(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116716
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】BCMAを標的とするキメラ抗原受容体およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230815BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230815BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230815BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230815BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230815BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230815BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230815BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230815BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230815BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230815BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K39/00 H
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098770
(22)【出願日】2023-06-15
(62)【分割の表示】P 2021190474の分割
【原出願日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】201810326346.9
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520370577
【氏名又は名称】シャンハイ・セルラー・バイオファーマシューティカル・グループ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ユーティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー,リン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,イーホン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ジャーチー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リ
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー,シギュイ
(72)【発明者】
【氏名】ル,シャオテン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】BCMAを標的とするキメラ抗原受容体およびその製造方法と使用を提供する。
【解決手段】本発明は、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体であって、BCMAを標的とするscFv、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内シグナルドメインを含む受容体を提供する。本発明は、当該キメラ抗原受容体をコードする核酸分子および相応する発現ベクター、CAR-T細胞ならびにその使用を提供する。本発明のキメラ抗原受容体は、BCMA陽性細胞を標的とするため、BCMA陽性のB細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫や形質細胞性白血病などの疾患の治療に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、前記キメラ抗原受容体の抗原結合ドメインはBCMAを標
的とする細胞外領域の抗体一本鎖可変領域の配列であることを特徴とする、前記キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインがBCMA配列の24~41番目のアミノ酸残基を標的とする抗
体一本鎖可変領域の配列であることを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記抗原結合ドメインの構造が下記式Iで表されることを特徴とする、請求項1に記載
のキメラ抗原受容体。
VL-VH (I)
(ただし、VHは抗体の重鎖可変領域で、VLは抗体の軽鎖可変領域で、「-」は連結
ペプチドまたはペプチド結合である。
かつ、VLのアミノ酸配列は配列番号1で示され、VHのアミノ酸配列は配列番号2で
示され、
あるいは、VLのアミノ酸配列は配列番号3で示され、VHのアミノ酸配列は配列番号
4で示され、
あるいは、VLのアミノ酸配列は配列番号5で示され、VHのアミノ酸配列は配列番号
6で示される。)
【請求項4】
前記キメラ抗原受容体の構造は下記式IIで表されることを特徴とする、請求項1に記
載のキメラ抗原受容体。
S-VL-VH-H-TM-C-CD3ζ (II)
(ただし、
Sは任意のシグナルペプチド(すなわちsignal peptide)である。
Hはヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナル分子である。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列である。
VHとVLはそれぞれ上記の通りである。)
【請求項5】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードすることを特徴とする核酸分子。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸分子を含むことを特徴とするベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを含むか、あるいは染色体に外来の請求項5に記載の核酸分
子が組み込まれているか、あるいは請求項1に記載のキメラ抗原受容体を発現することを
特徴とする宿主細胞。
【請求項8】
CAR-T細胞を製造する方法であって、前記CAR-T細胞は、請求項1に記載のC
ARを発現する、
請求項5に記載の核酸分子または請求項6に記載のベクターをT細胞内に形質導入する
ことによって、前記CAR-T細胞を得る工程、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体、請求項5に記載の核酸分子、請求項6に記載のベ
クター、または請求項7に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦
形剤とを含有することを特徴とする製剤。
【請求項10】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体、請求項5に記載の核酸分子、請求項6に記載のベ
クター、または請求項7に記載の宿主細胞の使用であって、癌または腫瘍を予防および/
または治療する薬物または製剤の製造に使用されることを特徴とする、前記使用。
【請求項11】
前記腫瘍が、BCMA陽性腫瘍であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記腫瘍が、BCMA陽性のB細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、または形質細胞性白血
病であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬の分野に関し、より具体的に、BCMAを標的とするキメラ抗原受
容体およびその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
BCMAはB細胞成熟抗原で、CD269またはTNFRSF17とも呼ばれ、腫瘍壊
死因子受容体スーパーファミリーのメンバーで、そのリガンドはB細胞活性化因子(BA
FF)および増殖誘導リガンド(APRIL)である。
BCMAとBAFFおよびAPRILの結合はNF-kBを活性化させ、抗アポトーシ
スBcl-2のメンバー、たとえばBcl-xLまたはBcl-2およびMcl-1の上
方調節を誘導する。BCMAとそのリガンドの相互作用は様々な面から体液免疫、B細胞
の生長、分化を調節することによって人体内環境の安定した平衡を維持する。
【0003】
BCMAの発現はB細胞系に限られ、形質芽球では、形質細胞および一部の成熟B細胞
で発現され、末梢B細胞の分化時に増加するが、一方、大半のB細胞、たとえばナイーブ
B細胞、メモリーB細胞や胚中心B細胞およびほかの器官では発現されない。BCMAの
発現は骨髄における長寿で、定着した形質細胞に重要であることが報告された。そのため
、BCMA欠陥マウスでは、骨髄における形質細胞は減少するが、脾臓における形質細胞
レベルは影響されない。成熟B細胞はBCMAノックアウトマウスにおいて正常に形質細
胞に分化する。BCMAノックアウトマウスは見かけはすべて正常で、健康そうで、しか
もB細胞の数が正常であるが、形質細胞は長期間生存することができない。
【0004】
BCMAは悪性形質細胞でも高度発現され、たとえば多発性骨髄腫や形質細胞性白血病
、ホジキンリンパ腫の患者のHRS細胞でもBCMAが検出された。米国では、血液系の
悪性腫瘍は悪性腫瘍全体の約10%を占め、骨髄腫は悪性血液腫瘍全体の15%を占める
。文献では、BCMAの発現は多発性骨髄腫の疾患進展に関連することが報告された。B
CMA遺伝子は骨髄腫の検体では高度発現されるが、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性
白血病、急性Tリンパ性白血病では発現レベルが低い。BCMAリガンドであるBAFF
およびAPRILを過剰発現するネズミモデルにおいて、B細胞リンパ腫が顕著に増殖す
る。BCMAと結合するリガンドはBCMAを発現する多発性骨髄腫の増殖と生存を調節
