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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116822
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/814 20230101AFI20230815BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230815BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230815BHJP
   H10K 59/82 20230101ALI20230815BHJP
   H10K 71/60 20230101ALI20230815BHJP
【FI】
H10K50/814
H10K50/10
H10K59/10
H10K59/82
H10K71/60
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104234
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2021176510の分割
【原出願日】2015-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋平
(57)【要約】
【課題】発光装置が有する導電体の幅を広げずに導電体を高くすることにより、導電体の抵抗を下げる。
【解決手段】発光装置10は基板100及び発光部を有している。発光部は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。導電体180は第1方向(y方向)に延在しており、少なくとも一部が第1電極110のいずれかの面に接している。導電体180は導電粒子を含んでおり、かつ第1部分181及び第2部分183を有している。第2部分183は第1部分181よりも厚い。第1部分181及び第2部分183は第1方向に並んでおり、かつ繋がっている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成され、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を含む発光部と、
第1方向に延在しており、少なくとも一部が前記第1電極のいずれかの面に接している導電体と、
を備え、
前記導電体は、導電粒子を含んでおり、かつ、第1部分と、前記第1部分よりも厚い第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分は前記第1方向に並んでおり、かつ繋がっている発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に発光素子や光電変換素子などの光素子を形成した光装置には、透光性の導電材料を用いた透明電極が形成されている。透光性の導電材料は一般的に抵抗が高いため、透明電極の抵抗は高い。このため、透明電極の抵抗を下げるために、例えば特許文献1に記載されているように、透明電極には補助電極が形成されることがある。特許文献1において、補助電極は透明電極の上に形成されており、また、絶縁膜で被覆されている。また、特許文献1には、補助電極の形成方法の一つとして、インクジェット印刷が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-94348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助電極などの導電体の抵抗を下げるためには、導電体の断面積を広げる必要がある。導電体の断面積を広くするためには、導電体の幅を広くするか、導電体を高くする必要がある。しかし、導電体は一般的に遮光性の材料を用いて形成されているため、導電体の幅を広くすると、光素子のうち光が透過する領域が狭く、または、光装置の開口率が小さくなってしまう。また、インクジェット法による塗布により導電体を形成した場合に、導電体の高さを変更することは困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、発光装置が有する導電体の幅を広げずに導電体を高くすることにより、導電体の抵抗を下げることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、基板と、
前記基板に形成され、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極の間に位置する有機層を含む発光部と、
第1方向に延在しており、少なくとも一部が前記第1電極のいずれかの面に接している導電体と、
を備え、
前記導電体は、導電粒子を含んでおり、かつ、第1部分と、前記第1部分よりも厚い第2部分とを有し、
前記第1部分と前記第2部分は前記第1方向に並んでおり、かつ繋がっている発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
