(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116701
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】コラーゲンおよび微粉化胎盤組織からなる組成物ならびにその調製および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/50 20150101AFI20230815BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230815BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230815BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230815BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230815BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20230815BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230815BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20230815BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230815BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61K35/50
A61P17/02
A61K47/42
A61P21/00
A61L27/36 100
A61L27/24
A61K8/98
A61K8/65
A61Q19/00
A61K9/14
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098128
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2021028785の分割
【原出願日】2016-02-11
(31)【優先権主張番号】62/115,109
(32)【優先日】2015-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514156585
【氏名又は名称】ミメディクス グループ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クーブ,トマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マッセ,ミシェル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】創傷治癒、損傷した腱の修復、美容用途ならびに生体適合性材料および/または装置の被覆などの用途で有用な組成物を提供する。
【解決手段】見かけ上の均質性を有する一体化された混合物であるように、水、可溶性コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を含む組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
見かけ上の均質性を有する一体化された混合物であるように、水、可溶性コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分からなる組成物ならびにその調製方法に関する。特定の態様では、本発明の組成物は、創傷治癒、損傷した腱の修復、美容用途ならびに生体適合性材料および/または装置の被覆などの用途で有用である。
【背景技術】
【0002】
ヒトの胎盤膜(例えば、卵膜(amniotic membrane))は、1900年代初期から各種再建手術のために使用されている。この膜は基材として機能し、より一般には生体包帯または組織移植片と呼ばれている。そのような膜は、眼の処置や最近になって歯の再生処置、潰瘍の治療でも使用されており、接着障壁としても使用されている。典型的には、この膜は保存および貯蔵のために凍結または乾燥されている。
【0003】
胎盤組織は典型的には選択的な帝王切開手術後に回収される。胎盤は羊膜嚢からなり、臍帯および羊膜嚢を含むことが意図されている場合もある。羊膜嚢は羊水を含み、胎児の環境を保護する。
【0004】
一般に卵膜と呼ばれる羊膜嚢は、中間層とも呼ばれることがある薄い結合層によって分離された2つの主要な組織層、すなわち羊膜および絨毛膜を有する。羊膜は羊膜嚢の最も内側の層であり、羊水と直接接触している。組織学的評価により、羊膜の膜層が上皮細胞の単層、薄い細網線維(基底膜)、厚い緻密層および線維芽細胞層からなることが示されている。羊膜の線維層(すなわち基底膜)は、IV型、V型およびVII型コラーゲンと、フィブロネクチンおよびラミニンなどの細胞接着生理活性因子とを含む。
【0005】
羊膜(amnion membrane)などの胎盤組織は、外科的処置や創傷治癒処置のために使用される場合、細胞移動/増殖のための基質の提供や天然の生物学的障壁の提供などの固有の特性を提供し、非免疫原性であり、かつ数多くの生理活性分子を含む。胎盤組織は、数多くの用途において組織再生および治癒結果の向上を支援するための膜として使用することができる。羊膜は自己付着する能力を有するか、別の方法では、フィブリン接着剤または縫合などの異なる技術を用いて適所に固定することができる。
【0006】
胎盤組織移植片は、創傷ケアおよび美容を含む様々な医療用途で使用されている。但し、これらの組織移植片は、特に剪断力がよく生じる環境において柔軟性および/または凝集性が不十分である。従って、柔軟性および/または凝集性が向上した胎盤組織組成物を提供することが必要である。
【0007】
微粉化胎盤組織成分は以前に開示されており、腱、靱帯などの負傷した体構成要素への注射用水性懸濁液として使用されている。但し、そのような外傷を治癒させる際に授けられる有益な特性にも関わらず、体内に注射した際にその位置を保持する組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は少なくとも一つには、微粉化胎盤組織成分およびコラーゲンの水性懸濁液が柔軟性および/または凝集の向上を含む予期せぬ特性を有する固体塊を提供するという発見に基づいている。注射器からの放出時などの好適な剪断力および力の印加時にそのような特性を向上させることができることはさらに驚きであった。主成分(水、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織)の比を変更することにより、本組成物の所望のレベルの稠度および凝集性を目標にできることも予期せぬことであった。得られた固体塊組成物は、創傷治癒、腱の修復、美容用途および生体適合性材料および/または装置の被覆に特に適している。
【0009】
理論によって縛られるものではないが、水性コラーゲンと微粉化胎盤組織との組み合わせにより、いずれか一方の成分のみよりも組織再生および/または幹細胞動員のためのより有効な組成物が得られると考えられる。例えば、コラーゲンは本組成物が施用される領域に足場および/または充填剤を提供し、微粉化胎盤組織は生物学的活性(増殖因子、幹細胞動員など)を提供する。さらに、本明細書に記載されている組成物は美容用途に特に適している。
【0010】
本発明の一態様では、見かけ上の均質性を有する一体化された混合物であるように、水、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分からなる組成物が提供される。他の態様では、見かけ上の均質性を有し、かつその上、凝集性かつ柔軟性の塊であるコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分からなる組成物が提供される。
【0011】
本発明の一態様では、水性/ゼラチン状コラーゲン塊を凝集性かつ柔軟性の組成物に変換する方法が提供される。本方法は、十分な微粉化胎盤組織を水性コラーゲン材料に組み込む工程と、本組成物に十分な力および剪断力を加えて本組成物を凝集性かつ柔軟性の塊に変換する工程とを含む。
【0012】
本発明の組成物を損傷した腱などの創傷治癒を支援するために使用することができる。本発明の組成物を美容用途または生体適合性材料および/または装置の被覆のために使用することもできる。
【0013】
一実施形態では、微粉化胎盤組織成分は、微粉化羊膜、微粉化絨毛膜、微粉化ホウォートンゼリーまたはそれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、この微粉化成分は400μm未満の粒径を有する。
【0014】
一実施形態では、微粉化胎盤組織成分は、羊膜層および絨毛膜層を含む組織移植片を微粉化することにより得られ、ここでは、絨毛膜層は羊膜層の上に直接積層されており、かつさらに羊膜層は露出された基底膜およびインタクトな線維芽細胞成分を有する。別の実施形態では、微粉化胎盤組織は羊膜層および絨毛膜層を含み、ここでは、絨毛膜層は羊膜層の上に直接積層されており、かつさらに羊膜層はインタクトな上皮細胞層およびインタクトな線維芽細胞成分を有する。
【0015】
一実施形態では、コラーゲンはヒトのコラーゲン、例えばヒトの胎盤のコラーゲンである。一実施形態では、コラーゲンは約0.1%~約2%のコラーゲンを含む水性コラーゲン材料である。
【0016】
一実施形態では、微粉化胎盤組織:コラーゲンの重量比は約3:1~約100:1である。別の実施形態では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は約100:1~約300:1である。好ましい実施形態では、微粉化胎盤組織:コラーゲンの重量比は約50:1である。
【0017】
一実施形態では、本組成物は生理学的条件下、例えば約15℃~約45℃の温度範囲で凝集性かつ柔軟性である。
【0018】
別の実施形態では、本組成物は、水性/ゼラチン状コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を含む前駆体組成物を放出することにより得られる。さらに他の実施形態では、水性/ゼラチン状の塊を含む前駆体組成物はゲル、パテまたはペーストの形態である。
【0019】
本発明の利点は以下の説明に部分的に示されており、その説明から部分的に明らかになるか、あるいは以下に記載する態様の実施により知ることができる。以下に記載する利点は、特に添付の特許請求の範囲に示されている要素および組み合わせを用いて実現および達成される。なお、上記一般的な説明および以下の詳細な説明はどちらも単に例示および説明のためのものであり、それらに限定されない。
【0020】
本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、以下に記載するいくつかの態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本明細書に記載されている凝集性かつ柔軟性の水和コラーゲン組成物を調製するプロセスの概略フローチャートである。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、27ゲージ針から放出される際の水性コラーゲン組成物(
図2A)とコラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物(
図2B)とを示す。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織を含む組成物(
図3B)と比較した場合の水和コラーゲン組成物(
図3A)の引張強度の不足を示す。
【
