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  • 特開-粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116870
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230816BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019222
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河村 明
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA01
4J040DF041
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA38
4J040QA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、再剥離性を維持しつつ、曲面に貼付した場合であっても経時で貼付性が低下することが少ない、粘着シートを提供する。
【解決手段】第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、第3の粘着剤層および基材をこの順に有する粘着シートであって、前記第1の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第1の単量体混合物から得られる第1の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第1の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まず、前記第2の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび内部架橋剤を含む第2の単量体混合物から得られる第2の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第2の水系分散型粘着剤組成物の水系相は実質的に外部架橋剤を含まず、前記第3の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第3の単量体混合物から得られる第3の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第3の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まない、粘着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、第3の粘着剤層および基材をこの順に有する粘着シートであって、
前記第1の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第1の単量体混合物から得られる第1の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第1の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まず、
前記第2の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび内部架橋剤を含む第2の単量体混合物から得られる第2の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第2の水系分散型粘着剤組成物の水系相は実質的に外部架橋剤を含まず、
前記第3の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第3の単量体混合物から得られる第3の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第3の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まない、粘着シート。
【請求項2】
前記第1の粘着剤層が粘着付与剤を実質的に含まない、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記第3の粘着剤層が粘着付与剤を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記第2の粘着剤層の厚さが5μmを超え、前記第2の粘着剤層の厚さが、前記第1の粘着剤層および前記第3の粘着剤層の厚みよりも厚い、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記第2の水系分散型粘着剤組成物に含まれる内部架橋剤が、ジケト基含有エチレン性不飽和単量体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記第1の水系分散型粘着剤組成物、前記第2の水系分散型粘着剤組成物および前記第3の水系分散型粘着剤組成物を、前記基材または剥離ライナーに同時塗工する、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、広告、看板等の装飾を目的としたり、情報等の表示を目的として被着体に貼付される。この際、一定期間経過後に粘着シートを被着体から剥離する場合があり、粘着シートには、被着体に糊残りしない、いわゆる再剥離性が求められる場合がある。
【0003】
再剥離性を向上させるためには、粘着力を弱く設計すればよいが、粘着力を低下させると、特に曲面の被着体に粘着ラベルを貼付した際に、経時で剥がれが生じるという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1では、架橋されたアクリル系共重合体に対し、特定のロジン系粘着付与樹脂を組み合わせたエマルジョン型粘着剤により、再剥離性を低下させることなく、優れた耐剥がれ性が付与できるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-239871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように粘着剤層に粘着付与剤を添加した場合、粘着付与剤を多く使用することで、製造コストが高くなってしまっていた。
【0007】
したがって、本発明は、再剥離性を維持しつつ、曲面に貼付した場合であっても経時で貼付性が低下することが少ない粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、第3の粘着剤層および基材をこの順に有する粘着シートであって、前記第1の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第1の単量体混合物から得られる第1の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第1の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まず、前記第2の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび内部架橋剤を含む第2の単量体混合物から得られる第2の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第2の水系分散型粘着剤組成物の水系相は実質的に外部架橋剤を含まず、前記第3の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第