IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図1
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図2
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図3
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図4
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図5
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図6
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図7
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図8
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図9
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図10
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図11
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図12
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図13
  • 特開-リフト装置およびシート収容装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116873
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】リフト装置およびシート収容装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/74 20060101AFI20230816BHJP
   B66D 1/12 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B66D1/74 B
B66D1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019226
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】グエン マイン フン
(57)【要約】
【課題】 電源断状態での逆転を抑制しつつ比較的簡単な構成でコンパクトなリフト装置を得る。
【解決手段】 このリフト装置は、モーター11と、負荷に接続された2本のワイヤー4-1,14-2に対して引張力を与える円形支持部材14-1,14-2と、モーター11の駆動力によって回転軸Axを中心にして回転する動力伝達部材12-1,12-2と、回転軸Axに対する径方向に沿って所定の範囲で円形支持部材14-1,14-2をスライド可能に保持するガイド機構と、その所定の範囲において、円形支持部材14-1,14-2の中心軸Ac1,Ac2と回転軸Axとが一致する位置に円形支持部材14-1,14-2を電磁力で強制的に配置させる電磁石13-1,13-2とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を昇降させるリフト装置において、
モーターと、
前記負荷に接続された第1ワイヤーに対して引張力を与える第1円形支持部材と、
前記モーターの駆動力によって回転軸を中心にして回転する第1動力伝達部材と、
前記回転軸に対する径方向に沿って所定第1範囲で前記第1円形支持部材をスライド可能に保持する第1ガイド機構と、
前記所定第1範囲において、前記第1円形支持部材の中心軸と前記回転軸とが一致する位置に前記第1円形支持部材を電磁力で強制的に配置させる第1電磁石と、
前記負荷に接続された第2ワイヤーに対して引張力を与える第2円形支持部材と、
前記モーターの駆動力によって前記回転軸を中心にして回転する第2動力伝達部材と、
前記回転軸に対する径方向に沿って所定第2範囲で前記第2円形支持部材をスライド可能に保持する第2ガイド機構と、
前記所定第2範囲において、前記第2円形支持部材の中心軸と前記回転軸とが一致する位置に前記第2円形支持部材を電磁力で強制的に配置させる第2電磁石と、
を備えることを特徴とするリフト装置。
【請求項2】
前記モーターの駆動力によって回転する回転体をさらに備え、
前記第1動力伝達部材は、前記回転体の一端に固定されており、
