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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116907
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】バフ研磨盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 29/00 20060101AFI20230816BHJP
   B24B 23/00 20060101ALI20230816BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B24B29/00 N
B24B23/00 A
B24B45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019282
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】391059702
【氏名又は名称】ケヰテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸嗣
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA15
3C034BB51
3C158AA06
3C158AA14
3C158CB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】応力伝達部材を改良して、研磨力をさらに向上させたバフ研磨盤を提供する。
【解決手段】回転ポリッシャのバフ研磨盤10は、被研磨表面に接触する表面部材4と、該表面部材4と駆動軸に固定された取付け円盤との間に取付けられる円板状の応力伝達部材とを有し、該応力伝達部材は、外周端より3mm以上離れた内側に複数の貫通孔が設けられ、該複数の貫通孔は、前記表面部材4の取付け面である前面と平行な面での断面の総面積が前面の面積の20%~70%の割合を占め、前記応力伝達部材の回転中心Oを中心とする回転対称を形成しないように配置され、前記応力伝達部材の回転中心と重心Gとの位置がずれており、該回転中心Oから該重心までの距離が前記前面の半径の2%~9%の長さとなるように、形状と配置が設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨表面に接触する表面部材と、該表面部材と駆動軸に固定された取付け円盤との間に取付けられる円板状の応力伝達部材とを有し、該応力伝達部材は、外周端より3mm以上離れた内側に複数の貫通孔が設けられ、該複数の貫通孔は、前記表面部材の取付け面である前面と平行な面での断面の総面積が前面の面積の20%~70%の割合を占め、前記応力伝達部材の回転中心を中心とする回転対称を形成しないように配置され、前記応力伝達部材の回転中心と重心との位置がずれており、該回転中心から該重心までの距離が前記前面の半径の2%~9%の長さとなるように、形状と配置が設定されていることを特徴とする回転ポリッシャのバフ研磨盤。
【請求項2】
前記応力伝達部材は多孔質柔軟素材からなることを特徴とする請求項1に記載の回転ポリッシャのバフ研磨盤。
【請求項3】
前記応力伝達部材は、A硬度50より柔らく、F硬度70より硬い範囲の素材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転ポリッシャのバフ研磨盤。
【請求項4】
前記貫通孔の表面部材の取付け面である前面と平行な面での断面形状は円形、長円形、卵形、液滴形、多角形であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の回転ポリッシャのバフ研磨盤。
【請求項5】
前記応力伝達部材の背面にバッキング部材が取付けられ、該バッキング部材を介して前記取付け円盤に取付けられることを特徴とする回転ポリッシャのバフ研磨盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動又はエア駆動モータ出力による回転ポリッシャのバフ研磨盤に関する。
【0002】