図1】第1の実施形態に係る導電体の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4】導電体の形成方法を説明するための図である。
図5】第1層を形成してから第2層を形成するまでの時間と、導電体の断面プロファイルの良否を調べた結果を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る導電体の構成を示す平面図である。
図7図6のB-B断面図である。
図8】実施例1に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図9図8から第2電極を取り除いた図である。
図10図9から絶縁層及び有機層を取り除いた図である。
図11図8のC-C断面図である。
図12】実施例2に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図13図12のD-D断面図である。
図14】実施例3に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図15】実施例4に係る発光装置の製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る導電体180の平面図である。図2図1のA-A断面図であり、図3図1のB-B断面図である。実施形態に係る導電体180は基板100の上に形成されており、第1の方向(図1におけるx方向)に延在している。導電体180は、第1層182の上に第2層184を重ねた構成を有している。第1層182及び第2層184は、いずれも導電性を有しており、導電粒子(例えば銀ナノ粒子などのナノ金属粒子)を含んだインクを用いて、インクジェット法により形成されている。このため、第1層182及び第2層184は、複数の導電粒子が焼結によって結合した構成を有している。なお、詳細を後述するように、複数の導電粒子を焼結するための熱処理は、第1層182及び第2層184が形成された後に行われている。このため、第1層182と第2層184の境界は存在しない場合もある。
【0011】
また、図2及び図3に示す例において、導電体180は第1層182と第2層184の2層を有している。言い換えると、導電体180は導電粒子を含むインクを重ね塗りすることによって形成されている。このため、導電粒子を含むインクを重ね塗りせずに導電体180を形成した場合と比較して、導電体180の幅を広げずに、導電体180を高くすることができる(例えば1.9倍以上2.1倍以下)。また、導電体180の幅wは、例えば100μm以下であり、導電体180の幅に対する高さの比(アスペクト比)は、例えば0.002(0.1/50)倍以上になる。ただし、導電体180はさらに多くの層を重ねた構造(重ね塗りした構造)を有していてもよい。この場合、導電体180をさらに高くすることができ、また上記したアスペクト比をさらに大きくすることができる。
【0012】
なお、上記したように、導電体180の第1層182及び第2層184はインクジェット法を用いて形成されている。このため、図2及び図3に示すように、導電体180の端部は、導電体180の中央から離れるにしたがって、なだらかに薄くなっている。
【0013】
導電体180は、例えば発光装置の透明電極の補助電極であるが、これに限定されない。また、基板100と導電体180の間には、他の層(例えば透明導電層)が形成されていてもよい。
【0014】
図4は、導電体180の形成方法を説明するための図である。本図に示す処理は、例えば大気中で行われる。また、基板100は、例えば室温(20℃)である。まず、図4(a)に示すように、吐出ヘッド200を、所定の位置から第1の方向(図4におけるx方向)に動かしながら、吐出ノズル202からインクの液滴を吐出することにより、第1層182を形成する。一般的に、インクジェット用の吐出ヘッド200は複数の吐出ノズル202を有しているが、導電体180を形成するときは、一部の吐出ノズル202(例えば一つの吐出ノズル202)から液滴を吐出させるのが好ましい。
【0015】
次いで、図4(b)に示すように、吐出ヘッド200を第1の方向とは逆方向に動かし、吐出ヘッド200を上記した所定の位置に戻す。そして、所定時間が経過した後、吐出ヘッド200を再び第1の方向に動かしながら、吐出ノズル202からインクの液滴を吐出する。これにより、第1層182の上に第2層184が形成される。
【0016】
このように、第2層184は、第1層182を形成してから、所定時間が経過した後に形成される。このため、第2層184が形成される前に、第1層182はある程度乾燥する。従って、第1層182を焼結する前に第2層184を形成しても、第2層184は第1層182の上に積み重なる。言い換えると、インクを塗り重ねることによって、導電体180の高さは高くなり、また、この塗り重ねの際に導電体180は広がらない。なお、第1層182が乾燥しすぎた場合、第2層184の表面の凹凸が大きくなりすぎる。
【0017】
