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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116888
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】可変バルブタイミングシステム
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019253
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】高芝 泰登
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018BA09
3G018CA18
3G018DA05
3G018DA52
3G018FA07
3G018GA25
(57)【要約】
【課題】可変動弁装置を安定して作動させることができる可変バルブタイミングシステムを提供する。
【解決手段】可変バルブタイミングシステムには、エンジンの支持壁に回転可能に支持されたカムシャフト(72)と、油圧によってカムシャフトを進角又は遅角させる可変動弁装置(60)と、可変動弁装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブと、が設けられている。カムシャフトの外周面には軸方向の位置決め用のスラスト止め(74)が形成されており、支持壁の軸受面には、カムシャフトを進角させるオイルが通る進角溝(131)と、カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角溝(132)と、スラスト止めを収容する収容溝(133)と、が形成されている。軸受面にて遅角溝が支持壁の一壁面(135)側、収容溝が支持壁の他壁面(136)側、進角溝が遅角溝と収容溝の間に位置付けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに搭載された油圧制御式の可変バルブタイミングシステムであって、
前記エンジンの支持壁に回転可能に支持されたカムシャフトと、
油圧によって前記カムシャフトを進角又は遅角させる可変動弁装置と、
前記可変動弁装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブと、を備え、
前記カムシャフトの外周面には軸方向の位置決め用のスラスト止めが形成されており、
前記支持壁の軸受面には、前記カムシャフトを進角させるオイルが通る進角溝と、前記カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角溝と、前記スラスト止めを収容する収容溝と、が形成されており、
前記軸受面にて前記遅角溝が前記支持壁の一壁面側、前記収容溝が前記支持壁の他壁面側、前記進角溝が前記遅角溝と前記収容溝の間に位置付けられていることを特徴とする可変バルブタイミングシステム。
【請求項2】
前記支持壁は、前記カムシャフトの上半部を支持するアッパハウジングと、前記カムシャフトの下半部を支持するロアハウジングと、を有し、
前記アッパハウジング及び前記ロアハウジングの軸受面には前記進角溝、前記遅角溝、前記収容溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変バルブタイミングシステム。
【請求項3】
前記エンジンのシリンダヘッド上に前記ロアハウジングが固定されており、前記オイルコントロールバルブから前記可変動弁装置に向けて、前記カムシャフトを進角させるオイルが通る進角通路と、前記カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角通路と、が延びており、
前記遅角通路は、前記シリンダヘッドと前記ロアハウジングの合わせ面を通って前記遅角溝の下方に延びた後に、前記ロアハウジングを貫通して前記遅角溝に下方から連なり、
前記進角通路は、前記ロアハウジングを貫通して前記ロアハウジングと前記アッパハウジングの合わせ面まで延びた後に、当該合わせ面を通って前記進角溝に側方から連なることを特徴とする請求項2に記載の可変バルブタイミングシステム。
【請求項4】
前記アッパハウジング及び前記ロアハウジングは吸気側カムシャフト及び排気側カムシャフトを支持しており、前記可変動弁装置は前記吸気側カムシャフトを進角又は遅角させており、
前記排気側カムシャフトから前記吸気側カムシャフトに向けて潤滑用のオイルが通る潤滑通路が形成されており、
前記ロアハウジングと前記アッパハウジングの合わせ面にて、前記潤滑通路は前記進角通路の隣りを通って前記収容溝に連なることを特徴とする請求項3に記載の可変バルブタイミングシステム。
【請求項5】
前記ロアハウジングと前記アッパハウジングの合わせ面にて、前記進角通路が前記潤滑通路よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の可変バルブタイミングシステム。
【請求項6】
前記シリンダヘッドと前記ロアハウジングの合わせ面にて、前記シリンダヘッドに前記ロアハウジングを固定する隣り合うボルトに前記進角通路及び前記遅角通路の一部が挟まれていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の可変バルブタイミングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変バルブタイミングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力、低燃費、低排気ガスを目的として、エンジンの運転状態に応じて可変動弁装置によってバルブの開閉タイミングを制御する可変バルブタイミングシステムが採用されている。可変バルブタイミングシステムとして、シリンダヘッドの外面に設置したオイルコントロールバルブによって可変動弁装置に対する油圧を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。オイルコントロールバルブで制御されたオイルが可変動弁装置の進角室及び遅角室に供給され、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対的な回転位相が変化してバルブの開閉タイミングが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6874509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の可変バルブタイミングシステムでは、オイルコントロールバルブから可変動弁装置までオイル通路が延びている。オイル通路からのオイル漏れは可変動弁装置の作動性に大きな影響を与えてしまう。特に、カムシャフトを通じて可変動弁装置にオイルが供給される場合、カムシャフトと軸受けの間からオイル漏れが生じ易い。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、可変動弁装置を安定して作動させることができる可変バルブタイミングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の可変バルブタイミングシステムは、エンジンに搭載された油圧制御式の可変バルブタイミングシステムであって、前記エンジンの支持壁に回転可能に支持されたカムシャフトと、油圧によって前記カムシャフトを進角又は遅角させる可変動弁装置と、前記可変動弁装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブと、を備え、前記カムシャフトの外周面には軸方向の位置決め用のスラスト止めが形成されており、前記支持壁の軸受面には、前記カムシャフトを進角させるオイルが通る進角溝と、前記カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角溝と、前記スラスト止めを収容する収容溝と、が形成されており、前記軸受面にて前記遅角溝が前記支持壁の一壁面側、前記収容溝が前記支持壁の他壁面側、前記進角溝が前記遅角溝と前記収容溝の間に位置付けられていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の可変バルブタイミングシステムによれば、支持壁の軸受面にて進角溝が遅角溝と収容溝の間に位置付けられている。よって、進角溝のオイル漏れに対する対抗油圧が遅角溝及び収容溝で生じて、高い油圧が必要な進角溝からのオイル漏れが抑えられ、油圧によって可変動弁装置を安定して作動させることができる。なお、遅角溝に必要な油圧は進角溝よりも小さいため、遅角溝から多少のオイル漏れが生じても可変動弁装置の作動に影響がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の車両前部の右側面図である。
