(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116951
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】導電性多孔質基材シートのスプライス方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20230816BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230816BHJP
【FI】
H01M4/88 C
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019373
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】民宮 尚美
(72)【発明者】
【氏名】蓑毛 路子
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB03
5H018BB06
5H018BB08
5H018DD08
5H018EE06
5H018EE17
5H018HH03
5H018HH08
5H018HH10
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】導電性多孔質基材シートのロスを低減でき、ガス拡散電極の加工効率を上げることができるスプライス方法を提供することを課題とする。
【解決手段】2つの導電性多孔質基材シートを接続するスプライス方法であって、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域で熱硬化性樹脂系接着剤を上下から挟み、熱硬化性樹脂系接着剤を挟んだ部分を加熱しながら基材面と垂直方向に加圧して接着することを特徴とするスプライス方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの導電性多孔質基材シートを接続するスプライス方法であって、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域で熱硬化性樹脂系接着剤を上下から挟み、熱硬化性樹脂系接着剤を挟んだ部分を加熱しながら基材面と垂直方向に加圧して接着することを特徴とするスプライス方法。
【請求項2】
前記2つの導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域で挟んだ状態での、前記熱硬化性樹脂系接着剤の前記導電性多孔質基材シートの長手方向における長さが5~30mmであることを特徴とする請求項1に記載のスプライス方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂系接着剤を前記2つの導電性多孔質基材シートで挟み込む際に、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部と前記熱硬化性樹脂系接着剤の距離、第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部と前記熱硬化性樹脂系接着剤の距離を、それぞれ5~10mm空けることを特徴とする請求項1または2に記載のスプライス方法。
【請求項4】
加熱しながら基材面と垂直方向に加圧して接着する際の、圧力が1~120kPa、温度が120~270℃、加熱し加圧する時間が10~120秒であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のスプライス方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂系接着剤がポリイミド系接着剤またはエポキシ系接着剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のスプライス方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂系接着剤が、テープ状接着剤であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のスプライス方法。
【請求項7】
複数の導電性多孔質基材ロールを用いたガス拡散電極の製造方法であって、一つの導電性多孔質基材ロールから巻き出した導電性多孔質基材シートについて下記工程(A)~(C)を行った後、加工を終えた前記一つの導電性多孔質基材ロールから巻き出された導電性多孔質基材シートと新しい導電性多孔質基材ロールから巻き出された導電性多孔質基材シートとを請求項1~6のいずれかに記載のスプライス方法で接続することを繰り返すことで、複数の導電性多孔質基材ロールについて下記工程(A)~(C)を連続で行うことを特徴とする、ガス拡散電極の製造方法。
