(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116620
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】環状RNAを使用したタンパク質翻訳およびその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20230815BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230815BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230815BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230815BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230815BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230815BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C12P21/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094068
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2021559486の分割
【原出願日】2020-02-27
(31)【優先権主張番号】201910214234.9
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521438021
【氏名又は名称】シャンハイ インスティチュート オブ ニュートリション アンド ヘルス,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヅァフォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シャオジュエン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非ウイルス由来の非キャップ依存性翻訳開始要素を提供する。
【解決手段】環状RNA構築物およびその応用を提供し、前記環状RNA構築物は、5’-3’方向から式Iに示される構造を有し、TI-Z1-Z2(I)、式において、TIは、翻訳開始要素であり、Z1は、外因性タンパク質を発現させる発現カセットであり、Z2は、なしまたは他の要素である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状RNA構築物であって、
前記環状RNA構築物は、5’-3’方向から式Iに示される構造を有し、
TI-Z1-Z2(I)
式において、
TIは、翻訳開始要素であり、
Z1は、外因性タンパク質を発現させる発現カセットであり、
Z2は、なしまたは他の要素であり、
また、各「-」は、結合またはヌクレオチド接続配列であり、
ここで、TI要素の長さは、6~30nt、好ましくは、8~24nt、より好ましくは、10~20ntであり、
TI要素において、Aの含有量は、≧35%、好ましくは、≧45%、より好ましくは、≧60%であり、
TI要素において、Tの含有量は、≧20%、好ましくは、≧30%、より好ましくは、≧50%であり、
TI要素において、A+Tの含有量は、≧65%、好ましくは、≧80%、より好ましくは、≧90%であり、
TI要素において、Gの含有量は、≦35%、好ましくは、≦25%、より好ましくは、≦10%であることを特徴とする、前記構築物。
【請求項2】
前記TI要素は、表1に示されるヌクレオチド配列からなる群から選択される一つまたは複数のヌクレオチド配列を含むことを特徴とする
請求項1に記載の構築物。
【表1】
【表2】
【請求項3】
前記TI要素のコード配列は、
(a)SEQ ID NO.:1~40のような配列に示されるポリヌクレオチド、
(b)ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.:1~40に示される配列と≧75%(好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%または≧95%または≧98%または≧99%)の相同性を有するポリヌクレオチド、
(c)SEQ ID NO.:1~40に示されるポリヌクレオチドの5’末端および/または3’末端で1~18個(好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個)のヌクレオチドを切断または追加するポリヌクレオチド、および
(d)(a)~(c)のいずれかに記載のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選択されることを特徴とする
請求項1に記載の構築物。
【請求項4】
前記TI要素の一つまたは複数のアデニン(A)がメチル化されることを特徴とする
請求項1に記載の構築物。
【請求項5】
ベクターであって、
前記ベクターは、請求項1に記載の構築物の発現カセットを含むことを特徴とする、前記ベクター。
【請求項6】
遺伝子操作された細胞であって、
