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特開2023-116931情報処理装置、移動局、情報処理方法および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116931
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】情報処理装置、移動局、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/07 20100101AFI20230816BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20230816BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019341
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】596119179
【氏名又は名称】株式会社コア
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】最上谷 真仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 享弘
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062BB08
5J062CC07
5J062CC13
5J062EE00
(57)【要約】
【課題】セミ・ダイナミック補正を行うための移動局の装置コストを低減させることができる、情報処理装置、移動局、情報処理方法および情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】測位衛星から測位信号を取得し、取得された測位信号に基づき、位置座標を算出し、基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得し、基準点との基線ベクトルを解析し、取得された第1補正値と解析された基線ベクトルとに基づき、位置座標算出部において算出された位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出し、移動局における概略座標を取得し、算出された第2補正値に基づき、取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出し、算出された第3補正値を移動局に提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得部と、
前記測位信号取得部において取得された測位信号に基づき、位置座標を算出する位置座標算出部と、
基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得する補正値取得部と、
前記基準点との基線ベクトルを解析する基線解析部と、
前記補正値取得部において取得された第1補正値と前記基線解析部において解析された基線ベクトルとに基づき、前記位置座標算出部において算出された位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出する第2補正値算出部と、
移動局における概略座標を取得する概略座標取得部と、
前記第2補正値算出部において算出された第2補正値に基づき、前記概略座標取得部において取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出する第3補正値算出部と、
前記第3補正値算出部において算出された第3補正値を前記移動局に提供する補正値提供部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記概略座標取得部は、NTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol) Serverを介して概略座標を取得し、
前記補正値提供部は、NTRIP Casterを介して第3補正値を提供する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記補正値取得部は、前記位置座標算出部において算出された位置座標の近傍に存在する複数の基準点における第1補正値を取得し、
第2補正値算出部は、前記補正値取得部において取得された前記複数の基準点における第1補正値の荷重平均に基づき、第2補正値を算出する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第3補正値算出部は、前記概略座標取得部において取得された概略座標に基づき、前記移動局の移動距離を算出し、算出した移動距離が予め定められた距離を超えた場合に第3補正値を再度算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第3補正値算出部は、予め定められた頻度に基づきに第3補正値を再度算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得部と、
前記測位信号取得部において取得された測位信号に基づき、概略座標を算出する概略座標算出部と、
前記概略座標算出部において算出された概略座標を情報処理装置に提供する概略座標提供部と、
前記概略座標提供部において提供された概略座標、および基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値と前記基準点と前記情報処理装置との基線ベクトルとにおいて算出された第2補正値に基づき算出された、前記概略座標を元期座標に補正する第3補正値を前記情報処理装置から取得する補正値取得部と、
前記情報処理装置との基線ベクトルを解析する基線解析部と、
