用語は、抗原と相互作用する領域をいい、VH領域とVL領域を両方とも含む。抗体という用語が本明細書で使用する場合、単一特異性抗体だけでなく、複数の、例えば、2つまたはそれ以上の、例えば、3つまたはそれ以上の、異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系成分、例えば、補体活性化の古典経路の第1の成分であるC1qを含む宿主組織または宿主因子との結合を媒介し得る。前記のように、本明細書において抗体という用語は、特に定めのない限り、または文脈と明らかに相反しない限り、抗原結合断片である、すなわち、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片を含む。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。「抗体」という用語の中に含まれる抗原結合断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体;(ii)F(ab')2断片、2つのFab断片がヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov; 21(11):484-90)とも呼ばれる、dAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546(1989));(vi)キャメリド(camelid)またはナノボディ(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan; 5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1本のタンパク質鎖として作られるのを可能にする合成リンカーによって組換え法を用いて接続されてもよい。このような単鎖抗体は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語の中に含まれる。このような断片は、一般的に、抗体の意味の中に含まれるが、ひとまとめにして、およびそれぞれ独立して、異なる生物学的な特性および有用性を示す本発明の独特の特徴である。本発明の文脈における、これらの抗体断片および他の有用な抗体断片ならびにこのような断片の二重特異性形式が本明細書においてさらに議論される。抗体という用語は、特に定めのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに任意の公知の技法、例えば、酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技法によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるはずである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。本明細書で使用する「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)をいう。特定のアイソタイプ、例えば、IgG1が本明細書において言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば、特定のIgG1配列に限定されないが、抗体の配列が、他のアイソタイプよりも、そのアイソタイプ、例えば、IgG1に似ていることを示すために用いられる。従って、例えば、本発明のIgG1抗体は、定常領域の変化を含む、天然IgG1抗体の配列変種でもよい。
【0020】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、分子組成が1種類しかない抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して結合特異性および親和性を1つしか示さない。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、結合特異性を1つしか示さない抗体をいう。ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスクロモソーム非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞が不死化細胞と融合したハイブリドーマによって生成され得る。
【0021】
本発明の文脈において「二重特異性抗体」または「bs」という用語は、異なる抗体配列によって規定される2つの異なる抗原結合領域を有する抗体をいう。一部の態様において、前記の異なる抗原結合領域は同じ抗原上の異なるエピトープに結合する。しかしながら、好ましい態様では、前記の異なる抗原結合領域は異なる標的抗原に結合する。二重特異性抗体は、本明細書において以下で説明される任意の二重特異性抗体形式を含む任意の形式の二重特異性抗体でよい。
【0022】
本明細書で使用する場合、「半分子」、「Fabアーム」、および「アーム」という用語は1つの重鎖-軽鎖ペアをいう。
【0023】
二重特異性抗体が、第1の抗体「に由来する」半分子抗体と、第2の抗体「に由来する」半分子抗体とを含むと述べられた場合、「に由来する」という用語は、任意の公知の方法によって、前記第1の抗体および第2の抗体のそれぞれに由来する半分子を組み換えて、結果として生じる二重特異性抗体にすることによって二重特異性抗体が作製されたことを示す。これに関連して、「組み換える」とは、特定の組み換え方法によって限定されることが意図されず、従って、例えば、半分子交換による組み換え、ならびに核酸レベルでの組み換え、および/または2種類の半分子を同じ細胞内で同時発現することによる組み換えを含む本明細書において以下で説明される二重特異性抗体を産生するための方法の全てを含む。
【0024】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈では、抗体分子が1種類の抗原分子にしか結合できない、従って、抗原または細胞を架橋できないことを意味する。
【0025】
「完全長」という用語は、抗体の文脈で用いられる場合、抗体が断片ではなく、特定のアイソタイプについて天然で通常見られる、特定のアイソタイプのドメインの全て、例えば、IgG1抗体の場合、VH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VL、およびCLドメインを含有することを示す。
【0026】
本明細書で使用する場合、文脈と相反しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域をいい、前記Fc配列は、少なくとも、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0027】
本明細書で使用する場合、「第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第2のCH3ヘテロ二量体タンパク質における第1のCH3領域と第2のCH3領域との間の相互作用をいう。
【0028】
本明細書で使用する場合、「第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用」という用語は、第1のCH3/第1のCH3ホモ二量体タンパク質における第1のCH3領域と、別の第1のCH3領域との間の相互作用、および第2のCH3/第2のCH3ホモ二量体タンパク質における第2のCH3領域と、別の第2のCH3領域との間の相互作用をいう。
【0029】
抗体と所定の抗原またはエピトープとの結合に関して、本明細書で使用する「結合することができる」または「結合」という用語は、典型的には、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて測定した場合に、例えば、実施例8に記載の通りにバイオレイヤー干渉法(BLI)を用いて測定した場合に、または、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いてBIAcore 3000機器において、リガンドとして抗原を使用し、分析物として抗体を使用して測定した場合に、約10-6Mまたはそれ未満、例えば、約10-7Mもしくはそれ未満、例えば、約10-8Mもしくはそれ未満、例えば、約10-9Mもしくはそれ未満、約10-10Mもしくはそれ未満、もしくは約10-11M、またはさらにそれ未満のKDに対応する親和性での結合である。前記抗体は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)と結合するための親和性の少なくとも1/10、例えば、少なくとも1/100、例えば、少なくとも1/1,000、例えば、少なくとも1/10,000、例えば、少なくとも1/100,000のKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性が小さくなる量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に低い(すなわち、前記抗体が高特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも小さくなる程度は少なくとも1/10,000になることがある。
【0030】
本明細書で使用する「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数をいう。この値はkoffまたはkdis値とも呼ばれる。
【0031】
本明細書で使用する「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。これは、kdをkaで割ることによって得られる。
【0032】
本明細書で使用する「ka」(M-1×sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数をいう。この値はkon値またはオンレート(on-rate)とも呼ばれる。
【0033】
好ましい態様において、本発明の抗体は単離されている。本明細書で使用する「単離された抗体」は、抗原特異性の異なる他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される。好ましい態様において、PD-L1と第2の標的、例えば、CD3に特異的に結合する単離された二重特異性抗体は、PD-L1または第2の標的、例えば、CD3に特異的に結合する単一特異性抗体を実質的に含まない。別の好ましい態様において、前記抗体、または前記抗体を含む薬学的組成物は、PD-L1に結合することができない、天然に生じる抗体を実質的に含まない。さらに好ましい態様において、本発明の抗体は、天然の抗PD-L1抗体の構造と比べてアミノ酸配列の構造が変化し、この構造変化により前記抗体は、前記天然の抗PD-L1抗体によって示される機能性と比べて変化した機能性を示し、前記機能性は、(i)PD-L1結合親和性、(ii)PD-L1とPD-1との結合を示す能力、および(iii)Fcを介したエフェクター機能を誘導する能力からなる群より選択される。
【0034】
「PD-L1」という用語は、本明細書で使用する場合、プログラム死リガンド1タンパク質をいう。PD-L1はヒトおよび他の種において見出され、従って、「PD-L1」という用語は、文脈と相反しない限り、ヒトPD-L1に限定されない。ヒトPD-L1配列、マカクPD-L1配列、およびマウスPD-L1配列は、それぞれ、Genbankアクセッション番号NP_054862.1、XP_005581836、およびNP_068693によって見出される。
【0035】
「PD-L2」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトプログラム死1-リガンド2タンパク質(Genbankアクセッション番号NP_079515)をいう。
【0036】
「PD-1」という用語は、本明細書で使用する場合、CD279とも知られるヒトプログラム死-1タンパク質をいう。
【0037】
本明細書で使用する「CD3」という用語は、T細胞コレセプタータンパク質複合体の一部であり、4つの異なる鎖で構成されるヒト分化クラスター3タンパク質をいう。CD3はまた他の種でも見出され、従って、「CD3」という用語は、文脈と相反しない限り、ヒトCD3に限定されない。哺乳動物において、この複合体は、1本のCD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖 UniProtKB/Swiss-Prot No P09693、またはカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI7)、1本のCD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No P04234、またはカニクイザルCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI8)、2本のCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No P07766(SEQ ID NO:95);カニクイザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No Q95LI5;またはアカゲザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot No G7NCB9)、および1本のCD3ζ鎖(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No P20963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot No Q09TK0)を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として知られる分子と結合し、Tリンパ球において活性化シグナルを生じる。TCRとCD3分子は一緒になってTCR複合体を構成する。
【0038】
「PD-L1抗体」または「抗PD-L1抗体」は、抗原PD-L1、特にヒトPD-L1に特異的に結合する、上記で説明した抗体である。
【0039】
「CD3抗体」または「抗CD3抗体」は、抗原CD3、特にヒトCD3ε(イプシロン)に特異的に結合する上記で説明した抗体である。
【0040】
「CD3×PD-L1抗体」、「抗CD3×PD-L1抗体」、「PD-L1×CD3抗体」、または「抗PD-L1×CD3抗体」は、2つの異なる抗原結合領域を含む二重特異性抗体である。抗原結合領域の1つは抗原PD-L1に特異的に結合し、抗原結合領域の1つはCD3に特異的に結合する。
【0041】
本発明はまた、実施例の抗体のVL領域、VH領域、または1つもしくは複数のCDRの機能的変種を含む抗体も提供する。抗体に関して用いられるVL、VH、またはCDRの機能的変種であっても、前記抗体は、依然として、少なくとも、「参照」または「親」抗体の親和性および/または特異性/選択性のかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれより大きい割合)を保持しており、場合によっては、このような抗体は親抗体より大きい親和性、選択性、および/または特異性と関連していることがある。
【0042】
このような機能的変種は、典型的には、親抗体との有意な配列同一性を保持している。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要のある、ギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、相同性%=同一の位置の数/位置の総数×100)である。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれている、E. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17(1988)のアルゴリズムを使用し、PAM120ウエイト残基表、12のギャップレングスペナルティ、および4のギャップペナルティを用いて決定され得る。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453(1970))アルゴリズムを用いて決定され得る。
【0043】
例示的な変種には、主に保存的置換の点で親抗体配列のVH領域および/またはVL領域および/またはCDR領域とは異なる変種が含まれる。例えば、変種にある置換のうち10個、例えば、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個は保存的なアミノ酸残基交換である。
【0044】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の表に反映されるアミノ酸クラスの中の置換によって定義され得る。
【0045】
保存的置換のためのアミノ酸残基クラス
【0046】
本発明の文脈において、特別の定めのない限り、変異を説明するために以下の表記法が用いられる。(i)ある特定の位置にあるアミノ酸の置換は、例えば、位置409にあるリジンがアルギニンに置換されることを意味するK409Rと書かれる。(ii)特定の変種については、任意のアミノ酸残基を示す符号XaaおよびXを含む特定の三文字表記または一文字表記が用いられる。従って、位置409におけるリジンからアルギニンへの置換はK409Rで示され、位置409におけるリジンから任意のアミノ酸残基への置換はK409Xで示される。位置409におけるリジンの欠失の場合、これはK409*で示される。
【0047】
本発明の文脈において、「競合」は、ある特定の分子が、ある特定の結合パートナーに結合する傾向が、結合パートナーに結合する別の分子が存在すると大幅に低減することをいう。「競合」とは「ブロッキング」または「置換」ということができる。すなわち、競合分子はブロッキング分子または置換分子のいずれかの可能性がある。「置換」とは、第2の抗体が、(先に形成した)抗原-抗体複合体から抗原に置き換わり、その結果、この抗原と交換することができる状態をいう(Abdiche et al., 2017 Plos One 12(1): e0169535)。PD-L1との結合における2種類またはそれ以上の抗PD-L1抗体による競合は任意の適切な技法によって測定されることができる。1つの態様において、競合は本明細書中の実施例9に記載の通りに測定される。
【0048】
同様に、本発明の文脈において、「PD-L1とPD-1との結合の阻害」は、PD-L1とPD-1との結合が、PD-L1に結合することができる抗体の存在下では検出可能に有意に低減することをいう。典型的には、阻害とは、抗PD-L1抗体の存在によって引き起こされる、PD-L1とPD-1との間の結合の少なくとも約10%の低減、例えば、少なくとも約15%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも40%の低減を意味する。PD-L1とPD-1との結合の阻害は任意の適切な技法によって測定されることができる。1つの態様において、阻害は本明細書中の実施例10に記載の通りに測定される。
【0049】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。コンホメーションエピトープおよび非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが、後者への結合が失われない点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的に抗原に結合するペプチドによって効果的にブロックまたはカバーされるアミノ酸残基(言い換えると、このアミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドのフットプリントの中にある)を含むことがある。
【0050】
本明細書で使用する「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば、げっ歯類に由来し)、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体をいう。抗体免疫原性を低減するために、治療用途のキメラモノクローナル抗体が開発されている。キメラ抗体に関して用いられる「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域をいう。キメラ抗体は、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, Ch.15に記載の通りの標準的なDNA技法を用いることによって作製され得る。キメラ抗体は遺伝子操作された組換え抗体でもよく、酵素的に操作された組換え抗体でもよい。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内であり、従って、本発明によるキメラ抗体の作製は、本明細書に記載の方法以外の方法によって行われ得る。
【0051】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体をいう。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)につなぐことによって実現することができる(WO92/22653およびEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基をヒトフレームワークに置換(逆突然変異)することが必要な場合がある。構造相同性モデリングが、前記抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を特定するのに役立つ場合がある。従って、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、任意で、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸逆突然変異を含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域とを含んでもよい。任意で、必ずしも逆突然変異ではない、さらなるアミノ酸改変が、好ましい特徴、例えば、親和性および生化学的特性を有するヒト化抗体を得るのに適用される場合がある。
【0052】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体をいう。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって導入された変異、またはインビボで体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことが意図されない。本発明のヒトモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を含む様々な技法によって産生することができる。原則的に、体細胞ハイブリダイゼーション法が好ましいが、モノクローナル抗体を産生するための他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルス形質転換もしくはがん化またはヒト抗体遺伝子ライブラリーを用いたファージディスプレイ技法を使用することができる。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するのに適した動物システムはマウスシステムである。マウスにおけるハイブリドーマ作製は、十分に確立した手順である。免疫化プロトコールおよび融合用の免疫化された脾細胞の単離法は当技術分野において公知である。融合パートナー(例えば、マウスのミエローマ細胞)および融合手順も公知である。従って、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウスシステムでもラットシステムではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックまたはトランスクロモゾームのマウスまたはラットを用いて作製することができる。従って、1つの態様では、ヒト抗体は、動物免疫グロブリン配列の代わりにヒト生殖系列免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラットから得られる。このような態様では、前記抗体は、動物に導入されたヒト生殖系列免疫グロブリン配列に起源をもつが、この最終抗体配列は、前記ヒト生殖系列免疫グロブリン配列が、内在性の動物抗体機構による体細胞超変異および親和性成熟によってさらに改変された結果である。例えば、Mendez et al. 1997 Nat Genet.15(2):146-56を参照されたい。「還元条件」または「還元環境」という用語は、基質、ここでは、抗体のヒンジ領域のシステイン残基が、酸化されるより還元される可能性が高い条件または環境をいう。
【0053】
本明細書で使用する「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクター、例えば、本発明の抗体をコードする発現ベクターが導入されている細胞をいうことが意図される。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)、例えば、CHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6、またはNS0細胞、およびリンパ球細胞が含まれる。
【0054】
「治療」という用語は、症状または疾患状態を緩和するか、改善させるか、抑止するか、または根絶する(治癒する)目的で、治療活性のある有効量の本発明の抗体を投与するこという。
【0055】
「有効量」または「治療的有効量」という用語は、望ましい治療結果を得るために必要な投薬および時間で、望ましい治療結果を得るために有効な効果を示す量をいう。抗体の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において前記抗体が望ましい応答を誘発する能力などの要因に応じて変わることがある。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分の治療に有益な作用が毒性作用または有害作用を上回る量でもある。
【0056】
「抗イディオタイプ抗体」という用語は、抗体の抗原結合部位と一般的に関連する独特な決定基を認識する抗体をいう。
【0057】
本発明のさらなる局面および態様
前記のように、第1の局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域、およびヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む二重特異性抗体に関し、前記二重特異性抗体がヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する。従って、このような二重特異性抗体は2つの異なる抗原結合領域を含み、1つの抗原結合領域はPD-L1に対する結合特異性を有し、1つの抗原結合領域はCD3に対する結合特異性を有する。
【0058】
1つの態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:21に示した配列からなる群より選択される。
【0059】
さらなる態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0060】
別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む。
【0061】
別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0062】
さらなる態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0063】
従って、例えば、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0064】
さらなる態様において、前記VH配列およびVL配列はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列は変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VL配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列は変異していない。この態様に関して、同一性%は、間にあるCDR配列がなく、フレームワーク配列が1つの連続した配列としてまとめられた場合に得られる同一性パーセントをいう。
【0065】
本発明の抗体の好ましい態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列
を含む。
【0066】
PD-L1などの同じ抗原に結合することができる異なる抗体は前記抗原の異なる領域に結合することがある。場合によっては、あるPD-L1抗体とPD-L1が結合してもなお、異なるPD-L1抗体とPD-L1が結合することがある。しかしながら、他の場合では、あるPD-L1抗体とPD-L1との結合が、異なるPD-L1抗体とPD-L1との結合と競合することがある(異なるPD-L1抗体とPD-L1との結合をブロックするか、または異なるPD-L1抗体とPD-L1との結合と置き換わることがある)。従って、競合実験から、標的抗原上のどこに抗体が結合するか、どれが抗体結合の機能効果に影響を及ぼし得るかに関する情報が得られる。
【0067】
1つの態様において、本発明の二重特異性抗体は、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない。
【0068】
本明細書のさらなる態様において、前記抗体は、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0069】
標的抗原結合について競合する抗体は抗原上の異なるエピトープに結合することがあり、これらのエピトープは互いにとても近い場所にあるので、あるエピトープに結合する第1の抗体は第2の抗体と他のエピトープとの結合を阻止する。しかしながら、他の状況では、2つの異なる抗体は抗原上の同じエピトープに結合することがある。
【0070】
従って、1つの態様では、本発明の抗体は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる。
【0071】
さらなる態様において、二重特異性抗体とヒトPD-L1との結合は、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない。
【0072】
さらなる態様において、二重特異性抗体とヒトPD-L1との結合は、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる。本明細書において「ブロックされた」とは、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体が、二重特異性抗体と競合するが、それと置き換わらないことを示す。
【0073】
前記のように、上述した本発明の第1の局面の二重特異性抗体は、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む。
【0074】
1つの態様において、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:26に示した配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有する重鎖可変(VH)領域CDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有する、重鎖可変(VH)領域CDR3、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0075】
上記で定義された6つのCDR配列は、SP34と表わされたマウス抗体に由来する。この抗体のヒト化バージョンが作製されており、このヒト化抗体は本明細書ではhuCD3と表わされ、WO2015001085(Genmab)においてさらに開示される。
【0076】
本発明の二重特異性抗体の好ましい態様において、前記二重特異性抗体は、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域
を含む。
【0077】
1つの態様において、二重特異性抗体は、重鎖可変領域(VH)を含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含み、前記VH配列が、SEQ ID NO:25に示したアミノ酸配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0078】
別の態様において、二重特異性抗体は、軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含み、前記VL 配列が、SEQ ID NO:29に示したアミノ酸配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0079】
好ましい態様において、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含む。
【0080】
1つの局面において、本発明に従う二重特異性抗体は、前記抗体の親和性を低減するように改変されてもよい。これは、いくつかの状況では有利であり、効力の増加につながることがある。特に、ヒトCD3εに対する結合の低親和性は、循環中の、および腫瘍部位にあるT細胞の運動性に影響を与える可能性があり、従って、T細胞と腫瘍細胞とのより良い結合につながる可能性がある。Molhoj et al., Molecular Immunology 44 (2007)を参照されたい。
【0081】
従って、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域と、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域とを含む本発明の二重特異性抗体の異なる態様では、
(i)前記二重特異性抗体が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含むことができる抗原結合領域を有する抗体と比較して、ヒトCD3ε結合についてのより低い親和性を有し、好ましくは、前記親和性が、少なくとも1/2倍、例えば、少なくとも1/5倍、例えば、少なくとも1/10倍、例えば、少なくとも1/25倍、例えば、少なくとも1/50倍であり、かつ
(ii)前記二重特異性抗体が、PBMCまたは精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介することができる。
【0082】
同様に、1つの態様において、本発明の抗体は、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含み、
(i)前記ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含むことができる抗原結合領域を有する抗体と比較して、ヒトCD3ε結合についてのより低い親和性を有し、好ましくは、前記親和性が、少なくとも1/2倍、例えば、少なくとも1/5倍、例えば、少なくとも1/10倍、例えば、少なくとも1/25倍、例えば、少なくとも1/50倍であり、かつ
(ii)前記ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域が、PBMCまたは精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介することができる。
【0083】
ヒトCD3εに対する親和性は、例えば、WO2017009442の実施例7に記載の通りにoctet結合親和性測定を用いて測定されてもよい。
【0084】
抗体がPBMCまたは精製したT細胞による細胞障害を媒介する能力は、例えば、本明細書中の実施例11に記載の通りに測定されてもよく、すなわち、MDA-MB-231、PC-3細胞、またはHELA細胞がウェルに播種および培養される。腫瘍細胞、PBMC、および抗体の段階希釈液を添加し、インキュベーション後に、生存しているかどうか腫瘍細胞を染色する。
