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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116949
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】異種金属材料の接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B23K20/12 340
B23K20/12 360
B23K20/12 364
B23K20/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019367
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】船平 伸之
(72)【発明者】
【氏名】池田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 真紀
(72)【発明者】
【氏名】廣野 敦也
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA29
4E167BG04
4E167BG25
4E167BG26
(57)【要約】
【課題】従来の接合方法では、接合スペースの確保が困難であり、接合対象が大物部品に限定されていた。また、板材両面の接合時に板材の片面を順に接合することで加工時間が増えるという課題があった。
【解決手段】
2本の回転工具T1,T2により異種金属製の板材10,20,60同士を接合する方法において、異種金属製の板材10,20,60を接触させた状態で固定する第1工程、板材10,20の表面における2本の回転工具T1,T2が挿入予定位置の周囲を加圧する第2工程、板材10,20,60を介して2本の回転工具T1,T2を各々の回転軸C1,C2が同一直線上に配置して、2本の回転工具T1,T2の回転方向を逆向きに回転しながら、2本の回転工具T1,T2の先端を板材10,20内へ同時挿入する第3工程、から構成する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の回転工具により異種金属製の板材同士を接合する方法であって、前記異種金属製の板材の表面を互いに接触させた状態で固定する第1工程と、前記板材の表面における前記2本の回転工具が挿入する予定位置の周囲を加圧する第2工程と、前記板材を介して前記2本の回転工具を各々の回転軸が同一直線上になるように配置して、かつ前記2本の回転工具の回転方向が互いに逆向きとなるように回転させながら、前記2本の回転工具の先端を前記板材内へ同時に挿入する第3工程と、を有することを特徴とする異種金属材料の接合方法。
【請求項2】
前記異種金属製の板材は、少なくとも3枚以上の板材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の異種金属材料の接合方法。
【請求項3】
前記回転工具はニッケル合金製であることを特徴とする請求項1または2に記載の異種金属材料の接合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の異種金属材料(板材)同士を摩擦撹拌点接合(摩擦撹拌スポット接合)により一体化する異種金属材料の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異種金属材料同士の接合において、回転工具を直線状に移動させることで接合する摩擦撹拌接合や超音波を用いて接合する超音波接合など被接合部材を固相状態で接合する方法は、結合剤の役割をする非金属材料同士の金属間化合物の厚みなどを制御しやすいため優れた強度や特性を示すことが知られている。
【0003】
摩擦撹拌接合と超音波接合は同じ固相接合であるが、超音波接合の対象となる被接合部材は箔などの厚みが薄い素材に限られる。したがって、摩擦撹拌接合の方が被接合部材の大きさや接合方向などの制約が少なく、接合にかかる時間も短縮される。
【0004】
しかしながら、摩擦撹拌接合においても10mm以上の厚みがある板材など被接合部材の厚みが厚い材料の接合は難しく、接合強度の低下やツール寿命が短くなるなどの課題がある。それらの課題を解決する方法として、部材の両面側から接合を行う摩擦撹拌点接合(摩擦撹拌スポット接合)が提案されている。このような接合方法は、両面側からツールを挿入することで発熱量が大きくなることが大きな特長である(特許文献1ないし3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4838385号公報
【特許文献2】特許第6829343号公報
【特許文献3】国際公開2021-209168号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1ないし3に開示されている接合方法では、異種金属材料の板材を接合する際のスペースが十分に確保することが困難であり、接合対象は比較的に大物部品に限定されていた。また、板材の両面を接合する場合には、板材を片面ずつ接合することになり、全体の加工時間が増えるという問題があった。そのため、板材の表面と裏面の接合位置、特に中心の位置が離間していることで必要な接合強度が得られないという問題もあった。また、板材を片面ずつ接合することで片面側の最初の接合部分は、同一位置の反対面を接合する時に発生する熱および加圧によって当該最初の接合部分が剥離するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明の異種金属材料の接合方法は、異種金属材料の板材の接合スペースは最小限に抑えることができる。また、他の接合方法に比べて板材の接合品を迅速に製作できる。同時に、部品(板材)における接合に必要な面積も小さくできる異種金属材料の接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異種金属材料の接合方法は、2本の回転工具により異種金属製の板材同士を接合する方法において、異種金属製の板材の表面を互いに接触させた状態で固定する第1工程、これらの板材の表面における2本の回転工具が挿入する予定位置の周囲を加圧する第2工程、これらの板材を介して2本の回転工具を各々の回転軸が同一直線上になるように配置しつつ、かつ2本の回転工具の回転方向が互いに逆向きとなるように回転させながら、2本の回転工具の先端をこれらの板材内へ同時に挿入する第3工程から構成する。これらの異種金属製の板材は少なくとも3枚以上の板材から形成しても構わない。また、回転工具はニッケル合金製にすることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異種金属材料の接合方法は、2本の回転工具の回転軸が同一直線上であり、異種金属材料の板材における表側と裏側の接合点が重複しても接合できるため、部品(板材)の接合スペースは最小限に抑えることができる。
