(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116932
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ワークステージおよび露光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230816BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01L21/68 P
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019342
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 俊太
(72)【発明者】
【氏名】那脇 洋平
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197CD02
2H197CD06
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
5F131AA12
5F131AA23
5F131BA13
5F131CA07
5F131EA02
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB02
5F131EB54
5F131EB73
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異物の挟み込みを抑制し、有機基板からなるワークを適切に平面保持することができるワークステージおよびそのワークステージを使用した露光装置を提供する。
【解決手段】ワークステージと、光照射部20と、マスク30と、マスクを保持するマスクステージ31と、投影レンズ40と、を備える露光装置100において、有機基板(ワークW)を保持するワークステージ10は、真空が供給される凹部11aが形成された基台11と、凹部11aの内側に設けられ、有機基板の略全面を保持する多数の基板保持部(ピン)と、凹部11aに真空を供給し、基板保持部の上面に有機基板を真空吸着するための真空エアー導入路11bの端部となる吸気孔と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機基板を保持するワークステージであって、
真空が供給される凹部が形成された基台と、
前記凹部の内側に設けられ、前記有機基板の略全面を保持する多数の基板保持部と、
前記凹部に真空を供給し、前記基板保持部の上面に前記有機基板を真空吸着するための吸気孔と、を備えることを特徴とするワークステージ。
【請求項2】
前記凹部の内側における端部近傍である外周領域に、前記凹部の端部から前記凹部の中心に向かう方向に複数段設けられた隔壁部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のワークステージ。
【請求項3】
前記多数の基板保持部は、前記凹部の内側における中心領域であって、前記有機基板の処理領域に対応する領域に設けられ、
前記複数段の隔壁部は、前記凹部の内側における前記中心領域の外側に設定された前記外周領域であって、前記有機基板の非処理領域に対応する領域に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のワークステージ。
【請求項4】
前記隔壁部は、前記吸気孔に対する吸気経路を構成する切欠き部を備えることを特徴とする請求項2に記載のワークステージ。
【請求項5】
前記複数段の隔壁部は、
第1の切欠き部が設けられた第1の隔壁部と、
前記第1の隔壁部によりも前記凹部の中心側に設けられ、第2の切欠き部が設けられた第2の隔壁部と、を含み、
前記第2の切欠き部は、前記第1の切欠き部が構成する前記吸気孔に対する吸気経路を迂回させる位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のワークステージ。
【請求項6】
前記隔壁部間の距離は、前記基板保持部間の距離以下であることを特徴とする請求項2に記載のワークステージ。
【請求項7】
前記切欠き部の幅は、前記基板保持部間の距離以下であることを特徴とする請求項4に記載のワークステージ。
【請求項8】
前記凹部を形成する外周部、前記基板保持部および前記隔壁部は、同じ高さを有することを特徴とする請求項2に記載のワークステージ。
【請求項9】
露光光を出射する光照射部と、
パターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと、
前記マスクに形成されたパターンが転写される有機基板を保持するワークステージと、を備え、