3の単量体混合物から得られる第3の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第3の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まない、粘着シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着シートによれば、再剥離性を維持しつつ、曲面に貼付した場合であっても経時で貼付性が低下することが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘着シートの一態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、第3の粘着剤層および基材をこの順に有する粘着シートであって、前記第1の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第1の単量体混合物から得られる第1の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第1の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まず、前記第2の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび内部架橋剤を含む第2の単量体混合物から得られる第2の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第2の水系分散型粘着剤組成物の水系相は実質的に外部架橋剤を含まず、前記第3の粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第3の単量体混合物から得られる第3の水系分散型粘着剤組成物から形成され、前記第3の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まない、粘着シートである。
【0012】
本発明の粘着シートによれば、再剥離性を維持しつつ、曲面に貼付した場合であっても経時で貼付性が低下することが少ない。
【0013】
本発明が上記効果を奏するメカニズムは以下のように考えられる。
【0014】
本発明では、三層各層が組み合わせられることで、上記効果が発揮される。第1の粘着剤層は、被着体に直接貼付される面である。曲面貼付性を担保するためには、ある程度被着体への粘着剤の濡れ性が高く、粘着剤層が柔らかいことが有利である。本願においては、このような曲面貼付性を担保する観点から、第1の粘着剤層は、実質的に内部架橋剤を含まない。しかし、第1の粘着剤層をこのように設計すると、被着体に粘着剤が残りやすく、再剥離性が著しく低下することを見出した(後述の比較例1、2参照)。本願では、ある程度粘着剤層が硬く凝集力を有する(=バルク強度が高い)第2の粘着剤層を配置することで、再剥離性の低下を抑制することができる。また、本発明においては、第2の粘着剤層が外部架橋剤を含まない。これにより、第1の粘着剤層へ第2の粘着剤層の外部架橋剤が移行することで第1の粘着剤層に含まれるアクリル系重合体が架橋体となることを抑制し、粘着剤層の硬さに起因する曲面追従性の低下を抑制することができる。
【0015】
ここで、第2の粘着剤層が基材と接する層であると、基材への密着性低下により、再剥離性も低下する。ゆえに、本願においては、さらに、ある程度柔らかい第3の粘着剤層を基材側に配置し、これにより、再剥離性を維持することができる。また、本発明においては、第2の粘着剤層が外部架橋剤を含まない。これにより、第3の粘着剤層へ外部架橋剤が移行することで第3の粘着剤層に含まれるアクリル系重合体が架橋体となることを抑制し、粘着剤層の硬さに起因する基材密着性の低下を抑制することができる。
【0016】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%RHの条件で行う。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸またはメタクリル酸」を指し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を指す。
【0017】
なお、シートの概念には、テープ、ラベル、フィルム等と称されるものが包含される。
【0018】
図1は、本発明の粘着シートの一態様を示す断面模式図である。なお、図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。図1において、粘着シート10は、基材20、第3の粘着剤層30、第2の粘着剤層40、第1の粘着剤層50、および剥離ライナー60から構成される。第3の粘着剤層30は、基材20に隣接して配置される。第1の粘着剤層50は、被着体に接着する面であり、ここでは、剥離ライナー60に隣接して配置される。剥離ライナー60は、粘着シート10が被着体に貼付されるまで、第1の粘着剤層50にごみなどの付着物が付着することを防止するために形成される。ゆえに、剥離ライナー60は、被着体にシートを貼付する際には剥離される。
【0019】
また、各層間(例えば、第1の粘着剤層と、第2の粘着剤層との間、または第2の粘着剤層と、第3の粘着剤層との間)には他の層が存在していてもよいが、好ましくは、粘着剤層は、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層および第3の粘着剤層からなる。
【0020】
以下、粘着シートを構成する各層の構成について説明する。
【0021】
(第2の粘着剤層)
説明の都合上、まず第2の粘着剤層から説明する。
【0022】
第2の粘着剤層は、第2の水系分散型粘着剤組成物から形成される。第2の水系分散型粘着剤組成物(以下、単に第2の粘着剤組成物とも称する)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび内部架橋剤を含む単量体混合物から得られる。ここで、内部架橋剤とは、乳化重合が行われる際に単量体と共存する架橋剤を指し、乳化重合時に単量体と共重合しうる成分を指す。なお、内部架橋剤による実際の架橋は、乳化重合時であってもよいし、塗工後であってもよい。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、少なくとも(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび/または(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを用いることが好ましく、アクリル酸n-ブチルおよび/またはアクリル酸2-エチルヘキシルを用いることがより好ましく、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを用いることが特に好ましい。アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを併用する場合のアクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルの混合質量比は、特に限定されるものではないが、アクリル酸n-ブチル:アクリル酸2-エチルヘキシル=90:10~10:90であることが好ましく、90:10~30:70であることがより好ましく、80:20~60:40であることがさらにより好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの第2の単量体混合物中の含有量は、(内部架橋剤を含む)単量体全量中、50質量%以上であることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体全量に対する含有割合は、好ましい順に、65質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの第2の単量体混合物中の含有量は、バルク強度向上の観点から、(内部架橋剤を含む)単量体全量中、99.95質量%以下であることが好ましく、99.9質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