回転ポリッシャは、バフ研磨部を往復・振動運動などの回転以外の運動をさせて研磨するポリッシャと異なり、金属表面や塗装表面などの各種表面の最終仕上げ研磨として被研磨面に表面光沢を与えるだけでなく、被研磨面のペーパー目のなどの傷を消したり、肌を削ったりする、いわば重研削と、光沢付与の研磨とを行なうためのポリシャである。そして、このようなバフ研磨を行なうために、バフ研磨盤には、その前面に取付けられる表面部材として、羊毛からなる毛バフ、帆布・デニム地などの布バフのような繊維素材、又はスポンジ素材から構成される各種の表面部材が用いられ、研磨作業の各段階に応じて素材を選択してバフ研磨が行われている。これは、重研削に優れた研磨力の大きい表面部材は、研磨力が大きくなると、研磨後に残すバフ目が深く入り、残す傷が大きくなるため、研磨作業の進捗に応じて、研磨力は小さくなるが、残すバフ目は浅く入る表面部材に順次取り換えてバフ研磨を進め、残すバフ目を目立たなくして被研磨表面に光沢を付与することが行われる。
【0003】
しかし、研磨作業の各段階で表面部材を取り換えるのは作業効率が悪く、すべての段階で重研削と光沢付与の研磨を行なうことのできる研磨力に優れたバフ研磨盤が望まれている。このようなバフ研磨盤として、一種類の表面部材(バフ本体)で強い研削力から弱い研削力まで、極めて幅の広い切削・研磨力を発揮できるバフ研磨盤が、特許文献1に提案されている。この特許文献1のバフ研磨盤は、前面に取付けた表面部材と駆動軸に固定された取付け円盤との間に応力伝達部材を取り付けたものであり、この応力伝達部材は円形や長円形等の貫通孔が設けられたスポンジ材からなる弾性体からなっている。このバフ研磨盤では、研磨面である表面部材に加えられる応力は、貫通孔が設けられた部分を除いた部分の前面に応力が集中され、より大きな力が加えられるため、本来研削力の小さい表面部材でも、強力な研削力が得られるものである。
【0004】
上記の貫通孔が設けられた応力伝達部材は、特許文献1の図5~8に示されるように、バフ研磨盤の回転バランスを保ち、スムーズな回転とするために、応力伝達部材の回転中心と重心を一致させるべく、各貫通孔の形状と配置は、回転中心を対称点とする回転対称となるように設けられている。特許文献1の図6に示されている貫通孔の形状と配置を本願図面の図6に示した。この図6に示されるように応力伝達部材40に設けられた貫通孔41及び42は、それぞれ点Oを中心とした回転対称を形成しており、6回対称を形成している。このように、各貫通孔が回転対称を形成しておれば、応力伝達部材では回転中心と重心の位置とが一致するために、回転体としての不釣り合いが発生することもなく、研磨作業中のスムーズな回転が得られるため、各貫通孔が回転対称を形成するように設けられることは、一般に行われている方法である。
【0005】
しかしながら、各貫通孔が回転対称を形成するように設けられた場合には、絶えず同一の周期で各貫通孔が重なる同じ位置となる。例えば、上記図6に示した例では60°回転するごとに、すべての貫通孔が重なる同じ位置となり、n回対称の場合であれば、角度360°/n回転する毎に、各貫通孔はそれぞれ重なる同じ位置となる。そのため、この応力伝達部材おいては、最も応力が集中して表面部材に加わる場所である貫通孔の内側のエッジ部分が、同一の周期で同じ場所に当たることとなり、場所により研磨力に偏りを生じ、被研磨面全体では均一の研磨力を受けないため、研磨力は良好とは言えず、さらなる研磨力の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3904619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前面に取付けた表面部材と駆動軸に固定された取付け円盤との間に、貫通孔を設けられた応力伝達部材が取付けられた回転ポリッシャのバフ研磨盤において、応力伝達部材を改良して、研磨力をさらに向上させたバフ研磨盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回転ポリッシャのバフ研磨盤は、被研磨表面に接触する表面部材と、該表面部材と駆動軸に固定された取付け円盤との間に取付けられる円板状の応力伝達部材とを有し、該応力伝達部材は、外周端より3mm以上離れた内側に複数の貫通孔が設けられ、該複数の貫通孔は、前記表面部材の取付け面である前面と平行な面での断面の総面積が前面の面積の20%~70%の割合を占め、前記応力伝達部材の回転中心を中心とする回転対称を形成しないように配置され、前記応力伝達部材の回転中心と重心との位置がずれており、該回転中心から該重心までの距離が前記前面の半径の2%~9%の長さとなるように、形状と配置が設定されていることを特徴とする。
【0009】
