(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116841
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】荷役判定装置、荷役支援システム及び荷役装置
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20230816BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B65G1/00 501D
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019157
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美徳
【テーマコード(参考)】
3F022
3F333
【Fターム(参考)】
3F022CC03
3F022EE02
3F022LL06
3F022MM03
3F022MM08
3F022MM11
3F022MM51
3F022MM66
3F022MM70
3F022NN38
3F022NN55
3F022PP02
3F022PP04
3F022PP06
3F022QQ11
3F022QQ17
3F022QQ20
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FD14
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】パレット上の荷積み状態の良否を正確に判定することのできる荷役判定装置、並びに、荷積み状態の正確な判定結果に基づき良好な荷役の支援を行うことのできる荷役支援システムを提供する。
【解決手段】荷役判定装置は、パレットP上の荷Hの画像を取得する画像取得部と、荷積み状態の良否を判定する制御部と、を備え、制御部は、画像取得部によって取得された画像に基づいて荷Hの重心位置Mを計算し、計算された重心位置Mに基づいて荷積み状態の良否を判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット上の荷の画像を取得する画像取得部と、
荷積み状態の良否を判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記画像取得部によって取得された画像に基づいて前記荷の重心位置を計算し、計算された前記重心位置に基づいて荷積み状態の良否を判定する、
荷役判定装置。
【請求項2】
前記画像取得部は、距離センサを含み、距離の情報を含んだ画像を取得する、
請求項1記載の荷役判定装置。
【請求項3】
重心位置の判定用領域を設定可能な設定部を備え、
前記制御部は、計算された前記重心位置と前記判定用領域とに基づいて荷済みの良否を判定する、
請求項1又は請求項2に記載の荷役判定装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記パレット上の複数の荷の個々の重心位置についての判定用領域と、前記パレット上の複数の荷の全体の重心位置についての判定用領域と、前記画像取得部の画像の取得側から見た奥行方向における重心位置についての判定用領域と、の少なくとも1つが設定可能である、
請求項3記載の荷役判定装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、荷役車両に搭載される第1画像取得部を含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の荷役判定装置。
【請求項6】
前記画像取得部は、荷役車両以外に設置される第2画像取得部を含む、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の荷役判定装置。
【請求項7】
前記制御部は、荷の画像と当該荷の外形線、外接線、内接線又は重心位置とを教師データとして機械学習した学習モデルを用いて前記重心位置を計算する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の荷役判定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の荷役判定装置と、
