(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116897
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】速度算出装置、速度算出方法、及び速度算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 11/00 20060101AFI20230816BHJP
A61C 17/26 20060101ALI20230816BHJP
G01P 7/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G01P11/00
A61C17/26 A
G01P7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019268
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】実松 渉
(72)【発明者】
【氏名】辻 敦志
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA07
3B202AB08
3B202GA07
(57)【要約】
【課題】電子機器の動きに対応する速度を、精度よく算出することが可能な速度算出装置を提供する。
【解決手段】速度算出装置100は、センサ情報取得部111と、速度推定部112と、平均速度算出部113と、関係情報算出部114と、速度確定部115とを備える。センサ情報取得部111は、電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得する。速度推定部112は、センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する。平均速度算出部113は、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出する。関係情報算出部114は、推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する。速度確定部115は、関係情報と、速度推定部で算出された現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に設けられ、前記電子機器の動きに対応する速度を算出する速度算出装置であって、
前記電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報に基づいて、前記電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する速度推定部と、
前記センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、前記電子機器の動きに対応する平均速度を算出する平均速度算出部と、
前記推定速度と、前記平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する関係情報算出部と、
前記関係情報と、前記速度推定部で算出された現在の前記推定速度と、に基づいて、現在の前記電子機器の動きに対応する前記速度を確定する速度確定部と、を備える速度算出装置。
【請求項2】
前記フィルタ処理は、高周波成分を除去するローパスフィルタ処理を含む、請求項1に記載の速度算出装置。
【請求項3】
前記フィルタ処理は、低周波成分を除去するハイパスフィルタ処理をさらに含む、請求項2に記載の速度算出装置。
【請求項4】
前記関係情報算出部は、最小二乗法により、前記関係情報を算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の速度算出装置。
【請求項5】
前記平均速度算出部は、さらに移動平均処理を行うことにより、前記平均速度を算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の速度算出装置。
【請求項6】
コンピュータによって実行される速度算出方法であって、
電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得し、
前記センサ情報に基づいて、前記電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出し、
前記センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、前記電子機器の動きに対応する平均速度を算出し、
前記推定速度と、前記平均速度との対応関係を示す関係情報を算出し、
前記関係情報と、現在の前記推定速度と、に基づいて、現在の前記電子機器の動きに対応する速度を確定する、速度算出方法。
【請求項7】
電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得し、
前記センサ情報に基づいて、前記電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出し、
前記センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、前記電子機器の動きに対応する平均速度を算出し、
前記推定速度と、前記平均速度との対応関係を示す関係情報を算出し、
前記関係情報と、現在の前記推定速度と、に基づいて、現在の前記電子機器の動きに対応する速度を確定する処理を、コンピュータに実行させるための速度算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、速度算出装置、速度算出方法、及び速度算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが保持して使用する電子機器に対して、ユーザの手の動きに関する加速度等の数値を算出し、算出した結果に基づいて、適切に電子機器が使用されているか否かを判定し、ユーザにフィードバックする技術が提案されている。特許文献1には、電動歯ブラシの使用における歯のブラッシング活動を指導する歯ブラシの管理指導システムが開示されている。特許文献1に開示された管理指導システムは、歯ブラシに設けられた加速度センサにより取得した情報に基づいて、ユーザが適切にブラッシングを行っているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された管理指導システムにおいては、加速度に含まれる重力成分を除去し、算出される加速度の精度を向上させる。しかし、電子機器には、重力以外にも、電子機器自体の駆動振動やユーザから受ける反力等のノイズが含まれる場合がある。すなわち、電子機器の動きに対応する情報の算出においては、電子機器にかかるノイズ等を除去した、より精度の高い算出方法が望まれる。