【0085】
本明細書において、huCD3-H1L1は、SEQ ID NO:25に示したVH配列とSEQ ID NO:29に示したVL配列を有する抗CD3抗体をいう。IgG1-huCD3-FEALは、置換L234F、L235E、D265A、およびF405Lを含む、その変種をいう(本明細書中の他の箇所も参照されたい)。
【0086】
ヒトCD3εに対する親和性が低減したIgG1-huCD3-FEALの変種の例がWO2017009442(Genmab)において説明されている。WO2017009442の実施例7(表6)は、octet結合親和性測定を用いて測定されたIgG1-huCD3-FEALおよびその7種類の変種の親和性を開示する。
【0087】
本発明の二重特異性抗体の1つの態様において、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:99に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:100に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:101に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iv)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:102に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(v)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:103に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vi)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:104に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:105に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0088】
別の態様において、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:39に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:40に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:41に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iv)SEQ ID NO:42に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:43に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vi)SEQ ID NO:44に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vii)SEQ ID NO:45に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列
を含む。
【0089】
本発明の二重特異性抗体のさらに好ましい態様において、抗原結合領域のそれぞれは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ前記可変領域はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。
【0090】
本発明の二重特異性抗体のさらに好ましい態様において、前記抗体は2つの重鎖定常領域(CH)と2つの鎖定常領域(CL)とを含む。
【0091】
好ましい態様において、二重特異性抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、前記第1の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つは置換されており、かつ前記第2の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ前記第1の重鎖および前記第2の重鎖は同じ位置において置換されていない。
【0092】
最も好ましくは、(i)前記第1の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はLであり、かつ、前記第2の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はRであるか、または(ii)第1の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はRであり、かつ、第2の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はLである。
【0093】
さらに特に好ましい態様において、前記抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含むCD3×PD-L1二重特異性抗体であり、第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである。
【0094】
さらに特に好ましい態様において、前記抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含むCD3×PD-L1二重特異性抗体であり、第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖の位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖のF405に対応する位置がLである。
【0095】
PD-L1抗体の新規のクラス
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む、新規の抗PD-L1抗体を提供する。本発明のこの局面の抗体は単一特異性でも多重特異性でもよく、多重特異性であれば、前記多重特異性抗体は、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含んでもよいかまたは含まなくてもよい。
【0096】
1つの態様において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体を提供し、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、本明細書において上記で定義された特徴を有する。
【0097】
1つの態様において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体を提供し、前記抗体と、SEQ ID NO:94における位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)、位置123に対応する位置にあるアミノ酸残基(Y123)、および位置125に対応する位置にあるアミノ酸残基(R125)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1との結合と比較して低減しており、前記抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する前記抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される。
【0098】
前記抗体は、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合してもよく、前記エピトープは、SEQ ID NO:94の位置113におけるアミノ酸残基(R113)、位置123におけるアミノ酸残基(Y123)、および/または位置125におけるアミノ酸残基(R125)を含む。
【0099】
1つの態様において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体を提供し、前記抗体と、SEQ ID NO:94における位置19に対応する位置にあるアミノ酸残基(F19)、位置42に対応する位置にあるアミノ酸残基(F42)、位置45に対応する位置にあるアミノ酸残基(E45)、位置46に対応する位置にあるアミノ酸残基(K46)、位置94に対応する位置にあるアミノ酸残基(L94)、および位置116に対応する位置にあるアミノ酸残基(I116)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、前記抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する前記抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される。
【0100】
前記抗体は、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合してもよく、前記エピトープは、SEQ ID NO:94の位置45におけるアミノ酸残基(E45)、位置46におけるアミノ酸残基(K46;および/または位置94におけるアミノ酸残基(L94)からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。
【0101】
1つの態様において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体を提供し、前記抗体と、SEQ ID NO:94における位置58に対応する位置にあるアミノ酸残基(E58)および位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、前記抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する前記抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される。
【0102】
前記抗体は、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合してもよく、前記エピトープは、SEQ ID NO:94の位置58におけるアミノ酸残基(E58)および/または位置113におけるアミノ酸残基(R113)を含む。
【0103】
さらなる態様において、本発明による抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)を介して、腺がんの上皮細胞の用量依存的溶解、例えば、MDA-MB-231の用量依存的溶解を誘導することができる。
【0104】
さらなる態様において、本発明による抗体は、細胞溶解の結果として前記上皮細胞の培養物中の細胞数を少なくとも5%、例えば、少なくとも6%、7%、8%、9%、または少なくとも10%低減することができる。
【0105】
ADCCは、51Cr放出アッセイ法、例えば、実施例14に開示されるアッセイ法においてインビトロで測定されてもよい。特に、ADCCは、前記上皮細胞を、前記抗体とエフェクター細胞、例えば末梢血単核球(PBMC)とを含む組成物と共に37℃、5%CO2で4時間インキュベートすることによってインビトロで測定され、前記組成物中の抗体の量は0.1~1μg/mLの範囲内であり、エフェクター細胞と上皮細胞の比は100:1である。
【0106】
上皮細胞の溶解は、ADCCの代わりとしてのルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、実施例14に開示されるルミネセンスADCCレポーターバイオアッセイ法においてインビトロで測定されてもよい。
【0107】
ADCCは、特に、
(i)前記上皮細胞の培養物を、前記抗体とFcγRIIIa(CD16)およびホタルルシフェラーゼを安定発現するジャーカットヒトT細胞(エフェクター細胞)とを含む組成物と、1:1のエフェクター細胞:上皮細胞比で接触させ、
(ii)上皮細胞の培養物およびエフェクター細胞を15分間室温に調節し、
(iii)上皮細胞の培養物およびエフェクター細胞をルシフェラーゼ基質と共にインキュベートし、かつ
(iv)前記細胞培養物におけるルシフェラーゼ生成を測定する
ことによって、インビトロで測定されてもよく、前記組成物中の抗体の量は0.5~250ng/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比は1:1である。
【0108】
上皮細胞のADCCは、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、請求項23または24において定義されたレポーターアッセイ法において測定されてもよく、次いで、前記抗体を含む試験組成物と共に上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCが、参照抗体を含む組成物と共に上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCの少なくとも1.5倍であり、ADCCは相対発光量(RLU)として測定され、前記試験組成物中の抗体濃度と参照抗体を含む前記組成物中の抗体濃度が同じでありかつ20~250ng/mlの範囲内であり、かつ参照抗体が、
(a)SEQ ID NO:74に示したVH配列およびSEQ ID NO:78に示したVL配列を含む抗体;ならびに
(b)SEQ ID NO:81に示したVH配列およびSEQ ID NO:85に示したVL配列を含む抗体
より選択されてもよい。
【0109】
1つの態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:21に示した配列からなる群より選択される。
【0110】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0111】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む。
【0112】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0113】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0114】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域がVH配列およびVL配列を含み、VH配列およびVL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、前記VH配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、前記VL配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、VL CDR配列が変異していない。
【0115】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列
を含む。
【0116】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体が、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない。
【0117】
好ましくは、前記抗体は、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0118】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない。
【0119】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列を含む抗体の結合によってブロックされない。
【0120】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されず、かつヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する。
【0121】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されず、かつ、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0122】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されず、かつ前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる。本明細書において「ブロックされた」とは、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体が前記二重特異性抗体と競合するが、それと置き換わらないことを示す。
【0123】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体が提供され、前記抗体が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる。
【0124】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体に関し、前記抗体が、
(i)SEQ ID NO:33に示したCDR1配列、SEQ ID NO:34に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:35に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:37に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、SEQ ID NO:38に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:47に示したCDR1配列、SEQ ID NO:48に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:49に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:51に示した配列を有するCDR1、配列DVIを有するCDR2、およびSEQ ID NO:52に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:54に示したCDR1配列、SEQ ID NO:55に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:56に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:58に示した配列を有するCDR1、配列RDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:59に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iv)SEQ ID NO:61に示したCDR1配列、SEQ ID NO:62に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:63に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:65に示した配列を有するCDR1、配列DDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:66に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VH)、または
(v)SEQ ID NO:107に示したCDR1配列、SEQ ID NO:108に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:109に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:111に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、SEQ ID NO:113に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、
(vi)SEQ ID NO:68に示したCDR1配列、SEQ ID NO:69に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:70に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:72に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:73に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0125】
さらなる態様において、前記抗体は、
(i)SEQ ID NO:32に示したVH配列およびSEQ ID NO:36に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:46に示したVH配列およびSEQ ID NO:50に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列、または
(iv)SEQ ID NO:60に示したVH配列およびSEQ ID NO:64に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:67に示したVH配列およびSEQ ID NO:71に示したVL配列
を含む。
【0126】
1つの態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体は一価である。
【0127】
別の態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体は、2つまたはそれ以上の同一の抗原結合領域を含む単一特異性抗体である。
【0128】
さらなる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体は、ヒトPD-L1に結合することができる2つの抗原結合領域を有する二価抗体であり、かつ、前記2つの抗原結合領域は、同一の可変領域配列を有する。
【0129】
異なる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体は、二価二重特異性抗体であり、前記ヒトPD-L1に結合することができる(第1の)抗原結合領域に加えて、第2の抗原に結合することができる(第2の)抗原結合領域を含み、前記第2の抗原はヒトCD3εである。
【0130】
異なる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体は、二価二重特異性抗体であり、前記ヒトPD-L1に結合することができる(第1の)抗原結合領域に加えて、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる(第2の)抗原結合領域を含み、前記第2の抗原はヒトCD3εでない。
【0131】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体に関し、前記第2の抗原が任意でヒトCD3εでなく、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:63、およびSEQ ID NO:70に示した配列からなる群より選択される。本明細書において「異なるエピトープ」とは、第2の抗原結合領域が結合するエピトープが、第1の抗原結合領域が結合するエピトープとは異なることを意味する。
【0132】
前記多重特異性抗体の1つの態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、
(iv)SEQ ID NO:33に示したCDR1配列、SEQ ID NO:34に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:35に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:37に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、SEQ ID NO:38に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(v)SEQ ID NO:47に示したCDR1配列、SEQ ID NO:48に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:49に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:51に示した配列を有するCDR1、配列DVIを有するCDR2、およびSEQ ID NO:52に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vi)SEQ ID NO:54に示したCDR1配列、SEQ ID NO:55に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:56に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:58に示した配列を有するCDR1、配列RDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:59に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vii)SEQ ID NO:61に示したCDR1配列、SEQ ID NO:62に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:63に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:65に示した配列を有するCDR1、配列DDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:66に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(viii)SEQ ID NO:68に示したCDR1配列、SEQ ID NO:69に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:70に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:72に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:73に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0133】
前記多重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む。
【0134】
前記多重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0135】
前記多重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0136】
前記多重特異性抗体の別の態様において、前記VH配列およびVL配列はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列は変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VL配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列は変異していない。
【0137】
前記多重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列、または
(iv)SEQ ID NO:32に示したVH配列およびSEQ ID NO:36に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:46に示したVH配列およびSEQ ID NO:50に示したVL配列、または
(vi)SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列、または
(vii)SEQ ID NO:60に示したVH配列およびSEQ ID NO:64に示したVL配列、または
(viii)SEQ ID NO:67に示したVH配列およびSEQ ID NO:71に示したVL配列
を含む。
【0138】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体に関し、前記第2の抗原は任意でヒトCD3εでなく、前記抗体は、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列および SEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない。
【0139】
前記多重特異性抗体の1つの態様において、前記抗体は、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0140】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体に関し、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列および SEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない。
【0141】
本明細書の1つの態様において、前記抗体はヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する。
【0142】
さらなる態様において、前記抗体は、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列および SEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0143】
さらなる態様において、前記抗体とヒトPD-L1との結合は、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる。本明細書において「ブロックされた」とは、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体が、前記二重特異性抗体と競合するが、それと置き換わらないことを示す。
【0144】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体に関し、前記第2の抗原が任意でヒトCD3εではなく、前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる。
【0145】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む二価二重特異性抗体に関し、前記第2の抗原が任意でヒトCD3εではなく、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、およびSEQ ID NO:21に示した配列からなる群より選択される。
【0146】
前記二価二重特異性抗体の1つの態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0147】
前記二価二重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む。
【0148】
前記二価二重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む。
【0149】
前記二価二重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
を含む。
【0150】
前記二価二重特異性抗体の別の態様において、前記VH配列およびVL配列はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VH配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列は変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列は、前記VL配列の各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列は変異していない。
【0151】
前記二価二重特異性抗体の別の態様において、前記ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域は、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列
を含む。
【0152】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む二価二重特異性抗体に関し、前記第2の抗原が任意でヒトCD3εではなく、前記抗体が、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない。
【0153】
前記二価二重特異性抗体の1つの態様において、前記抗体は、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0154】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む二価二重特異性抗体に関し、前記抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない。
【0155】
本明細書の1つの態様において、前記抗体はヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する。
【0156】
さらなる態様において、前記抗体は、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合する。
【0157】
さらなる態様において、前記抗体とヒトPD-L1との結合は、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる。本明細書において「ブロックされた」とは、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体が、前記二重特異性抗体と競合するが、それと置き換わらないことを示す。
【0158】
さらなる局面において、本発明は、ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む二価二重特異性抗体に関し、前記第2の抗原が任意でヒトCD3εではなく、かつ前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができるか、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる。
【0159】
本発明の抗体のさらなる態様
1つの態様において、本発明による抗体は、本明細書中の実施例8に記載の通りに測定した場合に、約10-8Mまたはそれ未満、例えば、約10-9Mまたはそれ未満、例えば、約10-10Mまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する。
【0160】
さらなる態様において、本発明の抗体は、本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介する。
【0161】
好ましい態様において、本発明の抗体はヒトPD-L2に結合しない。
【0162】
抗体形式