図2】本実施例のエンジン周辺の右側面図である。
図3】本実施例のエンジン周辺の前面図である。
図4】本実施例のオイルコントロールバルブの正面図及び背面図である。
図5】本実施例のオイル通路の模式図である。
図6図2のエンジンをA-A線に沿って切断した断面図である。
図7】本実施例のオイルパイプの斜視図である。
図8】本実施例のオイルパイプの設置箇所の断面図である。
図9】本実施例のカムハウジング内のオイル通路の説明図である。
図10】本実施例の可変バルブタイミングシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の可変バルブタイミングシステムはエンジンに搭載されている。エンジンの支持壁にはカムシャフトが回転可能に支持され、可変動弁装置によってカムシャフトが進角又は遅角され、オイルコントロールバルブによって可変動弁装置に対する油圧が制御されている。カムシャフトの外周面には軸方向の位置決め用のスラスト止めが形成されている。支持壁の軸受面には、カムシャフトを進角させるオイルが通る進角溝と、カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角溝と、前記スラスト止めを収容する収容溝と、が形成されている。軸受面にて遅角溝が支持壁の一壁面側、収容溝が前記支持壁の他壁面側、進角溝が遅角溝と収容溝の間に位置付けられている。よって、進角溝のオイル漏れに対する対抗油圧が遅角溝及び収容溝で生じて、遅角溝よりも高い油圧が必要な進角溝からのオイル漏れが抑えられ、油圧によって可変動弁装置を安定して作動させることができる。なお、遅角溝に必要な油圧は進角溝よりも小さいため、遅角溝から多少のオイル漏れが生じても可変動弁装置の作動に影響がない。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は本実施例の車両前部の右側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、ツインスパー型の車体フレーム10にエンジン21や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、一対のメインフレーム12の前部から下方に延びる一対のダウンフレーム13と、を有している。一対のメインフレーム12は、エンジン21の上方を通ってエンジン21の後方に回り込むように湾曲している。一対のメインフレーム12によってエンジン21の上側及び後側が懸架され、一対のダウンフレーム13によってエンジン21の前側が懸架されている。
【0012】
ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク14が操舵可能に支持されている。フロントフォーク14の下部には前輪15が回転可能に支持されている。エンジン21の前方には、エンジン21の冷却水を放熱するラジエータ(熱交換器)16が設けられている。ラジエータ16の上部はアッパブラケット17を介してメインフレーム12に支持され、ラジエータ16の下部はロアブラケット18を介してエンジン21に支持されている。ラジエータ16の背面には、車両の停止時等にラジエータ16の熱気を吸い込む冷却ファン19が取り付けられている。
【0013】
エンジン21は、左右方向に4本の気筒を並べた並列4気筒エンジンであり、クランクシャフト(不図示)を収納したクランクケース22を有している。クランクケース22の上部には、シリンダ25、シリンダヘッド26、シリンダヘッドカバー27を積層したシリンダアッセンブリが取り付けられている。クランクケース22の下部には、潤滑及び冷却用のオイルが貯留されるオイルパン28が取り付けられている。クランクケース22の左側面には、クラッチカバー31やスタータギアカバー32、33等のエンジンカバーが取り付けられている。エンジン21の前面からは下方に複数の排気管34が延びている。
【0014】
エンジン21には吸気バルブ(不図示)の開閉タイミングを制御する油圧制御式の可変バルブタイミングシステムが搭載されている。シリンダヘッド26及びシリンダヘッドカバー27の内側には可変動弁装置60(図9参照)が収容されており、シリンダ25の外面にはオイルコントロールバルブ40が設置されている。可変動弁装置60及びオイルコントロールバルブ40はエンジン21内の各種オイル通路を通じて接続されている。オイルコントロールバルブ40によって可変動弁装置60に対する油圧が制御されることで、可変動弁装置60に対する油圧よって吸気バルブの開閉タイミングが変化される。
【0015】
このようなエンジン21では可変動弁装置60を適切に作動させるためには、可変動弁装置60に対して十分な油圧を維持し続ける必要がある。このため、オイルコントロールバルブ40から可変動弁装置60に向かうオイル通路が完全に密閉されることが好ましい。しかしながら、オイル通路の一部がカムシャフトのジャーナルと軸受けによって形成されているため、ジャーナルと軸受けの隙間からオイルが漏れて、オイルコントロールバルブ40から可変動弁装置60に向けてリニアに油圧を伝え難くなっている。特に、開閉タイミングを進角させるときには高い油圧が必要になる。
【0016】
ところで、カムシャフト72のジャーナル73にはスラスト止め74が形成されており、このスラスト止め74に対しても潤滑用のオイルが供給されている(図9(B)参照)。このため、カムシャフト72を支持する軸受面130には進角溝131、遅角溝132、収容溝133が環状に形成されている。本実施例の可変バルブタイミングシステムでは、遅角溝132と収容溝133の間に進角溝131が形成されて、進角溝131のオイル漏れに対する対抗油圧を遅角溝132と収容溝133に生じさせて、可変動弁装置60を安定して作動させている。
【0017】
図2及び図3を参照して、オイルコントロールバルブのレイアウトについて説明する。図2は本実施例のエンジン周辺の右側面図である。図3は本実施例のエンジン周辺の前面図である。
【0018】
図2に示すように、エンジン21のクランクケース22は、アッパケース23及びロアケース24を含む上下割構造になっている。アッパケース23及びロアケース24の合わせ面には、クランクシャフト等の各種シャフトが支持されている。ロアケース24の下面にはオイルパン28が固定され、アッパケース23の上面にはシリンダ25が固定されている。シリンダ25の上面にはシリンダヘッド26が固定され、シリンダヘッド26の上面にはシリンダヘッドカバー27が固定されている。シリンダヘッド26及びクランクケース22が車体フレーム10に懸架されている。
【0019】