【0005】
本開示は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本開示の目的は、電子機器の動きに対応する速度を、精度よく算出することが可能な速度算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に係る速度算出装置は、電子機器に設けられ、電子機器の動きに対応する速度を算出する速度算出装置であって、電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得するセンサ情報取得部と、センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する速度推定部と、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出する平均速度算出部と、推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する関係情報算出部と、関係情報と、速度推定部で算出された現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する速度確定部と、を備える。
【0007】
本開示の他の態様に係る速度算出方法は、コンピュータによって実行される速度算出方法であって、電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得し、センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出し、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出し、推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出し、関係情報と、現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する。
【0008】
本開示の他の態様に係る速度算出プログラムは、電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得し、センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出し、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出し、推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出し、関係情報と、現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する処理を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電子機器の動きに対応する速度を、精度よく算出することが可能な速度算出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る速度算出装置を備える電動歯ブラシの概略図である。
【
図2】本実施形態に係る速度算出装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る速度算出装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るセンサ情報取得部で取得した加速度の波形の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る速度推定部の機能的構成を示すブロック図である。
【
図6A】本実施形態に係る絶対値化処理部で絶対値化した加速度の波形の一例を示す図である。
【
図6B】本実施形態に係る第1移動平均処理部で移動平均処理した加速度の波形の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る平均速度算出部の機能的構成を示すブロック図である。
【
図8A】本実施形態に係る第1ローパス処理部でローパス処理を行った加速度の波形の一例を示す図である。
【
図8B】本実施形態に係るハイパス処理部でハイパス処理を行った加速度の波形の一例を示す図である。
【
図8C】本実施形態に係る速度算出部で算出した速度の波形の一例を示す図である。
【
図8D】本実施形態に係る第2ローパス処理部でローパス処理を行った速度の波形の一例を示す図である。
【
図8E】本実施形態に係る第2移動平均処理部で移動平均処理を行った速度の波形の一例を示す図である。
【
図8F】本実施形態に係る平均速度確定処理部における平均速度確定の処理について説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係る速度算出装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る速度推定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態に係る平均速度算出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0012】
(速度算出装置100の概略構成)
本実施形態に係る速度算出装置100は、電子機器に設けられ、電子機器の動きに対応する速度を算出する。以下、電子機器として電動歯ブラシ1が適用される場合の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る速度算出装置100を備える電動歯ブラシ1の外観を示す図である。
図1に示すように、電動歯ブラシ1は、作動スイッチ10と、速度算出装置100とを備える。
図1に示す例において、電動歯ブラシ1の長手方向(
図1の上下方向)をY軸方向と定める。また、
図1の左右方向をX軸方向と定め、
図1の奥行き方向をZ軸方向として定める。
【0014】