前記のように、様々な抗体形式が当技術分野において説明されている。本発明の抗体は、原則的に、任意のアイソタイプの抗体でよい。アイソタイプの選択は、典型的には、望ましい、Fcを介したエフェクター機能、例えば、ADCC誘導、またはFcを介したエフェクター機能を欠く抗体(「不活性(inert)」抗体)に要求される要件によって左右される。例示的なアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかが用いられ得る。本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のためにアイソタイプスイッチ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変えられてもよい。1つの態様において、本発明の抗体の両重鎖は、IgG1アイソタイプの重鎖、例えば、IgG1,κである。任意で、重鎖は、本明細書中の他の箇所に記載の通りにヒンジおよび/またはCH3領域において改変されてもよい。
【0163】
好ましくは、抗原結合領域のそれぞれは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ前記可変領域はそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む。さらに、好ましくは、前記抗体は2つの重鎖定常領域(CH)と2つの軽鎖定常領域(CL)とを含む。
【0164】
1つの態様において、前記抗体は、完全長抗体、例えば、完全長IgG1抗体である。別の態様において、前記抗体は、完全長IgG4抗体、好ましくは、安定化ヒンジ領域を有する完全長IgG4抗体である。IgG4ヒンジ領域を安定化する改変、例えば、コアヒンジにあるS228P変異が当技術分野において説明されている。例えば、Labrijn et al., 2009 Nat Biotechnol.27(8):767-71を参照されたい。
【0165】
他の態様において、本発明の抗体は、抗体断片、例えば、Fab’またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、WO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体、F(ab')2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、キャメリドもしくはナノボディ、または単離された相補性決定領域(CDR)である。
【0166】
本発明の抗体は、好ましくは、ヒトであるか、ヒト化されているか、またはキメラである。前記抗体が二重特異性抗体である態様では、両方の半分子がヒトでもよく、ヒト化されていてもよく、キメラでもよい。または、半分子は、配列の起源について特徴が異なってもよい。
【0167】
例えば、1つの態様において、二重特異性抗体は、それぞれが抗原結合領域を含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はキメラであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、存在する場合にはキメラである。
【0168】
例えば、別の態様において、二重特異性抗体は、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化されており、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、存在する場合にはヒト化されている。
【0169】
例えば、さらなる態様において、二重特異性抗体は、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒトであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子は、存在する場合にはヒトである。
【0170】
従って、例えば、1つの態様では、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域はヒト化されており、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域は、存在する場合にはヒト化されている。
【0171】
異なる態様において、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域はヒトであり、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域は、存在する場合にはヒトである。
【0172】
さらなる態様において、前記抗体は、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域と、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域とを含む二重特異性抗体であり、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒトであるか、ヒト化されているか、またはキメラであり、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化されている。
【0173】
好ましくは、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒトであり、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子はヒト化されている。
【0174】
二重特異性抗体形式
二重特異性抗体の多くの異なる形式および使用が当技術分野において公知であり、Kontermann; Drug Discov Today, 2015 Jul;20(7):838-47およびMAbs, 2012 Mar-Apr;4(2):182-97によって概説された。
【0175】
本発明に従う二重特異性抗体は、任意の特定の二重特異性形式または二重特異性形式を生成する方法に限定されない。
【0176】
本発明において用いられ得る二重特異性抗体分子の例は、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一抗体;(ii)例えば、余分なペプチドリンカーによって直列に連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する単鎖抗体;(iii)それぞれの軽鎖および重鎖が、短いペプチド結合を介して2つの可変ドメインを直列に含む、二重-可変-ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In:Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg(2010));(iv)化学的に連結された二重特異性(Fab')2断片;(v)2つの単鎖ダイアボディが融合して、標的抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体となった、Tandab;(vi)scFvとダイアボディとが組み合わされて多価分子となった、フレキシボディ;(vii)プロテインキナーゼAにある「二量体化・ドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドック・ロック(dock and lock)」分子。これをFabに適用すると、2つ同一のFab断片が異なる1つのFab断片と連結した三価二重特異性結合タンパク質を得ることができる;(viii)いわゆる、スコーピオン分子。例えば、2つのscFvがヒトFabアームの両末端と融合しているスコーピオン分子;ならびに(ix)ダイアボディを含む。
【0177】
1つの態様において、本発明の二重特異性抗体は、ダイアボディ、クロスボディ、または管理されたFabアーム交換を介して得られた二重特異性抗体(例えば、WO2011131746(Genmab)に記載)である。
【0178】
二重特異性抗体の異なるクラスの例には、(i)ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子;(ii)組換えIgG様二重標的化分子。この分子の両側はそれぞれ、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部を含む;(iii)完全長IgG抗体が余分なFab断片またはFab断片の一部と融合した、IgG融合分子;(iv)単鎖Fv分子または安定化ダイアボディが重鎖定常ドメイン、Fc領域、またはその一部と融合した、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が一緒に融合し、重鎖定常ドメイン、Fc領域、またはその一部と融合した、Fab融合分子;ならびに(vi)異なる単鎖Fv分子または異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が互いに融合しているか、または重鎖定常ドメイン、Fc領域もしくはその一部と融合した別のタンパク質もしくは担体分子と融合している、ScFvベースおよびダイアボディベースの抗体および重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が含まれるが、これに限定されない。
【0179】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例には、トリオマブ(Triomab)/ クアドロマ(Quadroma)分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech; Roche, WO2011069104)、いわゆる、ノブイントゥホール(Knob-into-Hole)分子(Genentech, WO9850431)、CrossMAb(Roche, WO2011117329)および静電気的にマッチした分子(electrostatically-matched molecule)(Amgen, EP1870459およびWO2009089004; Chugai, US201000155133; Oncomed, WO2010129304)、LUZ-Y分子(Genentech, Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIG ボディおよびPIGボディ分子(Pharmabcine, WO2010134666, WO2014081202)、鎖交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body: SEEDbody)分子(EMD Serono, WO2007110205)、Biclonics分子(Merus, WO2013157953)、FcΔAdp分子(Regeneron, WO201015792)、二重特異性IgG1分子およびIgG2分子(Pfizer/Rinat, WO11143545)、Azymetricスキャフォールド分子(Zymeworks/Merck, WO2012058768)、mAb-Fv分子(Xencor, WO2011028952)、二価二重特異性抗体(WO2009080254)、ならびにデュオボディ(DuoBody)(登録商標)分子(Genmab, WO2011131746)が含まれるが、これに限定されない。
【0180】
組換えIgG様二重標的化分子の例には、二重標的化(Dual Targeting)(DT)-Ig分子(WO2009058383)、トゥーインワン抗体(Two-in-one Antibody)(Genentech; Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、クロスリンクドMab (Cross-linked Mab)(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star, WO2008003116)、Zybody分子(Zyngenia; LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus, US7,262,028)、κλボディ(NovImmune, WO2012023053)、およびCovXボディ(CovX/Pfizer; Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501-506.)が含まれるが、これに限定されない。
【0181】
IgG融合分子の例には、二重可変ドメイン(Dual Variable Domain)(DVD)-Ig分子(Abbott, US7,612,181)、デュアルドメインダブルヘッド(Dual domain double head)抗体(Unilever; Sanofi Aventis, WO20100226923)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly, Lewis et al. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ; Dimasi et al.J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)、およびBsAb分子(Zymogenetics, WO2010111625)、ヘラクレス(HERCULE)分子(Biogen Idec, US007951918)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc, CN 102250246)、およびTvAb分子(Roche, WO2012025525, WO2012025530)が含まれるが、これに限定されない。
【0182】
Fc融合分子の例には、ScFv/Fc融合(Pearce et al., Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88)、スコーピオン分子(Emergent BioSolutions/Trubion, Blankenship JW, et al. AACR 100th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465); Zymogenetics/BMS, WO2010111625)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(Dual Affinity Retargeting Technology)(Fc-DART)分子(MacroGenics, WO2008157379, WO2010080538)、およびデュアル(ScFv)2-Fab分子(National Research Center for Antibody Medicine-China)が含まれるが、これに限定されない。
【0183】
Fab融合二重特異性抗体の例には、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN; Deo et al J Immunol. 1998 Feb 15;160(4):1677-86.)、デュアルアクション(Dual-Action)またはBis-Fab分子(Genentech, Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、ドックアンドロック(Dock-and-Lock)(DNL)分子(ImmunoMedics, WO2003074569, WO2005004809)、二価二重特異性分子(Biotecnol, Schoonjans, J Immunol. 2000 Dec 15;165(12):7050-7.)、およびFab-Fv分子(UCB-Celltech, WO2009040562A1)が含まれるが、これに限定されない。
【0184】
ScFv抗体、ダイアボディベースの抗体、およびドメイン抗体の例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bispecific T Cell Engager)(BiTE)分子(Micromet, WO2005061547)、タンデムダイアボディ分子(TandAb)(Affimed) Le Gall et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):357-66.)、デュアルアフィニティリターゲティングテクノロジー(DART)分子(MacroGenics, WO2008157379, WO2010080538)、単鎖ダイアボディ分子(Lawrence, FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT, ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合(Human Serum Albumin ScFv Fusion)(Merrimack, WO2010059315)、およびコムボディ(COMBODY)分子(Epigen Biotech, Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75.)、二重標的化分子(Ablynx, Hmila et al., FASEB J. 2010)、ならびに二重標的化重鎖のみのドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が含まれるが、これに限定されない。
【0185】
1つの局面において、本発明の二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列、および第2のCH3領域を含む第2のFc配列を含み、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である。これらの相互作用、およびこれらの相互作用をどうやって実現できるかについてのさらに詳しい内容は、参照により本明細書に組み入れられるWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示される。
【0186】
本明細書においてさらに説明されるように、安定した二重特異性抗体、例えば、二重特異性CD3×PD-L1抗体は、CH3領域にごく少数の保存的非対称変異を含有し、1種類のホモ二量体出発PD-L1抗体と、異なるPD-L1エピトープまたは異なる抗原に結合することができる1種類のホモ二量体出発抗体(例えば、ホモ二量体出発CD3抗体)とをベースにして特定の方法を用いて高収率で得ることができる。非対称変異とは、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0187】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、第1のCH3領域および第2のCH3領域は同じ位置で置換されない。
【0188】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は位置366にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置368、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。1つの態様において、位置366のアミノ酸は、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、またはGlnより選択される。
【0189】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は位置368にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置366、370、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0190】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は、位置370にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、399、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0191】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は位置399にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、405、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0192】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は位置405にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、407、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0193】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は位置407にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0194】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は位置409にアミノ酸置換を有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。
【0195】
従って、本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は、非対称変異、すなわち、2つのCH3領域の異なる位置にある変異、例えば、CH3領域の1つには位置405に変異、他方のCH3領域には位置409に変異を含有する。
【0196】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有する。1つのこのような態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Cys、Lys、またはLeuを有する。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有する。
【0197】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置405に、Phe以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、Leu、Met、またはCysを含み、位置409にLysを含む。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Met、Lys、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、位置409にLysを含む。
【0198】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は、位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。そのさらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は、位置405に、Phe、Arg、またはGly以外のアミノ酸、例えば、Leu、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Met、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、位置409にLysを含む。別の態様において、前記第1のCH3領域は位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。
【0199】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体のさらなる態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含む。さらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含む。
【0200】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体のなおさらなる態様において、前記第1のCH3領域は位置370にLys、位置405にPhe、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLys、位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0201】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0202】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0203】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置350にThrを含み、位置370にLysを含み、位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は位置409にLysを含み、(a)位置350にIle、位置405にLeuを含むか、または(b)位置370にThr、位置405にLeuを含む。
【0204】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置350にThrを含み、位置370にLysを含み、位置405にPheを含み、位置409にArgを含み、前記第2のCH3領域は、位置350にIleを含み、位置370にThrを含み、位置405にLeuを含み、位置409にLysを含む。
【0205】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の1つの態様において、前記第1のCH3領域は、位置409にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は、位置405にPhe以外のアミノ酸を有し、例えば、位置405にPhe、Arg、もしくはGly以外のアミノ酸を有するか、または前記第1のCH3領域は位置409にLys、Leu、もしくはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のCH3領域は、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有する。
【0206】
1つの態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体は、位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有する第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有する第2のCH3領域を含む。
【0207】
1つの態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体は、位置407にTyrを有しかつ位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有する、第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有しかつ位置409にLysを有する、第2のCH3領域を含む。
【0208】
1つの態様において、本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体は、位置407にTyrを有しかつ位置409にArgを有する、第1のCH3領域、および、位置407にTyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、もしくはThr以外のアミノ酸を有しかつ位置409にLysを有する、第2のCH3領域を含む。
【0209】
別の態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有する。別の態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Ala、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有する。
【0210】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有する。
【0211】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0212】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0213】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有し、409にLysを有する。
【0214】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407に、Tyr、Asp、Glu、Phe、Lys、Gln、Arg、Ser、またはThr以外のアミノ酸、例えば、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、His、Asn、Pro、Trp、またはCysを有し、位置409にLysを有する。
【0215】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にAla、Gly、His、Ile、Leu、Met、Asn、Val、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0216】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、前記第1のCH3領域は位置407にTyrを有し、位置409にArgを有し、前記第2のCH3領域は、位置407にGly、Leu、Met、Asn、またはTrpを有し、位置409にLysを有する。
【0217】
本明細書において開示される任意の態様において定義された二重特異性抗体の別の態様において、第1のCH3領域は、位置409に、Lys、Leu、またはMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Phe、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、またはCysを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Phe、Leu、およびMet以外のアミノ酸、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asp、Asn、Glu、Gln、Pro、Trp、Tyr、もしくはCysを有するか、または
(ii)位置370にTrpを有するか、または
(iii)位置399にAsp、Cys、Pro、Glu、もしくはGln以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Gly、Ala、Val、Ile、Ser、Thr、Lys、Arg、His、Asn、Trp、Tyr、もしくはCysを有するか、または
(iv)位置366に、Lys、Arg、Ser、Thr、もしくはTrp以外のアミノ酸、例えば、Phe、Leu、Met、Ala、Val、Gly、Ile、Asn、His、Asp、Glu、Gln、Pro、Tyr、もしくはCysを有する。
【0218】
1つの態様において、第1のCH3領域は位置409にArg、Ala、His、またはGlyを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Lys、Gln、Ala、Asp、Glu、Gly、His、Ile、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrpを有するか、または
(ii)位置370にTrpを有するか、または
(iii)位置399に、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Asn、Ser、Thr、Trp、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyrを有するか、または
(iv)位置366に、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、Gln、Phe、Gly、Ile、Leu、Met、もしくはTyrを有する。
【0219】
1つの態様において、第1のCH3領域は位置409にArgを有し、第2のCH3領域は、
(i)位置368に、Asp、Glu、Gly、Asn、Arg、Ser、Thr、Val、もしくはTrpを有するか、または
(ii)位置370にTrpを有するか、または
(iii)位置399に、Phe、His、Lys、Arg、もしくはTyrを有するか、または
(iv)位置366に、Ala、Asp、Glu、His、Asn、Val、Glnを有する。
【0220】
好ましい態様において、二重特異性抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含み、前記第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、(i)前記第1の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はLであり、かつ、前記第2の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はRであるか、または(ii)第1の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はRであり、かつ、第2の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸はLである。
【0221】
前記のアミノ酸置換に加えて、前記第1の重鎖および第2の重鎖は、野生型重鎖配列と比べてアミノ酸置換、欠失、または挿入をさらに含有してもよい。
【0222】
さらなる態様において、前記第1のFabアームおよび第2のFabアーム(または重鎖定常ドメイン)は、指定された変異以外は、独立して、(IgG1m(a))(SEQ ID NO:96)、(IgG1m(f))(SEQ ID NO:97)、および(IgG1m(ax)(SEQ ID NO:98)より選択されるCH3配列を含む。
【0223】
1つの態様において、前記第1のFc配列も前記第2のFc配列も(コア)ヒンジ領域にCys-Pro-Ser-Cys配列を含まない。
【0224】
さらなる態様において、前記第1のFc配列および前記第2のFc配列は両方とも(コア)ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。
【0225】
二重特異性抗体を調製する方法
本発明の二重特異性抗体の調製では、ハイブリッドハイブリドーマおよび化学結合法(Marvin and Zhu (2005) Acta Pharmacol Sin 26:649)などの従来法を使用することができる。異なる重鎖および軽鎖からなる2種類の抗体を宿主細胞において同時発現させると、望ましい二重特異性抗体の他に、可能性のある抗体産物の混合物が生じる。次いで、望ましい二重特異性抗体を、例えば、アフィニティクロマトグラフィーまたは同様の方法によって単離することができる。
【0226】