前記第2動力伝達部材は、前記回転体の他端に固定されていること、
を特徴とする請求項1記載のリフト装置。
【請求項3】
前記第1動力伝達部材および前記第2動力伝達部材は、それぞれ、前記径方向に沿ったガイド孔を備え、
前記第1円形支持部材および前記第2円形支持部材は、それぞれ、前記ガイド孔内に配置される突起部を備え、
前記ガイド機構は、前記ガイド孔と前記突起部とを備えること、
を特徴とする請求項1記載のリフト装置。
【請求項4】
前記第1動力伝達部材および前記第2動力伝達部材は、非磁性部材であり、
前記突起部は、磁性部材であること、
を特徴とする請求項3記載のリフト装置。
【請求項5】
電源断状態では、前記第1電磁石および前記第2電磁石の電磁力がなくなり、前記負荷に起因する前記第1ワイヤーおよび前記第2ワイヤーの引張力によって前記モーターに掛かるトルクが略ゼロになるまで、前記ガイド機構によって前記第1円形支持部材および前記第2円形支持部材はスライドすることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のリフト装置。
【請求項6】
前記第1ガイド機構の方向と前記第2ガイド機構の方向とのなす角度が、180度以外の所定の角度であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のリフト装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のリフト装置と、
前記リフト装置で昇降されるシート積載部と、
を備えることを特徴とするシート収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフト装置およびシート収容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント、複合機などといった画像形成装置は、プリント用紙などのシートを収容するシート収容装置を備える。例えば、シート収容装置は、シートが積載されるシート積載板と、シート積載板を昇降させるリフト装置とを備える。そのようなリフト装置は、モーターの駆動力によって、シート積載板に接続されたワイヤーの引き込みおよび引き出しを行うことでシート積載板を昇降させている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63-116454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなリフト装置では、シートおよびシート積載板といった負荷に掛かる重力によってワイヤーに対して引張力が生じているため、モーターが電源断状態であるとき(つまり、モーターがトルクは発生させていないとき)に、その引張力でワイヤーが動き負荷が下降しないように、ウォームギヤなどといった逆転防止機構が設けられている。しかしながら、このような逆転防止機構を設ける場合、モーターからワイヤーまでの動力機構が複雑になるとともに、逆転防止機構の配置スペースが必要となる。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、電源断状態での逆転を抑制しつつ比較的簡単な構成でコンパクトなリフト装置、およびそのリフト装置を利用可能なシート収容装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリフト装置は、モーターと、負荷に接続された第1ワイヤーに対して引張力を与える第1円形支持部材と、前記モーターの駆動力によって回転軸を中心にして回転する第1動力伝達部材と、前記回転軸に対する径方向に沿って所定第1範囲で前記第1円形支持部材をスライド可能に保持する第1ガイド機構と、前記所定第1範囲において、前記第1円形支持部材の中心軸と前記回転軸とが一致する位置に前記第1円形支持部材を電磁力で強制的に配置させる第1電磁石と、前記負荷に接続された第2ワイヤーに対して引張力を与える第2円形支持部材と、前記モーターの駆動力によって前記回転軸を中心にして回転する第2動力伝達部材と、前記回転軸に対する径方向に沿って所定第2範囲で前記第2円形支持部材をスライド可能に保持する第2ガイド機構と、前記所定第2範囲において、前記第2円形支持部材の中心軸と前記回転軸とが一致する位置に前記第2円形支持部材を電磁力で強制的に配置させる第2電磁石とを備える。
【0007】
本発明に係るシート収容装置は、上記リフト装置と、上記リフト装置で昇降されるシート積載部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電源断状態での逆転を抑制しつつ比較的簡単な構成でコンパクトなリフト装置、およびそのリフト装置を利用可能なシート収容装置が得られる。