電動歯ブラシ1は、ユーザによる作動スイッチ10のオン及びオフにより、作動及び停止する。速度算出装置100は、電動歯ブラシ1を把持するユーザの手の動きに対する速度を算出する。
【0015】
図2は、電動歯ブラシ1の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、電動歯ブラシ1は、速度算出装置100と、作動スイッチ10と、センサ部11とを備える。本実施形態においてセンサ部11は、加速度センサにより構成される。
【0016】
速度算出装置100は、制御部110と、記憶部120と、入出力IF140(インタフェース、Interface)とを含んで構成される。また、速度算出装置100は、通信IF130を含んでもよい。速度算出装置100は、CPU(制御部110)、メモリ(記憶部120)、及び入出力IF140を備える汎用のマイクロコンピュータとして構成してもよい。この場合、マイクロコンピュータには、速度算出装置100として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされていてもよい。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、速度算出装置100が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、本実施形態では、ソフトウェアによって速度算出装置100が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0017】
制御部110は、記憶部120に格納されたプログラム(図示なし)に基づいて動作し、
図3に示す各機能を実行する。なお、プログラムは、記憶部120に格納される形態に限定されず、例えば、速度算出装置100内の、ROM等(図示なし)に記憶された構成としてもよい。
【0018】
記憶部120は、センサ部11により取得したセンサ情報を、入出力IF140を介して取得し記憶する。また、記憶部120は、上述の通り、制御部110において実行される各機能に対するプログラムを記憶してもよい。なお、記憶部120に格納されるセンサ情報やプログラムは、一つのストレージデバイスの中に物理的又は論理的に分けて設けられた領域として構成されていてもよい。あるいは、物理的に異なる複数のストレージデバイスに各データの記憶部120を設ける構成としてもよい。
【0019】
通信IF130は、有線及び/又は無線ネットワークを介して、速度算出装置100と、外部の各種機器との通信を行うためのインタフェースである。ユーザは、通信IF130を介して、速度算出装置100の制御プログラムの更新を行ってもよい。またユーザは、通信IF130を介して、記憶部120に記憶されたセンサ情報等を取得してもよい。
【0020】
入出力IF140は、速度算出装置100と、電動歯ブラシ1の作動スイッチ10、及びセンサ部11との間のデータ、制御信号等を送受信するためのインタフェースである。また、入出力IF140は、ユーザが速度算出装置100との間においてデータをやり取りするための構成要素(インタフェース)として機能してもよい。
【0021】
(速度算出装置100の機能的構成)
図3は、本実施形態に係る速度算出装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0022】
図3に示すように、速度算出装置100の制御部110は、センサ情報取得部111と、速度推定部112と、平均速度算出部113と、関係情報算出部114と、速度確定部115と、出力部116と、を機能として備える。
【0023】
センサ情報取得部111は、センサ部11で取得した電動歯ブラシ1のセンサ情報を加速度情報として取得する。すなわち、センサ情報取得部111は、電動歯ブラシ1にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサであるセンサ部11から取得する。また、センサ情報取得部111は、取得したセンサ情報をセンサ情報DB121に格納する。
【0024】
本実施形態において、センサ情報取得部111が取得する加速度センサのセンサ情報は、所定の方向に対する加速度情報である。所定の方向は、例えば、
図1に示すY軸方向であり、ユーザが電動歯ブラシ1を保持(把持)し、電動歯ブラシ1の長手方向であるY軸方向に電動歯ブラシ1を移動させながらブラッシングを行う際の加速度を取得する。なお、センサ情報における加速度の所定の方向は、本実施形態の構成を限定するものではなく、例えば、
図1に示すX軸方向又はZ軸方向の加速度に対する加速度情報であってもよい。
【0025】
図4は、センサ部11で取得した電動歯ブラシ1の加速度の波形を示す図である。
図4に示す図おいて、横軸には時間が設定され、縦軸にはセンサ部11で取得した加速度が設定される。
図4に示すように、加速度は、所定の方向に対して、プラスの値とマイナスの値が繰り返される一定の周期性を有している。例えば、
図4に示す例においては、約1.2秒の周期で加速度の波形が繰り返されている。すなわち、
図4は、電動歯ブラシ1を把持するユーザが、約1.2秒の間隔で、電動歯ブラシ1を所定の方向に往復させている場合の例を示している。
【0026】
速度推定部112は、センサ情報取得部111で所得した電動歯ブラシ1の加速度情報に基づいて、電動歯ブラシ1の速度を推定する。すなわち、速度推定部112は、センサ情報に相当する加速度情報に基づいて、電動歯ブラシ1の動きに対して推定される推定速度を算出する。また、速度推定部112は、算出した推定速度を、算出した推定速度に対応するセンサ情報と関連付けてセンサ情報DB121に格納する。なお、推定速度の格納場所は、センサ情報DB121に限定するものではなく、対応するセンサ情報と関連付けて、センサ情報DB121とは異なる記憶場所に格納してもよい。
【0027】
速度推定部112は、
図5に示すように、第1単位変換処理部112aと、絶対値化処理部112bと、第1移動平均処理部112cと、推定サイクル平均速度決定部112dとを、さらに機能として備える。
【0028】
第1単位変換処理部112aは、センサ情報取得部111で取得した加速度の値をSI単位系(国際単位系)に変換する。第1単位変換処理部112aにおける単位系の変換は、以下の式(1)に基づいて実施される。a