図4】微粉化胎盤組織成分の水性コラーゲン材料への連続的添加を示す。パネルAでは、32.3mgの微粉化胎盤組織成分を1mLの0.469%(4.69mg)中和コラーゲンと混合した。パネルBでは、33.1mgの微粉化胎盤組織成分をパネルAの組成物と混合した。パネルCでは、27.7mgの微粉化胎盤組織成分をパネルBの組成物と混合した。パネルDでは、33.9mgの微粉化胎盤組織成分をパネルCの組成物と混合した。パネルEでは、33.2mgの微粉化胎盤組織成分をパネルDの組成物と混合した。パネルFでは、37.5mgの微粉化胎盤組織成分をパネルEの組成物と混合した。パネルGでは、36.3mgの微粉化胎盤組織成分をパネルFの組成物と混合した。パネルGの組成物は、1mLの水溶液中に計234mgの微粉化胎盤組織成分および4.69mgのコラーゲンを含む。
【
図5】
図4におけるパネルGの組成物に27ゲージ針を通して十分な力および剪断力を加えて、本組成物を凝集性かつ柔軟性の塊に変換する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について開示および説明する前に、以下に記載する態様は、特定の組成物、合成方法または使用に限定されず、従って、当然ながらそれらは異なり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は単に特定の態様を記述するためのものであり、本発明を限定するものではないということも理解されたい。
【0023】
本明細書および以下の特許請求の範囲では多くの用語に触れるが、それらは以下の意味を有するものとする。
【0024】
なお、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1つ(種)の(a)」「1つ(種)の(an)」および「前記(the)」は、文脈が明らかに別の意を示していない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1種の架橋剤」という場合、2種以上のそのような薬剤の混合物などを含む。
【0025】
「任意の」または「任意に」とは、その後に記載されている事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、その記載は、事象または状況が生じる場合およびそれらが生じない場合を含む。例えば、「任意の洗浄工程」という語句は、洗浄工程を行っても行わなくてもよいことを意味する。
【0026】
本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳類、例えば家畜およびヒトなどの霊長類を含むあらゆる脊椎動物生物である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0027】
本明細書で使用される「約」という用語は、値が±5%、例えば±5%、±2%または±1%まで変化し得ることを示す。
【0028】
「凝集性の(coherent)」「凝集性(coherency)」および「凝集(cohesion)」という用語は、少なくとも0℃~約40℃の温度での形成後にその均質な塊を保持する組成物を指すように本明細書で使用される。つまり、少なくとも0℃~約40℃の温度で生体外で維持されている場合、一旦形成された塊は個々の成分に分離したり、より小さい粒子に崩壊したりしない。別の言い方をすれば、本組成物は、対象の体内または体表に導入する前または間に破壊したり、裂けたり、崩壊したり、断片化しないような十分な凝集性を有する。導入の目的、使用される胎盤組織組成物の量、投与/導入様式および投与のための具体的な体部分に基づいて、当業者が好適な凝集性を決定することができる。
【0029】
本組成物は投与時に凝集性であるが、当然ながらコラゲナーゼやプロテアーゼなどの内在酵素がこれらの組成物を破壊する。破壊の間に、増殖因子および他の生物学的因子が微粉化胎盤組織から時間と共に放出され、それにより投与/導入位置においてそのような因子の徐放が得られる。
【0030】
「柔軟性の」および「柔軟性」という用語は、力を加えた際に形状変化する材料の能力を指すように本明細書では同義で使用される。別のものよりも柔軟性の高い材料は、より大きく形状変化することができる。本組成物の柔軟性の程度は、用途や使用される胎盤組織成分の量などによって異なる。より低い柔軟性を必要とする用途では、胎盤組織成分の量を減少させること(例えば、少なくとも100:1の微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比を含む組成物)により、その柔軟性を低下させる。より低い柔軟性を必要とする組成物では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比を約300:1まで増加させる。当業者であれば、具体的な用途に適した本組成物の最適な柔軟性を決定することができるであろう。コラーゲンと微粉化胎盤組織との比を変更することにより、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物の柔軟性を変更することができる。
【0031】
より高い柔軟性を必要とする用途では、微粉化胎盤組織成分の量を減少させること(例えば、100:1未満の微粉化胎盤組織成分:コラーゲン重量比を含む凝集性の組成物)により柔軟性を増加させる。微粉化胎盤組織の量が多くなる程、本組成物の柔軟性は低くなる。
【0032】
約1:1~約100:1未満の微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比を有する組成物はゲル状組成物を維持し、ここでは、ゲル状組成物は塊全体における微粉化胎盤組織成分の見かけ上の均質性を有する。明らかなように、各実施形態は特定の環境にあった使用を有する。例えば、見かけ上の均質性を有するゼラチン状の塊を関節に容易に注射することができ、凝集性かつ柔軟性の塊をシワなどの美容目的で使用することができ、凝集性であるが柔軟性の低い塊を火傷のための創傷ケア被覆として使用することができる。
【0033】
本明細書で使用される「見かけ上の均質性」という用語は、コラーゲンと胎盤組織成分との間に実質的な区別が認められず、かつ胎盤組織成分が全体に均一に分散されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を指す。例えば、拡大せずに可視化した際にコラーゲンと胎盤組織成分との間に実質的な区別が存在しなければよい。他の組成物では、拡大しながら可視化した際にコラーゲンと胎盤組織成分との間に実質的な区別が存在しなければよい。コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の見かけ上の均質性は、本組成物に加えられる力および/または剪断力により生じさせてもよい。例えば、モールドまたはプレスにおける圧力、注射器からの放出または当該分野において一般的な他の方法により、力および/または剪断力を加えることができる。コラーゲンと胎盤組織成分との間に実質的な区別が存在しなくなり、かつ胎盤組織成分が全体に均一に分散されるまで本組成物を混合することにより、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の見かけ上の均質性を達成してもよい。
【0034】
本明細書で使用される「羊膜」という用語は、中間組織層が実質的に除去されている単離された卵膜を含む。羊膜は好ましくは胎盤から得られる。いくつかの実施形態では、羊膜は臍帯から得られる。
【0035】
「胎盤組織」という用語は、限定されるものではないが、羊膜、絨毛膜および、臍帯を胎盤の一部とする場合にはホウォートンゼリー(但し胎盤全体ではない)などの胎盤のありとあらゆる周知の成分を指す。好ましい一実施形態では、胎盤組織は、臍帯成分(例えば、ホウォートンゼリー、臍帯静脈、臍帯動脈および周囲の膜)のいずれも含まない。好ましい実施形態では、典型的に、得られた組成物が中間層を含まないように羊膜と絨毛膜との間の中間層を除去することにより胎盤組織を修正する。
【0036】
上記から、胎盤組織の処理は、1つの処理された胎盤組織から次の組織への交差汚染を防止するための工程を行うことを必要とする。そのような工程は、制御された無菌環境にある中間準備地での滅菌用品および機器の組み立てを必要とし、本明細書に記載されている無菌の制御環境に導入するために胎盤組織を準備する。制御環境が製造フードであれば、滅菌用品を開封して、従来の無菌操作を用いてフードの中に置く。制御環境がクリーンルームまたは同様の無菌室であれば、滅菌用品を開封して、滅菌ドレープで覆われたカート上に置く。従来の無菌操作を用いて、全ての作業台を1枚の滅菌ドレープで覆い、従来の無菌操作を再度用いて、滅菌用品および処理機器を滅菌ドレープ上に置く。また、その後の非自己由来の胎盤組織(すなわち、異なる提供者からの胎盤組織)のための処理用機器の使用前に、最初の胎盤組織と共に利用されたあらゆる処理機器を従来の産業認可されている除染手順に従って除染しなければならず、ここでは、当該機器を取り出して除染し、次いで制御環境の中に再導入しなければならない。
【0037】
「胎盤組織移植片」という用語は、羊膜または絨毛膜層のいずれか一方および任意に胎盤から得られるか得られないさらなる層を含む胎盤組織のあらゆる組み合わせを指す。胎盤組織移植片は中間層を含まないことが好ましい。羊膜または絨毛膜の単層を使用することができる。但し、当該組織移植片の羊膜および/または絨毛膜の複数の層は典型的に脱水されて互いに積層されていることが好ましい。例えば、上皮層および/または線維芽細胞層の実質的に全てを除去することにより、羊膜を任意に部分的または完全に脱細胞化することができる。本発明に適した胎盤組織移植片の例としては、単なる一例として、米国特許第8,323,701号、第8,372,437号ならびに米国特許出願公開第2014/0052247号、第2014/0067058号、第2014/0205646号および第2013/0202676号に記載されているものが挙げられ、その各開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書で使用される「引張強度」という用語は、材料を破断するのに必要な最小量の長手方向応力によって測定した場合の長手方向応力に対する組成物の抵抗性を指す。当該技術分野で知られているあらゆる方法により引張強度を測定することができる。例えば、引張弾性係数としても知られているヤング率は、材料の剛性の尺度である。それは、フックの法則が適用できる応力範囲における単軸応力と単軸歪みとの比として定められている。インストロンモデル5565またはインストロン試験機モデル1122などの単軸の電気機械式材料試験システムを用いて引張強度を測定してもよい。
【0039】
本明細書で使用される「非自己由来の組織」という用語は、異なる胎盤提供者からの胎盤組織を指す。
【0040】
本明細書では、読者の便宜上タイトルまたはサブタイトルを使用している場合もあるが、それらは、本発明の範囲に影響を与えるものではない。さらに、本明細書で使用されるいくつかの用語については、以下により具体的に定義する。
【0041】
コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物ならびにその調製方法
水和コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分からなる凝集性かつ柔軟性の組成物が本明細書に記載されている。一態様では、本組成物は、水、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を含む。例えば以下に記載されている経路によって好ましい組成物を調製することができる。例えばPCT出願国際公開第2012112410号ならびに米国特許出願公開第2013/0344162号および第2014/0050788号に記載されている微粉化胎盤組織成分からそのような組成物を調製する。これらの出願の開示内容全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0042】
当然ながら「微粉化」という用語は、ミクロンおよびサブミクロンの粒径の胎盤組織粒子を含むことが意図されている。