第2の粘着剤組成物は、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いてもよい。ここで、当該共重合性単量体には、内部架橋剤を含まない。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;酢酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体としては、(内部架橋剤を含む)単量体全量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体として、カルボキシル基含有単量体を含む形態は、粘着性向上の観点から、好適である。カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸であることが好ましい。カルボキシル基含有単量体の含有量は、(内部架橋剤を含む)単量体全量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。
【0028】
内部架橋剤は、架橋型反応性単量体である。このような内部架橋剤としては、多官能性エチレン性不飽和単量体(エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体)、ジケト基含有エチレン性不飽和単量体(好ましくは、ジケト基と活性水素含有官能基とを有するエチレン性不飽和単量体)、アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0029】
多官能性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシフォスフェート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0030】
ジケト基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシメチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0031】
アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
【0032】
これらの内部架橋剤は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。中でも、本発明の効果が一層奏されることから、第2の水系分散型粘着剤組成物に含まれる内部架橋剤が、ジケト基含有エチレン性不飽和単量体であることが好ましい。
【0033】
内部架橋剤の第2の単量体混合物中の含有量は、(内部架橋剤を含む)単量体全量に対して、バルク強度向上の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、内部架橋剤の第2の単量体混合物中の含有量は、(内部架橋剤を含む)単量体全量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
第2の水系分散型粘着剤組成物は、通常、第2の単量体混合物を乳化重合することによって得られる。
【0035】
乳化重合法としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な共重合性単量体、内部架橋剤、水系溶媒、乳化剤および重合開始剤を混合し、乳化重合する方法が挙げられる。
【0036】
なお、乳化重合において、重合安定性の観点から、乳化剤(または乳化剤の一部)を、第2の単量体混合物に溶解しておくか、または、第2の単量体混合物を予めO/W型の乳化液の状態としておくことが好ましい。
【0037】
乳化重合を行う際の手順としては、例えば、以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)単量体、内部架橋剤、乳化剤、および水系溶媒等の全量を仕込み、昇温し、水系溶媒に溶かした重合開始剤を全量滴下または分割添加して、重合する。
(2)反応容器内に水系溶媒、乳化剤、単量体、および内部架橋剤の一部を仕込み、昇温した後、水系溶媒に溶かした重合開始剤を滴下または分割添加して重合反応を進行させた後、残りの単量体混合物を全量滴下または分割添加して重合を継続する。
(3)反応容器内に水系溶媒に溶かした重合開始剤を仕込んでおき昇温した後、単量体、内部架橋剤、乳化剤、および水系溶媒からなる乳化液を全量滴下または分割添加して重合する。
【0038】
乳化剤としては、特に制限は限定されるものではないが、得られる重合体(以下、エマルジョン系重合体とも称する)の分散安定性を向上させる観点から、アニオン系乳化剤またはノニオン系乳化剤が好ましく、アニオン系乳化剤がより好ましい。
【0039】
アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、アリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
乳化剤の添加量としては、乳化重合反応の安定性の観点、および、未反応の乳化剤が残存することによる物性低下を防ぐ観点から、(内部架橋剤を含む)単量体100質量部に対して、好ましくは0.5~12質量部、より好ましくは0.8~8質量部、更に好ましくは1~6質量部である。
【0041】
なお、乳化剤は、単量体混合物に水系溶媒を加えた溶液に直接添加してもよく、予め重合容器に添加しておいてもよく、またはそれらを併用してもよい。
【0042】
重合開始剤としては、水溶性、油溶性のいずれであってもよく、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ系化合物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物等が挙げられ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせや、過酸物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等からなるレドックス開始剤を用いてもよい。重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、重合安定性に優れているという観点から、過硫酸塩またはレドックス開始剤が好ましい。
【0043】
重合開始剤の添加量としては、重合速度を速める観点から、(内部架橋剤を含む)単量体100質量部に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.03~4質量部、さらに好ましくは0.05~2質量部である。
【0044】
なお、重合開始剤は、予め反応容器内に加えておいてもよく、重合開始直前に加えてもよく、重合開始後に複数回に分けて加えてもよく、単量体混合物中に予め加えておいてもよく、該単量体混合物からなる乳化液を調製後、当該乳化液に加えてもよい。
【0045】
また、乳化重合時に、公知の連鎖移動剤やpH緩衝剤をさらに添加してもよい。
【0046】