前記測位信号取得部において取得された測位信号、前記補正値取得部において取得された第3補正値、および前記基線解析部において解析された基線ベクトルに基づき、精密座標を算出する精密座標算出部と
を備える移動局。
【請求項7】
情報処理装置における情報処理方法であって、
測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得ステップと、
前記測位信号取得ステップにおいて取得された測位信号に基づき、位置座標を算出する位置座標算出ステップと、
基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得する補正値取得ステップと、
前記基準点との基線ベクトルを解析する基線解析ステップと、
前記補正値取得ステップにおいて取得された第1補正値と前記基線解析ステップにおいて解析された基線ベクトルとに基づき、前記位置座標算出ステップにおいて算出された位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出する第2補正値算出ステップと、
移動局における概略座標を取得する概略座標取得ステップと、
前記第2補正値算出ステップにおいて算出された第2補正値に基づき、前記概略座標取得ステップにおいて取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出する第3補正値算出ステップと、
前記第3補正値算出ステップにおいて算出された第3補正値を前記移動局に提供する補正値提供ステップと
を含む情報処理方法。
【請求項8】
移動局における情報処理方法であって、
測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得ステップと、
前記測位信号取得ステップにおいて取得された測位信号に基づき、概略座標を算出する概略座標算出ステップと、
前記概略座標算出ステップにおいて算出された概略座標を情報処理装置に提供する概略座標提供ステップと、
前記概略座標提供ステップにおいて提供された概略座標、および基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値と前記基準点と前記情報処理装置との基線ベクトルとにおいて算出された第2補正値に基づき算出された、前記概略座標を元期座標に補正する第3補正値を前記情報処理装置から取得する補正値取得ステップと、
前記情報処理装置との基線ベクトルを解析する基線解析ステップと、
前記測位信号取得ステップにおいて取得された測位信号、前記補正値取得ステップにおいて取得された第3補正値、および前記基線解析ステップにおいて解析された基線ベクトルに基づき、精密座標を算出する精密座標算出ステップと
を含む情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得処理と、
前記測位信号取得処理において取得された測位信号に基づき、位置座標を算出する位置座標算出処理と、
基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得する補正値取得処理と、
前記基準点との基線ベクトルを解析する基線解析処理と、
前記補正値取得処理において取得された第1補正値と前記基線解析処理において解析された基線ベクトルとに基づき、前記位置座標算出処理において算出された位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出する第2補正値算出処理と、
移動局における概略座標を取得する概略座標取得処理と、
前記第2補正値算出処理において算出された第2補正値に基づき、前記概略座標取得処理において取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出する第3補正値算出処理と、
前記第3補正値算出処理において算出された第3補正値を前記移動局に提供する補正値提供処理と
を実行させるための、情報処理プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得処理と、
前記測位信号取得処理において取得された測位信号に基づき、概略座標を算出する概略座標算出処理と、
前記概略座標算出処理において算出された概略座標を情報処理装置に提供する概略座標提供処理と、
前記概略座標提供処理において提供された概略座標、および基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値と前記基準点と前記情報処理装置との基線ベクトルとにおいて算出された第2補正値に基づき算出された、前記概略座標を元期座標に補正する第3補正値を前記情報処理装置から取得する補正値取得処理と、
前記情報処理装置との基線ベクトルを解析する基線解析処理と、
前記測位信号取得処理において取得された測位信号、前記補正値取得処理において取得された第3補正値、および前記基線解析処理において解析された基線ベクトルに基づき、精密座標を算出する精密座標算出処理と
を実行させるための、情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、移動局、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星からの衛星信号を移動局で受信して、移動局の位置情報を測位することが行われている。位置情報を測位する測位システムとしては、例えば、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System:準天頂衛星システム)等の衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)が存在する。衛星測位システムの単独測位方式においては、GNSS衛星から配信されるGNSS信号を使用して移動局単独で位置情報を測位する。単独測位方式においては、GNSS信号に含まれる誤差によってメートルオーダーの誤差を含む測位精度を実現することができる。
