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  • 特開-スタッド溶接用フェルール 図1
  • 特開-スタッド溶接用フェルール 図2
  • 特開-スタッド溶接用フェルール 図3
  • 特開-スタッド溶接用フェルール 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116933
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】スタッド溶接用フェルール
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/20 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B23K9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019344
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000228981
【氏名又は名称】日本スタッドウェルディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】稲本 晃士
(57)【要約】
【課題】フェルールの方向を確認する必要がなく、作業効率を向上することができるとともに、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができるようにしたスタッド溶接用フェルールを提供すること。
【解決手段】中心にスタッド挿入孔3を形成し、周壁1の軸方向の中間位置の外周面に円環状突起2を形成するとともに、円環状突起2を挟んで軸方向の両側に位置する周壁1の直径D11、D12を円環状突起2の直径D2より小径の対称形状に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心にスタッド挿入孔を形成したスタッド溶接用フェルールにおいて、周壁の軸方向の中間位置の外周面に円環状突起を形成するとともに、該円環状突起を挟んで軸方向の両側に位置する周壁の直径を円環状突起の直径より小径の対称形状に形成してなることを特徴とするスタッド溶接用フェルール。
ここで、「軸方向の中間位置」とは、両端から等距離の位置を意味する。
【請求項2】
前記周壁の直径が、軸方向の端部に向けて漸次小径になるように形成してなることを特徴とする請求項1に記載のスタッド溶接用フェルール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッド溶接用フェルールに関し、例えば、ボイラーチューブにスタッドを溶接する際に使用するスタッド溶接用フェルールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッド溶接を行う際に、溶接部近傍域の空気の流通を遮断することにより、発生したアークによって溶融した金属が、空気と接触することによって酸化されることを防止し、良好な溶接を行うことができるようにするため、セラミック製等のスタッド溶接用フェルールが使用されている。
【0003】
このスタッド溶接用フェルールは、ボイラーチューブに溶接されている消耗したスタッドに新たなスタッドを打継溶接したり、スタッドを新たに溶接したりする際にも用いられ(例えば、特許文献1参照。)、汎用のスタッド溶接用フェルールと同様、ボイラーチューブ(母材)に当接する側の周壁の直径をその反対側の周壁の直径より大径に形成し、その境界となる周壁の軸方向の中間位置を、スタッド溶接ガンに装着するために、段付き形状に形成したものが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4-71121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のボイラーチューブにスタッドを溶接する際に使用するスタッド溶接用フェルール(汎用のスタッド溶接用フェルールも同様。)は、図2(a)に示すように、軸方向に方向性を有するため、目視や暗所で作業する場合は手探りでフェルールの方向をその都度確認する必要があり、作業効率を低下させるという問題があった。
また、スタッド溶接用フェルールが、母材に当接する側の周壁の直径がその反対側の周壁の直径より大径に形成されているため、図3(a)に示すように、ボイラーチューブTのフィン部Fのような狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合、フェルールが、溶接ビードBと干渉することによって、溶接面となるフィン部Fの表面から浮いた状態となり、フェルールが、その目的を達し得ないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記スタッド溶接用フェルールが有する問題点に鑑み、フェルールの方向を確認する必要がなく、作業効率を向上することができるとともに、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができるようにしたスタッド溶接用フェルールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のスタッド溶接用フェルールは、中心にスタッド挿入孔を形成したスタッド溶接用フェルールにおいて、周壁の軸方向の中間位置の外周面に円環状突起を形成するとともに、該円環状突起を挟んで軸方向の両側に位置する周壁の直径を円環状突起の直径より小径の対称形状に形成してなることを特徴とする。
ここで、「軸方向の中間位置」とは、両端から等距離の位置を意味する。
【0008】
この場合において、前記周壁の直径が、軸方向の端部に向けて漸次小径になるように形成してなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスタッド溶接用フェルールによれば、周壁の軸方向の中間位置の外周面に円環状突起を形成するとともに、該円環状突起を挟んで軸方向の両側に位置する周壁の直径を円環状突起の直径より小径の対称形状に形成することにより、軸方向の方向性を無くすことで、フェルールの方向を確認する必要がなく、作業効率を向上することができるとともに、軸方向の両側の周壁の直径を円環状突起の直径より小径に形成することで、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができる。