乳化重合に際して用いる水系溶媒は、水を主成分として用いる。用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは30~400質量部、より好ましくは35~200質量部、更に好ましくは40~150質量部である。なお、上記水系溶媒において、低級アルコールなどの水混和性溶媒を使用してもよい。溶媒中の水混和性溶媒の使用量としては、溶媒全体の好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下であり、0質量%であってもよい。
【0047】
ここで、水混和性溶媒としては、エタノール、2-プロパノール等の炭素数1~6のアルコール;エチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール;重量平均分子量30,000未満、好ましくは10,000未満のポリエチレングリコール;重量平均分子量5,000未満、好ましくは1,000未満のポリプロピレングリコールが例示される。
【0048】
乳化重合により得られたエマルジョン系重合体分散液に対して、さらに、アンモニア水、各種水溶性アミン、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加して、pH5~9(好ましくはpH6~8.5)に調整することが好ましい。
【0049】
上記のようにして得られた第2の粘着剤組成物の固形分濃度は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは25~70質量%である。
【0050】
第2の粘着剤組成物は、エマルジョン系重合体が水系相に分散しているエマルジョン形状(粒子形状)を有する。この際、エマルジョン系重合体の平均粒子径は、好ましくは50~500nmであり、より好ましくは100~300nmである。ここで、エマルジョン系重合体の平均粒子径は、レーザー回折分散法により測定される体積基準のメジアン径である。
【0051】
本発明においては、このようにして得られたエマルジョン系重合体分散液に対して、外部架橋剤を添加しない。すなわち、第2の粘着剤組成物の水系相は外部架橋剤を実質的に含まない。ゆえに、隣接層、特には、第1の粘着剤層および第3の粘着剤層に架橋剤が移行することがない、または少ないため、第1の粘着剤および第3の粘着剤層の被着体または基材への粘着性能に架橋剤の影響を受けにくい。ここで、本明細書において「外部架橋剤を実質的に含まない」とは、不純物程度に含まれることは許容するものであり、具体的には、「外部架橋剤を実質的に含まない」とは、第2の粘着剤組成物中、0.01質量%以下含んでもよいことを指し、0.005質量%以下含んでもよく、特に好ましくは外部架橋剤が0質量%である。
【0052】
ここで、外部架橋剤とは、乳化重合で得られたエマルジョン系重合体分散液に後から添加される架橋剤を指す。外部架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤などが挙げられる。
【0053】
イソシアネート系架橋剤としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;ならびにジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体などのイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0054】
エポキシ系架橋剤としては、ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンや1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサンなどがあげられる。
【0055】
金属キレート系架橋剤としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、鉄、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等の金属のアセチルアセトネート錯体等が挙げられる。
【0056】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-(2-メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネートなどが挙げられる。
【0057】
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等の芳香族ポリカルボジイミド;ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂環族ポリカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド等が挙げられる。
【0058】
第2の粘着剤層は、好ましくは、第2の粘着剤組成物を下層に塗工して、加熱することで得られる。下層への塗工方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。
【0059】
また、ダイコーター、スライドカーテンコーター、スライドビードコーターなどの連続塗布装置を用いることで、第1の水系分散型粘着剤組成物、第2の水系分散型粘着剤組成物、さらに第3の水系分散型粘着剤組成物を(同時)多層塗工することができる。本発明の好適な形態は、第1の水系分散型粘着剤組成物、第2の水系分散型粘着剤組成物および第3の水系分散型粘着剤組成物を、基材または剥離シートに同時塗工する、粘着シートの製造方法である。
【0060】
塗工後の加熱における温度・時間は、架橋剤の架橋が進行し、水系溶媒が除去できるように、適宜設定される。例えば、加熱温度は、80~150℃であり、加熱時間は、0.1~3分である。
【0061】
形成された第2の粘着剤層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、5μmを超えることがより好ましく、8μm以上であることがさらにより好ましい。第2の粘着剤層の厚さが上記下限以上であることで、バルク強度が一層向上し、再剥離性が一層向上する。また、第2の粘着剤層の厚さは、薄膜化の観点から、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。また、第2の粘着剤層の厚さは、第1の粘着剤層の厚さおよび第3の粘着剤層の厚さよりも厚いことが好ましい。このような形態とすることで、バルク強度が一層向上し、再剥離性が一層向上する。本発明の好適な一形態は、第2の粘着剤層の厚さが5μmを超え、第2の粘着剤層の厚さが、第1の粘着剤層および第3の粘着剤層の厚みよりも厚い、粘着シートである。
【0062】
第2の粘着剤層は、必要に応じ、充填剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、濡れ剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を適宜含有することができる。また、第2の粘着剤層は、粘着付与剤を含んでも含まなくてもよいが、含まなくとも本願発明では効果が得られるので、製造コストの面からは、第2の粘着剤層は、粘着付与剤を実質的に含まないほうが好ましい。ここで、本明細書において「粘着付与剤を実質的に含まない」とは、不純物程度に含まれることは許容するものであり、具体的には、「粘着付与剤を実質的に含まない」とは、(第2の)粘着剤層中、0.01質量%以下含んでもよいことを指し、0.005質量%以下含んでもよく、特に好ましくは粘着付与剤が0質量%である。