異なる抗体構築物が同時発現された場合に、機能的な二重特異性産物の形成に有利に働く戦略、例えば、Lindhofer et al. (1995 J Immunol 155:219)に記載の方法も使用することができる。異なる抗体を産生するラットハイブリドーマとマウスハイブリドーマを融合すると、種に限定された優先的な重鎖/軽鎖対形成のために、限られた数のヘテロ二量体タンパク質が生じる。ホモ二量体を上回ってヘテロ二量体形成を促進する別の戦略が「ノブイントゥホール」戦略である。この戦略では、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げる目的で、突起が第1の重鎖ポリペプチド上に、対応する空洞が第2の重鎖ポリペプチドに、これらの2本の重鎖の境界面にある空洞内に突起を配置できるように導入される。「突起」は、第1のポリペプチドの境界面に由来する小さいアミノ酸側鎖を、さらに大きい側鎖と交換することによって構築される。突起と同一または類似のサイズの、埋め合わせとなる「空洞」は、大きいアミノ酸側鎖を小さいアミノ酸側鎖と交換することによって第2のポリペプチドの境界面に作り出される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459(Chugai)およびWO2009089004(Amgen)は、宿主細胞における異なる抗体ドメインが同時発現された場合にヘテロ二量体形成に有利に働く他の戦略について説明している。これらの方法では、ホモ二量体形成が静電気的に不利であり、ヘテロ二量体化が静電気的に有利になるように、両CH3ドメインにあるCH3-CH3境界面を構成する1つまたは複数の残基が荷電アミノ酸と交換される。WO2007110205(Merck)は、ヘテロ二量体化を促進するためにIgAとIgG CH3ドメインとの間の相違点が利用される、さらに別の戦略について説明している。
【0227】
二重特異性抗体を産生するための別のインビトロ方法はWO2008119353(Genmab)に記載されており、ここでは、二重特異性抗体は、還元条件下でインキュベートされた場合の2種類の単一特異性IgG4抗体間またはIgG4様抗体間での「Fabアーム」交換または「半分子」交換(重鎖と、取り付けられている軽鎖の入れ替え)によって形成される。結果として生じた産物は、異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0228】
本発明の二重特異性抗体、例えば、二重特異性CD3×PD-L1抗体を調製するための好ましい方法は、
(a)Fc領域を含む第1の抗体を提供する工程であって、前記Fc領域が第1のCH3領域を含む、工程;
(b)第2のFc領域を含む第2の抗体を提供する工程であって、前記Fc領域が第2のCH3領域を含み、第1の抗体が、本発明によるPD-L1抗体であり、第2の抗体が、異なるPD-L1エピトープもしくは異なる抗原、例えば、ヒトCD3に結合することができる抗体であるか、または逆も同じであり、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である、工程;
(c)還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性抗体、例えば、二重特異性PD-L1×CD3抗体を得る工程
を含む、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に記載の方法を含む。
【0229】
同様に、
(a)本明細書において定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ培養物から前記第1の抗体を精製する工程;
(b)異なるPD-L1エピトープにまたは異なる抗原に結合することができる抗原結合領域、例えば、本明細書において定義されたヒトCD3ε結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、培養物から前記第2の抗体を精製する工程;
(c)ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、前記第1の抗体を前記第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;ならびに
(d)前記二重特異性抗体を得る工程
を含む、本発明による抗体を産生するための方法が提供される。
【0230】
1つの態様において、前記第1の抗体と前記第2の抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下でインキュベートされ、結果として生じたヘテロ二量体抗体における前記第1の抗体と第2の抗体との間のヘテロ二量体相互作用は、0.5mM GSHで、37℃で24時間後にFabアーム交換が起こらないようなヘテロ二量体相互作用である。
【0231】
理論に限定されないが、工程(c)では、親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は還元され、次いで、結果として生じたシステインは、(初めから、異なる特異性を有する)別の親抗体分子のシステイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。この方法の1つの態様において、工程(c)における還元条件は、還元剤、例えば、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、およびβ-メルカプト-エタノールからなる群より選択される還元剤、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、およびtris(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加を含む。さらなる態様において、工程(c)は、例えば、還元剤を除去することで、例えば、脱塩することで、条件を非還元条件または弱還元(less reducing)条件に回復させることを含む。
【0232】
この方法のために、前記抗体のどの抗体も、例えば、前記のCD3抗体およびPD-L1抗体を、それぞれ、第1のFc領域および/または第2のFc領域を含む、第1および第2のCD3抗体およびPD-L1抗体を含めて使用することができる。このような第1のFc領域および第2のFc領域の例は、このような第1のFc領域および第2のFc領域の組み合わせを含めて、前記の任意のものを含んでよい。特定の態様において、第1の抗体および第2の抗体、例えば、それぞれ、CD3抗体およびPD-L1抗体は、本明細書に記載の通りに二重特異性抗体を得るように選択されてもよい。
【0233】
この方法の1つの態様において、前記第1の抗体および/または第2の抗体は完全長抗体である。
【0234】
第1の抗体および第2の抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を含むが、これに限定されない任意のアイソタイプのものでよい。この方法の1つの態様において、前記第1の抗体および前記第2の抗体両方のFc領域はIgG1アイソタイプのFc領域である。別の態様において、前記抗体のFc領域の一方はIgG1アイソタイプのFc領域であり、他方はIgG4アイソタイプのFc領域である。後者の態様では、結果として生じた二重特異性抗体はIgG1のFc配列とIgG4のFc配列を含み、従って、エフェクター機能の活性化に関して興味深い中間特性を有する可能性がある。
【0235】
さらなる態様において、抗体出発タンパク質の1つは、プロテインAに結合しないように操作されており、従って、産物をプロテインAカラム上に通過させることで前記ホモ二量体出発タンパク質からヘテロ二量体タンパク質を分離することが可能になる。
【0236】
前記のように、ホモ二量体出発抗体の第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列である。これらの相互作用、およびこれらの相互作用をどうやって成し遂げるかについてのさらに詳しい内容は、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に示される。WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0237】
特に、安定した二重特異性抗体、例えば、二重特異性CD3×PD-L1抗体はPD-L1に結合するホモ二量体出発抗体と、異なる抗原または異なるPD-L1エピトープ、例えばCD3にそれぞれ結合するホモ二量体出発抗体の、2種類のホモ二量体出発抗体をベースにして本発明の上記の方法を用いて高収率で得ることができ、CH3領域にごく少数の保存的非対称変異を含有する。非対称変異とは、前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一でない位置にアミノ酸置換を含有することを意味する。
【0238】
本発明の二重特異性抗体はまた、シングル細胞において第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドをコードする構築物を同時発現させることによって得られてもよい。従って、さらなる局面において、本発明は、
(a)第1の抗体重鎖の第1のFc配列および第1の抗原結合領域を含む第1のポリペプチドをコードする第1の核酸構築物を提供する工程であって、前記第1のFc配列が第1のCH3領域を含む、工程、
(b)第2の抗体重鎖の第2のFc配列および第2の抗原結合領域を含む第2のポリペプチドをコードする第2の核酸構築物を提供する工程であって、前記第2のFc配列が第2のCH3領域を含み、
前記第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が異なり、かつ前記第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロ二量体相互作用が前記第1のCH3領域および第2のCH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれより強くなるような配列であり、前記第1のホモ二量体タンパク質が位置409にLys、Leu、またはMet以外のアミノ酸を有し、前記第2のホモ二量体タンパク質が、位置366、368、370、399、405、および407からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、
任意で、前記第1の核酸構築物および第2の核酸構築物が、前記第1の抗体および第2の抗体の軽鎖配列をコードする、工程、
(c)前記第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を宿主細胞において同時発現させる工程、ならびに
(d)細胞培養物から前記ヘテロ二量体タンパク質を得る工程
を含む、二重特異性抗体を産生するための方法に関する。
【0239】
本発明の抗体を産生するための材料および方法
さらなる局面において、本発明は、本発明による抗体の組換え産生のための材料および方法に関する。プロモーター、エンハンサーなどを含む適切な発現ベクター、および抗体を産生するための適切な宿主細胞が当技術分野において周知である。
【0240】
従って、1つの局面において、
(i)本明細書において定義された、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および/または
(ii)本明細書において定義された、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
を含む、核酸構築物が提供される。
【0241】
1つの態様において、前記核酸構築物は、
(i)本明細書において定義された、異なるPD-L1エピトープまたは異なる抗原、例えば、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および
(ii)本明細書において定義された、異なるPD-L1エピトープまたは異なる抗原、例えば、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
をさらに含む。
【0242】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書において上記で定義された核酸構築物を含む、発現ベクターに関する。
【0243】
本発明の文脈において発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(適切な一組の発現制御エレメントを含む核酸配列)を含む任意の適切なベクターでよい。このようなベクターの例には、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが含まれる。1つの態様において、抗体コード核酸、例えば、PD-L1コード核酸またはCD3抗体コード核酸は、例えば、直鎖発現エレメントを含む、裸のDNAベクターもしくはRNAベクター(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355-59(1997)に記載)、圧縮された核酸ベクター(例えば、US6,077,835および/もしくはWO00/70087に記載)、プラスミドベクター、例えば、pBR322、pUC19/18、もしくはpUC118/119、「midge」最小サイズ核酸ベクター(例えば、Schakowski et al., Mol Ther 3, 793-800(2001)に記載)、または沈殿された核酸ベクター構築物、例えば、Ca3(P04)2によって沈殿された構築物(例えば、WO200046147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551-55(1986)、Wigler et al., Cell 14, 725(1978)、およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603(1981)に記載)の中に含まれる。このような核酸ベクターおよびその利用は当技術分野において周知である(例えば、US5,589,466およびUS5,973,972を参照されたい)。
【0244】
1つの態様において、前記ベクターは、細菌細胞における前記抗体、例えば、PD-L1抗体および/またはCD3抗体の発現に適している。このようなベクターの例には、発現ベクター、例えば、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen, Madison WI)など)が含まれる。
【0245】
発現ベクターは同様にまたは代わりに、酵母システムにおける発現に適したベクターでもよい。酵母システムにおける発現に適した任意のベクターを使用することができる。適切なベクターには、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516-544(1987)に概説)。
【0246】
発現ベクターは同様にまたは代わりに、哺乳動物細胞における発現に適したベクター、例えば、選択マーカーとしてグルタミン合成酵素を含むベクター、例えば、Bebbington(1992) Biotechnology(NY)10:169-175に記載のベクターでもよい。
【0247】
核酸および/またはベクターはまた、分泌配列/局在化配列をコードする核酸配列も含んでよい。分泌配列/局在化配列は、ポリペプチド、例えば、新生ポリペプチド鎖を細胞周辺腔に、または細胞培地中に標的化することができる。このような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチドを含む。
【0248】
発現ベクターは、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含んでもよく、これらと結合してもよい。このようなエレメントの例には、強発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌におけるプラスミド産物用の複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または便利なクローニングサイト(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、構成的プロモーターと相対する誘導性プロモーター、例えば、CMV IEも含んでよい。
【0249】
1つの態様において、前記抗体コード発現ベクター、例えば、PD-L1抗体コード発現ベクターおよび/またはCD3抗体コード発現ベクターは、ウイルスベクターを介して、宿主細胞もしくは宿主動物の中に配置されてもよく、および/または宿主細胞もしくは宿主動物に送達されてもよい。
【0250】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書において上記で指定された核酸構築物または発現ベクターの1つまたは複数を含む、宿主細胞に関する。
【0251】
従って、本発明はまた、本発明の抗体を産生する、組換え真核生物宿主細胞または原核生物宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマにも関する。
【0252】
宿主細胞の例には、酵母、細菌細胞、植物細胞、および哺乳動物細胞、例えば、CHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6、もしくはNS0細胞、またはリンパ球細胞が含まれる。好ましい宿主細胞はCHO-K1細胞である。
【0253】
例えば、1つの態様において、宿主細胞は、細胞ゲノムに安定に組み込まれた第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含んでもよい。別の態様において、本発明は、上記で指定した第1の核酸構築物および第2の核酸構築物を含む、非組み込み型核酸、例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、または直鎖発現エレメントを含む、細胞を提供する。
【0254】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義されたPD-L1抗体を産生するハイブリドーマに関する。
【0255】
Fc領域
一部の態様において、本発明による抗体は、抗原結合領域に加えて、2つの重鎖のFc配列からなるFc領域を含む。
【0256】
第1のFc配列および第2のFc配列はそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むが、これに限定されない任意のアイソタイプのものでよく、1つまたは複数の変異または改変を含んでもよい。1つの態様において、第1のFc配列および第2のFc配列はそれぞれ、IgG4アイソタイプのものでもよく、それに由来してもよく、任意で、1つまたは複数の変異または改変を有する。別の態様において、第1のFc配列および第2のFc配列はそれぞれ、IgG1アイソタイプのものでもよく、それに由来してもよく、任意で、1つまたは複数の変異または改変を有する。別の態様において、Fc配列の一方はIgG1アイソタイプのFc配列であり、他方はIgG4アイソタイプのFc配列であるか、または、このようなそれぞれのアイソタイプに由来し、任意で、1つまたは複数の変異または改変を有する。
【0257】
1つの態様において、一方または両方のFc配列はエフェクター機能が欠損している。例えば、Fc配列は、エフェクター機能、例えば、ADCCを媒介する能力が低減されるかようにまたはさらには無くなるように変異している、IgG4アイソタイプのFc配列でもよく、非IgG4タイプ、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3のFc配列でもよい。このような変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2):1129-1138 (2006)および Hezareh M, J Virol.; 75(24):12161-12168 (2001)において説明されている。別の態様において、一方または両方のFc配列はIgG1野生型配列を含む。
【0258】
本発明による抗体はFc領域に改変を含んでもよい。抗体が、このような改変を含む時、不活性抗体または非活性化抗体になる場合がある。本明細書で使用する「不活性」、「不活性な」、または「非活性化」という用語は、少なくとも、どのFcγ受容体にも結合することができないか、Fcを介したFcR架橋結合を誘導することができないか、または個々の抗体の2つのFc領域を介して、FcRを介した標的抗原の架橋結合を誘導することができないか、またはC1qに結合することができないFc領域をいう。抗体、例えば、ヒト化またはキメラCD3抗体のFc領域の不活性は単一特異性形式の前記抗体を用いて有利に試験される。
【0259】
治療用抗体開発のために抗体のFc領域を、Fcγ(ガンマ)受容体とC1qとの相互作用に不活性になるように、いくつかの変種を構築することができる。このような変種の例は本明細書に記載されている。
【0260】
従って、本発明の抗体の1つの態様において、前記抗体は第1の重鎖および第2の重鎖を含み、一方の重鎖または両方の重鎖は、前記抗体が、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含む以外は同一の抗体と比べてより少ない程度まで、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、改変されている。前記Fcを介したエフェクター機能は、Fcを介したCD69発現を判定することによって測定されてもよいか、Fcγ受容体への結合によって測定されてもよいか、C1qへの結合によって測定されてもよいか、またはFcを介したFcR架橋結合の誘導によって測定されてもよい。
【0261】
このような1つの態様において、重鎖定常配列は、前記抗体が、野生型(非改変)抗体と比較した場合に、Fcを介したCD69発現を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%低減するように、改変されており、前記Fcを介したCD69発現は、例えば、WO2015001085の実施例3に記載の通りにPBMCに基づく機能アッセイ法において判定される。
【0262】
別のこのような態様において、重鎖定常配列および軽鎖定常配列は、前記抗体へのC1qの結合が非改変抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減するように改変されており、C1q結合はELISAによって測定される。
【0263】
別の態様において、前記抗体は、非改変抗体と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%低減したFcを介したT細胞増殖を媒介するように改変されているFc領域を含み、前記T細胞増殖は、末梢血単核球(PBMC)に基づく機能アッセイ法において測定される。
【0264】
従って、C1qおよびFcγ受容体との相互作用において中心的な役割を持っている、Fc領域内のアミノ酸が改変され得る。
【0265】
例えば、IgG1アイソタイプ抗体において改変され得るアミノ酸位置の例には、位置L234、L235、およびP331が含まれる。その組み合わせ、例えば、L234F/L235E/P331Sは、ヒトCD64、CD32、CD16、およびC1qへの結合を著しく減らすことができる。
【0266】
従って、1つの態様では、L234、L235、およびP331に対応する少なくとも1つの位置にあるアミノ酸は、それぞれA、A、およびSでもよい(Xu et al., 2000, Cell Immunol. 200(1):16-26; Oganesyan et al., 2008, Acta Cryst.(D64):700-4)。また、L234FおよびL235Eアミノ酸置換があるとFcγ受容体およびC1qとの相互作用が抑制されたFc領域を得ることができる(Canfield et al., 1991, J. Exp. Med. (173):1483-91; Duncan et al., 1988, Nature (332):738-40)。従って、1つの態様では、L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれFおよびEでもよい。D265Aアミノ酸置換は全てのFcγ受容体への結合を減らし、ADCCを阻止することができる(Shields et al., 2001、J. Biol. Chem. (276):6591-604)。従って、1つの態様では、D265に対応する位置にあるアミノ酸はAでもよい。C1qへの結合は位置D270、K322、P329、およびP331を変異させることによって抑制することができる。これらの位置をD270AまたはK322AまたはP329AまたはP331Aのいずれかに変異させると前記抗体をCDC活性欠損にすることができる。Idusogie EE, et al., 2000, J Immunol. 164: 4178-84)。従って、1つの態様では、D270、K322、P329、およびP331に対応する少なくとも1つの位置にあるアミノ酸は、それぞれA、A、A、およびAでもよい。
【0267】
Fc領域とFcγ受容体およびC1qとの相互作用を最小にする代替アプローチは抗体のグリコシル化部位を除去することによるものである。位置N297を、例えば、Q、A、またはEに変異させると、IgG-Fcγ受容体相互作用にとって重大な意味を持つグリコシル化部位が除去される。従って、1つの態様では、N297に対応する位置にあるアミノ酸はG、Q、A、またはEでもよい。Leabman et al., 2013, MAbs; 5(6):896-903)。Fc領域とFcγ受容体との相互作用を最小にする別の代替アプローチは、以下の変異; P238A、A327Q、P329A、またはE233P/L234V/L235A/G236delによって得られる可能性がある(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276):6591-604)。
【0268】
または、ヒトIgG2およびIgG4サブクラスはC1qおよびFcγ受容体との相互作用が天然では損なわれていると考えられているが、Fcγ受容体との相互作用が報告された(Parren et al., 1992, J. Clin Invest. 90: 1537-1546; Bruhns et al., 2009, Blood 113: 3716-3725)。両アイソタイプにおいて、これらの残存する相互作用を抑制する変異を加えると、FcR結合に関連する望ましくない副作用を低減することができる。IgG2の場合、これらはL234AおよびG237Aを含み、IgG4の場合、L235Eを含む。従って、1つの態様では、ヒトIgG2重鎖にあるL234およびG237に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれAおよびAでもよい。1つの態様において、ヒトIgG4重鎖にあるL235に対応する位置にあるアミノ酸はEでもよい。
【0269】
IgG2抗体においてFcγ受容体およびC1qとの相互作用をさらに最小にする他のアプローチは、WO2011066501およびLightle, S., et al., 2010, Protein Science (19):753-62に記載のアプローチを含む。
【0270】
前記抗体のヒンジ領域もFcγ受容体および補体との相互作用に関して重要な場合がある(Brekke et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138; Dall’Acqua WF, et al., 2006, J Immunol 177:1129-1138)。従って、ヒンジ領域内での変異またはヒンジ領域の欠失が抗体のエフェクター機能に影響を及ぼすことがある。
【0271】
従って、1つの態様では、前記抗体は第1の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン重鎖を含み、第1の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPでない。
【0272】
1つの態様において、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPでない。
【0273】
1つの態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置にあるアミノ酸はDでない。
【0274】
従って、1つの態様では、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置にあるアミノ酸はAおよびEからなる群より選択される。
【0275】
さらなる態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれLおよびLでない。
【0276】
特定の態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0277】
1つの態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれFおよびEである。
【0278】
特定の態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0279】
特に好ましい態様において、前記第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置にあるアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0280】
さらに特に好ましい態様において、前記抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである。
【0281】
さらに特に好ましい態様において、前記抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、第1の重鎖および第2の重鎖両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである。
【0282】
3つのアミノ酸置換L234F、L235E、およびD265Aの組み合わせを有し、さらに、K409RまたはF405L変異を有する抗体変種を、それぞれ、本明細書中では接尾文字「FEAR」または「FEAL」を付けて命名する。
【0283】
本明細書において、huCD3-H1L1は、SEQ ID NO:25に示したVH配列とSEQ ID NO:29に示したVL配列を有するヒト化SP34抗CD3抗体をいう。
【0284】
好ましい態様において、本発明の二重特異性抗体は、
(i)IgG1-huCD3-H1L1-FEALに由来する半分子抗体、ならびに、IgG1-PDL1-338-FEAR、IgG1-PDL1-511-FEAR、もしくはIgG1-PDL1-547-FEARに由来する半分子抗体、または
(ii)IgG1-huCD3-H1L1-FEARに由来する半分子抗体、ならびに、IgG1-PDL1-338-FEAL、IgG1-PDL1-511-FEAL、もしくはIgG1-PDL1-547-FEALに由来する半分子抗体および半分子抗体
を含む。
【0285】
さらなる態様において、第1の重鎖または半分子は、SEQ ID NO:90に示した配列を含み、第2の重鎖は、SEQ ID NO:89に示した配列を含む。
【0286】
本発明のさらなる態様において、二重特異性抗体の血清半減期を操作するために、二重特異性抗体の一方または両方の抗体形成部分は、胎児性Fc受容体(FcRn)との結合を低減または増加するように操作されている。血清半減期を増加または低減するための技法は当技術分野において周知である。例えば、Dall’Acqua et al. 2006, J. Biol. Chem., 281:23514-24; Hinton et al. 2006, J. Immunol., 176:346-56;およびZalevsky et al. 2010 Nat. Biotechnol., 28:157-9を参照されたい。
【0287】
結合体
さらなる局面において、本発明は、1つまたは複数の治療的部分、例えば、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激分子、および/または放射性同位体と連結または結合体化された抗体を提供する。このような結合体は本明細書において「免疫結合体」または「薬物結合体」と呼ばれる。1つまたは複数の細胞毒を含む免疫結合体は「免疫毒素」と呼ばれる。
【0288】
1つの態様において、第1のFc配列および/または第2のFc配列は薬物もしくはプロドラッグと結合体化されるか、または薬物もしくはプロドラッグのアクセプター基を含有する。このようなアクセプター基は、例えば、非天然アミノ酸でもよい。
【0289】
組成物
さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0290】
本発明の薬学的組成物は、本発明の1種類の抗体または本発明の異なる抗体の組み合わせを含有してもよい。
【0291】
前記薬学的組成物は、従来の技法、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示される技法に従って処方することができる。本発明の薬学的組成物は、例えば、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-20もしくはTween-80)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定液、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでもよい。
【0292】
薬学的に許容される担体には、本発明の抗体と生理学的に適合する、任意のおよび全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物において使用することができる適切な水性および非水性の担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なその混合物、植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、ならびに/または様々な緩衝液が含まれる。薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンを使用することによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0293】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば、(1)水溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含んでよい。
【0294】
本発明の薬学的組成物はまた、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムも含んでよい。
【0295】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を増強することができる、選択された投与経路に適した1種類または複数種類の補助剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、または緩衝液を含んでもよい。本発明の抗体は、急速に放出されないように抗体を保護する担体、例えば、移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセルに閉じ込めた送達システムを含む徐放製剤を用いて調製されてもよい。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のみもしくはポリ乳酸とろう、または当技術分野において周知の他の材料を含んでもよい。このような製剤を調製するための方法は一般的に当業者に公知である。
【0296】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、例えば、前記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒、および必要とされる他の成分、例えば、前記で列挙されたものを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の予め濾過滅菌した溶液から、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0297】