前記荷役判定装置の判定結果に基づいて荷役の支援を行う支援装置と、
を備える荷役支援システム。
【請求項9】
前記支援装置は、計算された前記荷の重心位置を表示する表示部を有する、
請求項8に記載の荷役支援システム。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の荷役支援システムにおける前記画像取得部、前記制御部及び前記支援装置の少なくとも一部を搭載、あるいは/並びに、前記画像取得部、前記制御部、前記支援装置の少なくとも一部と通信を行って、前記荷役判定装置の判定結果に基づく荷役を行う荷役装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役判定装置、荷役支援システム及び荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フォークリフトが移載する荷の映像を取得し、当該映像の時間ごとの差分量が閾値を超えた場合に荷崩れと判定するシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の荷崩れの判定システムでは、荷が安定的に移載されていても、荷の位置がずれただけで荷崩れと判定される恐れ、並びに、荷の安定性が低くなっていても荷の位置ズレが生じていない場合に荷崩れの判定が得られない恐れがある。また、荷の映像の時間ごとの差分量は、荷の背景に変化が生じた場合に、正確に検出することが難しいという課題がある。
【0005】
本発明は、パレット上の荷積み状態の良否を正確に判定することのできる荷役判定装置、並びに、当該判定に基づき良好な荷役の支援を行うことのできる荷役支援システム及び荷役装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷役判定装置は、
パレット上の荷の画像を取得する画像取得部と、
荷積み状態の良否を判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記画像取得部によって取得された画像に基づいて前記荷の重心位置を計算し、計算された前記重心位置に基づいて荷積み状態の良否を判定する。
【0007】
本発明に係る荷役支援システムは、
上記の荷役判定装置と、
前記荷役判定装置の判定結果に基づいて荷役の支援を行う支援装置と、
を備える。
【0008】
本発明に係る荷役装置は、
上記荷役支援システムにおける前記画像取得部、前記制御部及び前記支援装置の少なくとも一部を搭載、あるいは/並びに、前記画像取得部、前記制御部、前記支援装置の少なくとも一部と通信を行って、前記荷役判定装置の判定結果に基づく荷役を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る荷役判定装置によれば、パレット上の荷積み状態の良否を正確に判定することができる。本発明に係る荷役支援システム及び荷役装置は、上記の判定に基づき良好な荷役の支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る荷役判定装置及び荷役支援システムを示すブロック図である。
【
図2】制御部が実行する判定処理を示すフローチャートである。
【
図4】支援装置により実行される荷役支援処理を示すフローチャートである。
【
図5】変形例1の荷積み状態の判定処理を説明する図である。
【
図6】変形例2の荷積み状態の判定処理を説明する図である。
【
図7】変形例3の荷積み状態の判定処理を説明する第1例の図(A)と第2例の図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<荷役判定装置>
図1は、本発明に係る荷役判定装置及び荷役支援システムを示すブロック図である。
【0013】
本実施形態の荷役判定装置100は、荷役装置としての荷役車両30が保持及び搬送するパレットP上の荷Hの荷積み状態を良否判定する装置である。荷役車両30は、フォークリフトなどパレットPを介して荷役(荷の搬送、荷積み、荷下ろし等)を行う車両である。パレットPは、荷Hが積まれる台であり、荷役車両30が保持可能な構造e(例えばフォークリフトのフォークfを差し込み可能な横穴)を有する。パレットPには、複数の荷Hを積むことができる。