【0063】
(第1の粘着剤層)
第1の粘着剤層は、被着体に貼付される粘着剤層である。第1の粘着剤層は、第1の水系分散型粘着剤組成物から形成される。第1の水系分散型粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第1の単量体混合物から得られる。第1の単量体混合物は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体を含んでいてもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例、好ましい形態、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体の例、好ましい形態は、上記第2の粘着剤層の欄に記載したものと同様である。ただし、第1の単量体混合物は、実質的に内部架橋剤を含まないことから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの第1の単量体混合物中の含有量の上限は100質量%である。なお、第1の単量体混合物において、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを併用する場合のアクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルの混合質量比は、特に限定されるものではないが、粘着性の観点から、アクリル酸n-ブチル:アクリル酸2-エチルヘキシル=10:90~90:10であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、40:60~60:40であることがさらにより好ましい。
【0065】
第1の単量体混合物は内部架橋剤を実質的に含まない。内部架橋剤が実質的に含まれないことで、粘着剤層が比較的柔らかくなり、濡れ性があがる。なお、「内部架橋剤を実質的に含まない」とは、不純物程度に含まれることは許容するものであり、具体的には、「内部架橋剤を実質的に含まない」とは、第1の粘着剤層組成物中、0.01質量%以下含んでもよいことを指し、0.005質量%以下含んでもよく、特に好ましくは内部架橋剤が0質量%である。内部架橋剤については、第2の粘着剤層の欄で記載したものと同様である。
【0066】
第1の水系分散型粘着剤組成物は、通常、第1の単量体混合物を乳化重合することによって得られる。乳化重合の際には内部架橋剤を用いないので、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の単量体を重合することで得られるアクリル系架橋重合体は内部架橋されない。これにより、得られる第1の粘着剤層は、被着体への濡れ性を向上させることができ、曲面貼付性を向上させることができる。
【0067】
乳化重合法の具体的態様や好適な態様は第2の粘着剤層の欄で記載したものと同様である。
【0068】
このようにして得られたエマルジョン系重合体分散液に対して、曲面追従性の点から、外部架橋剤を添加しないことが好ましい。すなわち、第1の水系分散型粘着剤層組成物が、外部架橋剤を実質的に含まないことが好ましい。ここで、本明細書において「外部架橋剤を実質的に含まない」とは、不純物程度に含まれることは許容するものであり、具体的には、「外部架橋剤を実質的に含まない」とは、第1の粘着剤層組成物中、0.01質量%以下含んでもよいことを指し、0.005質量%以下含んでもよく、特に好ましくは外部架橋剤が0質量%である。
【0069】
第1の粘着剤層は、好ましくは、第1の粘着剤組成物を下層に塗工して、加熱することで得られる。具体的には第2の粘着剤層の形成方法の欄で記載した内容と同様である。
【0070】
形成された第1の粘着剤層の厚さは、製造効率の観点から、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。また、粘着性能を担保する観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【0071】
第1の粘着剤層は、必要に応じ、充填剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、濡れ剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を適宜添加することができる。
【0072】
第1の粘着剤層は、粘着付与剤を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは、低温時の粘着性や再剥離性の観点から、第1の粘着剤層は、粘着付与剤を実質的に含まない。また、第1の粘着剤層が粘着付与剤を含む場合、好適な態様は第3の粘着剤層の欄に記載の内容と同様である。
【0073】
(第3の粘着剤層)
第3の粘着剤層は、基材に直接貼付される粘着剤層である。第3の粘着剤層は、第3の水系分散型粘着剤組成物から形成される。第3の水系分散型粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む第3の単量体混合物から得られる。第3の単量体混合物は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体を含んでいてもよい。
【0074】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例、好ましい形態、および(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体の例、好ましい形態は、上記第2の粘着剤層の欄に記載したものと同様である。ただし、第3の単量体混合物は、実質的に内部架橋剤を含まないことから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの第3の単量体混合物中の含有量の上限は100質量%である。なお、第3の単量体混合物において、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを併用する場合のアクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルの混合質量比は、特に限定されるものではないが、粘着性の観点から、アクリル酸n-ブチル:アクリル酸2-エチルヘキシル=10:90~90:10であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、40:60~60:40であることがさらにより好ましい。
【0075】
第3の単量体混合物は、内部架橋剤を実質的に含まない。内部架橋剤が実質的に含まれないことで、粘着剤層が比較的柔らかくなり、基材密着性が向上する。なお、「内部架橋剤を実質的に含まない」とは、不純物程度に含まれることは許容するものであり、具体的には、「内部架橋剤を実質的に含まない」とは、第3の単量体混合物中、0.01質量%以下含んでもよいことを指し、0.005質量%以下含んでもよく、特に好ましくは内部架橋剤が0質量%である。内部架橋剤については、第2の粘着剤層の欄で記載したものと同様である。
【0076】
第3の水系分散型粘着剤組成物は、通常、第3の単量体混合物を乳化重合することによって得られる。乳化重合の際には内部架橋剤を用いないので、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の単量体を重合することで得られるアクリル系架橋重合体は内部架橋されない。これにより、得られる第3の粘着剤層は、被着体への濡れ性を向上させることができ、曲面貼付性を向上させることができる。