車体フレーム10の前側部分はメインフレーム12とダウンフレーム13に分岐している。メインフレーム12はシリンダヘッド26の側方を上面から後面に向かって斜めに横切っており、ダウンフレーム13は下方に向かって前後幅が狭まるように側面視略三角形状に形成されている。メインフレーム12によってシリンダヘッド26の後側が側方から覆われ、ダウンフレーム13によってシリンダヘッド26の前側が側方から覆われている。メインフレーム12の延在方向の途中部分にシリンダヘッド26の後側が懸架され、ダウンフレーム13の下頂部にシリンダヘッド26の前側が懸架されている。
【0020】
車両側面視にて、シリンダヘッド26の側面には、メインフレーム12の下縁、ダウンフレーム13の後縁、シリンダヘッド26の下面に囲まれた三角領域(領域)が形成されている。シリンダヘッド26の三角領域はメインフレーム12及びダウンフレーム13の間から側方に露出しているが、オイルコントロールバルブ40に対して三角領域の広さが足りていない。このため、シリンダヘッド26の三角領域の下方であるシリンダ25の側面(外面)にオイルコントロールバルブ40が設置されている。なお、このシリンダ25の側面はカムチェーン室58(図6参照)の外壁によって形成されている。
【0021】
シリンダヘッド26の三角領域には、後述する一対のオイルパイプ64、65(図6参照)用の挿入口を塞ぐ一対のプラグキャップ66、67が設置されている。車両側面視にてプラグキャップ66、67は車体フレーム10を避けているため、車体フレーム10にエンジン21が懸架された状態でもプラグキャップ66、67を介してオイルパイプ64、65が着脱可能になってメンテナンス性が向上される。プラグキャップ66、67がダウンフレーム13の後縁に沿って設置されるためダウンフレーム13を形状変更する必要がない。このとき、車両後方のプラグキャップ67が車両前方のプラグキャップ66よりも上方に位置し、プラグキャップ66、67が上下方向で一部が重なることでプラグキャップ66、67の設置領域が狭められている。
【0022】
オイルコントロールバルブ40は、バルブスプール(不図示)が収容されたバルブハウジング41と、バルブスプールを進退するソレノイド42と、によって略円筒状に形成されている。ソレノイド42によってバルブスプールが進退されることで、オイルコントロールバルブ40内のオイル通路が切り替えられている。オイルコントロールバルブ40の軸方向がシリンダヘッド26とシリンダ25の合わせ面と平行になるようにオイルコントロールバルブ40が傾けられている。バルブハウジング41の後側にソレノイド42が設けられており、ソレノイド42がバルブハウジング41よりも上方に位置している。
【0023】
バルブハウジング41の内側には金属粉等のコンタミが発生するおそれがあるが、バルブハウジング41からソレノイド42にコンタミが入り込み難くなっている。すなわち、バルブハウジング41よりもソレノイド42が上方になるようにオイルコントロールバルブ40が傾けられているため、オイルによってコンタミがバルブハウジング41からソレノイド42に運ばれることが防止されている。ソレノイド42側にコンタミが溜まることがないため、コンタミによってオイルコントロールバルブ40が破損することが防止されている。なお、オイルコントロールバルブ40の詳細については後述する。
【0024】
シリンダ25の外面にオイルコントロールバルブ40が設置されるため、シリンダヘッド26を懸架する車体フレーム10にオイルコントロールバルブ40が干渉することがない。よって、車体フレーム10が車幅方向外側に張り出すことがなく、鞍乗型車両1の大型化が抑えられている。また、エンジン21の重心がクランクケース22に位置しているため、オイルコントロールバルブ40がエンジン21の重心に近づけられている。このため、クランクケース22からオイルコントロールバルブ40への振動の伝搬が小さくなって、オイルコントロールバルブ40の耐久性が向上される。
【0025】
車両側面視にて、シリンダヘッド26とシリンダ25がシリンダ軸線を挟んだ両側で2本のボルト36によって固定され、シリンダ25とクランクケース22がシリンダ軸線を挟んだ両側で2本のボルト37によって固定されている。これら4本のボルト36、37に重ならないようにオイルコントロールバルブ40が設置されて、オイルコントロールバルブ40が車幅方向外側に突き出されることが防止されている。この場合、上側の2本のボルト36の間隔が下側の2本のボルト37の間隔よりも広く、オイルコントロールバルブ40はシリンダヘッド26寄りに位置付けられている。
【0026】
オイルコントロールバルブ40の下方には、スタータギア(不図示)を側方から覆うスタータギアカバー32、33が設けられている。スタータギアカバー32、33の後方には、クラッチ(不図示)を側方から覆うクラッチカバー31が設けられている。スタータギアカバー32の上部はシリンダ25側にはみ出しているが、スタータギアカバー33とソレノイド42の干渉は抑えられている。なお、スタータギアカバー32、33とクラッチカバー31が別々のエンジンカバーとして形成されているが、スタータギアカバー32、33とクラッチカバー31が1つのエンジンカバーとして形成されていてもよい。
【0027】
図2及び図3に示すように、スタータギアカバー32、33及びクラッチカバー31はシリンダ25の側面よりも車幅方向外側に膨出している。車両前面視にて、オイルコントロールバルブ40がスタータギアカバー32、33、クラッチカバー31、ダウンフレーム13よりも車幅方向内側に位置付けられている。また、オイルコントロールバルブ40がスタータギアカバー32、33とダウンフレーム13の間に位置付けられている。車両転倒時にはスタータギアカバー32、33、クラッチカバー31、ダウンフレーム13によってオイルコントロールバルブ40が保護される。
【0028】
クランクケース22にはオイルのメインギャラリ38が形成されており、メインギャラリ38とオイルコントロールバルブ40が外部配管39によって接続されている。これにより、外部配管39を通じて油圧が高いメインギャラリ38からオイルコントロールバルブ40にダイレクトにオイルが供給されている。メインギャラリ38からクランクケース22内のオイル通路を通らずに、オイルコントロールバルブ40にオイルが供給されることで、オイル通路の圧力損失が抑えられてオイルコントロールバルブ40に対して高い油圧のオイルを供給することができる。
【0029】
外部配管39は、メインギャラリ38から車両前方に延出してクランクケース22を下側から回り込んで上方に延びている。そして、外部配管39は、ダウンフレーム13の下方で車両後方に曲げられてオイルコントロールバルブ40のバルブハウジング41に接続されている。車両前面視にて、外部配管39がスタータギアカバー32、33、クラッチカバー31、ダウンフレーム13よりも車幅方向内側を通って、ダウンフレーム13の下方でオイルコントロールバルブ40に接続されている。車両転倒時にはスタータギアカバー32、33、クラッチカバー31、ダウンフレーム13によって外部配管39が保護される。
【0030】
シリンダヘッド26の前方には、前面視矩形状のラジエータ16が設けられている。ラジエータ16は、上部が下部よりも前方に位置するように傾けられている。ラジエータ16は、上面視アーチ状に湾曲したラウンドタイプのラジエータであり、ラジエータ16の背面には車幅方向でオイルコントロールバルブ40側(右側)に冷却ファン19が取り付けられている。車両前面視にて、ラジエータ16よりも車幅方向外側でダウンフレーム13よりも下方にオイルコントロールバルブ40が設置され、オイルコントロールバルブ40の前方で走行風がラジエータ16及びダウンフレーム13に遮られ難くなっている。
【0031】
オイルコントロールバルブ40はソレノイドバルブであるため、ソレノイド42の通電によってオイルコントロールバルブ40が発熱し易くなっている。このため、オイルコントロールバルブ40が走行風によって冷却されることで、オイルコントロールバルブ40とオイルの温度上昇に起因した可変動弁装置60の作動性の悪化が抑えられている。上記したように、ソレノイド42がバルブハウジング41の後側に位置付けられて、ラジエータ16からソレノイド42が離されている。ラジエータ16からの熱がソレノイド42に伝わり難くなってソレノイド42の温度上昇が抑えられている。