s[n]は、センサ情報取得部111で取得した加速度情報において、n番目のサンプル時の加速度を示す。a[n]は、単位変換後のn番目のサンプル時の加速度を示す。
【数1】
【0029】
絶対値化処理部112bは、第1単位変換処理部112aにおいて、SI単位系に変換された加速度(a)の絶対値化の処理を行う。絶対値化処理部112bにおける絶対値化の処理は、後述の第1移動平均処理部112cで1サイクル当りの平均加速度の大きさを求める為に実施される。
図6Aは、絶対値化処理部112bで絶対値化を行った加速度(a
a)の波形の一例を示す。
図6Aに示すように、絶対値化処理部112bは、第1単位変換処理部112aにおいて、SI単位系に変換された加速度(a)のマイナス部分がプラス側に折り返された形で示される。
【0030】
第1移動平均処理部112cは、絶対値化処理部112bで絶対値化を行った加速度(a
a)に対し、予測される1サイクルの区間で移動平均を算出する。すなわち、第1移動平均処理部112cは、所定の区間を1サイクルにして、サイクル当りの平均加速度を求める。第1移動平均処理部112cにおいては、以下の式(2)で示される処理が実施される。上線付きa[n]は、第1移動平均処理部112cで算出された加速度(a
m)である。
【数2】
【0031】
図6Bは、移動平均処理を実施した加速度の一例を示す図である。
図6Bにおいて、移動平均処理を実施した加速度(a
m)は点線で示されている。
図6Bに示す例においては、1区間を1サイクル分の1.2秒とし、1サイクルにおいて120サンプルとした場合の例を示している。すなわち、
図6Bに示す例においては、上記式(2)において、1サイクル当りのサンプル数Tは、120として計算した場合の例が示されている。
【0032】
推定サイクル平均速度決定部112dは、第1移動平均処理部112cで算出した加速度の移動平均を推定サイクル平均速度(上線付きVe)として決定する。本実施形態においては、推定サイクル平均速度決定部112dは、移動平均処理された加速度(am)を推定サイクル平均速度として決定する。これは、例えば、電動歯ブラシ1を所定の方向に往復運動させる場合、加速度が三角関数に近似され、「加速度≒速度」となる特徴に基づくものである。なお、推定サイクル平均速度は、推定速度に相当する。
【0033】
例えば、
図6Bに示す例において、推定サイクル平均速度決定部112dは、移動平均加速度(a
m)が2.8m/s
2での場合、推定サイクル平均速度(上線付きV
e)を2.8m/sとして決定する。すなわち、
図6Bに示す例においては、推定速度は、2.8m/sとして推定される。
【0034】
次に平均速度算出部113について説明する。平均速度算出部113は、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電動歯ブラシ1の動きに対応する平均速度を算出する。
【0035】
平均速度算出部113は、
図7に示すように、第2単位変換処理部113aと、第1ローパス処理部113bと、ハイパス処理部113cと、速度算出部113dとを、機能として備える。また、平均速度算出部113は、第2ローパス処理部113eと、第2移動平均処理部113fと、平均速度確定処理部113gとを、さらに機能として備える。
【0036】
第2単位変換処理部113aは、センサ部11で取得した加速度をSI単位系(国際単位系)に変換する。第2単位変換処理部113aで実施される単位変換処理は、上述の第1単位変換処理部112aと同様、上記式(1)に基づいて実施される。
【0037】
第1ローパス処理部113bは、第2単位変換処理部113aでSI単位に変換された加速度(a
s)に対し、フィルタ処理としてローパス処理(ローパスフィルタ処理)を行う。第1ローパス処理部113bにおいては、以下の式(3)に示すように、一般的なローパス処理が実施される。ここでk
1は、所定の係数であり、速度算出装置100が適用される電子機器の特徴に応じて設定可能であるとする。a
lは、第1ローパス処理部113bにおいて実施された加速度を示す。第1ローパス処理部113bは、フィルタ処理としてローパス処理を実施し、加速度の低周波成分を通過させる、すなわち高周波成分を除去することにより、電動歯ブラシ1の駆動や反力といった高周波ノイズを除去することが可能となる。
【数3】
【0038】
図8Aは、第1ローパス処理部113bでローパス処理を行った結果の一例を示すグラフである。
【0039】
ハイパス処理部113cは、第1ローパス処理部113bでローパス処理を行った加速度(a
l)に対し、フィルタ処理としてハイパス処理(ハイパスフィルタ処理)を行う。ハイパス処理部113cにおいては、以下の式(4)に示すように、一般的なハイパス処理が実施される。ここでk
2は、所定の係数であり、速度算出装置100が適用される電子機器の特徴に応じて設定可能であるとする。a
hは、ハイパス処理部113cにおいて実施された加速度を示す。ハイパス処理部113cは、フィルタ処理としてハイパス処理を実施し、加速度の高周波成分を通過させる、すなわち低周波成分を除去することにより、電動歯ブラシ1に対してかかる重力の成分を除去することが可能となる。
【数4】
【0040】
図8Bは、ハイパス処理部113cでハイパス処理を行った結果の一例を示すグラフである。
【0041】
速度算出部113dは、ハイパス処理部113cでハイパス処理を行った結果に対して、積分処理による速度算出を行う。速度算出部113dにおいては、以下の式(5)に示すように、積分処理が実施される。ここで、式(5)におけるsは、加速度センサのサンプリングタイムである。例えば、1区間が1.2秒、120サンプルの場合、サンプリングタイムのsは、10msとなる。V
iは、速度算出部113dで算出された速度を示す。
【数5】
【0042】
図8Cは、速度算出部113dで算出された速度(V
i)の一例を示すグラフである。
【0043】
第2ローパス処理部113eは、速度算出部113dで算出された速度(V
i)に対し、フィルタ処理としてローパス処理(ローパスフィルタ処理)を行う。第2ローパス処理部113eにおいては、以下の式(6)に示すように、一般的なローパス処理が実施される。ここでk
3は、所定の係数であり、速度算出装置100が適用される電子機器の特徴に応じて設定可能であるとする。V
lは、第2ローパス処理部113eにおいて実施された速度を示す。第2ローパス処理部113eにおいては、後述の平均速度確定処理部113gに対するデータの前処理として実施される。