前記薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性無く、特定の患者、組成物、および投与方法について望ましい治療応答を実現するのに有効な活性成分量を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのアミドの活性を含む様々な薬物動態学的要因、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因に依存する。
【0298】
前記薬学的組成物は任意の適切な経路および方法によって投与することができる。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は非経口投与される。本明細書で使用する「非経口投与される」とは、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常、注射による投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入を含む。
【0299】
1つの態様において、薬学的組成物は静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0300】
使用
1つの局面において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0301】
さらなる局面において、本発明は、がんなどの疾患の治療において使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0302】
さらなる局面において、本発明は、それを必要とする対象に、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体または本明細書において開示される薬学的組成物の有効量を投与する工程を含む、疾患の治療方法に関する。
【0303】
特に、本発明に従う二重特異性抗体は、特異的標的化とT細胞によるPD-L1発現細胞の死滅が望ましい治療の場で有用な場合があり、このようなある特定の適応症および状況では通常の抗PD-L1抗体と比較して高効率になる場合がある。
【0304】
本発明の抗体はまた、様々なPD-L1関連疾患の療法および診断において、さらなる有用性も有する。例えば、前記抗体は、インビボまたはインビトロで、以下の生物学的活性:PD-L1発現細胞の増殖および/もしくは分化の阻害;PD-L1発現細胞の死滅;ヒトエフェクター細胞の存在下でのPD-L1発現細胞の食作用もしくはADCCの媒介;補体の存在下でのPD-L1発現細胞のCDCの媒介;PD-L1発現細胞のアポトーシスの媒介;ならびに/またはPD-L1結合時の脂質ラフトへの移動の誘導の1つまたは複数を誘発するのに使用することができる。
【0305】
1つの局面において、本発明は、がんの治療において使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0306】
さらなる局面において、本発明は、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患の治療において使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0307】
さらなる局面において、本発明は、黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、胃がん、乳がん、腎臓がん、膀胱がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胸腺腫および胸腺がん、脳がん、神経膠腫、副腎皮質がん、甲状腺がん、他の皮膚がん、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、卵巣がん、子宮内膜症がん、前立腺がん、陰茎がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、ならびに中皮腫からなる群より選択されるがん疾患の治療において使用するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体または本明細書において開示される薬学的組成物に関する。
【0308】
さらなる局面において、本発明は、がん、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患を治療するための医薬などの医薬を製造するための、本明細書において開示される態様のいずれか1つに従う抗体の使用に関する。
【0309】
本発明はまた、それを必要とする個体への本発明の抗体の投与を含む、1つまたは複数のPD-L1発現腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法に関する。
【0310】
本発明はまた、
(a)PD-L1発現腫瘍細胞を含むがんに罹患している対象を選択する工程、および
(b)本発明の抗体または本発明の薬学的組成物を対象に投与する工程
を含む、がんを治療するための方法に関する。
【0311】
前記の治療方法および使用における投与レジメンは最適な望ましい応答(例えば、治療応答)をもたらすように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割量を、ある期間にわたって投与してもよく、その用量は、治療状況の難局により示されるように比例して減少または増加されてもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために単位剤形で非経口組成物が処方されてもよい。
【0312】
前記抗体の効率的な投与量および投与レジメンは、治療しようとする疾患または状態に左右され、当業者によって決定することができる。本発明の化合物の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.001~10mg/kg、例えば、約0.001~5mg/kg、例えば、約0.001~2mg/kg、例えば、約0.001~1mg/kg、例えば、約0.001mg/kg、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約1mg/kg、または約10mg/kgである。本発明の抗体の治療的有効量の別の例示的で非限定的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば、約0.1~50mg/kg、例えば、約0.1~20mg/kg、例えば、約0.1~10mg/kg、例えば、約0.5mg/kg、例えば、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、または約8mg/kgである。
【0313】
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる前記抗体の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要とされる用量よりも低いレベルで開始し、望ましい効果が達成されるまで投与量を段々と増やすことができる。一般的に、本発明の抗体の適切な一日量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量である化合物量である。投与は、例えば、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、または皮下でもよい。1つの態様において、前記抗体は、mg/m2単位で算出された毎週投与量で注入されることによって投与されてもよい。このような投与量は、例えば、用量(mg/kg)×70:1.8に従う、上記で示されたmg/kg投与量に基づいてもよい。このような投与は、例えば、1~8回、例えば、3~5回繰り返されてもよい。投与は、2~24時間、例えば、2~12時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。1つの態様において、毒性副作用を弱めるために、前記抗体は、長期間にわたる、例えば、24時間を超える、ゆっくりとした連続注入によって投与されてもよい。
【0314】
1つの態様において、前記抗体は、1週間に1回与えられる場合、8回まで、例えば、4~6回の、ある決まった用量として算出された、毎週投与量で投与されてもよい。このようなレジメンは、例えば、6ヶ月後または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回、繰り返されてもよい。このような、ある決まった投与量は、70kgの体重推定量で、上記で示されたmg/kg投与量に基づいてもよい。投与量は、投与時に本発明の抗体の血中量を測定することによって、例えば、生物学的試料を採取し、本発明の抗体のPD-L1抗原抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって決定または調節されてもよい。
【0315】
1つの態様において、前記抗体は維持療法として、例えば、6ヶ月またはそれ以上にわたって1週間に1回、投与されてもよい。
【0316】
抗体はまた、がんを発症するリスクを下げるために、がん進行における事象の発生の開始を遅延するために、および/またはがんが寛解している場合には再発リスクを下げるために予防的に投与されてもよい。
【0317】
本発明の抗体はまた併用療法で投与されてもよい、すなわち、治療しようとする疾患または状態に関連する他の治療用物質と組み合わせて投与されてもよい。従って、1つの態様では、抗体を含有する医薬は、1種類または複数種類のさらなる治療用物質と、例えば、細胞障害剤、化学療法剤、または抗血管新生剤と併用するためのものである。
【0318】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つにおいて定義されたPD-L1結合領域に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0319】
本開示のさらなる項目:
1. ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体であって、
ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害し、かつ、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]とは競合しない、
前記抗体。
2. ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と競合する、項目1に記載の抗体。
3. 前記項目のいずれかに記載の抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体[476]によって置換されない、前記項目のいずれかに記載の抗体。
4. 前記項目のいずれかに記載の抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列を含む抗体[625]の結合によってブロックされない、前記項目のいずれかに記載の抗体。
5. 前記項目のいずれかに記載の抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]によってブロックされる、前記項目のいずれかに記載の抗体。
6. (i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、
項目1に記載の抗体。
7. 項目1~4および6のいずれかに記載の抗体と、SEQ ID NO:94における位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)、位置123に対応する位置にあるアミノ酸残基(Y123)、および位置125に対応する位置にあるアミノ酸残基(R125)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1との結合と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[338]、項目1~4および6のいずれかに記載の抗体。
8. 項目1~2、および6のいずれかに記載の抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置113におけるアミノ酸残基(R113)、位置123におけるアミノ酸残基(Y123)、および/または位置125におけるアミノ酸残基(R125)を含む、項目1~2、および6のいずれかに記載の抗体。
9. 項目1、3、4、および6のいずれかに記載の抗体と、SEQ ID NO:94における位置19に対応する位置にあるアミノ酸残基(F19)、位置42に対応する位置にあるアミノ酸残基(F42)、位置45に対応する位置にあるアミノ酸残基(E45)、位置46に対応する位置にあるアミノ酸残基(K46)、位置94に対応する位置にあるアミノ酸残基(L94)、および位置116に対応する位置にあるアミノ酸残基(I116)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[511]、項目1、3、4、および6のいずれかに記載の抗体。
10. 項目1、3、4、および6のいずれかに記載の抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置45におけるアミノ酸残基(E45)、位置46におけるアミノ酸残基(K46)、および/または位置94におけるアミノ酸残基(L94)からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸残基を含む、項目1、3、4、および6のいずれかに記載の抗体。
11. 項目1、5、および6のいずれかに記載の抗体と、SEQ ID NO:94における位置58に対応する位置にあるアミノ酸残基(E58)および位置113に対応する位置にあるアミノ酸残基(R113)のいずれか1つまたは複数がアラニンで置換されている変異体PD-L1との結合が、SEQ ID NO:94に示したアミノ酸配列を有する野生型PD-L1と比較して低減しており、該抗体の結合の変化倍率がアラニン変異体全てにわたる結合の変化倍率の平均 - 1.5×SDよりも小さい場合に結合の低減が判定され、SDが変異体PDL1に対する該抗体の変化倍率計算値全ての標準偏差であり、かつ結合の変化倍率が実施例13に示した通りに算出される[547]、項目1、5、および6のいずれかに記載の抗体。
12. 項目1、5、および6のいずれかに記載の抗体が、PD-L1(SEQ ID NO:94)上のエピトープに結合し、該エピトープが、SEQ ID NO:94の位置58におけるアミノ酸残基(E58)および/または位置113におけるアミノ酸残基(R113)を含む、項目1、5、および6のいずれかに記載の抗体。
13. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:11、および SEQ ID NO:21に示した配列からなる群より選択される、前記項目のいずれかに記載の抗体。
14. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[338]、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[511]、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、 SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列 DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[547]
を含む、前記項目のいずれかに記載の抗体。
15. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:18に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む、前記項目のいずれかに記載の抗体。
16. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:15、およびSEQ ID NO:22に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む、前記項目のいずれかに記載の抗体。
17. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[547]
を含む、前記項目のいずれかに記載の抗体。
18. 前記VH配列および前記VL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VH配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VL配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列が変異していない、項目17に記載の抗体。
19. 抗体依存性細胞障害(ADCC)を介して、腺がんの上皮細胞の用量依存的溶解、例えば、MDA-MB-231の用量依存的溶解を誘導することができる、前記項目のいずれかに記載の抗体。
20. 細胞溶解の結果として前記上皮細胞の培養物中の細胞数を少なくとも5%、例えば、少なくとも6%、7%、8%、9%、または少なくとも10%低減することができる、項目19に記載の抗体。
21. ADCCが、51Cr放出アッセイ法、例えば、実施例14に開示されるアッセイ法においてインビトロで測定される、項目19または20に記載の抗体。
22. ADCCが、項目19または20に記載の抗体とエフェクター細胞、例えば末梢血単核球(PBMC)とを含む組成物と共に前記上皮細胞を37℃、5%CO2で4時間インキュベートすることによってインビトロで測定され、該組成物中の抗体の量が0.1~1μg/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比が100:1である、項目19または20に記載の抗体。
23. 上皮細胞の前記溶解が、ADCCの代わりとしてのルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、実施例14に開示されるルミネセンスADCCレポーターバイオアッセイ法においてインビトロで測定される、項目19または20に記載の抗体。
24. ADCCが、
(i)前記上皮細胞の培養物を、項目23に記載の抗体とFcγRIIIa(CD16)およびホタルルシフェラーゼを安定発現するジャーカットヒトT細胞(エフェクター細胞)とを含む組成物と、1:1のエフェクター細胞:上皮細胞比で接触させ、
(ii)該上皮細胞の培養物および該エフェクター細胞を15分間室温に調節し、
(iii)該上皮細胞の培養物および該エフェクター細胞をルシフェラーゼ基質と共にインキュベートし、かつ
(iv)該細胞培養物におけるルシフェラーゼ生成を測定する
ことによって、インビトロで測定され、
該組成物中の抗体の量が0.5~250ng/mLの範囲内であり、かつエフェクター細胞と上皮細胞の比が1:1である、項目23に記載の抗体。
25. 前記上皮細胞のADCCが、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えば、項目23または24において定義されたレポーターアッセイ法において測定され、次いで、項目19、20、23、および24のいずれかに記載の抗体を含む試験組成物と共に該上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCが、参照抗体を含む組成物と共に該上皮細胞の培養物をインキュベートした後に観察されたADCCの少なくとも1.5倍であり、ADCCが相対発光量(RLU)として測定され、該試験組成物中の抗体濃度と参照抗体を含む該組成物中の抗体濃度が同じでありかつ20~250ng/mlの範囲内であり、かつ該参照抗体が、
(a)SEQ ID NO:74に示したVH配列およびSEQ ID NO:78に示したVL配列を含む抗体;ならびに
(b)SEQ ID NO:81に示したVH配列およびSEQ ID NO:85に示したVL配列を含む抗体
より選択される、項目19、20、23、および24のいずれかに記載の抗体。
26. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列[547]
を含む、前記項目のいずれかに記載の抗体。
27. ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体であって、
(i)SEQ ID NO:33に示したCDR1配列、SEQ ID NO:34に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:35に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:37に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、SEQ ID NO:38に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[321]、または
(ii)SEQ ID NO:47に示したCDR1配列、SEQ ID NO:48に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:49に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:51に示した配列を有するCDR1、配列 DVIを有するCDR2、およびSEQ ID NO:52に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[421]、または
(iii)SEQ ID NO:54に示したCDR1配列、SEQ ID NO:55に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:56に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:58に示した配列を有するCDR1、配列 RDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:59に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[476]、または
(iv)SEQ ID NO:61に示したCDR1配列、SEQ ID NO:62に示したCDR2配列、および SEQ ID NO:63に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:65に示した配列を有するCDR1、配列 DDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:66に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[516]、または
(v)SEQ ID NO:107に示したCDR1配列、SEQ ID NO:108に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:109に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:111に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、SEQ ID NO:113に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[625]、または
(vi)SEQ ID NO:68に示したCDR1配列、SEQ ID NO:69に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:70に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:72に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:73に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[632]
を含む、該抗体。
28. (i)SEQ ID NO:32に示したVH配列およびSEQ ID NO:36に示したVL配列[321]、または
(ii)SEQ ID NO:46に示したVH配列およびSEQ ID NO:50に示したVL配列[421]、または
(iii)SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列[476]、または
(iv)SEQ ID NO:60に示したVH配列およびSEQ ID NO:64に示したVL配列[516]、または
(v)SEQ ID NO:106に示したVH配列およびSEQ ID NO:110に示したVL配列[625]、または
(vi)SEQ ID NO:67に示したVH配列およびSEQ ID NO:71に示したVL配列[632]
を含む、項目27に記載の抗体。
29. 一価である、前記項目のいずれかに記載の抗体。
30. 前記項目のいずれかに記載の抗体が、ヒトPD-L1に結合することができる2つの抗原結合領域を有する二価抗体であり、かつ、該2つの抗原結合領域が同一の可変領域配列を有する、前記項目のいずれかに記載の抗体。
31. 前記項目のいずれかに記載の抗体が、二価二重特異性抗体であり、ヒトPD-L1に結合することができる(第1の)前記抗原結合領域に加えて、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる(第2の)抗原結合領域を含み、該第2の抗原がヒトCD3εでない、前記項目のいずれかに記載の抗体。
32. ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域と、ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域とを含む二重特異性抗体であって、
ヒトPD-L1に結合することができる該抗原結合領域が、前記項目のいずれかに示した特徴を有する、該二重特異性抗体。
33. ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、項目32に記載の二重特異性抗体。
34. (i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[338]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[338]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1配列、配列DDNを有するCDR2配列、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域[547]、ならびに、(a)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、ヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域
を含む、項目32または33に記載の二重特異性抗体。
35. ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含む、項目32~34のいずれかに記載の二重特異性抗体。
36. (i)前記二重特異性抗体が、SEQ ID NO:25に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を含むことができる抗原結合領域を有する抗体と比較して、ヒトCD3ε結合についてのより低い親和性を有し、好ましくは、該親和性が、少なくとも1/2倍、例えば、少なくとも1/5倍、例えば、少なくとも1/10倍、例えば、少なくとも1/25倍、例えば、少なくとも1/50倍であり、かつ
(ii)該二重特異性抗体が、例えば、本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、PBMCまたは精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介することができる、
項目32に記載の二重特異性抗体。
37. ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:99に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)SEQ ID NO:100に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:28に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:101に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iv)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:102に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(v)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:103に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vi)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:104に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(vii)SEQ ID NO:26に示した配列を有するCDR1、SEQ ID NO:27に示した配列を有するCDR2、およびSEQ ID NO:105に示した配列を有するCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:30に示した配列を有するCDR1、配列GTNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:31に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、項目36に記載の二重特異性抗体。
38. ヒトCD3εに結合することができる前記抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:39に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(ii)SEQ ID NO:40に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iii)SEQ ID NO:41に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(iv)SEQ ID NO:42に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(v)SEQ ID NO:43に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vi)SEQ ID NO:44に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列、または
(vii)SEQ ID NO:45に示したVH配列およびSEQ ID NO:29に示したVL配列
を含む、項目36または37に記載の二重特異性抗体。
39. ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
ヒトPD-L1に結合することができる該抗原結合領域が項目1~31のいずれかに示した特徴を有する、該多重特異性抗体。
40. ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、VH CDR3配列が、SEQ ID NO:4[338]、SEQ ID NO:11[511]、およびSEQ ID NO:21[547]に示した配列からなる群より選択される、項目39に記載の多重特異性抗体。
41. ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:2に示したCDR1配列、SEQ ID NO:3に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:4に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:6に示した配列を有するCDR1、配列KASを有するCDR2、およびSEQ ID NO:7に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[338]、または
(ii)SEQ ID NO:9に示したCDR1配列、SEQ ID NO:10に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:11に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:16に示した配列を有するCDR1、配列EDSを有するCDR2、およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[511]、または
(iii)SEQ ID NO:19に示したCDR1配列、SEQ ID NO:20に示したCDR2配列、およびSEQ ID NO:21に示したCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに、SEQ ID NO:23に示した配列を有するCDR1、配列DDNを有するCDR2、およびSEQ ID NO:24に示した配列を有するCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)[547]
を含む、項目40に記載の多重特異性抗体。
42. ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:1[338]、SEQ ID NO:8[511]、およびSEQ ID NO:18[547]に示した配列からなる群より選択されるVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列を含む、項目40または41に記載の多重特異性抗体。
43. ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、SEQ ID NO:5[338]、SEQ ID NO:15[511]、およびSEQ ID NO:22[547]に示した配列からなる群より選択されるVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列を含む、項目40~42のいずれかに記載の多重特異性抗体。
44. ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:5に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:15に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVH配列、および、SEQ ID NO:22に示したVL配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列[547]
を含む、項目40~43のいずれかに記載の多重特異性抗体。