【0043】
コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物として後で使用するために、胎盤材料を回収、処理および調製するための工程の特定の態様の概要が以下に記載されており、
図1に示されている。以下は、各個々の工程に関するより詳細な説明および考察である。最初に、胎盤組織を選択的な帝王切開手術後の同意患者から回収する(工程110)。この材料を従来の組織保存法で保存し、受付および評価に適した処理場所または施設に輸送する(工程120)。次いで、羊膜および絨毛膜の肉眼的処理、取扱いおよび分離を行う(工程130)。次いで、受け入れ可能な組織を除染(工程140)および脱水(工程145)する。次いで除染および脱水後に、胎盤組織成分(例えば、個々または移植片としての羊膜、ホウォートンゼリーおよび/または絨毛膜)を微粉化する(工程150)。微粉化後、微粉化胎盤組織成分を水性コラーゲンの中に組み込む(工程160)。各工程について以下に詳細に説明する。
【0044】
最初の組織回収(工程110)
微粉化胎盤組織を生成するために使用される成分は胎盤由来である。胎盤源は異なってもよい。一態様では、胎盤はヒトなどの哺乳類由来である。限定されるものではないが、ウシおよびブタなどを含む他の動物を本明細書で使用することができる。ヒトの場合、胎盤の回収は病院で行われ、そこでは、帝王切開分娩中に胎盤が回収される。提供者(出産間近の母親を指す)は、移植が可能である最も安全な組織を得るために設計された包括的スクリーニングプロセスを自発的に受ける。スクリーニングプロセスは好ましくは、従来の血清検査を用いて、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型に対する(抗HIV-1および抗HIV-2)抗体、B型肝炎ウイルスに対する(抗HBV)抗体、B型肝炎表面抗原(HBsAg)に対する抗体、C型肝炎ウイルスに対する(抗HCV)抗体、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型および2型に対する(抗HTLV-I、抗HTLV-II)抗体、CMVおよび梅毒について検査し、ヒトの免疫不全ウイルス1型(HIV-1)およびC型肝炎ウイルス(HCV)については核酸検査を行う。当業者には理解されるように、時間の経過または胎盤成分の使用目的に基づいて、より多くの試験、より少ない試験または異なる試験が望まれたり必要となったりすることがあるため、上記試験の列挙は単なる一例である。
【0045】
提供者の情報の見直しおよびスクリーニング試験の結果に基づいて、提供者が受け入れ可能であるか否かを判定する。さらに、分娩時に培養を行って、細菌、例えばクロストリジウム属菌または連鎖球菌の存在について判定する。提供者の情報、スクリーニング試験および分娩培養物が全て満足のいくものであれば(すなわち、どんなリスクも示さないか許容レベルのリスクを示すものであれば)、提供者は医長によって承認され、その組織標本は初期段階では、さらなる処理および評価にとって適格なものと指定される。
【0046】
上記選択基準を満たすヒトの胎盤を好ましくは生理食塩水を含む出荷用滅菌バッグに入れ、さらなる処理のために処理場所または実験室に出荷するために、湿った氷を含む容器に入れて保管する。
【0047】
スクリーニング試験の結果および分娩培養物を得る前に胎盤組織を回収した場合、そのような組織にラベルを付けて、隔離して保存する。そのような胎盤は、必要なスクリーニング評価および分娩培養後にのみ、さらなる処理について承認がなされるものであり、この承認は、当該組織が取扱いおよび使用にとって安全で、満足のいくものであり、かつ最終承認が医長から得られたことを示す。
【0048】
材料の受付および評価(工程120)
処理センターまたは実験室に到着するとすぐに、出荷物を開封し、出荷用滅菌バッグ/容器がなお密封され、かつ冷却剤の中にあるか、適切な提供者の書類が存在するか、そして、書類上の提供者番号が当該組織を含む出荷用滅菌バッグ上の番号と一致しているかを確認する。次いで、当該組織を含む出荷用滅菌バッグをさらなる処理のために準備が整うまで冷蔵庫に保管する。
【0049】
肉眼的組織処理(工程130)
さらに処理するために当該組織の準備が整ったら、胎盤組織を処理するために必要な滅菌用品を制御された(すなわち無菌)環境にある中間準備地で組み立て、制御環境への導入のために準備を整える。一態様では、胎盤を室温で処理する。制御環境が製造フードであれば、滅菌用品を開封して、従来の無菌操作を用いてフードの中に置く。制御環境がクリーンルームであれば、滅菌用品を開封して、滅菌ドレープで覆われたカート上に置く。従来の無菌操作を用いて、全ての作業台を1枚の滅菌ドレープで覆い、従来の無菌操作を再度用いて、滅菌用品および処理機器を滅菌ドレープ上に置く。
【0050】
従来の産業認可されている除染手順に従って処理機器を除染し、次いで制御環境内に入れる。この機器を戦略的に制御環境内に置いて、この機器を組織標本に近づけたり、不注意で組織標本によって汚染したりする確率を最小限に抑える。
【0051】
次に、胎盤を出荷用滅菌バッグから取り出し、制御環境内の滅菌処理用洗面器に無菌的に移す。滅菌洗面器は、室温またはその前後の高張生理食塩水(例えば、18%NaCl)を含む。胎盤を穏やかに揉んで血餅の分離を助け、胎盤組織を室温に到達させ、それにより、胎盤成分(例えば、羊膜および絨毛膜)の互いからの分離を容易にする。次いで、周囲温度まで温めた後(例えば、約10~30分後)、胎盤を滅菌処理用洗面器から取り出し、検査のために羊膜層を下に向けた状態で、処理トレイの上に平らに置く。
【0052】
変色、壊死組織片もしくは他の汚染物、臭いおよび損傷の兆候について胎盤を調べる。当該組織の大きさにも留意する。この時点で当該組織がさらなる処理のために受け入れ可能であるか否かについて判定する。
【0053】
次に、羊膜および絨毛膜を慎重に分離する。一態様では、この手順で使用される材料および機器は、処理トレイ、18%生理食塩水、4×4滅菌スポンジおよび2つの滅菌ナルゲン広口ボトルを含む。次いで、胎盤組織を詳しく調べて、羊膜を絨毛膜から分離することができる領域(典型的には角)を見つける。羊膜は、絨毛膜上に薄い不透明な層として現れる。
【0054】
1枚の滅菌ガーゼまたは綿棒を用いて羊膜の両側を穏やかに接触させて、線維芽細胞層を特定する。線維芽細胞層は試験材料に張り付く。羊膜を、基底膜層を下に向けて処理トレイの中に置く。鈍器、セルスクレーパーまたは滅菌ガーゼを用いて、あらゆる残留する血液も除去する。この工程は、ここでも羊膜を裂かないように適切な注意を払って行わなければならない。外見上、羊膜が滑らかで不透明な白色になったら、羊膜の洗浄は完了である。
【0055】
特定の態様では、線維芽細胞層を露出させるために、海綿層ともいう中間組織層を羊膜から実質的に除去する。除去された中間組織層の量に対して「実質的に除去する」という用語は、羊膜から90%超、95%超または99%超の中間組織層を除去するものとして本明細書では定義される。中間組織層を羊膜から剥がすことにより、これを行うことができる。あるいは、ガーゼまたは他の好適な拭き取り物で中間組織層を拭き取ることにより、中間組織層を羊膜から除去することができる。その後、得られた羊膜を、以下に記載する方法を用いて除染することができる。理論によって縛られたくはないが、特に移植片を生成するために複数の羊膜を使用する場合、中間層の除去により組織移植片の乾燥を加速することができる。
【0056】
本明細書に記載されている方法により、羊膜層の細胞成分の実質的に全てまたは一部の保持または除去が可能になる。細胞成分の除去は当該技術分野において「脱細胞」と呼ばれる技術である。脱細胞では一般に、上皮細胞および線維芽細胞を含む羊膜に存在する全ての細胞の物理的および/または化学的除去を行う。特定の態様では、羊膜は完全に脱細胞化されている(例えば、上皮細胞および線維芽細胞の除去)。他の態様では、上皮層またはその一部のみが除去されている。さらに他の態様では、線維芽細胞層のみが除去されている。任意で全ての細胞成分が存在する。
【0057】
特定の態様では、羊膜の基底層の一部または大部分を露出させるために、羊膜に存在する上皮層の一部または上皮層の実質的に全てが除去されている。除去された上皮の量に対して「実質的に除去された」という用語は、羊膜から上皮細胞の90%超、95%超または99%超を除去することとして本明細書では定義される。当該技術分野で知られている技術を用いて羊膜層に残っている上皮細胞の有無を評価することができる。例えば、上皮細胞層の除去後に、処理ロットからの代表的な組織試料を標準的な顕微鏡検査スライドの上に置く。次いで、組織試料をエオシンY染色法を用いて染色し、以下に記載するように評価する。次いで、この試料に覆いをして放置する。染色を可能にする適当な長さの時間が経過したら、拡大しながら目視観察を行う。
【0058】
一実施形態では、当該技術分野で知られている技術によって上皮層を除去することができる。例えば、セルスクレーパーを用いて羊膜から上皮層を削り取ることができる。他の技術としては、限定されるものではないが、当該膜の凍結、セルスクレーパーを用いた物理的除去、または上皮細胞の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤およびヌクレアーゼへの曝露が挙げられる。除去される上皮層の量は、0%(すなわち、上皮層は保持される)から実質的に全ての上皮層の除去までの範囲である。上皮層が保持されている列と混合された上皮層が除去された列を準備することにより、中間量の上皮層の除去を達成することができる。あるいは、その残りを保持しながら上皮層の一部を除去する。
【0059】
次いで、上皮が除去された組織を評価して、基底膜が損なわれておらずインタクトなままであるかを判定する。次のセクションに説明するように、処理工程の完了後であって当該組織を脱水する前にこの工程を行う。例えば、顕微鏡分析のために代表的な試料移植片を除去する。当該組織試料を標準的なスライドの上に置き、エオシンYで染色し、顕微鏡で見る。上皮が存在すれば、それは敷石状の細胞として現れる。
【0060】
化学的除染(工程140)
上記単離された胎盤組織成分を、以下に記載されている技術を用いて化学的に除染することができる。一態様では、羊膜および/または絨毛膜を室温で除染する。一態様では、工程130で生成された羊膜を、次の工程のために滅菌ナルゲン広口ボトルに入れることができる。一態様では、以下の手順を使用して羊膜を洗浄することができる。ナルゲン広口ボトルを無菌的に18%高張生理食塩水で満たし、密閉する(あるいは、上蓋で密閉する)。次いで、この広口ボトルを振盪台の上に置き、30~90分間撹拌し、これにより、羊膜から夾雑物をさらに除去する。振盪台が重要な環境(例えば、製造フード)内になければ、ナルゲン広口ボトルを制御/無菌環境に戻してから開ける。滅菌鉗子を用いるか、内容物を無菌的にデカントすることにより、18%高張生理食塩水を含むナルゲン広口ボトルから羊膜を穏やかに取り出し、空のナルゲン広口ボトルの中に入れる。次いで、羊膜を含むこの空のナルゲン広口ボトルを予め混合した抗生物質溶液で無菌的に満たす。一態様では、予め混合した抗生物質溶液は、硫酸ストレプトマイシンおよび硫酸ゲンタマイシンなどの抗生物質の混合物からなる。硫酸ポリミキシンBおよびバシトラシンなどの他の抗生物質または現在入手可能であるか将来入手可能な同様の抗生物質も好適である。さらに、羊膜の温度を変化させないように添加の際に抗生物質溶液が室温であることが好ましく、そうでなければ羊膜を損傷しまう。次いで、羊膜および抗生物質を含むこの広口ボトルまたは容器を密閉または閉鎖して振盪台の上に置き、好ましくは60~90分間撹拌する。抗生物質溶液中の羊膜のそのような振盪または撹拌により、当該組織から夾雑物および細菌をさらに除去する。任意に羊膜を界面活性剤で洗浄することができる。一態様では、羊膜を0.1~10%、0.1~5%、0.1~1%または0.5%のTriton-X洗浄溶液で洗浄することができる。