なお、インクが吐出ノズル202から吐出された後、基板100に付着するまでの間の乾燥度合いは、液滴の大きさによって変化する。このため、液滴が大きくなるにつれて上記した所定時間を長くするのが好ましい。具体的には、第1層182を形成するときの液滴の量をa(ピコリットル:pl)、上記した所定時間をb(秒)としたとき、0.5≦b/a≦3であるのが好ましい。このようにすると、第2層184が形成される前の第1層182の乾燥状態を適切な状態、例えば、第1層182の端部が乾燥した状態にすることができる。
【0018】
ここで、第2層184を形成する際に用いられた吐出ノズル202が第1層182を形成する際に用いられた吐出ノズル202と異なっている場合、第1層182と第2層184の位置が、図4におけるy方向に数十μm程度ずれる可能性が高い。これは、吐出ヘッド200を図4におけるy方向に動かして位置合わせを行う必要が出るためであり、また、この位置合わせの精度に限界があるためである。そこで本実施形態では、第2層184を形成する際に用いられた吐出ノズル202として、第1層182を形成する際に用いられた吐出ノズル202と同一のものが使用される。これにより、第1層182を形成してから第2層184を形成するまでの間に、吐出ヘッド200をy方向に動かす必要がなくなる。従って、第2層184を高い精度で第1層182に重ねることができる。
【0019】
その後、基板100を加熱する。これにより、第1層182に含まれる複数の導電粒子と第2層184に含まれる複数の導電粒子は焼結し、導電体180となる。この際、導電体180には導電粒子の形状の少なくとも一部が残る。
【0020】
なお、第1層182の乾燥を早めるために、第1層182を形成した後、第2層184を形成する前に、基板100を加熱してもよい。この時の加熱条件(加熱温度及び加熱時間)は、第1層182の導電粒子が焼結しない程度である。このようにすると、導電体180の形成時間を短くすることができる。
【0021】
図5は、銀ナノ粒子を含むインクを用いて導電体180を形成した場合における、第1層182を形成してから第2層184を形成するまでの時間(上記した所定時間)と、導電体180の断面プロファイルの良否を調べた結果を示す図である。また、導電体180の形成は大気圧で行われ、また基板100の温度は20℃である。また、吐出ノズル202から吐出される液滴の量は、7plである。この図に示すように、上記したb/aが0.7及び1.4のとき、導電体180の断面プロファイルは良好である。一方、b/aが5を超えると、導電体180の断面プロファイルは劣化する。このことから、0.5≦b/a≦3であるのが好ましい、といえる。
【0022】
以上、本実施形態によれば、導電体180は、インクジェット法を用いて、インクを重ね塗りした後に、焼成することによって形成されている。このため、導電体180の幅を広げなくても、導電体180を高くすることができる。従って、導電体180の幅を広げなくても導電体180の抵抗を下げることができる。また、導電体180の第1層182をある程度乾燥させてから導電体180の第2層184を形成しているため、導電体180の幅は広がらず、また導電体180の上面の凹凸も少ない。また、第1層182を形成した後に焼成工程を経て、第2層184を塗布及び焼成すると、第1層182の上面の凹凸が発生するため、第2層184の幅すなわち導電体180の幅が広がる。これに対して本実施形態では、インクを重ね塗りした後に焼成するため、導電体の180の幅は広がらない。
【0023】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る導電体180の構成を示す平面図である。図7図6のB-B断面図である。本実施形態に係る導電体180は、第1部分181及び第2部分183を有している点を除いて、第1の実施形態に係る導電体180と同様の構成である。
【0024】
第1部分181は第1層182のみで形成されている。一方、第2部分183は第2層184と第1層182を積層することにより形成されている。このため、第2部分183は第1部分181よりも厚い。このようにするためには、第2層184を第2部分183となる部分にのみ形成すればよい。
【0025】
本図に示す例では、第1部分181は導電インクを1回塗布することにより形成されており、第2部分183は導電インクを2回塗布することにより形成されている。このため、第2部分183の厚さは第1部分181の厚さの180%以上220%以下である。ただし、第2部分183は、さらに導電インクが塗り重ねられていてもよい。この場合、第2部分183の厚さは第1部分181の厚さのn倍(ただしnは正数であり、かつ3以上)の90%以上110%以下になる。また、第1部分181の幅は、第2部分183の幅の90%以上120%以下である。
【0026】
なお、第1部分181の長さ及び第1層182の長さは、いずれも50μm以上である。第1部分181の厚さ及び第2部分183の厚さは、いずれも、端部を除いてほぼ一定である。また、第1部分181と第2部分183の境界において、導電体180の厚さはなだらかに変化している。
【0027】
本実施形態によっても、導電体180の幅を広げなくても導電体180の抵抗を下げることができる。また、導電体180の幅は広がらず、かつ導電体180の上面の凹凸も少ない。そして、導電体180の一部のみを厚くすることができる。
【0028】
(実施例1)