前記ワークステージは、請求項1から8のいずれか1項に記載のワークステージであることを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光などの加工処理を施す基板を保持するワークステージおよびそのワークステージを使用した露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、プリント基板、液晶基板等のワークを製造する工程において、露光などの加工処理を行う際、ワークが位置ずれを起こさないように、ワークを吸着保持するワークステージが用いられる。
例えば特許文献1は、LSI製造において用いられる真空吸着装置として、上面が同一平面上にある多数の突子のみによってワーク(ウエハ)を保持する、所謂ピンステージ(ピンチャック)を開示する。このように、従来、半導体製造工程の前工程では、ピンステージが広く用いられている。
一方、半導体製造の後工程では、従来、表面に複数の真空吸着孔が形成された平面ステージ(真空チャック)が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークステージには、載置されたワークが確実に吸着保持され、吸着保持中のワークが平面であることが求められる。
ところが、上記の平面ステージを用いた加工処理においては、ワークとワークステージとの間に異物が入り込みやすい。当該異物は、例えば、半導体パッケージ(PKG)で使われる有機基板のゴミ(Fall Material:FM)などである。
ワークとワークステージとの間に異物が挟み込まれると、ワークが変形し、盛り上がってしまう。このとき、ワーク上の盛り上がった部分ではデフォーカスが起こり、露光不良となる。その結果、歩留まりが悪化する。
【0005】
そこで、本発明は、異物の挟み込みを抑制し、有機基板からなるワークを適切に平面保持することができるワークステージおよびそのワークステージを使用した露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るワークステージの一態様は、有機基板を保持するワークステージであって、真空が供給される凹部が形成された基台と、前記凹部の内側に設けられ、前記有機基板の略全面を保持する多数の基板保持部と、前記凹部に真空を供給し、前記基板保持部の上面に前記有機基板を真空吸着するための吸気孔と、を備える。
【0007】
このように、有機基板(ワーク)を多数の基板保持部によって真空吸着して保持する構成とすることで、ワークとワークステージとの接触面積を少なくすることができ、ワークとワークステージとの間に異物が挟み込まれることを抑制することができる。したがって、ワークを適切に平面保持することができる。
【0008】
また、上記のワークステージは、前記凹部の内側における端部近傍である外周領域に、前記凹部の端部から前記凹部の中心に向かう方向に複数段設けられた隔壁部をさらに備えてもよい。
この場合、剥離しやすいフィルム等が積層されたワークの当該フィルム側を吸着保持し、当該フィルム等の端部が剥離した場合であっても、その剥離の進行を隔壁部が抑制することができる。つまり、フィルム等が端部から中心部に向けて大きく剥離することを抑制することができる。
【0009】
さらに、上記のワークステージにおいて、前記多数の基板保持部は、前記凹部の内側における中心領域であって、前記有機基板の処理領域に対応する領域に設けられ、前記複数段の隔壁部は、前記凹部の内側における前記中心領域の外側に設定された前記外周領域であって、前記有機基板の非処理領域に対応する領域に設けられていてもよい。
この場合、上記のフィルム等の剥離をワークの非処理領域内に留め、ワークの処理領域に剥離が進行することを抑制することができる。したがって、ワークの処理領域においては、適切に平面保持を維持することができる。
【0010】
また、上記のワークステージにおいて、前記隔壁部は、前記吸気孔に対する吸気経路を構成する切欠き部を備えてもよい。
この場合、隔壁部を挟んで内側と外側とにそれぞれ吸気孔を設ける必要がない。また、隔壁部を挟んで内側と外側とで均一に真空引きすることができる。
【0011】
さらに、上記のワークステージにおいて、前記複数段の隔壁部は、第1の切欠き部が設けられた第1の隔壁部と、前記第1の隔壁部によりも前記凹部の中心側に設けられ、第2の切欠き部が設けられた第2の隔壁部と、を含み、前記第2の切欠き部は、前記第1の切欠き部が構成する前記吸気孔に対する吸気経路を迂回させる位置に設けられていてもよい。
このように吸気の流れを迂回させることで、剥離しやすいフィルム等が積層されたワークの当該フィルム側を吸着保持し、当該フィルム等の端部が剥離した場合であっても、凹部の中心側に設けられた第2の隔壁部によって上記剥離を適切に抑制することができる。
【0012】
また、上記のワークステージにおいて、前記隔壁部間の距離は、前記基板保持部間の距離以下であってよい。
この場合、隔壁部間でのワークのたわみを適切に抑制することができる。
【0013】
さらにまた、上記のワークステージにおいて、前記切欠き部の幅は、前記基板保持部間の距離以下であってよい。