【0061】
振盪台が重要な環境(例えば、製造フード)内になければ、羊膜および抗生物質を含むこの広口ボトルまたは容器を重要な無菌環境に戻してから開ける。滅菌鉗子を用いて、この広口ボトルまたは容器から羊膜を穏やかに取り出し、滅菌水または通常の生理食塩水(0.9%生理食塩水)を含む滅菌洗面器に入れる。羊膜を滅菌水/通常の生理食塩水に入れて少なくとも10~15分間浸したままにする。羊膜を僅かに撹拌して、抗生物質溶液およびあらゆるその他の夾雑物を当該組織から除去するのを容易にしてもよい。少なくとも10~15分後に、羊膜は脱水およびさらなる処理が可能な状態となる。
【0062】
絨毛膜の場合、以下の例示的な手順を使用することができる。絨毛膜を羊膜から分離し、かつ血餅を線維層から除去した後、絨毛膜を18%生理食塩水で15~60分間すすぐ。第1のすすぎサイクルの間、溶液温度が約48℃になるように、実験室加熱板を用いて18%生理食塩水を滅菌容器内で加熱する。この溶液をデカントし、絨毛膜組織を滅菌容器に入れ、デカントした生理食塩水をこの容器に注ぎ入れる。この容器を密閉して振盪台の上に置き、15~60分間撹拌する。1時間の撹拌浴後に、絨毛膜組織を取り出し、さらなる15~60分間のすすぎサイクルのために、第2の加熱した撹拌浴の中に入れる。任意に、絨毛膜組織を羊膜の除染のために上に記載したように界面活性剤(例えば、Triton-X洗浄溶液)で洗浄することができる。この容器を密閉して、加熱せずに15~120分間撹拌する。次に、絨毛膜組織を、すすぎの度に激しく動かしながら、脱イオン水で洗浄する(250mLの脱イオン水×4)。当該組織を取り出し、1×PBSw/EDTA溶液を含む容器の中に入れる。この容器を密閉し、8時間の制御温度で1時間撹拌する。絨毛膜組織を取り出し、滅菌水ですすぐ。あらゆる残留する変色した線維性血液物質を絨毛膜組織から除去するために目視検査を行う。絨毛膜組織は、茶色がかった変色が全く認められないクリーム状の白色の外観を有していなければならない。
【0063】
脱水(145)
一態様では、羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリーまたはそれらの任意の組み合わせを処理して組織移植片(すなわち積層体)にすることができ、これをその後に微粉化する。別の態様では、個々の羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリー層を独立して脱水し、その後に単独または成分の混合物として微粉化することができる。一態様では、当該組織(すなわち、個々の膜または移植片)を化学的脱水により脱水した後に凍結乾燥する。一態様では、当該組織に存在する残留する水を実質的(すなわち、90%超、95%超または99%超)または完全に除去する(すなわち、当該組織を脱水する)のに十分な時間および量で羊膜、絨毛膜、および/またはホウォートンゼリーを極性有機溶媒と接触させることにより、化学的脱水工程を行う。溶媒はプロトン性であっても非プロトン性であってもよい。本明細書において有用な極性有機溶媒の例としては、限定されるものではないが、アルコール、ケトン、エーテル、アルデヒドまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。具体的な非限定的な例としては、DMSO、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、2-プロパノールまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一態様では、胎盤組織を室温で極性有機溶媒と接触させる。さらなる工程は不要であり、以下に述べるように当該組織を直接凍結乾燥することができる。
【0064】
化学的脱水後に、あらゆる残留する水および極性有機溶媒を除去するために、当該組織を凍結乾燥する。一態様では、羊膜、絨毛膜および/またはホウォートンゼリーを凍結乾燥前に好適な乾燥用固定具の上に置くことができる。例えば、羊膜の1つ以上のストリップを好適な乾燥用固定具の上に置くことができる。次に、絨毛膜を羊膜の上に置く。この態様では、羊膜/絨毛膜組織移植片を生成する。あるいは、羊膜のストリップを第1の乾燥用固定具の上に置くことができ、絨毛膜のストリップを第2の乾燥用固定具の上に置くことができる。乾燥用固定具は、平たい状態に完全に広げた胎盤組織を受け入れるのに十分な大きさであることが好ましい。一態様では、乾燥用固定具は、テフロン(登録商標)製またはデルリン製(デュポン社で発明および販売されているアセタール樹脂エンジニアリングプラスチックの商品名であり、かつジョージア州マリエッタにあるWerner Machine社からも市販されている)である。乾燥用固定具のために、湿組織を受け入れるように適当な形状に形成することができる耐熱性かつ耐切性の任意の他の好適な材料を使用することもできる。
【0065】
当該組織を乾燥用固定具の上に置いたら、乾燥用固定具を凍結乾燥器の中に入れる。当該組織を脱水するための凍結乾燥器の使用により、加熱脱水などの他の技術と比較してより効率的かつ徹底的に脱水することができる。一般に、胎盤組織における氷晶形成は当該組織内の細胞外基質を損傷することがあるため回避することが望ましい。凍結乾燥前に胎盤組織を化学的に脱水することにより、この問題を回避することができる。
【0066】
別の態様では、脱水工程において当該組織に熱を加える。一態様では、羊膜、絨毛膜および/またはホウォートンゼリーを好適な乾燥用固定具の上に置き(個々のストリップまたは上に述べた積層体のいずれかとして)、乾燥用固定具を滅菌Tyvex製(または同様の通気性かつ耐熱性の密封可能な材料の)脱水袋の中に入れて密閉する。通気性の脱水袋により、当該組織があまりに急速に乾燥するのを防止する。複数の乾燥用固定具を同時に処理する場合、各乾燥用固定具を、それ自体のTyvex製袋の中に入れるか、あるいは、その上に複数の乾燥枠を保持するように設計された好適な取付枠の中に置き、次いで、この枠全体を、より大きな単一の滅菌Tyvex製脱水袋の中に入れて密閉する。
【0067】
次いで、1つ以上の乾燥用固定具を含むTyvex製脱水袋を、約35~50℃に予め加熱されている非真空乾燥器または定温器の中に置く。Tyvex製袋を乾燥器の中に30~120分間置いたままにする。一態様では、当該組織を十分であるが過剰乾燥または燃焼させることなく乾燥させるために、加熱工程を約45℃の温度で45分間行うことができる。任意の特定の乾燥器のための具体的な温度および時間は、高度、乾燥器のサイズ、乾燥器温度の正確性、乾燥用固定具のために使用される材料、同時に乾燥する乾燥用固定具の数、乾燥用固定具の単一または複数の枠を同時に乾燥するか否かなどの他の因子に基づいて、較正および調節する必要がある。
【0068】
微粉化組成物の調製(工程150)
羊膜、絨毛膜および/またはホウォートンゼリー層を個々または組織移植片の形態で脱水したら、脱水した組織を微粉化する。本微粉化組成物は当該技術分野で知られている機器を用いて生成することができる。例えば、Retsch Oscillating Mill MM400を使用して、本明細書に記載されている微粉化組成物を生成することができる。本微粉化組成物中の材料の粒径も本微粉化組成物の用途によって異なってもよい。一態様では、本微粉化組成物は、500μm未満、400μm未満、300μm未満あるいは25μm~300μm、25μm~200μmまたは25μmまたは150μmの粒子を有する。特定の態様では、より大きな直径(例えば、150μm~350μm)を有する粒子が望ましい。当業者であれば、本発明の微粉化組成物中の材料の粒径および粒度範囲は平均的なものであることが分かるであろう。
【0069】
一態様では、機械的粉砕または破砕により微粉化を行う。別の態様では、低温粉砕により微粉化を行う。この態様では、粉砕プロセスの前および間に、当該組織を含む粉砕用広口ボトルを一体化式冷却システムからの液体窒素で絶えず冷却する。このようにして試料を脆化させ、揮発性成分を保存する。さらに、羊膜、ホウォートンゼリーおよび/または絨毛膜中のタンパク質の変性を最小限に抑えるか防止する。一態様では、Retsch社製のCryoMillをこの態様で使用することができる。
【0070】
本明細書に記載されている組成物を調製するために使用される胎盤組織成分の選択は、本組成物の最終用途によって異なってもよい。例えば、胎盤組織すなわち羊膜、絨毛膜、中間組織層、ホウォートンゼリーまたはそれらの任意の組み合わせなどの個々の成分を互いに混合し、その後に微粉化することができる。別の態様では、1種以上の胎盤組織、羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリー層またはそれらの任意の組み合わせ(すなわち積層体)からなる1種以上の組織移植片を微粉化することができる。さらなる態様では、1種以上の羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリー層またはそれらの任意の組み合わせからなる1種以上の組織移植片を、個々の成分としての羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリー層またはそれらの任意の組み合わせと混合してその後に微粉化することができる。
【0071】
本明細書に記載されている微粉化組成物を調製するために使用される異なる成分の量は、本微粉化組成物の用途によって異なってもよい。一態様では、本微粉化組成物が羊膜(中間組織層を含むか否かは問わない)およびホウォートンゼリーからなる場合、羊膜:ホウォートンゼリーの重量比は、10:1~1:10、9:1~1:1、8:1~1:1、7:1~1:1、6:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、2:1~1:1または約1:1である。別の態様では、本微粉化組成物が羊膜(中間組織層を含むか否かは問わない)および絨毛膜からなる場合、絨毛膜:羊膜の重量比は、10:1~1:10、9:1~1:1、8:1~1:1、7:1~1:1、6:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、2:1~1:1または約1:1である。
【0072】
例えば、粒子の懸濁液を形成することによる滅菌水中での微粉化材料の分別によって、粒径の分離を達成することができる。懸濁液の最上部は主に最小の粒子を含み、懸濁液の最下部は主に最も重い粒子を含む。分別により粒径分離が生じ、繰り返しの分別により微粉化粒子の様々な粒径への分離が生じる。
【0073】
分離された粒子を、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物の調製および所望の用途に最も適切であるような所望の粒径比で再び組み合わせることができる。当業者であれば分かるように、異なる粒径の粒子により異なる柔軟性および凝集性の本明細書に記載されている組成物が得られる。
【0074】
さらなる態様では、胎盤組織を架橋することができる。例えば、微粉化の前および/または後に、架橋剤を本組成物(例えば、個々の成分および/または組織移植片としての羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリーまたはそれらの任意の組み合わせ)に添加することができる。一般に架橋剤は非毒性かつ非免疫原性である。羊膜、ホウォートンゼリーおよび絨毛膜(またはそれらの組織移植片)を架橋剤で処理する場合、架橋剤は同じであっても異なってもよい。一態様では、羊膜、ホウォートンゼリーおよび絨毛膜を架橋剤で別々に処理することができ、あるいは別の方法では、羊膜、ホウォートンゼリーおよび絨毛膜を同じ架橋剤で一緒に処理することができる。特定の態様では、羊膜、ホウォートンゼリーおよび絨毛膜を2種以上の異なる架橋剤で処理することができる。羊膜、ホウォートンゼリーおよび絨毛膜を処理するための条件は異なってもよい。他の様態では、羊膜、ホウォートンゼリーおよび/または絨毛膜を微粉化することができ、微粉化組成物をその後に架橋剤で処理することができる。一態様では、架橋剤の濃度は、0.1M~5M、0.1M~4M、0.1M~3M、0.1M~2Mまたは0.1M~1Mである。