前記遺伝子操作された細胞のゲノムの一つまたは複数の部位には請求項1に記載の構築物が統合されるか、または前記遺伝子操作された細胞には請求項5に記載のベクターが含まれることを特徴とする、前記遺伝子操作された細胞。
【請求項7】
反応システムであって、
(a)請求項1に記載の構築物と、および
(b)スプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、またはその組み合わせからなる群から選択される反応に必要な他の成分とを含むことを特徴とする、前記反応システム。
【請求項8】
インビトロでタンパク質を合成する方法であって、
(i)請求項7に記載の反応システムを提供する段階と、および
(ii)適切な条件下で、段階(i)の合成システムをT1時間インキュベートして、前記タンパク質を合成する段階とを含むことを特徴とする、前記インビトロでタンパク質を合成する方法。
【請求項9】
インビトロタンパク質合成用のキットであって、
(k1)第1の容器および第1の容器内に位置する請求項1に記載の構築物と、
(k2)第2の容器、およびスプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、またはその組み合わせからなる群から選択される第2の容器内に位置する反応に必要な他の成分と、ならびに
(kt)ラベルまたはマニュアルとを含むことを特徴とする、前記キット。
【請求項10】
請求項1に記載の構築物、請求項5に記載のベクター、請求項6に記載の遺伝子操作された細胞、請求項7に記載の反応システム、または請求項9に記載のキットの用途であって、
ハイスループットのインビトロタンパク質合成に使用されることを特徴とする、前記用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、生物技術の分野に関し、具体的には、環状RNAを使用したタンパク質翻訳およびその応用に関する。
【0002】
[背景技術]
タンパク質は、生体で最も重要な生体高分子であり、その突然変異または異常な発現は、疾患を引き起こす可能性がある。従って、タンパク質の代替または発現によって対応する疾患を治療することができる。一般的なタンパク質代替または発現療法は、リボ核酸(DNA)ベクターに基づく送達システム、デオキシリボ核酸(RNA)ベクターに基づく送達システムおよびタンパク質送達システムを含む。これらの方法は、すべてメッセンジャーRNA翻訳を通じてタンパク質を生成する必要がある。真核生体の一般的な翻訳開始方法は、キャップ依存性翻訳であり、主に翻訳開始因子を介してメッセンジャーRNA5´末端の特別なキャップ構造を識別することによって翻訳を開始し、当該タイプの翻訳方法は、線形メッセンジャーRNAにのみ存在する。さらに、非キャップ依存性の翻訳開始のタイプが存在し、主に特定のタンパク質因子とRNA要素と間の相互作用を介して翻訳を開始する。このタイプの翻訳は、線形または環状RNAで翻訳を開始することができる。一般的な非キャップ依存性の翻訳開始要素は、ウイルスRNAの特定の二次構造を有するいくつかの要素であり、宿主細胞の翻訳システムを借りて、自体に必要とするタンパク質を発現させることができる。例えば、脳心筋炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス等のRNAに含まれる内部リボソーム侵入部位(Internal Ribosome Entry Site:IRES)要素である。
【0003】
環状RNAは、線形RNAと異なる一本鎖閉ループRNA形態であり、その構造特異性のため、エキソヌクレアーゼによる分解を受けにくく、線形RNAよりも安定する。従って、環状RNA翻訳によるタンパク質の発現は、より持続的かつ効果的特徴があり、線形RNA翻訳を代替する重要な手フラグメントである。しかし、環状RNAの翻訳は、非キャップ依存性翻訳のトランスしか使用できないため、適切な非キャップ翻訳開始要素を設計および選択する方法は、当該応用の重要な技術である。一般的な手フラグメントは、ウイルスIRESを使用して環状RNAの翻訳を開始することであるが、病原性ウイルスRNAは、宿主インビボで免疫拒絶反応を引き起こす可能性があり、同時にウイルス由来のRNA要素には複雑なRNA二次構造および長い配列が含まれるため、ウイルスIRESに基づく発現システムの構築および後期の遺伝子治療応用を制限する。
【0004】
従って、非ウイルス由来の非キャップ依存性翻訳開始要素を開発することが当技術分野において緊急に必要とされる。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、非ウイルス由来の非キャップ依存性翻訳開始要素を提供することである。
【0005】
[課題を解決するための手段]
本発明の第1の態様は、環状RNA構築物を提供し、前記環状RNA構築物は、5’-3’方向から式Iに示される構造を有し、
TI-Z1-Z2(I)
式において、
TIは、翻訳開始要素であり、
Z1は、外因性タンパク質を発現させる発現カセットであり、
Z2は、なしまたは他の要素であり、
また、各「-」は、結合またはヌクレオチド接続配列であり、
ここで、TI要素の長さは、6~30nt、好ましくは、8~24nt、より好ましくは、10~20ntであり、