【0003】
また、GNSS衛星から取得された位置情報と、地上に設置した基準局から取得した位置情報を組み合わせ高精度の測位を実現するRTK(Real Time Kinematic)と呼ばれる測位方式がある。RTK方式においては、予め設置位置が分かっている基準局と、基準局から所定の距離圏内(例えば、数Km以内)にある移動局の両方でGNSS信号を取得して、それぞれ測位情報を生成する。移動局と基準局は通信可能に接続されて、移動局において生成された測位情報は基準局に送信される。基準局は、予め分かっている設置位置と自身で生成した測位情報の誤差に基づき、移動局において生成された測位情報の補正情報を生成して移動局に送信する。移動局は、基準局から送信された補正情報に基づき、自身で測位した測位情報を補正することにより高精度の測位を実現することができる。
【0004】
また、センチメータ級測位補強サービス(Centimeter Level Augmentation Service:CLAS)においては、複数の電子基準点網においてGNSS衛星から収集されたGNSS信号を管制局が取得してCLAS信号を生成する。生成されたCLAS信号は、準天頂衛星(QZS:Quasi-Zenith Satellite)を介して移動局に配信される。CLAS信号には、補強情報として誤差補正量が含まれている。誤差補正量は、正確な座標が既知である電子基準点の観測データを用いて、衛星に起因する誤差、および信号伝搬経路である大気状態に起因する誤差を測位衛星ごとに推定して算出される。誤差補正量が含まれている補強情報は、QZSを介して移動局に配信される。補強情報を取得した移動局は、GNSS信号に基づき自身で測位した概略位置とQZSから取得したCLAS信号とに基づき、概略位置を補正する補正値を生成することにより、高精度な位置情報を取得することができる。
【0005】
三角点(基準点)における既存の測量成果と観測結果の間に生じる地殻変動のひずみの影響を補正することを目的としてセミ・ダイナミック補正が用いられる。セミ・ダイナミック補正においては、2011年の基準日を測量成果の「元期」とよび、測量が行われた時点を「今期」という。セミ・ダイナミック補正は、元期における既存の測量成果と今期における観測結果の間に生じる地殻変動のひずみの影響を補正することを目的として、基準点を今期に補正した上で基準点と測量点の基線ベクトルに基づき今期における測量点の座標値を算出し、セミ・ダイナミック補正の補正パラメータを用いて測量点の元期の座標値を算出する。
【0006】
例えば、特許文献1には、測位衛星から受信した測位信号に基づいて単独測位を行うための必要な情報の抽出及び/又は単独測位を行い、第2の観測データに関する情報を用いて前記単独測位より精度が高い測位処理を実行する測位演算ユニットと、衛星測位補正データと前記測位信号に基づく情報とを受信し、前記単独測位に関する情報を前記測位演算ユニットから受信し、前記測位信号に基づく情報と、前記衛星測位補正データと前記単独測位に関する情報から取得される前記単独測位の結果とに基づいて、前記第2の観測データに関する情報を生成し、前記第2の観測データに関する情報を前記測位演算ユニットに送信する観測データ生成演算ユニットと、を備える測位処理装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、衛星からの受信電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独方式の測位と、ネットワークを介して測位サーバから取得した測位補助用のデータを用いつつ衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位との双方を行うことのできる測位システム受信機が記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、全地球航法衛星システムにて取得される位置情報を地図に整合させるためのパラメータを生成及び配信するパラメータ配信システムが、複数の基準点それぞれにおける地殻変動量に基づき、該地殻変動量に起因する誤差を補正する補正パラメータを、空間補間法にて格子状をなす複数箇所の地点について生成する生成部と、要求に応じて、前記生成部が生成する補正パラメータを出力する出力部と、を備える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-66577号公報
【特許文献2】特開2009-115573号公報
【特許文献3】特開2019-20260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、移動局においてセミ・ダイナミック補正を行うためには、移動局にセミ・ダイナミック補正を行うための機能が必要になり、移動局の装置コストが上昇してしまう場合があった。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、セミ・ダイナミック補正を行うための移動局の装置コストを低減させることができる、情報処理装置、移動局、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、情報処理装置は、測位衛星から測位信号を取得する測位信号取得部と、測位信号取得部において取得された測位信号に基づき、位置座標を算出する位置座標算出部と、基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得する補正値取得部と、基準点との基線ベクトルを解析する基線解析部と、補正値取得部において取得された第1補正値と基線解析部において解析された基線ベクトルとに基づき、位置座標算出部において算出された位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出する第2補正値算出部と、移動局における概略座標を取得する概略座標取得部と、第2補正値算出部