【0010】
また、周壁の直径が、軸方向の端部に向けて漸次小径になるように形成することにより、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスタッド溶接用フェルールの一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は一部断面の正面図である。
図2】ボイラーチューブに溶接されている消耗した既存のスタッドに新たなスタッドを打継溶接する場合の説明図で、(a)は従来のスタッド溶接用フェルールを用いた場合、(b)は本発明のスタッド溶接用フェルールを用いた場合を示す。
図3】ボイラーチューブのフィン部にスタッド溶接を行う場合の説明図で、(a)は従来のスタッド溶接用フェルールを用いた場合、(b)は本発明のスタッド溶接用フェルールを用いた場合を示す。
図4】本発明のスタッド溶接用フェルールの変形実施例を示し、(a)は平面図、(b)は一部断面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のスタッド溶接用フェルールの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1図3に、本発明のスタッド溶接用フェルールの一実施例を示す。
このスタッド溶接用フェルールは、例えば、ボイラーチューブにスタッドを溶接する際に使用するもので、中心にスタッド挿入孔3を形成し、周壁1の軸方向の中間位置の外周面に円環状突起2を形成するとともに、円環状突起2を挟んで軸方向の両側に位置する周壁1の直径D11、D12を円環状突起2の直径D2より小径の対称形状に形成するようにしている。
ここで、「軸方向の中間位置」とは、両端から等距離の位置を意味する。
【0014】
この場合において、円環状突起2は、フェルールをスタッド溶接ガンに装着するために設けられるもので、直径D2を円環状突起2を挟んで軸方向の両側に位置する周壁1の直径D11より、2~6mm程度大径に形成するようにする。
【0015】
周壁1の直径D11、D12は、軸方向の端部に向けて漸次小径(直径D11から直径D12)になるように形成することが望ましい。
【0016】
周壁1の内周面には、等角度間隔(本実施例においては、90°間隔で4箇所。)に軸方向に延びる突条部4を形成するようにしている。
この突条部4は、周壁1の内周面とスタッドSの外周面との間隔を保持するためのもので、スタッドSとスタッド挿入孔3との間に所定の隙間を形成し、発生する高温ガスをスタッド挿入孔3の端部から噴出させるようにするものである。
突条部4のスタッド挿入孔3の内径方向の突出寸法は、スタッドSがある程度の自由度
を持ってスタッド挿入孔3に挿入される寸法であれば、特に限定されるものではなく、突条部4の内径方向の面とスタッド挿入孔3に挿入されたスタッドSの周面との間に、0.1~1.0mm程度の間隙が形成される寸法としている。
【0017】
スタッド溶接用フェルールの諸元値(スタッド径とフェルールの各部位の寸法の関係)を、表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
ところで、このスタッド溶接用フェルールは、周壁1の両端の端面を平面に形成するようにしているが、図4に示す、本発明のスタッド溶接用フェルールの変形実施例のように、周壁1の両端に、突条部4に干渉しないように、等角度間隔(本実施例においては、90°間隔で4箇所。)にガス抜き溝5を形成するようにすることもできる。
【0020】
図2(b)に、このスタッド溶接用フェルールを用いて、ボイラーチューブTに溶接されている消耗した既存のスタッドに新たなスタッドを打継溶接する状態を示す。
このスタッド溶接用フェルールは、軸方向の方向性を無くすことで、フェルールの方向を確認する必要がなく、作業効率を向上することができる。
【0021】
図3(b)に、このスタッド溶接用フェルールを用いて、ボイラーチューブTのフィン部Fにスタッド溶接する状態を示す。
このスタッド溶接用フェルールは、軸方向の両側の周壁1の直径D11、D12を円環状突起2の直径D2より小径に形成すること、さらに、周壁1の直径D11、D12は、軸方向の端部に向けて漸次小径(直径D11から直径D12)になるように形成することで、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールの軸方向の両側の周壁1が、溶接ビードBと干渉することがなく、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができる。
【0022】
このスタッド溶接用フェルールは、周壁1の軸方向の中間位置の外周面に円環状突起2を形成するとともに、円環状突起2を挟んで軸方向の両側に位置する周壁1の直径D11、D12を円環状突起2の直径D2より小径の対称形状に形成することにより、軸方向の方向性を無くすことで、フェルールの方向を確認する必要がなく、作業効率を向上することができるとともに、軸方向の両側の周壁1の直径D11、D12を円環状突起2の直径D2より小径に形成すること、さらに、周壁1の直径D11、D12は、軸方向の端部に向けて漸次小径(直径D11から直径D12)になるように形成することで、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができる。
【0023】
以上、本発明のスタッド溶接用フェルールについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない
範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のスタッド溶接用フェルールは、フェルールの方向を確認する必要がなく、作業効率を向上することができるとともに、狭小な箇所にスタッド溶接を行う場合でも、フェルールが溶接面から浮いた状態とならずに溶接を行うことができることから、暗所で作業することや狭小な箇所にスタッド溶接を行うことが多い、ボイラーチューブにスタッドを溶接する際に使用するスタッド溶接用フェルールに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 周壁
2 円環状突起
3 スタッド挿入孔
4 突条部
5 ガス抜き溝
S スタッド
T ボイラーチューブ
F フィン部
B 溶接ビード
図1
図2
図3
図4