TI要素において、Aの含有量は、≧35%、好ましくは、≧45%、より好ましくは、≧60%であり、
TI要素において、Tの含有量は、≧20%、好ましくは、≧30%、より好ましくは、≧50%であり、
TI要素において、A+Tの含有量は、≧65%、好ましくは、≧80%、より好ましくは、≧90%であり、
TI要素において、Gの含有量は、≦35%、好ましくは、≦25%、より好ましくは、≦10%である。
【0006】
別の好ましい例において、前記環状RNA構築物は、環状メッセンジャーRNA構築物である。
別の好ましい例において、前記TI要素において、Aの含有量は、35~100%、好ましくは、45~100%、より好ましくは、60~100%である。
【0007】
別の好ましい例において、前記TI要素において、Tの含有量は、20~100%、好ましくは、30~100%、より好ましくは、50~100%である。
【0008】
別の好ましい例において、前記TI要素において、A+Tの含有量は、65~100%、好ましくは、80~100%、より好ましくは、90~100%である。
【0009】
別の好ましい例において、前記TI要素において、Gの含有量は、0~35%、好ましくは、0~25%、より好ましくは、0~10%である。
【0010】
別の好ましい例において、前記TI要素は、表1に示されるヌクレオチド配列からなる群から選択される一つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。
【0011】
【0012】
【0013】
別の好ましい例において、前記TI要素は、表1に示されるヌクレオチド配列の5’末端および/または3’末端に1~24個(好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、より好ましくは、1~6個)のヌクレオチドが追加され、TI要素の機能を有する。
【0014】
別の好ましい例において、前記TI要素のコード配列は、
(a)SEQ ID NO.:1~40のような配列に示されるポリヌクレオチド、
(b)ヌクレオチド配列がSEQ ID NO.:1~40に示される配列と≧75%(好ましくは≧85%、より好ましくは≧90%または≧95%または≧98%または≧99%)の相同性を有するポリヌクレオチド、
(c)SEQ ID NO.:1~40に示されるポリヌクレオチドの5’末端および/または3’末端で1~18個(好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個)のヌクレオチドを切断または追加するポリヌクレオチド、および
(d)(a)~(c)のいずれかに記載のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選択される。
【0015】
別の好ましい例において、前記TI要素は、SEQ ID NO.:1~40に示される配列を有する。
別の好ましい例において、前記TI要素のコード配列は、SEQ ID NO.:1~40に示される。
【0016】
別の好ましい例において、前記Z1要素は、終止コドンを含む。
別の好ましい例において、前記Z1要素は、終止コドンを含まない。
別の好ましい例において、前記外因性タンパク質のコード配列は、原核生物、真核生物に由来する。
【0017】
別の好ましい例において、前記外因性タンパク質のコード配列は、動物、植物、病原体に由来する。
別の好ましい例において、前記外因性タンパク質のコード配列は、哺乳動物、好ましくは霊長類動物、ヒトとマウスとラットとを含むげっ歯類動物に由来する。
【0018】
別の好ましい例において、前記外因性タンパク質のコード配列は、例えば、ルシフェリンタンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、蛍ルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNAシンテターゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体をコードする可変領域の外因性DNA、ルシフェラーゼ突然変異体のDNA、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
別の好ましい例において、前記外因性タンパク質は、ルシフェリンタンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、蛍ルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNAシンテターゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体の可変領域、ルシフェラーゼ突然変異、α-アミラーゼ、エンテロバクテリアA、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン前駆体、インターフェロンαA、インターロイキン-1β、リゾザイム、血清アルブミン、一本鎖抗体フラグメント(scFV)、トランスチレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
別の好ましい例において、前記Z2要素は、ポリA(PolyA)、マルチクローニング部位、アプタマー、miRNA結合部位、翻訳増強要素、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