において算出された第2補正値に基づき、概略座標取得部において取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出する第3補正値算出部と、第3補正値算出部において算出された第3補正値を移動局に提供する第3補正値提供部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一つの実施形態によれば、測位衛星から測位信号を取得し、取得された測位信号に基づき、位置座標を算出し、基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得し、基準点との基線ベクトルを解析し、取得された第1補正値と解析された基線ベクトルとに基づき、位置座標算出部において算出された位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出し、移動局における概略座標を取得し、算出された第2補正値に基づき、取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出し、算出された第3補正値を移動局に提供することにより、セミ・ダイナミック補正を行うための移動局の装置コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における情報処理システムのソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態における情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。
図3】実施形態における情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態における情報処理装置の第1の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態における情報処理装置の第2の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態における移動局の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における、情報処理装置、移動局、情報処理方法および情報処理プログラムについて詳細に説明する。
【0016】
先ず、図1を用いて、情報処理装置と移動局とを含む情報処理システムの機能を説明する。図1は、実施形態における情報処理システムのソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
図1において、情報処理システム100は、少なくとも情報処理装置1と移動局2を含む。情報処理装置1は、ネットワーク9を介して、移動局2と通信可能に接続されている。情報処理装置1は、複数の移動局2と通信可能に接続されてもよい。ネットワーク9は、例えば、インターネットである。ネットワーク9には、例えば携帯電話の基地局、無線LANのアクセスポイント等が含まれていてもよい。
【0018】
情報処理装置1は、測位信号取得部11、位置座標算出部12、補正値取得部13、基線解析部14、第2補正値算出部15、NTRIP16、概略座標取得部161、補正値提供部162、第3補正値算出部17および補正値提供部18の各機能部を有する。本実施形態における情報処理装置1の上記各機能部は、本実施形態における情報処理プログラム(ソフトウェア)によって実現される機能モジュールであるものとして説明する。
【0019】
測位信号取得部11は、GNSSアンテナ111を介して、GNSS衛星3(3a~3n)からGNSS信号(測位信号)を取得する。GNSS衛星3は、例えば、GPS衛星、GLONASS衛星、Galileo衛星、QZSS衛星(QZS)である。GNSS衛星3はGNSS信号(測位信号)を配信する。測位信号は、GNSS衛星3から配信された信号から抽出されるデータ(例えば、エフェメリスデータ等のRAWデータ、またはRAWデータを所定のフォーマットに変換したデータ等)であってもよく、また測位信号から算出された測位情報(例えば、緯度、軽度または楕円体高等の測地座標等)であってもよい。
【0020】
位置座標算出部12は、測位信号取得部11において取得された測位信号に基づき、GNSSアンテナ111の位置の位置座標(新点位置座標と言う場合がある)を算出する。位置座標算出部12は、単独測位を行うものであってもよく、また相対測位を行うものであってもよい。本実施形態においては、相対測位の中で測位の精度が高い干渉測位の中で、ネットワーク型RTK測位を用いる場合を例示する。
【0021】
補正値取得部13は、基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得する。基準点とは、例えば、三角点または電子基準点である。基準点は、例えば5kmメッシュで配置され、元期から今期までの地殻変動量が測定されている。第1補正値は、GNSSアンテナ111の近傍のセミ・ダイナミック補正に利用する1または複数の基準点における地殻変動量を示す情報であり、例えば、セミ・ダイナミック補正の計算を支援するためのWebサイトから取得することができる。
【0022】
補正値取得部13は、位置座標算出部12において算出された位置座標に基づき第1補正値を取得する基準点を選択するようにしてもよい。例えば、補正値取得部13は、位置座標算出部12において算出された位置座標から予め定められた距離以内に存在する近傍の複数の基準点における第1補正値を取得するようにしてもよい。基準点を選択することにより、基準点の数が制限されて、セミ・ダイナミック補正における計算負荷を軽減することができる。
【0023】