この場合、隔壁部に設けられた切欠き部でのワークのたわみを適切に抑制することができる。
【0014】
また、上記のワークステージにおいて、前記凹部を形成する外周部、前記基板保持部および前記隔壁部は、同じ高さを有していてもよい。
この場合、ワークを真空吸着により適切に平面保持することができる。
【0015】
さらに、本発明に係る露光装置の一態様は、露光光を出射する光照射部と、パターンが形成されたマスクを保持するマスクステージと、前記マスクに形成されたパターンが転写される有機基板を保持するワークステージと、を備え、前記ワークステージは、上記のいずれかのワークステージである。
このように、ワークを適切に平面保持することが可能なワークステージを使用した露光装置では、デフォーカスによる露光不良を適切に抑制することができ、歩留まりの悪化を回避することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワークステージによれば、異物の挟み込みを抑制し、有機基板からなるワークを適切に平面保持することができる。
また、このようなワークステージを使用した露光装置によれば、露光不良が抑制され、歩留まりの悪化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態におけるワークステージを備えた露光装置の概略構成図である。
【
図2】ワークステージの構成例を示す平面図である。
【
図3】ワークステージの構成例を示す側面図である。
【
図4】ワークステージの中心領域および外周領域を示す図である。
【
図6A】ピンステージを使用した露光装置の動作を説明する図である。
【
図6B】ピンステージを使用した露光装置の動作を説明する図である。
【
図6C】ピンステージを使用した露光装置の動作を説明する図である。
【
図6D】ピンステージを使用した露光装置の動作を説明する図である。
【
図7A】本実施形態の露光装置の動作を説明する図である。
【
図7B】本実施形態の露光装置の動作を説明する図である。
【
図7C】本実施形態の露光装置の動作を説明する図である。
【
図7D】本実施形態の露光装置の動作を説明する図である。
【
図8】ピンステージを使用した場合の保護フィルムの剥離の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態のワークステージを使用した場合の保護フィルムの剥離の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、露光装置に用いるワークステージを例にして説明するが、露光装置以外であっても、有機基板を真空吸着保持して処理する装置であれば、このワークステージを使用することができる。
【0019】
図1は、本実施形態におけるワークステージ10を備えた露光装置100の概略構成を示す図である。
露光装置100は、有機基板からなるワークWを露光する露光装置である。ここで、ワークWは、例えばプリント基板とすることができる。
【0020】
図1に示すように、露光装置100は、ワークステージ10と、光照射部20と、マスク30と、マスク30を保持するマスクステージ31と、投影レンズ40と、を備える。
光照射部20は、紫外線を含む光を放射する露光用光源であるランプ21と、ランプ21からの光を反射するミラー22とを有する。ランプ21およびミラー22は、ランプハウス23に収容されている。なお、ここでは光照射部20の光源がランプ21である場合について説明するが、光源は、LEDやレーザなどであってもよい。
【0021】
マスク30には、ワークに露光(転写)される回路パターンなどのパターンが形成されている。光照射部20からの露光光は、マスク30と投影レンズ40とを介して、ワークステージ10が保持するワークWに照射され、マスク30に形成されたパターンが、ワークW上に投影されて露光される。
なお、本実施形態では、露光装置100が投影レンズ40を備える場合について説明するが、投影レンズ40を備えない露光装置にも本実施形態におけるワークステージ10を適用可能である。
【0022】
ワークステージ10は、中央部に凹部11aが形成された基台(ベースプレート)11を備える。基台11は、例えばアルミニウムにより構成することができる。
ワークステージ10には配管50が接続されている。配管50には、エアーと真空とが接続されており、第1のバルブ51と第2のバルブ52とを開閉することにより、基台11に真空とエアーとを切り替えて供給することができる。
基台11内部には、真空エアー導入路11bが形成されており、配管50に供給された真空またはエアーは、真空エアー導入路11bを通って凹部11aに供給される。
【0023】
以下、ワークステージ10の構成について具体的に説明する。
図2は、ワークステージ10の構成例を示す平面図、
図3は、ワークステージ10の構成例を示す側面図である。