別の好ましい例において、前記TI要素の一つまたは複数のアデニン(A)がメチル化される。
別の好ましい例において、前記環状RNAの構築物の配列は、SEQ ID NO.:61に示される。
【0022】
本発明の第2の態様は、ベクターを提供し、前記ベクターは、本発明の第1の態様に記載の構築物の発現カセットを含む。
別の好ましい例において、前記発現カセットは、第1のイントロンおよび第2のイントロンを含む。
【0023】
別の好ましい例において、前記第1のイントロンおよび第2のイントロンは、完全に相補であるか、または完全に相補的ではない。
別の好ましい例において、前記ベクターは、SEQ ID NO.:62に示される配列を有する。
【0024】
別の好ましい例において、前記第1のイントロンの配列は、SEQ ID NO.:63に示される。
別の好ましい例において、前記第2のイントロンの配列は、SEQ ID NO.:64に示される。
【0025】
本発明の第3の態様は、遺伝子操作された細胞を提供し、前記遺伝子操作された細胞のゲノムの一つまたは複数の部位には本発明の第1の態様に記載の核酸構築物が統合されるか、または前記遺伝子操作された細胞には本発明の第2の態様に記載のベクターが含まれる。
【0026】
別の好ましい例において、前記遺伝子操作された細胞は、原核細胞、真核細胞を含む。
別の好ましい例において、前記真核細胞は、高等真核細胞を含む。
【0027】
別の好ましい例において、前記遺伝子操作された細胞は、ヒト由来細胞(例えば、Hela細胞)、中国ハムスター卵巣細胞、昆虫細胞、小麦胚芽細胞、ウサギ網状赤血球、酵母細胞、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0028】
別の好ましい例において、前記遺伝子操作された細胞は、酵母細胞である。
別の好ましい例において、前記酵母細胞は、サッカロミセス、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)酵母、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
別の好ましい例において、前記クルイベロマイセス酵母は、クルイベロマイセスラクティス、クルイベロマイセスマルシアヌス、クルイベロマイセスドブリ、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
本発明の第4の態様は、
(a)本発明の第1の態様に記載の構築物と、および
(b)スプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、またはその組み合わせからなる群から選択される反応に必要な他の成分とを含む反応システムを提供する。
【0031】
別の好ましい例において、前記反応システムは、YTHDF3、PABPC1、および/またはhnRNPA1タンパク質をさらに含む。
別の好ましい例において、前記反応システムは、インビトロ反応システムである。
【0032】
本発明の第5の態様は、
(i)本発明の第4の態様に記載の反応システムを提供する段階と、および
(ii)適切な条件下で、段階(i)の合成システムをT1時間インキュベートして、前記タンパク質を合成する段階とを含むインビトロでタンパク質を合成する方法を提供する。
【0033】
別の好ましい例において、前記方法は、任意選択で、前記インビトロ反応システムから前記タンパク質を分離または検出する段階(iii)をさらに含む。
【0034】
別の好ましい例において、前記段階(ii)において、反応温度は、25~42℃、好ましくは、30~40℃、より好ましくは、35~37℃である。
【0035】
別の好ましい例において、前記段階(ii)において、反応時間T1は、1時間~20時間、好ましくは、2時間~12時間、より好ましくは、3時間~6時間である。
【0036】
本発明の第6の態様は、
(k1)第1の容器、および第1の容器内に位置する本発明の第1の態様に記載の構築物と、
(k2)第2の容器、およびスプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、またはその組み合わせからなる群から選択される第2の容器内に位置する反応に必要な他の成分と、ならびに
(kt)ラベルまたはマニュアルとを含むインビトロタンパク質合成用のキットを提供する。
【0037】
別の好ましい例において、前記第1の容器、第2の容器は、同じ容器または異なる容器である。
別の好ましい例において、前記キットは、
(k3)第3の容器、および第3の容器内に位置するYTHDF3、PABPC1、および/またはhnRNPA1タンパク質からなる群から選択的に選択される一つまたは複数の容器をさらに含む。
【0038】
本発明の第7の態様は、ハイスループットのインビトロタンパク質合成に使用される、本発明の第1の態様に記載の構築物、本発明の第2の態様に記載のベクター、本発明の第3の態様に記載の遺伝子操作された細胞、本発明の第4の態様に記載の反応システム、または本発明の第6の態様に記載のキットの用途を提供する。
【0039】
[発明の効果]
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】フローサイトメトリーによってスクリーニングされた様々な細胞集団を示す。
