(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011679
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】フィーダー及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 7/07 20060101AFI20230117BHJP
C03B 37/085 20060101ALI20230117BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20230117BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C03B7/07
C03B37/085
F27D3/14 A
F27D11/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167549
(22)【出願日】2022-10-19
(62)【分割の表示】P 2019562843の分割
【原出願日】2018-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2017249234
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】百々 大介
(72)【発明者】
【氏名】岸 典生
(57)【要約】
【課題】ガラス物品に欠陥が生じるという事態を確実に防止する。
【解決手段】溶融ガラスGmを内部に流通させるフィーダー3であり、溶融ガラスGmを加熱する電気発熱体5と、溶融ガラスGmが配置された第一空間S1と電気発熱体5が配置された第二空間S2とを仕切る仕切り板6とを備えている。電気発熱体5は、その長手方向Yが仕切り板6に沿うように配置されている。電気発熱体5は、仕切り板6から上方に離間しており、電気発熱体5と仕切り板6との間には、電気発熱体5と仕切り板6とに接触する複数の支持体7が、電気発熱体5の長手方向Yに間隔を置いて配置されている。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを内部に流通させるフィーダーにおいて、
前記溶融ガラスを加熱する電気発熱体と、前記溶融ガラスが配置された第一空間と前記電気発熱体が配置された第二空間とを仕切る仕切り部材とを備え、
前記電気発熱体は、その長手方向が前記仕切り部材に沿うように配置され、
前記電気発熱体は、前記仕切り部材から上方に離間しており、
前記電気発熱体と前記仕切り部材との間には、前記電気発熱体と前記仕切り部材とに接触する複数の支持体が、前記電気発熱体の前記長手方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とするフィーダー。
【請求項2】
前記電気発熱体が、前記溶融ガラスの流れ方向と直交する幅方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載のフィーダー。
【請求項3】
前記第二空間が、前記溶融ガラスの流れ方向と直交する幅方向で、前記溶融ガラスの全幅を覆うように連続していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィーダー。
【請求項4】
前記電気発熱体が、前記溶融ガラスの幅方向両端部の直上と、前記溶融ガラスの幅方向中央部の直上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のフィーダー。
【請求項5】
前記第二空間が、前記溶融ガラスの流れ方向で複数に分割されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフィーダー。
【請求項6】
前記仕切り部材が、アルミナ質電鋳煉瓦で形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のフィーダー。
【請求項7】
前記フィーダーの底部に、前記溶融ガラスをガラス繊維に成形するためのブッシングを備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフィーダー。
【請求項8】
フィーダーの内部に溶融ガラスを流通させる流通工程を備えたガラス物品の製造方法において、
前記フィーダーに前記溶融ガラスを加熱する電気発熱体を設けると共に、前記溶融ガラスが配置された第一空間と前記電気発熱体が配置された第二空間とを仕切る仕切り部材を設け、