することができることが証明された。BCMAとBAFFおよびAPRILの結合は悪性
形質細胞を生存させることができるため、BCMAを発現する腫瘍細胞を消耗させ、BC
MAリガンドと受容体の間の相互作用を破壊することは、多発性骨髄腫またはほかのBC
MA陽性B細胞性悪性リンパ腫に対する治療効果を改善することができる。
【0005】
多発性骨髄腫は、形質細胞腫またはケーラー病とも呼ばれ、難治性のB細胞系の悪性腫
瘍で、特徴は形質細胞の異常増殖で、形質細胞は白血球の種類の一つで、抗体を生成する
役割を担う。米国国立癌研究所によって2017年に発表されたデータでは、骨髄腫は腫
瘍症例全体の1.8%を占め、致死率が2.1%であることが示されている。2010年
-2014年の統計結果では、毎年の発症率が約10万分の6.6で、死亡率が約50%
であることが示されている。多発性骨髄腫は、中高年疾患に属し、欧米では発症年齢の中
央値は68歳で、男性は女性よりも多く、我が国の統計では、発症年齢のピークは55-
65歳で、男女比は2.35:1で、我が国では、多発性骨髄腫の確実な流行病学の調査
資料がまだないが、一般的に、発症率が周辺の東南アジアと日本に近く、約10万分の1
であると推測されている。多発性骨髄腫の従来の治療手段は、化学治療および造血幹細胞
移植を含むが、これらの方法は再発率が高い。ボルテゾミブ(PS-341)は初めての
プロテアソーム阻害剤で、2003年にFDAによって単独または既存薬物との併用で再
発性・難治性の多発性骨髄腫の治療への使用が許可され、結果は喜ばしいものであった。
当該薬物は2005年に中国でも市販され、現在、サリドマイド、デキサメタゾンなどと
ともに多発性骨髄腫の治療によく使用される選択の一つになっている。多発性骨髄腫の治
療方法は、通常、併用のものであるが、同時に複数の薬物を使用すると、費用が高価で、
副作用が累積するという、よくない結果もある。臨床では、多発性骨髄腫を治療する新規
な方法の開発がまだ切望されている。
【0006】
最近、免疫療法、特に養子T細胞療法は、血液系の悪性腫瘍を治療する臨床試験におい
て強い治療効果および明るい将来性が示されている。T細胞はキメラ抗原受容体(CAR
)を発現するように遺伝子修飾されてもよく、抗原認識部分およびT細胞活性化領域を含
む。CARはモノクローナル抗体の抗原結合の性質を利用してT細胞の特異性と反応性を
リダイレクトしてMHCに拘束されずにターゲッティングすることができる。このような
非MHC拘束性抗原認識によって、CARを発現するT細胞は抗原を加工せずに抗原を認
識するため、腫瘍の逃避の主な機序の一つが避けられる。そのほか、CARは内因性TC
Rのα鎖、β鎖と二量体になることがない。
【0007】
現在、海外では既に2つのCD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR
-T)の製品が市販され、児童と若年の患者の急性リンパ性白血病の治療および成人の再
発性または難治性の大細胞型B細胞性リンパ腫の第二選択以上の治療に使用される。しか
しながら、CD19は多発性骨髄腫の悪性形質細胞において発現されることが少ない。本
分野では、多発性骨髄腫を治療する、BCMAを標的とするCAR-T製品の開発が切望
されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
本発明の目的は、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体およびその製造方法と使用を
提供することにある。
具体的に、本発明の目的は、BCMA抗原を標的とするキメラ抗原受容体の配列、およ
びその修飾T細胞(CART-BCMA)の製造方法と活性同定を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、BCMA陽性のB細胞性リンパ腫を治療するためのキメラ抗原受容体の構造
を提供する。
本発明の第一の側面では、キメラ抗原受容体(CAR)(配列)であって、前記キメラ
抗原受容体の抗原結合ドメインはBCMAを標的とする細胞外領域の抗体一本鎖可変領域
の配列であるものを提供する。
もう一つの好適な例において、前記の抗原結合ドメインはBCMA配列の24~41番
目のアミノ酸残基を標的とする抗体一本鎖可変領域の配列である。
もう一つの好適な例において、前記のBCMA配列のNCBI登録番号はAY6849
75.1である。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記の抗原結合ドメインの構造は、下記式Iで表され
る。
VL-VH (I)
(ただし、VHは抗体の重鎖可変領域で、VLは抗体の軽鎖可変領域で、「-」は連結
ペプチドまたはペプチド結合である。
かつ、VLのアミノ酸配列は配列番号1で示され、VHのアミノ酸配列は配列番号2で
示され、
あるいは、VLのアミノ酸配列は配列番号3で示され、VHのアミノ酸配列は配列番号
4で示され、
あるいは、VLのアミノ酸配列は配列番号5で示され、VHのアミノ酸配列は配列番号
6で示される。)
【0011】
もう一つの好適な例において、前記の連結ペプチドのアミノ酸配列は配列番号10ま
たは配列番号11で示される。
もう一つの好適な例において、前記の抗体一本鎖可変領域はヒト化の抗体一本鎖可変領
域、ネズミ由来の抗体一本鎖可変領域、ヒトとネズミのキメラの抗体一本鎖可変領域であ
る。
もう一つの好適な例において、前記キメラ抗原受容体の構造は、下記式IIで表される
。
S-VL-VH-H-TM-C-CD3ζ (II)
(ただし、
Sは任意のシグナルペプチド(すなわちsignal peptide)である。
Hはヒンジ領域である。
TMは膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナル分子である。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列である。
VHとVLはそれぞれ上記の通りである。)
【0012】
もう一つの好適な例において、前記のSは、CD8、CD28、GM-CSF、CD4
、CD137、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のシグナル
ペプチドである。
もう一つの好適な例において、前記のSは、CD8由来のシグナルペプチドである。
もう一つの好適な例において、Sのアミノ酸配列は、配列番号9で示される。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記のHは、CD8、CD28、CD137、またはこ
れらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のヒンジ領域である。
もう一つの好適な例において、前記のHは、CD8由来のヒンジ領域である。
もう一つの好適な例において、Hのアミノ酸配列は、配列番号12で示される。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記のTMは、CD28、CD3ε、CD45、CD4
、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD
80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはこれらの組み合わせから
なる群から選ばれるタンパク質の膜貫通ドメインである。
もう一つの好適な例において、前記のTMは、CD8由来の膜貫通ドメインである。
もう一つの好適な例において、TMの配列は、配列番号13で示される。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記のCは、OX40、CD2、CD7、CD27、C
D28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD
1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICO
S(CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、またはこれらの組み合わせからな
る群から選ばれるタンパク質の共刺激シグナル分子である。
もう一つの好適な例において、前記のCは、4-1BB由来の共刺激シグナル分子であ
る。
もう一つの好適な例において、Cのアミノ酸配列は、配列番号14で示される。
もう一つの好適な例において、CD3ζのアミノ酸配列は、配列番号15で示される。
【0016】
本発明の第二の側面では、本発明の第一の側面に記載のキメラ抗原受容体(CAR)を
コードする核酸分子を提供する。
もう一つの好適な例において、前記核酸分子は単離されたものである。
本発明の第三の側面では、本発明の第二の側面に記載の核酸分子を含むベクターを提供
する。
もう一つの好適な例において、前記のベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レン
チウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾ
ン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0017】
本発明の第四の側面では、本発明の第三の側面に記載のベクターを含有するか、あるい
は染色体に外来の本発明の第二の側面に記載の核酸分子が組み込まれたか、あるいは本発
明の第一の側面に記載のCARを発現する宿主細胞を提供する。
もう一つの好適な例において、前記細胞は単離された細胞で、および/または前記細胞
は遺伝子改変された細胞である。
もう一つの好適な例において、前記細胞は哺乳動物の細胞である。
もう一つの好適な例において、前記細胞はT細胞である。
【0018】
本発明の第五の側面では、CAR-T細胞を製造する方法であって、前記のCAR-T
細胞は本発明の第一の側面に記載のCARを発現し、
本発明の第二の側面に記載の核酸分子または本発明の第三の側面に記載のベクターをT
細胞内に形質導入することによって、前記CAR-T細胞を得る工程、
を含む方法を提供する。
【0019】
本発明の第六の側面では、本発明の第一の側面に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第
二の側面に記載の核酸分子、本発明の第三の側面に記載のベクター、または本発明の第四
の側面に記載の細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する薬物