【
図2】翻訳開始要素の特徴配列の活性のウエスタンブロット検出を示す。
【
図3】アンチラーニングによって生成された翻訳開始要素の活性のウエスタンブロット検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
広範囲にわたる綿密な研究の結果、大量のスクリーニングおよび模索を通じて、特定の翻訳開始要素が予期せずに初めてスクリーニングされ、当該翻訳開始要素は、高い翻訳活性を有し、本発明の当該翻訳提案要素を環状RNA発現ベクターに挿入することにより、インビボおよびインビトロの両方で翻訳効率を有意に向上させることができる。これに基づいて、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0042】
第1のイントロン
本発明において、第1のイントロン3’末端には、第2のイントロンペアとなっているシス要素(長さ50bp~300bp)のフラグメントを含む、スプライスアクセプター部位が含まれる。
【0043】
配列は、次のとおりである。
GACTGAACATGGAGGAATTGAGGTTGGGTATTTCCCCTGAGGTAGGAAAAAGGCTGGGTCAGTTTCCCGTTAGCCGTCAAGTCCTCATCACATCTTTAAGCCTTCCATGCAGGATAAAGGGCTGCAGAGCTATTTTCAAATTGACATCAAACTGGATTTCTGTTGACTTCGTCTTCCCTTTTTAAGGTCCACAGAAGAAGATGGGAAGGAAAGAAGTCTGAGGGCATCTTATTTGCACTCCGCTGTCATTTCTAAGGAAGGCCTTTAATGCCAAATTCTCATCTTTTATGTCCCCACTAAATCCTAAGGTTCTTGAACTTCTGATCAGACAGCCAAAAAATGAACCATCAACTAGCTTAACCTAACATATGTGAGGATAGAGGACTGGGACAGCTCTCTGGGCCACTGGAGAGTCAGACAGGCCTGCCCTCTGTGTGACTTGACCGCGGTCTCTTTCTTCCAG(SEQ ID NO.:63)
第2のイントロン
本発明において、第2のイントロン5’末端には、第1のイントロンペアとなっているシス要素(長さ50bp~300bp)のフラグメントを含む、スプライスドナー部位が含まれる。
【0044】
配列は、次のとおりである。
GTAAGTCTCGACGGATCCCAAATAAGATGCCCTCAGACTTCTTTCCTTCCCATCTTCTTCTGTGGACCTTAAAAAGGGAAGACGAAGTCAACAGAAATCCAGTTTGATGTCAATTTGAAAATAGCTCTGCAGCCCTTTATCCTGCATGGAAGGCTTAAAGATGTGATGAGGACTTGACGGCTAACGGGAAACTGACCCAGCCTTTTTCCTACCTCAGGGGAAATACCCAACCTCAATTCCTCCATGTTCAG(SEQ ID NO.:64)
環状RNA構築物
本発明の第1の態様は、環状RNA構築物を提供し、前記環状RNA構築物は、5’-3’方向から式Iに示される構造を有し、
TI-Z1-Z2(I)
式において、
TIは、翻訳開始要素であり、
Z1は、外因性タンパク質を発現させる発現カセットであり、
Z2は、なしまたは他の要素であり、
また、各「-」は、結合またはヌクレオチド接続配列であり、
ここで、TI要素の長さは、6~30nt、好ましくは、8~24nt、より好ましくは、10~20ntであり、
TI要素において、Aの含有量は、≧35%、好ましくは、≧45%、より好ましくは、≧60%であり、
TI要素において、Tの含有量は、≧20%、好ましくは、≧30%、より好ましくは、≧50%であり、
TI要素において、A+Tの含有量は、≧65%、好ましくは、≧80%、より好ましくは、≧90%であり、
TI要素において、Gの含有量は、≦35%、好ましくは、≦25%、より好ましくは、≦10%である。
【0045】
好ましい実施形態において、前記TI要素において、Aの含有量は、35~100%、好ましくは、45~100%、より好ましくは、60~100%である。
【0046】
好ましい実施形態において、前記TI要素において、Tの含有量は、20~100%、好ましくは、30~100%、より好ましくは、50~100%である。
【0047】
好ましい実施形態において、前記TI要素において、A+Tの含有量は、65~100%、好ましくは、80~100%、より好ましくは、90~100%である。
【0048】
好ましい実施形態において、前記TI要素において、Gの含有量は、0~35%、好ましくは、0~25%、より好ましくは、0~10%である。
【0049】
本発明において、前記外因性タンパク質のコード配列の選択は、特に限定されず、通常、外因性タンパク質のコード配列は、ルシフェリンタンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、蛍ルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNAシンテターゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体をコードする可変領域の外因性DNA、ルシフェラーゼ突然変異体のDNA、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