前記電気発熱体は、その長手方向が前記仕切り部材に沿うように配置され、
前記電気発熱体は、前記仕切り部材から上方に離間しており、
前記電気発熱体と前記仕切り部材との間には、前記電気発熱体と前記仕切り部材とに接触する複数の支持体が、前記電気発熱体の前記長手方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスを内部に流通させるフィーダー及びこれを用いたガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガラス繊維を成形するためのブッシングや、板ガラスを成形するための成形体等に溶融ガラスを供給する際には、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスを保温し、過度の温度低下を防止する必要がある。そのための方法としては、フィーダーの内部空間に、天然ガス等の燃料と空気(酸素)とを混合して燃焼させるバーナーを配置し、その熱によって溶融ガラスを加熱する方法が広く採用されるに至っている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、バーナーを用いて加熱する方法の場合、(1)バーナーの熱により、溶融ガラスに含まれる環境負荷物質、例えば酸化ホウ素(B2O3)が揮発しやすいこと、(2)バーナーの燃焼状態によって内部空間における酸化還元雰囲気が変動しやすく、溶融ガラスにリボイル泡が発生しやすいこと、(3)燃焼排ガス中に含まれたダストが溶融ガラス中に混入すると、溶融ガラスから製造されるガラス物品に欠陥(異物)が生じる原因となること、などの不具合が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、例えば特許文献2には、フィーダーの内部空間に、バーナーに代えて電気発熱体を配置し、その熱により溶融ガラスを加熱する方法が開示されている。詳細には、同文献には、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスの温度分布を均一化するために、電気発熱体から溶融ガラスの表面に至る熱の伝搬経路の一部に、溶融ガラスに対する直接の伝熱を制限する制限部を設けることが開示されている。これにより、電気発熱体から溶融ガラスへの直接の伝熱を制限すると共に、制限部を迂回して溶融ガラスの表面に至る伝熱経路、及び電気発熱体からの熱で制限部が加熱された後、制限部からの熱として溶融ガラスの表面に至る伝熱経路の二つの経路によって、電気発熱体からの熱を溶融ガラスに伝えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-513183号公報
【特許文献2】国際公開第2014/185132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示の構成では、制限部を迂回して溶融ガラスの表面に至る伝熱経路において、電気発熱体が配置された空間と溶融ガラスが配置された空間とが、直接連通している。そのため、電気発熱体の一部が不具合等によって欠損した場合、欠損した部位が、両空間の連通部を経由して溶融ガラス中に混入するおそれがある。特に、電気発熱体の一部がスパークにより欠損した場合、欠損した部位が、スパーク時の衝撃により周囲に飛び散って溶融ガラス中に混入しやすくなる。このように欠損した部位が溶融ガラス中に混入すると、製造されるガラス物品に欠陥が生じる原因となる。
【0007】
本発明は、ガラス物品に欠陥が生じるという事態を確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスを内部に流通させるフィーダーにおいて、溶融ガラスを加熱する電気発熱体と、溶融ガラスが配置された第一空間と電気発熱体が配置された第二空間とを仕切る仕切り部材とを備え、電気発熱体は、その長手方向が仕切り部材に沿うように第二空間に配置され、電気発熱体は、仕切り部材から上方に離間しており、電気発熱体と仕切り部材との間には、電気発熱体と仕切り部材とに接触する複数の支持体が、電気発熱体の長手方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とする。
【0009】
(2) 上記(1)の構成において、電気発熱体が、溶融ガラスの流れ方向と直交する幅方向に沿って延びていることが好ましい。
【0010】
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、第二空間が、溶融ガラスの流れ方向と直交する幅方向で、溶融ガラスの全幅を覆うように連続していることが好ましい。