【0075】
架橋剤は一般に、タンパク質と反応して共有結合を生成することができる2つ以上の官能基を有する。一態様では、架橋剤はタンパク質に存在するアミノ基と反応することができる基を有する。そのような官能基の例としては、限定されるものではないが、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換アミノ基、カルボキシル基およびアルデヒド基が挙げられる。一態様では、架橋剤は、例えばグルタルアルデヒドなどのジアルデヒドであってもよい。別の態様では、架橋剤は、例えば(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドであってもよい。他の態様では、架橋剤は、酸化デキストラン、p-アジドベンゾイルヒドラジド、N-[α-マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、p-アジドフェニルグリオキサール一水和物、ビス-[β-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド、ビス-[スルホスクシンイミジル]スベレート、ジチオビス[スクシンイミジル]プロピオネート、ジスクシンイミジルスベレート、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、二官能性オキシラン(OXR)、またはエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)であってもよい。
【0076】
一態様では、糖は架橋剤であり、ここでは、糖は羊膜、ホウォートンゼリーおよび/または絨毛膜中に存在するタンパク質と反応して共有結合を形成することができる。例えば、糖はメイラード反応によりタンパク質と反応することができ、この反応は、還元糖によるタンパク質上のアミノ基の非酵素的グリコシル化により開始し、その後に共有結合の形成が生じる。架橋剤として有用な糖の例としては、限定されるものではないが、D-リボース、グリセロース、アルトロース、タロース、エリトロース(ertheose)、グルコース、リキソース、マンノース、キシロース、グロース、アラビノース、イドース、アロース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ツラノース、トレハロース、イソマルトースまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0077】
特定の態様では、本明細書に記載されている微粉化組成物を生物系または生物学的実体が耐えることができる任意の賦形剤で製剤化して、医薬組成物を生成することができる。そのような賦形剤の例としては、限定されるものではないが、水、ヒアルロン酸水溶液、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液および他の水性の生理学的平衡塩類溶液が挙げられる。不揮発性油、植物油(例えば、オリーブ油および胡麻油)、トリグリセリド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)などの非水性媒体も使用することができる。他の有用な製剤としては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの粘度増強剤を含有する懸濁液が挙げられる。賦形剤は、等張性および化学的安定性を向上させる物質などの微量の添加剤も含有することができる。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液およびトリス緩衝液が挙げられ、防腐剤の例としては、チメロサール、クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。特定の態様では、投与様式に応じてpHを変えることができる。さらに、本医薬組成物は、本明細書に記載されている化合物に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、防腐剤、界面活性剤などを含むことができる。
【0078】
コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物の調製(工程160)
胎盤組織を微粉化すると、微粉化胎盤組織成分は水性/ゼラチン状コラーゲンに組み込むことができる状態となる。一態様では、コラーゲンはヒトのコラーゲンであり、好ましい実施形態では、コラーゲンはヒトの胎盤のコラーゲンである。
【0079】
好ましくは、水性/ゼラチン状コラーゲンは可溶性(可溶化)コラーゲンである。可溶性コラーゲンは、高規則性の原線維中に存在する天然に生じるコラーゲンとは著しく異なる。コラーゲン分子は集合してコラーゲン細線維および原線維を形成する。次いで、それらは自然架橋結合処理を起こす。これらは不溶性の結晶性構造である。対照的に、水溶液中のコラーゲンは個々のコラーゲン分子として存在するか、集合してコラーゲン原線維を形成することができるが架橋されず、架橋されない限り再可溶化することができる(すなわち、コラーゲンが架橋されるまで溶解性は可逆的である)。
【0080】
本組成物は当該技術分野で知られている技術を用いて調製することができる。本明細書で使用される「組み込む」または「組み込まれた」という用語は、「取り込む」、「含む」、「吸収する」または「混合する」ことなどを意味する。例えば、一態様では、本明細書に記載されている微粉化胎盤組織成分をコラーゲンと混合することにより本組成物を調製する。「混合する」という用語は、化学反応または物理的相互作用が存在しないように2種以上の成分(例えば、コラーゲンと微粉化胎盤組織成分)を一緒に混合することとして定義される。「混合する」という用語は、2種以上の化合物の間(例えば、コラーゲンと微粉化胎盤組織成分との間)での化学反応または物理的相互作用も含む。
【0081】
当然のことながら、明記されている例における微粉化胎盤組織成分の実際の好ましい量は、本組成物の具体的な有用性、製剤化される特定の組成物、施用様式ならびに治療される特定の位置および対象によって変わる。所与の対象のための用量は、例えば適当な従来の製薬手順によって、例えば対象化合物と公知の薬剤との活性差の通常の比較法による従来の検討方法を用いて決定することができる。医薬化合物の用量を決定する技術分野における熟練した医師および製剤者であれば、標準的な推奨(医師用卓上参考書(Physician’s Desk Reference), Barnhart Publishing (1999))に従って用量を決定することに全く支障はない。一般に、使用される微粉化胎盤組織成分の量は、ゼラチン状水性コラーゲンを柔軟性かつ凝集性の組成物に変えるのに十分な量である。理論によって縛られるものではないが、微粉化胎盤組織成分が水和コラーゲンに含まれる水をその最大量まで吸い上げ、それによりゼラチン状組成物から柔軟性かつ凝集性の組成物への変換が生じると考えられる。
【0082】
本明細書に記載されている組成物を調製するために使用される微粉化胎盤成分およびコラーゲンの量は用途によって異なってもよい。一態様では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は約300:1~約1:1である。一態様では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は約100:1~約300:1である。そのような比により凝集性の塊が得られる。さらに、その塊の柔軟性は、使用される微粉化胎盤組織成分の量に反比例する。微粉化胎盤組織成分の量が多くなる程、その塊の柔軟性は低くなる。これにより当業者は使用目的に合わせて柔軟性の程度を選択することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は、約300:1~約50:1、約300:1~約75:1、約300:1~約100:1、約300:1~約150:1、約300:1~約200:1または約300:1~約250:1である。いくつかの実施形態では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は、約100:1~約300:1、約100:1~約250:1、約100:1~約200:1または約100:1~約150:1である。重量比は、端点を含む列挙範囲のいずれかに含まれるあらゆる値または部分範囲であってもよい。
【0084】
別の態様では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は1:1~100:1未満である。本組成物がその時点で微粉化胎盤組織成分中に含まれる増殖因子およびサイトカインによって増強されるという理解により、これらの比において本組成物のゼラチン状の性質は保持される。いくつかの実施形態では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は、約1:1~約100:1、約1:1~約90:1、約1:1~約80:1、約1:1~約70:1、約1:1~約60:1、約1:1~約50:1、約1:1~約40:1、約1:1~約30:1、約1:1~約20:1または約1:1~約10:1である。いくつかの実施形態では、微粉化胎盤組織成分:コラーゲンの重量比は、約10:1~約100:1、約20:1~約100:1、約30:1~約100:1、約40:1~約100:1、約50:1~約100:1、約60:1~約100:1、約70:1~約100:1、約80:1~約100:1または約90:1~約100:1である。重量比は、端点を含む列挙範囲のいずれかに含まれるあらゆる値または部分範囲であってもよい。
【0085】
当業者であれば、本組成物中のコラーゲンの量は、凝集性かつ柔軟性の組成物を形成する最大量まで及ぶことが分かるであろう。いくつかの態様では、水性コラーゲンは約0.1%~約2%のコラーゲンを含む。好ましい実施形態では、水性コラーゲンは約0.5%のコラーゲンを含む。いくつかの態様では、水性コラーゲンは、約0.1%~約1.8%のコラーゲン、約0.1%~約1.6%のコラーゲン、約0.1%~約1.5%のコラーゲン、約0.1%~約1.4%のコラーゲン、約0.1%~約1.2%のコラーゲン、約0.1%~約1.0%のコラーゲン、約0.1%~約0.8%のコラーゲン、約0.1%~約0.6%のコラーゲン、約0.1%~約0.5%のコラーゲン、約0.1%~約0.4%のコラーゲンまたは約0.1%~約0.2%のコラーゲンを含む。いくつかの態様では、水性コラーゲンは、約0.5%~約2%のコラーゲン、約0.8%~約2%のコラーゲン、約1%~約2%のコラーゲン、約1.2%~約2%のコラーゲン、約1.5%~約2%のコラーゲンまたは約1.8%~約2%のコラーゲンを含む。コラーゲンの量は、端点を含む列挙範囲のいずれかに含まれるあらゆる値または部分範囲であってもよい。
【0086】
特定の実施形態では、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を含む組成物は、微粉化胎盤組織成分の非存在下でコラーゲンの水溶液/ゼラチン状溶液と比較した場合、(例えば、注射器によって)十分な力および剪断力を加えた場合に柔軟性および凝集性を増加させた。当然のことながら、ゼラチン状から凝集性かつ柔軟性の組成物への組成物の変化を生じさせる任意の種類の力および/または剪断力が本発明によって包含される。好ましい実施形態では、力および剪断力は針の先端からの放出によって達成される。あるいは、プレスまたはモールドを同様に使用することができる。微粉化胎盤組織成分のコラーゲンへの添加により、注射後に持ち上げた場合に凝集性であり、かつ針に張り付くことができる27ゲージ針の先端から排出する組成物が得られることは驚きであり、かつ予期せぬことである(