そして、上記の円板状の応力伝達部材は各種のゴム、合成樹脂からなる柔軟素材を用いることができ、特に、これらの柔軟素材は発泡させた多孔質柔軟素材が好ましく、各種のゴム、ポリウレタン樹脂などを発泡させ、見掛け比重0.06~0.4とした多孔質柔軟素材を好ましく用いることができる。寸法としては厚さ3~15mm、直径40~200mmであることが好ましい。応力伝達部材に用いられる柔軟素材の硬さの好ましい範囲は、JIS K 6253-3:2012で規定されるデュロメータ(ゴム硬度計)ないしはこの規定に準じて改良されたデュロメータ(ゴム硬度計)で測定した硬度で示される。この硬度はこのデュロメータのタイプや型式に応じて、測定した硬度をタイプAデュロメータで測定した数値はA硬度、タイプEデュロメータで測定した数値はE硬度などと示される。さらに、前記JISで規定されるEタイプに準じて、より柔らかいスポンジ素材でも適正に測定できるように改良されたタイプFデュロメータ(高分子計器株式会社製、商品名:アスカーゴム硬度計F型)にて測定した数値をF硬度と示される。デュロメータにて測定する硬度の数値は各タイプとも0~100で示され、硬度の数値が大きいほど硬い素材であり、又D、A、E、F硬度の順により柔らかい素材の硬度となる。測定試料の硬度により、いずれかのタイプが選択され、タイプAで硬度が、90を超える場合はタイプDを選択し、硬度が20未満ではタイプEを選択するように前記JISで規定されており、本発明でもそれに準じて、F硬度が90を超える場合にはタイプAないしはタイプEを選択しA硬度ないしはE硬度の測定を行い、本発明に好ましく適用できる硬度の素材を選択することができる。そして、A硬度50を超す硬度の素材では硬過ぎるため、表面部材へ伝達する応力のばらつきが多くなり、バフ研磨面の表面光沢の均一性が劣り、又、F硬度70に達しない硬度の素材では柔らか過ぎるため、表面部材へ伝達する応力が小さくなり、バフ研磨の作業時間が長くなるため、A硬度50より柔らく、F硬度70より硬い範囲の素材を選択して用いることが好ましい。特にE硬度90より柔らく、F硬度70より硬い範囲の硬度であることがより好ましい。また、応力伝達部材に設けられる複数の貫通孔は、表面部材の取付け面である前面と平行な面での断面形状は円形、長円形、卵形、液滴形、多角形などを用いることができるが、多角形の場合は各頂点が円弧となっていることが好ましく、設けられた複数の貫通孔の断面形状はこれらの一種類であってもよく、複数の形状を組み合わせることできるが、上記のように応力伝達部材の回転中心と重心の位置が一致しないように形状と配置を設定して設ける必要がある。
【0010】
また、上記の表面部材を前面に取付けられた応力伝達部材には、背面にバッキング部材が設けられ、このバッキング部材を介して取付け円盤に取付けられる形態のバフ研磨盤でもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバフ研磨盤の応力伝達部材は、複数の貫通孔が回転平面で回転中心を中心とする回転対称を形成していないために、バフ研磨盤の回転時に各貫通孔が周期的に重なることがなく、従来の応力伝達部材のように、最も応力が集中して表面部材に加わる場所である貫通孔の内側のエッジ部分が、同一の周期で同じ場所に当たることもなく、場所による研磨力の偏りが減少する。さらに、回転平面における回転対称を形成せず、回転中心と重心の位置がずれて一致しないため、バフ研磨盤にアンバランスを生じ、回転軸に振動を生じるために、バフ研磨盤の回転時に各貫通孔の重なりをさらに防ぐことができ、研削力・研磨力を向上させることができる。
【0012】
しかし、バフ研磨盤のアンバランスが大きすぎると、回転軸の振動が大きくなり、騒音が大きくなるだけでなく、バフ研磨盤が被研磨面上で弾むため被研磨面との接触時間の減少を来して、研磨力が低下する。さらには、回転ポリッシャ―の故障の原因ともなる。そのため、回転中心と重心のずれの距離を応力伝達部材の前面の半径の2~9%とすることで、適度な振動の範囲に収め、このような問題点の発生を防ぐことができる。また、応力伝達部材を構成する素材を多孔質とすることで、比重が小さくなり、回転軸に振動を生じさせる力を小さくすることができ、振動を適度の範囲に収め、これらの問題点の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】回転対称を形成していない応力伝達部材を取り付けたバフ研磨盤の平面図及び側面図。
図2】バフ研磨盤を取り付けた回転ポリッシャの外観斜視図。
図3】応力伝達部材の背面にバッキング部材を取付けたバフ研磨盤の側面図。
図4】断面が三角形状の貫通孔が設けられ、回転対称を形成していない応力伝達部材の平面図。
図5】回転対称を形成している従来の応力伝達部材を取り付けたバフ研磨盤の平面図及び側面図。