【数6】
【0044】
図8Dは、第2ローパス処理部113eでローパス処理を行った結果の一例を示すグラフである。
図8Dにおいて、第2ローパス処理部113eによりローパス処理された速度(V
l)は、点線で示される波形となる。なお、第2ローパス処理部113eにおけるローパス処理の結果を分かりやすく示すため、
図8Dに示される速度(V
i)の波形は、
図8Cに示される速度(V
i)とは異なるケースにおける速度(V
i)の波形を例として示している。
【0045】
第2移動平均処理部113fは、第2ローパス処理部113eでローパス処理を行った速度(V
l)に対し、予測される1サイクルの区間で移動平均処理を行う。具体的には、以下の式(7)に示される処理が行われる。
【数7】
【0046】
図8Eは、第2移動平均処理部113fで移動平均処理が実施された速度の一例を示す図である。
図8Eにおいて、移動平均処理が実施された速度(V
m)は、一点鎖線で示されている。
【0047】
平均速度確定処理部113gは、第2移動平均処理部113fで算出された速度の移動平均(V
m)に対し、最大速度と最小速度との間の平均速度を算出する。すなわち、平均速度確定処理部113gは、前サイクルの最大速度と最小速度との間の平均速度を算出する。具体的には、以下の式(8)により平均速度が算出される。上線付きV[n]は、n番目のサンプル時のサイクルにおける平均の速さを示す。n
maxは、速度(移動平均)の極値(上限又は下限)に対し、直前の最大速度のサンプルのn番目を示す。n
minは、速度(移動平均)の極値(上限又は下限)に対し、直前の最小速度のサンプルのn番目を示す。
【数8】
【0048】
図8Fは、平均速度確定処理部113gにおける平均速度の算出処理について説明するための図である。
図8Fの(1)のタイミングにおいて、平均速度確定処理部113gは、速度の最大値であるサンプル点n
maxと、最小値であるサンプル点n
minの平均速度Aを計測する。この平均速度Aは、
図8Fの(2)に示す移動平均の下限において前サイクルの速度と認定される。
【0049】
同様に、
図8Fの(3)のタイミングにおいて、平均速度確定処理部113gは、速度の最小値であるサンプル点n
minと、最大値であるサンプル点n
maxの平均速度Bを計測する。この平均速度Bは、
図8Fの(4)に示す移動平均の上限において前サイクルの速度と認定される。
【0050】
このように、第2移動平均処理部113fにおいて、移動平均処理を行うことで、移動平均処理された結果が実際の速度に対応する時間よりも遅れて現れる。そのため、所定の区間における平均速度と、移動平均処理を行った速度との対応付けが容易となり、平均速度確定処理部113gは、平均速度の算出においてより精度を高めることが可能となる。
【0051】
関係情報算出部114は、過去のサイクルの推定サイクル平均速度(上線付きVe)である推定速度と、平均速度確定処理部113gで算出した平均速度(上線付きV)とに基づいて速度を確定するための関係式を算出する。すなわち、関係情報算出部114は、推定速度(上線付きVe)と、平均速度(上線付きV)との対応関係を示す関係情報を算出する。関係情報算出部114においては、最小二乗法により、過去のサイクルの推定サイクル平均速度(推定速度、上線付きVe)と、平均速度確定処理部113gで算出したサイクル平均速度(上線付きV)との関係式(線形近似)を算出する。これにより、速度算出装置100は、推定速度と平均速度の対応関係をより正確に示す関係式(関係情報)を算出することが可能となる。本実施形態において、関係式は、関係情報に相当する。
【0052】
関係情報算出部114で算出される関係式は式(9)により定められる。ここで、α及びβは関係式における係数である。
【数9】
【0053】
上記式(9)におけるα及びβは、以下の式(10)及び式(11)により定まる。
【数10】
【数11】
【0054】
速度確定部115は、関係情報算出部114で算出されたα、β及び関係式に基づいて、サイクル平均速度を確定する。具体的には、速度確定部115は、関係情報である関係式と、速度推定部112で算出された現在の推定速度と、に基づいて、現在の電動歯ブラシ1の動きに対応する速度を確定する。すなわち、速度推定部112で推定された現在の推定サイクル平均速度(上線付きV
e[n
now])を上記式(9)に当てはめることにより、より正確な速度(上線付きV[n
now])を確定することができる。
【数12】
【0055】
出力部116は、速度確定部115で確定した速度(上線付きV[nnow])に従って、所定の判定結果を出力する。ここで所定の判定結果は、確定した速度(上線付きV[nnow])が電動歯ブラシ1の使用において問題が無いか否かを判定した結果であってもよい。例えば、出力部116は、所定のアプリケーション(図示なし)によって判定結果を出力する構成としてもよい。
【0056】
(速度算出装置100の処理フロー)
次に、速度算出装置100における速度算出処理(速度算出方法)について、
図9~
図11のフローチャートに基づいて説明する。
図9~
図11のフローチャートに示す速度算出装置100の一連の動作は、作動スイッチ10のオンにより、電動歯ブラシ1が起動されると開始され、作動スイッチ10のオフにより処理を終了する。また、
図9~
図11に示すフローチャートは、電源スイッチ(図示なし)のオフや処理終了の割り込みによっても処理は終了する。また、以下のフローチャートの説明において、上述の速度算出装置100の説明で記載した内容と同じ内容については、省略又は簡略化して説明する。
【0057】
ステップS901において、制御部110は、作動スイッチ10がオンであるか否かを判定する。ステップS901において、制御部110は、作動スイッチ10がオンであると判定した場合(ステップS901:YES)には、処理はステップS902に進む。一方で、ステップS901において、制御部110は、作動スイッチ10がオンでないと判定した場合(ステップS901:NO)には、処理は、ステップS901に戻る。すなわち、制御部110は、作動スイッチ10がオンになるまで、ステップS901の処理を繰り返し実施する。
【0058】
ステップS902において、センサ情報取得部111は、センサ部11で取得した電動歯ブラシ1のセンサ情報を加速度情報として取得する。本実施形態において、センサ情報取得部111が取得する加速度センサのセンサ情報は、所定の方向に対する加速度情報である。次に処理はステップS903に進む。