外因性タンパク質のコード配列は、α-アミラーゼ、エンテロバクテリアA、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン前駆体、インターフェロンαA、インターロイキン-1β、リゾザイム、血清アルブミン、一本鎖抗体フラグメント(scFV)、トランスチレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ、またはその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードすることもできる。
【0051】
さらに、本発明の前記核酸構築物は、環状である。本発明の前記核酸構築物は、一本鎖である。本発明の前記核酸構築物は、RNAである。
好ましい実施形態において、本発明の環状RNA構築物の配列は、SEQ ID NO.:61に示される。
【0052】
GFPを例として使用される環状RNA配列:
5’-AAAAAAAAAAATCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAA-3’(SEQ ID NO.:61)
好ましい実施形態において、GFPを例として使用される環状RNA前駆体(第1のイントロンおよび第2のイントロンを含む)の配列は、次のとおりである。
【0053】
5’-GACTGAACATGGAGGAATTGAGGTTGGGTATTTCCCCTGAGGTAGGAAAAAGGCTGGGTCAGTTTCCCGTTAGCCG
TCAAGTCCTCATCACATCTTTAAGCCTTCCATGCAGGATAAAGGGCTGCAGAGCTATTTTCAAATTGACATCAAACTGGATTTCTGTTGACTTCGTCTTCCCTTTTTAAGGTCCACAGAAGAAGATGGGAAGGAAAGAAGTCTGAGGGCATCTTATTTGCACTCCGCTGTCATTTCTAAGGAAGGCCTTTAATGCCAAATTCTCATCTTTTATGTCCCCACTAAATCCTAAGGTTCTTGAACTTCTGATCAGACAGCCAAAAAATGAACCATCAACTAGCTTAACCTAACATATGTGAGGATAGAGGACTGGGACAGCTCTCTGGGCCACTGGAGAGTCAGACAGGCCTGCCCTCTGTGTGACTTGACCGCGGTCTCTTTCTTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAAAAAAAAAAAAATCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGTAAGTCTCGACGGATCCCAAATAAGATGCCCTCAGACTTCTTTCCTTCCCATCTTCTTCTGTGGACCTTAAAAAGGGAAGACGAAGTCAACAGAAATCCAGTTTGATGTCAATTTGAAAATAGCTCTGCAGCCCTTTATCCTGCATGGAAGGCTTAAAGATGTGATGAGGACTTGACGGCTAACGGGAAACTGACCCAGCCTTTTTCCTACCTCAGGGGAAATACCCAACCTCAATTCCTCCATGTTCAG-3’(SEQ ID NO.:62)
好ましい実施形態において、本発明のTI要素は、表1に示されるヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0054】
【0055】
【0056】
好ましい実施形態において、本発明のTI要素のコード配列は、SEQ ID NO.:1~40に示される。
本発明において、本発明を応用する環状RNA構築物は、高い翻訳活性を有し、インビボまたはインビトロでの翻訳効率を有意に増強することができる。
【0057】
反応システム
本発明は、
(a)本発明の第1の態様に記載の構築物と、および
(b)スプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、またはその組み合わせからなる群から選択される反応に必要な他の成分とを含む反応システムを提供する。
【0058】
別の好ましい例において、前記反応システムは、YTHDF3、PABPC1、および
/またはhnRNPA1タンパク質をさらに含む。
本発明において、反応システムは、インビトロまたはインビボであり得る。
【0059】
キット
本発明は、
(k1)第1の容器、および第1の容器内に位置する請求項1に記載の核酸構築物と、
(k2)第2の容器、およびスプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、またはその組み合わせからなる群から選択される第2の容器内に位置する反応に必要な他の成分と、ならびに
(kt)ラベルまたはマニュアルとを含むインビトロタンパク質合成用のキットを提供する。
【0060】
好ましい実施形態において、前記第1の容器および第2の容器は、同じ容器または異なる容器である。
外因性タンパク質のコード配列(外因性DNA)