【0032】
車両側面視にて、ダウンフレーム13の下端が冷却ファン19の下端を送風方向に延ばした延長線L上に位置付けられており、この延長線Lよりも下方にオイルコントロールバルブ40が位置付けられている。ラジエータ16の排風がオイルコントロールバルブ40に当り難くなって、オイルコントロールバルブ40とオイルの温度上昇に起因した可変動弁装置60の作動性の悪化が抑えられる。また、車両前面視にて、ダウンフレーム13によってオイルコントロールバルブ40のソレノイド42が覆われており、ラジエータ16の排風がダウンフレーム13に遮られてソレノイド42の温度上昇が抑えられている。
【0033】
図4を参照して、オイルコントロールバルブについて説明する。図4は本実施例のオイルコントロールバルブの正面図及び背面図である。なお、図4(A)がオイルコントロールバルブの正面図、図4(B)がオイルコントロールバルブの背面図を示している。
【0034】
図4(A)及び図4(B)に示すように、オイルコントロールバルブ40のバルブハウジング41は、シリンダ25の側面に設置される設置板43と、設置板43から外方に膨出する円筒ケース44と、を有している。設置板43の外縁には円筒ケース44を囲む3箇所にネジ止め用の固定穴45が形成されている。また、設置板43の下部には外部配管39(図2参照)が接続される供給口46が形成されている。円筒ケース44にはソレノイド42から延びるバルブスプールが挿し込まれている。バルブスプールによって供給口46から入り込んだオイルの送り先が切り替えられている。
【0035】
設置板43の背面には、設置板43の背面とシリンダ25の側面の隙間を封止するOリング47が装着されている。Oリング47の内側には供給口46、入力ポート51、進角ポート52、遅角ポート53、ドレンポート54が形成されている。供給口46は、シリンダ25に形成されたオイル通路を通じて入力ポート51に連通されている。入力ポート51にはフィルタ55が設置されており、フィルタ55を通過することでオイルが濾過される。入力ポート51は、バルブスプールの位置に応じて進角ポート52、遅角ポート53、ドレンポート54のいずれか1つに連通されている。
【0036】
供給口46から入力ポート51にオイルが入り込むと、入力ポート51のフィルタ55で濾過されたオイルが円筒ケース44に入力される。ソレノイド42によってバルブスプールが動かされることで、入力ポート51が進角ポート52及び遅角ポート53のいずれか一方に連通され、ドレンポート54が進角ポート52及び遅角ポート53のいずれか他方に連通される。これにより、後述する可変動弁装置60(図10参照)の進角室S1及び遅角室S2のいずれか一方に向けてオイルコントロールバルブ40からオイルが供給され、いずれか他方からオイルコントロールバルブ40に向けて余剰のオイルが排出される。
【0037】
図5から図9を参照して、エンジン内のオイル通路について説明する。図5は本実施例のオイル通路の模式図である。図6図2のエンジンをA-A線に沿って切断した断面図である。図7は本実施例のオイルパイプの斜視図である。図8は本実施例のオイルパイプの設置箇所の断面図である。図9は本実施例のカムハウジング内のオイル通路の説明図である。なお、図6では説明の便宜上、カムチェーンを省略して記載している。図8(A)はプラグキャップが装着された状態、図8(B)はプラグキャップが外された状態を示している。図9(A)はロアハウジングを下方から見た状態、図9(B)はアッパハウジングを下方から見た状態、図9(C)はカムシャフトを外した状態を示している。
【0038】
図5に示すように、エンジン21のシリンダ25及びシリンダヘッド26にカムチェーン室58が形成されている。カムチェーン室58にはカムチェーン59が収容されており、カムチェーン59は吸気側カムスプロケット71及び排気側カムスプロケット81に掛け渡されている。吸気側カムスプロケット71には吸気側カムシャフト72が固定されており、排気側カムスプロケット81には排気側カムシャフト82が固定されている。吸気側カムシャフト72及び排気側カムシャフト82には、カムチェーン59を介してクランクシャフト(不図示)が連結されている。
【0039】
吸気側カムシャフト72及び排気側カムシャフト82は、カムハウジング91によって回転可能に支持されている。カムハウジング91は、シリンダヘッド26上に固定された支持壁であり、カムシャフト72、82の上半部を支持するアッパハウジング92と、カムシャフト72、82の下半部を支持するロアハウジング93と、を有している。シリンダヘッド26の内側で吸気側カムシャフト72の一端部に可変動弁装置60が取り付けられている。可変動弁装置60は、油圧によって吸気側カムシャフト72を進角又は遅角させて、吸気バルブ(不図示)の開閉タイミングを変化させている。
【0040】
カムチェーン室58の外壁となるシリンダ25の外面(側面)にオイルコントロールバルブ40が設置されている。オイルコントロールバルブ40は可変動弁装置60に対する油圧を制御している。オイルコントロールバルブ40の進角ポート52(図4(B)参照)から可変動弁装置60に向かって進角通路100が延びており、オイルコントロールバルブ40の遅角ポート53(図4(B)参照)から可変動弁装置60に向かって遅角通路105が延びている。進角通路100には吸気バルブの開閉タイミングを進角させるオイルが通り、遅角通路105には吸気バルブの開閉タイミングを遅角させるオイルが通っている。
【0041】
油圧制御用の進角通路100及び遅角通路105は、オイルコントロールバルブ40からカムチェーン室58の外壁に入り込んでいる。そして、進角通路100及び遅角通路105は、シリンダ25側からシリンダヘッド26側に向かった後に、カムチェーン室58を横断してカムチェーン室58の内壁を通じて可変動弁装置60に向かっている。この場合、カムチェーン室58の外壁はシリンダ25の外壁、シリンダヘッド26の外壁、クランクケース22の外壁によって形成されており、カムチェーン室58の内壁はシリンダ25の内壁、シリンダヘッド26の内壁、クランクケース22の内壁、カムハウジング91によって形成されている。
【0042】
シリンダヘッド26の外壁と内壁が一対のオイルパイプ64、65によって接続されている。一対のオイルパイプ64、65は、カムチェーン59の内側を通ってカムチェーン室58を横断している。オイルパイプ64、65は着脱可能に設置されているため、カムチェーン59の組み付け時に一対のオイルパイプ64、65が障害になることがない。一対のオイルパイプ64、65が着脱可能であるため、エンジン21に対するカムチェーン59の組み付け後に一対のオイルパイプ64、65を挿し込むことが可能になっている。これにより、カムチェーン59の内側のデッドスペースが有効利用される。
【0043】
カムチェーン室58の外壁では、進角通路100及び遅角通路105がシリンダ25の外壁からシリンダヘッド26の外壁に向かってシリンダ軸線と平行に延びている。このとき、進角通路100が前側、遅角通路105が後側に位置付けられており、進角通路100よりも遅角通路105が高い位置まで延びている。カムチェーン室58の外壁と内壁の間では、進角通路100及び遅角通路105が一対のオイルパイプ64、65の内側を通ってシリンダ軸線と直交方向に延びている。このように、一対のオイルパイプ64、65によって進角通路100及び遅角通路105の横断箇所が形成されている。
【0044】
