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特開2023-116844パイプライン管理システムおよび輸送管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116844
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】パイプライン管理システムおよび輸送管
(51)【国際特許分類】
   F17D 5/06 20060101AFI20230816BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20230816BHJP
   G01B 5/28 20060101ALI20230816BHJP
   E03B 7/00 20060101ALI20230816BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20230816BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20230816BHJP
   G01F 1/663 20220101ALI20230816BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F17D5/06
G01B7/16 R
G01B5/28 102
E03B7/00 A
E03F7/00
E03F3/04 Z
G01F1/663
G01B11/30 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019171
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】時吉 充亮
【テーマコード(参考)】
2D063
2F035
2F062
2F063
2F065
3J071
【Fターム(参考)】
2D063BA37
2D063EA03
2F035DA02
2F035DA12
2F062AA66
2F062BB04
2F062CC24
2F062EE01
2F062FF03
2F062HH14
2F063AA25
2F063BA30
2F063BB10
2F063BC02
2F063CA01
2F063DA02
2F063DA05
2F063DD06
2F063EC03
2F063EC06
2F063EC13
2F065AA50
2F065BB08
2F065CC14
2F065GG04
3J071AA12
3J071BB11
3J071EE06
3J071EE21
3J071EE25
3J071EE29
3J071FF16
(57)【要約】
【課題】パイプラインの状態をきめ細かに管理することができるパイプライン管理システムを提供する。
【解決手段】複数の輸送管3を接続して構成されたパイプライン1を管理するパイプライン管理システムにおいて、複数の輸送管3を接続して構成されたパイプライン1を備える。輸送管3は、輸送管3の状態を測定するセンサ12と、センサ12で測定された測定データを常時または定期的に送信する通信部15と、を備える。パイプライン管理システムは、輸送管3における測定データを管理する管理サーバ31と、通信部15から送信された測定データを受信して管理サーバ31に送信する中継装置21とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の輸送管を接続して構成されたパイプラインを管理するパイプライン管理システムにおいて、
前記輸送管が、前記輸送管の状態を測定するセンサと、前記センサで測定された測定データを送信する通信部と、を備えた前記パイプラインと、
前記輸送管における前記測定データを管理する管理サーバと、
前記通信部から送信された前記測定データを受信して前記管理サーバに送信する中継装置と、
を備えるパイプライン管理システム。
【請求項2】
前記輸送管は、前記センサおよび前記通信部に電力を供給する発電部をさらに備える
請求項1に記載のパイプライン管理システム。
【請求項3】
前記センサは、前記輸送管のひずみを検出するひずみセンサを備える
請求項1または2に記載のパイプライン管理システム。
【請求項4】
前記センサは、前記輸送管の流量を検出する流量センサを備える
請求項1ないし3のうち何れか1項に記載のパイプライン管理システム。
【請求項5】
前記センサは、前記輸送管の表面粗さを検出する表面粗さセンサを備える
請求項1ないし4のうち何れか1項に記載のパイプライン管理システム。
【請求項6】
前記輸送管は、樹脂管である
請求項1ないし5のうち何れか1項に記載のパイプライン管理システム。
【請求項7】
前記輸送管は、埋設管である
請求項1ないし6のうち何れか1項に記載のパイプライン管理システム。