【0010】
また、本発明の異種金属材料の接合方法は、異種金属材料の板材の両面側から回転工具を挿入しており、接合時においては2箇所を同時に接合できる。
【0011】
つまり、板材における中心軸を同一とする2箇所の接合位置が同時に発熱するため、短い時間で接合できるので、他の接合方法よりも迅速に接合品を製作できる。同時に、部品(板材)における接合に必要な面積が小さくできるという効果を奏する。また、本発明の異種金属材料の接合方法は、部品(板材)の両面を同時に加圧、発熱するので、片面毎に同一の部位を接合した場合における最初の接合部分が同一位置の反対面を接合する時に発生する熱および加圧により接合面が剥離するという現象も抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の接合方法の第1工程を示す模式断面図である。
図2】本発明の接合方法の第2工程を示す模式断面図である。
図3】本発明の接合方法の第3工程を示す模式断面図である。
図4】接合品2の模式平面図である。
図5】接合品2の模式正面図である。
図6図4に示す接合部11Eの拡大図である。
図7図6に示すX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の異種金属材料の接合方法である一実施形態について図面を用いて説明する。本発明の異種金属材料の接合方法における第1工程を示す模式断面図を図1、第2工程を示す模式断面図を図2、第3工程を示す模式断面図を図3にそれぞれ示す。
【0014】
まず、図1に示す様に第2の板状部材60を2枚の板状部材(第1および第3の板状部材10,20)により図示しない接合装置の治具等を用いて挟み込み、異種金属製の板材(第1ないし第3の板状部材10,20,60)の表面を互いに接触させた状態で固定する(第1工程)。
【0015】
その後、第1ないし第3の板状部材10,20,60の表面に対向するように配置された2本の回転工具T1,T2が挿入する予定位置の周囲を加圧治具P1,P2により加圧する(第2工程)。同時に、2枚の第1および第3の板状部材10,20の方向から個別に2本の回転工具T1,T2を回転させながら第1および第3の板状部材10,20へ接近させる。
【0016】
この際、回転工具T1,T2の各回転軸C1,C2は、図2示す様に第2の板状部材60、2枚の第1および第3の板状部材10,20の厚み方向(図面上左右方向)において同一直線上になるように配置する。同時に、回転工具T1と回転工具T2は互いに逆向きになるように回転させる(互いに逆回転の関係とする)。
【0017】
回転工具T1,T2の回転数が所定の状態になった後、図3に示す様に加圧治具P1,P2により第1および第3の板状部材10,20の表面を加圧しつつ、第1および第3の板状部材10,20内へ回転工具T1,T2の先端を同時に挿入する(第3工程)。回転工具T1,T2を第1および第3の板状部材10,20から離脱することで第2の板状部材60と2枚の第1および第3の板状部材10,20の接合工程が完了する。
【0018】
なお、本実施形態では図3に示す様に接合工程における回転工具T1,T2の先端の到達位置が第1および第3の板状部材10,20内である場合を接合工程の完了としているが、接合時に使用する板材が3枚以上である場合には、接合工程における回転工具の先端位置(工具先端の挿入深さ)については特に限定しない。
【0019】
次に、前述した本発明の接合方法を用いて作製した接合品について図面を用いて説明する。本発明の接合方法を用いて作製した接合品2の模式平面図を図4、模式正面図を図5図4に示した接合品2の中央部にある接合部11の拡大図を図6図6に示す接合品2の中央部にある接合部(凹部)11EのX-X線断面図を図7にそれぞれ示す。
【0020】
前述した本発明の接合方法を用いて作製した接合品2は、図4および図5に示す様に2枚の第1および第3の板状部材11,21と1枚の第2の板状部材61から構成されており、第1および第3の板状部材11,21と1枚の第2の板状部材61は互いに異種金属製である。
【0021】
第2の板状部材61の一部(端部)は、図5に示す様に2枚の第1および第3の板状部材11,21により挟み込まれており、当該挟みこまれている箇所で摩擦撹拌点接合(摩擦撹拌スポット接合)により互いの板状部材が接合されている。
【0022】
第1の板状部材11の表面には図4に示す様に接合部(凹部)11Eが形成されており、第3の板状部材21の表面にも図7に示す様に凹部21Eが形成されている。これらの凹部11E,21Eは共に図7に示す様に同心円状に形成されており、外周部分に盛り上がり部分を有し、中心側へ向かってクレータ形状の凹部11E,21Eが形成されている。
【0023】
第1の板状部材11の凹部11Eの底面11Sの下方においては、図7に示す様に第1の板状部材11と第2の板状部材61が互いに固着している。また、第3の板状部材21の凹部21Eの底面21Sの下方では第3の板状部材21と第2の板状部材61が互いに固着している。
【0024】
言い換えると、第1の板状部材11の凹部11Eの底面11Sは、図7に示す様に第2の板状部材61の表面まで到達しておらず、第1の板状部材11と第2の板状部材61は互いに所定の間隔d11を保った状態で接合されている。
【0025】
同様に、第3の板状部材21の凹部21Eの底面21Sも図7に示す様に第2の板状部材61の表面まで到達しておらず、第3の板状部材21と第2の板状部材61は互いに所定の間隔d21を保った状態で接合されている。
【0026】
また、第1の板状部材11の凹部11Eの中心と第3の板状部材21の凹部21Eの中心は同一である。つまり、これらの2つの凹部11E,21Eは、接合品2の厚み方向(図面の上下方向)において同じ中心軸C3上に形成されている。
【0027】
なお、本実施形態では、図7に示す様に第1の板状部材11と第2の板状部材61が間隔d11、第3の板状部材21と第2の板状部材61が間隔d21を保った状態で接合されている場合を示しているが、本発明の接合方法に使用する板材が3枚以上である場合には、接合完了時における各板材の接合部(凹部)の間隔については特に限定しない。
【符号の説明】
【0028】
1,2 接合品
10,11 第1の板状部材
11E,21E 凹部
11S,21S 凹部の底面
20,21 第3の板状部材
60,61 第2の板状部材
d11,d21 間隔
C1,C2 回転工具の回転軸
C3 凹部の中心(軸)
T1,T2 回転工具
P1,P2 加圧治具

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7