【0014】
荷役判定装置100は、パレットP上の荷Hの画像を取得する画像取得部110と、荷積み状態の良否を判定する制御部120とを備える。制御部120は、画像取得部110が取得した画像に基づいて荷の重心位置M(
図3)を計算し、計算された荷の重心位置M(
図3)に基づいて荷積み状態の良否を判定する。荷積み状態の良否とは、パレットP上に荷Hが安定して積まれているか否か、すなわち、荷役車両30がパレットPを介して荷Hを搬送する際に、荷崩れ等が生じる恐れが少ないか多いかを表わす指標である。
【0015】
荷積み状態の良否判定の対象となる荷Hは、形状から重心位置Mが求まる荷Hである。荷Hの形状は、1種類でなく、複数種類であってもよい。対象となる荷Hは、荷Hの外形を表わす箱の中に所定の条件で物が入っているものとして、荷Hの形状と重心位置Mとが対応づけられていてもよい。或いは、予め、荷Hの形状と重心位置Mとの対応関係を示すデータが制御部120に与えられており、当該データに基づき、荷Hの形状と重心位置Mとが対応づけられていてもよい。
【0016】
画像取得部110は、パレットP上の荷Hの画像を取得する。画像取得部110は、レンズと撮像素子を有するデジタルカメラであってもよく、その場合、画像はRGB映像となる。あるいは、画像取得部110は、光や音波を走査して反射波を検出することで二次元形状又は三次元形状を取得するスキャナ装置であってもよい。その場合、画像は、スキャナ画像となる。画像取得部110は、距離センサを含み、取得された画像には距離の情報が含まれてもよい。距離センサは、LiDAR(Light Detection And Ranging)、複眼カメラなど、画像中の複数の点の距離が測定できればどのような装置であってもよい。
【0017】
画像取得部110は、一方向からパレットP上の荷の画像を取得する構成であってもよいし、複数方向からパレットP上の荷の画像を取得する構成であってもよい。
【0018】
画像取得部110は、荷役車両30に搭載される第1画像取得部110aであってもよいし、荷役車両30とは別の箇所に設置される第2画像取得部110bであってもよいし、これらを組み合わせた構成であってもよい。
【0019】
画像取得部110は、有線又は無線を介して制御部120へ画像データを送信する。
【0020】
制御部120は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータである。制御部120は、判定処理のブログラム122及び制御データ123を記憶した記憶部を有する。制御データ123には、後述する判定用領域Rを示すデータが含まれる。制御部120は、さらに、機械学習された学習モデル121を有する。学習モデル121は、深層学習されたニューラルネットワークを有するAI(Artificial Intelligence:人工知能)であってもよい。学習モデル121には、複数のサンプルについての複数の教師データが予め与えられ、学習モデル121は、当該複数の教師データにより機械学習されている。
【0021】
<判定処理>
図2は、制御部120が実行する判定処理を示すフローチャートである。
図3は、判定用領域の一例を示す図である。
【0022】
制御部120は、所定の開始条件に基づいて判定処理を実行する。開始条件は、例えば、荷役車両30が荷役を開始する直前、荷役の途中(例えば、荷役場に設置された第2画像取得部110bの前を通過する際)など、荷済み状態の確認をすべきタイミングが適宜設定されればよい。
【0023】
判定処理が開始されると、制御部120は、画像取得部110により取得された画像を受け取る(ステップS1)。そして、画像を受け取ると、制御部120は、画像に含まれる荷Hの重心位置Mを計算する(ステップS2)。具体的には、制御部120は、画像の取得側の複数の荷Hの個々の重心位置Mを計算する。そして、制御部120は、計算された重心位置Mと判定用領域Rとに基づいて荷済み状態の良否を判定する(ステップS3)。具体的には、制御部120は、計算された重心位置Mが全て判定用領域Rに収まっているか否かを判別し(ステップS3)、パレットP上の荷Hは安定しているとして良好な荷積み状態と判定し、当該判定結果を後述の支援装置210に送信する(ステップS4)。一方、制御部120は、計算された重心位置Mの1つ以上が判定用領域Rに収まっていなければパレットP上の荷Hは不安定であるとして不良な荷積み状態と判定し、当該判定結果を後述の支援装置210に送信する(ステップS5)。