【0011】
(4) 上記(3)の構成において、電気発熱体が、前記溶融ガラスの幅方向両端部の直上と、前記溶融ガラスの幅方向中央部の直上に配置されていることが好ましい。
【0012】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、第二空間が、溶融ガラスの流れ方向で複数に分割されていてもよい。
【0013】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、仕切り部材が、アルミナ質電鋳煉瓦で形成されていることが好ましい。
【0014】
(7) 上記(1)~(6)のいずれかの構成において、フィーダーの底部に、溶融ガラスをガラス繊維に成形するためのブッシングを備えていることが好ましい。
【0015】
(8) 上記課題を解決するために創案された本発明は、フィーダーの内部に溶融ガラスを流通させる流通工程を備えたガラス物品の製造方法において、フィーダーに溶融ガラスを加熱する電気発熱体を設けると共に、溶融ガラスが配置された第一空間と電気発熱体が配置された第二空間とを仕切る仕切り部材を設け、電気発熱体は、その長手方向が仕切り部材に沿うように配置され、電気発熱体は、仕切り部材から上方に離間しており、電気発熱体と仕切り部材との間には、電気発熱体と仕切り部材とに接触する複数の支持体が、電気発熱体の長手方向に間隔を置いて配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィーダー内部において発熱体が欠損することによってガラス物品に欠陥が生じるという事態を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るフィーダーを備えたガラス物品の製造装置を示す縦断側面図である。
【
図4A】電気発熱体の支持形態を説明するための平面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図7】本発明の第四実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図8】本発明の第五実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図9】本発明の第六実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図10】本発明の第七実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図11】本発明の第八実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図12】本発明の第九実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【
図13】本発明の第十実施形態に係るフィーダーを示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【0019】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係るガラス物品の製造方法は、ガラス物品の製造装置1を用いて、ガラス物品としてのガラス繊維Gfを製造するものである。ガラス物品の製造装置1は、ガラス原料Grを溶融して溶融ガラスGmを形成する溶融炉2と、溶融炉2の下流側に接続され、内部に溶融ガラスGmを流通させるフィーダー3とを備えている。溶融炉2の溶融空間やフィーダー3の流通空間を区画形成する壁部は、煉瓦等の耐火物で形成されている。
【0020】
溶融炉2の上流側の端部には、珪砂、石灰石、ソーダ灰、カレット等を混合したガラス原料Grを炉内に投入するための投入口2aが設けられている。投入口2aには、スクリューフィーダー等の原料供給手段(図示省略)が配置されている。
【0021】
溶融炉2には、図示省略の加熱手段が更に設けられている。加熱手段としては、例えば、溶融ガラスGmの上部に配置されたガスバーナー、電気ヒーターや、溶融ガラスGm中に浸漬された電極等の電気加熱手段が使用できる。加熱手段による加熱によって投入口2aから投入されたガラス原料Grを溶融することで、溶融ガラスGmが連続的に形成される。溶融ガラスGmは、溶融炉2の下流側の端部からフィーダー3内へと流入する。なお、溶融炉2は、ガラス原料Grをガス燃焼のみ、もしくは電気加熱のみで溶融してもよいし、ガス燃焼と電気加熱を併用して溶融してもよい。