基線解析部14は、基準点との基線ベクトルを解析する。基線ベクトルは、基準点と新点位置座標との3次元のベクトルである。基線ベクトルの解析は、基準点におけるGNSS衛星の搬送波の位相と新点座標位置における搬送波の位相を用いることにより解析することができる。ネットワーク型RTKにおいては、電子基準点のリアルタイムデータを配信する配信者が算出して配信している補正データを補正値取得部13が小電力無線機などにより受信することでリアルタイムに行うことができる。なお、GNSS測量で観測される基線ベクトルは,点間の相対的な位置関係であり、地心直交座標に基づくため,直接求められる高さは楕円体高となる。国土地理院が提供するジオイドモデルより求めたジオイド高を引くことで標高を計算することが可能となる。
【0024】
第2補正値算出部15は、補正値取得部13において取得された第1補正値と基線解析部14において解析された基線ベクトルとに基づき、位置座標算出部12において算出された今期の位置座標を元期座標に補正する第2補正値を算出する。第2補正値は、新点位置座標に対して地殻変動に対するセミ・ダイナミック補正を行うための情報である。第2補正値算出部15は、補正値取得部13において取得された複数の基準点における第1補正値の荷重平均に基づき、第2補正値を算出するようにしてもよい。
【0025】
概略座標取得部161は、移動局2における概略座標を取得する。概略座標とは、移動局2おいて単独測位された位置座標であって、セミ・ダイナミック補正がされていない今期の位置座標である。概略座標取得部161は、移動局2から定期的にまたは不定期に送信される概略座標を取得する。概略座標取得部161は、複数の移動局から概略座標を取得してもよい。なお、セミ・ダイナミック補正においては、移動局2の位置座標が基地局となる情報処理装置1の位置座標の近傍である場合、移動局2と通信している情報処理装置1における位置座標を概略座標に代替するようにしてもよい。
【0026】
概略座標取得部161は、NTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)を介して概略座標を取得する。NTRIPは、RTK測位に利用するGNSS補正データを、インターネットを利用して送受信するための通信プロトコルである。NTRIP16は、NTRIP ServerおよびNTRIP Casterとして機能することにより、情報処理装置1におけるNTRIPにおける送受信を可能にする。概略座標取得部161は、概略値の取得にNTRIPを用いることにより、GNSS補正データの受信と通信機能の共用を図ることができ、情報処理装置1の装置コストを低減させることができる。
【0027】
第3補正値算出部17は、概略座標取得部161において取得された概略座標と、第2補正値算出部15において算出された第2補正値とに基づき、概略座標取得部において取得された概略座標を元期座標に補正する第3補正値を算出する。第3補正値の算出方法は、第2補正値の算出方法と同様であり、移動局2との概略座標における基線ベクトルに基づき、セミ・ダイナミック補正を行うための補正値を算出する。第3補正値は、移動局2の今期位置座標を元期位置座標に補正するための情報であるため、第3補正値を提供された移動局2は、第3補正値を用いて座標値を補正することにより、既にセミ・ダイナミック補正された元期における座標位置を取得することが可能となる。
【0028】
補正値提供部18は、第3補正値算出部17において算出された第3補正値を移動局2に提供する。補正値提供部18は、NTRIPを介して第3補正値を提供する。補正値提供部18は、第3補正値の提供にNTRIPを用いることにより、GNSS補正データの送信と通信機能の共用を図ることができ、情報処理装置1の装置コストを低減させることができる。
【0029】
なお、本実施形態における「提供」とは、提供元が主体的に提供先に対してデータを送信するプッシュ方式のデータの移動であってもよく、また、提供先が主体となって提供元からデータを引き取るプル方式のデータの移動であってもよい。すなわち、本実施形態における「提供」は、データの移動の主体を限定するものではない。例えば、補正値提供部18は、第3補正値算出部17において算出された第3補正値を一度蓄積しておいて移動局2からの要求に応じて第3補正値を提供するものであってもよく、算出された第3補正値を主体的に送信するものであってもよい。
【0030】
移動局2は、測位信号取得部21、概略座標算出部22、概略座標提供部23、補正値取得部24、基線解析部25および精密座標算出部26を備える。移動局2は、移動可能な装置であって移動速度は限定されない。移動局2は、例えば、自動車、鉄道車両、自転車等の車両、船舶、航空機等に搭載されるものであってもよく、またノートPC、タブレットPCもしくはスマートフォン等の利用者端末であってもよい。さらに移動局2は、地殻変動や火山体の変化を測定するための基準点であってもよい。
【0031】
測位信号取得部21は、GNSS衛星3から測位信号を取得する。測位信号取得部21の機能は測位信号取得部11と同様のため、機能の説明を省略する。
【0032】
概略座標算出部22は、測位信号取得部21において取得された測位信号に基づき、概略座標を算出する。概略座標は上述の通り、セミ・ダイナミック補正を行う前における今期の座標位置である。
【0033】
概略座標提供部23は、概略座標算出部22において算出された概略座標を情報処理装置1に提供する。概略座標提供部23は、上述の通り、NTRIPを介して提供される。
【0034】
補正値取得部24は、第3補正値を取得する。すなわち、補正値取得部24は、概略座標提供部23において提供された概略座標、および基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値と基準点と情報処理装置との基線ベクトルとにおいて算出された第2補正値に基づき算出された、概略座標を元期座標に補正するための補正値を前記情報処理装置1から取得する。補正値取得部24は、上述の通り、NTRIPを介して第3補正値を取得する。
【0035】
基線解析部25は、RTK測位において情報処理装置1との基線ベクトルを解析する。基線解析部25の機能は、基線解析部14の機能と同様のため、説明を省略する。