【0059】
ステップS903において、速度推定部112は、センサ情報取得部111で所得した電動歯ブラシ1の加速度情報に基づいて、電動歯ブラシ1の速度を推定する。すなわち、速度推定部112は、センサ情報に相当する加速度情報に基づいて、電動歯ブラシ1の動きに対して推定される推定速度を算出する。具体的には、
図10のフローチャートに示される処理によって、速度推定部112は、速度を推定する。
図10に示すフローチャートの処理の詳細については後述する。次に処理はステップS904に進む。
【0060】
ステップS904において、平均速度算出部113は、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電動歯ブラシ1の動きに対応する平均速度を算出する。具体的には、
図11のフローチャートに示される処理によって、平均速度算出部113は、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電動歯ブラシ1の動きに対応する平均速度を算出する。
図11に示すフローチャートの処理の詳細については後述する。次に処理はステップS905に進む。
【0061】
ステップS905において、関係情報算出部114は、過去のサイクルの推定サイクル平均速度(上線付きVe)である推定速度と、平均速度確定処理部113gで算出した平均速度(上線付きV)とに基づいて速度を確定するための関係式を算出する。すなわち、関係情報算出部114は、推定速度(上線付きVe)と、平均速度(上線付きV)との対応関係を示す関係情報を算出する。関係情報算出部114においては、最小二乗法により、過去のサイクルの推定サイクル平均速度(推定速度、上線付きVe)と、平均速度確定処理部113gで算出したサイクル平均速度(上線付きV)との関係式(線形近似)を算出する。これにより、速度算出装置100は、推定速度と平均速度の対応関係をより正確に示す関係式(関係情報)を算出することが可能となる。本実施形態において、関係式は、関係情報に相当する。次に処理はステップS906に進む。
【0062】
ステップS906において、速度確定部115は、関係情報算出部114で算出されたα、β及び関係式に基づいて、サイクル平均速度を確定する。具体的には、速度確定部115は、関係情報である関係式と、速度推定部112で算出された現在の推定速度と、に基づいて、現在の電動歯ブラシ1の動きに対応する速度を確定する。すなわち、速度推定部112で推定された現在の推定サイクル平均速度(上線付きVe[nnow])を上記式(9)に当てはめることにより、より正確な速度(上線付きV[nnow])を確定することができる。次に処理はステップS907に進む。
【0063】
ステップS907において、制御部110は、作動スイッチ10がオフであるか否かを判定する。ステップS907において、制御部110は、作動スイッチ10がオフであると判定した場合(ステップS907:YES)には、処理は終了する。一方で、ステップS907において、制御部110は、作動スイッチ10がオフでないと判定した場合(ステップS907:NO)には、処理は、ステップS902に戻り、ステップS902からの処理を繰り返し実施する。
【0064】
(速度推定処理)
次に、
図9のステップS903における速度推定処理について、
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
ステップS1001において、第1単位変換処理部112aは、センサ情報取得部111で取得した加速度の値をSI単位系(国際単位系)に変換する。第1単位変換処理部112aにおける単位系の変換は、上述の式(1)に基づいて実施される。次に処理はステップS1002に進む。
【0066】
ステップS1002において、絶対値化処理部112bは、第1単位変換処理部112aにおいて、SI単位系に変換された加速度(a)の絶対値化を行う。絶対値化処理部112bにおける絶対値化の処理は、第1移動平均処理部112cで1サイクル当りの平均加速度の大きさを求める為に実施される。次に処理はステップS1003に進む。
【0067】
ステップS1003において、第1移動平均処理部112cは、絶対値化処理部112bで絶対値化を行った加速度(aa)に対し、予測される1サイクルの区間で移動平均を算出する。すなわち、第1移動平均処理部112cは、所定の区間を1サイクルにして、サイクル当りの平均加速度を求める。第1移動平均処理部112cにおいては、上述の式(2)で示される処理が実施される。次に処理はステップS1004に進む。
【0068】
ステップS1004において、推定サイクル平均速度決定部112dは、第1移動平均処理部112cで算出した加速度の移動平均を、推定サイクル平均速度(推定速度、上線付きV
e)として決定する。本実施形態においては、推定サイクル平均速度決定部112dは、移動平均処理された加速度(a
m)を推定サイクル平均速度(推定速度)として決定する。これは、例えば、電動歯ブラシ1を所定の方向に往復運動させる場合、加速度が三角関数に近似され、「加速度≒速度」となる特徴に基づくものである。その後処理は、
図9に示すフローチャートのステップS903に戻る。
【0069】
(平均速度算出処理)
次に、
図9のステップS904における平均速度算出処理について、
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0070】
ステップS1101において、第2単位変換処理部113aは、センサ部11で取得した加速度をSI単位系(国際単位系)に変換する。第2単位変換処理部113aで実施される単位変換処理は、上述の第1単位変換処理部112aと同様、上記式(1)に基づいて実施される。次に処理はステップS1102に進む。
【0071】
ステップS1102において、第1ローパス処理部113bは、第2単位変換処理部113aでSI単位に変換された加速度(as)に対しローパス処理を行う。第1ローパス処理部113bにおいては、上述の式(3)に示すように、一般的なローパス処理が実施される。ステップS1102において、第1ローパス処理部113bは、加速度の低周波成分を通過させる、すなわち高周波成分を除去することにより、電動歯ブラシ1の駆動や反力等の高周波ノイズを除去することが可能となる。次に処理はステップS1103に進む。