45. 前記VH配列および前記VL配列がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み、かつ、VHの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VH配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVH CDR配列が変異しておらず、かつVLの各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列が、該VL配列の該各組み合わされたFR1、FR2、FR3、およびFR4フレームワーク配列との少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し、かつVL CDR配列が変異していない、項目40~44のいずれかに記載の多重特異性抗体。
46. ヒトPD-L1に結合することができる前記第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列[338]、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列[511]、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列[547]
を含む、項目40~45のいずれかに記載の多重特異性抗体。
47. ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
(i)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、または
(ii)ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合するが、ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体とは競合しない、
該多重特異性抗体。
48. ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体と競合する、項目47に記載の多重特異性抗体。
49. ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
該抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:53に示したVH配列およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を含む抗体によって置換されない、該多重特異性抗体。
50. ヒトPD-L1とヒトPD-1との結合を阻害する、項目49に記載の多重特異性抗体。
51. ヒトPD-L1との結合について、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体と競合する、項目49または50に記載の多重特異性抗体。
52. 項目49~51のいずれかに記載の多重特異性抗体とヒトPD-L1との結合が、SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体によってブロックされる、項目49~51のいずれかに記載の多重特異性抗体。
53. ヒトPD-L1に結合することができる第1の抗原結合領域と、第2の抗原にまたは異なるヒトPD-L1エピトープに結合することができる第2の抗原結合領域とを含む多重特異性抗体であって、
該第1の抗原結合領域が、
(i)SEQ ID NO:1に示したVH配列およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を含む抗体[338]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(ii)SEQ ID NO:8に示したVH配列およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を含む抗体[511]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、または
(iii)SEQ ID NO:18に示したVH配列およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を含む抗体[547]と同じヒトPD-L1エピトープに結合することができる、
該多重特異性抗体。
54. 二重特異性である、項目40~53のいずれかに記載の多重特異性抗体。
55. 二価である、項目54に記載の多重特異性抗体。
56. 項目40~55のいずれかに記載の多重特異性抗体が第2の抗原に結合することができ、かつ該第2の抗原がヒトCD3εではない、項目40~55のいずれかに記載の多重特異性抗体。
57. 完全長抗体である、前記項目のいずれかに記載の抗体。
58. 完全長IgG1抗体である、項目57に記載の抗体。
59. 抗体断片である、前記項目のいずれかに記載の抗体。
60. 項目32~59のいずれかに記載の抗体が、抗原結合領域をそれぞれが含む2つの半分子を含み、
(i)ヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む半分子がキメラであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる抗原結合領域を含む半分子が、存在する場合にはキメラである、
項目32~59のいずれかに記載の抗体。
61. (i)ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域がヒト化されており、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる前記抗原結合領域が、存在する場合にはヒト化されている、
前記項目のいずれかに記載の抗体。
62. (i)ヒトPD-L1に結合することができる前記抗原結合領域がヒトであり、かつ/または
(ii)ヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる前記抗原結合領域が、存在する場合にはヒトである、
前記項目のいずれかに記載の抗体。
63. 前記抗原結合領域のそれぞれが重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ該可変領域がそれぞれ、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに、4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む、前記項目のいずれかに記載の抗体。
64. 2つの重鎖定常領域(CH)と2つの鎖定常領域(CL)とを含む、項目63に記載の抗体。
65. 前記項目のいずれかに記載の抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖のそれぞれが、少なくとも、ヒンジ領域、CH2、およびCH3領域を含み、該第1の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ該第2の重鎖において、T366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409(EUナンバリングに従う)からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸の少なくとも1つが置換されており、かつ、該第1の重鎖および該第2の重鎖が同じ位置において置換されていない、前記項目のいずれかに記載の抗体。
66. (i)前記第1の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がLであり、かつ、前記第2の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がRであるか、または(ii)前記第1の重鎖において、K409(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がRであり、かつ、前記第2の重鎖において、F405(EUナンバリングに従う)に対応する位置にあるアミノ酸がLである、項目65に記載の抗体。
67. 前記項目のいずれかに記載の抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、かつ
該抗体が、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含む以外は同一の抗体と比べてより少ない程度まで、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、一方の重鎖または両方の重鎖が改変されている、
前記項目のいずれかに記載の抗体。
68. 前記Fcを介したエフェクター機能が、Fcを介したCD69発現を判定することによって測定されるか、Fcγ受容体への結合によって測定されるか、C1qへの結合によって測定されるか、またはFcを介したFcR架橋結合の誘導によって測定される、項目67に記載の抗体。
69. 項目67または68に記載の抗体が、野生型抗体と比較した場合に、Fcを介したCD69発現を少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%低減するように、重鎖定常配列および軽鎖定常配列が改変されており、
該Fcを介したCD69発現が、PBMCに基づく機能アッセイ法において測定される、
項目67または68に記載の抗体。
70. 前記項目のいずれかに記載の抗体が第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の少なくとも1つにおいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置にある1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPでない、前記項目のいずれかに記載の抗体。
71. 前記第1の重鎖および前記第2の重鎖において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEである、項目70に記載の抗体。
72. 項目71に記載の抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置が、それぞれFおよびEであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである、項目71に記載の抗体。
73. 前記第1の重鎖および前記第2の重鎖おいて、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAである、項目70に記載の抗体。
74. 項目73に記載の抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含む二重特異性抗体であり、かつ該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方の、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置が、それぞれF、E、およびAであり、かつ、(i)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであるか、または(ii)第1の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置がRであり、かつ第2の重鎖のEUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置がLである、項目73に記載の抗体。
75. ヒトPD-L2に結合しない、前記項目のいずれかに記載の抗体。
76. 本明細書中の実施例8に記載の通りに測定した場合に、約10-8Mまたはそれ未満、例えば、約10-9Mまたはそれ未満、例えば、約10-10Mまたはそれ未満のKDでヒトPD-L1に結合する、前記項目のいずれかに記載の抗体。
77. 本明細書中の実施例11に記載の通りにアッセイした場合に、精製したT細胞をエフェクター細胞として使用した場合のMDA-MB-231細胞、PC-3細胞、および/またはHELA細胞の濃度依存性細胞障害を媒介する、前記項目のいずれかに記載の抗体。
78. (i)項目1~31のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および/または
(ii)項目1~31のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
を含む、核酸構築物。
79. (i)項目33~38のいずれかにおいて定義されたヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、および
(ii)項目33~38のいずれかにおいて定義されたヒトCD3εに結合することができる抗原結合領域を含む抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列
をさらに含む、項目73に記載の核酸構築物。
80. 項目78または79において定義された核酸構築物を含む、発現ベクター。
81. 項目78もしくは79において定義された核酸構築物または項目80において定義された発現ベクターを含む、宿主細胞。
82. チャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞である、項目81に記載の宿主細胞。
83. 項目1~77のいずれかに記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
84. 医薬として使用するための、項目1~77のいずれかに記載の抗体または項目83に記載の薬学的組成物。
85. がんの治療において使用するための、項目1~80のいずれかに記載の抗体または項目70に記載の薬学的組成物。
86. 固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患の治療において使用するための、項目1~77のいずれかに記載の抗体または項目70に記載の薬学的組成物。
87. 黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患の治療において使用するための、項目1~78のいずれかに記載の抗体または項目70に記載の薬学的組成物。
88. それを必要とする対象に、項目1~75のいずれかに記載の抗体または項目83に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、疾患を治療する方法。
89. がん、例えば、固形腫瘍の存在を特徴とするがん疾患、または黒色腫、卵巣がん、肺がん、結腸がん、および頭頸部がんからなる群より選択されるがん疾患を治療するための医薬などの医薬を製造するための、項目1~77のいずれかに記載の抗体の使用。
90. 1種類または複数種類のさらなる治療用物質との組み合わせ、例えば、化学療法剤との組み合わせを含む、項目83~89のいずれかに記載の方法または使用。
91. (a)項目1~13のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域を含む第1の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ培養物から該第1の抗体を精製する工程;
(b)異なるPD-L1エピトープにまたは異なる抗原に結合することができる抗原結合領域、例えば、項目14~19のいずれかにおいて定義されたヒトCD3ε結合領域を含む第2の抗体を産生する宿主細胞を培養し、かつ該培養物から該第2の抗体を精製する工程;
(c)ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けることを可能にするのに十分な還元条件下で、該第1の抗体を該第2の抗体と一緒にインキュベートする工程;および
(d)二重特異性抗体を得る工程
を含む、項目1~77のいずれかに記載の抗体を産生するための方法。
92. 項目1~77のいずれかにおいて定義されたヒトPD-L1に結合することができる抗原結合領域に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【0320】
本発明は以下の実施例によってさらに例示される。以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものであると解釈してはならない。
【実施例0321】
実施例1:PD-L1抗体の作製
OmniRat動物の免疫化およびハイブリドーマ作製
免疫化およびハイブリドーマ作製はAldevron GmbH(Freiburg, Germany)で行った。ヒトPD-L1のアミノ酸19-238をコードするcDNAを、Aldevronが知的財産権をもつ発現プラスミドにクローニングした。DNAでコーティングした金粒子をパーティクルボンバードメント(「遺伝子銃」)用の携帯型装置を用いて皮内適用することで、OmniRat動物群(完全ヒトイディオタイプを有する多様な抗体レパートリーを発現するトランスジェニックラット; Ligand Pharmaceuticals Inc., San Diego, USA)を免疫化した。一過的にトランスフェクトされたHEK細胞上での細胞表面発現を、GenentechのMPDL3280Aをベースとする抗PD-L1抗体を用いて確認した。一連の免疫化の後に血清試料を収集し、前述した発現プラスミドを一過的にトランスフェクトしたHEK細胞に対するフローサイトメトリーで試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手順に従ってマウスミエローマ細胞(Ag8)と融合させた。PD-L1特異的抗体を産生するハイブリドーマを、上記で説明したものと同じアッセイ法でスクリーニングによって特定した。陽性ハイブリドーマ細胞の細胞ペレットを、RNA保護剤(RNAlater, ThermoFisher Scientific, カタログ番号AM7020)を用いて調製し、前記抗体の可変ドメインを配列決定するためにさらに処理した。
【0322】
PD-L1抗体可変ドメインの配列分析および発現ベクターにおけるクローニング
0.2~5×106個のハイブリドーマ細胞から全RNAを調製し、SMART RACE cDNA Amplification kit(Clontech)を使用し、製造業者の説明書に従って全RNAから5’-RACE-相補的DNA(cDNA)を調製した。VHコード領域およびVLコード領域をPCR増幅し、ライゲーション非依存性クローニング(Aslanidis, C. and P.J. de Jong, Nucleic Acids Res 1990;18(20): 6069-74)によってpOMTG1f-FEAR-LIC(ヒトIgG1)およびpEFC33D-κ(ヒトκ)またはpOMTL-LIC(ヒトλ)発現ベクターに直接、インフレームでクローニングした。これらのプラスミドでは抗体配列はCMVプロモーターを用いて発現される。各抗体について、8つのVLクローンおよび8つのVHクローンを配列決定した。CDR配列をIMGT定義に従って定義した[Lefranc MP. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999; Brochet X. Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008)]。さらなる研究および発現のために正しいオープンリーディングフレーム(ORF)のあるクローンを選択した。ハイブリドーマ培養物ごとに発見された重鎖および軽鎖の全ての組み合わせのLEE PCR産物をExpiFectamineを用いてExpi293F細胞において一過的に同時発現させた。ハイブリドーマごとに、均一用量反応スクリーニング(homogeneous dose-response screen)において最良の結合を示したHC/LCペアをリード候補として選択した。
【0323】
さらなる実験のために、338、511、および547と番号を付けた3種類のPD-L1抗体を選択した。これらの可変領域配列を本明細書の配列表に示した。
【0324】
抗体IgG1-PDL1-511-FEARについては、望ましくないジスルフィド架橋を潜在的に生じる可能性があるシステイン残基を除去するために、可変ドメインに点変異がある変種:IgG1-PDL1-511-FEAR-LC33Sを作製した。この変異体を遺伝子合成(Geneart)によって作製した。
【0325】
LEE PCR
直鎖発現エレメント(linear expression element: LEE)を、CMVプロモーターとHCコード領域またはLCコード領域と発現プラスミドに由来するエレメントを含有するポリAシグナルとを含有する断片を増幅することによって生成した。このために、Accuprime Taq DNAポリメラーゼ(Life Technologies)とプライマーCMVPf(BsaI)2およびTkpA(BsaI)rを使用し、45秒94℃、30秒55℃、および2分(LC)または3分(HC)68℃の35サイクルを行い、DNAテンプレートとして50×希釈プラスミドミニプレップ(miniprep)材料を用いて前記領域を増幅した。
【0326】
Expi293F細胞におけるLEE断片の一過的発現
AbのLEE発現のために、1.11μlのHC LEE PCR反応混合物と1.11μlのLC PCR反応混合物を混合し、Expi293F細胞において、125μlの総体積でトランスフェクション試薬としてExpiFectamin 293を用いて製造業者(Thermo Fisher Scientific, USA)の説明書に従い、容器として96ウェルプレートを用いてトランスフェクトした。
【0327】
抗体発現
抗体をIgG1,κ(338の場合)またはIgG1,λ(511および547の場合)として発現させた。抗体の重鎖および軽鎖を両方ともコードするプラスミドDNA混合物を、Expi293F発現プラットフォーム(Thermo Fisher Scientific, USA)を用いて、本質的に製造業者により説明された通りに一過的に発現させた。
【0328】
均一結合アッセイ法
PDL1、PDL1mm、またはPDL1MfをトランスフェクトしたCHO細胞を用いた均一用量反応スクリーニングにおいて結合について抗体を試験した(実施例2も参照されたい)。トランスフェクトされていないCHO細胞を陰性対照として使用した。
【0329】
細胞(細胞2.5×105個/ml)をヤギ抗ヒトIgG Alexa647、Fcγ断片特異的(0.2μg/ml; Jackson ImmunoResearch Laboratories, 109-605-098)と混合した。試験および対照抗体の段階希釈液(2倍希釈段階で0.001~3μg/mLの範囲)を調製し、2μlの抗体希釈液を、1536ウェルプレート(Greiner, 789866)の中にある5μlの細胞/結合体混合物に添加した。プレートを室温で9時間インキュベートし、この後に、蛍光強度をImageXpress Velos Laser Scanning Cytometer(Molecular Devices)を用いて測定した。
【0330】
抗体の精製
培養上清を0.2μmデッドエンド(dead-end)フィルターで濾過し、5mL MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)にロードし、0.1Mクエン酸ナトリウム-NaOH, pH3で溶出させた。溶出液を2M Tris-HCl,pH9ですぐに中和し、8.7mM Na2HPO4、1.8mM NaH2PO4、140.3mM NaCl, pH7.4(B.BraunまたはGE Healthcare)に対して一晩透析した。または、精製後に溶出液をHiPrep Desaltingカラムにロードし、前記抗体を、8.7mM Na2HPO4、1.8mM NaH2PO4、140.3mM NaCl, pH7.4(B.BraunまたはGE Healthcare)緩衝液と交換した。透析または緩衝液交換の後に試料を0.2μmデッドエンドフィルターで滅菌濾過した。純度をLabChip GXII(Caliper Life Sciences, MA)を用いてCE-SDSによって求め、IgG濃度をNanodrop ND-1000分光光度計(Isogen Life Science, Maarssen, The Netherlands)を用いて測定した。精製された抗体を4℃で保管した。
【0331】
実施例2:スクリーニング材料の作製
PD-L1のための発現構築物
完全長PD-L1を発現するために以下のコドン最適化構築物:ヒト(Homo sapiens)PD-L1(Genbankアクセッション番号NP_054862)、マカク・ファシキュラリス(Macaca fascicularis)PD-L1(Genbankアクセッション番号XP_005581836)、ハツカネズミ(Mus musculus)PD-L1(Genbankアクセッション番号NP_068693)を作製した。
【0332】
さらに、PD-L1 ECD用に、以下のコドン最適化構築物:C末端HisタグおよびC-タグ(PDLoneECDHisCタグ)を有するヒトPD-L1の細胞外ドメイン(ECD)(aa1-238)を作製した。
【0333】
前記構築物は、クローニングに適した制限部位、および、最適なKozak(GCCGCCACC)配列[Kozak et al.(1999)Gene 234: 187-208]を含有した。前記構築物を哺乳動物発現ベクターpMA(Geneart)にクローニングした。
【0334】
PD-L2のための発現構築物
同様に、完全長ヒトPD-L2を発現させるために以下のコドン最適化構築物:ヒトPD-L2(Genbankアクセッション番号NP_079515)を作製した。
【0335】
CHO-S細胞における発現
完全ヒトPD-L1のコード配列を含有するpMAベクター、完全カニクイザルのコード配列を含有するpMAベクター、および完全マウスのコード配列を含有するpMAベクターをCHO-S細胞に一過的にトランスフェクトした。
【0336】
Hisタグ化PD-L1の精製
PDLoneECDHisCタグをHEK-293F細胞において発現させた。Hisタグがあると、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーによる精製が可能になる。このプロセスでは、クロマトグラフィー樹脂上に固定されたキレート剤はCo2+カチオンによって荷電している。Hisタグ化タンパク質を含有する上清をバッチ形式で(すなわち、溶液中で)樹脂とインキュベートする。Hisタグ化タンパク質は樹脂ビーズに強く結合するのに対して、培養上清中に存在する他のタンパク質は結合しないか、またはHisタグ化タンパク質と比較して弱く結合する。インキュベーション後に、ビーズを上清から回収し、カラムの中に詰める。弱く結合しているタンパク質を除去するためにカラムを洗浄する。次いで、強く結合しているHisタグ化タンパク質を、HisとCo2+との結合と競合するイミダゾールを含有する緩衝液を用いて溶出させる。溶離剤を脱塩カラム上の緩衝液交換によってタンパク質から除去する。
【0337】
実施例3:CD3×PDL1二重特異性抗体を作製するためのヒト化CD3抗体
ヒト化抗体IgG1-huCD3-H1L1の作製はWO2015001085の実施例1に記載されている。抗体huCD3-H1L1-FEALは、本明細書において上記で説明したように以下の置換:L234F、L235E、D265A、およびF405Lを有する、その変種である。
【0338】
実施例4:2-MEA誘導性Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
二重特異性IgG1抗体を、管理された還元条件下でのFabアーム交換によって作製した。この方法の基盤は、WO2011/131746に記載の通りに特定のアッセイ条件下でヘテロ二量体形成を促進する相補的CH3ドメインの使用である。相補的CH3ドメインを有する抗体ペアを生成するために、F405LおよびK409R(EUナンバリング)変異を関連抗体に導入した。
【0339】
二重特異性抗体を作製するために、各抗体の最終濃度が0.5mg/mLの2種類の親相補的抗体を、100μL TEの総体積中で75mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)と31℃で5時間インキュベートした。還元反応を、スピンカラム(Microcon遠心式フィルター(centrifugal filter), 30k, Millipore)を使用し、製造業者のプロトコールに従って還元剤2-MEAを除去することによって止めた。
【0340】
以下の抗体を実施例で使用した。
【0341】
CD3抗体
IgG1-huCD3-H1L1-FEAL(SEQ ID NO:25に示したVH配列、およびSEQ ID NO:29に示したVL配列を有する)
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALxb12-FEARは、第2のアームとして、gp120特異的抗体である抗体b12(Barbas, CF. J Mol Biol. 1993 Apr 5;230(3):812-23)を用いた二重特異性抗体である。
【0342】
PDL1抗体およびCD3×PDL1二重特異性抗体
IgG1-338-FEAR(SEQ ID NO:1に示したVH配列、およびSEQ ID NO:5に示したVL配列を有する)
IgG1-338-F405L
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR
bsIgG1-b12-FEALx338-FEAR
【0343】
IgG1-511-LC33S-FEAR(SEQ ID NO:8に示したVH配列、およびSEQ ID NO:15に示したVL配列を有する)
IgG1-511-F405L-LC33S
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEAR
bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEAR
【0344】
IgG1-547-FEAR(SEQ ID NO:18に示したVH配列、およびSEQ ID NO:22に示したVL配列を有する)
IgG1-547-F405L
bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR
bsIgG1-b12-FEALx547-FEAR
【0345】
IgG1-321-FEAR(SEQ ID NO:32に示したVH配列、およびSEQ ID NO:36に示したVL配列を有する)
【0346】
IgG1-421-LC91S-FEAR(SEQ ID NO:46に示したVH配列、およびSEQ ID NO:50に示したVL配列を有する)
【0347】
IgG1-476-N101Q-LC33S-FEAR(SEQ ID NO:53に示したVH配列、およびSEQ ID NO:57に示したVL配列を有する)
【0348】
IgG1-625-FEAR(SEQ ID NO:106に示したVH配列、およびSEQ ID NO:110に示したVL配列を有する)
【0349】
IgG1-632-FEAR(SEQ ID NO:67に示したVH配列、およびSEQ ID NO:71に示したVL配列を有する)
IgG1-516-FEAR(SEQ ID NO:60に示したVH配列、およびSEQ ID NO:64に示したVL配列を有する)
【0350】
IgG1-MPDL3280A-FEAR(GenentechのPDL1抗体MPDL3280Aをベースとする;SEQ ID NO:74に示したVH配列、およびSEQ ID NO:78に示したVL配列を有する)
IgG1-MPDL3280A-K409R
【0351】
IgG1-MEDI4736-FEAR(MedImmuneのPDL1抗体MEDI4736をベースとする;SEQ ID NO:81に示したVH配列、およびSEQ ID NO:85に示したVL配列を有する)
IgG1-MEDI4736-F405L
【0352】
実施例5:PD-L1抗体またはCD3×PD-L1二重特異性抗体もしくはb12×PD-L1二重特異性抗体と腫瘍細胞との結合
PD-L1抗体ならびにCD3×PD-L1二重特異性抗体およびb12×PD-L1二重特異性抗体と、ヒト腫瘍細胞株SK-MES-1(肺扁平上皮がん;ATCC;カタログ番号HTB-58)、MDA-MB-231(乳房腺がん;ATCC;カタログ番号HTB-26)、PC-3(前立腺腺がん;ATCC;カタログ番号CRL-1435)およびHELA(子宮頸部腺がん;ATCC;カタログ番号CCL-2)との結合をフローサイトメトリーによって分析した。
【0353】
細胞(細胞3~5×104個/ウェル)を、ポリスチレン96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one, カタログ番号650101)中で、50μLのPBS/0.1%BSA/0.02%アジ化物(染色緩衝液)に溶解した抗体の段階希釈液(5倍希釈段階で0.0001~10μg/mLの範囲)と4℃で30分間インキュベートした。
【0354】
染色緩衝液で2回洗浄した後に、細胞を50μLの二次抗体と4℃で30分間インキュベートした。二次抗体として、染色緩衝液で1:500に希釈したR-フィコエリトリン(PE)結合ヤギ-抗ヒトIgG F(ab’)2(カタログ番号109-116-098, Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA)を全実験に使用した。次に、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、20μLの染色緩衝液に再懸濁し、iQueスクリーナー(Intellicyt Corporation, USA)で分析した。結合曲線を、GraphPad Prism V75.04ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を使用し、非線形回帰(傾きが変化するシグモイド用量反応)を用いて分析した。
【0355】
MDA-MB-231細胞、PC-3細胞、およびHELA細胞の原形質膜上での標的発現を定量するために、ならびに結合したPDL1分子の数を求めるために、説明されたように(Poncelet and Carayon, 1985、J. Immunol. Meth. 85: 65-74)、定量フローサイトメトリー(QIFIKIT(登録商標), Dako; カタログ番号K0078)を行った。前記細胞株は、以下のPD-L1抗原密度(ABC、抗体結合能):
・SK-MES-1: 約30,000個のABC/細胞、
・MDA-MB-231: 約21,000個のABC/細胞、
・PC-3: 約6,000個のABC/細胞、
・HELA細胞: 約2,000個のABC/細胞
を有すると判定された。
【0356】
MDA-MB-231細胞との結合
図1は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR(A)、bsIgG1-b12-FEALx338-FEAR(D)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR(B)、およびbsIgG1-b12-FEALx547-FEAR(E)が、MDA-MB-231細胞に対して、単一特異性二価PD-L1抗体IgG1-338-FEARおよびIgG1-547-FEARよりも高い最大結合で用量依存的結合を示したことを示す。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEAR(C)およびbsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEAR(F)の最大結合は二価単一特異性PD-L1抗体IgG1-511-LC33S-FEARより小さかった。
【0357】
PC-3細胞との結合
図2は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR(A)、bsIgG1-b12-FEALx338-FEAR(D)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR(B)、およびbsIgG1-b12-FEALx547-FEAR(E)がPC3細胞に対して用量依存的結合を示したことを示す。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEAR(C)およびbsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEAR(F)の最大結合は二価単一特異性PD-L1抗体IgG1-511-LC33S-FEARより小さかった。