組成物を提供する。
もう一つの好適な例において、前記製剤は液体製剤である。
もう一つの好適な例において、前記製剤の剤形は注射剤である。
もう一つの好適な例において、前記製剤で、前記CAR-T細胞の濃度が1×103~
1×108細胞/mL、好ましくは1×104~1×107細胞/mLである。
【0020】
本発明の第七の側面では、本発明の第一の側面に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第
二の側面に記載の核酸分子、本発明の第三の側面に記載のベクター、または本発明の第四
の側面に記載の細胞の使用であって、癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物ま
たは製剤の製造における使用を提供する。
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み
合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記血液腫瘍は、急性骨髄球性白血病(AML)、多発
性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、び
まん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、またはこれらの組み合わせからなる群
から選ばれる。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記の固形腫瘍は、胃癌、胃癌腹膜転移、肝臓癌、白血
病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、卵
巣癌、リンパ癌、鼻咽頭癌、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、脳膠細
胞腫、子宮内膜癌、またはからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の腫瘍は、BCMA陽性腫瘍、好ましくはBCMA
陽性のB細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、または形質細胞性白血病である。
【0022】
本発明の第八の側面では、本発明の第四の側面に記載の細胞を製造するためのキットで
あって、容器と、容器内にある本発明の第二の側面に記載の核酸分子、または本発明の第
三の側面に記載のベクターを含むキットを提供する。
本発明の第九の側面では、本発明の第四の側面に記載の細胞、または本発明の第六の側
面に記載の製剤の使用であって、癌または腫瘍の予防および/または治療における使用を
提供する。
【0023】
本発明の第十の側面では、疾患を治療する方法であって、治療が必要な対象に適量の本
発明の第四の側面に記載の細胞、および/または本発明の第六の側面に記載の製剤を施用
する工程を含む方法を提供する。
もう一つの好適な例において、前記疾患は癌または腫瘍である。
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば
実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組み合わせ、新しい、または好適な技
術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、CART-BCMAs比較例のクリーニング結果の図を示す。
図1Aは、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体の遺伝子改変T細胞への形質導入効率の検出を示す。組み換えヒトBCMAタンパク質Fc断片染色法によって、6日目まで培養したCAR-BCMAs細胞におけるCAR遺伝子によってコードされるタンパク質のT細胞の膜表面における発現レベルを同定した。順に10日目まで培養したCART-BCMAs細胞を1×10
5個取り、それぞれBCMA陽性のK562-BCMA-B9腫瘍細胞系、天然のBCMAを発現する腫瘍細胞系MM.1SおよびRPMI8226、ならびにBCMA陰性のK562腫瘍細胞系と、あるいは腫瘍細胞を添加せずに、200μlのGT-551培地において1:1の比率で18h培養した後、T細胞の膜表面おけるCD137の発現レベル(
図1B)および培養上清におけるIFNγの分泌レベル(
図1C)を検出した。
【
図2】
図2は、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体の構造概略図である。CARの構造は、リーダー配列、抗原認識配列、連結領域、膜貫通領域、共刺激因子シグナル領域およびCD3ζシグナル伝達領域を含む。
【
図3】
図3は、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体の遺伝子改変T細胞への形質導入効率の検出を示す。組み換えヒトBCMAタンパク質Fc断片染色法によって、7日目(
図3A)、21日目(
図3B)および29日目(
図3C)まで培養したCAR-BCMAs細胞におけるCAR遺伝子によってコードされるタンパク質のT細胞の膜表面における発現レベルを同定した。
【0025】
【
図4】
図4は、T細胞の膜表面おけるCD137の発現レベル(
図4A)および培養上清におけるIFNγの分泌レベル(
図4B)を示す。具体的に、順に7日目まで培養したCART-BCMAs細胞を1×10
5個取り、それぞれBCMA陽性のK562-BCMA-E7腫瘍細胞系、ならびにBCMA陰性のK562腫瘍細胞系と、あるいは腫瘍細胞を添加せずに、200μlのGT-551培地において1:1の比率で18h培養した後、T細胞の膜表面おけるCD137の発現レベルおよび培養上清におけるIFNγの分泌レベルを検出した。
【
図5】
図5は、CART-BCMAsによる腫瘍細胞の末期アポトーシスの誘導のレベルの検出を示す。具体的に、それぞれCFSEで標識されたBCMA陰性(NH929)またはBCMA陽性(NH929-BCMA)の腫瘍細胞系を1×10
4個取り、100μlのGT-551培地において図面に示される比率で相応するT細胞とそれぞれ4h共培養した後、100μlの25%PI色素で15min染色した後、フローサイトメーターによってCFSE陽性細胞におけるPI陽性細胞の比率を分析した。この図では、PI陽性細胞の相応する共培養サンプルにおける統計分析結果が示された。
【0026】
【
図6】
図6は、CART-BCMAsによる腫瘍細胞の末期アポトーシスの誘導のレベルの検出を示す。
図6Aは、分析されたCART陽性細胞の比率を示すが、ここで、NTおよびBCMA-MO6は60%で計算された。それぞれCFSEで標識されたBCMA陰性(NH929)またはBCMA陽性(NH929-BCMA、MM.1S)の腫瘍細胞系を1×10
4個取り、100μlのGT-551培地において図面に示される比率で相応するT細胞とそれぞれ4h共培養した後、100μlの25%PI色素で15min染色した後、フローサイトメーターによってCFSE陽性細胞におけるPI陽性細胞の比率を分析した。
図6Bは、PI陽性細胞の相応する共培養サンプルにおける統計分析結果を示す。
【
図7】
図7は、CART-BCMAsの骨髄腫細胞系RPMI-8226のB-NDGマウス体内における増殖に対する阻害作用を示す。対数増殖期にあるRPMI-8226細胞を収集し、マウスの右側背部に4.0×10
6個の腫瘍細胞を皮下接種し、腫瘍体積が120mm
3程度に達した時点で、動物を腫瘍体積によってランダムに4群に分けた後、それぞれ尾静脈から溶媒対照、7.5×10
6個のNT(T細胞のみ)および7.5×10
6個のCART-BCMAs細胞を注射した。
図7Aは、尾静脈からCART-BCMA-1およびCART-BCMA-20を単回で注射することによって、有効にヒト骨髄腫RPMI-8226細胞の生長を抑制することができたことを示す。
図7Bは、CART-BCMA-1およびCART-BCMA-20は顕著にヒト骨髄腫RPMI-8226細胞の腫瘍担持マウスの生存時間を延ばすことができたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
具体的な実施形態
本発明者らは、幅広く深く研究し、大量のスクリーニングを行ったところ、初めてBC
MA抗原を標的とするキメラ抗原受容体を得た。具体的に、本発明では、BCMA-1、
BCMA-20、BCMA-CA8、BCMA-MO6の4つのモノクローナル抗体配列
に基づいて構築されたBCMAを標的とするキメラ抗原受容体の構造を獲得し、そしてこ
れらのキメラ抗原受容体の初代T細胞における発現レベル、体外活性化能力および腫瘍細
胞殺傷力などの面における分析と同定を完成させた。研究では、本発明のキメラ抗原受容
体は、BCMA陽性細胞を標的とし、BCMA陽性のB細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、
形質細胞性白血病またはほかの疾患の治療に使用することができることが明らかになった
。
【0028】
具体的に、本発明では、異なるCAR構造とウイルス感染後の細胞膜表面における発現
時間および発現強度の関連性を同定し、さらに異なるCAR構造のタンパク質発現の難易
度の違いを同定したが、この発見はCAR構造によって同様の感染条件においてCARタ
ンパク質の膜表面における発現レベルおよびCARTの体内活性の持続性が変わることを
示唆する。大量のスクリーニングによって、本発明の構造のCARを得たが、結果から、
本発明におけるCAR構造によってコードされるタンパク質がいずれも十分な発現と膜局
在化ができることが示された。
本発明において、BCMA抗原を標的とするCAR構造で修飾されたT細胞の製造プロ
セスを改良し、主に1%ヒト血清アルブミンを添加したGT-551無血清培地で体外で
リンパ球を培養した。
【0029】
用語
本開示が理解しやすくなるように、まず、一部の用語を定義する。本願に用いられるよ
うに、本明細書で別途に明確に規定しない限り、以下の用語はいずれも下記の意味を有す
る。出願全体において、ほかの定義が記述されている。
用語「約」とは当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内
にある値または組成で、それによって部分的にどのように値または組成を計量または測定
するかというのが決まる。
用語「投与」とは当業者に既知の様々な方法および送達システムの任意の一つによって