【0036】
精密座標算出部26は、測位信号取得部21において取得された測位信号、補正値取得部24において取得された第3補正値、および基線解析部25の機能において解析された基線ベクトルに基づき、精密座標を算出する。精密座標とは、地殻変動によるセミ・ダイナミック補正を行った位置座標である。本実施形態において精密座標算出部26は、RTK測位において精密座標を算出するものとする。上述の通り、第3補正値は、移動局2の概略座標値に基づきセミ・ダイナミック補正を行うための情報であるため、精密座標算出部26は第3補正値を用いて今期の位置座標を補正することにより、セミ・ダイナミック補正がされた元期における位置座標を算出することが可能となる。すなわち移動局2は、第3補正値を用いることにより、移動局2の内部でセミ・ダイナミック補正の機能を有さなくてもセミ・ダイナミック補正の測位結果を得ることができるので、移動局2の装置コストを低減させることが可能となる。
【0037】
なお、情報処理システム100(情報処理装置1または移動局2)が有する、上記の各機能部は、情報処理システム100の機能部の一例を示したものであり、情報処理システム100が有する機能を限定したものではない。例えば、情報処理システム100は、上記全ての機能部を有している必要はなく、一部の機能部を有するものであってもよい。また、情報処理システム100は、上記以外の他の機能を有していてもよい。例えば、情報処理システム100は、情報を入力するために入力機能や、装置の稼働状態をLEDランプ等により報知する出力機能を有していてもよい。
【0038】
また、情報処理システム100が有する上記各機能部は、上述の通り、ソフトウェアによって実現されるものとして説明した。しかし、上記機能部の中で少なくとも1つ以上の機能部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0039】
また、上記何れかの機能部は、1つの機能部を複数の機能部に分割して実施してもよい。また、上記何れか2つ以上の機能部を1つの機能部に集約して実施してもよい。すなわち、図1は、情報処理システム100が有する機能を機能ブロックで表現したものであり、例えば、各機能部がそれぞれ別個のプログラムファイル等で構成されていることを示すものではない。
【0040】
また、情報処理装置1または移動局2は、1つの筐体によって実現される装置であっても、ネットワーク等を介して接続された複数の装置から実現されるシステムであってもよい。例えば、情報処理装置1または移動局2は、その機能の一部または全部をクラウドコンピューティングシステムによって提供されるクラウドサービス等、仮想的な装置によって実現するものであってもよい。すなわち、情報処理装置1または移動局2は、上記各機能部のうち、少なくとも1以上の機能部を他の装置において実現するようにしてもよい。また、情報処理装置1または移動局2は、デスクトップPC等の汎用的なコンピュータであってもよく、機能が限定された専用の装置であってもよい。
【0041】
次に、図2を用いて、情報処理システムのシステム構成を説明する。図2は、実施形態における情報処理システムのシステム構成の一例を示す図である。図2において、情報処理システム100Aは、図1において説明した情報処理システム100の機能の一部を用いて装置構成の一例を示している。
【0042】
図2における情報処理システム100Aは、図1における情報処理装置1の機能の一部をBase1A、および、移動局2の機能の一部をRover2Aとして表している。Base1Aは、GNSSアンテナ111A、汎用GNSS受信機11A、NTRIP(Server/Caster)16A、およびセミ・ダイナミック補正エンジン17Aの機能部を有する。Rover2Aは、GNSSアンテナ211Aおよび汎用GNSS受信機12Aの機能部を有する。
【0043】
汎用GNSS受信機11Aは、GNSSアンテナ111Aを介して取得したGNSS信号に基づき、位置座標を算出してNTRIP16Aに提供する。NTRIP16Aは汎用GNSS受信機12Aから取得した位置座標をセミ・ダイナミック補正エンジン17Aに提供する。セミ・ダイナミック補正エンジン17Aは取得した今期の位置座標を元期に補正するセミ・ダイナミック補正を実行する。なお、GNSSアンテナ111Aの位置が固定されている場合、地殻変動が無視できる短期間においてはGNSSアンテナ111Aの位置座標のセミ・ダイナミック補正は少なくとも1回行えばよい。
【0044】
汎用GNSS受信機21Aは、GNSSアンテナ211Aを介して取得したGNSS信号に基づき、概略位置を算出してNTRIP16Aに提供する。NTRIP16Aは汎用GNSS受信機12Aから取得した概略位置をセミ・ダイナミック補正エンジン17Aに提供する。セミ・ダイナミック補正エンジン17Aは、取得した概略座標に基づき、Rover2AにおいてRTK測位に用いる補正値を算出する。セミ・ダイナミック補正エンジン17Aにおいて算出される補正値は、GNSSアンテナ111Aの位置座標をセミ・ダイナミック補正した位置座標に基づき算出される補正値(図1における第3補正値)である。すなわち、セミ・ダイナミック補正エンジン17Aは、概略座標に基づくRTK補正値の算出とセミ・ダイナミック補正とを一括して行うことになる。
【0045】
セミ・ダイナミック補正エンジン17Aは、算出したセミ・ダイナミック補正済みの補正値(第3補正値)をNTRIP16Aに提供する。NTRIP16AはNTRIP Casterとして、取得した補正値を汎用GNSS受信機21Aに提供する。汎用GNSS受信機21Aは、汎用GNSS受信機21Aにおいて取得した測位信号とNTRIP16Aから取得した補正値とに基づきRTK測位を行う。汎用GNSS受信機21Aにおいて行うRTK測位においては、既にセミ・ダイナミック補正された補正値が使われるので、汎用GNSS受信機21Aにおいてセミ・ダイナミック補正を行うことなく、元期における位置座標を算出することができる。