【請求項8】
パイプラインを構成する輸送管であって、
前記輸送管の状態を測定するセンサと、
前記センサで測定された測定データを外部装置に送信する通信部と、
を備える輸送管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプラインの状態を管理するパイプライン管理システム、および、パイプライン管理システムに利用可能なパイプラインを構成する輸送管に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パイプラインを構成する輸送管にICタグを取り付けることが記載されている。ICタグには、管固有の識別データに関連付けて、管の原材料、製造日、製造工場等の情報や、継手に関する情報が保存される。そして、ICタグの情報をリーダ/ライタで読み出すことで、輸送管ごとに、これらの情報を、管理サーバで一括管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6816222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輸送管は、一度、地中に敷設されると、その後、地震動や地盤変動などによる状態変化や経年劣化による状態変化などを把握することは困難である。例えば、パイプラインは、輸送管を継手接続されて構成されるが、長いパイプラインの中でどの部分(どの輸送管)が特に劣化の程度が大きいかなど、きめ細かにパイプラインの状態変化を把握することは困難である。このような問題は、埋設管だけでなく、露出管においても当てはまる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのパイプライン管理システムは、複数の輸送管を接続して構成されたパイプラインを管理するパイプライン管理システムにおいて、前記輸送管が、前記輸送管の状態を測定するセンサと、前記センサで測定された測定データを送信する通信部と、を備えた前記パイプラインと、前記輸送管における前記測定データを管理する管理サーバと、前記通信部から送信された前記測定データを受信して前記管理サーバに送信する中継装置と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、敷設されたパイプラインを構成する輸送管の状態を、輸送管に設けたICタグのセンサで測定し、測定した測定データを管理サーバに常時または定期的に送信する。これにより、パイプラインを構成する輸送管の状態を一元管理することができる。管理サーバでは、輸送管の異常を検出したときに、例えば使用する管路を切り替えることができる。また、ICタグから送信された測定データから輸送管の残存耐用年数を予測することができる。
【0007】
上記パイプライン管理システムにおいて、前記輸送管は、前記センサおよび前記通信部に電力を供給する発電部をさらに備える構成としてもよい。上記構成によれば、ICタグが測定データを送信する電力を、発電部で自力発電することができる。
【0008】
上記パイプライン管理システムにおいて、前記センサは、前記輸送管のひずみを検出するひずみセンサを備える構成としてもよい。上記構成によれば、輸送管のひずみ量を測定することで、地震動や地盤変動、経年変化などによる劣化の程度を管理することができる。
【0009】
上記パイプライン管理システムにおいて、前記センサは、前記輸送管の流量を検出する流量センサを備える構成としてもよい。上記構成によれば、輸送管の流量を測定することで、輸送管の内周面の劣化の程度を管理することができる。
【0010】
上記パイプライン管理システムにおいて、前記センサは、前記輸送管の表面粗さを検出する表面粗さセンサを備える構成としてもよい。上記構成によれば、輸送管の表面粗さを測定することで、経年変化などによる劣化の程度を管理することができる。
【0011】
上記パイプライン管理システムにおいて、前記輸送管は、樹脂管で構成してもよい。上記構成によれば、パイプラインを、軟弱地盤における不同沈下および地震による地盤歪みに対応可能なものとし、また、耐摩耗性・耐衝撃性に優れたものにできる。そして、樹脂管に応じた劣化を管理することができる。
【0012】
上記パイプライン管理システムにおいて、前記輸送管は、埋設管で構成してもよい。上記構成によれば、輸送管が埋設管であっても、地中環境に応じて、輸送管の劣化を管理することができる。
【0013】
上記課題を解決するための輸送管は、パイプラインを構成する輸送管であって、前記輸送管の状態を測定するセンサと、前記センサで測定された測定データを外部装置に送信する通信部と、を備える。上記構成によれば、輸送管の状態を管理サーバに送信することができる。これにより、管理サーバでは、輸送管の状態を管理し、残存耐用年数などを予測することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パイプラインの状態をきめ細かに管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】パイプライン管理システムの全体構成を示す図である。