工程(A):導電性多孔質基材シート上に導電性粒子、撥水性樹脂、分散剤および分散媒で構成される塗液を塗布する工程
工程(B):工程(A)後に導電性多孔質基材シートを乾燥させ塗液中の分散媒を除去する工程
工程(C):工程(B)後に塗液中の導電性粒子と撥水性樹脂を焼結する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池に好適に用いられる導電性多孔質基材シートについて、2つの導電性多孔質基材シートを接続するスプライス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得る固体高分子型燃料電池は、一般的に、セパレータ、ガス拡散電極、触媒層、電解質膜、触媒層、ガス拡散電極、セパレータを、この順に積層して構成される。ガス拡散電極基材にはセパレータから供給されるガスを触媒層へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、炭素繊維などからなる導電性多孔質基材の表面に微多孔層を形成したガス拡散電極が広く用いられている。
【0003】
ガス拡散電極は、ロール状の導電性多孔質基材シートを巻き出し、導電性多孔質基材の片方の面に、微多孔層を形成するための、導電性粒子、撥水性樹脂、分散剤および分散媒で構成される塗液を塗布する工程の後、導電性多孔質基材を乾燥させて塗液中の分散媒を除去する工程、さらに塗液中の導電性粒子と撥水性樹脂を焼結する工程を経て、ロール状に巻き取られ製造される。
【0004】
ここで導電性多孔質基材シート上に塗液を塗布する際に、導電性多孔質基材シートに数m~数百mの塗液を塗布できない部分(塗布開始時には塗布装置から巻取装置までの間、塗布終了時には巻出装置から塗布装置までの間)が存在するため、導電性多孔質基材にロスが生じる。これに対し、すでに加工を終えた導電性多孔質基材ロールから巻き出された導電性多孔質基材シートと、次に加工を行う導電性多孔質基材ロールから巻き出された導電性多孔質基材シートの2つをスプライスすることで、ロスを低減できることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の導電性多孔質基材とフィルムの端部同士を重ね合わせ、その重なり部分に接合材を貫通させスプライスする方法では、2つのシートの位置ずれが生じることに加え、スプライス部が工程を走行する際、接合材が工程を傷付けることがあった。加えて、特許文献1で使用している熱可塑性樹脂を用いてスプライスをすると、高温下でスプライス部が剥離することがあった。
【0007】
本発明は、2つの導電性多孔質基材シートをスプライスする際および後工程において、基材の破断や工程の損傷が起きないスプライス方法を提供することで、導電性多孔質基材シートのロスを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、2つの導電性多孔質基材シートを接続するスプライス方法であって、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域で熱硬化性樹脂系接着剤を上下から挟み、熱硬化性樹脂系接着剤を挟んだ部分を加熱しながら基材面と垂直方向に加圧して接着することを特徴とするスプライス方法である。
【0009】
また、本発明は、複数の導電性多孔質基材ロールを用いたガス拡散電極の製造方法であって、一つの導電性多孔質基材ロールから巻き出した導電性多孔質基材シートについて下記工程(A)~(C)を行った後、加工を終えた当該一つの導電性多孔質基材ロールから巻き出された導電性多孔質基材シートと新しい導電性多孔質基材ロールから巻き出された導電性多孔質基材シートとを本発明のスプライス方法で接続することを繰り返すことで、複数の導電性多孔質基材ロールについて下記工程(A)~(C)を連続で行うことを特徴とする、ガス拡散電極の製造方法である。
工程(A):導電性多孔質基材シート上に導電性粒子、撥水性樹脂、分散剤および分散媒で構成される塗液を塗布する工程
工程(B):工程(A)後に導電性多孔質基材シートを乾燥させ塗液中の分散媒を除去する工程
工程(C):工程(B)後に塗液中の導電性粒子と撥水性樹脂を焼結する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性多孔質基材シートのスプライス方法を用いれば、導電性多孔質基材シートのロスを低減でき、ガス拡散電極の加工効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のスプライス方法でスプライスする部分の概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1を参照しながら、本発明のスプライス方法を説明する。