【0072】
ステップS1103において、ハイパス処理部113cは、第1ローパス処理部113bでローパス処理を行った加速度(al)に対し、ハイパス処理を行う。ハイパス処理部113cにおいては、上述の式(4)に示すように、一般的なハイパス処理が実施される。ステップS1103において、ハイパス処理部113cは、加速度の高周波成分を通過させる、すなわち低周波成分を除去することにより、電動歯ブラシ1に対してかかる重力の成分を除去することが可能となる。次に処理はステップS1104に進む。
【0073】
ステップS1104において、速度算出部113dは、ハイパス処理部113cでハイパス処理を行った結果に対して、積分処理による速度算出を行う。速度算出部113dにおいては、上述の式(5)に示すように、積分処理が実施される。次に処理はステップS1105に進む。
【0074】
ステップS1105において、第2ローパス処理部113eは、速度算出部113dで算出された速度(Vi)に対し、ローパス処理を行う。第2ローパス処理部113eにおいては、上述の式(6)に示すように、一般的なローパス処理が実施される。次に処理はステップS1106に進む。
【0075】
ステップS1106において、第2移動平均処理部113fは、第2ローパス処理部113eでローパス処理を行った速度(Vl)に対し、予測される1サイクルの区間で移動平均処理を行う。具体的には、上述の式(7)に示される処理が行われる。次に処理はステップS1107に進む。
【0076】
ステップS1107において、平均速度確定処理部113gは、第2移動平均処理部113fで算出された速度の移動平均(V
m)に対し、最大速度、最小速度間の平均速度を算出する。具体的には、上述の式(8)により平均速度が算出される。その後処理は、
図9に示すフローチャートのステップS904に戻る。
【0077】
上述の通り、速度算出装置100は、センサ情報取得部111と、速度推定部112と、平均速度算出部113と、関係情報算出部114と、速度確定部115とを備える。センサ情報取得部111は、電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得する。速度推定部112は、センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する。平均速度算出部113は、センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出する。関係情報算出部114は、推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する。速度確定部115は、関係情報と、速度推定部112で算出された現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する。
【0078】
すなわち、速度算出装置100は、電子機器の動きに対して推定される推定速度と、電子機器の動きに対応する平均速度との対応関係を示す関係情報を用いて、電子機器の動きに対応する速度を算出する。これにより、速度算出装置100は、単に電子機器の動きに対して推定される推定速度を電子機器の動きに対応する速度として算出するよりも、より精度よく電子機器に対応する速度を算出することが可能となる。
【0079】
また、速度算出装置100の平均速度算出部113のフィルタ処理は、高周波成分を除去するローパスフィルタ処理を含んでもよい。これにより、速度算出装置100は、電子機器の動きに対応する速度の算出において、電子機器の駆動や反力等の高周波ノイズを除去することが可能となる。
【0080】
また、速度算出装置100の平均速度算出部113のフィルタ処理は、低周波成分を除去するハイパスフィルタ処理をさらに含んでもよい。これにより、速度算出装置100は、電子機器の動きに対応する速度の算出において、低周波成分を除去することにより、電子機器に対してかかる重力の成分を除去することが可能となる。
【0081】
また、速度算出装置100の関係情報算出部114は、最小二乗法により、電子機器の動きに対して推定される推定速度と、電子機器の動きに対応する平均速度との対応関係を示す関係情報を算出してもよい。これにより、速度算出装置100は、推定速度と平均速度の対応関係をより正確に示す関係情報を算出することが可能となる。
【0082】
また、速度算出装置100の平均速度算出部113は、さらに移動平均処理を行うことにより、平均速度を算出してもよい。これにより、移動平均処理された結果が、実際の速度に対応する時間よりも遅れて現れるため、所定の区間における平均速度と、移動平均処理を行った速度との対応付けが容易となる。そのため、速度算出装置100は、平均速度の算出においてより精度を高めることが可能となる。
【0083】
(他の実施形態)
以上、本実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。また、さまざまな実施形態の一部又は全部を組み合わせて新たな実施形態とすることも可能である。すなわち、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲、又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0084】
上述の実施形態においては、電子機器として電動歯ブラシ1である場合の実施形態を示した。本実施形態に係る速度算出装置100は、電子機器を使用するユーザの手の動きを判定するための装置として、例えば、アイロンや電動シェーバー等に適用してもよい。この場合、上述の電動歯ブラシ1の場合においては、1.2秒としていた1サイクルの間隔を電子機器に合わせて、1.2秒より短い時間又は長い時間に設定してもよい。また、速度算出装置100の適用においては、ユーザが手で把持する電子機器に限定するものではなく、例えば、速度算出装置100が適用可能な電子機器は、ユーザの体に装着するものであってもよい。これにより、所定の目的に合わせてユーザの体の動きが適切か否かを判定することが可能な速度算出装置100を実現することが可能となる。
【0085】