【0024】
ステップS2の計算処理において、制御部120は、学習モデル121を用いて複数の荷Hの重心位置Mを計算してもよい。学習モデル121には、複数のサンプルの映像とサンプルに含まれる個々の荷Hの外形線とが示された複数の教師データが予め与えられ、学習モデル121は、当該複数の教師データにより機械学習されていてもよい。この場合、制御部120は、上記の学習モデル121に、画像取得部110が取得した画像を入力することで、学習モデル121から画像中の複数の荷Hの外形線の情報が出力される。
図3における一点鎖線は、制御部120が学習モデル121を用いて抽出した外形線の一例を示す。
【0025】
外形線の情報を得たら、制御部120は、当該外形線により囲まれた荷Hの中に所定の条件で重量物が中に入っているものとして複数の荷Hの重心位置Mを計算するか、或いは、荷Hの形状と重心位置Mとの対応関係が示されたデータを参照することで、複数の荷Hの重心位置Mを計算する。
【0026】
なお、上記の外形線は、荷Hの外接線、あるいは、荷Hの内接線と読み替えてもよい。外接線とは、画像中の荷Hに外接する最小の矩形(画像中における鉛直な線と水平な線とに囲まれる矩形)を意味し、内接線とは画像中の荷Hに内接する最大の矩形(画像中における鉛直な線と水平な線とに囲まれる矩形)を意味する。荷Hを正面又は真横から撮影した場合、荷Hの外形線と外接線又は内接線とはほぼ一致する。よって、この場合には、外接線又は内接線を採用しても、ほぼ同様に荷Hの重心位置Mを計算することができる。また、荷Hを正面又は真横に近い箇所から撮影した場合には、荷Hの外形線と外接線又は内接線とは近似する。よって、この場合においても、外接線又は内接線を採用しても、ほぼ同様の処理により荷Hの重心位置Mを、許容誤差内で計算することができる。
【0027】
あるいは、学習モデル121には、複数のサンプルの映像とサンプルに含まれる個々の荷Hの重心位置Mとが示された複数の教師データが予め与えられ、学習モデル121は、当該複数の教師データにより機械学習されていてもよい。この場合、制御部120が、上記の学習モデル121に、画像取得部110が取得した画像を入力することで、学習モデル121から画像中の複数の荷Hの重心位置Mを出力させることができる。
【0028】
学習モデル121を用いて重心位置Mを計算することで、パレットP上の荷Hの背景等に起因した荷Hの外形線の誤認識、或いは、重心位置Mの誤計算を抑制することができ、少ない負荷で正確な重心位置Mの計算を実現できる。また、学習モデル121を用いて重心位置Mを計算することで、画像取得部110として、安価な撮影装置を適用しても、その検出結果に基づいて正確な重心位置Mの計算を実現できる。
【0029】
その他、制御部120は、画像取得部110が取得した画像について、データ解析(画像解析など)を行って荷Hの外形線を抽出し、当該外形線から荷Hの重心位置Mを計算してもよい。
【0030】
ステップS2において、制御部120は、パレットP上に積まれた複数の荷Hの全てについて重心位置Mを求めるのではなく、画像の取得側に位置する複数の荷Hについてのみの重心位置Mを求めてもよい。この場合でも、その後のステップS3の判定処理により、パレットPにおいて画像の取得側に位置する複数の荷Hの安定度を正確に判定することができる。
【0031】
また、ステップS2において、制御部120は、重心位置Mを三次元座標上の位置として求めるのではなく、画像の取得側から見た二次元座標上の位置として求めてもよい。この場合でも、その後のステップS3の判定処理により、パレットPにおいて複数の荷Hが上記二次元方向における荷Hの安定度を正確に判定することができる。
【0032】
図3の例は、制御部120が、画像の取得側に位置する複数の荷Hについてのみ、画像の取得側から見た二次元座標上の位置としての重心位置Mを求めた例である。
【0033】
判定用領域Rは、荷Hの重心位置Mが領域内か領域外かで、パレットPを介した荷役において荷Hが安定であるか不安定であるか、その境界となるように設定される。