本明細書に示されるように、「外因性タンパク質のコード配列」と「外因性DNA」という用語は、交換可能に使用され、両方ともタンパク質合成を指示するために使用される外因性DNA分子を指す。通常、前記DNA分子は、線形または環状である。前記DNA分子は、外因性タンパク質をコードする配列を含む。
【0061】
本発明において、前記外因性タンパク質をコードする配列の例としては、ゲノム配列、cDNA配列を含む(これらに限定されない)。前記外因性タンパク質をコードする配列は、プロモーター配列、5’非翻訳配列、3’非翻訳配列をさらに含む。
【0062】
本発明において、前記外因性DNAの選択は、特に限定されず、通常、外因性DNAは、ルシフェリンタンパク質、またはルシフェラーゼ(例えば、蛍ルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、アミノアシルtRNAシンテターゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、アクチン、抗体等をコードする可変領域の外因性DNA、ルシフェラーゼ突然変異体のDNA、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0063】
外因性DNAは、α-アミラーゼ、エンテロバクテリアA、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン前駆体、インターフェロンαA、インターロイキン-1β、リゾザイム、血清アルブミン、一本鎖抗体フラグメント(scFV)、トランスチレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ等をコードする外因性DNA、またはその組み合わせからなる群から選択されることもできる。
【0064】
好ましい実施形態において、前記外因性DNAは、緑色蛍光タンパク質(enhanced GFP、eGFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、大腸菌β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase、LacZ)、ヒトリジン-tRNAシンテターゼ(Lysine-tRNA synthetase)、ヒトロイシン-tRNAシンテターゼ(Leucine-tRNA synthetase)、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、マウスカタラーゼ(Catalase)、またはその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0065】
インビトロタンパク質合成方法
本発明は、
本発明の第2の態様に記載の反応システムを提供する段階(i)と、
適切な条件下で、段階(i)の合成システムをT1時間インキュベートして、前記タン
パク質を合成する段階(ii)とを含むインビトロタンパク質合成方法を提供する。
【0066】
別の好ましい例において、前記方法は、任意選択で、前記反応システムから前記タンパク質を分離または検出する段階(iii)をさらに含む。
【0067】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(1)本発明は、高い翻訳活性を有する同時に、配列構造および長さが制御可能な非ウイルス由来の新型人工的に合成された真核生物の翻訳開始要素を設計および合成するための一連の方法を初めて開発し、この翻訳開始要素で環状RNAの翻訳を駆動する。
【0068】
(2)本発明は、特定の翻訳開始要素をはいじめてスクリーニングし、当該翻訳開始要素は、非常に短く、わずか6~30ntであるが、高い翻訳活性があり、当該翻訳開始要素を環状RNA発現ベクターに挿入し、インビボおよびインビトロの両方で翻訳効率を有意に増強させることができる。
【0069】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
【0070】
特に明記されない限り、本発明の実施例で使用される材料および試薬は、すべて市販の製品である。
外因性タンパク質の例としては、GFPを取り上げる。
【0071】
実験方法
1.本発明のユニークな環状RNAレポーター遺伝子システム(当該環状RNAレポーター遺伝子は、翻訳開始要素の駆動下で発現して緑色蛍光タンパク質を生成することができる)に基づいて、数百万の異なる配列を含むライブラリーが構築され、異なる細胞集団が細胞トランスフェクションおよびフローサイトメトリーによってスクリーニングされる(陰性:緑色蛍光なし、陽性:異なる強度の緑色蛍光を有する)。収集された様々な細胞集団に対してアンプリコンシーケンスを実行し、計算生物学分析と組み合わせて陰性および様々な陽性細胞に含まれる配列情報を分析し、これらの配列情報から様々な長さの配列特徴を抽出する。
【0072】
2.これらの陰性および要請配列特徴に基づいて、非ウイルス由来の翻訳開始要素モジュールを生成するためのアンチニューラルネットワーク学習を通じる。
【0073】
3.生成された翻訳開始要素モジュールおよびモジュールの組み合わせ要素を環状RNA発現ベクターに挿入し、細胞トランスフェクションおよびウエスタンブロットによって翻訳開始要素の活性を検出する。
【0074】
実験結果