【0358】
HELA細胞との結合
図3は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR(A)およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR(B)がHELA細胞に対して用量依存的結合を示したことを示す。単一特異性二価PD-L1抗体IgG1-338-FEARおよびIgG1-547-FEARの最大結合は、使用した濃度範囲で測定することができなかった。(C)bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARはHELA細胞に結合しなかった。
【0359】
SK-MES-1細胞との結合
図4は、bsIgG1-b12-FEALx338-FEAR(A)およびbsIgG1-b12-FEALx547-FEAR(B)が、SK-MES-1細胞に対して、単一特異性二価PD-L1抗体IgG1-338-FEARおよびIgG1-547-FEARよりも高い最大結合で用量依存的結合を示したことを示す。bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEAR(C)の最大結合は二価単一特異性PD-L1抗体IgG1-511-LC33S-FEARよりも小さかった。
【0360】
実施例6:ヒトPD-L2との結合
PD-L1には特異的結合し、ヒトPD-L2には特異的結合しないことを示すために、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEARおよびIgG1-338-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARおよびIgG1-547-FEAR、ならびにbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARおよびIgG1-511-LC33S-FEARとヒトPD-L2発現CHO細胞の結合を上記で説明した方法を用いてフローサイトメトリーによって測定した。PE結合PD-L2特異的抗体(Mylteni, クローン MIH18; カタログ番号130-098-651)を陽性対照として使用した。試験した抗体はどれもCHO-PD-L2細胞に結合しなかった。
【0361】
実施例7:PD-L1抗体またはCD3×PD-L1二重特異性抗体もしくはb12×PD-L1二重特異性抗体とカニクイザルPD-L1との結合
カニクイザルPD-L1発現CHO細胞との結合を、上記で説明した方法を用いてフローサイトメトリーによって測定した。図5は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR(A)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR(B)、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEAR(C)、bsIgG1-b12-FEALx338-FEAR(D)、bsIgG1-b12-FEALx547-FEAR(E)、およびbsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEAR(F)がカニクイザルPD-L1発現CHO細胞に対して用量依存的結合を示し、最大結合が単一特異性二価PD-L1抗体IgG1-338-FEAR、IgG1-547-FEAR、およびIgG1-511-LC33S-FEARより高かったことを示す。
【0362】
実施例8:バイオレイヤー干渉法を用いたヒトPD-L1親和性およびカニクイザルPD-L1親和性の測定
第1の実験セットでは、組換え発現ヒトPD-L1タンパク質に対する親和性を、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いてOctet HTX機器(ForteBio)において測定した。抗ヒトIgG Fc Capture(AHC)バイオセンサー(ForteBio)を抗体(1μg/ml)と一緒に900s間ロードした。ベースライン(100s)後、Sample Diluent(ForteBio)中でのPDLoneECDHisCタグの会合(1000s)および解離(2000s)を2.67μg/ml~0.14μg/ml(100nM~1.56nM)の濃度範囲を用いて2倍希釈段階で測定した。この実験は30℃、1000rpmで震盪しながら行った。データを、Data Analysis Software v9.0.0.12(ForteBio)によって1:1モデルと、グローバルフルフィット(global full fit)と1000sの会合時間および200sまたは1000sの解離時間とを用いて分析した。緩衝液参照を差し引くことによってデータトレースを補正し、Y軸をベースラインの最後の10sに合わせ、インターステップコレクション(interstep correction)ならびにサビツキー・ゴーレイフィルタリング(Savitzky-Golay filtering)を適用した。応答(response)<0.05nmのデータトレースを分析から除外した。デフォルトとして、1000sの解離時間を用いたフィットを使用した。IgG1-511-FEAR-LC33SについてはR2値およびフィットの目視検査に基づいて200sの解離時間を使用した。
【0363】
表1は結果を示す。
【0364】
(表1)バイオレイヤー干渉法によって測定された、ヒトPD-L1に対する単一特異性二価PD-L1抗体の結合親和性
【0365】
第2の実験セット(n=3)では、BLIを用いて測定された、ヒトPD-L1およびカニクイザルPD-L1に対するPD-L1抗体の抗体親和性を比較した。実験のセットアップは、以下を除いて上記で説明した通りであった。
・抗体を用いたAHCバイオセンサーのローディング時間は600sであった。
・ベースラインは300sであった。
・PDLoneECD-HisCタグ(ヒトPD-L1、理論分子量29kDa)に加えて、カニクイザルPD-L1/B7-H1タンパク質(Acro Biosystems、カタログ番号PD1-C52H4-100、理論分子量27.1kDa)を抗原として使用した。
・抗原の濃度範囲は0.156~10nM(1回目の実験)または0.39~25nM(第2回目および3回目の実験)であった。
【0366】
表2は結果(3回の実験の平均)を示す。ヒトPD-L1に対するIgG1-338-FEAR、IgG1-547-FEAR、およびIgG1-511-LC33S-FEARの結合親和性は表1に示したものと同じ範囲であり、逸脱はアッセイ条件のばらつきによる可能性が高かった。カニクイザルPD-L1に対する、これらの抗体の結合親和性はヒトPD-L1のものとよく似ていた。IgG1-MEDI4738-FEARおよびIgG1-MPDL3280A-FEARの結合親和性も測定した。IgG1-MEDI4738-FEARはヒトPD-L1およびカニクイザルPD-L1に対して同様の結合親和性を示した。IgG1-MEDI4738-FEARは結合親和性が大きく異なり、平均して、ヒトPD-L1に対する親和性はカニクイザルPD-L1に対する親和性の19.7倍であった(カニクイザルPD-L1よりKDが小さい)。
【0367】
(表2)バイオレイヤー干渉法によって測定された、ヒトPD-L1およびカニクイザルPD-L1に対する単一特異性二価PD-L1抗体の結合親和性(3回の独立した実験の平均)
【0368】
実施例9:PD-L1古典的サンドイッチクロスブロックアッセイ法
抗体クロスブロック試験をバイオレイヤー干渉法(BLI)を用いてOctet HTX機器(ForteBio)機器で行った。抗体(10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH6.0(ForteBio)中で20μg/ml)を、Amine-Reactive 2nd Generation(AR2G)バイオセンサー(ForteBio)上に、製造業者の説明書に従って固定化した。Sample Diluent(ForteBio)中でのベースライン(50s)後に、固定化抗体を含有するバイオセンサーをPDLoneECDHisCタグ(100nMまたは2.7μg/ml)と一緒に500s間ロードし、この後に、第2の抗体(10μg/ml)の会合応答を500s間、追跡した。10mMグリシンpH2.5とSample Diluentに3×5s、交互に曝露することによってバイオセンサーを再生した。この実験を、ベースライン段階から開始して新たな第2の抗体セットを用いて繰り返した。各バイオセンサーを6回使用した。この実験を1000rpmのシェーカー速度を用いて30℃で行った。データをData Analysis Software v9.0.0.12(ForteBio)を用いて分析した。Y軸を会合段階に合わせ、サビツキー・ゴーレイフィルタリングを適用した。固定化抗体からのPDLoneECDHisCタグの解離を補正するために第2の抗体の会合応答から平均緩衝液応答を差し引いた。補正された会合応答をマトリックス形式でプロットした。0.1nm以上の応答を非ブロッキング抗体ペアとみなし(結果を、図6にある表中の装飾のない数字で示した)、0.1未満の応答をブロッキング抗体ペアとみなした(結果を、図6にある表中の太字の数字で示した)。一部の抗体ペアは置換挙動を示した(結果を、図6にある表中の星印(*)で示した)。代表的なグラフを、置換抗体ペアについては図(A)、ブロッキング抗体ペアについては図(B)、非ブロッキング抗体ペアについては図(C)に示した。
【0369】
クロスブロック実験を、抗体IgG1-338-FEAR、IgG1-547-FEAR、IgG1-511-LC33S-FEAR、IgG1-321-FEAR、IgG1-421-LC91S-FEAR、IgG1-476-N101Q-LC33S-FEAR、IgG1-632-FEAR、IgG1-516-FEAR、IgG1-MPDL3280A-FEAR、およびIgG1-MEDI4736-FEARについて行った。結果を図6にまとめた。
【0370】
データから、抗体IgG1-511-LC33S-FEARは独特なクロスブロック群を規定することが分かる。なぜなら、抗体IgG1-511-LC33S-FEARは、ヒトPDL1に対するIgG1-321-FEAR結合、IgG1-338-FEAR結合、IgG1-476-N101Q-LC33S-FEAR結合、IgG1-632-FEAR結合、IgG1-MPDL3280A-FEAR結合、およびIgG1-MEDI4736-FEAR結合をブロックするが、ヒトPDL1に対するIgG1-547-FEAR結合も、IgG1-421-LC91S-FEAR結合も、IgG1-516-FEAR結合もブロックしないからである。
【0371】
さらに、抗体IgG1-547-FEARは独特なクロスブロック群を規定する。なぜなら、抗体IgG1-547-FEARは、ヒトPDLに対するIgG1-321-FEAR結合、IgG1-338-FEAR結合、IgG1-421-LC91S-FEAR結合、IgG1-MPDL3280A-FEAR結合、およびIgG1-MEDI4736-FEAR結合をブロックするが、IgG1-511-LC33S-FEAR結合、IgG1-476-N101Q-LC33S-FEAR結合、IgG1-632-FEAR結合、IgG1-516-FEAR結合をブロックしないからである。
【0372】
さらに、抗体IgG1-476-N101Q-LC33S-FEARは、IgG1-321-FEAR、IgG1-338-FEAR、IgG1-MPDL3280A-FEAR、およびIgG1-MEDI4736-FEARと組み合わされると置換挙動を示した。このことから、抗体IgG1-321-FEAR、IgG1-338-FEAR、IgG1-MEDI4736-FEAR、およびIgG1-MPDL3280A-FEARは、IgG1-421-LC19S-FEAR、IgG1-547-FEAR、IgG1-LC33S-FEAR、IgG1-632-FEAR、およびIgG1-516-FEARと比較してヒトPD-L1に異なったやり方で結合することが分かる。
【0373】
実施例10:PD-1/PD-L1相互作用に対するPD-L1抗体の効果
PD-1およびPD-L1の相互作用に対する二価PD-L1抗体および一価PD-L1抗体の効果を、Promega(Madison,USA)が開発したPD-1/PD-L1遮断バイオアッセイ法において測定した。これは、2種類の遺伝子操作された細胞株:ヒトPD-1と、NFAT応答エレメント(NFAT-RE)によって動かされるルシフェラーゼレポーターとを発現するジャーカットT細胞であるPD-1エフェクター細胞、およびヒトPD-L1と、抗原非依存的にコグネイトTCRを活性化するように設計された操作された細胞表面タンパク質とを発現するCHO-K1細胞であるPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞からなる生物発光細胞アッセイ法である。2種類の細胞タイプが同時培養されると、PD-1/PD-L1相互作用によって、TCRシグナル伝達、および、NFAT-REを介したルミネセンスが阻害される。PD-1/PD-L1相互作用をブロックする抗体を添加すると阻害シグナルが放出されて、TCR活性化、および、NFAT-REを介したルミネセンスが生じる。
【0374】
PD-L1 aAPC/CHO-K1細胞(Promega,カタログ番号J109A)を製造業者のプロトコールに従って解凍し、10%胎仔ウシ血清(FBS; Promega, カタログ番号J121A)を含有するHam’s F12培地(Promega, カタログ番号J123A)に再懸濁し、96ウェル平底培養プレート(CulturPlate-96, Perkin Elmer, カタログ番号6005680)にプレートした。プレートを、5%CO2、37℃で16時間インキュベートした。上清を除去し、抗体の段階希釈液(5~0.001μg/mLの最終濃度;1%胎仔ウシ血清[FBS; Promega、カタログ番号J121A]を含有するRPMI1640[Lonza、カタログ番号BE12-115F]で4倍希釈)を添加した。PD-1エフェクター細胞(Promega, カタログ番号J115A; 製造業者のプロトコールに従って解凍し、RPMI/1%FBSに再懸濁した)を添加した。プレートを、5%CO2、37℃で6時間インキュベートした。室温まで平衡化した後に、40μl Bio-Glo試薬(製造業者のプロトコールに従ってBio-Gloルシフェラーゼアッセイ緩衝液[Promega, カタログ番号G7198]で再構成したBio-Gloルシフェラーゼアッセイ基質[Promegaカタログ番号G720B])を各ウェルに添加した。プレートを室温で5~10分間インキュベートし、ルミネセンスを、EnVision Multilabel Reader(PerkinElmer)を用いて測定した。対照(抗体を添加していない)と比べたPD1-PD-L1相互作用に対する効果を以下の通りに算出した。
誘導倍率 = RLU(誘導 - バックグラウンド)/RLU(抗体なし対照 - バックグラウンド)
RLUは相対光量(relative light unit)である。
【0375】
図7は、二価単一特異性抗体IgG1-338-FEAR、IgG1-547-FEAR、およびIgG1-511-LC33S-FEARがPD1とPD-L1との間の相互作用を用量依存的に効率的にブロックしたことを示す。一価抗体bsIgG1-b12-FEALx338-FEARおよびbsIgG1-b12-FEALx547-FEARもPD1-PD-L1相互作用を効率的にブロックした。bsIgG1-b12-FEALx511-LC33S-FEARも、効率は劣るが、この相互作用をブロックした。
【0376】
実施例11:CD3×PD-L1二重特異性抗体のインビトロ細胞障害
標的細胞として腫瘍細胞株を使用し、かつ精製したT細胞または末梢血単核球(PBMC)をエフェクター細胞として使用する、インビトロ細胞障害アッセイ法において、CD3×PD-L1二重特異性抗体を試験した。RosetteSep human T cell enrichment cocktail(Cat: 15021C.1, Stemcell Technologies, France)を使用し、製造業者の説明書に従って、ドナーバフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)からT細胞を単離した。Ficoll勾配(Lonza; リンパ球分離培地、カタログ番号17-829E)を使用し、製造業者の説明書に従って40mLのバフィーコート(Sanquin)からPBMCを単離した。
【0377】
MDA-MB-231細胞(細胞16,000個/ウェル)、PC-3細胞(細胞16,000個/ウェル)、またはHELA細胞(細胞10,000個/ウェル)を平底96ウェルプレート(cat: 655180, Greiner-bio-one, The Netherlands)に播種し、37℃で一晩培養した。T細胞を腫瘍細胞に、MDA-MB-231またはPC-3細胞についてはE:T比=4:1、HELA細胞についてはE:T=8:1で添加した。PBMCは腫瘍細胞にE:T比=10:1で添加した。抗体の段階希釈液を添加し(1000~0.06ng/mLの最終濃度; 4倍希釈)、プレートを37℃で48時間インキュベートした。次に、上清を捨て、付着した細胞をPBSで2回洗浄した。10% donor bovine serum with iron(cat: 10371-029, Life Technologies, The Netherlands)を含有するRPMI-1640(cat: BE12-115F, Lonza, Switzerland)培地に溶解して調製した10%アラマーブルー(alamar blue)(cat: DAL1100, Life Technologies, The Netherlands)溶液150μLをウェルに添加し、37℃で5時間インキュベートした。吸光度をEnvision multilabelプレートリーダー(PerkinElmer, US)で測定した。スタウロスポリン(cat: S6942, Sigma-Aldrich, US)で処理した細胞を生存率0%と設定し、未処理細胞を生存率100%と設定した。「生細胞パーセント」を以下の通りに算出した。
生細胞% = (試料の吸光度 - スタウロスポリン処理標的細胞の吸光度)/(未処理標的細胞の吸光度 - スタウロスポリン処理標的細胞の吸光度)×100
【0378】
MDA-MB-231細胞におけるCD3×PD-L1二重特異性抗体の細胞障害
図8は、精製したT細胞(A)およびPBMC(B)をエフェクター細胞として使用した両方の場合とも、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARが、比較的高いレベルのPD-L1を発現するMDA-MB-231細胞において濃度依存性細胞障害を誘導したことを示す。
【0379】
PC-3細胞におけるCD3×PD-L1二重特異性抗体の細胞障害
図9は、精製したT細胞(A)およびPBMC(B)をエフェクター細胞として使用した両方の場合とも、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEAR、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARが、PC-3細胞において濃度依存性細胞障害を誘導したことを示す。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARは、中レベルのPD-L1を発現するPC-3細胞での細胞障害誘導の効率が最も低かった。
【0380】
HELA細胞におけるCD3×PD-L1二重特異性抗体の細胞障害
図10は、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARが、エフェクター細胞としてT細胞を使用した場合に、ある1つのドナーについてはPBMCを使用した場合でも、低レベルのPD-L1を発現するHELA細胞において細胞障害を誘導することができたことを示す。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx338-FEARはHELA細胞において細胞障害を少なくしか誘導することができず、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARはHELA細胞において細胞障害を誘導しなかった。
【0381】
実施例12:CD3×PD-L1二重特異性抗体によるT細胞の活性化および増殖
標的細胞としてMDA-MB-231細胞を使用し、かつ、精製したT細胞をエフェクター細胞として使用する、T細胞の活性化および増殖を測定するためのインビトロアッセイ法において、CD3×PD-L1二重特異性抗体を試験した。IgG1-b12(Fcγ受容体およびC1qと相互作用することができるFc領域を有する)を陰性対照として使用した。Ficoll勾配(Lonza; リンパ球分離培地、カタログ番号17-829E)を使用し、製造業者の説明書に従って40mLのバフィーコート(Sanquin)からPBMCを単離した。RosetteSep human T cell enrichment cocktail(Stemcell Technologies, France; カタログ番号15021C.1)を使用し、精製したPBMCからT細胞を製造業者の説明書に従って単離した。MDA-MB-231細胞を、0.07μM CellTrace CFSE(ThermoFisher Scientific,カタログ番号C34554)で、製造業者の説明書に従って標識し、平底96ウェルプレート(Greiner-bio-one、TheNetherlands、カタログ番号655180)に播種し(細胞5,000個/ウェル)、ウェルに37℃で4時間付着させた。T細胞を腫瘍細胞にE:T比=8:1で添加し、そのため、細胞40,000個/ウェルになった。抗体の段階希釈液を添加し(10000~1.5ng/mLの最終濃度;3倍希釈)、プレートを37℃で4日間インキュベートした。
【0382】
次に、上清(非付着細胞を含有する)を96ウェルU底プレート(Greiner-bio-one)に移し、残っている細胞をトリプシン-EDTA(Lonza)処理することで採取し、96ウェルU底プレート中で細胞上清と組み合わせた。細胞をPBS(B.Braun)で洗浄し、抗体のカクテル:1:200抗huCD4-パシフィックブルー(Biolegend, カタログ番号300521)、1:50抗huCD8-FITC(BD, カタログ番号345772)、1:100抗huCD25-PE-Cy7(eBiosciences, カタログ番号25-0259-42)、および抗huCD69-PE(BD, カタログ番号555531)で4℃で30分間染色した。細胞を氷冷FACS-緩衝液で1回洗浄し、1:6000に希釈したtopro-3-ヨウ素(ThermoFisher Scientific, カタログ番号T3605)を加えたFACS-緩衝液80μLに再懸濁した。
【0383】
T細胞増殖を、50μLの決まった体積中にあるCD4pos T細胞およびCD8pos T細胞の総数をフローサイトメーターで数えることによって判定した。T細胞活性化を、50μLの決まった体積中にあるCD69pos(初期T細胞活性化マーカー)およびCD25pos(後期T細胞活性化)細胞の数をフローサイトメーターで数えることによって測定した。図11は、全てのCD3×PD-L1二重特異性抗体がT細胞増殖を誘導したことを示す(T細胞の総数の増加によって示される)。しかしながら、異なるCD3×PD-L1二重特異性抗体間で活性化T細胞量および総T細胞量の違いが認められた。bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx511-LC33S-FEARはあまり効果がなく、bsIgG1-huCD3-H1L1-FEALx547-FEARは最も効果が高かった。
【0384】
実施例13.アラニンスキャニングを用いた、抗体結合におけるPD-L1アミノ酸残基の寄与の測定
ライブラリー設計
PD-L1(Uniprot Q9NZQ7)1残基アラニンライブラリーを合成した(Geneart)。この場合、ヒトPD-L1の細胞外ドメインにある全てのアミノ酸残基を、アラニンまたはシステインを既に含んでいる位置を除いて個々にアラニンに変異させた。抗原の構造が破壊される機会を最小にするためにシステインを変異させなかった。ライブラリーを、CMV/TK-ポリA発現カセット、Amp耐性遺伝子、およびpBR322複製起点を含有するpMAC発現ベクターにクローニングした。
【0385】
ライブラリー作製およびスクリーニング
野生型PD-L1およびアラニン変異体をFreeStyle HEK293細胞において製造業者(Thermo Scientific)の説明書に従って個々に発現させた。トランスフェクションの1日後に細胞を採取した。約100,000個の細胞を、FACS緩衝液に溶解した関心対象のAlexa488結合抗体20μLとインキュベートした(表3)。細胞を室温で1時間インキュベートした。その後に、150μLのFACS緩衝液を添加し、細胞を遠心分離で洗浄した。細胞を20μLの新鮮FACS緩衝液(PBS[Ca++、Mg++、およびフェノールレッドを含まない]/1%BSA画分V/0.02%NaN3)に懸濁し、iQueスクリーナーを用いたフローサイトメトリーによる分析まで4℃で保管した。
【0386】
実験全体を4回繰り返した。
【0387】
(表3)アラニンスキャニングを用いた、抗体結合におけるPD-L1アミノ酸残基の寄与の測定において使用した抗体
【0388】
データ分析
試料ごとに、細胞1個あたりの抗体結合の平均を、ゲーティングされていない(ungated)細胞集団の蛍光強度の幾何平均(gMFI)として決定した。gMFIは、PD-L1変異体に対する前記抗体の親和性の影響と、細胞1個あたりのPD-L1変異体の発現レベルの影響を受ける。特定のアラニン変異は変異体PD-L1の表面発現レベルに影響を及ぼすことができることを理由に、各PD-L1変異体の発現差を全体として補正することを目的として、データを、以下の式:
を用いて、非クロスブロッキングPD-L1特異的対照抗体(IgG1-625-FEAR-A488; SEQ ID NO:106に示した重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:110に示した軽鎖可変領域(VL)を含む)の結合強度に対して標準化した。
【0389】
この場合、「aa位置」は、PD-L1の特定のala変異体または野生型(wt)PD-L1のいずれかを指す。
【0390】
直線変化倍率スケールでの前記抗体の結合の減少または増加を表すために、以下の計算を使用した。
【0391】
結合の増加は、ほとんどの場合、参照抗体と特定のala変異体との結合の減少によって引き起こされる。
【0392】
これらの算出時に、アミノ酸をアラニンと交換すると、特定の抗体による結合が減少も増加もしないアミノ酸位置を結果「0」と示し、結合が増加するアミノ酸位置を「>0」と示し、結合が減少するアミノ酸位置を「<0」と示す。試料のばらつきを補正するために、結合の変化倍率が変化倍率の平均 - 1.5×SD(図12に点線で示した)よりも小さかったPD-L1アミノ酸残基だけを、「結合変異体の減少」とみなした。ここで、SDは、特定の試験抗体を対象にした4回の独立した実験からの変化倍率計算値の標準偏差である。
【0393】
特定のPD-L1変異体に対する対照抗体のgMFIが平均gMFI - 平均gMFI対照Abの2.5×SDよりも小さい場合には、データを分析から除外した(これらのPD-L1変異体については発現レベルが十分でないとみなされた)。
【0394】
図12は、PD-L1抗体と位置42~131(SEQ ID No 94に従う)にala変異があるPD-L1変種との結合の変化倍率を示す。結果から、
・抗体338の結合が少なくともヒトPD-L1のaaR113、Y123、およびR125に依存すること、
・抗体511の結合が、少なくとも、ヒトPD-L1のaaF19、F42、E45、K46、L94、およびI116に依存する。アミノ酸E45、K46、およびL94が前記抗体の結合に直接関与し、F19、F42、およびI116が、埋められた側鎖により前記抗体の結合に間接的に関与すること、
・抗体547の結合が少なくともヒトPD-L1のaaE58およびR113に依存すること、
・抗体MEDI4736の結合は少なくともヒトPD-L1のaaR113およびR125に依存すること、
・抗体MPDL3280Aの結合が少なくともヒトPD-L1のaaR125およびI126に依存し、I126は、埋められた側鎖により前記抗体の結合に間接的に関与し得ること
が分かる。
【0395】
実施例14:抗体依存性細胞障害(ADCC)
51 Cr放出アッセイ法において測定したADCC
MDA-MB-231細胞(ATCC,カタログ番号HTB-26)を採取し(7×106個の細胞を得た)、洗浄し(PBS、1500rpm、5分を2回)、10% cosmic calf serum(CCS)(HyClone, Logan, UT, USA))を加えたRPMI1640培地2mL中に収集し、これに200μCi51Cr(クロム-51; Amersham Biosciences Europe GmbH, Roosendaal, The Netherlands)を添加した。混合物を震盪しながら37℃で1時間インキュベートした。洗浄(PBS、1500rpm、5分を2回)後、細胞をRPMI1640培地/10%CCSに再懸濁し、トリパンブルー排除によって計数した。細胞を細胞1×105個/mLの濃度になるように調整した。
【0396】
その間に、標準的なFicoll密度遠心分離を使用し、製造業者の説明書に従って(リンパ球分離培地; Lonza, Verviers, France)、末梢血単核球(PBMC)を新鮮なバフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)から単離した。細胞をRPMI1640培地/10%CCSに再懸濁した後に細胞をトリパンブルー排除によって計数し、細胞1×107個/mLになるように調整した。
【0397】
50μLの51Cr標識標的細胞をマイクロタイターウェルに移し、50μLの30μg/mL PD-L1抗体(RPMI/10%CCSで希釈した)を添加した。陽性対照として、MDA-MB-231細胞上で発現している非関連標的に対する抗体を使用した。細胞をRTで15分間インキュベートし、50μLのエフェクター細胞(PBMC)を添加し、その結果、エフェクターと標的の比は100:1になった。細胞溶解の最大量を求めるために、エフェクター細胞の代わりに100μLの5%Triton-X100を添加した。自発溶解の量を求めるために、エフェクター細胞および抗体の代わりに100μLのRPMI1640/10%CCSを添加した。さらに、抗体非依存性細胞溶解のレベルを求めるために、50μLのエフェクター細胞および50μLの培地(抗体の代わり)を添加した。試料を37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。標的細胞溶解の量を求めるために、試料を遠心分離し(1200rpm、3分)、75μLの上清をマイクロニック(micronic)チューブに移した。この後に、放出された51Crをガンマカウンターを用いて計数した。抗体を介した溶解のパーセントを以下の通りに算出した。
【0398】
図13は、IgG1-547-F405LがADCCによってMDA-MB-231細胞の約10%の用量依存的溶解を誘導したことを示す。陽性対照抗体は20%の最大溶解しか誘導しなかった。このことから、この実験における全溶解はかなり少なかったことが分かる。IgG1-511-F405L-LC33SおよびIgG1-338-F405LはMDA-MB-231の溶解を誘導しなかった。
【0399】
ルミネセンスADCCレポーターバイオアッセイ法において測定したADCC
ADCCの代わりとして、PD-L1抗体がFcγRIIIa(CD16)架橋を誘導する能力も、MDA-MB-231細胞においてLuminescent ADCC Reporter BioAssay (Promega, カタログ番号G7018)を使用し、製造業者の推奨に従って測定した。エフェクター細胞として、このキットは、高親和性FcγRIIIa(V158)と、ホタルルシフェラーゼの発現を動かす活性化T細胞核内因子(NFAT)応答エレメントとを安定発現するように操作されたジャーカットヒトT細胞を備える。簡単に述べると、MDA-MB-231細胞(細胞12,500個/ウェル)を、Culture OptiPlates(Perkin Elmer)の中に入っているADCC Assay Buffer[RPMI-1640培地[(Lonza, カタログ番号BE12-115F)。3.5%Low IgG Serumを加えた]に播種し、抗体濃度シリーズ(3.5倍希釈で0.5~250ng/mLの最終濃度)と、解凍したADCC Bioassay Effector Cellsとを含有する75μLの総体積中で37℃/5%CO2で6時間インキュベートした。プレートを調節して15分間、室温(RT)にし、75μLのBio Gloアッセイルシフェラーゼ試薬を添加し、プレートをRTで5分間インキュベートした。ルシフェラーゼ生成を、EnVision Multilabel Reader(Perkin Elmer)でルミネセンスを読み取ることによって定量した。標的細胞と抗体(エフェクター細胞なし)しか添加していないウェルからバックグラウンドレベルを測定した。陰性対照として、標的とエフェクター細胞しか含有しないウェル(抗体なし)を使用した。
【0400】
図14は、IgG1-547-F405Lが、レポーターアッセイ法において測定した場合にADCC誘導に極めて有効だったことを示す。IgG1-MEDI4736-F405LおよびIgG1-MPDL3280A-K409RもADCCを誘導したが、IgG1-547-F405Lと同じ程度ではなかった。IgG1-511-F405L-LC33SおよびIgG1-338-F405LはADCCを誘導しなかった。
【0401】
配列一覧
【0402】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Genmab A/S
<120> Antibodies against PD-L1
<150> DK PA 2017 000164
<151> 2017-03-09
<150> DK PA 2017 00408
<151> 2017-07-11
<160> 115
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 119
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 1
Glu Val Gln Val Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Arg Phe
20 25 30
Trp Met Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Asn Ile Lys Gln Asp Gly Gly Glu Lys Tyr Tyr Val Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ala Lys Asn Ser Leu Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Gly Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Asp Asp Asn Trp Asn Gly His Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly
100 105 110
Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115