【0046】
なお、NTRIP16Aと汎用GNSS受信機21Aの通信には、例えば、携帯電話キャリアの電波、または無線機の電波を利用することができる。また、携帯電話の通信圏外等によりNTRIP16Aと汎用GNSS受信機21Aの通信ができない場合、仮想点を用いた短縮スタティックまたは後処理キネマティックによる解析処理等の後処理を行うようにしてもよい。仮想点とは、山岳部や山間部の植林帯などに単点観測法を用いて設ける簡易基準点である。短縮スタティック法とは、仮想点を用いた20分以上の観測で3級~4級基準点の精度を得る測位法である。後処理キネマティックとは、観測日、観測時間(観測開始・終了時間)、観測点の緯度、経度および楕円体高のデータを後日解析することにより、RTK測位を行う測位法である。
【0047】
<機能部の共有>
図2におけるBase1AおよびRover2Aの上記各機能部は共有するようにすることができる。例えば、複数のBase1Aまたは複数のRover2Aが存在し、複数のGNSSアンテナ111AまたはGNSSアンテナ211Aを設置して複数のBase1Aまたは複数のRover2Aにおける測位を行う場合、NTRIP16Aまたはセミ・ダイナミック補正エンジン17Aを複数のGNSSアンテナ111AまたはGNSSアンテナ211Aで共有するようにしてもよい。NTRIP16Aまたはセミ・ダイナミック補正エンジン17Aを共有することにより、装置コストを低減することができる。
【0048】
次に、図3を用いて、情報処理装置1のハードウェア構成を説明する。図3は、実施形態における情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、図3においては情報処理装置1のハードウェア構成について説明するが、移動局2においても情報処理装置1と同様のハードウェア構成を用いることができる。
【0049】
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、I/O機器104、通信I/F(Interface)105およびGNSSアンテナ111(QZSSアンテナ(L6アンテナ)であってもよい)を有する。情報処理装置1は、図1で説明した情報処理プログラムを実行する装置である。
【0050】
CPU101は、RAM102またはROM103に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、利用者端末の制御を行う。情報処理プログラムは、例えば、プログラムを記録した記録媒体、又はネットワークを介したプログラム配信サーバ等から取得されて、ROM103にインストールされ、CPU101から読出されて実行される。
【0051】
I/O機器104は、操作入力機能と表示機能(操作表示機能)を有する。I/O機器104は、例えばタッチパネルである。タッチパネルは、情報処理装置1の利用者に対して指先又はタッチペン等を用いた操作入力を可能にする。本実施形態におけるI/O機器104は、操作表示機能を有するタッチパネルを用いる場合を説明するが、I/O機器104は、表示機能を有する表示装置と操作入力機能を有する操作入力装置とを別個有するものであってもよい。その場合、タッチパネルの表示画面は表示装置の表示画面、タッチパネルの操作は操作入力装置の操作として実施することができる。なお、I/O機器104は、ヘッドマウント型、メガネ型、腕時計型のディスプレイ等の種々の形態によって実現されてもよい。
【0052】
通信I/F105は、通信用のI/Fである。通信I/F105は、例えば、無線LAN、有線LAN、赤外線等の近距離無線通信を実行する。図は通信用のI/Fとして通信I/F105のみを図示するが、情報処理装置1は複数の通信方式においてそれぞれの通信用のI/Fを有するものであってもよい。
【0053】
次に、図4および図5を用いて、情報処理装置1の動作を説明する。図4は、実施形態における情報処理装置1の第1の動作の一例を示すフローチャートである。図5は、実施形態における情報処理装置1の第2の動作の一例を示すフローチャートである。以下に示すフローチャートにおける動作の実行主体は情報処理装置1であるものとして説明するが、それぞれの動作は、上述した情報処理装置1の各機能部において実行することができる。
【0054】
図4において、情報処理装置1は、GNSS衛星3から測位信号を取得したか否かを判断する(ステップS11)。測位信号を取得していないと判断した場合(ステップS11:NO)、情報処理装置1は、ステップS11の処理を繰り返し、測位信号の取得を待機する。
【0055】
一方、測位信号を取得したと判断した場合(ステップS11:YES)、情報処理装置1は、位置座標を算出する(ステップS12)。ステップS12の処理を実行した後、情報処理装置1は、基準点における座標である基準点座標を元期座標から今期座標に補正する第1補正値を取得する(ステップS13)。第1補正値の取得は、例えば、電子基準点における第1補正値を配信する配信サービス等からインターネットを介して取得することができる。
【0056】
ステップS13の処理を実行した後、情報処理装置1は、基線解析を行う(ステップS14)。基線解析は、図1において説明した基線解析部14において行うことができる。
【0057】
ステップS14の処理を実行した後、情報処理装置1は、第2補正値を算出する(ステップS15)。第2補正値の算出は、図1において説明した第2補正値算出部15において行うことができる。ステップS15の処理を実行した後、情報処理装置1は、図4におけるフローチャートに示す動作を終了する。
【0058】
なお、図4に示す動作は、情報処理装置1の位置が変化しない場合、地殻変動による影響を無視できる期間において1回行えばよい。算出された第2補正値は、情報処理装置1における位置座標を今期から元期に補正するものであり、算出した第2補正値を記憶しておくことにより、図5において説明する第3補正値の算出において、記憶された第2補正値を読み出すようにしてもよい。