また、上述した速度算出方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム(速度算出プログラム)及びそのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、本実施形態の範囲に含まれる。ここで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の種類は任意である。また、上述のコンピュータプログラムは、上述の記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0086】
以下に、本実施形態に係る速度算出装置100、速度算出方法、及び速度算出プログラムの特徴について記載する。
【0087】
(1)電子機器に設けられ、電子機器の動きに対応する速度を算出する速度算出装置100は、以下の構成を有する。
(i)電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得するセンサ情報取得部111を含む。
(ii)センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する速度推定部112を含む。
(iii)センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出する平均速度算出部113を含む。
(iv)推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する関係情報算出部114を含む。
(v)関係情報と、速度推定部112で算出された現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する速度確定部115を含む。
【0088】
本開示によれば、速度算出装置100は、電子機器の動きに対して推定される推定速度と、電子機器の動きに対応する平均速度との対応関係を示す関係情報を用いて、電子機器の動きに対応する速度を算出する。これにより、速度算出装置100は、単に電子機器の動きに対して推定される推定速度を電子機器の動きに対応する速度として算出するよりも、より精度よく電子機器に対応する速度を算出することが可能となる。
【0089】
(2)フィルタ処理は、高周波成分を除去するローパスフィルタ処理を含んでもよい。
【0090】
本開示によれば、速度算出装置100は、電子機器の動きに対応する速度の算出において、電子機器の駆動や反力等の高周波ノイズを除去することが可能となる。
【0091】
(3)フィルタ処理は、低周波成分を除去するハイパスフィルタ処理をさらに含んでもよい。
【0092】
本開示によれば、速度算出装置100は、電子機器の動きに対応する速度の算出において、低周波成分を除去することにより、電子機器に対してかかる重力の成分を除去することが可能となる。
【0093】
(4)関係情報算出部114は、最小二乗法により、関係情報を算出してもよい。
【0094】
本開示によれば、速度算出装置100は、推定速度と平均速度の対応関係をより正確に示す関係情報を算出することが可能となる。
【0095】
(5)平均速度算出部113は、さらに移動平均処理を行うことにより、平均速度を算出してもよい。
【0096】
本開示によれば、速度算出装置100は、移動平均処理された結果が、実際の速度に対応する時間よりも遅れて現れるため、所定の区間における平均速度と、移動平均処理を行った速度との対応付けが容易となる。そのため、速度算出装置100は、平均速度の算出においてより精度を高めることが可能となる。
【0097】
(6)コンピュータによって実行される速度算出方法は、以下の処理を有する。
(i)電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得する処理を含む。
(ii)センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する処理を含む。
(iii)センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出する処理を含む。
(iv)推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する処理を含む。
(v)関係情報と、現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する処理を含む。
【0098】
本開示によれば、速度算出方法は、電子機器の動きに対して推定される推定速度と、電子機器の動きに対応する平均速度との対応関係を示す関係情報を用いて、電子機器の動きに対応する速度を算出する。これにより、速度算出方法は、単に電子機器の動きに対して推定される推定速度を電子機器の動きに対応する速度として算出するよりも、より精度よく電子機器に対応する速度を算出することが可能となる。
【0099】
(7)コンピュータに実行させるための速度算出プログラムは、以下の処理を有する。
(i)電子機器にかかる加速度に関するセンサ情報を、加速度センサから取得する処理を含む。
(ii)センサ情報に基づいて、電子機器の動きに対して推定される推定速度を算出する処理を含む。
(iii)センサ情報に対してフィルタ処理及び積分処理を行い、電子機器の動きに対応する平均速度を算出する処理を含む。
(iv)推定速度と、平均速度との対応関係を示す関係情報を算出する処理を含む。
(v)関係情報と、現在の推定速度と、に基づいて、現在の電子機器の動きに対応する速度を確定する処理を含む。
【0100】
本開示によれば、速度算出プログラムは、電子機器の動きに対して推定される推定速度と、電子機器の動きに対応する平均速度との対応関係を示す関係情報を用いて、電子機器の動きに対応する速度を算出する。これにより、速度算出プログラムは、単に電子機器の動きに対して推定される推定速度を電子機器の動きに対応する速度として算出するよりも、より精度よく電子機器に対応する速度を算出することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示は、ユーザが保持して所定の方向に移動させながら使用する電子機器に適用可能である。具体的には、電動歯ブラシ、電動シェーバー、アイロンなどに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 電動歯ブラシ
10 作動スイッチ
11 センサ部
100 速度算出装置
111 センサ情報取得部
112 速度推定部
113 平均速度算出部
114 関係情報算出部
115 速度確定部
116 出力部
121 センサ情報DB