図8は、実施例1に係る発光装置10の構成を示す平面図である。図9は、図8から第2電極130を取り除いた図である。図10は、図9から絶縁層150及び有機層120を取り除いた図である。図11図8のC-C断面図である。なお、説明のため、図8において封止部160は省略されている。
【0029】
本実施例に係る発光装置10は、基板100、発光部140、及び導電体180を有している。発光部140は基板100に形成されており、第1電極110、第2電極130、及び有機層120を有している。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。導電体180は第1電極110の補助電極であり、第1電極110のいずれかの面に接している。本図に示す例では、導電体180は第1電極110のうち有機層120に面する面の上に形成されている。導電体180は第1の実施形態と同様の構成を有している。以下、発光装置10について詳細に説明する。
【0030】
発光装置10が後述のボトムエミッション型である場合、基板100は、例えばガラスや透光性の樹脂などの透光性の材料で形成されている。ただし、発光装置10が後述のトップエミッション型である場合、基板100は透光性を有さない材料で形成されていてもよい。基板100は、例えば矩形などの多角形である。ここで、基板100は可撓性を有していてもよい。基板100が可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。特に基板100をガラス材料で可撓性を持たせる場合、基板100の厚さは、例えば200μm以下である。基板100を樹脂材料で可撓性を持たせる場合は、基板100の材料として、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを含ませて形成されている。また、基板100が樹脂材料を含む場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも発光面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されている。
【0031】
基板100には発光部140が形成されている。発光部140は、発光を生じさせるための構造、例えば有機EL素子を有している。この有機EL素子は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。
【0032】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極を構成する透明導電材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。
【0033】
第2電極130は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。この場合、第2電極130は遮光性を有している。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。
【0034】
なお、上記した第1電極110及び第2電極130の材料は、基板100を光が透過する場合、すなわち発光装置10からの発光が基板100を透過して行われる場合(すなわちボトムエミッション型)の例である。他の場合として、基板100とは逆側を光が透過する場合がある。すなわち、発光装置10からの発光が基板100を透過しないで行われる場合(トップエミッション型)である。トップエミッション型では、逆積型と、順積型との2種類の積層構造を採用できる。逆積型では、第1電極110の材料と第2電極130の材料はボトムエミッション型と逆になる。すなわち第1電極110の材料には上記した第2電極130の材料が用いられ、第2電極130の材料には上記した第1電極110の材料が用いられる。他方の順積型では、上記した第2電極130の材料の上に第1電極110の材料を形成し、更にその上に有機層120、さらにその上に薄く成膜した第2電極130を形成することで、基板100とは逆側から光を取出す構造である。なお、薄く成膜する材料は、例えば第2電極130の材料として例示した材料やMgAg合金などであり、その厚みは例えば30nm以下である。本実施例にかかる発光装置10は、ボトムエミッション型、及び上記した2種類のトップエミッション型のいずれの構造であってもよい。
【0035】
有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。
【0036】
また、発光装置10は、第1端子112及び第2端子132を有している。第1端子112は第1電極110に接続しており、第2端子132は第2電極130に接続している。第1端子112及び第2端子132は、例えば、第1電極110と同一の材料で形成された層を有している。なお、第1端子112と第1電極110の間には引出配線が設けられていてもよい。また、第2端子132と第2電極130の間にも引出配線が設けられていてもよい。
【0037】
そして、図10に示すように、第1電極110の上には導電体180が形成されている。導電体180は第1電極110の補助電極であり、第1電極110の上に複数形成されている。本図に示す例において、導電体180はy方向に延在しており、またx方向に間隔を空けて複数配置されている。