図3の判定用領域Rは、複数の荷Hの個々の重心位置Mに基づく荷済み状態の良否判定に使用されるものであり、パレットPの端からマージン分内側に境界が位置するように設定されている。当該判定用領域Rは、境界が高さ方向に直線状となるように設定されてもよい。
【0034】
<判定用領域の設定>
荷役判定装置100は、更に、
図1に示すように、重心位置Mの判定用領域Rを設定可能な設定部130を備えてもよい。設定部130は、設定用表示を出力する表示装置131と、判定用領域Rを指定する入力装置132とを含み、管理者が、表示装置131の表示を見ながら、入力装置132を介して判定用領域Rを指定できる。表示装置131と入力装置132とは、荷役判定装置100に備わるものでなく、他のコンピュータ又は他の携帯端末に備わる表示装置と入力装置とが適用されてもよい。この場合、荷役判定装置100の設定部130は、他のコンピュータ又は他の携帯端末と通信を行って、設定用表示を出力させ、判定用領域Rを指定する入力処理を行うソフトウェアであってよい。管理者は、例えば、
図3の判定用領域Rを狭くする設定変更、あるいは、広げる設定変更を行うことができる。あるいは、管理者は、
図3の判定用領域Rを高くする設定変更、低くする設定変更、形状を変更する設定変更を行うことができる。このような構成により、管理者は、非常に高い荷役の安定度が求められるような状況と、比較的に低い荷役の安定度が求められるような状況となど、様々な状況に応じた判定用領域Rに設定変更することができる。
【0035】
<荷役支援システム>
本実施形態の荷役支援システム200は、
図1に示すように、荷役判定装置100と、荷役判定装置100の判定結果に基づいて荷役の支援を行う支援装置210とを備える。支援装置210は、荷役の良否判定の結果を報知する報知部211と、荷役車両30の動作を制御(一時的な停止制御など)する運転制御機構212とを含んでもよい。報知部211は、荷役車両30に搭載されてもよいし、荷役車両30と荷役場との両方に配置されてよい。報知部211は、音声出力、ランプ表示、画像又は文字の表示により、荷役判定装置100の判定結果に対応した報知を行う。報知部211は、映像を表示する表示部211aを含んでいてもよい。運転制御機構212は、例えばフォークの昇降を一時停止或いはその速度を低くする機構、荷役車両30の走行を一時停止或いはその速度を低くすることが可能な機構である。より具体的には、運転制御機構212は、荷役車両30の前進と、パレットPへのフォークの挿入とを禁止することが可能な機構である。運転制御機構212は、荷役車両30に搭載されてもよいし、荷役車両30が自動運転の場合には、自動運転の指示を出力する装置に搭載されてもよい。
【0036】
図4は、支援装置により実行される荷役支援処理を示すフローチャートである。
【0037】
前述した判定処理(
図2)に示したように、荷役判定装置100の制御部120は、荷積み状態の良好又は不良の判定結果を支援装置210に送信する。支援装置210は、判定結果を受信し(ステップS11)、判定結果を判別し(ステップS12)、良好な荷積み状態の判定結果であると、良判定用の動作を実行する(ステップS13)。具体的には、ステップS12において、報知部211が、良判定を示す色のランプ出力、良判定を示す文字、画像、音声の出力を行う。さらに、良判定用の動作として、支援装置210は、表示部211aにパレットP上の荷Hの映像と、計算された重心位置Mを示す点画像と、判定用領域Rを表わす図柄とが重ねられた画像を出力してもよい。
【0038】
また、支援装置210は、不良な荷積み状態の判定結果であると、不良判定用の動作を実行する(ステップS14)。具体的には、ステップS14において、報知部211が、不良判定を示す色及び点滅動作のランプ出力、不良判定を示す文字、画像、音声の出力を行う。さらに、不良判定用の動作として、支援装置210は、表示部211aに、パレットP上の荷Hの映像と、計算された重心位置Mを示す点画像と、判定用領域Rを表わす図柄とが重ねられた画像を出力してもよい。当該画像を見ることで、荷役の作業者は、何れの荷Hの配置が不良であるかを認識することができる。さらに、ステップS14において、運転制御機構212が、荷役車両30の動作の一時停止又は速度を低くする運転制御を行う。