【0013】
本発明のスプライス方法では、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2で熱硬化性樹脂系接着剤3を上下から挟み、熱硬化性樹脂系接着剤3を挟んだ部分を加熱しながら、基材面と垂直方向に加圧することにより、両端部領域を接着する。
図1では第1の導電性多孔質基材シート1が下方から、第2の導電性多孔質基材シート2が上方から、熱硬化性樹脂系接着剤3を挟んでいるが逆であってもかまわない。
【0014】
熱硬化性樹脂系接着剤3は、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤またはアクリレート系接着剤が好ましい。特に、耐熱性を有するため、エポキシ系接着剤またはポリイミド系接着剤が好適に用いられる。
【0015】
熱硬化性樹脂系接着剤3は、液状のものを直接導電性多孔質基材シート上に塗布してもよいし、軽剥離シート上に塗布形成された状態で提供されるもの(テープ状接着剤)を導電性多孔質基材シート上に転写してもよいが、均一な厚みで形成することができるのでテープ状接着剤を用いた方が好ましい。
【0016】
液状の熱硬化性樹脂系接着剤としては、スリーエムジャパン(株)製のEW2030(エポキシ系接着剤)、セメダイン(株)製の“セメダイン(登録商標)”EP106NL(エポキシ系接着剤)などが挙げられる。また、テープ状の熱硬化性樹脂系接着剤としては、東レ(株)製の“ファルダ(登録商標)”TSAシリーズ(エポキシ系接着剤)“ファルダ(登録商標)”LNAシリーズ(ポリイミド系接着剤)などが挙げられる。特に、耐熱性の高いテープ状のポリイミド系接着剤である東レ(株)製の“ファルダ(登録商標)”LNAシリーズが好ましい。本発明において、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1上に、熱硬化性樹脂系接着剤3を塗布または転写などにより形成した後、第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2を、2つの導電性多孔質基材シートで熱硬化性樹脂系接着剤3を挟むようにして設置する際、2つの導電性多孔質基材シートの相対位置を調整することにより、スプライスをした箇所の前後での2つの導電性多孔質基材シートの幅方向の位置ずれや長手方向の角度のずれを防止できるので、導電性多孔質基材シートの搬送時の蛇行や、不均一な張力発生による破断を防止できる。そのため、熱硬化性樹脂系接着剤3は、2つの導電性多孔質基材シートの位置や角度を調整するときの温度、すなわち常温では、接着力を発現せず、加熱した際にのみ接着力を発現するものが好ましい。常温では接着力を発現しない熱硬化性樹脂系接着剤としては、上記の東レ(株)製の“ファルダ(登録商標)”TSAシリーズや“ファルダ(登録商標)”LNAシリーズなどが挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂系接着剤3の厚みは10~50μmであることが好ましい。熱硬化性樹脂系接着剤3の厚みが10μm以上であると、熱硬化性樹脂系接着剤3を2つの導電性多孔質基材シートの間に挟み、加熱および加圧する際、熱硬化性樹脂系接着剤3が完全に導電性多孔質基材シートに浸み込まずに一部が表面に残るので、十分な接着力を得ることができる。一方、熱硬化性樹脂系接着剤3の厚みが50μm以下であると、硬化後の熱硬化性樹脂系接着剤3の剛性が高くなり過ぎないので、工程中で導電性多孔質基材シートがガイドロールなどに沿って曲がる際などに破断しにくくなる。
【0018】
熱硬化性樹脂系接着剤の導電性多孔質基材シート長手方向における長さLは5~30mmであることが好ましい。当該長さLが5mm以上であると、硬化後の熱硬化性樹脂系接着剤3の接着力が十分となる。一方、当該長さLが30mm以下であると、剛性の高い硬化後の熱硬化性樹脂系接着剤3の占める面積が小さくなるので、工程中で導電性多孔質基材シートがガイドロールなどに沿って曲がる際などに破断しにくくなる。
【0019】
熱硬化性樹脂系接着剤3は、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部E12および第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部E22から5~10mmの距離(クリアランス)を空けて形成することが好ましい。当該端部E12およびE22からのクリアランスh1およびh2が5mm以上であると、加熱および加圧する際に、熱硬化性樹脂系接着剤3が当該端部E12およびE22より外側にはみ出すことを防ぐことができ、工程の汚染を抑制することができる。一方、当該端部E12およびE22からのクリアランスh1およびh2が10mm以下であると、当該端部と熱硬化性樹脂系接着剤とのクリアランスh1およびh2が小さくなり非接着部が少なくなるので、工程中に導電性多孔質基材シートのスプライス部がガイドロール上に沿って曲がる際に、非接着部を起点として導電性多孔質基材シートが破断することを避けることができる。