カムチェーン室58の内壁では、進角通路100及び遅角通路105がシリンダヘッド26の外壁からカムハウジング91に向かってシリンダ軸線と平行に延びている。進角通路100は、ロアハウジング93を貫通してロアハウジング93とアッパハウジング92の合わせ面151まで延びた後に、当該合わせ面151を通って進角溝131に側方から連なっている。遅角通路105は、シリンダヘッド26とロアハウジング93の合わせ面152を通って遅角溝132の下方まで延びた後に、ロアハウジング93を貫通して遅角溝132に下方から連なっている。進角溝131及び遅角溝132は吸気側カムシャフト72を通じて可変動弁装置60に連なっている。
【0045】
シリンダ25及びシリンダヘッド26には、シリンダ軸線に平行な直線通路と直線通路に直交する直交通路によって進角通路100及び遅角通路105が形成されている。このため、進角通路100及び遅角通路105におけるオイルの圧力損失が低減されると共にシリンダ25及びシリンダヘッド26に対して進角通路100及び遅角通路105を容易に加工することができる。シリンダ25及びシリンダヘッド26では、進角通路100と遅角通路105が平行に並んでいる。このため、前後方向において進角通路100と遅角通路105が近づけられてエンジン21の大型化が抑えられている。
【0046】
カムチェーン室58の外壁のシリンダ25側には、オイルコントロールバルブ40のドレンポート54(図4(B)参照)に連なるドレン穴109(特に図10参照)が形成されている。ドレン穴109の下方にはカムチェーン59の内周面が位置付けられており、カムチェーン59に向けてドレン穴109からオイルが排出される。ドレン穴109から落下したオイルがカムチェーン59に供給され、カムチェーン59と吸気側カムスプロケット71及び排気側カムスプロケット81の噛み合い箇所が適度に潤滑されてカムチェーン59の耐久性が向上される。また、オイルをカムチェーン59に向かわせるためのガイドや複雑な加工が不要である。
【0047】
図6に示すように、シリンダ25には円筒状のシリンダボア95が形成されており、シリンダボア95にはピストン(不図示)が摺動可能に収容されている。シリンダヘッド26にはシリンダボア95を覆う天井面が形成されており、ピストンの頂面とシリンダヘッド26の天井面の間に燃焼室96が形成されている。シリンダ25及びシリンダヘッド26の内壁には燃焼室96を冷却するウォータジャケット97が形成されている。上記したように、エンジン21の車幅方向の一方側(右側)には、シリンダ25及びシリンダヘッド26の外壁と内壁の間にカムチェーン室58が形成されている。
【0048】
シリンダ25の外壁におけるオイルコントロールバルブ40の設置箇所からシリンダヘッド26の外壁にかけて進角通路100が形成されている。シリンダヘッド26の外壁と内壁がオイルパイプ64を介して接続されており、燃焼室96よりも上方で進角通路100がオイルパイプ64を通じてカムチェーン室58を横断している。このとき、進角通路100はウォータジャケット97の上部に向けてカムチェーン室58を横断しており、シリンダヘッド26の内壁でウォータジャケット97の隣を通るように進角通路100が形成されている。遅角通路105も進角通路100と略同様に形成されている。
【0049】
進角通路100及び遅角通路105は燃焼室96を迂回するように形成されている。また、進角通路100及び遅角通路105がウォータジャケット97の隣を通過することで、ウォータジャケット97によって進角通路100及び遅角通路105のオイルが冷却されている。さらに、進角通路100と燃焼室96の間、遅角通路105と燃焼室96の間にカムチェーン室58及びウォータジャケット97が形成されており、燃焼室96から進角通路100及び遅角通路105のオイルに熱が伝わり難くなっている。よって、進角通路100及び遅角通路105のオイルの油温が安定して可変動弁装置60の動作が安定される。
【0050】
図7及び図8(A)に示すように、オイルパイプ64の外周面の一端側にはカムチェーン室58(シリンダヘッド26)の外壁に設置される第1のシール面111が形成され、オイルパイプ64の外周面の他端側にはカムチェーン室58の内壁に設置される第2のシール面115が形成されている。第1のシール面111は第2のシール面115よりも僅かに拡径されており、第1、第2のシール面111、115の間は第2のシール面115と同径に形成されている。また、第1のシール面111よりも一端側であるオイルパイプ64の一端部は、第1、第2のシール面111、115よりも縮径された縮径部119になっている。
【0051】
第1のシール面111には第1のシール溝112が形成されており、第1のシール溝112には第1のOリング113が装着されている。第2のシール面115には第2のシール溝116が形成されており、第2のシール溝116には第2のOリング117が装着されている。オイルパイプ64の縮径部119には十字状に交差するように貫通穴120が貫通しており、貫通穴120を通じてオイルパイプ64と進角通路100が連通される。オイルパイプ64の一端側では貫通穴120を通じて径方向からオイルが流入し、オイルパイプ64の他端側では軸方向からオイルが流出している。
【0052】
カムチェーン室58(シリンダヘッド26)の外壁及び内壁には第1、第2の設置穴114、118が形成されている。外壁側の第1の設置穴114にはオイルパイプ64の第1のシール面111が設置され、内壁側の第2の設置穴118にはオイルパイプ64の第2のシール面115が設置されている。第1のシール面111と第1の設置穴114の内周面が第1のOリング113で液密に封止され、第2のシール面115と第2の設置穴118の内周面が第2のOリング117で液密に封止されている。第1、第2のシール面111、115によってカムチェーン室58の外壁及び内壁におけるオイルパイプ64のオイル漏れが抑えられている。
【0053】
カムチェーン室58の外壁にはオイルパイプ64用の挿入口98が形成されており、挿入口98はプラグキャップ66によって塞がれている。挿入口98の内周面には雌ネジが切られており、挿入口98の雌ネジにプラグキャップ66の雄ネジが嵌め込まれている。挿入口98は第1、第2の設置穴114、118よりも拡径されている。挿入口98の雌ネジの内側にオイルパイプ64の縮径部119が位置付けられており、縮径部119の貫通穴120が雌ネジに開口したオイル通路に連なっている。挿入口98から複数の貫通穴120を通じてオイルパイプ64にオイルが入り易くなってオイルパイプ64の一端側における圧力損失が低減される。
【0054】
この場合、カムチェーン室58の内壁にφ12(穴径12mm)の第2の設置穴118が形成された後に、第2の設置穴118に面取りを施すようにφ14(穴径14mm)の下穴が形成される。この下穴によってカムチェーン室58の外壁に第1の設置穴114が形成される。下穴の入口側にM16(ネジ径16mm)の雌ネジが切られて挿入口98が形成される。このように、雌ネジの下穴を形成することで、第2の設置穴118が面取りされると共に、第1の設置穴114が形成されている。なお、オイルパイプ64の内径及び貫通穴120の内径はそれぞれφ6(穴径6mm)に形成されている。
【0055】
オイルパイプ64の一端部はプラグキャップ66によって塞がれている。オイルパイプ64の一端部とプラグキャップ66の間には僅かな隙間が設けられているが、オイルパイプ64の一端部とプラグキャップ66を接触させてもよい。オイルパイプ64が突っ張ることでカムチェーン室58の壁面の音対策にもなる。また、可変動弁装置60(図9参照)の収容箇所でシリンダヘッド26の外壁が車幅方向外側に膨出しており、プラグキャップ66、67の車幅方向の突出量が外壁の膨出部分99の膨出量以下になっている。これにより、車体フレーム10にエンジン21が組み付け易くなっている。
【0056】