【0039】
以上のように、本実施形態の荷役判定装置100及び荷役支援システム200によれば、荷役判定装置100が荷Hの重心位置Mに基づき荷積み状態の良否を判定するので、荷Hの安定度を正確に反映した判定を行うことができる。そして、当該判定結果に基づいて、支援装置210が荷役の支援を行うので、荷積み状態の良否を正確に反映した支援処理を実現できる。
【0040】
(変形例1)
図5は、変形例1の荷積み状態の判定処理を説明する図である。
図5は、画像取得部110とパレットP上の荷Hとを側方から眺めた状態を示している。
【0041】
変形例1は、制御部120による重心位置Maの計算内容と、荷積み状態の良否判定の方法の一部とが上記実施形態と異なり、その他は上記実施形態と同様である。
【0042】
変形例1では、
図2の判定処理のステップS2において、制御部120は、前述した重心位置Mの計算処理に加えて、パレットP上に積まれた複数の荷Hのうち、画像の取得側に位置する複数の荷Hについて、画像の取得側から見た奥行方向の重心位置Maを計算する。
【0043】
具体的には、制御部120は、画像に示された各荷H(画像の取得側に位置する各荷H)までの距離の情報と、パレットPまでの距離の情報とに基づいて、各荷Hの奥行方向の配置を計算する。各荷Hの奥行寸法及び奥行方向の形状は、予め制御部120に与えられていてもよいし、あるいは、パレットPの横方向から荷Hの画像を取得する第2画像取得部110bの画像に基づいて、制御部120が、各荷Hの奥行寸法及び奥行方向の形状を求めてもよい。制御部120は、各荷Hの奥行方向の配置を計算したら、当該配置に基づき、各荷Hの奥行方向の重心位置Maを計算する。画像取得部110の距離センサは、例えば重心位置Mの計算対象である各荷Hについて、画像の取得側から見た重心位置Mの点の距離のみを測定するようにしてもよい。このような構成により、奥行き方向の重心位置Maの計算負荷をより低減できる。
【0044】
変形例1において、制御部120に記憶される制御データ123には、奥行き方向の重心位置Maについて良否を判定するための判定用領域Raが、更に含まれる。判定用領域Raは、荷Hの奥行方向の重心位置Maが領域内か領域外かで、パレットPを介した荷役において荷Hが安定であるか不安定であるか、その境界となるように設定される。
図5の判定用領域Raは、複数の荷Hの個々の重心位置Maに基づく荷済み状態の良否判定に使用されるものであり、パレットPの前端からマージン分内側に境界が位置するように設定されている。当該判定用領域Raは、境界が高さ方向に直線状となるように設定されてもよい。
【0045】
変形例1では、さらに、
図2の判定処理のステップS3において、制御部120は、前述したステップS3の判定要素に加えて、各荷Hの奥行き方向の重心位置Maと、奥行き方向の判定用領域Raとに基づいて、荷積み状態の良否を判定する。具体的には、制御部120は、画像の取得側に位置する各荷Hの重心位置Mが判定用領域Rに収まり、かつ、各荷Hの奥行き方向の重心位置Maが判定用領域Raに収まっていれば、良好な荷積み状態と判定する。また、制御部120は、画像の取得側から見たときの各荷Hの重心位置Mに判定用領域Rを外れるものがあるか、あるいは、各荷Hの奥行き方向の重心位置Maに判定用領域Raを外れるものがあれば、不良な荷積み状態と判定する。
【0046】
設定部130(
図1)は、前述した設定処理に加えて、奥行き方向の判定用領域Raを設定変更可能に構成されていてもよい。判定用領域Raの設定変更処理においては、判定用領域Raの位置、広さ及び形状が変更可能であってもよい。
【0047】
変形例1の荷役判定装置100によれば、画像の取得側から見て奥行方向における荷Hの安定度を正確に反映した判定を行うことができる。変形例1の荷役支援システム200によれば、上記の判定結果に基づいて荷役支援を行うので、荷積み状態の良否を正確に反映した支援処理を実現できる。
【0048】
(変形例2)
図6は、変形例2の荷積み状態の判定処理を説明する図である。
【0049】
変形例2は、制御部120による重心の計算内容と、荷積み状態の良否の判定方法の一部とが上記実施形態及び変形例1と異なり、その他は上記実施形態又は変形例1と同様である。