ワークステージ10の基台11は、例えば四角形状の板状部材である。なお、基台11の形状は四角形状に限定されるものではない。
基台11は、その外縁部において、ワークWの吸着面側(
図3の上方向)に突出して形成された外周部12を備える。外周部12は、基台11の全周にわたって形成されており、この外周部12によって、基台11に凹部11aが形成される。
【0024】
凹部11aの内側における端部近傍には隔壁部13が設けられ、凹部11aの内側における中央部には多数の基板保持部14が設けられている。
隔壁部13は、凹部11aの端部から凹部11aの中心に向かう方向に複数段設けられている。本実施形態では、隔壁部13は、外周部12から内側に所定の間隔をもって2重に形成されている。
【0025】
そして、内側の隔壁部13と外側の隔壁部13とは、それぞれ少なくとも1つの切欠き部13aを備える。本実施形態では、隔壁部13は、それぞれ2つの切欠き部13aを備える。具体的には、外側の隔壁部13は、X方向に対向する位置にそれぞれ切欠き部13aを備え、内側の隔壁部13は、Y方向に対向する位置にそれぞれ切欠き部13aを備える。
なお、隔壁部13は少なくとも2段設けられていればよく、段数は特に限定されない。
【0026】
基板保持部14は、例えばピン形状の凸部である。基板保持部(以下、「ピン」ともいう。)14は、例えば
図2に示すように、X方向およびY方向に所定の間隔で整列配置されている。
なお、基板保持部14の形状および配置は上記に限定されるものではない。例えば基板保持部14の形状は、円柱状、円錐状、角柱状、角錐状などであってもよい。
【0027】
また、凹部11aの底面には、真空エアー導入路11bの端部となる吸気孔15が形成されている。
図2では、ワークステージ10は、吸気孔15を凹部11aの中央に1つのみ備える場合について示しているが、吸気孔15の数および位置は上記に限定されない。吸気孔15は、少なくともワークステージ10の中心に設けられていればよい。
さらに、外周部12と隔壁部13とピン14とは、Z方向において同じ高さを有する。外周部12の上面、隔壁部13の上面およびピン14の上面が、ワークステージ10におけるワークWの載置面を構成する。ワークステージ10は、上記載置面にワークWが載置された際に、ワークWと凹部11aとの間に形成された領域を真空排気することでワークWを吸着保持することができる。
【0028】
ワークステージ10の載置面、即ち、外周部12の上面と隔壁部13の上面とピン14の上面とを含む平面は、精度の良い平面に仕上げられている。例えば、ワークステージ10の載置面は、高精度のラップ加工により超平面に加工されている。
【0029】
図4に示すように、凹部11aは、ピン14が設けられた中心領域10aと、その外周であり隔壁部13が設けられた外周領域10bとから成る。中心領域10aは、ワークWの略全面に設けられた処理領域(露光領域)に対応し、外周領域10bは、ワークWの処理領域の外側に設けられた比較的小さい非処理領域に対応する。つまり、ワークWは、露光領域が中心領域10a内に配置されるようにワークステージ10に載置され、ワークWの略全面がピン14により保持される。
【0030】
ピン14の直径もしくは一辺の長さ(以下、「ピン径」という。)は、0.2mm~1mm程度であることが好ましい。また、ピン14の高さは数十μm~数mmとすることができる。また、ピン14とピン14との間の距離(以下、「ピン間距離」という。)は、4mm以下であることが好ましく、例えば0.5mm~4mm程度とすることができる。
隔壁部13の上面の幅(以下、「隔壁部幅」という。)および隔壁部13と隔壁部13との間の溝の距離(以下、「隔壁部間距離」という。)は、ピン径およびピン間距離と同じであってよい。隔壁部間距離は、ピン間距離以下であればよい。
【0031】
ピン径およびピン間距離は、ワークWを吸着保持した際に、ワークWの変形(たわみ)によって露光精度に支障をきたさない平面度が確保できる程度の値に設定することが好ましい。ピン径およびピン間距離は、ワークWの種類(厚さや硬さ等)やコスト等に応じて適宜設定することができる。例えばピン間距離は、狭いほどワークWのたわみが少なくなるため露光精度を高めることができるが、ピン14の数は増えるためコストは嵩む。
また、ピン径は、ワークWとの接触面の異物の付着を抑制することができる程度の値に設定することが好ましい。
【0032】
上述したように、ワークステージのワーク載置面は平面であることが求められる。しかしながら、従来のワークステージの表面に複数の真空吸着孔が形成された平面ステージを使用した露光装置では、ワークステージ自体が平面であっても、ワーク載置面上に異物が付着しやすく、ワークとワークステージとの間に入り込んだ異物によってワークが変形しうる。この場合、ワーク上の盛り上がった部分ではデフォーカスが起こり、露光不良となるため、歩留まりが悪化する。
【0033】