【0020】
第1の導電性多孔質基材シートと第2の導電性多孔質基材シートが重なる部分の長手方向長さSは15~45mmであることが好ましい。当該長さSが15mm以上であると、第1の導電性多孔質基材シート1、熱硬化性樹脂系接着剤3、第2の導電性多孔質基材シート2の3層から成るスプライス部の機械的強度が大きくなるので、工程中で導電性多孔質基材シートが破断することを抑えることができる。一方、当該長さSが45mm以下であると、ガス拡散性電極として使用できる面積が増えるので、導電性多孔質基材シートのロスを低減できる。
【0021】
導電性多孔質基材シートとしては、炭素繊維織物、炭素繊維抄紙体、炭素繊維不織布、カーボンフェルト、カーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素繊維を含む多孔質基材が用いられる。
【0022】
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系、レーヨン系などが挙げられる。中でもPAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維が、機械強度に優れていることから好ましく用いられる。また、レーヨン繊維やアクリル繊維、セルロース繊維などの天然繊維や合成繊維を混合しても良い。
【0023】
導電性多孔質基材シートは、撥水処理が施されたものが好適に用いられる。撥水処理は、フルオロアルキル鎖を有するフッ素樹脂などの撥水性樹脂を用いて行うことが好ましい。上記フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)などが挙げられる。
【0024】
本発明の導電性多孔質基材シートの厚みは、90~180μmであることが好ましい。ここで、導電性多孔質基材シートの厚みは両表面を0.15MPaの圧力で挟んだときの厚みである。厚みが90μm以上であると、機械強度が保たれる。一方で、厚みが180μm以下であると、導電性多孔質基材シートを用いて製造されるガス拡散電極の抵抗が低減し、面直方向のガス拡散性が向上する。
【0025】
導電性多孔質基材シートとしては排水性を高める目的で撥水処理を行ったものを用いてもよい。撥水処理は撥水性樹脂を含有した液に導電性多孔質基材を浸漬した後、乾燥し、適宜撥水性樹脂を導電性多孔質基材内部に濡れ広がせるための加熱処理をすることにより、撥水性樹脂が内部に付着した導電性多孔質基材シートを得る。
【0026】
本発明の微多孔層は、ガス拡散電極を構成する層であり、導電性多孔質基材の一方の表面に形成された、導電性粒子および撥水性樹脂を含有する層である。
【0027】
導電性粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素繊維などが用いられる。なかでも安価なカーボンブラックが好適に用いられる。
【0028】
上記微多孔層が含む撥水性樹脂としては、化学的な安定性、撥水性などの点からフルオロアルキル鎖を有するフッ素樹脂が好適であり、上記、導電性多孔質基材を撥水処理する際に好適に用いられるフッ素樹脂と同様、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)などが挙げられる。
【0029】
一般にフッ素樹脂は水や有機溶剤などに対して不溶であるため、微多孔層形成用の塗液を製造する際には、微粒子状に加工された撥水性樹脂の分散液を用いることが好ましい。微粒子状の撥水性樹脂の分散液としては、“ポリフロン(登録商標)”D-210C、ND-110(ダイキン工業(株)製)、120-JRB、31-JR(三井・ケマーズフロロプロダクツ(株)製)、などが挙げられる。
【0030】
本発明の微多孔層の目付は10~35g/m2であることが好ましい。微多孔層の目付が10g/m2以上であると、導電性多孔質基材の表面から突き出した炭素繊維を覆うので、炭素繊維が電解質膜を傷つけることを抑えることができ好ましい。また、ガス拡散電極と触媒層との接触抵抗を下げることや電解質膜の乾燥を防ぐことができるので好ましい。また、微多孔層の目付が35g/m2以下であると、排水性が良好となるので好ましい。
【0031】
本発明のガス拡散電極の厚みは、90~200μmであることが好ましい。ここで、ガス拡散電極の厚みは両表面を0.15MPaの圧力で挟んだときの厚みである。ガス拡散電極の厚みが90μm以上であると、機械強度が保たれ、製造工程でのハンドリングが容易である。一方、ガス拡散電極の厚みが200μm以下であると、ガス拡散性が高まり、電気抵抗が低減するので、燃料電池の発電性能が向上する。ガス拡散電極の厚みは、導電性多孔質基材と微多孔層のそれぞれの厚みを適宜調整することで調整することができる。