図6】回転対称を形成している従来の応力伝達部材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のバフ研磨盤の実施するための形態につき図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0015】
図1は、回転対称を形成していないように貫通孔が設けられた応力伝達部材1を、取り付けたバフ研磨盤10の平面図及び側面図である。バフ研磨盤10は、円板状の応力伝達部材1の前面に、被研磨面と接触する表面部材4が取り付けられ、背面には装着部材5が取り付けられており、この装着部材5により、図2に示されるように、回転ポリッシャ50の取付け円盤53に取付けることができる。取付け円盤53は回転ポリッシャ50の本体50の内部に収納されている駆動モータに連結する駆動軸52に固定されおり、バフ研磨作業において、ハンドル54、55にて取付け円盤53を操作して、バフ研磨盤10に力を加え、被研磨表面に押し当てて、応力伝達部材1を介して、その前面に取付けた表面部材4に応力を伝達し、研磨作業を行うことができる。
【0016】
応力伝達部材1は半径rの円板状であり、外周端より3mm以上離れた内側に複数の貫通孔2A~2E、3A~3Eなどが、表面部材4の取付け面である前面との直交方向に貫通して設けられており、貫通孔の設けられていない外周端部は3mm以上の幅で連続してリブを形成している。この外周端部の場所に貫通孔が設けられて、貫通孔の設けられていない外周端部の幅が3mm以上確保されないと、研磨作業中に外周端部が切断することがあり、バフ研磨盤10の破損となる。また、各貫通孔の間の部分の幅も少なくとも3mm確保して設けられることが好ましい。そして、複数の貫通孔の断面の総面積は応力伝達部材1の前面の面積の20%~70%の割合を占めるように設けられ、貫通孔の設けられていない部分にて、表面部材4に回転盤53からの応力を集中して伝達することで研磨が実施される。貫通孔の断面の総面積の占める割合が20%未満では、表面部材4に伝達される応力が十分に集中されず、70%を超えると、貫通孔の存在しない部分に応力が集中し過ぎて、表面部材4と被研磨面との摩擦抵抗が過大となりやすい。
【0017】
被研磨面に押し当てられて研磨を担う表面部材4に伝達される応力は、応力伝達部材1の貫通孔の設けられていない部分にて伝達されるため、回転盤53からの応力は集中されて表面部材4に伝達され、表面部材4による研磨力が強化される。特に、貫通孔内面のエッジ部分では応力が集中して表面部材4に伝達され、研磨作用がより発揮される部分である。
【0018】
図1では、応力伝達部材1には、前記した配置にて、貫通孔2A、2b、2C、2D、2Eの液滴形の貫通孔と、貫通孔3A、3B、3C、3D、3Eの円形の貫通孔がそれぞれ5個ずつ設けられているが、5個の液滴形の貫通孔の内、貫通孔2bの配置が他の4個貫通孔2A、2C、2D、2Eの配置と異なっている。そのため、これらの貫通孔は応力伝達部材1の回転中心Oを中心とする回転対称を形成しておらず、応力伝達部材1では、回転中心Oと重心Gとは一致せず、距離eの長さで離れている。距離eの長さは応力伝達部材1の半径rの2%~9%の長さであるように、各貫通孔の形状と配置が設定されることが好ましい。
【0019】
このように、バフ研磨盤10に取付けられた応力伝達部材1は、設けられた複数の貫通孔が回転対称を形成せていないため、バフ研磨盤10の回転時に各貫通孔が周期的に重なることがなく、従来の応力伝達部材のように、最も応力が集中して表面部材に加わる場所である貫通孔の内側のエッジ部分が、同一の周期で同じ場所に当たることもなく、場所による研磨力の偏りが減少する。例えば、貫通孔2Aにおけるエッヂ部分21Aは、回転時に貫通孔2bにけるエッジ部分21bと重なることがない。さらに、回転中心Oと重心Gの位置がずれて一致しないため、バフ研磨盤10にアンバランスを生じ、回転軸に振動を生じるために、バフ研磨盤10の回転時には、各貫通孔の重なりをさらに防ぐことができ、研削力・研磨力を向上させることができる。
【0020】
前記したように、回転中心Oと重心Gとのずれの距離eの長さは、応力伝達部材1の半径rの2%~9%の長さに設定されるが、2%未満ではバフ研磨盤10の回転時における回転軸の振動が少なく、研削力・研磨力の向上が少なく、9%を超えると回転軸の振動が大きく、騒音が大きくなるだけでなく、バフ研磨盤が被研磨面上で弾むため被研磨面との接触時間の減少を来して、研磨力が低下する。さらには、回転ポリッシャの故障の原因ともなる。
【0021】