本実施形態におけるワークステージ10は、基台11と、外周部12と、外周部12により基台11に形成された凹部11aに設けられた複数のピン14と、を備え、凹部11aに真空を供給することで、ワークWの略全面を保持するピン14aが、ワークWを真空吸着保持する構成を有する。
これにより、従来のワークステージと比較して、ワークWとワークステージ10との接触面積を大幅に少なくすることができるので、上記の異物による露光不良を抑制することができる。
【0034】
しかしながら、プリント基板には、両面に回路パターンを形成したものがある。この場合、ワークWは、
図5に示すように、基材W0の両面にレジストRが塗布され、レジストRの上に保護フィルムFが積層された構成を有する。なお、この
図5では、レジストRおよびフィルムFの厚さを誇張して示している。
ここで、レジストRは、例えばドライフィルムレジストであってよい。また、保護フィルムFは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであってよい。また、レジストRの厚さは約30μm、保護フィルムFの厚さは10μm~30μm程度とすることができる。
【0035】
図5に示すようなワークWを用いる場合、露光装置は、ワークWの両面に対してそれぞれ露光処理を行う。
このとき、ワークステージが、本実施形態におけるワークステージ10が備えるような隔壁部13を備えていない場合、つまり、凹部11aにピン14のみが形成された構成であった場合、両面露光において保護フィルムFの剥離が発生してしまう。以下、この点について詳細に説明する。
【0036】
図6A~
図6Dは、隔壁部13を備えないワークステージ110を備える露光装置の動作を説明する図である。
ここで、ワークステージ110は、本実施形態におけるワークステージ10の外周部12、ピン14、吸気孔15、凹部11aおよび真空エアー導入路11bにそれぞれ対応する外周部112、ピン114、吸気孔115、凹部111aおよび真空エアー導入路111bを備える。
このワークステージ110を備える露光装置においては、まず
図6Aに示すように、不図示の搬送手段により、ワークステージ110上にワークWが搬送される。ここで、ワークWは、
図5に示すように両面(第1面W1および第2面W2)にレジストRが塗布され、その上に保護フィルムFが積層された構成を有する。
【0037】
ワークステージ110上に搬送されたワークWは、
図6Bに示すように第1面W1を上面としてワークステージ110上に載置される。そして、露光装置がワークステージ110の凹部111aに配管150から真空を供給することで、ワークWはワークステージ110上に吸着保持される。この状態で、露光装置は、露光光LをワークWに照射し、第1面W1に対する露光処理を行う。露光装置は、上記の露光処理中、ワークWが移動(位置ずれ)しないようにワークステージ110への真空の供給を続ける。
【0038】
第1面W1への露光処理が終了すると、露光装置は露光光Lの照射を停止し、凹部111aへの真空の供給を停止する。これにより、ワークWの吸着保持が解除される。吸着保持が解除されたワークWは、
図6Cに示すように不図示の反転手段により表裏反転され、
図6Dに示すように、次に露光を行う第2面W2を上面としてワークステージ110上に載置される。
そして、露光装置がワークステージ110の凹部111aに配管150から真空を供給することで、ワークWはワークステージ110上に吸着保持される。
【0039】
なお、プリント基板で多く使用されるレジストは、露光光が照射されると照射された部分が露光前よりも硬くなるため、露光した面を下にしてワークステージ上に置いても、形成した露光パターンが変形することはない。
この状態で、露光装置は、露光光LをワークWに照射し、第2面W2に対する露光処理を行う。このようにして、ワークWの両面の露光処理が行われる。第2面W2の露光処理が終了すると、ワークWはワークステージ110から外され、不図示の搬送手段により、露光装置外に搬送されて次の現像の工程に移される。
【0040】
両面にレジストRが塗布されたワークWにおいて、レジストRを保護するためにレジストR上に積層された保護フィルムFは、中心部では強固にレジストRと密着しているため、剥離し難いが、周縁部では剥離しやすい。保護フィルムFの中心部の臨界剥離強度は10N以上であるが、周縁部の臨界剥離強度は0.2N程度である。
【0041】
そのため、
図6Bに示すように、ワークWの最初に露光する面(第1面W1)を上に、後で露光する面(第2面W2)を下にしてワークステージ110上に置き、凹部111aに配管150から真空を供給して、ワークWを真空吸着すると、真空の吸引力により、保護フィルムFの周縁部が剥離してしまうことがある。周縁部で発生した剥離は、真空の吸引力により中心部に向かって大きく進行する。
図6Bに示すように、ワークWの吸着面である第2面W2において保護フィルムFが剥離すると、ワークWの吸着力が低下したり、ワークWの平面度(平坦度)が低下したりして、第1面W1の露光処理に支障をきたす。