図3Bを参照)。つまり、修正された胎盤組織は、より柔軟性であり、かつ/またはより凝集性の構造を形成するように放出された塊を変化させる。
【0087】
特定の実施形態では、本組成物は、生理学的条件下、例えば約15℃~約45℃の温度範囲において凝集性かつ柔軟性である。特定の実施形態では、本組成物は約37℃で(例えば、対象に注射する際に)ゲルであってもよい。理論によって縛られるものではないが、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は、コラーゲンを含まない微粉化胎盤組織成分の注射可能な組成物(例えば、AmnioFix(登録商標)またはEpiFix(登録商標))と比較した場合により長い期間にわたって注射部位に留まると考えられる。さらに、理論によって縛られるものではないが、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は、コラーゲンのみの組成物と比較した場合によりゆっくりと破壊すると考えられる。本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は、治癒を助けるより多くの増殖因子および他の因子を有することも期待される。
【0088】
特定の態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物にさらなる成分を添加してもよい。さらなる成分は、充填剤、生物活性剤、接着剤、安定化剤、緩衝液、医薬成分、着色剤、崩壊剤などであってもよい。コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を混合する前または後に、コラーゲンおよび/または微粉化胎盤組織成分にさらなる成分を添加してもよい。
【0089】
一態様では、充填剤を添加することができる。充填剤の例としては、限定されるものではないが、同種移植片心膜、同種移植片無細胞真皮、血管構造(すなわち臍帯静脈および動脈)および周囲の膜から分離されたホウォートンゼリー、精製された異種移植片I型コラーゲン、バイオセルロースポリマーまたはコポリマー、生体適合性合成ポリマーまたはコポリマーフィルム、精製された小腸粘膜下組織、膀胱の無細胞基質、死体筋膜(cadaveric fascia)またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0090】
別の態様では、微粉化の前および/または後に本組成物に生物活性剤を添加することができる。生物活性剤の例としては、限定されるものではないが、自己血液採取および分離製品のいずれかを用いた濃縮血小板または期限切れの保存血由来の濃縮血小板由来の天然に生じる増殖因子、骨髄穿刺液、濃縮されたヒト胎盤臍帯血幹細胞、濃縮された羊水幹細胞またはバイオリアクターで増殖された幹細胞由来の幹細胞あるいは抗生物質が挙げられる。生物活性剤を含む本組成物を目的の領域に施用すると、生物活性剤は時間をかけてその領域に送達される。従って、本明細書に記載されている微粉化粒子は、対象に投与する場合に生物活性剤および他の医薬品の送達装置として有用である。とりわけ、本微粉化組成物を調製するために使用される成分の選択ならびに当該粒子の粒径に基づいて放出プロファイルを修正することができる。
【0091】
他の態様では、1種以上の接着剤をコラーゲンおよび微粉化胎盤の組成物と混合することができる。そのような接着剤の例としては、限定されるものではないが、フィブリンシーラント、シアノアクリレート、ゼラチンおよびトロンビン製品、ポリエチレングリコールポリマー、アルブミンおよびグルタルアルデヒド製品が挙げられる。理論によって縛られたくはないが、より小さい微粉化粒子からなる組成物により、機械的負荷に耐えることができるより高密度な組成物が生成される。あるいは、より大きな微粉化粒子により、あまり密度が高くなく、かつ圧縮性を有する構築物が生成される。この特徴は、特に不規則な形状に適合する組成物を有することが望ましい場合に無負荷での空洞充填において有用であり得る。3次元構築物は本明細書に記載されている1種以上の生物活性剤を含むことができる。
【0092】
一態様では、着色剤を添加して、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物の位置を見つけて意図した治療部位に適切に配置するのを容易にする。別の態様では、崩壊剤により、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物が対象に導入された後に生体内で破壊または崩壊する速度を変更する。
【0093】
さらに別の態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を少なくとも1種の可塑剤と混合する。当業者であれば、可塑剤の生体適合性、生体内での胎盤組織移植片の分解または破壊速度に対する可塑剤の効果、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物の柔軟性および凝集性を促進する混合物の特性に対する可塑剤の効果に基づいて好適な可塑剤を選択するであろう。例示的な可塑剤としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、グルコースモノエステルおよび部分脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0094】
本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は、局所もしくは全身治療のどちらが望まれるかによって治療される領域に応じて多くの方法で投与することができる。一態様では、投与は注射によるものであってもよい。他の様態では、本組成物を対象に内服的に投与されるように製剤化することができる。他の様態では、本組成物を局所的に(例えば、眼内、膣内、直腸内、鼻腔内、経口または皮膚に直接)投与することができる。
【0095】
局所組成物の任意の調製
一態様では、本組成物を皮膚に直接塗布される局所組成物として製剤化することができる。局所投与のための製剤としては、乳濁液、クリーム、水溶液、油、軟膏、パテ、ペースト、ゲル、ローション、乳液および懸濁液を挙げることができる。一態様では、局所組成物は1種以上の界面活性剤および/または乳化剤を含むことができる。
【0096】
存在してもよい界面活性剤(または表面活性物質)は、アニオン性、非イオン性、カチオン性および/または両性の界面活性剤である。アニオン性界面活性剤の典型例としては、限定されるものではないが、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、グリセリンエーテルスルホン酸塩、α-メチルエステルスルホン酸塩、スルホ脂肪酸、アルキル硫酸塩、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、グリセリンエーテル硫酸塩、脂肪酸エーテル硫酸塩、ヒドロキシ混合エーテル硫酸塩、モノグリセリド(エーテル)硫酸塩、脂肪酸アミド(エーテル)硫酸塩、モノおよびジアルキルスルホコハク酸塩、モノおよびジアルキルスルホスクシンアミド酸塩(mono- and dialkyl sulfosuccinamates)、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびそれらの塩、脂肪酸イセチオン酸塩、脂肪酸サルコシン酸塩、脂肪酸タウリド(fatty acid tauride)、N-アシルアミノ酸、例えば、アシル乳酸塩、アシル酒石酸塩、アシルグルタミン酸塩およびアシルアスパラギン酸塩、アルキルオリゴグルコシド硫酸塩、タンパク質脂肪酸濃縮物(特にコムギ系植物産物)およびアルキル(エーテル)リン酸塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテルまたは混合ホルマール(formal)、任意に部分的に酸化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドまたはグルクロン酸誘導体、脂肪酸N-アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特にコムギ系植物産物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびアミンオキシドが挙げられる。両性もしくは双性イオン性界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート(aminoglycinate)、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインが挙げられる。
【0097】
一態様では、界面活性剤は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル硫酸塩、モノグリセリド硫酸塩、モノおよび/またはジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸イセチオン酸塩、脂肪酸サルコシン酸塩、脂肪酸タウリド、脂肪酸グルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、エーテルカルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、脂肪酸グルカミド(fatty acid glucamide)、アルキルアミドベタイン、アンホアセタール(amphoacetal)および/またはタンパク質脂肪酸濃縮物であってもよい。
【0098】
双性イオン性界面活性剤の例としては、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えば、いずれの場合もアルキルまたはアシル基中に8~18個の炭素原子を有するココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネートおよび2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン、ならびにココアシルアミノエチルヒドロキシエチル-カルボキシメチルグリシネートなどのベタインが挙げられる。
【0099】
一態様では、乳化剤は、8~22個の炭素原子を有する直鎖脂肪アルコール、12~22個の炭素原子を有する脂肪酸、アルキル基中に8~15個の炭素原子を有するアルキルフェノールおよびアルキルラジカル中に8~22個の炭素原子を有するアルキルアミンへの2~30モルのエチレンオキシドおよび/または0~5モルのプロピレンオキシド付加物、アルキル(アルケニル)ラジカル中に8~22個の炭素原子を有するアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドおよびそれらのエトキシ化類似体、ヒマシ油および/または水添ヒマシ油への1~15モルのエチレンオキシド付加物、ヒマシ油および/または水添ヒマシ油への15~60モルのエチレンオキシド付加物、グリセリンおよび/またはソルビタンと12~22個の炭素原子を有する不飽和直鎖もしくは飽和分岐鎖脂肪酸および/または3~18個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸との部分エステルおよびそれらの1~30モルのエチレンオキシド付加物、ポリグリセリン(平均自己縮合度:2~8)、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)およびポリグルコシド(例えば、セルロース)と12~22個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の直鎖もしくは分岐鎖脂肪酸および/または3~18個の炭素原子を有するヒドロキシカルボン酸との部分エステルおよびそれらの1~30モルのエチレンオキシド付加物、ペンタエリトリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステルおよび/または6~22個の炭素原子を有する脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオールの混合エステル、好ましくはグリセリンまたはポリグリセリン、モノ、ジおよびトリアルキルリン酸塩およびモノ、ジおよび/またはトリ-PEGアルキルリン酸塩およびそれらの塩、羊毛蝋アルコール、ポリシロキサン-ポリアルキル-ポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体、ならびにブロックコポリマー、例えばジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール-30から選択される非イオン性(nonionogenic)界面活性剤であってもよい。一態様では、乳化剤は、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールである。別の態様では、乳化剤は、分子量100Da~5,000Da、200Da~2,500Da、300Da~1,000Da、400Da~750Da、550Da~650Daまたは約600Daを有するポリエチレングリコールである。