【0009】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るシート収容装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係るリフト装置の構成を示す分解斜視図である。
図3図3は、実施の形態1に係るリフト装置の構成を示す斜視図である(1/2)。
図4図4は、実施の形態1に係るリフト装置の構成を示す斜視図である(2/2)。
図5図5は、図2図4に示すリフト装置における円形支持部材の配置について説明する図である(1/2)。
図6図6は、図2図4に示すリフト装置における円形支持部材の配置について説明する図である(2/2)。
図7図7は、図2図4に示すリフト装置の動作(ワイヤー引出動作)について説明する図である。
図8図8は、図6および図7に示すリフト装置の動作におけるワイヤーの最大偏位について説明する図である。
図9図9は、図2図4に示すリフト装置の動作(ワイヤー引込動作)について説明する図である。
図10図10は、動力伝達部材の向きが所定第1角度範囲である場合の図2図4に示すリフト装置の電源断時の動作について説明する図である。
図11図11は、図10に示すリフト装置の、電源断時の動作におけるワイヤーの最大偏位について説明する図である。
図12図12は、動力伝達部材の向きが所定第2角度範囲である場合の図2図4に示すリフト装置の電源断時の動作について説明する図である。
図13図13は、実施の形態2に係るリフト装置の構成を示す正面図である。
図14図14は、実施の形態2に係るリフト装置の電源断時の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るシート収容装置の構成を示す図である。
【0014】
図1に示すシート収容装置は、リフト装置1、コントローラー2、シート収容部3-1,3-2、およびワイヤー4-1,4-2を備える。
【0015】
リフト装置1は、2本のワイヤー4-1,4-2の引き込みおよび引き出しを行うことで負荷を昇降させる装置である。
【0016】
コントローラー2は、リフト装置1を電気的に制御する。例えば、コントローラー2は、制御プログラムを実行するコンピューター、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などである。コントローラー2は、ユーザー操作、負荷の状態などに応じて、リフト装置1に、負荷の昇降を実行させる。
【0017】
シート収容部3-1,3-2は、それぞれ、シートが積載されるシート積載部3a、および滑車3bを備える。ワイヤー4-1の一端が、シート収容部3-1のシート積載部3aに接続され、そのワイヤー4が滑車3bに懸架され、ワイヤー4-1の他端が、シート収容部3-1のリフト装置1に接続されている。ワイヤー4-2の一端が、シート収容部3-2のシート積載部3aに接続され、そのワイヤー4が滑車3bに懸架され、ワイヤー4-2の他端が、シート収容部3-2のリフト装置1に接続されている。
【0018】
リフト装置1が、ワイヤー4-1,4-2の引き込みおよび引き出しを行うことで、シート収容部3-1,3-2におけるシート積載部3aを昇降させる。ここでは、上述の負荷は、2つのシート収容部3-1,3-2(シート積載部3a)であるが、1つのシート収容部を2本のワイヤー4-1,4-2の引き込みおよび引き出しを行うことで、そのシート収容部におけるシート積載部3aを昇降させるようにしてもよい。
【0019】
図2は、実施の形態1に係るリフト装置の構成を示す分解斜視図である。図3および図4は、実施の形態1に係るリフト装置の構成を示す斜視図である。
【0020】
例えば図2図4に示すように、リフト装置1は、モーター11、動力伝達部材12-1,12-2、電磁石13-1,13-2、および円形支持部材14-1,14-2を備える。
【0021】
さらに、このリフト装置1は、プーリー10a、動力伝達部材12-1,12-2をプーリー10aに接続し固定する中心軸10b、中心軸10bを回転自在に支持する支持部材10c,モーター11に接続されたプーリー10d、およびモーター11の駆動力をプーリー10dからプーリー10aに伝達するベルト10eを備える。
【0022】
プーリー10aは、モーター11の駆動力によって回転する回転体であり、動力伝達部材12-1は、プーリー10aの一端(一方の端面の中心)に固定されており、動力伝達部材12-2は、プーリー10aの他端(他方の端面の中心)に固定されている。
【0023】