【0050】
変形例2では、
図2の判定処理のステップS2において、制御部120は、前述した計算処理に加えて、複数の荷Hの全体の重心位置Mbを計算する。複数の荷Hとは、パレットP上の全部の荷Hではなく、画像の取得側に位置する複数の荷Hであってもよい。さらに、重心位置Mbは、画像の取得側から見た二次元方向における位置であってもよい。全体の重心位置Mbは、複数の荷Hの各配置と、各荷Hの重量割合とから計算できる。あるいは、全体の重心位置Mbは、複数の荷Hが同一物品であれば、複数の荷Hの各重心位置Mから計算できる。各荷Hの重量割合、あるいは、各荷Hが同一物品であることは、予め制御部120に与えられていればよい。
【0051】
変形例2において、制御部120に記憶される制御データ123には、全体の重心位置Mbについて良否を判定するための判定用領域Rbが、更に含まれる。判定用領域Rbは、複数の荷Hの全体の重心位置Mbが領域内か領域外かで、パレットPを介した荷役において荷Hが安定であるか不安定であるか、その境界となるように設定される。
図6の判定用領域Rbは、破線の内側の領域に相当する。
図6の判定用領域Rbは、低いほど広く、高くなるに従って狭くなるように設定されている。
【0052】
変形例2では、
図2の判定処理のステップS3において、制御部120は、前述したステップS3の判定要素に加えて、複数の荷Hの全体の重心位置Mbと、その判定用領域Rbとに基づいて、荷積み状態の良否を判定する。具体的には、制御部120は、複数の荷Hの全体の重心位置Mbが判定用領域Rbに収まっていれば、全体の重心位置Mbは安定していると判定し、判定用領域Rbに収まっていなければ、全体の重心位置Mbは不安定であると判定する。そして、複数の荷Hの個々の重心位置M、あるいは、それに加えて奥行方向の重心位置Maについての判定結果と合わせて、総合的に荷積み状態の良否を判定する。
【0053】
設定部130(
図1)は、前述した設定処理に加えて、全体の重心位置Mbについての判定用領域Rbを設定変更可能に構成されていてもよい。判定用領域Rbの設定変更処理においては、判定用領域Rbの形状が三角形又は台形に規定され、高さと上辺の長さとが変更可能であってもよい。
【0054】
変形例2の荷役判定装置100によれば、さらに複数の荷Hの全体の重心位置Mbに基づき荷積み状態の良否が判定されるので、荷Hの安定度をより正確に反映した判定を行うことができる。変形例2の荷役支援システム200によれば、上記の判定結果に基づいて荷役支援を行うので、荷積み状態の良否を正確に反映した支援処理を実現できる。
【0055】
(変形例3)
図7は、変形例3の荷積み状態の判定処理を説明する第1例の図(A)と第2例の図(B)である。
【0056】
変形例3は、制御部120による重心の計算内容と、荷積み状態の良否の判定方法の一部とが上記実施形態、変形例1、2と異なり、その他は上記実施形態又は変形例1、2と同様である。
【0057】
図7(A)に示すように、パレットP上の荷Hの形状は、複数種類であってもよい。異なる形状の荷Hの重心位置Mcは、予め形状と重心位置との対応関係を示すデータが制御部120に与えられていることで、当該データを用いて制御部120は計算することができる。荷Hの外形線(画像の取得側から見た外形線)は学習モデル121を用いて抽出できる。
図7(A)において学習モデル121を用いて抽出された外形線を一点鎖線で示す。
【0058】
また、
図7(B)に示すように、パレットP上の荷は、搬送対象としてのパレットPaであってもよい。この場合にも、前述した形状が異なる荷Hの場合と同様に、予めパレットPaの形状と重心位置Mdとの対応関係を示すデータが制御部120に与えられていることで、当該データを用いて制御部120は、搬送対象としてのパレットPaである荷の重心位置Mdを求めることができる。
図7(B)において学習モデル121を用いて抽出された外形線を一点鎖線で示す。
【0059】
あるいは、学習モデル121に、複数種類の形状の荷H又はパレットPaとその重心位置Mc、Mdとがサンプルとして示された複数の教師データが予め与えられ、学習モデル121が上記の複数の教師データにより機械学習されていてもよい。この場合、制御部120は、当該学習モデル121を使用することで、複数種類の形状の荷Hの重心位置Mc、並びに、搬送対象であるパレットPaの重心位置Mdを求めることができる。