【0022】
フィーダー3の底部3aには、溶融ガラスGmの流れ方向Xに間隔をおいて、白金又は白金合金で形成された複数のブッシング4が設けられている。各ブッシング4には、複数のブッシングノズル(図示省略)が設けられている。各ノズルは、溶融ガラスGmを流下してガラス繊維Gfを成形する。なお、各ノズルから流下した溶融ガラスGmは下方に延伸されつつ所定径のガラス繊維Gf(ガラスフィラメント)に成形される。その後、ガラス繊維Gfは集束剤を塗布されることで複数本が集束されてガラスストランドとなる。
【0023】
すなわち、本実施形態に係るガラス物品の製造方法は、溶融炉2でガラス原料Grを溶融して溶融ガラスGmを形成する溶融工程と、溶融ガラスGmをフィーダー3の内部に流通させて、フィーダー3の底部3aに設けられたブッシング4に供給する供給工程と、ブッシング4に設けられたブッシングノズルから溶融ガラスGmを流下してガラス繊維Gfを成形する成形工程とを備えている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、フィーダー3は、溶融ガラスGmを加熱して保温する電気発熱体5と、溶融ガラスGmが配置された第一空間S1と電気発熱体5が配置された第二空間S2とを完全に仕切る仕切り部材である仕切り板6とを更に備えている。溶融ガラスGmは、仕切り板6を介して間接的に加熱される。詳細には、電気発熱体5からの熱及び電気発熱体5によって加熱された第二空間S2からの熱によって仕切り板6が加熱された後、仕切り板6からの熱で溶融ガラスGmが加熱される。なお、仕切り部材は、板状に限定されるものではなく、第一空間S1と第二空間S2を仕切ることができ、電気発熱体5の熱等により溶融ガラスGmを間接的に加熱できるものであれば、任意の形状を選択できる。例えば、ブロック状などであってもよい。
【0025】
このような構成によれば、第一空間S1と第二空間S2とが互いに連通部を有さない独立した空間となるため、電気発熱体5の一部がスパーク等で欠損した場合であっても、欠損した部位は第二空間S2内に確実にとどまる。従って、欠損した部位が、電気発熱体5の欠損時や交換時に、第一空間S1に侵入して溶融ガラスGm中に混入することがないため、欠陥の少ない高品質なガラス繊維Gfを成形できる。
【0026】
第二空間S2は、溶融ガラスGmの流れ方向Xと直交する幅方向Yでは、溶融ガラスGmの全幅を覆うように連続し、流れ方向Xでは、幅方向Yに沿って延びる分割部材である梁3bによって複数に分割されている。各第二空間S2には、一つ又は複数(図示例では二つ)の電気発熱体5が横向きで収容される。各第二空間S2では、電気発熱体5の加熱温度が個別に調整可能となっており、溶融ガラスGmの流れ方向Xの温度分布が、第二空間S2に対応した複数のゾーンで管理されるようになっている。なお、第二空間S2は、幅方向Yで複数に分割されていてもよいし、流れ方向Xで複数に分割されていなくてもよい。
【0027】
電気発熱体5は、例えば炭化珪素(SiC)等からなり、通電により発熱する抵抗発熱体である。本実施形態では、電気発熱体5は、折り曲げ部5aと、折り曲げ部5aを介して並列に配列された二本の直線部5bとを有するU字状の部材(
図4A及び
図4Bを参照)である。電気発熱体5のうち二本の直線部5bは、フィーダー3の一方の側壁部に配置された支持ブロック3cによって支持されている。この状態で、二本の直線部5bは、流れ方向Xで互いに対向するように幅方向Yに沿って延びている。すなわち、U次状の電気発熱体5は、幅方向に沿って横向きに配置されている。従って、電気発熱体5の上下方向の厚みは薄く抑えられるため、第二空間S2の体積を小さくして、第二空間S2における熱損失を抑制できる。また、電気発熱体5の端部(直線部5bの端部)がフィーダー3の側方空間を向くため、フィーダー3の側方空間を利用して電気発熱体5の交換作業(引き抜き作業等)を簡単に実施できる。なお、二本の直線部5bは、上下方向で互いに対向するように幅方向Yに沿って延びていてもよい。
【0028】
第二空間S2内における電気発熱体5の幅方向Yの長さは、溶融ガラスGmの略全幅をカバーできる長さに設定されている。これにより、電気発熱体5が、溶融ガラスGmの幅方向両端部の直上と、溶融ガラスGmの幅方向中央部の直上とに配置された状態となっている。従って、溶融ガラスGmの全幅を均一に加熱でき、溶融ガラスGmの温度分布のばらつきを抑制できる。なお、第二空間S2内における電気発熱体5の幅方向Yの長さは、溶融ガラスGmの保温に必要な熱量に応じて適宜調整できる。もちろん、電気発熱体5に供給する電流の大きさを調整することでも、溶融ガラスGmに与える熱量は調整できる。