【0042】
さらに、
図6Dに示すように、ワークWの第2面W2に露光処理を行う場合、第1面W1の露光処理時に剥離した保護フィルムF側が被照射面となるため、第2面W2の露光処理に支障をきたす。
このように、両面にレジストRと保護フィルムFとが積層されたワークWをワークステージ110により真空吸着して両面露光処理を行う場合、保護フィルムFの剥離の問題が生じることがある。
【0043】
これに対して、本実施形態では、凹部11aの外周領域10bに2重の隔壁部13を設けるので、表面に保護フィルムFが設けられたワークWの保護フィルムF側を吸着保持した場合であっても、当該保護フィルムFの剥離を抑制することができる。
【0044】
図7A~
図7Dは、本実施形態におけるワークステージ10を備える露光装置100の動作を説明する図である。
図7Aに示すように、まず不図示の搬送手段により、ワークステージ10上にワークWが搬送される。ワークステージ110上に搬送されたワークWは、
図7Bに示すように第1面W1を上面としてワークステージ10上に載置され、真空吸着される。この状態で、露光装置10は、露光光LをワークWに照射し、第1面W1に対する露光処理を行う。
【0045】
なお、本実施形態では、露光装置100は、
図7Aに示すように、ワークステージ10の凹部11aに配管50から真空を供給しながらワークWをワークステージ10上に載置してもよい。真空を供給しながらワークWをワークステージ10上に載置することで、タクトタイムを短縮することができる。
ただし、真空を供給するタイミングは上記に限定されるものではなく、露光装置100は、ワークWをワークステージ10上に載置してからワークステージ10の凹部11aに真空を供給するようにしてもよい。
【0046】
第1面W1に対する露光処理中は、ワークWは、真空吸着によりワークステージ10の表面に押し付けられる。
このとき凹部11aに供給される真空は、真空エアー導入路11bから吸気孔15を通り、凹部11aの中心領域10a(
図4参照)を経て外周領域10b(
図4参照)に向かう。
本実施形態におけるワークステージ10は、外周領域10bに2重の隔壁部13を備え、2重の隔壁部13にそれぞれ設けられた切欠き部13aは、互い違いに配置されている。そのため、中心領域10aから外周領域10bに向かうにしたがって、ワークWの吸着力は適度に弱くなる。したがって、
図7Bに示すように、第2面W2の保護フィルムF側を吸着保持しても、保護フィルムFが剥離することはなく、好適に第1面W1の露光処理を行うことができる。
【0047】
第1面W1への露光処理が終了すると、露光装置100は露光光Lの照射を停止し、凹部11aへの真空の供給を停止し、エアーの供給に切り替える。凹部11aにエアーを供給することにより、ワークWが押し上げられ、ワークWの取り外しが容易となる。ワークステージ10から剥がれたワークWは、
図7Cに示すように不図示の反転手段により表裏反転され、
図7Dに示すように、次に露光を行う第2面W2を上面としてワークステージ110上に載置され、ワークステージ10上に吸着保持される。そして、同様に第2面W2に対する露光処理が行われる。
図7Bに示したように、第1面W1の露光処理時において、第2面W2側の保護フィルムFは剥離しないため、
図7Dに示すように、第2面W2側を被照射面とした場合にも第2面W2の露光処理に支障をきたすことはない。
【0048】
隔壁部13を備えないワークステージ110の場合、
図8の左図に示すように、保護フィルムFの端部で小さな剥離F11が発生した場合、この剥離は中心部に向けて大きく進行し、
図8の右図に示すように大きな剥離F12となる。これは、ワークステージ110の場合、ピン114によって、ワークステージ110端部から中心の吸気孔115に向けて一直線に吸気経路が形成されており、この吸気経路に沿って剥離が進行していくためである。
なお、
図8においては、ピン114を誇張して示している。
【0049】
これに対して、本実施形態におけるワークステージ10の場合、
図9の左図に示すように、同様に保護フィルムFの端部で小さな剥離F1が発生したとしても、この剥離は大きく進行しない。これは、隔壁部13によって吸気経路が吸気孔15に対して迂回させられるためである。
図9の左図に示すように、最外側の隔壁部13に設けられた切欠き部13aの位置で剥離F1が発生した場合、剥離F1は吸気経路に沿って中心に向けて進行するが、その進行は2つ目の隔壁部13でストップする。そのため、
図9の右図に示すように比較的小さい剥離F2でとどまる。
【0050】
つまり、端部で発生した剥離は、隔壁部13が形成された外周領域10bでとどまり、中心領域10aには達しない。そのため、本実施形態におけるワークステージ10は、ワークWの露光領域の平面度(平坦度)を適切に維持することができ、本実施形態におけるワークステージ10を使用した露光装置100は、ワークWの露光処理を良好に行うことができる。