【0060】
変形例3において、制御部120に記憶される制御データ123には、荷Hの種類に応じた複数の判定用領域R1、R2が、更に含まれていてもよい。荷Hの種類の応じた判定用領域R1、R2は、個々の重心位置Mc、Mdの良否を判定するものであってもよいし、奥行きの重心位置の良否を判定するものであってもよいし、全体の重心位置の良否を判定するものであってもよい。
【0061】
変形例3では、
図2の判定処理のステップS3において、荷Hの種類に応じて判定用領域R1、R2を切り替え、切り替えられた判定用領域R1(又はR2)を用いて判定処理が行われる。判定用領域R1、R2の切り替えは、荷Hの複数の種類(荷Hの形状の複数の種類)と複数の判定用領域R1、R2との対応関係を示すデータが予め制御部120に与えられていることで、当該テータに基づいて制御部120により実行可能である。あるいは、荷役車両30の運転者、その他の荷役の作業者、管理者が、ボタン操作等により判定用領域R1、R2の切り替えを行ってもよい。
【0062】
設定部130(
図1)は、前述した設定処理に加えて、荷Hの種類に応じた複数の判定用領域R1、R2についても設定変更可能に構成されていてもよい。例えば、
図7(A)に示すように、重心位置Mcが高く、偏っている荷Hであれば、狭めの判定用領域R1を設定することができる。また、
図7(B)に示すように、横幅が長い荷(搬送対象のパレットPa)であれば、より狭い判定用領域R2を設定することができる。
【0063】
変形例3の荷役判定装置100によれば、形状の異なる複数種類の荷HがパレットP上に積まれる場合にも対応して、荷Hの安定度をより正確に反映した判定を行うことができる。変形例3の荷役支援システム200によれば、上記の判定結果に基づいて荷役支援を行うので、形状の異なる複数種類の荷HがパレットP上に積まれる場合にも対応して、荷積み状態の良否を正確に反映した支援処理を実現できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、荷役装置としてフォークリフトを一例にとって説明したが、荷役装置は荷の搬送、荷積み、荷下ろしを行う様々な重機であってもよい。また、荷役装置は運転者により運転されてもよいし、自動運転されてもよい。荷が積まれるパレットは、フォークリフト用のパレットに限られず、荷を搬送するための台であり、重機によって搬送されるものであれば、どのような構成であってもよい。また、上記実施形態では、パレットP上の荷Hの画像を側方から取得する例を示した。しかし、パレットP上の荷Hの画像を上方から取得し、上側の荷Hの重心位置(平面方向の重心位置)に基づき、荷積み状態の良否を判定するようにしてもよい。また、
図1では、制御部120、設定部130が、荷役車両30とは別の箇所に設置され、画像取得部110の一部(第1画像取得部110a)と支援装置210の一部とが荷役車両30に搭載される例を示した。しかし、制御部120と設定部130の一部又は全部が荷役車両30に搭載されてもよい。この場合、制御部120、設定部130、画像取得部110のうち、荷役車両30に搭載された部分と、荷役車両30とは別の箇所に設置された部分とが通信を行って同様の処理を行うことができる。また、制御部120及び設定部130は、一部又は全部がクラウド(サーバ装置)に配置され、残りの部分、並びに、画像取得部110及び支援装置210と通信を行って同様の処理を行ってもよい。また、制御部120及び設定部130は、クラウド、モバイル端末、並びに、荷役車両30上のコンピュータのいずれか複数に分割されて搭載され、これらが相互に通信を行って同様の処理を行ってもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
30 荷役車両
100 荷役判定装置
110 画像取得部
110a 第1画像取得部
110b 第2画像取得部
120 制御部
121 学習モデル
130 設定部
200 荷役支援システム
210 支援装置
211 報知部
211a 表示部
212 運転制御機構
P、Pa パレット
H 荷
R、R1、R2、Ra、Rb 判定用領域
M、Ma~Md 重心位置