本発明の製品を物理的に被験者に導入することで、静脈内、筋肉内、皮下、腹膜内、脊髄
またはほかの胃腸外の投与経路、たとえば注射または輸注によるものを含む。
【0030】
用語「抗体」(Ab)はグロブリンを含むが、これに限定されず、特異的に抗原に結合
し、かつジスルフィド結合を介して互いに連結した少なくとも2本の重(H)鎖および2
本の軽(L)鎖あるいはその抗原結合部分を含む。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書で
VHと略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメインCH1
、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略する)およ
び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VHとVL領
域はさらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分してもよく、これらは
フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域に散在している。各VHとVL
は3つのCDRと4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR
1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で並ぶ。重鎖と軽鎖の可変領域は
抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。
【0031】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細
胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、標的特異的結合エレメント(抗原結合ドメイン
とも呼ばれる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域およびζ鎖部分を含
む。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインの一部を含む。共刺激分子
は、リンパ球の抗原に対する有効な応答に必要な細胞表面分子で、抗原受容体またはその
リガンドではない。
【0032】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間、またはCARの細胞内ドメインと膜貫
通ドメインの間に、リンカーを導入してもよい。本明細書で用いられるように、用語「リ
ンカー」とは、通常、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメインまたは細胞内ド
メインに連結させる作用を果たす任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドをいう。リン
カーは、0~300個のアミノ酸、好ましくは2~100個のアミノ酸、最も好ましくは
3~50個のアミノ酸を含んでもよい。
本発明の一つの好適な実施形態において、本発明によって提供されるCARの細胞外ド
メインはBCMAを標的とする抗原結合ドメインを含む。本発明のCARがT細胞におい
て発現される場合、抗原結合の特異性に基づいて抗原を認識することができる。それが関
連抗原に結合すると、腫瘍細胞に影響し、腫瘍細胞が成長せず、死亡するように、または
ほかの形で影響され、そして患者の腫瘍負荷が軽減または解消する。抗原結合ドメインは
、共刺激分子およびζ鎖から由来する一つまたは複数の細胞内ドメインと融合することが
好ましい。好ましくは、抗原結合ドメインは4-1BBシグナル伝達ドメイン、およびC
D3ζシグナルドメインと組み合わせた細胞内ドメインと融合している。
【0033】
本明細書で用いられるように、「抗原結合ドメイン」、「一本鎖抗体断片」とはいずれ
も抗原結合活性を有するFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、または単一の
Fv断片である。Fv抗体は抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含有するが、定常領域
がなく、かつすべての抗原結合部位を有する最小の抗体断片である。一般的に、Fv抗体
はさらにVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含み、かつ抗原結合に必要な
構造を形成することができる。抗原結合ドメインは、通常、scFv(single-chain var
iable fragment、一本鎖可変断片)である。scFvの大きさは、通常、完全の抗体の1
/6である。一本鎖抗体は一本のヌクレオチド鎖によってコードされる一本のアミノ酸鎖
配列が好ましい。本発明の好適な形態として、前記scFvは特異的にBCMA細胞外領
域を認識する抗体、特に特異的にBCMA配列の24-41番目のアミノ酸残基を認識す
る抗体を含み、好ましくは一本鎖抗体である。
【0034】
ヒンジ領域と膜貫通領域(膜貫通ドメイン)について、CARはCARの細胞外ドメイ
ンに融合した膜貫通ドメインを含むように設計してもよい。一つの実施形態において、天
然のCARにおけるドメインの一つと関連する膜貫通ドメインが使用される。一部の例に
おいて、膜貫通ドメインを選択するか、アミノ酸置換で修飾することによって、このよう
なドメインが同様または相異の表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを避け
ることで、受容体複合体のほかのメンバーとの相互作用を最小限にする。
本発明のCARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよび
CD3ζのシグナル伝達ドメインを含む。
【0035】
好ましくは、本発明のCARの構造は、シグナルペプチド、抗原認識配列(抗原結合ド
メイン)、連結領域、膜貫通領域、共刺激因子シグナル領域およびCD3ζシグナル伝達
領域(ζ鎖部分)を含み、連結順は以下の通りである。
[CD8 S]-[VL-リンカー-VH]-[ヒンジ-CD8TM]-[4-1BB
]-[CD3ζ]
具体的に、本発明で使用される配列は以下の通りである。
(1)シグナルペプチドである、CD8由来のシグナルペプチド配列:
MALPVTALLLPLALLLHAARP (配列番号9)
(2)BCMA-1抗体由来の一本鎖の軽鎖可変領域(VL)配列:
DIVLTQSPPSLAMSLGKRATISCRASESVTILGSHLIHW
YQQKPGQPPTLLIQLASNVQTGVPARFSGSGSRTDFTLTI
DPVEEDDVAVYYCLQSRTIPRTFGGGTKLEIK (配列番号7)
(3)BCMA-1抗体由来の一本鎖の重鎖可変領域(VH)配列:
QIQLVQSGPELKKPGETVKISCKASGYTFTDYSINWVKR
APGKGLKWMGWINTETREPAYAYDFRGRFAFSLETSASTA
YLQINNLKYEDTATYFCALDYSYAMDYWGQGTSVTVSS (
配列番号8)
ここで、BCMA-1は、既に発表されたCar-T配列に含まれる抗体配列で、本願
において対照として使用される。
【0036】
(4)BCMA-20抗体由来の一本鎖の軽鎖可変領域(VL)配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISNYLNWYQQK
PGKAPKPLIYYTSNLQSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQ
PEDFATYYCMGQTISSYTFGQGTKLEIK (配列番号1)
(5)BCMA-20抗体由来の一本鎖の重鎖可変領域(VH)配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNFDMAWVRQ
APGKGLVWVSSITTGADHAIYADSVKGRFTISRDNAKNTL
YLQMNSLRAEDTAVYYCVRHGYYDGYHLFDYWGQGTLVTV
SS (配列番号2)
(6)BCMA-CA8抗体由来の一本鎖の軽鎖可変領域(VL)配列:
DIQLTQTTSSLSASLGDRVTISCSASTTTSNYLNWYQQK
PDGTVELVIYYTSNLHGGGPSRFSGSGSGTDYSLTIGYLE
PEDVATYYCQQYRKLPWTFGGGSKLEIKR (配列番号3)
(7)BCMA-CA8抗体由来の一本鎖の重鎖可変領域(VH)配列:
EVQLQQSGAVLARPGASVKMSCKGSGYTFTNYWMHWVKQ
RPGQGLEWIGATYRGHSDTYYNQKFKGKAKLTAVTSTSTA
YMELSSLTNEDSAVYYCTRGAIYNGYDVLDNWGQGTLVTV
SS (配列番号4)
【0037】
(8)BCMA-MO6抗体由来の一本鎖の軽鎖可変領域(VL)配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQK
PGKAPKLLIYYTSNLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQ
PEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIKR (配列番号5)
(9)BCMA-MO6抗体由来の一本鎖の重鎖可変領域(VH)配列:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQ
APGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTA
YMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTV
SS (配列番号6)
(10)BCMA-1の一本鎖可変領域の重鎖と軽鎖の間の連結配列:
GSTSGSGKPGSGEGSTKG (配列番号10)
(11)BCMA-20、BCMA-CA8、BCMA-MO6の一本鎖可変領域の重
鎖と軽鎖の間の連結配列:
GGGGSGGGGSGGGGS (配列番号11)
【0038】
(12)ヒンジ領域および連結領域の配列:
FVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRP
AAGGAVHTRGLDFACD (配列番号12)
(13)膜貫通領域であるCD8(CD8TM)抗原の膜貫通配列:
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC (配列番号13)
(14)共刺激因子シグナル領域である4-1BB由来の細胞内シグナル伝達モチーフ
の配列:
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGG
CEL (配列番号14)
(15)CD3ζシグナル伝達領域であるTCR複合体におけるCD3ζの免疫受容体
チロシン活性化モチーフ(immunorecceptor tyrosine-based activation motif、ITA
M)の配列:
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRR
GRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKG
ERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR (配列番号
15)
【0039】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)
本明細書で用いられるように、用語「CAR-T細胞」、「CAR-T」、「CART
」、「本発明のCAR-T細胞」とはいずれも本発明の第二の側面に記載のCAR-T細
胞である。
本発明は、BCMAを標的とするキメラ抗原受容体の構造の構築、BCMAを標的とす
るキメラ抗原受容体の遺伝子改変T細胞の製造方法およびその活性同定に関する。
【0040】
ベクター
所期の分子をコードする核酸配列は本分野で既知の組み換え方法、たとえば遺伝子を発
現する細胞においてライブラリーをスクリーニングすること、既知の当該遺伝子を含むベ
クターから当該ベクターを得ること、あるいは標準の技術で当該遺伝子を含む細胞および
組織から直接単離することによって得ることができる。必要により、興味のある遺伝子は
合成によって生産することもできる。
また、本発明は本発明の発現カセットが挿入されたベクターを提供する。レトロウイル
ス、たとえばレンチウイルス由来のベクターは、導入された遺伝子の長期間で、安定した
組み込みおよびその子細胞における増殖を可能にするため、長期間の遺伝子の移動を実現
させる適切な道具である。レンチウイルスは、増殖しない細胞、たとえば肝細胞に導入す
ることができるため、発癌性レトロウイルス、たとえばマウス白血病ウイルスのベクター
を超える利点を持つ。また、低免疫原性という利点もある。
【0041】
簡単に要約すると、通常、本発明の発現カセットまたは核酸配列を操作可能にプロモー
ターに連結し、そしてそれを発現ベクターに組み込む。当該ベクターは、真核細胞の複製
および組み込みに適する。典型的なクローニングベクターは、所期の核酸配列の発現を調
節するのに使用できる転写と翻訳のターミネーター、開始配列およびプロモーターを含む
。
本発明の発現構築体は標準の遺伝子送達プロトコールによって、核酸免疫および遺伝子
療法に使用することもできる。遺伝子送達の方法は、本分野では既知である。たとえば、
米国特許番号5,399,346、5,580,859、5,589,466を参照し、
ここで引用によって全文を取り込む。もう一つの実施形態において、本発明は、遺伝子療
法ベクターを提供する。
【0042】
当該核酸は様々な種類のベクターにクローニンすることができる。たとえば、当該核酸
がクローニングできるベクターは、プラスミド、ファージ、ファージ誘導体、動物ウイル
スやコスミドを含むが、これらに限定されない。特定の興味のあるベクターは、発現ベク
ター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシングベクターを含む。
さらに、発現ベクターはウイルスベクターの形態によって細胞に提供することができる
。ウイルスベクターの技術は本分野公知のもので、そしてたとえばSambrookら(2001, Mo
lecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)
およびほかのウイルス学と分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして使
用できるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペス
ウイルスやレンチウイルスを含むが、これらに限定されない。通常、適切なベクターは少
なくとも1種類の有機体において作用する複製開始点、プロモーター配列、便利な制限酵
素切断部位および1つまたは複数の選択できるマーカーを含む(たとえば、WO01/9
6584、WO01/29058および米国特許番号6,326,193)。
【0043】
すでに多くのウイルスに基づいたシステムが開発され、哺乳動物細胞への遺伝子の導入
に使用されている。たとえば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプ
ラットホームを提供する。本分野で既知の技術によって選択された遺伝子をベクターに挿
入してレトロウイルス顆粒にパッケージングすることができる。当該組み換えウイルスは
、さらに分離されて体内または体外の対象細胞に送達される。多くのレトロウイルスシス
テムは本分野では既知である。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターが使用
される。多くのアデノウイルスベクターは本分野では既知である。一部の実施形態におい
て、レンチウイルスベクターが使用される。
【0044】
付加のプロモーターエレメント、たとえばエンハンサーは転写が開始する頻度を調節す
ることができる。通常、これらは開始点の上流の30~110bpの領域に位置するが、
最近、多くのプロモーターは開始点の下流の機能エレメントも含むことが明らかになった
。プロモーターエレメントの間の間隔は、エレメントが別のエレメントに対して逆さまに
なったか、移動した場合、プロモーターの機能が維持できるように、可動性のものが多い
。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーターエレメントの間の間隔
は、活性が低下することなく、50bpまで増加することができる。プロモーターによっ
て、単一のエレメントは共同にまたは独立に作用し、転写を開始させる。
【0045】
適切なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配
列である。当該プロモーター配列は操作可能にそれに連結した任意のポリヌクレオチド配
列を高レベルで発現させることができる強力な構成型プロモーター配列である。適切なプ
ロモーターのもう一例は、伸長因子1α(EF-1α)である。しかし、ほかの構成型プ
ロモーター配列を使用してもよく、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター
、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復(L
TR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エ
プスタイン・バール(Epstein-Barr)ウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス
プロモーター、およびヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されず、ヒト遺伝
子プロモーターは、たとえばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモ
ーターやクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。さら
に、本発明は構成型プロモーターの使用に限定されない。誘導型プロモーターも本発明の
一部として考えられる。誘導型プロモーターの使用は分子スイッチを提供し、それによっ
て、そのような発現が必要な場合、操作可能に誘導型プロモーターに連結したポリヌクレ
オチド配列の発現を開始させ、あるいは発現が必要ではない場合、発現を終止させること
ができる。誘導型プロモーターの例は、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイ
ドプロモーター、プロゲステロンプロモーターやテトラサイクリンプロモーターを含むが
、これらに限定されない。
【0046】
CARポリペプチドまたはその一部の発現を評価するため、細胞に導入された発現ベク
ターは選択できるマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のうちの任意の一方または両方
を含むようにすることによって、ウイルスベクターで形質導入または感染された細胞群か
ら発現細胞を同定および選択することもできる。また、選択できるマーカーは単独のDN
A断片に載せて共形質移入のプロセスに使用することができる。選択できるマーカー遺伝
子およびレポーター遺伝子の両者の隣接する領域には、いずれも適切な調節配列を有する
ことによって、宿主細胞において発現できるようにしてもよい。有用な選択できるマーカ
ーは、たとえば抗生物質耐性遺伝子、たとえばneoなどを含む。
【0047】
レポーター遺伝子は形質導入された可能性のある細胞の同定および調節配列の機能性の
評価に使用される。通常、レポーター遺伝子は、レシピエントの有機体または組織に存在
しないか、レシピエントの有機体または組織によって発現され、そしてその発現が容易に
検出できる性質、たとえば酵素活性によって明確に示すことができるポリペプチドをコー
ドする遺伝子である。DNAがすでにレシピエントの細胞に導入されると、レポーター遺
伝子の発現は適切な時間で測定される。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β
-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素、分泌型アルカリホスフ
ァターゼや緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む(たとえば、Ui-Teiら,2000FE