1.環状RNAに基づくハイスループットスクリーニングシステムは、異なる緑色蛍光強度を含む細胞集団(陽性)と蛍光のない細胞集団(陰性)を分離する。
【0075】
結果は、表1および
図1に示される。結果によると、環状RNAシステムは、緑色蛍光タンパク質を発現し、かつスクリーニングに使用できることを示す。同時に、当該システ
ムは、異なる蛍光強度を有する細胞集団を分離することができ、ライブラリーにおいて異なる挿入配列が環状RNAの翻訳開始に異なる影響を与えることを示す。
【0076】
2.表1に示されるように、スクリーニングによって得られた様々な細胞集団のアンプリコンシーケンスデータの計算生物学分析をマイニングすることにより得られた高緑色蛍光細胞集団に含まれる配列特徴、これらの配列は、通常、すべてRNA二次構造を形成しやすいGC塩基が少ない大量のAU塩基を含み、当該タイプの翻訳開始要素のコアモジュールは、構造に依存しないことを示す同時にウイルスIRESとは有意な差を有することも示し、環状RNAの非キャップ依存性翻訳を促進できる新しい要素である。
【0077】
【0078】
【0079】
3.細胞トランスフェクションおよびウエスタンブロットにより、翻訳開始要素の基本的な特徴配列の翻訳活性(6個の塩基の配列特徴)を検出し、結果は、
図2に示される。結果によると、これらの翻訳要素は、すべて翻訳開始機能を有するが、異なる配列に含まれる翻訳開始能力には差があることを示す。これは、これらの異なる配列特徴の組み合わせに基づいて、異なる活性を有する翻訳開始要素を取得することができることを示す。
【0080】
4.陽性および陰性細胞集団の特徴配列に基づくアンチラーニングによって生成された翻訳開始要素(例として12個の塩基を取り上げる)。それぞれ異なる翻訳活性強度を有する上位20個の配列をリストする。表2に示されるように、活性が高い翻訳開始要素は、基本的にATリッチな配列である。
【0081】
【0082】
5.アンチラーニングによって得られた異なる強度の翻訳開始要素を環状RNA発現ベクターに挿入し、細胞トランスフェクションおよびウエスタンブロットによってその翻訳活性を検出する。結果は、
図3に示される。結果によると、表2の強力な活性要素は、より多くのGFPタンパク質を翻訳および生成することができ、中程度および弱い活性要素も、一定の翻訳効率を有するが、強力な活性要素の翻訳効率よりも低いことを示す。
【0083】
結果によると、本発明のアンチラーニング方法は、翻訳開始要素の活性を効果的に推測することができ、当該方法を使用して、異なる長さおよび強度の翻訳開始要素を生成することができ、本発明の翻訳開始要素は、より高い翻訳活性を有して、翻訳効率を有意に増強させることができる。
【0084】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TI(翻訳開始要素)を含む環状RNA構築物であって、
前記環状RNA構築物は、5’-3’方向から式Iに示される構造を有し、
TI-Z1-Z2(I)
式において、
Z1は、外因性タンパク質を発現させる発現カセットであり、
Z2は、なしまたは他の要素であり、
また、各「-」は、結合であり、
ここで、前記TI要素の長さは、6~30ntであり、前記TI要素は、「TAATAG」、「AAATAG」、および「AACAAA」から選択される一つまたは複数のヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、前記構築物。
【請求項2】
前記TI要素の長さは、8~24nt、または10~20ntであることを特徴とする
請求項1に記載の環状RNA構築物。
【請求項3】
前記TI要素の一つまたは複数のアデニン(A)がメチル化されることを特徴とする
請求項1に記載の環状RNA構築物。
【請求項4】
ベクターであって、
前記ベクターは、請求項1に記載の環状RNA構築物を含むことを特徴とする、前記ベクター。
【請求項5】
遺伝子操作された細胞であって、
前記遺伝子操作された細胞のゲノムの一つまたは複数の部位に請求項1に記載の環状RNA構築物が統合されることを特徴とする、前記遺伝子操作された細胞。
【請求項6】
遺伝子操作された細胞であって、
請求項4に記載のベクターを含むことを特徴とする、前記遺伝子操作された細胞。
【請求項7】
反応システムであって、
請求項1に記載の環状RNA構築物と、スプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、およびその組み合わせからなる群から選択される反応に必要な他の成分とを含むことを特徴とする、前記反応システム。
【請求項8】
インビトロでタンパク質を合成する方法であって、
適切な条件下で、請求項7に記載の反応システムをT1時間インキュベートして、前記タンパク質を合成する段階を含むことを特徴とする、前記インビトロでタンパク質を合成する方法。
【請求項9】
インビトロでのタンパク質合成用のキットであって、
(k1)請求項1に記載の環状RNA構築物を含む第1の容器と、(k2)スプライスソーム、リボソーム、翻訳開始因子EIF4G2、翻訳開始因子EIF4A、翻訳開始因子EIF4B、およびその組み合わせからなる群から選択される合成反応に必要な他の成分とを含む第2の容器と、ならびに(k3)前記キットを使用するためのラベルまたはマニュアルとを含むことを特徴とする、前記キット。