【0059】
図5において、情報処理装置1は、移動局2から概略座標を取得したか否かを判断する(ステップS21)。概略座標を取得していないと判断した場合(ステップS21:NO)、情報処理装置1は、ステップS21の処理を繰り返し、概略座標の取得を待機する。
【0060】
一方、概略座標を取得したと判断した場合(ステップS21:YES)、情報処理装置1は、移動局2の移動距離が予め設定された設定値より大きいか否かを判断する(ステップS22)。移動局2の移動距離とは、同一の移動局2における前回の概略座標と今回の概略座標の差分である。移動局2の移動距離が予め設定された設定値以下の場合(ステップS22:NO)、情報処理装置1は、図5におけるフローチャートに示す動作を終了する。情報処理装置1は、移動局2の移動距離が予め設定された設定値以下の場合、ステップS23以下の処理を省略することにより、計算負荷および通信負荷を低減させることができる。例えば、移動局2が停止中である場合、概略座標は変化しないため、ステップS23以下の処理において算出される第3補正値は変わらず、算出を省略することができる。
【0061】
一方、移動局2の移動距離が予め設定された設定値より大きい場合(ステップS22:YES)、情報処理装置1は、算出頻度が予め設定された設定値より大きいか否かを判断する(ステップS23)。なお、概略座標の取得が初回である場合(前回の取得がない場合)、移動局2の移動距離が予め設定された設定値より大きいとして判断するようにしてもよい。算出頻度とは、ステップS24における第3補正値の算出頻度であり、例えば、単位時間あたりの算出回数、または、移動局2の単位移動距離あたりの算出回数等である。算出頻度が予め設定された設定値より大きいと判断した場合(ステップS23:YES)、情報処理装置1は、図5におけるフローチャートに示す動作を終了する。情報処理装置1は、算出頻度が予め設定された設定値より大きい場合、ステップS24以下の処理を省略することにより、計算負荷および通信負荷を低減させることができる。
【0062】
一方、算出頻度が予め設定された設定値以下であると判断した場合(ステップS23:NO)、情報処理装置1は、第3補正値を算出する(ステップS24)。第3補正値の算出は、第3補正値算出部17において行うことができる。
【0063】
ステップS24の処理を実行した後、情報処理装置1は、算出した第3補正値を移動局2に対して提供する(ステップS25)。ステップS25の処理を実行した後、情報処理装置1は、図5におけるフローチャートに示す動作を終了する。
【0064】
次に、図6を用いて、移動局2の動作を説明する。図6は、実施形態における移動局の動作の一例を示すフローチャートである。
【0065】
図6において、移動局2は、GNSS衛星3から測位信号を取得したか否かを判断する(ステップS31)。測位信号を取得していないと判断した場合(ステップS31:NO)、移動局2は、ステップS31の処理を繰り返し、測位信号の取得を待機する。
【0066】
一方、測位信号を取得したと判断した場合(ステップS31:YES)、移動局2は、取得した測位信号に基づき、概略座標を算出する(ステップS32)。概略座標の算出は、概略座標算出部22において行うことができる。ステップS32の処理を実行した後、移動局2は、算出した概略座標を情報処理装置1に提供する(ステップS33)。ここで情報処理装置1は、図5において説明したように、第3補正値を算出して移動局2に提供する。移動局2は、情報処理装置1から提供された第3補正値を取得する(ステップS34)。
【0067】
ステップS34の処理を実行した後、移動局2は、RTK測位における情報処理装置1との基線解析を行う(ステップS35)。基線解析は、図1における基線解析部25において行うことができる。ステップS35の処理を実行した後、移動局2は、取得した第3補正値と解析した基線ベクトルに基づき、精密座標を算出する(ステップS36)。精密座標はRTK測位において算出されるが、第3補正値は、情報処理装置1におけるセミ・ダイナミック補正がされた元期において算出されたものとなる。このため、精密座標は、元期における位置座標が算出されたものとなる。ステップS36の処理を実行した後、移動局2は、図6におけるフローチャートに示す動作を終了する。
【0068】
なお、以上のフローチャートで示した処理は動作の一例を示すものであって、処理の順番を限定するものではない。例えば、特定の処理はフローチャートにおける処理順序とは異なる順序またはタイミングにおいて実行されてもよい。
【0069】
また、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0070】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0071】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 情報処理装置
11 測位信号取得部
11A 汎用GNSS受信機
111 GNSSアンテナ
111A GNSSアンテナ
12 位置座標算出部
13 補正値取得部
14 基線解析部
15 第2補正値算出部
16 NTRIP
16A NTRIP
161 概略座標取得部
162 補正値提供部
17 第3補正値算出部
18 補正値提供部
2 移動局
21 測位信号取得部
21A 汎用GNSS受信機
211 GNSSアンテナ
211A GNSSアンテナ
22 概略座標算出部
23 概略座標提供部
24 補正値取得部
25 基線解析部
26 精密座標算出部
3 GNSS衛星
101 CPU
102 RAM
103 ROM
104 I/O機器
105 通信I/F
9 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6