なお、
図9においては、隔壁部13およびピン14を誇張して示している。
【0051】
以上説明したように、本実施形態におけるワークステージ10は、真空が供給される凹部11aが形成された基台11と、凹部11aの内側に設けられた多数のピン14と、凹部11aに真空を供給する吸気孔15と、を備え、凹部11aに真空を供給することで、ピン14の上面に有機基板であるワークWの略全面を真空吸着する。このとき、ピン14は、ワークWの略全面を保持する。
【0052】
このように、ワークWを多数のピン14によって真空吸着して保持する構成とすることで、ワークWとワークステージ10との接触面積を少なくすることができ、ワークWとワークステージ10との間に異物が挟み込まれることを抑制することができる。したがって、ワークWを適切に平面保持することができる。
【0053】
また、本実施形態におけるワークステージ10は、凹部11aの内側における端部近傍である外周領域10bに、凹部11aの端部から凹部11aの中心に向かう方向に複数段設けられた隔壁部13を備えることができる。
これにより、ワークステージ10側に剥離しやすい保護フィルムFが積層されたワークWを吸着保持した場合であっても、保護フィルムFが端部から剥離しないようにすることができる。また、ワークWの裁断時や搬送時に保護フィルムFの端部に初期剥離が発生している場合であっても、当該剥離が中心部に向けて大きく進行してしまうことを隔壁部13によって食い止めることができる。
【0054】
さらに、隔壁部13は、吸気孔15に対する吸気経路を構成する切欠き部13aを備えることができる。ここで、隔壁部13は、凹部11aの端部から凹部11aの中心に向かう方向に少なくとも2段設け、切欠き部13aは、互い違いに配置する。つまり、複数段の隔壁部13が、第1の切欠き部13aが設けられた第1の隔壁部13と、第1の隔壁部13によりも凹部11aの中心側に設けられ、第2の切欠き部13aが設けられた第2の隔壁部13と、を含む場合、第2の切欠き部13aは、第1の切欠き部13aが構成する吸気孔15に対する吸気経路を迂回させる位置に設ける。
このように、隔壁部13を少なくとも2段設け、吸気の流れを迂回させるように切欠き部13aを形成することで、上記の剥離の進行を適切に抑制することができる。
【0055】
また、ピン14は、凹部11aの内側における中心領域10aであって、ワークWの処理領域(露光領域)に対応する領域に設け、隔壁部13は、凹部11aの内側における外周領域10bであって、ワークWの非処理領域に対応する領域に設けることができる。
保護フィルムFの端部で発生した剥離は、最内側の隔壁部13の設置位置まで進行しうるが、隔壁部13をワークWの非処理領域に対応する領域に設けることで、保護フィルムFの剥離をワークWの非処理領域内に留めることができる。したがって、ワークWの処理領域においては、適切に平面保持を維持することができる。
【0056】
さらに、隔壁部13間の距離および切欠き部13aの幅は、ピン間距離以下とすることができる。この場合、隔壁部13と隔壁部13との間の溝や切欠き部13aにおけるワークWのたわみを適切に抑制することができる。
また、外周部12、隔壁部13およびピン14は、同じ高さとすることができる。この場合、ワークWを真空吸着により適切に平面保持することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態におけるワークステージ10は、ワークWとの間の異物の挟み込みを抑制し、ワークWを適切に平面保持することができる。また、本実施形態におけるワークステージ10は、剥離しやすいフィルムが積層されたワークWの当該フィルム側を吸着保持しても、フィルムの剥離を適切に抑制することができる。
したがって、このようなワークステージ10を使用した露光装置100では、デフォーカスによる露光不良を適切に抑制することができ、歩留まりの悪化を回避することができる。また、両面にフィルムが積層されたワークWに対して、適切に両面露光処理を行うことができる。
【0058】
(変形例)
図10~
図16は、本実施形態におけるワークステージ10の変形例である。
図10~
図16に示した形態においても、上記実施形態と同様の効果を有することができる。
図2に示すワークステージ10では、2重の隔壁部13にそれぞれ2個の切欠き部13aを設けているが、切欠き部13aは3個以上であってもよい。例えば
図10に示すワークステージ10Aのように、2重の隔壁部13にそれぞれ4個の切欠き部13aを設けてもよい。
【0059】
また、例えば
図11に示すワークステージ10Bのように、最内側の隔壁部13には切欠き部13aを設けなくてもよい。この場合、保護フィルムFの端部において、外側の隔壁部13よりも凹部11aの内側に達する初期剥離が発生している場合であっても、確実に最内側の隔壁部13によって剥離の進行を停止することができる。ただし、この場合、最内側の隔壁部13の外側の領域である外周領域10bにも吸気孔15が必要である。