図2】輸送管に設けられるICタグの構成を示す図である。
図3】管理サーバの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用されたパイプライン管理システムについて図面を参照して説明する。
〔パイプラインの構成〕
図1に示すように、本発明が適用されたパイプライン管理システムが管理対象とするパイプラインシステムは、既製管を埋設して造成する圧力管路によって水などの液体を送配水する管路組織であって、例えばパイプライン1とその附帯施設2から構成される。附帯施設2は、調整施設、調圧施設、ポンプ施設、分水施設、量水施設、通気施設、保護施設、管理施設、その他の水利施設などである。
【0017】
パイプライン1は、一例として水排水管路、農業用水管路などである。パイプライン1を構成する輸送管3は、熱可塑性樹脂管、熱硬化性樹脂管などの樹脂管である。一例として、輸送管3は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル、ガラス繊維強化ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂で成形されている。さらに、輸送管3は、顔料、酸化防止剤、安定剤などの添加剤などを含んでいてもよいし、カップリング材が含まれていてもよい。輸送管3は、大口径化されており、例えば内径が100mm~3000mm程度である。また、内径が例えば1000mm以上である。輸送管3は、電気融着継手またはバット融着継手で接続される。輸送管3は、一例として、地中9に埋設される内圧と外圧を同時に作用する埋設管である。
【0018】
埋設管の埋設深さは、例えば表面から1m~数mである。このように、輸送管3が樹脂管であれば、パイプライン1を、軟弱地盤における不同沈下および地震による地盤歪みに対応可能となり、また、耐摩耗性・耐衝撃性に優れたものとなる。
【0019】
パイプライン1は、本管路4と、本管路4に対するバイパス管路5と、を備えている。また、管理サーバ31を含む管理センタ6を備える。パイプライン1が、例えば地震動や地盤変動などによって本管路4が破損したときや経年劣化により破損すると、管理センタ6は、附帯施設2の弁などの各制御装置8を制御して、本管路4の破損部分を含む管路部分を遮断することで、バイパス管路5に切り替える。また、本管路4における許容流量を超えるときなどに、本管路4の流量を下げるため、バイパス管路5とも接続する。
【0020】
図2に示すように、パイプライン1を構成する輸送管3には、ICタグ11が一体的に取り付けられている。例えば、輸送管3は、直管や曲管である場合、2つの端部を備え、各端部が他の輸送管3と接続するための継手部となる。また、輸送管3は、分岐管である場合、3つ以上の端部を備え、各端部が他の輸送管3と接続するための継手部となる。このような輸送管3において、ICタグ11は、一例として、他の部分より漏水発生箇所になりやすい継手部を構成する端部や端部の近くに設けられる。勿論、ICタグ11は、これ以外の場所に取り付けられていてもよい。
【0021】
〔パイプライン管理システムの全体構成〕
パイプライン管理システムは、輸送管3に設けられるICタグ11と、ICタグ11と通信を行うための中継装置21と、ICタグ11から送信された情報を管理する管理サーバ31と、を備えている。
【0022】
〔ICタグの構成〕
図2に示すように、ICタグ11は、1つまたは複数のセンサ12と、発電部13と、蓄電部14と、通信部15と、制御部16と、を備えている。
【0023】
センサ12は、ひずみセンサ12a、流量センサ12b、表面粗さセンサ12cなどである。
ひずみセンサ12aは、輸送管3のひずみ量を測定する。ひずみ量によって、地震動や地盤変動や経年変化などによって輸送管3に破壊又はひび割れが発生していないかなどを判断することができる。ひずみセンサ12aは、一例として、プラスチック用ひずみゲージである。プラスチック用ひずみゲージは、絶縁体上にジグザグ形状にレイアウトされた金属箔が取り付けられた構造を有している。そして、金属箔の変形に伴う電気抵抗の変化を測定して、これを輸送管3のひずみ量に換算する。また、ひずみセンサ12aは、一例として、半導体の電気抵抗率が応力により変化するピエゾ抵抗効果を利用したひずみゲージである。ひずみセンサ12aは、輸送管3の管周方向のひずみと管軸方向のひずみを検出する。なお、ひずみセンサ12aとしては、これらの例に限定されるものではない。また、このようなひずみセンサ12aを併用してもよい。