図3は、応力伝達部材1の背面にバッキング部材6が設けられたバフ研磨盤20の側面図であり、応力伝達部材1の前面には表面部材4が、背面にはバッキング部材6が取り付けられている。バフ研磨盤20は、このバッキング部材6を介して装着部材5により、前記しバフ研磨盤10と同様にして、回転ポリッシャ50の取付け円盤53に取付けることができる。バッキング部材としては、応力伝達部材と同様な素材を用いることができ、用いる素材の硬度は同じであってもよく、異なる硬度を持った素材でもよい。
【0022】
図4は、複数の三角形状の断面形状を有する貫通孔71が、回転対称を形成していないように設けられた応力伝達部材7の平面図であり、これら複数の貫通孔71は大きさや形状が異なる断面形状の貫通孔であるが、いずれの貫通孔においても、各頂点は円弧状となり、角が取られている。このように各頂点を円弧状とすることにより、各頂点において伝達する応力が集中することを防ぐことができる。
【0023】
応力伝達部材7においても、各貫通孔7は、回転中心0と重心G1とは位置が一致しないような形状と配置で設けられており、回転中心とOと重心G1とは距離e1の長さで離れている。距離e1の長さは応力伝達部材7の半径の2%~9%の長さで設けられている。
【0024】
一方、図5には、従来用いられていた応力伝達部材と同様に、貫通孔が回転中心Oを中心とする回転対称を形成するように設けられており、半径rの円板状の応力伝達部材31を取り付けたバフ研磨盤30を示す。バフ研磨盤30はバフ研磨盤10と同様に、その前面に、被研磨面と接触する表面部材4が取り付けられ、背面には装着部材5が取り付けられており、この装着部材5により、バフ研磨盤と同様に、回転ポリッシャ50の取付け円盤53に取付けることができる。
【0025】
この応力伝達部材31に設けられた、それぞれ5個の貫通孔2A、2B、2C、2D、2Eと貫通孔3A、3B、3C、3D、3Eとは、回転中心Oを中心とする回転対称を形成している。即ち、応力伝達部材31は、72°回転させる毎に、貫通孔2Aが2Bに、貫通孔3Aが3Bに、のように、他の貫通孔2B~2E、3B~3Eも同様に、回転前の各貫通孔が隣接する同形状の貫通孔と重なり一致する。さらに、応力伝達部材31では、各貫通孔が回転中心Oを中心とする回転対称を形成しているため、応力伝達部材31の重心Gは、回転中心Oと一致する。そのため、応力伝達部材31を取り付けたバフ研磨盤30においては、最も応力が集中して表面部材に加わる場所である応力伝達部材31に設けた各貫通孔の内側のエッジ部分が、同一の周期で同じ場所に当たることとなり、場所により研磨力に偏りを生じ、被研磨面全体では均一の研磨力を受けないため、研磨力は良好とは言えず、さらに、バフ研磨盤30では、回転中心Oと重心Gとが一致しており、アンバランスを生ずることなく、回転軸の振動もなく、回転時において、各貫通孔の重なりを防ぐことはできない。
【0026】
図6に示した従来の応力伝達部材40を用いたバフ研磨盤においても、応力伝達部材31を用いたバフ研磨盤30と同様である。
【0027】
以上の通り、本発明においては、バフ研磨盤に取り付けられる応力伝達部材に設けられる複数の貫通孔が、応力伝達部材の回転中心を中心とする回転対称を形成していないために、バフ研磨盤の回転に伴い回転する応力伝達部材において、各貫通孔が繰り返し同じ場所とならず、また、応力伝達部材の回転中心と重心とをずらすことにより、研磨時の回転に際して、回転軸の振動を発生させ、各貫通孔が同じ位置となることを防いでいる。
【0028】
また、以上の例においては、応力伝達部材1に設ける複数の貫通孔は、それら形状と配置を変化させて、応力伝達部材1の前面の回転面において、回転中心Oを中心とする回転対称を形成しないようにした例を示したが、応力伝達部材に設ける複数の貫通孔が回転対称を形成するように設けた場合でも、この回転対称の中心とは、異なる位置に応力伝達部材の回転軸に設定して、応力伝達部材の回転中心と、回転対称の中心、すなわち重心とを一致させないようにすることでもよい。すなわち、図4に示すような形状と配置により、貫通孔を設けても、これらの貫通孔の回転対称の中心位置と一致する重心Gとは異なる位置に、応力伝達部材の回転軸を設定することでもよい。
【0029】
表面部材は被研磨面に接触して研磨を行なうバフ本体の役割を果たす部材であり、従来からバフとして用いられてきた部材を用いることができ、各種の繊維素材の織編物からなる布バフ及び、ゴム、樹脂などの発泡体からなるスポンジバフが用いられる。特に布バフが好ましく、羊毛、絹、綿などの繊維素材の織布や編物が用いられる。織布としては帆布・デニムや綾織物、起毛した布地であるパイル織編物などを用いることができる。
【0030】