BS Letters479:79-82)。適切な発現系は公知で、かつ既知の技術によって製造するか、
市販品として入手することができる。通常、最高レベルのレポーター遺伝子の発現を示す
、少なくとも5つのフランキング領域を有する構築体はプロモーターと同定される。この
ようなプロモーター領域はレポーター遺伝子に連結され、かつ試薬のプロモーターを調節
して転写を活性化させる能力の評価に使用することができる。
【0048】
遺伝子を細胞に導入する方法および細胞において遺伝子を発現させる方法は、本分野で
は既知である。発現ベクターの内容において、ベクターは本分野における任意の方法によ
って宿主細胞、たとえば、哺乳動物、細菌、酵母や昆虫の細胞に容易に導入することがで
きる。たとえば、発現ベクターは物理、化学または生物学の手段によって宿主細胞に導入
することができる。
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフ
ェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む
。ベクターおよび/または外来核酸を含む細胞を生産する方法は本分野では公知である。
たとえば、Sambrookら(2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring
Harbor Laboratory, New York)を参照する。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する好
適な方法は、リン酸カルシウム形質導入である。
【0049】
興味のあるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法は、DNAおよびRN
Aベクターを使用する方法を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、
すでに最も幅広く使用される、遺伝子を哺乳動物、たとえばヒト細胞に挿入する方法にな
っている。ほかのウイルスベクターはレンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペス
ウイルスI、アデノウイルスやアデノ随伴ウイルスなどからのものでもよい。例えば、米
国特許番号5,350,674および5,585,362を参照する。
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段は、コロイド分散系、たとえば大分
子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および水中油型乳剤、ミセル、混
合ミセル、やリポソームを含む脂質に基づいた系を含む。体外および体内の送達担体(de
livery vehicle)として使用される例示的なコロイド系はリポソーム(たとえば、人工膜
小胞)である。
【0050】
非ウイルス送達系を使用する場合、例示的な送達担体はリポソームである。脂質製剤を
使用し、核酸を宿主細胞に導入することが考えられる(体外、エクスビボ(ex vivo)ま
たは体内)。また、当該核酸は脂質と関連してもよい。脂質と関連した核酸は、リポソー
ムの水性の内部に封入し、リポソームの脂質二重層に散在し、リポソームとオリゴヌクレ
オチドの両者に連結する連結分子を介してリポソームに接着し、リポソームに取り込まれ
、リポソームと複合体化し、脂質を含む溶液に分散し、脂質と混合し、脂質と配合し、懸
濁液として脂質に含まれ、ミセルに含まれるか、ミセルと複合体化し、あるいはほかの形
態で脂質と結合することができる。組成物と関連する脂質、脂質/DNAまたは脂質/発
現ベクターは溶液における具体的な構造のいずれにも限定されない。たとえば、二重層の
構造において、ミセルとして、または「崩壊した」構造で存在してもよい。簡単に溶液に
分散し、大きさや形状が異なる集合体を形成してもよい。脂質は脂肪物質で、天然の脂質
でも合成の脂質でもよい。たとえば、脂質は細胞質で自然に発生する脂肪小滴、ならびに
長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体、たとえば脂肪酸、アルコール類、アミン類、アミ
ノアルコール類やアルデヒド類のような化合物を含む。
本発明の一つの好適な実施形態において、前記ベクターはレンチウイルスベクターであ
る。
【0051】
製剤
本発明は、本発明の第一の側面に記載のCAR-T細胞と、薬学的に許容される担体、
希釈剤または賦形剤とを含有する製剤を提供する。一つの実施形態において、前記製剤は
液体製剤である。好ましくは、前記製剤は注射剤である。好ましくは、前記製剤で、前記
CAR-T細胞の濃度が1×103~1×108細胞/mL、より好ましくは1×104
~1×107細胞/mLである。
一つの実施形態において、前記製剤は、緩衝液、たとえば中性緩衝食塩水、硫酸塩緩衝
食塩水など、炭水化物、たとえばブドウ糖、マンノース、ショ糖やデキストラン、マンニ
トール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、たとえばグリシン、酸化防止剤、キ
レート剤、たとえばEDTAやグルタチオン、アジュバント(たとえば、水酸化アルミニ
ウム)、および防腐剤を含んでもよい。本発明の製剤は、静脈内で施用するように調製す
ることが好ましい。
【0052】
治療的使用
本発明は、本発明の発現カセットをコードするレンチウイルスベクター(LV)で形質
導入された細胞(たとえば、T細胞)で行われる治療的使用を含む。形質導入された細胞
は、腫瘍細胞のマーカーであるBCMAを標的とし、協同してT細胞を活性化させ、T細
胞の免疫応答を引き起こすことによって、その腫瘍細胞に対する殺傷効率を顕著に向上さ
せることができる。
そのため、本発明は、哺乳動物の標的細胞群または組織に対するT細胞による免疫応答
を刺激する方法であって、哺乳動物に本発明のCAR-T細胞を施用する工程を含む方法
も提供する。
【0053】
一つの実施形態において、本発明は、患者の自己T細胞(または異系ドナー)を分離し
、活性化させて遺伝子改変し、CAR-T細胞が生成した後、同患者の体内に注入する細
胞療法を含む。このような方法では、移植片対宿主病に罹る確率は極めて低く、抗原はT
細胞によってMHCに拘束されずに認識される。また、一つのCAR-Tで当該抗原を発
現するすべての癌を治療することができる。抗体療法と異なり、CAR-T細胞は体内で
複製可能で、持続的に腫瘍を抑える長期間の持久性が生じる。
一つの実施形態において、本発明のCAR-T細胞は安定した体内におけるT細胞の増
殖を経て延長した時間で持続することができる。また、CARによる免疫応答は養子免疫
療法の工程の一部でもよく、ここで、CAR修飾T細胞はCARにおける高原結合ドメイ
ンに特異的な免疫応答を誘導する。たとえば、抗BCMAのCAR-T細胞はBCMAを
発現する細胞に抵抗する特異的な免疫応答を引き起こす。
【0054】
本明細書で公開されたデータは、具体的に抗BCMA scFv、ヒンジおよび膜貫通
領域、および4-1BBとCD3ζシグナル伝達ドメインを含むレンチウイルスベクター
を公開したが、本発明は構築体の各構成部分の任意の数の変化を含むと解釈されるべきで
ある。
治療可能な癌は、血管新生がしていない腫瘍または血管新生が基本的にしていない腫瘍
、および血管新生がした腫瘍を含む。癌は、非固形腫瘍(たとえば血液腫瘍、たとえば白
血病やリンパ腫)または固形腫瘍を含んでもよい。本発明のCARで治療する癌の種類は
、癌、胚細胞腫瘍や肉腫、および一部の白血病やリンパ性悪性腫瘍、良性腫瘍および悪性
腫瘍、および悪性腫瘍、たとえば肉腫、癌やメラノーマを含むが、これらに限定されない
。成人腫瘍/癌および児童腫瘍/癌も含む。
【0055】
血液癌は血液または骨髄の癌である。血液(または血液原性)癌の例は、白血病を含み
、それに急性白血病(たとえば急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白
血病および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球型、単核球性や赤白血病)、慢性白血病(
たとえば慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髓性白血病や慢性リンパ性白血病)、
真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンスリンパ腫(無痛および重症の場
合)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、H鎖病、骨髄異形
成症候群、有毛細胞白血病や脊髄形成異常が含まれる。
固形腫瘍は、通常、嚢腫や液体領域の組織の腫瘤を含まない。固形腫瘍は良性でも悪性
でもよい。異なる種類の固形腫瘍はこれらを形成する細胞の種類によって命名される(た
とえば肉腫、癌やリンパ腫)。固形腫瘍は、たとえば肉腫および癌の例は、線維肉腫、粘
液肉腫、脂肪肉腫、中皮腫、リンパ性悪性腫瘍、膵臓癌、卵巣癌を含む。
【0056】
本発明のCAR修飾T細胞は哺乳動物に対する体外免疫および/または体内療法のワク
チンとしても有用である。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
体外免疫について、i)細胞の増殖、ii)CARをコードする核酸の細胞への導入、
および/またはiii)細胞の凍結保存のうちの少なくとも一つが細胞を哺乳動物に施用
する前に体外で行われる。
体外プロトコールは本分野では公知で、そして後記でより完全に検討される。簡単に言
えば、細胞を哺乳動物(好ましくはヒト)から単離して本明細書で公開されるCARを発
現するベクターで遺伝子修飾を行う(すなわち、体外形質転換または形質導入)。CAR
修飾細胞は哺乳動物のレシピエントに施用し、治療の有益な効果を提供することができる
。哺乳動物のレシピエントはヒトでもよく、そしてCAR修飾細胞はレシピエント自身の
細胞でもよい。必要により、細胞はレシピエントに対して同種異系、同系(syngeneic)
または異種でもよい。
体外免疫について細胞に基づいたワクチン以外、本発明は、体内免疫によって患者にお
ける抗原に対する免疫応答を引き起こす組成物および方法も提供する。
【0057】
本発明は、腫瘍を治療する方法であって、それが必要な対象に治療有効量の本発明のC
AR修飾T細胞を施用する工程を含む方法を提供する。
本発明のCAR修飾T細胞は単独で、または薬物組成物として希釈剤および/またはほ