【0029】
仕切り板6は、第二空間S2に対応するように、幅方向Yでは溶融ガラスGmの全幅を覆うように連続し、流れ方向Xでは複数に分割されている。仕切り板6を流れ方向Xで複数に分割することで、一枚当たりの面積及び重量が小さくなるため、仕切り板6が撓みにくくなる。
【0030】
仕切り板6は、アルミナ質電鋳煉瓦で形成されていることが好ましい。このようにすれば、仕切り板6の熱伝導がよくなるため、仕切り板6が効率よく加熱される。その結果、仕切り板6からの熱で溶融ガラスGmを加熱しやすくなる。また、仕切り板6が熱劣化しにくくなるため、仕切り板6の耐久性が向上する。なお、仕切り板6の材質はアルミナ質電鋳煉瓦に限定されず、例えば焼成煉瓦等であってもよい。仕切り板6の厚みは、5~100mmが好適である。
【0031】
図4A及び
図4Bに示すように、電気発熱体5は、第二空間S2内において、仕切り板6から上方に離間した状態で支持されている。詳細には、電気発熱体5は、仕切り板6上に間隔を置いて配置された複数の支持体7によって下方から支持されている。もちろん、電気発熱体5の支持態様はこれに限定されない。なお、支持体7の形状は特に限定されるものではなく、例えば、四角柱などの多角柱や円柱などであってもよい。あるいは、支持体7は、複数に分割されたものではなく、例えば、一枚の板状体などであってもよい。支持体7の材質は耐火物であれば特に限定されるものではないが、例えば、耐火煉瓦、セラミックス等で形成される。
【0032】
以下、本発明の他の実施形態に係るフィーダーについて説明する。なお、他の実施形態に係るフィーダーでは、第一空間と第二空間との間が仕切り板によって完全に仕切られていることは共通するが、その構造などが一部変更されている。他の実施形態に係るフィーダーにおいて、上記の第一実施形態に係るフィーダーと同一の機能、又は形状を有する構成要素については、各実施形態について説明するための図面に、同一の符号を付すことにより重複する説明を省略している。
【0033】
(第二実施形態)
図5に示すように、第二実施形態に係るフィーダー3が、第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、第二空間S2に配置された電気発熱体5が幅方向に間隔を置いて複数(図示例は2つ)設けられている点である。
【0034】
電気発熱体5は、第二空間S2の幅方向において、中央を基準に、対称な両側方に存する一対の電気発熱体5を一組として、複数組が溶融ガラスGmの流れ方向Xに沿って等間隔で配置されている。また、電気発熱体5の各々は、U字状をなすと共に、フィーダー3の内周壁における上部に取り付けられている。なお、それぞれのU字状の電気発熱体5は、幅方向に沿って横向きに配置されている。
【0035】
(第三~第五実施形態)
図6~
図8に示すように、第三~第五実施形態に係るフィーダー3は、第二実施形態に係るフィーダーにおいて、U字状の電気発熱体5の向きや取り付け位置を変更したものである。
【0036】
図6に示す第三実施形態に係るフィーダー3では、電気発熱体5が幅方向に沿って縦向きに配置されている。
図7に示す第四実施形態に係るフィーダー3では、電気発熱体5の取り付け位置が、フィーダー3の内周壁における側部3dから上部へと変更されると共に、電気発熱体5が幅方向に沿って縦向きに配置されている。
図8に示す第五実施形態に係るフィーダー3では、電気発熱体5の取り付け位置が、フィーダー3の内周壁における側部3dから上部へと変更されると共に、電気発熱体5が流れ方向に沿って縦向きに配置されている。
【0037】
なお、本発明において、電気発熱体5の向きや取り付け位置は特に限定されないが、第二空間S2の体積を小さくして、電気発熱体5による加熱効率を上げる観点からは、電気発熱体5は横向き(好ましくは水平面上)に配置されることが好ましい。
【0038】
(第六実施形態)
図9に示すように、第六実施形態に係るフィーダー3が、第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、フィーダー3の内周壁における側部3dに土手部3eが形成されている点と、土手部3eの上方に電気発熱体5を収容するための凹部Cが形成されている点である。
【0039】