なお、
図11では、外側の隔壁部13には切欠き部13aを設けているが、すべての隔壁部13に切欠き部13aが設けられていない構成であってもよい。ただし、この場合、隔壁部13間および最外側の隔壁部13と外周部12との間にも、それぞれ吸気孔15が必要である。
【0060】
このように、凹部11aの中心領域10aと外周領域10bとは、隔壁部13によって分離された構成であってもよい。しかしながら、この場合、上記のように外周部10bにも吸気孔15が必要であり、中心領域10aと外周領域10bとでそれぞれワークWの吸着力の制御が必要である。そのため、隔壁部13には切欠き部13aを設け、中心領域10aと外周領域10bとを連通させた構成とすることが好ましい。切欠き部13aの位置や数は、吸気孔15の位置や数に応じて適宜設定することができる。
【0061】
さらに、
図2に示すワークステージ10では、隔壁部13は2重の堀構造であるが、例えば
図12に示すワークステージ10Cのように、隔壁部13は任意の形状であってよい。隔壁部13は、吸気孔15に対する吸気経路を構成するとともに、吸気孔15に対する吸気経路を迂回させる形状であればよい。
つまり、例えば
図13に示すワークステージ10Dのように、隔壁部13は曲線形状であってもよいし、
図14に示すワークステージ10Eのように、隔壁部13は直線形状と曲線形状とを組み合わせた形状であってもよい。さらに、
図15に示すワークステージ10Fのように、隔壁部13は複雑な配置であってもよい。
【0062】
また、
図16に示すワークステージ10Gのように、シール部材Sをさらに備えていてもよい。シール部材Sは、外周部12の外側に設けられた低反発の弾性体であり、基台11の全周にわたって形成することができる。例えば、シール部材Sは、ゴムスポンジなどにより構成することができる。ワークステージ10G上にワークWが載置された場合、シール部材SはワークWの外周部分と密着する。
ここで、シール部材Sの高さは、外周部12、隔壁部13およびピン14の高さよりも高くてもよい。この場合、ワークWをワークステージ10Gに真空吸着させた際に、シール部材Sが外周部12、隔壁部13およびピン14の高さまで押し下げられ、シール部材Sの弾性力によってワークWとシール部材Sとの密着度が高まる。これにより、凹部11a内部の真空度を高めることができる。
【0063】
したがって、ワークステージ10Gは、より適切にワークWを真空吸着することができる。また、吸着面側の保護フィルムFの端部に剥離が生じている場合であっても、当該剥離の進行が適切に抑制される。
シール部材Sを備えないワークステージでは、例えば保護フィルムFに、ピン14が設けられた中心領域10aに達するような初期剥離が発生していると、当該初期剥離が発生している面を吸着面としてワークステージに真空吸着した場合に、隔壁部13が機能せず、さらに大きな剥離へと進行してしまうおそれがある。
これに対して、シール部材Sを備えるワークステージ10Gでは、上記のような初期剥離が発生している場合であっても、適切に剥離の進行を抑制することができる。これは、シール部材Sにより凹部11aを大気に対して完全に閉じた系とすることができるためであると考えられる。
【0064】
なお、上記実施形態では、ワークステージ10の凹部11aに隔壁部13とピン14とが設けられている場合について説明したが、
図5に示すようにワークWの表面に剥離しやすい保護フィルムFが積層されていない場合や、両面露光処理を行わず、且つ、第2面W2側を吸着保持した際の第2面W2の保護フィルムFの剥離が第1面W1の露光処理に支障をきたさない場合には、隔壁部13を必ずしも設ける必要はない。
また、上記実施形態では、基板保持部14がピン形状である場合について説明したが、基板保持部14はピン形状に限定されるものではなく、ある程度のワークWとの接触面積を有する支柱であってもよい。つまり、従来の平面ステージと比較してワークWとの接触面積が小さく、異物の付着を抑制可能であればよい。
【0065】
基板保持部14は、機械加工等の任意の加工方法により形成することができる。基板保持部14の加工方法は特に限定されるものではなく、また、基板保持部14の配置も
図2に示すようにX方向およびY方向にそれぞれ等間隔でなくてもよい。
また、基板保持部14は、凹部11aの内側における中心領域10aのみならず、外周領域10bにも設けられていてもよい。つまり、外周領域10bには、隔壁部13とピン14とを組み合わせて配置してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…ワークステージ、11…基台、11a…凹部、12…外周部、13…隔壁部、13a…切欠き部、14…基板保持部(ピン)、15…吸気孔、20…光照射部、30…マスク、40…投影レンズ、50…配管、100…露光装置、F…保護フィルム、R…レジスト、W…ワーク