図8(B)に示すように、オイルパイプ64の一端部が縮径部119になっているため、挿入口98と縮径部119には十分な間隔が空けられており、オイルパイプ64の取り外し性が向上されている。例えば、挿入口98からプラグキャップ66を外して、ラジペンチ等の工具121でオイルパイプ64の縮径部119を掴んで引き抜いたり、縮径部119の貫通穴120にフック122を引っ掛けて引き抜いたりすることができる。なお、進角用のオイルパイプ64及びプラグキャップ66について説明したが、遅角用のオイルパイプ65及びプラグキャップ67も同様に構成されている。
【0057】
図9(A)から図9(C)に示すように、アッパハウジング(支持壁)92及びロアハウジング(支持壁)93には吸気側カムシャフト72及び排気側カムシャフト82のジャーナル73、83が支持されている。吸気側カムシャフト72の一端部には吸気側カムスプロケット71及び可変動弁装置60が取り付けられ、排気側カムシャフト82の一端部には排気側カムスプロケット81が取り付けられている。吸気側カムシャフト72及び排気側カムシャフト82の各ジャーナル73、83の外周面には、軸方向(スラスト方向)の位置決め用のスラスト止め74、84が形成されている。
【0058】
アッパハウジング92及びロアハウジング93の吸気側の軸受面130(ロアハウジング93の軸受面は不図示)には進角溝131、遅角溝132、収容溝133が形成されている。進角溝131には吸気側カムシャフト72を進角させるオイルが入り込み、遅角溝132には吸気側カムシャフト72を遅角させるオイルが入り込み、収容溝133には吸気側カムシャフト72のスラスト止め74が収容されている。吸気側の軸受面130にて遅角溝132がアッパハウジング92の一壁面135側、収容溝133がアッパハウジング92の他壁面136側、進角溝131が遅角溝132と収容溝133の間に位置付けられている。ロアハウジング93にも同様に各溝が形成されている。
【0059】
アッパハウジング92及びロアハウジング93には、吸気側カムシャフト72及び排気側カムシャフト82を挟む4箇所にボルト穴137a-137dが形成されている。ロアハウジング93の下面中央にはロアハウジング93を上下に進角貫通路102が貫通し、ロアハウジング93の下面中央からボルト穴137cの隣を通って吸気側に遅角通路溝107(図9(A)参照)が延びている。進角貫通路102及び遅角通路溝107の一部はボルト穴137b、137cに締め込まれたボルトに挟まれている。ロアハウジング93の下面はシリンダヘッド26とロアハウジング93の合わせ面152であり、合わせ面152にて進角貫通路102及び遅角通路溝107付近の面圧が高められてオイル漏れが抑えられている。
【0060】
進角貫通路102はロアハウジング93とアッパハウジング92の合わせ面151まで延びており、合わせ面151には進角貫通路102の上端から進角溝131に向けて延びる進角通路溝103(図9(B)参照)が形成されている。遅角通路溝107は遅角溝132の下方まで延びており、遅角通路溝107と遅角溝132を連ねるように遅角貫通路108がロアハウジング93を上下に貫通している。このように、進角貫通路102及び進角通路溝103によって進角溝131に側方からオイルを供給する進角通路100が形成され、遅角通路溝107及び遅角貫通路108によって遅角溝132に下方からオイルを供給する遅角通路105が形成されている。
【0061】
吸気側カムシャフト72のジャーナル73には、進角溝131に対応して進角穴75が形成され、遅角溝132に対応して遅角穴76が形成されている。進角穴75は吸気側カムシャフト72内の通路を通って可変動弁装置60の進角室S1(図10参照)に連通している。遅角穴76は吸気側カムシャフト72内の通路を通って可変動弁装置60の遅角室S2(図10参照)に連通している。進角溝131から可変動弁装置60の進角室S1にオイルが供給されることで吸気側カムシャフト72が進角され、遅角溝132から可変動弁装置60の遅角室S2にオイルが供給されることで吸気側カムシャフト72が遅角される。
【0062】
ここで、カムチェーン59(図10参照)から可変動弁装置60を介して吸気側カムシャフト72に動力が伝達されている。可変動弁装置60は吸気側カムシャフト72からインナーロータ62(図10参照)を遅角させる方向のトルクを受け続けることになり、吸気側カムシャフト72を進角させる方が遅角させるよりも大きな油圧が必要である。軸受面130にて進角溝131が遅角溝132と収容溝133の間に設置されているため、一壁面135及び他壁面136から進角溝131が離されている。進角溝131のオイル漏れを遅らせる対抗油圧が遅角溝132及び収容溝133で生じて、進角溝131からのオイル漏れが抑えられて、適度な油圧によって可変動弁装置60を安定して作動させることができる。
【0063】
なお、遅角溝132に必要な油圧は進角溝131よりも小さいため、遅角溝132から多少のオイル漏れが生じても可変動弁装置60の作動に影響がない。また、収容溝133はオイルによるスラスト止め74の潤滑の他、進角溝131のオイル漏れに対する対抗油圧を生じさせている。収容溝133は潤滑及び対抗油圧を主な目的とするため、収容溝133から多少のオイル漏れが生じても可変動弁装置60の作動に影響がない。また、アッパハウジング92とロアハウジング93がシリンダヘッド26と別部品であるため、アッパハウジング92とロアハウジング93の合わせ面151の平面精度が高く、進角溝131、遅角溝132、収容溝133が精度よく形成される。
【0064】
アッパハウジング92及びロアハウジング93の排気側の軸受面140(ロアハウジング93の軸受面は不図示)には潤滑溝141及び収容溝142が形成されている。潤滑溝141には潤滑用のオイルが入り込み、収容溝142には排気側カムシャフト82のスラスト止め84が収容されている。潤滑溝141がアッパハウジング92の一壁面135側、収容溝142がアッパハウジング92の他壁面136側に位置付けられている。ロアハウジング93にも同様に各溝が形成されている。排気側カムシャフト82のジャーナル83には、排気側カムシャフト82内の通路から潤滑溝141に潤滑用のオイルを通す油穴85が形成されている。
【0065】
ロアハウジング93とアッパハウジング92の合わせ面151には、排気側カムシャフト82の潤滑溝141から吸気側カムシャフト72の収容溝133に向けて潤滑用のオイルが通る潤滑通路溝143が形成されている。このように、潤滑溝141及び潤滑通路溝143によって収容溝133に側方からオイルを供給する潤滑通路が形成されている。ハウジングの合わせ面151にて、潤滑通路溝143はエンジン21の内側を通るように進角通路溝103を迂回して、進角通路溝103の隣を通って収容溝133に連なっている。潤滑通路溝143から収容溝133にオイルが供給されることで吸気側カムシャフト72のスラスト止め74が潤滑されている。
【0066】
また、潤滑通路溝143が進角通路溝103の隣を通ることで、潤滑通路溝143に進角通路溝103のオイル漏れに対する対抗油圧を生じさせて進角通路溝103のオイル漏れが抑えられている。ハウジングの合わせ面151にて、進角通路溝103は潤滑通路溝143よりも幅広に形成されており、進角通路溝103によって吸気側カムシャフト72を進角させるのに必要なオイル量が確保されている。ロアハウジング93とアッパハウジング92によって排気側カムシャフト82から吸気側カムシャフト72に向かうオイル通路が形成されているため、配管等の部材が不要になって省スペース化が図られている。
【0067】
図10を参照して、可変バルブタイミングシステムについて説明する。図10は本実施例の可変バルブタイミングシステムの模式図である。
【0068】
図10に示すように、オイルコントロールバルブ40の下方にはカムチェーン59の駆動ギア155が設けられている。駆動ギア155にはギア列を介してクランクシャフト(不図示)が連結されている。駆動ギア155にはカムチェーン59の下部が掛けられ、吸気側カムスプロケット71及び排気側カムスプロケット81にカムチェーン59の上部が掛けられている。駆動ギア155が回転してカムチェーン59が周回移動されることで、吸気側カムスプロケット71と一体に吸気側カムシャフト72が回転され、排気側カムスプロケット81と一体に排気側カムシャフト82が回転される。