【0024】
流量センサ12bは、現在の輸送管3の流量が最大流量に達していないか、設計流量の範囲内かなどを把握することができる。流量センサ12bは、一例として、レーザードップラー方式を採用した光学式流量計である。この光学式流量計は、輸送管3を流れる液体にレーザ光を照射して、レーザ光が液体内を移動する粒子に当たることで生じる反射波の周波数変化(ドップラー効果)から液体の流量を計測する。なお、流量センサ12bとしては、これらの例に限定されるものではない。また、他の原理の流量センサ12bと併用してもよい。
【0025】
表面粗さセンサ12cは、輸送管3の表面における経年変化による表面劣化の程度を把握することができる。樹脂管において、その表面は時間経過とともに表面が粗く変化していくためである。表面粗さセンサ12cは、一例として、触針の先端が輸送管3の表面に直接触れ触針での表面をなぞり、触針の上下運動を電気的に検出する接触式計測器である。また、輸送管3の表面にレーザ光を照射して得られる情報から面形状を取得して表面粗さを求める非接触式計測器である。なお、表面粗さセンサ12cとしては、これらの例に限定されるものではない。また、他の原理の表面粗さセンサ12cと併用してもよい。
【0026】
発電部13は、ICタグ11において自力発電をして、各種センサ12や通信部15に対して電力を供給する。輸送管3は、水など液体が流れる。そこで、発電部13は、一例として、その流れを利用して水車を回し小水力発電を行う。また、発電部13は、一例として、磁歪の逆効果である逆磁歪を使用した磁歪式振動発電を行う。具体的に、磁歪式振動発電装置は、磁歪材料に、輸送管3の管周方向および管軸方向の伸縮や振動などによってひずみが加えられたときに、磁歪材料の磁化が変化する。そして、この変化を電磁誘導の法則により磁歪素子の周囲に巻かれたコイルに起電力を発生させる。さらに、発電部13は、一例として、輸送管3の温度と地中温度との温度差によるゼーベック効果を応用した熱電発電素子を用いてもよい。なお、発電部13としては、これらの例に限定されるものではない。また、これらの例を併用してもよい。
【0027】
発電部13で生成された電力は、蓄電部14に蓄電される。蓄電部14は、積層セラミックコンデンサ、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどである。蓄電部14に蓄電された電力は、各種センサ12、通信部15を駆動するための電力として用いられる。なお、蓄電部14は、これらの素子を併用してもよい。
【0028】
通信部15は、一例として、センサ12が検出した測定データを中継装置21を介して管理サーバ31に送信するための無線通信を行う。一例として、通信部15は、移動通信システムに準拠した無線通信回路、アンテナ素子などを備えている。移動通信システムは、第4世代移動通信システム、第5世代移動通信システムなどである。通信部15は、その輸送管3が位置するセルの基地局と常時または所定期間ごとに通信をしている。通信部15は、通信のため送信データに対して、所定の変調処理などを行って管理サーバ31に送信する。送信データは、ICタグ11に固有のタグ識別データ(タグID)、センサ12で検出された測定データ、測定日時データ、測定データの送信先となる管理サーバ31のアドレスなどである。タグIDは、そのICタグ11が取り付けられた輸送管3の識別データである管IDとして用いることもできる。なお、初期設定などを行うために接続端子を備えていてもよい。
【0029】
制御部16は、演算素子、メモリ素子、タイマ、カレンダなどを備えている。制御部16は、センサ12、通信部15を制御する。メモリ素子16aは、一例として半導体基板にメモリ回路が構成された集積回路素子である。メモリ素子16aには、全体の動作を制御するプログラム、タグID、管理サーバ31の所在を示すアドレス、パイプライン1の管理者の端末のメールアドレスなどの連絡先、などを記憶している。また、輸送管3の敷設位置を示す経度緯度データを保存していてもよい。
【0030】
さらに、メモリ素子16aには、輸送管3の製造時の情報(熱可塑性樹脂管1の原材料、製造年月日、製造工場、工程検査、製品検査、梱包日、出荷先、顧客用途、管種(電気融着継手管/バット融着継手管)、融着の方法(電気融着/バット融着))などを保存してもよい。また、電気融着継手用輸送管の場合、管種、受口内径および差口外径(規格値および実測値)、電熱線抵抗値などを保存してもよい。さらに、バット融着継手輸送管の場合、管種、接続端の口径、継手部の厚み(規格値および実測値)などを保存してもよい。このような情報は、輸送管3の製造時において、通信部15を介してICタグ11に保存される。
【0031】