かの成分、たとえばIL-2、IL-17やほかのサイトカインまたは細胞群と合わせて
施用することができる。簡単に言えば、本発明の薬物組成物は、本明細書に記載の標的細
胞群を含み、一つまたは複数の薬学または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形
剤と合わせてもよい。このような組成物は、緩衝液、たとえば中性緩衝食塩水、硫酸塩緩
衝食塩水など、炭水化物、たとえばブドウ糖、マンノース、ショ糖やデキストラン、マン
ニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、たとえばグリシン、酸化防止剤、
キレート剤、たとえばEDTAやグルタチオン、アジュバント(たとえば、水酸化アルミ
ニウム)、および防腐剤を含んでもよい。本発明の組成物は、静脈内で施用するように調
製することが好ましい。
【0058】
本発明の薬物組成物は、治療(または予防)が必要な疾患に適する形態によって施用す
ることができる。施用の数量および頻度は、患者の病床、および患者の疾患の種類と重篤
度のような要素によって決まるが、適切な投与量は臨床試験によって決定する。
「免疫学的な有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」または「治療量」と記
載する場合、施用される本発明の組成物の精確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍
の大きさ、感染または転移の程度および病症の個体差を考慮し、医師によって決められる
。通常、本明細書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、104~109個細胞/kg体重
の投与量、好ましくは105~106個細胞/kg体重の投与量(これらの範囲内におけ
るすべての整数値を含む)で施用することができる。T細胞の組成物はこれらの投与量で
数回施用してもよい。細胞は、免疫療法で公知の注入技術(たとえばRosenbergら,NewEn
g.J. of Med. 319:1676,1988)によって施用することができる。具体的な患者対する最適
な投与量および治療プランは、患者の疾患の所見をモニタリングしてそれに基づいて調整
して治療することができ、医学分野の技術者によって容易に決めることができる。
【0059】
対象への組成物の施用は噴霧法、注射、経口、輸液、植込みまたは移植を含む任意の便
利な手段によって行ってもよい。本明細書に記載の組成物は皮下、皮内、腫瘍内、節内、
脊髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射または腹膜内で患者に施用されてもよい。一つ
の実施形態において、本発明のT細胞の組成物は皮内または皮下注射によって患者に施用
される。もう一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物はi.v.注射によって
施用することが好ましい。T細胞の組成物は直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入
してもよい。
【0060】
本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載の方法または本分野で既知のほかの
T細胞を治療的レベルに増殖させる方法によって活性化および増殖した細胞を使用し、任
意の数量の関連治療手段と合わせて(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施
用し、前記治療手段は、抗ウイルス療法、シドフォビルおよびインターロイキン-2、ア
ザシチジン(ARA-Cとして知られる)のような試薬で治療するもの、あるいはMS患
者に対するナタリズマブによる治療または乾癬患者に対するエファリズマブによる治療ま
たはPML患者に対するほかの治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態
において、本発明のT細胞は、化学治療、放射線、免疫抑制剤、たとえばシクロスポリン
A、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチルやFK506、抗
体またはほかの免疫治療剤と併用することができる。さらなる実施形態において、本発明
の細胞組成物は、骨髄移植、化学治療剤、たとえばフルダラビン、外部光線放射線療法(
XRT)、シクロホスファミドと併用して(たとえば、その前、同時またはその後に)患
者に施用する。たとえば、一つの実施形態において、対象は高投与量の化学治療の後、末
梢血幹細胞移植してもよい。一部の実施形態において、移植後、対象は本発明の増殖した
免疫細胞の注入を受ける。別の一つの実施形態において、増殖した細胞は外科手術前また
は外科手術後に施用される。
【0061】
患者に施用する以上の治療の投与量は治療する病症の精確な属性および治療するレシピ
エントによって変わる。患者へ施用する投与量の比率は本分野で許容される実践によって
実施することができる。通常、1回の治療または1回の治療クールに、1×106個~1
×1010個の本発明の修飾されたT細胞(たとえば、CAR-T-BCMA細胞)を、
たとえば静脈輸液の手段によって、患者に施用することができる。
【0062】
本発明の主な利点は以下の通りである。
(a)本発明のキメラ抗原受容体は、細胞外抗原結合ドメインが特定の抗BCMA s
cFvで、当該特定の抗BCMA scFvは特定のヒンジ領域および細胞内ドメインと
結合してなるCARは非常に強力な腫瘍細胞に対する殺傷能力を示し、しかも細胞毒性が
小さく、副作用が低い。
(b)本発明によって提供されるキメラ抗原受容体はCAR遺伝子を担持するレンチウ
イルスでT細胞を感染させた後、CARタンパク質の安定した発現および膜局在化を実現
することができる。
(c)本発明のCAR修飾T細胞は体内で生存時間が長く、かつ抗湯用効果が強く、本
発明で使用されるscFvはヒト化抗体またはヒト由来の抗体で、特異的な免疫拒絶反応
が生じる可能性が小さい。
【0063】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を
説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるも
のである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSa
mbrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コール
ド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989)に記載の条件などの通常の条件に、
あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に断らない限り、%と部は、重量で計算さ
れた。
【0064】
実施例1
レンチウイルス発現ベクターの構築
コードプラスミドの構築は、上海博益生物科技有限公司に全長DNAの合成およびクロ
ーンを依頼し、実現させた。pWPTレンチウイルスベクターをクローニングベクターと
し、クローニング部位はBamH IおよびSal I部位である。具体的な配列は前記
の通りである。
【0065】
実施例2
CAR-T細胞の製造
(1)健常者の静脉血を採取し、密度勾配遠心法によって単核球を単離した(PBMC
s)。
(2)0日目に、PBMCsを事前に最終濃度が5μg/mLのCD3モノクローナル
抗体(OKT3)および最終濃度が10μg/mLのRetronectin(TAKARA社から購入)
でコーティングした細胞培養瓶に接種し、培地は1%ヒト血清アルブミン含有GT-T5
51細胞培地で、培地に最終濃度が1000U/mLになるように組み換えヒトインター
ロイキン-2(IL-2)を添加し、37℃、飽和湿度、5% CO2のインキュベータ
ーで培養した。
【0066】
(3)1日目に、ゆっくりPBMCsを培養する上清液を吸い取って捨て、そして新し
い1%ヒト血清アルブミン含有GT-T551細胞培地を入れ、培地に最終濃度が100
0U/mLになるように組み換えヒトインターロイキン-2(IL-2)を入れ、37℃
、飽和湿度、5% CO2のインキュベーターで培養した。
(4)3日目に、新鮮な培養液、濃縮・精製されたCAR-BCMAsレンチウイルス
液、プロタミン硫酸塩(12μg/ml)、および最終濃度が1000U/mLのIL-
2を入れた。37℃、5% CO2のインキュベーターで12時間感染させた後、培養液
を捨て、新鮮な培地を入れ、37℃、5% CO2のインキュベーターで培養を続けた。
(5)6日目から、CART-BCMAs細胞を取って相応する活性検出試験を行うこ
とができた。
【0067】
実施例3
CAR遺伝子のT細胞ゲノムにおける組み込み率およびそれによってコードされるタン
パク質の膜表面における発現レベルの検出
それぞれ0.5×10
6の実施例2で7日目(
図3A)、21日目(
図3B)および2
9日目(
図3C)まで培養したCART-BCMAs細胞のサンプルを取り、組み換えヒ
トBCMAタンパク質のFc断片で染色した後、フローサイトメーターによってCAR-
BCMAタンパク質のT細胞の膜表面における発現レベルを分析した。
結果は
図3に示すように、本発明で設計された4つのCAR構造はいずれもその相応す
る修飾T細胞で発現され、そして細胞膜表面における局在化が完成した。
【0068】
実施例4
CART-BCMAsの体外活性化能力の検出
実施例2における7日目まで培養されたCART-BCMAs細胞で細胞の活性化レベ
ル指標であるタンパク質CD137およびIFNγの検出を行った。順に7日目まで培養
したCART-BCMA細胞を1×10
5個取り、それぞれBCMA陽性のK562-B
CMA+E7腫瘍細胞系、ならびにBCMA陰性のK562腫瘍細胞系と、あるいは腫瘍
細胞を添加せずに、200μlのGT-551培地において1:1の比率で18h培養し
た後、フローサイトメトリーによってT細胞の膜表面おけるCD137の発現レベルを、
ELISA方法によって培養上清におけるIFNγの分泌レベルを検出した。
結果は
図4Aおよび
図4Bに示すように、4つのCART細胞の表面はいずれもCD1
37の発現が検出され、かついずれも培養上清にIFNγの発現が検出された。中では、
CAR-BCMA-20は最も優れたCD137活性化レベルおよびIFNγ放出レベル