【0069】
カムチェーン59はレバーガイド156とチェーンガイド157によってガイドされている。駆動ギア155から吸気側カムスプロケット71に送り出されるカムチェーン59がレバーガイド156によってガイドされ、排気側カムスプロケット81から駆動ギア155に引き込まれるカムチェーン59がチェーンガイド157によってガイドされている。駆動ギア155から吸気側カムスプロケット71に向かうカムチェーン59には弛みが生じるため、チェーンテンショナ(不図示)によってレバーガイド156がカムチェーン59に押し付けられて、カムチェーン59に対して張力が付与されている。
【0070】
吸気側カムシャフト72及び排気側カムシャフト82の回転によって吸気バルブ及び排気バルブが開閉されるが、吸気バルブの開閉タイミングは可変バルブタイミングシステムによって変更される。可変バルブタイミングシステムには、クランクシャフトに対する吸気側カムシャフト72の相対的な回転位相を変化させる可変動弁装置60が設けられている。可変動弁装置60は、吸気側カムスプロケット71に固定されたケース61と、吸気側カムシャフト72に固定されたインナーロータ62と、を有している。インナーロータ62は、ケース61の内側に相対回転可能に収容されている。
【0071】
可変動弁装置60のケース61には複数の油圧室が形成されており、インナーロータ62から径方向外側に複数のベーン63が延びている。ケース61の各油圧室にインナーロータ62のベーン63が収容され、各油圧室がベーン63によって進角室S1と遅角室S2に仕切られている。油圧によって進角室S1の容積が拡大すると、ケース61に対してインナーロータ62が相対的に進角側に回転されて吸気側カムシャフト72が進角される。油圧によって遅角室S2の容積が拡大すると、ケース61に対してインナーロータ62が相対的に遅角側に回転されて吸気側カムシャフト72が遅角される。
【0072】
可変動弁装置60はオイルコントロールバルブ40からの油圧によって作動される。オイルコントロールバルブ40にはメインギャラリ38(図2参照)から外部配管39を通じてオイルが供給される。オイルコントロールバルブ40のポート間の連通状態に応じて、オイルコントロールバルブ40からのオイルの供給先が可変動弁装置60の進角室S1と遅角室S2の間で切り替えられる。進角室S1には進角通路100を通じてオイルコントロールバルブ40からオイルが供給され、遅角室S2には遅角通路105を通じてオイルコントロールバルブ40からオイルが供給されている。
【0073】
上記したように、進角通路100及び遅角通路105はカムチェーン室58(図6参照)を横断しており、カムチェーン室58の横断にはオイルパイプ64、65が使用されている。オイルパイプ64、65はレバーガイド156とチェーンガイド157の間でカムチェーン59の内側に設置されている。オイルパイプ64、65は上下に離間した状態で前後に並んでおり、オイルパイプ64、65の設置領域が狭められて、カムチェーン59の内側にオイルパイプ64、65が余裕をもって設置される。レバーガイド156によってカムチェーン59が押し込まれた場合でも、オイルパイプ64、65にカムチェーン59が干渉することがない。
【0074】
以上、本実施例によれば、カムハウジング91の軸受面130にて進角溝131が遅角溝132と収容溝133の間に位置付けられている。よって、進角溝131のオイル漏れに対する対抗油圧が遅角溝132及び収容溝133で生じて、遅角溝132よりも高い油圧が必要な進角溝131からのオイル漏れが抑えられ、油圧によって可変動弁装置60を安定して作動させることができる。なお、遅角溝132に必要な油圧は進角溝131よりも小さいため、遅角溝132から多少のオイル漏れが生じても可変動弁装置60の作動に影響がない。
【0075】
なお、本実施例において、エンジンとして並列4気筒エンジンを例示したが、エンジンの種類は特に限定されない。
【0076】
また、本実施例において、車体フレームとしてツインスパーフレームを例示したが、シリンダヘッドを懸架可能な車体フレームであれば、車体フレームの種類は特に限定されない。例えば、車体フレームはクレードルフレームでもよい。
【0077】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブがエンジンの右側面に設置されているが、オイルコントロールバルブがエンジンの左側面に設置されていてもよい。
【0078】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブがエンジンの側面に設置されているが、オイルコントロールバルブがエンジンの前面又は後面に設置されていてもよい。
【0079】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブがシリンダに設置されているが、オイルコントロールバルブがエンジンに設置されていればよい。例えば、オイルコントロールバルブがクランクケースやシリンダヘッドに設置されていてもよい。また、オイルコントロールバルブはエンジンの外面だけでなく、エンジン内部に設置されていてもよい。
【0080】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブとしてソレノイドバルブを例示したが、可変動弁装置に対する油圧を制御可能なバルブであれば、オイルコントロールバルブの種類は特に限定されない。
【0081】
また、本実施例において、吸気側カムシャフトに可変動弁装置が設けられているが、吸気側カムシャフト及び排気側カムシャフトの少なくとも一方に可変動弁装置が設けられていればよい。
【0082】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブとメインギャラリが外部配管によって接続されているが、オイルコントロールバルブとメインギャラリがエンジン内のオイル通路によって接続されていてもよい。
【0083】
また、本実施例において、着脱可能なオイルパイプによってカムチェーン室の横断通路が形成されたが、カムチェーン室の横断通路はカムチェーン室の内壁と外壁の間でオイルを移動可能に形成されていればよい。例えば、シリンダヘッドの内壁と外壁のいずれか一方側を他方側に突き出させて横断通路が形成されていてもよい。
【0084】
また、本実施例において、進角通路と遅角通路の一部が平行に形成されたが、エンジンの大きさに余裕があれば、進角通路と遅角通路が全体的に非平行に形成されていてもよい。
【0085】
また、本実施例において、進角通路と遅角通路が燃焼室の上方を通っているが、進角通路及び遅角通路のルートは特に限定されない。進角通路及び遅角通路は、オイルコントロールバルブからカムチェーン室を横断して可変動弁装置に向かって延びていればよい。
【0086】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブがシリンダの外面でボルトに重ならないように設置されているが、エンジンの外面からオイルコントロールバルブが極端に突き出さなければ、オイルコントロールバルブがボルトに重なっていてもよい。
【0087】
また、本実施例において、カムチェーンの内側で一対のオイルパイプが上下に離間した状態で前後に並んでいるが、一対のオイルパイプがカムチェーンに干渉しなければ、一対のオイルパイプの設置箇所は特に限定されない。
【0088】
また、本実施例において、ダウンフレームの後縁に沿って一対のプラグキャップが設置されているが、一対のプラグキャップが車体フレームに干渉しなければ、一対のプラグキャップの設置箇所は特に限定されない。
【0089】