【0038】
そして、導電体180は、第1の実施形態で示した方法を用いて形成されている。このため、導電体180は高くなり、その結果、導電体180の幅を広げなくても導電体180の断面積を広くすることができる。従って、発光部140のうち導電体180で覆われている領域(すなわち光が放射されない領域)を広げなくても、導電体180の抵抗を下げることができる。
【0039】
また、発光装置10は絶縁層150を有している。絶縁層150は発光部140の発光領域を画定するために、基板100に設けられている。図11に示す例では、絶縁層150は、第1電極110の縁及び導電体180を覆っている。絶縁層150は、例えばポリイミド、エポキシ、アクリルやノボラック系の樹脂材料によって形成されている。絶縁層150は、例えば、絶縁層150となる樹脂材料に感光性の材料を混入させ塗布した後、この樹脂材料を露光及び現像することにより、形成される。また、絶縁層150は、インクジェット法やスクリーン印刷法を用いて形成されていてもよい。
【0040】
また、図11に示すように、発光装置10は、封止部160を有している。封止部160は、発光部140を封止している。本図に示す封止部160は封止部材であり、例えばガラス、アルミニウムなどの金属、又は樹脂を用いて形成されている。封止部160は、基板100と同様の多角形や円形であり、中央に凹部を設けた形状を有している。そして封止部160の縁は接着材で基板100に固定されている。これにより、封止部160と基板100で囲まれた空間は封止される。そして発光部140は、この封止された空間の中に位置している。
【0041】
なお、封止部材は原子層成長(ALD)法で形成された膜、化学気相成長(CVD)法、又はスパッタリング法で形成された膜であってもよい。封止膜の厚さは、例えば10nm以上1000nm以下である。封止膜がALD法を用いて形成されている場合、封止膜は、例えば酸化アルミニウム膜又は酸化チタン膜の少なくとも一方を有している。封止膜がCVD法やスパッタリング法を用いて形成されている場合、封止膜は、SiO又はSiNなど絶縁膜によって形成されている。
【0042】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を形成する。この工程において、第1端子112及び第2端子132も形成される。次いで、第1電極110の上に導電体180を形成する。導電体180の形成方法は、第1の実施形態に示した通りである。次いで、基板100に、絶縁層150となる樹脂材料を塗布し、この樹脂材料を露光及び現像する。これにより、絶縁層150が形成される。
【0043】
次いで、第1電極110のうち第1絶縁層150で囲まれた領域に、有機層120を形成する。次いで、第2電極130を形成する。その後、封止部160を設ける。
【0044】
以上、本実施例によれば、発光装置10は第1電極110の補助電極として導電体180を有している。導電体180は、第1の実施形態に示した方法を用いて形成されている。このため、導電体180は高くなる。従って、発光部140のうち導電体180で覆われている領域(すなわち光が放射されない領域)を広げなくても、導電体180の抵抗を下げることができる。
【0045】
(実施例2)
図12は、実施例2に係る発光装置10の構成を示す平面図であり、実施例1における図10に対応している。図13は、図12のD-D断面図である。本実施例に係る発光装置10は、第1端子112の上にも導電体180が形成されており、また、第2端子132の上にも導電体180が形成されている点を除いて、実施例1に係る発光装置10と同様の構成である。
【0046】
詳細には、第1端子112上の導電体180は、第1電極110上の導電体180と連続的に形成されている。そして、第1端子112及び第1電極110の上に位置する導電体180は、第2の実施形態に示した構成を有している。具体的には、第1電極110上の導電体180は第2部分183となっており、第1端子112上の導電体180は第1部分181になっている。そして、第2部分183が延在する方向において、第2部分183と第1部分181は並んでおり、かつ繋がっている。
【0047】
また、第2端子132上の導電体180は、第1部分181となっているため、第1端子112上の導電体180と同じ厚さを有している。第1端子112上の導電体180及び第2端子132上の導電体180が第1部分181となっているのは、第1端子112及び第2端子132は透光性を有している必要がなく、このため、導電体180の幅を広げることによって導電体180の抵抗を下げることができるためである。または、第1端子112上の導電体180の幅(図12のy方向)は、導電体180(つまり補助電極として機能する部分)の幅(図12のx方向)と同じでもよい。この場合、第1端子112は発光装置10の側面側から、電流を供給する配線と接続される。このようにすることにより非発光領域が縮小し、発光装置10の開口率を高めることができる。
【0048】
なお、導電体180の第1部分181は、第1端子112及び第2端子132のいずれとも重ならない部分に設けられていてもよい。