また、メモリ素子16aには、工事情報として、工事年月日、工事現場位置、融着条件、工事環境(天候、気温、湿度など)などを保存している。工事情報は、管理サーバ31の寿命管理データベース34で管理され、敷設前または敷設後に通信部15を介して保存される。
【0032】
制御部16は、基地局と常時交信している。制御部16は、タイマによって所定期間を計時している。具体的に、処理部37は、第1所定期間ごとに、センサ12の計測データを取得する。そして、制御部16は、通信部15から、第2所定期間ごとに、タグIDに関連付けて管理サーバ31に測定データを送信する。送信する測定データは、測定値、測定日時、センサの種類を示すセンサIDなどを含んでいる。第1所定期間および第2所定期間は、数秒ごと、数分ごと、数時間ごと、1日ごと、数日ごと、などである。また、外部からの指令を受けて、所定期間は、変更されてもよい。一例として、制御部16は、当該地域やその近隣地域などで、大雨、地震、などの異常事態が発生したとき、外部よりその指令を受信すると、所定期間の間隔を短くする。
【0033】
以上のようなICタグ11は、基板に、少なくともセンサ12、蓄電部14、通信部15、制御部16が実装され、なるべく1つのチップとなるようにパッケージ化されている。なお、発電部13は、水力による発電の場合、水車が輸送管3内に配置する必要があることから、1つのパッケージにすることは困難である。この場合、水車と蓄電部14は電気的に接続するように結線される。また、ひずみにより発電する場合は、1つのチップに組み込むことは可能である。パッケージ化されたICタグ11は、輸送管3の外表面に取り付けることが容易となる。一例として、ICタグ11のパッケージは、接着材や両面テープなどで輸送管3の外表面に固定される。1つの輸送管3に設けるICタグ11は、1パッケージであることが好ましいが、複数のパッケージで構成し、これらを電気的に接続する構成を妨げるものではない。
【0034】
ICタグ11は、輸送管3と1対1の関係となる部材である。ICタグ11は、輸送管3の製造時に、輸送管3に対して取り付けられる。または、工事の際に、輸送管3に対して取り付けられる。ICタグ11が取り付けられた輸送管3が敷設された位置は、タグIDが管理サーバ31が管理している地図データに関連付けられることで特定可能となる。具体的に、タグIDは、敷設位置データとしての、経度緯度データ、パイプライン1の敷設区間データなどと関連付けられることで、輸送管3の敷設位置を特定可能とする。
【0035】
また、一例として、互いに隣接する輸送管3において、一方の輸送管3に設けるICタグ11のセンサ12と他方の輸送管3のセンサ12とを異なるセンサ12としてもよい。隣接する輸送管3であれば、その設置環境が近似していることが多く、状態の劣化なども類似するからである。また、1つの特定エリアに設置された複数の輸送管3において、各輸送管3に設けられるICタグ11のセンサ12の種類を異ならせるようにしてもよい。1つの特定エリアであれば、その設置環境が近似しており、状態の劣化なども類似するからである。このように、1つのICタグ11に実装するセンサ12の種類や数を減らせば、パッケージを小型化、低コスト化できる。
【0036】
また、ICタグ11は、パイプライン1を構成する全ての輸送管3において、全ての端部に設けてもよいし、1つの端部にだけに設けてもよい。また、パイプライン1において、1本置き、2本置きなど複数本置きにICタグ11を設けるようにしてもよい。
【0037】
〔中継装置の構成〕
中継装置21は、ICタグ11に対する外部装置であって、一例として、移動通信システムに準拠した基地局である。中継装置21は、アンテナと、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末と無線により交信を行う通信回路と、交換局と通信を行う通信回路とを備えている。中継装置21は、サービスエリアを分割したエリアであって中継装置21の電波の届く範囲であるセル内にある輸送管3のICタグ11と交信を行う。ICタグ11からの送信データは、中継装置21や交換局を介して送信先である管理サーバ31に送信される。
【0038】
〔管理サーバの構成〕
図3に示すように、管理サーバ31は、状態管理データベース32と、附帯施設データベース33と、寿命管理データベース34と、を備える。状態管理データベース32は、パイプライン1に使用されている輸送管3を管理する。附帯施設データベース33は、附帯施設2の弁など(給水栓、制水弁など)の設備を管理する。寿命管理データベース34は、輸送管3の寿命を管理する。さらに、管理サーバ31は、ICタグ11から送信されたデータなどを受信する通信部35と、メモリ36と、全体の動作を制御する処理部37と、を備える。
【0039】