また、本実施例において、オイルパイプとプラグキャップが別体に形成されたが、オイルパイプとプラグキャップが一体に形成されていてもよい。
【0090】
また、本実施例において、オイルパイプの一端部が縮径して、この一端部に径方向に貫通穴が形成されているが、オイルパイプはカムチェーン室を横断可能であれば、オイルパイプの形状は特に限定されない。
【0091】
また、本実施例において、カムシャフトの支持壁がシリンダヘッドと別体のカムハウジングであるが、カムシャフトの支持壁がシリンダヘッドと一体に形成されていてもよい。
【0092】
また、本実施例において、カムハウジングの遅角通路が遅角溝に下方から連なり、カムハウジングの進角通路が進角溝に側方から連なっているが、カムハウジングの進角通路及び遅角通路のルートは特に限定されない。例えば、遅角通路が遅角溝に側方から連なり、進角通路が進角溝に下方から連なっていてもよい。
【0093】
また、本実施例において、排気側カムシャフトから吸気側カムシャフトに向けて潤滑通路溝が形成されているが、潤滑通路溝が形成されずに、吸気側カムシャフトから収容溝にオイルが供給されていてもよい。
【0094】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブがラジエータよりも車幅方向外側でダウンフレームよりも下方に位置付けられているが、ラジエータとオイルコントロールバルブの位置関係は特に限定されない。
【0095】
また、本実施例において、冷却ファンの下端を送風方向に延ばした延長線よりも下方にオイルコントロールバルブが位置付けられているが、冷却ファンとオイルコントロールバルブの位置関係は特に限定されない。
【0096】
また、本実施例において、オイルコントロールバルブがエンジンカバー及びダウンフレームよりも車幅方向内側に位置付けられているが、オイルコントロールバルブがエンジンカバー及びダウンフレームよりも車幅方向外側に位置付けられていてもよい。
【0097】
また、本実施例において、外部配管がエンジンカバー及びダウンフレームよりも車幅方向内側に位置付けられているが、外部配管がエンジンカバー及びダウンフレームよりも車幅方向外側に位置付けられていてもよい。
【0098】
また、本実施例において、メインフレーム、ダウンフレーム、シリンダヘッドの下面に囲まれる領域が三角形に形成されたが、メインフレーム、ダウンフレーム、シリンダヘッドの下面に囲まれる領域の形状は特に限定されない。
【0099】
また、可変バルブタイミングシステムは、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0100】
以上の通り、本実施例の可変バルブタイミングシステムは、エンジン(21)に搭載された油圧制御式の可変バルブタイミングシステムであって、エンジンの支持壁に回転可能に支持されたカムシャフト(吸気側カムシャフト72)と、油圧によってカムシャフトを進角又は遅角させる可変動弁装置(60)と、可変動弁装置に対する油圧を制御するオイルコントロールバルブ(40)と、を備え、カムシャフトの外周面には軸方向の位置決め用のスラスト止め(74)が形成されており、支持壁の軸受面には、カムシャフトを進角させるオイルが通る進角溝(131)と、カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角溝(132)と、スラスト止めを収容する収容溝(133)と、が形成されており、軸受面にて遅角溝が支持壁の一壁面(135)側、収容溝が支持壁の他壁面(136)側、進角溝が遅角溝と収容溝の間に位置付けられている。この構成によれば、支持壁の軸受面にて進角溝が遅角溝と収容溝の間に位置付けられている。よって、遅角溝よりも高い油圧が必要な進角溝からのオイル漏れが抑えられ、油圧によって可変動弁装置を安定して作動させることができる。なお、遅角溝に必要な油圧は進角溝よりも小さいため、遅角溝から多少のオイル漏れが生じても可変動弁装置の作動に影響がない。
【0101】
本実施例の可変バルブタイミングシステムにおいて、支持壁は、カムシャフトの上半部を支持するアッパハウジング(92)と、カムシャフトの下半部を支持するロアハウジング(93)と、を有し、アッパハウジング及びロアハウジングの軸受面には進角溝、遅角溝、収容溝が形成されている。この構成によれば、アッパハウジングとロアハウジングがシリンダヘッドと別部品であるため、アッパハウジングとロアハウジングの合わせ面の平面精度が高く、進角溝、遅角溝、収容溝が精度よく形成される。よって、進角溝、遅角溝、収容溝の加工精度を高めて各溝からのオイル漏れを抑えることができる。
【0102】
本実施例の可変バルブタイミングシステムにおいて、エンジンのシリンダヘッド上にロアハウジングが固定されており、オイルコントロールバルブから可変動弁装置に向けて、カムシャフトを進角させるオイルが通る進角通路(進角貫通路102、進角通路溝103)と、カムシャフトを遅角させるオイルが通る遅角通路(遅角通路溝107、遅角貫通路108)と、が延びており、遅角通路は、シリンダヘッドとロアハウジングの合わせ面を通って遅角溝の下方に延びた後に、ロアハウジングを貫通して遅角溝に下方から連なり、進角通路は、ロアハウジングを貫通してロアハウジングとアッパハウジングの合わせ面まで延びた後に、当該合わせ面を通って進角溝に側方から連なる。この構成によれば、遅角溝よりも高い油圧が必要な進角通路がロアハウジングとアッパハウジングの合わせ面に形成されている。ロアハウジングとアッパハウジングの合わせ面の平面精度が高いため、進角通路からのオイル漏れを抑えることができる。
【0103】
本実施例の可変バルブタイミングシステムにおいて、アッパハウジング及びロアハウジングは吸気側カムシャフト及び排気側カムシャフト(82)を支持しており、可変動弁装置は吸気側カムシャフトを進角又は遅角させており、排気側カムシャフトから吸気側カムシャフトに向けて潤滑用のオイルが通る潤滑通路(潤滑通路溝143)が形成されており、ロアハウジングとアッパハウジングの合わせ面にて、潤滑通路は進角通路の隣りを通って収容溝に連なる。この構成によれば、潤滑通路から収容溝にオイルが供給されることでスラスト止めが潤滑される。また、潤滑通路に進角通路のオイル漏れに対する対抗油圧を生じさせて進角通路のオイル漏れを抑えることができる。
【0104】
本実施例の可変バルブタイミングシステムにおいて、ロアハウジングとアッパハウジングの合わせ面にて、進角通路が潤滑通路よりも幅広に形成されている。この構成によれば、進角通路によってカムシャフトを進角させるのに必要なオイル量を確保できる。
【0105】
本実施例の可変バルブタイミングシステムにおいて、シリンダヘッドとロアハウジングの合わせ面にて、シリンダヘッドにロアハウジングを固定する隣り合うボルトに進角通路及び遅角通路の一部(進角貫通路102、遅角通路溝103)が挟まれている。この構成によれば、シリンダヘッドとロアハウジングの合わせ面において進角通路及び遅角通路付近の面圧を高めてオイル漏れを抑えることができる。
【0106】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0107】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0108】
21 :エンジン
40 :オイルコントロールバルブ
60 :可変動弁装置
72 :吸気側カムシャフト(カムシャフト)
74 :スラスト止め
82 :排気側カムシャフト
92 :アッパハウジング
93 :ロアハウジング
100:進角通路
105:遅角通路
130:軸受面
131:進角溝
132:遅角溝
133:収容溝
135:一壁面
136:他壁面
143:潤滑通路溝(潤滑通路)
151:アッパハウジングとロアハウジングの合わせ面
152:シリンダヘッドとロアハウジングの合わせ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10