【0100】
別の態様では、乳化剤はポロキサマーである。一態様では、ポロキサマーは、ポリオキシエチレン(例えば、ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖が横に配置されているポリオキシプロピレンの中央疎水性鎖(例えば、(ポリ(プロピレンオキシド))からなる非イオン性トリブロックコポリマーである。一態様では、ポロキサマーは、式:HO(C2H4O)b(C3H6O)a(C2H4O)bOHを有する。
【0101】
式中、aは10~100、20~80、25~70、25~70または50~70であり、bは5~250、10~225、20~200、50~200、100~200または150~200である。別の態様では、ポロキサマーは、2,000~15,000、3,000~14,000または4,000~12,000の分子量を有する。本明細書において有用なポロキサマーは、BASF社によって製造されているプルロニック(登録商標)という商品名で販売されている。本明細書において有用なポロキサマーの非限定的な例としては、限定されるものではないが、プルロニック(登録商標)F68、P103、P105、P123、F127およびL121が挙げられる。
【0102】
別の態様では、乳化剤は1種以上の脂肪アルコールからなる。一態様では、脂肪アルコールは直鎖もしくは分岐鎖C6~C35脂肪アルコールである。脂肪アルコールの例としては、限定されるものではないが、カプリルアルコール(1-オクタノール)、2-エチルヘキサノール、ペラルゴンアルコール(1-ノナノール)、カプリンアルコール(1-デカノール、デシルアルコール)、ウンデシルアルコール(1-ウンデカノール、ウンデカノール、ヘンデカノール)、ラウリルアルコール(ドデカノール、1-ドデカノール)、トリデシルアルコール(1-トリデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール)、ミリスチルアルコール(1-テトラデカノール)、ペンタデシルアルコール(1-ペンタデカノール、ペンタデカノール)、セチルアルコール(1-ヘキサデカノール)、パルミトレイルアルコール(palmitoleyl alcohol)(シス-9-ヘキサデセン-1-オール)、ヘプタデシルアルコール(1-n-ヘプタデカノール、ヘプタデカノール)、ステアリルアルコール(1-オクタデカノール)、イソステアリルアルコール(16-メチルヘプタデカン-1-オール)、エライジルアルコール(9E-オクタデセン-1-オール)、オレイルアルコール(シス-9-オクタデセン-1-オール)、リノレイルアルコール(9Z,12Z-オクタデカジエン-1-オール)、エライドリノレイルアルコール(9E,12E-オクタデカジエン-1-オール)、リノレニルアルコール(9Z,12Z,15Z-オクタデカトリエン-1-オール)、エライドリノレニルアルコール(9E,12E,15-E-オクタデカトリエン-1-オール)、リシノレイルアルコール(12-ヒドロキシ-9-オクタデセン-1-オール)、ノナデシルアルコール(1-ノナデカノール)、アラキジルアルコール(1-エイコサノール)、ヘンエイコシルアルコール(heneicosyl alcohol)(1-ヘンエイコサノール)、ベヘニルアルコール(1-ドコサノール)、エルシルアルコール(シス-13-ドコセン-1-オール)、リグノセリルアルコール(1-テトラコサノール)、セリルアルコール(1-ヘキサコサノール)、モンタニルアルコール、クルイチルアルコール(cluytyl alcohol)(1-オクタコサノール)、ミリシルアルコール、メリシルアルコール(1-トリアコンタノール)、ゲジルアルコール(geddyl alcohol)(1-テトラトリアコンタノール)またはセテアリルアルコールが挙げられる。
【0103】
一態様では、当該局所組成物を生成するために使用される担体は、ポリエチレンと1種以上の脂肪アルコールとの混合物である。例えば、担体は、50重量%~99重量%、75重量%~99重量%、90重量%~99重量%または約95重量%のポリエチレングリコールと、1重量%~50重量%、1重量%~25重量%、1重量%~10重量%または約5重量%の脂肪アルコールとからなる。さらなる態様では、担体はポリエチレングリコールとセチルアルコールとの混合物である。
【0104】
当該局所組成物は、典型的にそのような組成物中に存在するさらなる成分も含むことができる。一態様では、当該局所組成物は、脂肪、蝋、真珠光沢蝋、増ちょう剤(bodying agent)、増粘剤、過脂肪剤、安定化剤、ポリマー、シリコーン化合物、レシチン、リン脂質、生体活性成分、脱臭剤、抗菌剤、制汗剤、膨潤剤、防虫剤、ヒドロトロープ、可溶化剤、防腐剤、香油および染料などの成分のうちの1種以上を含むことができる。これらの成分のそれぞれの例は米国特許第8,067,044号に開示されており、これらの成分に関するその開示内容は参照により組み込まれる。
【0105】
本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物からなる局所組成物を、組成物を担体と混合することにより調製することができる。担体が2種以上の成分からなる事例では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物の添加前に当該成分を互いに混合することができる。当該局所組成物中に存在するコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物の量は用途によって異なってもよい。一態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は、当該局所組成物の0.5重量%~20重量%、1重量%~10重量%、2重量%~5重量%または約3重量%である。
【0106】
調製後、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を直接使用するか、貯蔵および後での使用のために適切に包装することができる。
【0107】
3次元構築物の任意の調製
一態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を調製した後に、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を特定の寸法を有するモールドに充填することにより、成形された3次元構築物を生成してもよい。
【0108】
一態様では、コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分を上記架橋剤で処理し、次いで特定の寸法を有するモールドの中に入れる。あるいは、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物をモールドの中に入れ、その後に架橋剤で処理する。一態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を架橋結合なしで成形する。一態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を手で任意の所望の形状に形成する。
【0109】
組織同種移植片の任意の調製
一態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を調製した後、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を生体適合性材料および/または装置の1つ以上の側面に塗布して、被覆された装置を作製してもよい。
【0110】
一態様では、生体適合性材料は、限定されるものではないが、生体適合性金属(例えば、チタン合金、ステンレス鋼、コバルト-クロム合金およびニッケル-チタン合金)などの非吸収性材料から作製することができる生体適合性メッシュである。別の態様では、生体適合性メッシュの層は、限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、高分子量ポリオレフィン、非被覆モノフィラメントポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、1つ以上の二重結合を有する任意のポリマーまたは脂肪族炭化水素、任意の他の適当な多孔性材料、あるいは曲げるかそれ以外の方法で形作ることができる任意の他の適当な多孔性材料などの非吸収性ポリマー材料で作製することができる。
【0111】
別の態様では、生体適合性メッシュは、限定されるものではないが、ポリグリコール酸、ポリL-乳酸(PLLA)、ポリD,L-乳酸(PDLA)、トリメチレンカーボネート(TMC)、ポリε-カプロラクトン、ポリP-ジオキサノン、ラクチドおよびグリコリドのコポリマー(PLGA)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、コラーゲン、ヒアルロン酸、絹、バイオセルロース、他のタンパク質系ポリマー、多糖類、ポリ(DTEカルボナート)(poly(DTE carbonate))、ポリアリレート、PLLA、PLDAまたはPLGAとTMCとの混合物およびこれらのポリマーの他の組み合わせなどの合成もしくは生体再吸収性ポリマー材料からなっていてもよい。
【0112】
一態様では、生体適合性メッシュは、強化された組織移植片を形成するために、片側または両側が胎盤組織移植片および/または本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物で被覆されている。強化された胎盤組織同種移植片および作製方法の例は、米国特許出願公開第2014/0067058号に記載されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
いくつかの態様では、本開示は、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物の1つ以上の層と組み合わせた胎盤組織の1つ以上の層を含む組織移植片に関する。一実施形態では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物を含む胎盤組織移植片は、羊膜の1つ以上の層、絨毛膜の1つ以上の層または羊膜および絨毛膜の1つ以上の層を含む胎盤組織移植片である。本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物を含めるように修正することができる組織移植片の例は、米国特許第8623421号、第8709494号、第8357403号、第8409626号および第9186382号ならびに米国特許出願公開第2014/0205646号、第2014/0343688号および第2013/020676号に記載されており、その各開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