【0032】
次に、本発明のスプライス方法の一例について詳細に説明する。
【0033】
スプライスが必要な2つの導電性多孔質基材ロールが巻出装置と巻取装置にそれぞれ設置され、それぞれのロールから巻き出された2つの導電性多孔質基材シートの端部が突き合わさった部分でスプライスを行う。ここで、スプライスを行う状況としては、加工を終えた旧ロールと次に加工を行う新ロールの間を接合する場合や、工程中の不具合により破断したシートを繋ぎ合わせて工程を再開する場合などが挙げられる。以下、巻出装置側の導電性多孔質基材ロールから巻き出された基材を第1の導電性多孔質基材シート1、巻取装置側の導電性多孔質基材ロールから巻き出された基材を第2の導電性多孔質基材シート2として説明する。
【0034】
スプライスは以下の手順で行われる。なお、以下手順における第1の導電性多孔質基材シート1と第2の導電性多孔質基材シート2を入れ替えて行っても良い。
(1)第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1の位置調整をする。
(2)第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1上に熱硬化性樹脂系接着剤3を形成する。
(3)第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2の位置調整をし、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2とで熱硬化性樹脂系接着剤3を挟む。
(4)加熱および基材面と垂直方向からの加圧を同時に行った状態で、所定の時間保持する。
【0035】
以下、上述の手順について詳細に説明する。
【0036】
(1)第1の導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11が合わせられるべき位置に位置合わせ線が表示されている載置台の上に載せ、その線上に第1の導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11の位置が合うように調整する。その後、第1の導電性多孔質基材シート1の位置を固定する。固定の際には、弱粘着テープ、クランプ、おもりなどが好適に使用される。なお、載置台は加熱機構を有するホットプレートであることが好ましい。
【0037】
(2)熱硬化性樹脂系接着剤3の形成方法に関し、熱硬化性樹脂系接着剤3が液状の場合、ディスペンサやシリンジによる直接塗布、またはグラビアロールなどで液膜を転写する方法などにより、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1の所定の位置に熱硬化性樹脂系接着剤3を形成する。ここで、次工程の第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2との位置調整を容易にするために、適宜熱硬化性樹脂系接着剤3を常温または加熱処理により乾燥させて常温での熱硬化性樹脂系接着剤3の接着力を低減することもできる。一方、熱硬化性樹脂系接着剤3が軽剥離シート上に塗布形成されたテープ状接着剤の場合、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1の所定の位置に、熱硬化性樹脂系接着剤3側が第1の導電性多孔質基材シート1に接するように設置する。熱硬化性樹脂系接着剤3が常温で接着力を有しない場合は、加熱しながら熱硬化性樹脂系接着剤3を第1の導電性多孔質基材シート1に貼り合わせてもよい。例えば、載置台を加熱しながらハンドローラーで貼り合わせる方法が挙げられる。次いで、熱硬化性樹脂系接着剤3の軽剥離シートを除去し、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1上に熱硬化性樹脂系接着剤3を形成する。
【0038】
(3)第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1に形成した熱硬化性樹脂系接着剤3の上に第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2を設置する。設置の際、第1の導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11の位置調整をした際と同様に、載置台に記された位置合わせ線上に、第2の導電性多孔質基材シートの幅方向端部E21が合うように位置を調整し、熱硬化性樹脂系接着剤3を第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2で挟む。