内周壁の側部3dは、その一部が幅方向の中央に向かって張り出しており、この張り出した部位が土手部3eを形成している。仕切り板6は、幅方向両側のそれぞれの土手部3eの上端部の間に跨るように設けられている。土手部3eが張り出した寸法は、電気発熱体5の幅方向寸法よりも長くなるように設定されており、電気発熱体5が凹部Cに完全に収容されるように構成されている。なお、本実施形態では、U字状の電気発熱体5は、フィーダー3の内周壁の上部に取り付けられ、幅方向に沿って縦向きに配置されている。
【0040】
(第七実施形態)
図10に示すように、第七実施形態に係るフィーダー3が、第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、フィーダー3の内周壁における上部と側部3dとの間に通路Pが形成されている点と、通路Pを介して、第二空間S2を幅方向における側部3dの外方まで拡張した拡張空間Saが形成されている点である。
【0041】
仕切り板6は、幅方向両側のそれぞれの側部3dの上端部の間に跨るように設けられている。拡張空間Saは、溶融ガラスGの流れ方向に沿って形成されており、その上部には電気発熱体5が収容されている。なお、本実施形態では、U字状の電気発熱体5は、フィーダー3の内周壁の上部に取り付けられ、幅方向に沿って縦向きに配置されている。
【0042】
なお、第七実施形態で説明したように、本発明では、溶融ガラスGmを加熱できる範囲であれば、電気発熱体5を溶融ガラスGmの直上から外れた位置に配置してもよい。
【0043】
(第八実施形態)
図11に示すように、第八実施形態に係るフィーダー3は、第七実施形態に係るフィーダーにおいて、電気発熱体の数、及び、その取り付け位置を変更したものである。
【0044】
第八実施形態に係るフィーダー3では、電気発熱体5の取り付け位置が、フィーダー3の内周壁における上部から、拡張空間Saを囲う側壁に変更されている。また、電気発熱体の数が、一対(2つ)から三対(6つ)に変更されると共に、一対の電気発熱体5を一組とした三組が、拡張空間Sa内において、上下方向に等間隔で配置されている。
【0045】
(第九実施形態)
図12に示すように、第九実施形態に係るフィーダー3が、第一実施形態に係るフィーダーと相違している点は、電気発熱体5の数が1つのみとされている点と、この電気発熱体5の周囲(下方及び両側方)が仕切り板6により囲われている点である。
【0046】
電気発熱体5は、幅方向の中央において、フィーダー3の内周壁における上部に取り付けられる共に、溶融ガラスGの流れ方向に沿って複数が等間隔で配置されている。仕切り板6は、電気発熱体5の下方で水平方向に沿って延びる第一部分と、電気発熱体5の幅方向両側方で鉛直方向に沿って延びる第二部分とを備えており、これらの部分で第二空間S2を区画形成している。
【0047】
(第十実施形態)
図13に示すように、第十実施形態に係るフィーダー3は、第一実施形態に係るフィーダーにおいて、U字状の電気発熱体から棒状の電気発熱体に変更したものである。
【0048】
電気発熱体5は、フィーダー3の内周壁における一方の側部3dから他方の側部3dまで幅方向に連続している。
【0049】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
上記の実施形態において、フィーダーは、ガラス繊維を成形するためのブッシングに溶融ガラスを供給する態様となっているが、これに限定されない。例えば、フィーダーは、管ガラスや板ガラス(ガラスロールを含む)等のガラス物品を成形するための成形体に溶融ガラスを供給する態様であってもよい。
【0051】
上記の実施形態において、電気発熱体がU字状や棒状(直線状)をなす場合を説明したが、電気発熱体の形状はこれに限定されない。例えば、コの字状(平行に延びる長さが等しい発熱体の端部どうしを、垂直に延びる発熱体により接続され、接続部の角度が90°となる形状)や蛇行状などの任意の形状を採用し得るが、面状加熱できる形状が好ましい。
【0052】
上記の実施形態において、フィーダーの一方側の側壁部から幅方向に沿って延びる一つの電気発熱体で溶融ガラスの全幅を加熱する場合を説明したが、電気発熱体の配置態様はこれに限定されない。例えば、複数の電気発熱体で、溶融ガラスの全幅を加熱するようにしてもよい。詳細には、幅方向の両側から、幅方向の中央を基準に対称的に一対の電気発熱体を延ばして、溶融ガラスの全幅を加熱するようにしてもよい。ただし、この場合であっても、一対の電気発熱体の少なくとも一方、又は一対の電気発熱体とは別の電気発熱体が、溶融ガラスの幅方向中央部の直上に配置されていることが好ましい。
【0053】
なお、本願は以下の発明を含む。
【0054】