【0049】
本実施例に係る発光装置10の製造方法は、実施例1に係る発光装置10の製造方法と同様である。
【0050】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光部140のうち導電体180で覆われている領域を広げなくても、導電体180の抵抗を下げることができる。また、第1端子112及び第2端子132を導電体180で覆うことができるため、第1端子112及び第2端子132の抵抗を下げることができる。また、第1端子112上の導電体180及び第2端子132上の導電体180を、第1電極110上の導電体180と比較して薄くすることができるため、第1端子112の上及び第2端子132の上に導電体180を形成するための時間を短くすることができる。
【0051】
なお、本実施例では、第1部分181は発光領域に位置しており、第2部分183は非発光領域に位置している、換言すれば、第1部分181は第1端子112の上に、第2部分183は第1電極110の上に形成されている。ただし、第1部分181及び第2部分183のレイアウトは、これに限定されない。第1部分181が第1電極110の上まで形成され、第2部分183が第1電極110の一部のみ、好ましくは第1電極110の中心付近に形成されてもよい。これは、発光装置10の発光面の中心付近の抵抗が大きくなることに起因する輝度低下がおこるのを抑制するためである。他にも発光装置10の設計上、予め抵抗が大になる場所が予想される場合は、その場所にスポット的に第2部分183を形成することができる。この場合も、第2部分183の厚さを他の箇所の整数倍にできるので、電流値・抵抗値の計算が比較的容易である。
【0052】
(実施例3)
図14は、実施例3に係る発光装置10の構成を示す平面図であり、実施例2における図12に対応している。本実施例に係る発光装置10は、導電体180が第1電極110の下、第1端子112の下、及び第2端子132の下に形成されている点を除いて、実施例2に係る発光装置10と同様の構成である。言い換えると、本実施例において、導電体180は、第1電極110と基板100の間、第1端子112と基板100の間、及び第2端子132と基板100の間のそれぞれに形成されている。
【0053】
本実施例に係る発光装置10の製造方法は、第1電極110、第1端子112、及び第2端子132を形成する前に導電体180を形成する点を除いて、実施例2に係る発光装置10の製造方法と同様である。
【0054】
本実施例においても、実施例2と同様に、発光部140のうち導電体180で覆われている領域を広げなくても、導電体180の抵抗を下げることができる。また、第1端子112の上及び第2端子132の上に導電体180を形成するための時間を短くすることができる。
【0055】
(実施例4)
図15は、実施例4に係る発光装置10の製造方法を示す平面図である。本実施例において、発光装置10の構成は実施例1~3のいずれかと同様である。図15は、実施例1と同様の場合を示している。
【0056】
本実施例において、発光装置10を製造するとき、複数の基板100は、導電体180が延在する方向(第1の方向:図15におけるy方向)に互いに繋がっている。そして、導電体180の第1層182を形成するとき、吐出ヘッド200は待機位置から第1の方向に動かされる。これにより、複数の基板100のそれぞれに、導電体180の第1層182が形成される。
【0057】
その後、第2層184を形成する前に、吐出ヘッド200を、インクを吐出させることなく第1の方向とは逆方向(図15における-yの方向)に動かし、待機位置に戻す。この戻間に、第1の実施形態で説明した所定時間が経過するように、基板100の数は設定されている。
【0058】
そして、吐出ヘッド200を再び第1の方向に動かすことにより、複数の基板100のそれぞれに、第2層184を形成する。
【0059】
その後、発光部140を形成した後、複数の基板100は互いに分離される。なお、この分離は封止部160を配置(又は形成)した後に行われてもよいし、発光装置10を配置(又は形成)するまえに行われてもよい。
【0060】
本実施例によれば、第1層182を形成した後、第2層184を形成するために吐出ヘッド200を待機位置に戻す間に、第1層182は所望の乾燥状態になる。このため、第1層182を乾燥させるために吐出ヘッド200をいずれかの場所で待機させる必要がなくなる。従って、発光装置10を製造するために必要な時間は短くなる。
【0061】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、例えば、複数の第1電極110が第1の方向に延在し、複数の第2電極130が第1の方向に直交する第2の方向に延在し、第1電極110と第2電極130の交点に有機層を設けることにより、発光画素が複数マトリクス状に設けられる表示装置においても、本発明を適用することができる。例えば、表示装置の導電体180において、端子と重なる部分を第1部分181として、第1電極110と重なる部分を第2部分183としてもよい。このように、本発明は、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15