【0077】
乳化重合法の具体的態様や好適な態様は第2の粘着剤層の欄で記載したものと同様である。
【0078】
このようにして得られたエマルジョン系重合体分散液に対して、外部架橋剤を添加しないことが好ましい。すなわち、第3の水系分散型粘着剤層組成物が、外部架橋剤を実質的に含まないことが好ましい。ここで、本明細書において「外部架橋剤を実質的に含まない」とは、不純物程度に含まれることは許容するものであり、具体的には、「外部架橋剤を実質的に含まない」とは、第3の粘着剤層組成物中、0.01質量%以下含んでもよいことを指し、0.005質量%以下含んでもよく、特に好ましくは外部架橋剤が0質量%である。
【0079】
第3の粘着剤層は、好ましくは、第3の粘着剤組成物を下層に塗工して、加熱することで得られる。具体的には第2の粘着剤層の形成方法の欄で記載した内容と同様である。
【0080】
形成された第3の粘着剤層の厚さは、製造効率の観点から、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。また、粘着性能を担保する観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【0081】
第3の粘着剤層は、必要に応じ、充填剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、濡れ剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を適宜添加することができる。
【0082】
第3の粘着剤層は、粘着付与剤を含んでも含まなくてもよいが、基材密着性が一層向上することから、好ましくは、第3の粘着剤層は、粘着付与剤を含む。
【0083】
粘着付与剤としては、特に制限されず、脂環族系石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。好適な一実施形態としては、粘着付与剤としては、脂環族系石油樹脂、テルペン系樹脂およびロジン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。また、好適な一実施形態としては、粘着性の観点から、粘着付与剤としては、脂環族系石油樹脂、およびテルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0084】
石油樹脂とは、石油類のスチームクラッキングによるエチレン類の製造の際に副生する分解油の、留分中のジオレフィン及びモノオレフィン類を、公知の方法で重合して得られるものである。留分がイソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどのC5留分を原料とするものがC5系石油樹脂であり、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、アルキルインデン、ジシクロペンタジエンなどのC9留分を原料とするものがC9系石油樹脂である。
【0085】
脂環族系石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン、エチリデンビシクロヘプテン、ビニルシクロヘプテン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、リモネンなど)の重合体又はその水素添加物、C9系石油樹脂またはC5/C9系樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂などが挙げられる。
【0086】
中でも、脂環族系石油樹脂としては、C5系石油樹脂/C9系石油樹脂に水素添加して得られた脂環族系石油樹脂が好ましい。
【0087】
脂環族系石油樹脂は、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、アルコン(登録商標)シリーズ(アルコン(登録商標)P-90、P-100、P-115、P-125、P-140、M-90、M-100、M-115、M-135(以上、荒川化学工業社製))、Quintone(登録商標)シリーズ(Quintone(登録商標)1105、1325、1340、TD-401、1500、1525L、1920、2940など)(以上、日本ゼオン社製)などが挙げられる。
【0088】
脂環族系石油樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、これらを水素化した水添テルペンフェノール樹脂などが挙げられる。
【0090】
テルペン系樹脂は、市販品を用いてもよい。テルペン樹脂としては、YSレジン(登録商標)PX1250、PX1150、PX1000、PX800、PX1150N、PX300N(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂としては、YSポリスター(登録商標)U130、U115、T160、T145、T130、T115、T100、T80、T30、S145、G150、G125、N125、K125、TH130(以上、ヤスハラケミカル社製)、タマノルE-100、E-300-NT、E-200-NT(荒川化学工業社製)等が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、YSレジン(登録商標)TO125、TO115、TO105、TO85(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。水添テルペンフェノール樹脂としては、YSポリスター(登録商標)UH115(以上、ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。テルペン系樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0091】
ロジン系樹脂としては、天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、および不均化ロジンエステルなどが挙げられる。これらは市販品を用いてもよい。また、ロジン系樹脂は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0092】
スチレン系樹脂としては、α-メチルスチレンの単一重合体、スチレン系単量体の単一重合体、α-メチルスチレンとスチレン系単量体の共重合体、α-メチルスチレンとスチレン系単量体と他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0093】
粘着付与剤の添加方法は、特に制限されない。アクリル系重合体を乳化重合法によって得る形態においては、例えば、(1)重合開始前の単量体混合物、乳化剤、水等に粘着付与剤を添加した後、単量体を重合する方法;(2)粘着付与剤、乳化剤および水等を用いて、粘着付与剤の乳化液を作製し、当該乳化液を用いて粘着剤組成物に配合する方法;などの方法が挙げられる。上記で用いられる乳化剤は、アクリル系重合体の乳化重合の欄に記載した乳化剤等を適宜用いることができる。
【0094】
第3の粘着剤層中、粘着付与剤の含有量は、基材密着性向上の効果の観点から、アクリル系重合体(単量体全量)100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。また、粘着剤層への相溶性を考慮すると、第3の粘着剤層中、粘着付与剤の含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
【0095】
(基材)