応力伝達部材は柔軟性を有する、各種のゴム、合成樹脂を用いることができ、例えば、天然ゴム、合成ゴム、例えばブチルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムなどや、ポリウレタン樹脂を用いることができ、特に、これらの素材を発泡させた多孔質柔軟素材が好ましい。これらの素材は弾性を有し、応力伝達素材として好ましい素材である。
【0031】
また、応力伝達部材の背面に取付けられる装着部材は、応力伝達部材を取付け円盤に着脱可能に取付けることのできる面ファスナが好ましく、一方の面をフック面とし、他方の面をループ面とすることにより着脱可能に取り付ける部材である。取付け円盤の前面にフック面の面ファスナを装着した場合には、バフ研磨盤の背面にはループ面の面ファスナやループパイルに起毛した布地を用いればよい。このような装着部材は、応力伝達部材と表面部材との装着にも用いて、被研磨面の状態に応じて、種々の組み合わせができるように着脱可能にすることができる。
【0032】
以下、実施例として、応力伝達部材を各種素材により構成し、貫通孔を設けて回転中心Oと重心Gとの距離eを変化させて作成し、この応力伝達部材の前面に表面部材を取り付け、回転研磨具に取付けて、バフ研磨した結果を示す。
【実施例0033】
(応力伝達部材の作成)
応力伝達部材を構成する素材として、柔軟素材である各種のゴム、合成樹脂による円板状体を準備し、この円板状体に各種の形状の貫通孔を設けて回転中心Oと重心Gとの距離eを変化させて応力伝達部材を作成した。各素材の硬度は、タイプA、E、Fデュロメータ―によりA硬度、E硬度、F硬度を測定した。この硬度測定においては、測定試料が試料台の影響を受けない充分の厚さの試料を用いて測定した。
【0034】
(バフ研磨テスト)
直径80mm、厚さ5mmの円板状体に作成した各種の応力伝達部材に、表面部材としての直径90mmのウールバフ又はスポンジバフを取付け、回転型ポリッシャに取付けてバフ研磨テストを行った。被研磨面は、特殊変性ポリエステル樹脂塗料(ロックペイント株式会社製、黒色、商品名プロタッチ)とクリヤコートとして2液型アクリルウレタンクリヤ塗料(ロックペイント株式会社製)を塗装し、パネル温度60℃の遠赤外線ヒーターにて1時間乾燥させた塗装面を用いた。
【0035】
前記塗装面を各種の番手のサンドペーパーにてペーパー掛けしてペーパー目を発生させ、次いで前記の応力伝達部材とバフを取付けた回転型ポリッシャにて、極細目コンパウンド(商品名 Bodycom 1st Neo Black ケヰテック株式会社製)を用いてバフ研磨を行い、各番手のペーパーによるペーパー目が消去できたかの確認を行い、研削力を評価した。そして、ペーパー目を消した後の研磨面の状態の評価を行った。
【0036】
(テスト結果)
研磨の評価結果を表1~3に示す。各評価結果は△、〇、◎で示すが、それぞれの評価は次のとおりである。
回転軸振動 △:振動があり、研磨作業に影響がある。
〇:振動が多少あるが、作業には影響がない。
◎:振動はほとんどない。

研磨評価 ×:ペーパー目が消去されずに残る。
△:ペーパー目は消去されるが、細い縞目模様(キメ)が観察される。
〇:ペーパー目が消去され、細い縞目模様(キメ)も観察されない。
◎:より短時間でペーパー目が消去され、細い縞目模様(キメ)も観察
されなくなる。

【表1】
【表2】
【表3】
【0037】
表1~3のテスト結果に示されるように、ペーパー目の消去は、いずれの素材の応力伝達部材においても、回転中心と重心の距離が半径の2~9%の範囲では、それ以外の範囲に比べて、より粗い番手のサンドペーパーによるペーパー目も消去することができ、優れた研削力を示し、また、より短時間で細い縞目模様(キメ)の観察されない研磨面が得られ、優れたバフ研磨効果を示している。また、回転軸の振動は、表面部材の重量が大きいウールバフでは大きくなるが、回転中心と重心の距離が半径の2~9%の範囲では、問題とならない。
【符号の説明】
【0038】
10、20 バフ研磨盤
1 応力伝達部材
2A、2B、2b、2C、2D、2E、3A、B、3C、3D,3E 貫通孔
21A、21B、21b エッジ部分
4 表面部材 5 装着部材
6 バッキング部材
7 応力伝達部材(三角形状貫通孔)
71 貫通孔(三角形状)
O 回転中心 G、G1 重心
r 応力伝達部材の半径 e、e1 回転中心と重心の距離
30 従来のバフ研磨盤 40 従来の応力伝達部材
41、42 貫通孔
50 回転ポリッシャ
51 本体 52 回転軸
53 取付け円盤 54、55 グリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6