を有し、ヒト化MO6抗体配列に基づいて構築されたCART-BCMA-MO6はネズ
ミ由来抗体配列に基づいて構築されたCART-BCMA-CA8と比べて弱いCD13
7活性化レベルを有するが、高いIFNγ放出レベルを有する。
【0069】
実施例5
CART-BCMAs細胞による腫瘍細胞の末期アポトーシスの誘導活性の検出
(1)1:1、2.5:1、5:1、10:1、20:1の比率(
図5に示される比率
)で、それぞれ実施例2における17日目まで培養されたCART-BCMAs細胞を1
×10
4個のCFSEで標識されたBCMA陰性細胞(NH929)またはBCMA陽性
の構築された細胞NH929-BCMA過剰発現腫瘍細胞株と混合し、100μlのGT
-551培地において4h共培養した後、100μlの25%PI色素で15min染色
し、フローサイトメーターによってCFSE陽性細胞におけるPI陽性細胞の比率を分析
した。
(2)1:1、5:1、10:1、20:1、40:1の比率(
図6Bに示される比率
)で、それぞれ実施例2における22日目まで培養されたCART-BCMAs細胞を1
×10
4個のCFSEで標識されたBCMA陰性細胞(NH929)、BCMA陽性の構
築された細胞NH929-BCMA過剰発現腫瘍細胞株、または天然のBCMAを発現す
るMM.1S細胞系と混合し、100μlのGT-551培地において4h共培養した後
、100μlの25%PI色素で15min染色し、フローサイトメーターによってCF
SE陽性細胞におけるPI陽性細胞の比率を分析した。
結果は
図5および
図6に示すように、4つのCART細胞はいずれも好適にBCMA陽
性腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することができた。中では、CART-BCMA-20
はCART-BCMA-1よりも好適にBCMA陽性腫瘍細胞の末期アポトーシスを誘導
し、CART-BCMA-MO6およびCART-BCMA-CA8はBCMA陽性腫瘍
細胞の末期アポトーシスを誘導する能力が類似する。
【0070】
実施例6
CART-BCMAsのRPMI-8226骨髄腫異種移植モデルに対する抑制作用
対数増殖期にあるRPMI-8226細胞を収集し、6-8週のB-NDGマウスの右
側背部に4.0×10
6個の腫瘍細胞を皮下接種し、腫瘍体積が120mm
3程度に達し
た時点で、動物を腫瘍体積によってランダムに4群に各群の腫瘍体積の違いが平均値の1
0%よりも小さいように分けた後、それぞれ尾静脈から溶媒対照、7.5×10
6個のN
Tおよび7.5×10
6個のCART-BCMAs細胞を注射した。
結果は
図7に示すように、対照群と比べ、CART-BCMA-1およびCART-B
CMA-20の単回の尾静脈注射は、有効にヒト骨髄腫RPMI-8226細胞の生長を
抑制し(相対腫瘍増殖率%T/CRTV≦40%、P<0.05)、かつ顕著にヒト骨髄
腫担持マウスの生存時間を延ばし(対照群で生存期間が23日で、CART-BCMAs
治療群で生存期間の中央値>33日)、中では、CART-BCMA-1およびCART
-BCMA-20による治療を受けたマウスは、相対腫瘍増殖率および生存期間の中央値
に有意差がなかった。
【0071】
比較例
本願のキメラ抗原受容体のスクリーニング過程中において、発明者らは大量の候補配列
をテストしたが、以下、例を挙げて説明する。
スクリーニングされた抗体は、BCMA-1、BCMA-2、BCMA-69、BCM
A-72、BCMA-2A1、BCMA-1E1、BCMA-J22.9、BCMA-2
0、BCMA-CA8、BCMA-MO6である。上記抗体に基づいて構築された、BC
MAを標的とするキメラ抗原受容体の構造である。ここで、BCMA-1およびBCMA
-2はすでに発表されたCar-T配列で、スクリーニングの陽性対照として、CAR-
T細胞の製造方法は実施例2と同様で、検出方法は実施例3、4と同様である。
結果は
図1に示すように、それぞれ2ロットのCAR-T細胞の実施結果である。BC
MA-Fc融合タンパク質でCar-Tの発現を検出したところ、初代T細胞に高発現が
見られ、
図1Aを参照する。
図1Bにおいて、BCMA-1、BCMA-20、BCMA
-1E1、BCMA-CA8、BCMA-MO6、およびBCMA-J22.9はBCM
A抗原によって活性化されたことがわかる。
図1Cでは、活性化されたBCMA-1、B
CMA-20、BCMA-1E1、BCMA-CA8、BCMA-MO6、およびBCM
A-J22.9のCar-Tは比較的に高いIFN-γを生成したことが示された。これ
らの結果をまとめると、BCMA-1、BCMA-20、CA8およびMO6で得られた
CAR-Tは機能が近いことが示されたため、BCMA-20、CA8およびMO6CA
R-Tをさらに分析し、研究した。
【0072】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考
として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の
変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含
まれることが理解されるはずである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、BCMAと特異的に結合する抗BCMA抗原結合ドメインを含み、
前記抗BCMA抗原結合ドメインは、VL及びVHを含み、VLは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する抗体の軽鎖可変領域であり、VHは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する抗体の重鎖可変領域である
前記キメラ抗原受容体。
【請求項2】
VLが、VHのN末端に位置する、請求項1に記載のキメラ抗原受容体
【請求項3】
前記抗BCMA抗原結合ドメインが、一本鎖可変断片(scFv)である、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記抗BCMA抗原結合ドメインが、BCMA配列の24~41番目のアミノ酸残基を標的とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記キメラ抗原受容体の構造が、下記式IIで表される、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
S-VL-VH-H-TM-C-CD3ζ (II)
(式中、
Sはシグナルペプチドであり、
Hはヒンジ領域であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
Cは共刺激シグナル分子であり、
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列であり、
VHとVLはそれぞれ請求項1に記載の通りである。)
【請求項6】
配列番号9で示されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをさらに含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
配列番号12で示されるアミノ酸配列を有するヒンジ領域をさらに含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
配列番号13で示されるアミノ酸配列を有する膜貫通ドメインをさらに含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
配列番号14で示されるアミノ酸配列を有する共刺激シグナル分子をさらに含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する細胞内シグナル伝達配列をさらに含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体をコードする、核酸分子。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含むか、あるいは染色体に外来の請求項11に記載の核酸分子が組み込まれているか、あるいは請求項1に記載のキメラ抗原受容体を発現する、宿主細胞。
【請求項14】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞を生体外において製造する方法であって、請求項11に記載の核酸分子または請求項12に記載のベクターをT細胞内に形質導入することによって、前記CAR-T細胞を得る工程を含む、前記方法。
【請求項15】
請求項1に記載のキメラ抗原受容体、請求項11に記載の核酸分子、請求項12に記載のベクター、または請求項13に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する、製剤。
【請求項16】
癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物または製剤の製造における、請求項1に記載のキメラ抗原受容体、請求項11に記載の核酸分子、請求項12に記載のベクター、または請求項13に記載の宿主細胞の使用。
【請求項17】
前記腫瘍が、BCMA陽性腫瘍である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記腫瘍が、B細胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、または形質細胞性白血病である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
BCMAの発現に関連する癌又は腫瘍を予防および/または治療するための薬物組成物であって、
前記薬物組成物は、キメラ抗原受容体を発現する遺伝子改変T細胞を含み、
前記キメラ抗原受容体は、BCMAと特異的に結合する抗BCMA抗原結合ドメインを含み、
前記抗BCMA抗原結合ドメインは、VL及びVHを含み、VLは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する抗体の軽鎖可変領域であり、VHは、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する抗体の重鎖可変領域である
薬物組成物。
【請求項20】
前記腫瘍が、多発性骨髄腫である、請求項19に記載の薬物組成物。