基材としては、特に制限はなく、粘着シートの支持基材として用いられている各種の基材を使用することができる。基材としては、樹脂基材;樹脂から構成されるいわゆる合成紙;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、金属箔とプラスチックフィルムとを積層した複合シート基材、アルミニウムやシリカ等を蒸着した蒸着箔基材、不織布基材、または、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、アート紙、コート紙、感熱発色紙、防湿加工紙等の紙基材等が挙げられる。中でも、基材は、樹脂基材、合成紙、または紙基材であることが好ましい。好適な形態である樹脂基材を構成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0096】
基材の厚みについては、特に制限はないが、機械的特性の観点からは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらにより好ましい。また、薄膜化の観点からは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらにより好ましい。
【0097】
(剥離ライナー)
剥離ライナーは、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離ライナーは、被着体に貼付する際に粘着シートから剥離される。このため、本発明における粘着シートは、剥離ライナーを有していないものも包含される。
【0098】
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、上質紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0099】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【実施例0100】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0101】
(実施例1)
1.第1の水系分散型粘着剤組成物の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを有する反応容器に、原料単量体としてアクリル酸n-ブチル50質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部、およびアクリル酸1質量部、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製「ラテムルE-118B」)2質量部、およびアリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業社製「エレミノールJS-2」)2質量部、脱気済みのイオン交換水58質量部を投入し、室温下撹拌して乳化物(第1の単量体混合物)を調製した。
【0102】
別途、撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを有する反応容器に、脱気済みのイオン交換水28質量部を投入し、温度を60℃まで昇温させた。次に、上記乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行して重合開始剤溶液として濃度5質量%の過硫酸カリウム水溶液2質量部を滴下して反応温度60℃で乳化重合を行った。滴下終了後、60℃のままで2時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、25質量%のアンモニア水でpHが8.0になるように調整し、第1の水系分散型粘着剤組成物を得た。
【0103】
2.第2の水系分散型粘着剤組成物の調製
第1の水系分散型粘着剤組成物調製時と同構成の反応容器に、原料単量体としてアクリル酸n-ブチル70質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル30質量部、アクリル酸1質量部及び内部架橋剤であるアクリル酸アセトアセトキシメチル4質量部、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製「ラテムルE-118B」)2質量部、およびアリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業社製「エレミノールJS-2」)2質量部、脱気済みのイオン交換水60質量部を投入し、室温下撹拌して乳化物(第2の単量体混合物)を調製した。
【0104】
別途、第1の水系分散型粘着剤組成物調製時と同構成の反応容器に、脱気済みのイオン交換水25質量部を投入し、温度を80℃まで昇温させた。次に、上記乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行して重合開始剤溶液として濃度5質量%の過硫酸カリウム水溶液2質量部を滴下して反応温度80℃で乳化重合を行った。滴下終了後、80℃のままで2時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、25質量%のアンモニア水でpHが8.5になるように調整して第2の水系分散型粘着剤組成物を得た。
【0105】
3.第3の水系分散型粘着剤組成物の調製
第1の水系分散型粘着剤組成物調製時と同構成の反応容器に、原料単量体としてアクリル酸n-ブチル50質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部、アクリル酸1質量部、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製「ラテムルE-118B」)2質量部、およびアリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業社製「エレミノールJS-2」)2質量部、脱気済みのイオン交換水58質量部を投入し、室温下撹拌して乳化物(第3の単量体混合物)を調製した。
【0106】
別途、撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを有する反応容器に、脱気済みのイオン交換水28質量部を投入し、温度を60℃まで昇温させた。次に、上記乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行して重合開始剤溶液として濃度5質量%の過硫酸カリウム水溶液2質量部を滴下して反応温度60℃で乳化重合を行った。滴下終了後、60℃のままで2時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、25質量%のアンモニア水でpHが8.0になるように調整した。更に、粘着付与剤として荒川化学工業社製「タマノルE-100」(テルペンフェノール系)を単量体全量(アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸の合計量)100質量部に対して10質量部(粘着付与剤固形分)添加することで、第3の水系分散型粘着剤組成物を得た。
【0107】
4.粘着シートの作製
基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm)、剥離ライナーとしてシリコーンで剥離処理したグラシン紙(厚さ:70μm)を準備した。
【0108】