(1) 溶融ガラスを内部に流通させるフィーダーにおいて、溶融ガラスを加熱する電気発熱体と、溶融ガラスが配置された第一空間と電気発熱体が配置された第二空間とを完全に仕切る仕切り部材とを備えていることを特徴とする。このような構成によれば、溶融ガラスが配置された第一空間と、電気発熱体が配置された第二空間とが、仕切り部材によって完全に仕切られるため、それぞれ独立した空間となる。従って、電気発熱体の一部がスパーク等で欠損した場合であっても、欠損した部位は、第二空間内に確実にとどまり、第一空間の溶融ガラス中に混入することがない。ここで、電気発熱体からの熱及び電気発熱体によって加熱された第二空間からの熱によって仕切り部材が加熱された後、仕切り部材からの熱によって溶融ガラスが加熱される。すなわち、溶融ガラスは、仕切り部材を介して間接的に加熱される。
【0055】
(2) 上記(1)の構成において、電気発熱体の少なくとも一部が、溶融ガラスの直上に配置されていることが好ましい。このようにすれば、電気発熱体の熱が溶融ガラスに伝わりやすくなるため、溶融ガラスの加熱効率がよくなる。
【0056】
(3) 上記(2)の構成において、電気発熱体が、第二空間に横向きで配置されていることが好ましい。このようにすれば、電気発熱体を収容する第二空間の体積を小さくできるため、第二空間における熱損失が少なくなる。従って、電気発熱体に入力する電気エネルギーを抑えつつ、溶融ガラスを効率よく加熱できる。
【0057】
(4) 上記(3)の構成において、電気発熱体が、溶融ガラスの流れ方向と直交する幅方向に沿って延びていることが好ましい。このようにすれば、電気発熱体の端部がフィーダーの側方空間を向くため、フィーダーの側方空間を利用して電気発熱体の交換作業を実施できる。フィーダーの側方空間は、その上方空間に比べて温度が低く、またスペース的な余裕がある場合が多い。従って、フィーダーの上方空間を利用して電気発熱体の交換作業を実施する場合に比べて、電気発熱体の交換作業が簡単になる。なお、電気発熱体が溶融ガラスの流れ方向や上下方向に沿って延びている場合は、フィーダーの上方空間を利用して電気発熱体の交換作業を実施しなければならない場合が多い。
【0058】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、第二空間が、溶融ガラスの流れ方向と直交する幅方向で、溶融ガラスの全幅を覆うように連続していることが好ましい。第二空間は、電気発熱体の熱で加熱される加熱空間である。従って、第二空間が溶融ガラスの全幅を覆うように連続していると、第二空間に対応する位置に設けられる仕切り部材からの熱で溶融ガラスの全幅を均一に加熱しやすくなる。その結果、フィーダーの内部を流通する溶融ガラスの温度分布が均一化されるため、溶融ガラスから高品質なガラス物品を製造できる。
【0059】
(6) 上記(5)の構成において、電気発熱体が、溶融ガラスの幅方向両端部の直上と、溶融ガラスの幅方向中央部の直上に配置されていることが好ましい。このようにすれば、仕切り部材が幅方向でより素早く均一に加熱されるため、仕切り部材からの熱で溶融ガラスの全幅をより均一に加熱しやすくなる。
【0060】
(7) 上記(1)~(6)のいずれかの構成において、第二空間が、溶融ガラスの流れ方向で複数に分割されていてもよい。このようにすれば、溶融ガラスの流れ方向の温度分布を複数のゾーンで管理できるため、溶融ガラスの溶融状態を緻密に制御できる。
【0061】
(8) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、仕切り部材が、アルミナ質電鋳煉瓦で形成されていることが好ましい。アルミナ質電鋳煉瓦は、熱伝導がよく熱劣化しにくいため、仕切り部材として好適である。
【0062】
(9) 上記(1)~(8)のいずれかの構成において、フィーダーの底部に、溶融ガラスをガラス繊維に成形するためのブッシングを備えていることが好ましい。
【0063】
(10) フィーダーの内部に溶融ガラスを流通させる工程を備えたガラス物品の製造方法において、フィーダーに溶融ガラスを加熱する電気発熱体を設けると共に、溶融ガラスが配置された第一空間と電気発熱体が配置された第二空間とを完全に仕切る仕切り部材を設けたことを特徴とする。このような構成によれば、上述の対応する構成と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ガラス物品の製造装置
2 溶融炉
3 フィーダー
4 ブッシング
5 電気発熱体
6 仕切り板(仕切り部材)
Gr ガラス原料
Gm 溶融ガラス
Gf ガラス繊維
S1 第一空間
S2 第二空間
X 流れ方向
Y 幅方向