ここでは、プーリー10dおよびベルト10eを介して、モーター11の駆動力が、ベルト駆動方式によって、回転体としてのプーリー10aに伝達されているが、その代わりに、プーリー10aおよびプーリー10dをギヤとし、互いに係合させ、動力伝達部材12-1,12-2が固定された回転体としてのギヤに、モーター11の駆動力が、ギヤ駆動方式によって伝達されるようにしてもよい。
【0024】
モーター11は、コントローラー2の制御に従って駆動力を発生し、その駆動力でモーター軸を回転する。その駆動力はプーリー10aに伝達され、これにより、プーリー10aは、回転軸Axを中心にして回転する。モーター11は、例えば、ステッピングモーター、DCモーターなどである。
【0025】
動力伝達部材12-1,12-2は、それぞれ、モーター11の駆動力によって所定の回転軸Axを中心にして回転する部材である。この実施の形態では、動力伝達部材12-1,12-2は、プーリー10aに固定され、回転軸Ax(ここでは、円板状のプーリー10aの中心軸)を中心にして、プーリー10aとともに回転する。
【0026】
この実施の形態では、動力伝達部材12-1,12-2は、互いに同一の形状を有し、例えば図2に示すように、各動力伝達部材12-i(i=1,2)は、回転軸Axを中心として径方向(つまり、図における方向EDi)に沿って延びる延出部12aを備え、延出部12aは、その径方向に沿ったガイド孔12bを有する。なお、動力伝達部材12-1,12-2およびプーリー10aは、一体として形成されていてもよい。
【0027】
各電磁石13-iは、上述の回転軸Axを中心として、延出部12aに対向する位置(つまり反対方向の位置)において動力伝達部材12-iに固定されており、図示せぬ電源から導線を介して電力供給されると電磁力を発生し、その電磁力で円形支持部材14-i(具体的には突起部14a)を電磁石13-iに向けて吸着する。なお、その導線は、モーター11の回転動作を妨げないように所定の長さで配設される。
【0028】
各円形支持部材14iは、負荷に接続されたワイヤー4-iに対して引張力を与える部材である。この実施の形態では、円形支持部材14-1,14-2は、互いに同一の形状を有し、各円形支持部材14-iは、リールであって、ワイヤー4-iの一端が円形支持部材14-iに固定され、ワイヤー4-iが円形支持部材14-iに巻回されている。円形支持部材14-iの本体(円板状の部分)は、例えば樹脂や非磁性金属で形成される。
【0029】
さらに、リフト装置1は、上述の回転軸Axに対する径方向(つまり、図における方向EDi)に沿って所定の範囲で円形支持部材14-iをスライド可能に保持するガイド機構を備える。
【0030】
この実施の形態では、各ガイド機構は、動力伝達部材12-iのガイド孔12bと、円形支持部材14-iの突起部14aとを備え、突起部14aはガイド孔12b内に配置される。突起部14aは、矩形柱形状を有し、突起部14aの一側面がガイド孔12bの内壁に接触しつつ移動可能となっている。なお、動力伝達部材12-iから円形支持部材14-iが脱落しないように、突起部14aの端部14bは、ガイド孔12bの高さより大きいサイズを有する。例えば、突起部14aは、別部材として形成され、その先端が、ガイド孔12bを挿通され、接着やネジ機構などによって円形支持部材14-iの本体(円板状の部分)の中心に固定される。また、ガイド孔12bは、突起部14aに当接することで、円形支持部材14-iの中心軸Aciを中心とした円形支持部材14-iの回転を禁止している。
【0031】
各電磁石13-iは、この所定の範囲において、円形支持部材14-iの中心軸Aciと上述の回転軸Axとが一致する位置(以下、安定動作位置という)に円形支持部材14-iを電磁力で強制的に配置させる。
【0032】
図5および図6は、図2図4に示すリフト装置1における円形支持部材14-1,14-2の配置について説明する図である。図5は、電磁石13-1,13-2がオン状態であるときの円形支持部材14-1,14-2の配置について説明する図である。図6は、電磁石13-1,13-2がオフ状態であるときの円形支持部材14-1,14-2の配置について説明する図である。
【0033】
コントローラー2は、モーター11の制御を行うとともに、半導体スイッチング素子やリレーなどを使用して、電磁石13-1,13-2への電力供給のオン/オフを行い、これにより、必要に応じた負荷の昇降を行う。この実施の形態では、コントローラー2は、電磁石13-1,13-2を同様に制御し、電磁石13-1,13-2を同様にオン/オフさせる。
【0034】
この実施の形態では、動力伝達部材12-1,12-2は、樹脂製部材などといった非磁性部材であり、円形支持部材14-1,14-2の突起部14aは、磁性金属製部材などといった磁性部材であり、上述の所定の範囲において安定動作位置以外の位置に円形支持部材14-iが存在する場合、電磁石13-iが動作することで、円形支持部材14-i(突起部14a)に吸着力が生じ、円形支持部材14-iの突起部14aがガイド孔12bに沿ってスライドしてガイド孔12bの端部に当接し、円形支持部材14-iが安定動作位置に配置される。