コラーゲンおよび微粉化胎盤組織の組成物の用途
本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を、対象において創傷治癒、損傷した腱の修復および美容用途に関わる数多くの医療用途で使用することができる。本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を生体適合性材料および/または装置の被覆のために使用することもできる。
【0115】
一態様では、最初に本組成物に十分な力および剪断力を加えることなく、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を様々な医療用途で使用する。他の態様では、様々な医療用途で使用する前に本組成物に十分な力および剪断力を加えて本組成物を凝集性かつ柔軟性の塊に変換する。
【0116】
一態様では、本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は創傷治癒を高めたり改善したりする際に有用である。毎日のように医師に診せられる創傷の種類は多様である。急性創傷は外科的介入、外傷および火傷によって引き起こされる。慢性創傷は、そうではない健康な個体における治癒と比較して塞がりが遅い創傷である。患者を悩ます慢性創傷の種類の例としては、糖尿病性足部潰瘍、静脈性下腿潰瘍(venous leg ulcer)、褥瘡性潰瘍、動脈性潰瘍および感染する手術創傷が挙げられる。
【0117】
外傷性創傷を治療する際の医師の目標は、創傷を治癒させると共に、最小の瘢痕形成および感染により患者に創傷領域における自然な機能を保持させることである。創傷が感染した場合、それは肢または生命の喪失に繋がる恐れがある。火傷などの大きな創傷は、大きな表面積が環境(および、ひいては感染リスク)に曝されるので特に治療が難しく、潜在的に有痛性で衰弱性の瘢痕となりやすい。慢性創傷を扱う医師は、創傷をできる限り迅速に閉鎖して、肢または生命の喪失に繋がる恐れのある感染リスクを最小に抑えることに主に気を配っている。慢性創傷は、治癒カスケード(healing cascade)を複雑にしたり遅らせたりする併存症を有する患者における創傷である。一態様では、本明細書に記載されている組成物は、必須創傷治癒因子、細胞外基質タンパク質および炎症性メディエーターを送達して炎症を抑え、治癒を高め、かつ瘢痕組織形成を減少させるのを助ける組織再生テンプレートとして機能することができる。
【0118】
本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は創傷包帯としても機能する。本組成物を皮膚創傷の上に置いて(そうしなければ皮膚創傷は環境に露出される)、それにより障壁として機能させてもよい。本組成物は創傷の大部分が覆われるように創傷と実質的に直接接触して、十分な表面積を維持してもよい。従って、本組成物は、必要に応じて生理活性因子や足場などを提供することができる。「実質的に直接接触」とは創傷との接触を指すが、創傷を治癒させるのに有益であると臨床医によって認められた場合には、非限定的な例として滲出液、薬物、生体適合性メッシュまたは任意の他の物品または薬剤の上に配置してもよい。
【0119】
一態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を損傷した腱を修復するために使用することができる。本組成物を損傷した腱の上に置いて、治癒中の腱の上での瘢痕形成を防止することができる。本組成物は修復が上手く進むように、保護的封鎖環境も提供することができる。
【0120】
他の態様では、本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を、例えば美容整形手術などの美容用途で使用することができる。瘢痕修正手術は、瘢痕の外観を改善または減少させるための手術である。それは機能の回復、および外傷、創傷または過去の手術によって引き起こされた皮膚の変化(醜い外観)の補正も行う。瘢痕組織は、外傷または手術後に皮膚が治癒するにつれて形成される。瘢痕化の量は創傷の大きさ、深さおよび位置、人の年齢、遺伝ならびに皮膚の色(色素沈着)などの皮膚特性によって決定され得る。手術では、瘢痕の切除およびその欠損部の注意深い閉鎖を行う。一態様では、本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を、瘢痕の治癒および予防ならびに軟組織の縁の丁寧な近似(careful approximation)が達成不可能であり、瘢痕組織が生じ得るケロイドまたは癌の修正(revision)/除去を支援するためのパッチとして使用することができる。さらに、微粉化胎盤組織成分の抗炎症性が治癒を高めることもできる。
【0121】
別の態様では、本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物は、対象におけるシワの形成を予防または減少するのを助けることができる。さらに別の態様では、本組成物は、レーザーリサーフェシング後に皮膚の表面薄層の再上皮化を促進することができる。本明細書に記載されている組成物を単独で使用したり、例えば保湿剤、ビタミン(A)クリーム、ビタミン(E)、組換え型ヒアルロン酸またはヒト動物および/または天然の油(例えば、ティーツリー油)などの他の皮膚治療法と併用したりすることができる。約20μm~約100μmまたは約25μm~約75μmの粒径を有する微粉化胎盤組織成分微小粒子を含む組成物は、対象におけるシワの形成の予防または減少などの美容用途において有効であり得る。
【0122】
一実施形態では、本組成物を、例えば、シワ、小ジワ、擦過、瘢痕などの美容的欠陥部位またはその近位に注射または塗布する。本明細書に記載されている組成物を用いて治療することができるさらなる美容的欠陥は、例えば米国特許出願公開第2015/0086634号に記載されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
理論によって縛られるものではないが、本発明の組成物は注射部位または塗布部位により長く留まり、コラーゲンまたは微粉化胎盤組織成分のいずれか単独の組成物よりもゆっくりと分解すると考えられる。
【0124】
別の態様では、本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を、例えば、埋込型医療装置などの生体適合性材料および/または装置に塗布することができる。埋込型医療装置を1種以上の本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物で被覆して、生体組織で使用した場合に有益な特性(例えば、創傷治癒の向上および瘢痕形成の予防)を有する装置を提供することができる。
【0125】
本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物で被覆することができる好適な埋込型装置の例としては、限定されるものではないが、冠動脈ステント、末梢ステント、インプラント(例えば、歯科用、整形外科用、脊椎用)、カテーテル、動静脈グラフト、バイパスグラフト、ペースメーカーおよび除細動器リード線、血管吻合クリップ、動脈閉鎖装置、卵円口開存閉鎖装置および薬物送達バルーンが挙げられる。埋込型装置は、生体安定性(biostable)および生体吸収性材料などのあらゆる好適な生体適合性材料で作製することができる。好適な生体適合性金属材料としては、限定されるものではないが、ステンレス鋼、タンタル、チタン合金(ニチノールを含む)およびコバルト合金(コバルト-クロム-ニッケルおよびコバルト-クロム-タングステン合金を含む)が挙げられる。好適な生体適合性非金属材料としては、限定されるものではないが、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリオレフィン(すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、非吸収性ポリエステル(すなわち、ポリエチレンテレフタラート)および生体吸収性脂肪族ポリエステル(すなわち、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、パラ-ジオキサノン、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトンなどのホモポリマーおよびコポリマーおよびこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0126】
他の態様では、本明細書に記載されているコラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を創傷治癒装置に塗布することができる。例えば、創傷治癒装置は、包帯、ラップ、ガーゼ、縫合糸または創傷を治療するために使用されるあらゆる他の装置であってもよい。これらの態様では、本コラーゲンおよび微粉化胎盤組織成分の組成物を当該装置に被覆し、かつ/またはその中に含浸させることができる。他の態様では、創傷治癒装置は創傷治癒用途で使用される膜または移植片であってもよく、ここでは本微粉化組成物が膜または移植片の1つ以上の側面に被覆されている。例えば、本微粉化組成物の前駆体である本明細書に記載されている組織移植片のいずれかを本組成物で被覆することができる。
【実施例0127】
以下の実施例は、本明細書に記載され、かつ特許請求されている組成物および方法の調製および評価方法に関する完全な開示および記載を当業者に提供するために示されており、それらは単に例示であって、本発明者らが彼らの発明であるとみなしているものの範囲を限定するものではない。数(例えば、量、温度など)に関して正確性を保証するように努めたが、若干の誤差および偏差は考慮されるべきである。特に明記しない限り、部とは重量部であり、温度は摂氏温度(℃)または周囲温度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。反応条件、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力およびその他の反応範囲ならびに本記載のプロセスで得られる生成物純度および収率を最適化するために使用することができる条件の数多くの変形および組み合わせが存在する。そのようなプロセス条件を最適化するために、合理的かつ日常的な実験法のみが必要とされる。
【0128】
実施例1
米国特許出願公開第2013/0344162号に記載されているプロセス(その開示内容全体が参照により組み込まれる)によって、本明細書で使用される微粉化胎盤組織成分を生成した。
【0129】
約5mgの水性/ゼラチン状胎盤コラーゲンのみの組成物は、27ゲージ針から放出した場合、同じ水性/ゼラチン状特性を保持した(
図2A)。そのような組成物は、90°の角度で針を持ち上げた場合、その組成物が針の先端から折れて取れるような低い引張強度も有していた(
図3A)。対照的に、微粉化胎盤組織を連続的添加で1mLの約0.5%ヒト胎盤コラーゲン(約5mgのコラーゲン)に添加し(最大で計約230mgの量の微粉化胎盤組織、
図4を参照)、27ゲージ針から放出した場合、組成物変化が生じ、それによりゼラチン状材料が柔軟性かつ凝集性の組成物に変化した(
図2B)。驚くべきことに、この柔軟性かつ凝集性の組成物は、90°の角度で針を持ち上げた場合、この組成物が付着したままであるような、水性/ゼラチン状胎盤コラーゲンの組成物よりも大きな引張強度も有していた(
図3Bおよび
図5)。
【0130】
本明細書に記載されている化合物、組成物および方法には様々な修正および変形を加えることができる。本明細書に記載されている化合物、組成物および方法の他の態様は、本明細書を検討し、かつ本明細書に開示されている化合物、組成物および方法を実施することにより明らかになるであろう。本明細書および実施例は例示的なものとみなされるものとする。