<210> 2
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 2
Gly Phe Thr Phe Ser Arg Phe Trp
1 5

<210> 3
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 3
Ile Lys Gln Asp Gly Gly Glu Lys
1 5

<210> 4
<211> 12
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 4
Ala Arg Asp Asp Asn Trp Asn Gly His Phe Asp Tyr
1 5 10

<210> 5
<211> 107
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 5
Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Thr Leu Ser Ala Ser Val Gly
1 5 10 15
Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Ser Ile Ser Ser Trp
20 25 30
Leu Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Asn Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr Lys Ala Ser Ser Leu Glu Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Glu Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro
65 70 75 80
Asp Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Tyr Gly Ser Tyr Ile
85 90 95
Thr Phe Gly Gln Gly Thr Arg Leu Glu Ile Lys
100 105

<210> 6
<211> 6
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 6
Gln Ser Ile Ser Ser Trp
1 5

<210> 7
<211> 9
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 7
Gln Gln Tyr Tyr Gly Ser Tyr Ile Thr
1 5

<210> 8
<211> 121
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 8
Gln Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Ser Glu Leu Lys Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Met Val Ser Cys Lys Ala Ser Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr
20 25 30
Val Met Asn Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Gly Leu Glu Trp Met
35 40 45
Gly Trp Ile Asn Ser Tyr Thr Gly Asn Pro Thr Ser Ala Gln Gly Phe
50 55 60
Thr Gly Arg Phe Val Phe Ser Phe Asp Thr Ser Val Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Ile Ser Ser Leu Lys Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Gly Tyr Cys Thr Ser Thr Ser Cys Tyr Leu Asp Tyr Trp Gly
100 105 110
Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120

<210> 9
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 9
Gly Tyr Thr Phe Thr Ser Tyr Val
1 5

<210> 10
<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 10
Ile Asn Ser Tyr Thr Gly Asn Pro
1 5

<210> 11
<211> 14
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 11
Ala Arg Gly Tyr Cys Thr Ser Thr Ser Cys Tyr Leu Asp Tyr
1 5 10

<210> 12
<211> 108
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 12
Ser Tyr Glu Leu Thr Gln Pro Pro Ser Val Ser Val Ser Pro Gly His
1 5 10 15
Thr Ala Arg Ile Thr Cys Ser Gly Asp Ala Leu Pro Lys Lys Tyr Ala
20 25 30
Cys Trp Phe Gln Gln Lys Ser Gly Gln Ala Pro Val Leu Val Ile Tyr
35 40 45
Glu Asp Ser Lys Arg Pro Ser Gly Ile Pro Glu Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Thr Ser Gly Thr Met Ala Thr Leu Thr Ile Ser Gly Ala Gln Val Glu
65 70 75 80
Asp Glu Thr Asp Tyr Tyr Cys Tyr Ser Ala Asp Thr Ser Gly Thr His
85 90 95
Arg Val Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Thr Val Leu
100 105

<210> 13
<211> 6
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 13
Ala Leu Pro Lys Lys Tyr
1 5

<210> 14
<211> 11
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 14
Tyr Ser Ala Asp Thr Ser Gly Thr His Arg Val
1 5 10

<210> 15
<211> 108
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> N/A
<400> 15
Ser Tyr Glu Leu Thr Gln Pro Pro Ser Val Ser Val Ser Pro Gly His
1 5 10 15
Thr Ala Arg Ile Thr Cys Ser Gly Asp Ala Leu Pro Lys Lys Tyr Ala
20 25 30
Ser Trp Phe Gln Gln Lys Ser Gly Gln Ala Pro Val Leu Val Ile Tyr
35 40 45
Glu Asp Ser Lys Arg Pro Ser Gly Ile Pro Glu Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Thr Ser Gly Thr Met Ala Thr Leu Thr Ile Ser Gly Ala Gln Val Glu
65 70 75 80
Asp Glu Thr Asp Tyr Tyr Cys Tyr Ser Ala Asp Thr Ser Gly Thr His
85 90 95
Arg Val Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Thr Val Leu
100 105

<210> 16
<211> 6
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 16
Ala Leu Pro Lys Lys Tyr
1 5

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<211> 11
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 17
Tyr Ser Ala Asp Thr Ser Gly Thr His Arg Val
1 5 10

<210> 18
<211> 121
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 18
Glu Val Gln Leu Leu Glu Pro Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Glu Ala Ser Gly Ser Thr Phe Ser Thr Tyr
20 25 30
Ala Met Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ser Gly Phe Ser Gly Ser Gly Gly Phe Thr Phe Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Arg Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Ser Ser Lys Asn Thr Leu Phe
65 70 75 80
Leu Gln Met Ser Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Ile Pro Ala Arg Gly Tyr Asn Tyr Gly Ser Phe Gln His Trp Gly
100 105 110
Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 19
Gly Ser Thr Phe Ser Thr Tyr Ala
1 5

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<211> 8
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 20
Phe Ser Gly Ser Gly Gly Phe Thr
1 5

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 21
Ala Ile Pro Ala Arg Gly Tyr Asn Tyr Gly Ser Phe Gln His
1 5 10

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 22
Ser Tyr Val Leu Thr Gln Pro Pro Ser Val Ser Val Ala Pro Gly Gln
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Thr Ala Arg Ile Thr Cys Gly Gly Asn Asn Ile Gly Ser Lys Ser Val
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Asp Asp Asn Asp Arg Pro Ser Gly Leu Pro Glu Arg Phe Ser Gly Ser
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Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Gln Val Trp Asp Ser Ser Ser Asp His
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<213> Homo Sapiens
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Asn Ile Gly Ser Lys Ser
1 5

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
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Gln Val Trp Asp Ser Ser Ser Asp His Val Val
1 5 10

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
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Glu Val Lys Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Asn Thr Tyr
20 25 30
Ala Met Asn Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Ala Arg Ile Arg Ser Lys Tyr Asn Asn Tyr Ala Thr Tyr Tyr Ala Asp
50 55 60
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65 70 75 80
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<213> Homo Sapiens
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Gly Phe Thr Phe Asn Thr Tyr Ala
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Ile Arg Ser Lys Tyr Asn Asn Tyr Ala Thr
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Ser Ile Ser Ser Trp
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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<212> PRT
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<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> N/A
<400> 53
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Arg Ser Tyr
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Ala Met Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Arg Asp Asn Ser Lys Asn Thr Leu Tyr
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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Asp Trp Trp Gly Trp Ile Arg Gln Pro Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp
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Ile Gly Tyr Ile Tyr Tyr Ser Gly Thr Gly Tyr Tyr Asn Pro Ser Leu
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Lys Ser Arg Val Thr Ile Ser Ile Asp Thr Ser Lys Asn Gln Phe Ser
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<213> Homo Sapiens
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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 62
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1 5

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 63
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<210> 64
<211> 108
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<213> Homo Sapiens
<400> 64
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Thr Ala Arg Ile Thr Cys Gly Gly Asn Asn Ile Gly Ser Lys Ser Val
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100 105

<210> 65
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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 65
Asn Ile Gly Ser Lys Ser
1 5

<210> 66
<211> 11
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 66
Gln Val Trp Asp Ser Ser Ser Asp His Val Val
1 5 10

<210> 67
<211> 123
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 67
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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Tyr
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
<400> 70
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<210> 71
<211> 108
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<213> Homo Sapiens
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Glu Asp Ser Lys Arg Pro Ser Gly Ile Pro Glu Arg Phe Ser Gly Ser
50 55 60
Ser Ser Gly Thr Met Ala Thr Leu Thr Ile Ser Gly Ala Gln Val Glu
65 70 75 80
Asp Glu Ala Asp Tyr Tyr Cys Tyr Ser Thr Ala Ser Ser Gly Asp His
85 90 95
Arg Val Phe Gly Gly Gly Thr Lys Leu Thr Val Leu
100 105

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<211> 6
<212> PRT
<213> Homo Sapiens
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Ala Leu Pro Lys Lys Tyr
1 5

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<212> PRT
<213> Homo Sapiens
<400> 73
Tyr Ser Thr Ala Ser Ser Gly Asp His Arg Val
1 5 10

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<213> Homo Sapiens
<400> 74
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser
20 25 30
Trp Ile His Trp Tyr Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Tyr
35 40 45
Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr
100 105 110
Leu Val Thr Val Ser Ser
115

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Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser Trp
1 5

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Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr
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Ala Arg Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr
1 5 10

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<213> Homo Sapiens
<400> 78
Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly
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Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Asp Val Ser Thr Ala
20 25 30
Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr Ser Ala Ser Phe Leu Tyr Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro
65 70 75 80
Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Leu Tyr His Pro Ala
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Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
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1 5

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Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Arg Tyr
20 25 30
Trp Met Ser Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
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Ala Asn Ile Lys Gln Asp Gly Ser Glu Lys Tyr Tyr Val Asp Ser Val
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Ala Arg Glu Gly Gly Trp Phe Gly Glu Leu Ala Phe Asp Tyr Trp Gly
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Gly Phe Thr Phe Ser Arg Tyr Trp
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Glu Arg Ala Thr Leu Ser Cys Arg Ala Ser Gln Arg Val Ser Ser Ser
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Ile Tyr Asp Ala Ser Ser Arg Ala Thr Gly Ile Pro Asp Arg Phe Ser
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Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Arg Leu Glu
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Asp Ala Ser
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Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val Leu Gln Ser Ser Gly Leu Tyr Ser
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Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu Gly Cys Leu Val Lys Asp Tyr
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Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr
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Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly Lys
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Met Arg Ile Phe Ala Val Phe Ile Phe Met Thr Tyr Trp His Leu Leu
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Asn Ala Phe Thr Val Thr Val Pro Lys Asp Leu Tyr Val Val Glu Tyr
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<213> Homo Sapiens
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Gly Ser Lys Pro Glu Asp Ala Asn Phe Tyr Leu Tyr Leu Arg Ala Arg
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<213> Homo Sapiens
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<210> 97
<211> 107
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<213> Homo Sapiens
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<213> Homo Sapiens
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<211> 8
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Val

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<211> 330
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Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys Pro Ser Asn Thr Lys Val Asp Lys
85 90 95
Arg Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys
100 105 110
Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro
115 120 125
Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser Arg Thr Pro Glu Val Thr Cys
130 135 140
Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp
145 150 155 160
Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu
165 170 175
Glu Gln Tyr Asn Ser Thr Tyr Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu
180 185 190
His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn
195 200 205
Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys Thr Ile Ser Lys Ala Lys Gly
210 215 220
Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Glu Glu
225 230 235 240
Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr
245 250 255
Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn
260 265 270
Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe
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Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr
305 310 315 320
Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly Lys
325 330

<210> 114
<211> 330
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> N/A
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1 5 10 15
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20 25 30
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2023116610000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
この出願の明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023116610000001.xml