【0035】
電磁石13-iがオフ状態である場合(つまり、電源断状態)では、電磁石13-iの電磁力がなくなり、例えば図6に示すように、負荷に起因するワイヤー4の引張力によってモーター11に掛かるトルクが略ゼロになるまで、上述のガイド機構によって円形支持部材14-iはスライドする。具体的には、上述の回転軸Axから、円形支持部材14-iからのワイヤー4-iの離脱位置Pへの方向が、ワイヤー4-iの引張力の方向と一致するまで、ワイヤー4-iの引張力によって、動力伝達部材12-iが回転しつつ、円形支持部材14-iがガイド孔12bに沿って停止位置までスライドしていく。
【0036】
この状態(円形支持部材14-1,14-2が停止位置にある状態)では、ワイヤー4-1,4-2の引張力に起因する回転トルク(つまり、プーリー10aを回転させようとするトルク)が生じないため、上述のウォームギヤなどを設けなくても、電源断状態でのモーター11の回転(つまり、負荷に掛かる重力によるワイヤー4-1,4-2の引き出し)が防止される。
【0037】
そして、例えば図6に示すように電磁石13-1,13-2がオフ状態であり、例えば図3に示す位置に円形支持部材14-1,14-2があるときに、電磁石13-1,13-2がオン状態になると、円形支持部材14-1,14-2は、例えば図4に示す位置(安定動作位置)に移動する。この状態では、例えば図5に示すように、円形支持部材14-1,14-2の中心軸Ac1,Ac2と上述の回転軸Axとが一致しているため、モーター11の回転時に(つまり、プーリー10aの回転時に)円形支持部材14-1,14-2の中心軸Ac1,Ac2が移動せずに回転し、モーター11の駆動力が円形支持部材14-1,14-2の回転トルクとなりワイヤー4-1,4-2に伝達され、ワイヤー4-1,4-2の引張力となる。
【0038】
次に、実施の形態1に係るリフト装置1の動作について説明する。
【0039】
(a)ワイヤー引出動作
【0040】
図7は、図2図4に示すリフト装置1の動作(ワイヤー引出動作)について説明する図である。図8は、図6に示すリフト装置1の動作におけるワイヤーの最大偏位について説明する図である。
【0041】
例えば図7に示すように、時間0において、停止位置の状態で、図中における時計回りにモーター11(プーリー10a)が回転開始し、また、電磁石13-1がオン状態となった場合、円形支持部材14-1の中心軸Ac1は、回転軸Axを中心にして、ワイヤー4-1の延出方向とは略逆方向に回動し、時間Tsにおいて、円形支持部材14-1は、安定動作位置に配置される。その後、モーター11の回転角度(具体的には、プーリー10aの回転角度)に比例してワイヤー4-1が安定的に引き出される。
【0042】
その際、時間Tsまでワイヤー4-1が逆方向に偏位aだけ移動する。この偏位aの最大値amaxは、次式で示される。
【0043】
amax=h+b-c=h+sqrt(h2-d2/4)-π×(d/2)×(90+arccos(d/2h))/180
【0044】
ここで、図8に示すように、bは、時間0(停止位置)での、ワイヤー4-1の引張方向における回転軸Axと中心軸Ac1との間の距離である。hは、時間Ts(安定動作位置)での、ワイヤー4-1の引張方向における回転軸Axと中心軸Ac1との間の距離である。cは、時間0(停止位置)でのワイヤー4-1の離脱位置pos1から時間Ts(安定動作位置)でのワイヤー4-1の離脱位置pos2までの円弧(つまり、円形支持部材14-1の外周上の円弧)の長さである。また、sqrt(x)は、xの平方根を示し、dは、円形支持部材14-1の直径である。
【0045】
同様に、時間0において、停止位置の状態で、図中における時計回りにモーター11(プーリー10a)が回転開始し、また、電磁石13-2がオン状態となった場合、円形支持部材14-2の中心軸Ac2は、回転軸Axを中心にして、ワイヤー4-2の延出方向とは略逆方向に回動し、時間Tsにおいて、円形支持部材14-2は、安定動作位置に配置される。その後、モーター11の回転角度に比例してワイヤー4-2が安定的に引き出される。その際、時間Tsまでワイヤー4-2が逆方向に偏位aだけ移動する。この偏位aの最大値は、上述のamaxとなる。
【0046】
(b)ワイヤー引込動作
【0047】
図9は、図2図4に示すリフト装置1の動作(ワイヤー引込動作)について説明する図である。
【0048】