状態管理データベース32は、ICタグ11に割り振られたタグIDに関連付けて、測定日時、ひずみセンサ12aで測定したひずみ量、流量センサ12bで測定した流量、表面粗さセンサ12cで測定した表面粗さなどを保存し管理する。これにより、タグIDから敷設されている個別の輸送管3を特定することができ、輸送管3の状態を管理することができる。
【0040】
本管路4に対してバイパス管路5に分岐する場所に設けられた附帯施設2などには、弁などが設けられている。弁などは、バルブ開度を調節して、本管路4およびバイパス管路5の流量を調節し、過度現象からパイプライン1の安全性を確保する。弁などは、所定地域ごとに制御装置8によって開閉などが制御される。附帯施設データベース33では、弁などに割り振られている固有の識別データである弁IDに関連付けてその弁の状態である開度が保存されている。
【0041】
寿命管理データベース34は、タグIDに関連付けて、輸送管3の製造年月日、工事年月日、残存耐用年数、敷設位置などを管理している。輸送管3の製造年月日、工事年月日などは、ICタグ11から取得することもできるし、他の端末から入力される。残存耐用年数は、詳細は後述するが、状態管理データベース32において蓄積されている、タグIDに関連付けられている測定年月日、ひずみ量、流量、表面粗さなどから算出される。敷設位置は、タグIDと関連付けられていることで、地図データ上で特定可能となっている。
【0042】
通信部35は、外部ネットワークと接続されている。通信部35は、各ICタグ11から送信されたデータを中継装置21を介して受信する。ICタグ11から送信されたデータは、送信元のICタグ11のタグIDに関連づいたセンサ12の測定データを受信する。そして、受信した測定データは、状態管理データベース32に保存する。また、通信部35は、附帯施設2の弁などの開閉を制御するための制御信号を制御装置8に対して送信する。
【0043】
メモリ36は、パイプライン1の正常モデルを保存している。正常モデルは、パイプライン1を構成する輸送管3毎のひずみ量の許容値(最大ひずみ量)、流量や流速の許容値(最大流量や最大流速)、表面粗さの許容値(最大表面粗さ)などを格納している。
【0044】
処理部37は、正常モデルから、通信部35で受信した測定データに関連づいているタグIDのひずみ量の許容値、流量や流速の許容値、表面粗さの許容値などを取得する。そして、処理部37は、受信した測定データと、ひずみ量の許容値、流量や流速の許容値、表面粗さの許容値などとを比較する。そして、測定データが正常モデルの条件を満たすとき、正常と判断し、外れるとき、異常と判断する。
【0045】
処理部37は、異常と判断した輸送管3を含む部分に流れる流量を減らす。また、処理部37は、異常と判断した輸送管3を含む部分に流れを遮断する。処理部37は、このような制御のため、例えば当該部分の上流に位置する附帯施設2の弁を特定し、その附帯施設2の制御装置8に対して、制御対象となった弁などの弁IDに関連付けて弁などの制御信号を送信する。制御信号は、弁などの開度を大きくまたは小さくする制御信号である。図1の例によれば、本管路4において、異常と判断した輸送管3を含むとき、その上流の附帯施設2の弁などを閉じ、バイパス管路5のみに液体が流れるようにする。または、本管路4とバイパス管路5の両方に液体が流れるようにし、本管路4の流量を減らすようにする。そして、処理部37は、附帯施設データベース33において、制御対象となった弁IDの開度などを更新する。
【0046】
また、処理部37は、状態管理データベース32で管理している輸送管3の残存する残存耐用年数である寿命を予測する。すなわち、状態管理データベース32では、タグIDに関連付けて、測定日時、ひずみセンサ12aで測定したひずみ量、流量センサ12bで測定した流量、表面粗さセンサ12cで測定した表面粗さなどを蓄積している。輸送管3の外周面の表面劣化は、ひずみ量、表面粗さなどから予測可能である。また、輸送管3の内周面は、流量や流速から算出可能な摩耗の程度などから予測可能である。処理部37は、タグIDごとに、ひずみ量、流量、表面粗さなどを、輸送管3の寿命を予測するための予測関数に当てはめて、そのICタグ11が設けられた輸送管3の寿命を予測する。処理部37は、残存耐用年数が所定年数となったとき、パイプライン1の管理者の端末に、輸送管3の交換時期にまもなく至ること、または、至ったことを知らせる電子メールなどを送信する。
【0047】
〔実施形態の効果〕
以上のような実施形態は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)敷設されたパイプライン1を構成する輸送管3の状態を、輸送管3に設けたICタグ11で測定し、測定した測定データを管理サーバ31に送信する。これにより、管理サーバ31は、パイプライン1を構成する輸送管3の状態を一元管理することができる。すなわち、パイプライン1を構成する各輸送管3の状態をきめ細かく管理することができる。管理サーバ31では、輸送管3の異常を検出したときに、例えば管路を切り替えることができる。また、常時または定期的にICタグ11から送信された測定データから輸送管3の残存耐用年数を予測することができる。