ダイコーターを用い、第3、第2、第1の水系分散型粘着剤組成物を、剥離ライナー上に同時塗工し、100℃で1分乾燥させて水を除去し、第3の粘着剤層(厚さ:5μm)、第2の粘着剤層(厚さ:10μm)、第1の粘着剤層(厚さ:5μm)を剥離ライナー上に形成した(第3の粘着剤層-第2の粘着剤層-第1の粘着剤層-剥離ライナー)。次に、基材を第3の粘着剤層上に貼り合わせ、23℃、50%RH環境下で1日静置し、基材、第3の粘着剤層、第2の粘着剤層、第1の粘着剤層、剥離ライナーがこの順で積層されてなる粘着シートを作製した。
【0109】
(実施例2)
第3の粘着剤層の形成に第1の水系分散型粘着剤組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0110】
(実施例3)
第3の粘着剤層の形成に第1の水系分散型粘着剤組成物を使用し、第1の粘着剤層の形成に第3の水系分散型粘着剤組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0111】
(比較例1)
実施例1で使用した基材と剥離ライナーを準備した。
【0112】
ダイコーターを用い、実施例1で調製した第3の水系分散型粘着剤組成物を剥離ライナー上に塗工し、100℃で1分乾燥させて水を除去し、粘着剤層(厚さ:20μm)を形成した。次に、基材を粘着剤層上に貼り合わせ、基材、粘着剤層、剥離ライナーがこの順で積層されてなる粘着シートを作製した。
【0113】
(比較例2)
1.第4の水系分散型粘着剤組成物の調製
第1の水系分散型粘着剤組成物調製時と同構成の反応容器に、原料単量体としてアクリル酸n-ブチル70質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル30質量部、アクリル酸1質量部、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製「ラテムルE-118B」)2質量部、およびアリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業社製「エレミノールJS-2」)2質量部、脱気済みのイオン交換水60質量部を投入し、室温下撹拌して乳化物を調製した。
【0114】
別途、第1の水系分散型粘着剤組成物調製時と同構成の反応容器に、脱気済みのイオン交換水25質量部を投入し、温度を80℃まで昇温させた。次に、上記乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行して重合開始剤溶液として濃度5質量%の過硫酸カリウム水溶液2質量部を滴下して反応温度80℃で乳化重合を行った。滴下終了後、80℃のままで2時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、25質量%のアンモニア水でpHが8.5になるように調整して第4の水系分散型粘着剤組成物を得た。
【0115】
2.粘着シートの作製
実施例1での粘着シートの作製工程において、第2の粘着剤層の形成に第4の水系分散型粘着剤組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0116】
(比較例3)
第3の粘着剤層の形成に第1の水系分散型粘着剤組成物を使用し、第1の粘着剤層の形成に第2の水系分散型粘着剤組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0117】
(比較例4)
第3の粘着剤層の形成に第2の水系分散型粘着剤組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0118】
(比較例5)
1.第5の水系分散型粘着剤組成物の調製
第1の水系分散型粘着剤組成物調製時と同構成の反応容器に、原料単量体としてアクリル酸n-ブチル50質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル50質量部、アクリル酸1質量部、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製「ラテムルE-118B」)2質量部、およびアリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業社製「エレミノールJS-2」)2質量部、脱気済みのイオン交換水58質量部を投入し、室温下撹拌して乳化物を調製した。別途、撹拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートを有する反応容器に、脱気済みのイオン交換水28質量部を投入し、温度を60℃まで昇温させた。次に、上記乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行して重合開始剤溶液として濃度5質量%の過硫酸カリウム水溶液2質量部を滴下して反応温度60℃で乳化重合を行った。滴下終後、60℃のままで2時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、25質量%のアンモニア水でpHが8.0になるように調整した。更に、外部架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(旭化成社製「デュラネートWB40-100」、固形分100質量%)5質量部を添加し、第5の水系分散型粘着剤組成物を得た。
【0119】
2.粘着シートの作製
実施例1での粘着シートの作製工程において、第3の粘着剤層の形成に第1の水系分散型粘着剤組成物を使用し、第2の粘着剤層の形成に第5の水系分散型粘着剤組成物を使用し、静置期間を7日間に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0120】
<物性評価>
曲面貼付性評価:粘着シートを23℃、50%RH環境下で1日静置後、同環境下で直径10mmのステンレス棒に貼付し、更に同環境下で1週間静置後のラベルの浮きの有無を確認した。
【0121】
S:浮きなし
A:僅かに浮きがあるが使用可能レベル
C1:浮きが発生している(粘着剤層とステンレス棒の間で剥がれ)
C2:浮きが発生している(基材と粘着剤層の間で剥がれ)
基材密着性評価:粘着シートを23℃、50%RH環境下で1日静置後、同環境下で糊面を指で強く擦り、粘着剤層の剥がれの有無を確認した。
【0122】
S:剥がれなし
A:僅かに剥がれるが使用可能レベル
C:大きく剥がれる。
【0123】
再剥離性評価:粘着シートを23℃、50%RH環境下で1日静置後、同環境下でステンレス板に貼付し、更に同環境下で1週間静置後にラベルを剥離した際の剥離の状況を確認した。
【0124】
S:剥離後のステンレス板に粘着剤が残らない
A:剥離後のステンレス板に粘着剤が僅かに残ったが使用可能レベル
C1:剥離後のステンレス板に粘着剤が残った(粘着剤層の凝集破壊)
C2:剥離後のステンレス板に粘着剤が残った(基材と粘着剤層の間で剥がれ)
【0125】
【表1】
【0126】
上記結果から、実施例の粘着シートは、曲面粘着性、基材密着性および再剥離性が良好なものだった。一方、粘着付与剤を配合した単層の粘着剤層を有する比較例1および第2の粘着剤層が内部架橋剤を用いていない比較例2の粘着シートは、再剥離性が著しく低下していた。第1の粘着剤層が内部架橋剤を用いて形成された比較例3の粘着シートは、曲面貼付性が著しく低下するものであった。第3の粘着剤層が内部架橋剤を用いて形成された比較例4の粘着シートは、曲面貼付性、基材密着性、再剥離性が著しく低下するものであった。第2の粘着剤層が内部架橋剤を用いず、外部架橋剤を用いて形成された比較例5の粘着シートは、曲面貼付性、基材密着性、再剥離性が著しく低下するものであった。
【符号の説明】
【0127】
10 粘着シート、
20 基材、
30 第3の粘着剤層、
40 第2の粘着剤層、
50 第1の粘着剤層、
60 剥離ライナー。
図1