例えば図9に示すように、時間0において、停止位置の状態で、図中における反時計回りにモーター11(プーリー10a)が回転開始し、また、電磁石13-1がオン状態となった場合、同様に、ある程度の時間の後、時間Tsにおいて、円形支持部材14-1は、安定動作位置に配置される。その後、モーター11の回転角度(具体的には、プーリー10aの回転角度)に比例してワイヤー4-1が安定的に引き込まれる。
【0049】
停止位置から安定動作位置へ円形支持部材14-1が移動したときの、ワイヤー4-1についての停止位置での位置からの偏位aの最大値amaxは、次式で示される。
【0050】
amax=h+sqrt(h2-d2/4)-π×(d/2)×(360-90-arccos(d/2h))/180
【0051】
同様に、時間0において、停止位置の状態で、図中における反時計回りにモーター11(プーリー10a)が回転開始し、また、電磁石13-2がオン状態となった場合、同様に、ある程度の時間の後、時間Tsにおいて、円形支持部材14-2は、安定動作位置に配置される。その後、モーター11の回転角度(具体的には、プーリー10aの回転角度)に比例してワイヤー4-2が安定的に引き込まれる。なお、停止位置から安定動作位置へ円形支持部材14-2が移動したときの、ワイヤー4-2についての停止位置での位置からの偏位a最大値は、上述のamaxとなる。
【0052】
(c)電源断時の動作
【0053】
図10は、動力伝達部材12-1,12-2の向きが所定第1角度範囲である場合の図2図4に示すリフト装置の電源断時の動作について説明する図である。図11は、図9に示すリフト装置の、電源断時の動作におけるワイヤーの最大偏位について説明する図である。図12は、動力伝達部材の向きが所定第2角度範囲である場合の図2図4に示すリフト装置の電源断時の動作について説明する図である。
【0054】
電源断時の動力伝達部材12-1の向き(つまり、回転軸Axを中心にしたときの中心軸Ac1のある方向の角度ω)に応じて、ガイド機構(動力伝達部材12-1および円形支持部材14-1)の動作が異なる。
【0055】
例えば図10に示すように、角度ω1が90度以下である場合において、時間0で、円形支持部材14-1が安定動作位置にある状態でモーター11の駆動力がなくなるとともに電磁石13-1の電磁力がなくなると、負荷による引張力によって、円形支持部材14-1が、回転軸Axを中心として(図中の時計回りに)回転し、また、上述のように円形支持部材14-1がスライドすることで、時間Teで停止位置に到達し、モーター11の回転(具体的には、プーリー10aの回転)が停止する。時間Teになるまで、モーター11の回転に伴ってワイヤー4-1が偏位xだけ引き出される。この偏位xの最大値xmaxは、次式で示される。
【0056】
xmax=b+e=sqrt(h2-d2/4)+π×(d/2)×(270+arccos(d/2h))/180
【0057】
ここで、図11に示すように、bは、時間Te(停止位置)での、ワイヤー4-1の引張方向における回転軸Axと中心軸Ac1との間の距離である。eは、時間0(安定動作位置)でのワイヤー4-1の離脱位置pos1から時間Te(停止位置)でのワイヤー4-1の離脱位置pos2までの円弧(つまり、円形支持部材14-1の外周上の円弧)の長さである。
【0058】
一方、例えば図12に示すように、角度ω1が90度を超えている場合には、時間0で、円形支持部材14-1が安定動作位置にある状態でモーター11の駆動力がなくなるとともに電磁石13-1の電磁力がなくなると、負荷による引張力によって、円形支持部材14-1が回転軸Axを中心として(図中の時計反回りに)回転しつつ、上述のように円形支持部材14-1がスライドすることで、時間Teで停止位置に到達し、モーター11の回転が停止する。時間Teになるまで、モーター11の回転に伴ってワイヤー4-1が偏位yだけ引き出される。この場合のモーター11の回転は比較的小さいため、ワイヤー4-1の偏位yも比較的小さい。
【0059】
同様に、電源断時の動力伝達部材12-2の向き(つまり、回転軸Axを中心にしたときの中心軸Ac2のある方向の角度ω2)に応じて、ガイド機構(動力伝達部材12-2および円形支持部材14-2)の動作が異なる。
【0060】
角度ω2が90度以下である場合において、時間0で、円形支持部材14-2が安定動作位置にある状態でモーター11の駆動力がなくなるとともに電磁石13-2の電磁力がなくなると、負荷による引張力によって、円形支持部材14-2が、回転軸Axを中心として(図中の時計回りに)回転し、また、上述のように円形支持部材14-2がスライドすることで、時間Teで停止位置に到達し、モーター11の回転(具体的には、プーリー10aの回転)が停止する。時間Teになるまで、モーター11の回転に伴ってワイヤー4-2が偏位xだけ引き出される。この偏位xの最大値は、上述のxmaxとなる。