【0048】
(2)ICタグ11がセンサ12での測定データを送信する電力は、発電部13で自力発電することができる。これにより、センサ12が輸送管3の各状態を測定し送信するための電力を、外部から供給する必要が無くなる。特に、埋設管である場合、地上からの電力供給が困難である場合に、自力発電する発電部13を設けることは有効である。
【0049】
(3)中継装置21に移動通信システムの基地局を利用することで、既存設備を流用できる。
(4)ひずみセンサ12aによって、輸送管3のひずみ量を測定することで、地震動や地盤変動、経年変化などによる劣化の程度を管理することができる。
【0050】
(5)流量センサ12bによって、輸送管3の流量を測定することで、輸送管3の内周面の劣化の程度を管理することができる。
(6)輸送管3の表面粗さを測定することで、経年変化などによる劣化の程度を管理することができる。
【0051】
(7)輸送管3を樹脂管とすることで、パイプライン1を、軟弱地盤における不同沈下および地震による地盤歪みに対応可能なものとし、また、耐摩耗性・耐衝撃性に優れたものにできる。そして、樹脂管に応じた劣化を管理することができる。
【0052】
(8)輸送管3が埋設管であっても、地中環境に応じて、輸送管3の劣化を管理することができる。
(9)輸送管3の状態を管理サーバ31に送信することができる。これにより、管理サーバ31では、輸送管3の状態を管理し、残存耐用年数などを予測することができる。
【0053】
〔変形例〕
なお、以上のようなパイプライン1は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
【0054】
・センサ12としては、水位(圧力)センサなど他のセンサ12を備えていてもよい。
・ICタグ11に設けるセンサ12は、ひずみセンサ12a、流量センサ12b、表面粗さセンサ12cの中の少なくとも1つ、または、2つであってもよい。ICタグ11に設けるセンサ12の数を減らせば、ICタグ11を小型化でき、さらに、省電力化できる。
【0055】
・ICタグ11と中継装置21とは、有線で通信するようにしてもよい。
・中継装置21は、ICタグ11と無線通信を行うためのリーダ/ライタであってもよい。リーダ/ライタは、ICタグ11と無線通信して、受信した測定データを、移動通信システムに準拠した基地局に送信するようにしてもよい。
【0056】
・中継装置21は、移動通信システムの基地局に限定されるものではない。
・輸送管3としては、樹脂管の他、コンクリ-ト管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管、FRPM管(強化プラスチック複合管)などであってもよい。
【0057】
・輸送管3は、露出管であってもよい。
・パイプライン1としては、上述の例の他、水力発電設備の水圧管路、水処理施設、下水道施設、工場内循環水管路などであってもよい。
【0058】
・パイプライン1としては、電気、電話、通信などのための電線や光ファイバ、上下水道管、ガス管、などのライフラインを、道路などの地下にまとめた共同溝であってもよい。この場合、輸送管3は、樹脂管の他、コンクリ-ト管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管、FRPM管などで構成することもできる。共同溝の場合、ICタグ11は、共同溝を構成する輸送管3に設けられる。ICタグ11へは、共同溝内の電線を経由して電力を供給するようにしてもよい。また、測定データも、通信部15から有線または無線で、共同溝内に設置された中継装置21を介して管理サーバ31に送信されるようにしてもよい。例えば、中継装置21は、Wi-FiなどIEEE802.1.1規格に準拠した無線LANの機器であってもよい。
【0059】
・輸送管3は、大深度地下における輸送管に適用してもよい。大深度地下の定義は、地下室の建設のための利用が通常行われない深さ(地下40m以深)、または、建築物の基礎の設置のための利用が通常行われない深さ(支持地盤上面から10m以深)である。
【符号の説明】
【0060】
1…パイプライン
2…附帯施設
3…輸送管
4…管路
5…バイパス管路
8…制御装置
9…地中
11…ICタグ
12…センサ
12a…ひずみセンサ
12b…流量センサ
12c…表面粗さセンサ
13…発電部
14…蓄電部
15…通信部
16…制御部
16a…メモリ素子
21…中継装置
31…管理サーバ
32…状態管理データベース
33…附帯施設データベース
34…寿命管理データベース
35…通信部
36…メモリ
37…処理部
図1
図2
図3