【0061】
一方、角度ω2が90度を超えている場合には、時間0で、円形支持部材14-2が安定動作位置にある状態でモーター11の駆動力がなくなるとともに電磁石13-2の電磁力がなくなると、負荷による引張力によって、円形支持部材14-2が回転軸Axを中心として(図中の時計反回りに)回転しつつ、上述のように円形支持部材14-2がスライドすることで、時間Teで停止位置に到達し、モーター11の回転が停止する。時間Teになるまで、モーター11の回転に伴ってワイヤー4-2が偏位yだけ引き出される。この場合のモーター11の回転は比較的小さいため、ワイヤー4-1の偏位yも比較的小さい。
【0062】
以上のように、上記実施の形態1によれば、リフト装置1は、モーター11と、負荷に接続されたワイヤー4-1,4-2に対してそれぞれ引張力を与える円形支持部材14-1,14-2と、モーター11の駆動力によって回転軸Axを中心にして回転する動力伝達部材12-1,12-2と、回転軸Axに対する径方向に沿って所定の範囲で円形支持部材14-1,14-2をスライド可能に保持するガイド機構と、その所定の範囲において、円形支持部材14-1,14-2の中心軸Ac1,Ac2と回転軸Axとが一致する位置に円形支持部材14-1,14-2をそれぞれ電磁力で強制的に配置させる電磁石13-1,13-2とを備える。
【0063】
これにより、電源断状態での逆転を抑制しつつ比較的簡単な構成でコンパクトなリフト装置1が得られる。
【0064】
実施の形態2.
【0065】
図13は、実施の形態2に係るリフト装置の構成を示す正面図である。図14は、実施の形態2に係るリフト装置の電源断時の動作について説明する図である。
【0066】
実施の形態1では、(回転軸Axから見た)動力伝達部材12-1と円形支持部材14-1からなるガイド機構の方向ED1(つまり、ワイヤー4-1の移動方向)と動力伝達部材12-2と円形支持部材14-2からなるガイド機構の方向ED2(つまり、ワイヤー4-2の移動方向)との角度θeが180度であるが、実施の形態2では、例えば図13および図14に示すように、当該角度θeが180度以外の角度となっている。
【0067】
なお、実施の形態2に係るリフト装置のその他の構成については、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0068】
次に、実施の形態2に係るリフト装置1の動作について説明する。
【0069】
実施の形態2に係るリフト装置1のワイヤー引出動作およびワイヤー引込動作は、例えば図13に示すように、互いのなす角度がθe(180度以外)となっているワイヤー4-1,4-2の移動方向(ED1,ED2)において行われる。
【0070】
また、実施の形態2に係るリフト装置1の電源断時の動作についても、例えば図14に示すように、互いのなす角度がθe(180度以外)となっているワイヤー4-1,4-2の移動方向(ED1,ED2)に沿って、実施の形態1と同様にしてワイヤー4-1,4-2が引き出されて停止する。
【0071】
なお、実施の形態2に係るリフト装置のその他の動作については、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
以上のように、上記実施の形態2によれば、2本のワイヤー4-1,4-2の移動方向のなす角度θeが180度でなくてもよい。
【0073】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、リフト装置1が、シート収容装置に使用され、シート積載部3a(および積載されたシート)が負荷となっているが、その代わりに、他の負荷の昇降を行うようにしてもよい。例えば、リフト装置1を、釣り糸や凧糸用のリール、建設機械、エレベーターなどのウインチに使用してもよい。
【0075】
また、上記実施の形態において、ワイヤー4-iを環状(無終端)とし、円形支持部材として駆動滑車を使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えば、負荷を昇降するリフト装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 リフト装置
3a シート積載部
4-1,4-2 ワイヤー
10a プーリー(回転体の一例)
11 モーター
12-1,12-2 動力伝達部材
12b ガイド孔
13-1,13-2 電磁石
14-1,14-2 円形支持部材
14a 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14