【0039】
(4)第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1と第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2で、熱硬化性樹脂系接着剤3を挟んだ部分を加熱しながら加圧する方法について説明する。まず、加熱の際は、第1の導電性多孔質基材シート1側と第2の導電性多孔質基材シート2側の少なくとも片側から加熱すれば良い。加熱方法として、上記のような加熱機構を有する載置台(ホットプレート)を用いた直接加熱や、ラジエーションヒーター、高周波誘導加熱を用いた非接触加熱が挙げられる。加熱温度は、120~270℃であることが好ましい。加熱温度が120℃以上であると、熱硬化性樹脂系接着剤3の流動性が高まり導電性多孔質基材との接着力が向上するので、後工程中に剥離したり、ここを起点として破断したりすることを抑制できる。一方で、加熱温度が270℃以下であると、熱硬化性樹脂系接着剤3が流動しすぎて完全に基材に浸み込むことにより2つの導電性多孔質基材シートの間に非接着部が生じることや、熱硬化性樹脂系接着剤3が2つの導電性多孔質基材シートの長手方向端部(E12、E22)からはみ出すことを抑制できる。
【0040】
一方、加圧の際は、2つの導電性多孔質基材シートで熱硬化性樹脂系接着剤3を挟んだ部分の面に対して垂直に加圧する。加圧の方法としては、上記ハンドローラーによる加圧、エアシリンダを推力とした機構や、おもりを用いる方法が挙げられる。加圧圧力は、1~120kPaであることが好ましい。圧力が1kPa以上であると、導電性多孔質基材と熱硬化性樹脂系接着剤3とが面内で一様に接触でき、また、加熱により低粘度化した樹脂が導電性多孔質基材に適度に浸み込むので接着力が高まる。一方で、圧力が120kPa以下であると、熱硬化性樹脂系接着剤3が完全に導電性多孔質基材に浸み込むことにより、2つの導電性多孔質基材間に非接着部が生じることや、熱硬化性樹脂系接着剤3が2つの導電性多孔質基材シートの長手方向端部(E12、E22)からはみ出すことを抑制できる。
【0041】
上記加熱および加圧を同時に行う時間は、10~120秒であることが好ましい。加熱および加圧時間が10秒以上であると、熱硬化性樹脂系接着剤3と導電性多孔質基材との接着力が十分となり、120秒以下であると、2つの導電性多孔質基材の非接着部や熱硬化性樹脂系接着剤3のはみ出しを抑制できる。
【0042】
次に、ガス拡散電極の製造方法について説明する。
【0043】
ガス拡散電極は導電性多孔質基材の少なくとも片方の面に微多孔層を形成することで製造される。微多孔層は、導電性粒子と撥水性樹脂を水やアルコールなどの分散媒に分散させた塗液を導電性多孔質基材上に塗布し、加熱処理を行うことにより形成できるが、当該塗液の作製時に、分散剤や増粘剤を添加すると、導電性粒子や撥水性樹脂の分散媒中における分散安定性が高まるので好ましい。分散剤としては、金属成分が少ないことからノニオン系の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル系の“トリトン(登録商標)”X-100(ナカライテスク(株)製)などがその例として挙げられる。また、塗液を高粘度に保つために、増粘剤を添加することが有効である。増粘剤としては、例えば、メチルセルロース系、ポリエチレングリコール系、ポリビニルアルコール系などが好適に用いられる。
【0044】
これらの分散剤や増粘剤は、同じ物質に二つの機能を持たせても良く、またそれぞれの機能に適した素材を選んでも良い。ただし、増粘剤と分散剤を個別に選定する場合には、増粘剤として導電性粒子の分散性および撥水性樹脂の分散性を損なわないものを選ぶことが好ましい。
【0045】
上記、混合物を、ホモジナイザーやプラネタリーミキサー、超音波分散機などを用いて混練して、微多孔層形成用の塗液を得る。
【0046】
微多孔層形成用の塗液の導電性多孔質基材への塗布は、市販されている各種の塗布装置を用いて行うことができる。塗布方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、凹版印刷、グラビア印刷、スプレーコーティング、ダイコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ロールナイフコーティングなどが使用できる。
【0047】
導電性多孔質基材上に微多孔層を塗布した後、60℃~150℃の温度で導電性多孔質基材を乾燥させ塗液中の分散媒を除去し、次いで導電性粒子と撥水性樹脂を焼結し、分散剤や増粘剤の添加物の分解除去と撥水性樹脂の溶融を促進する。このとき、微多孔層中の撥水性樹脂だけではなく導電性多孔質基材に付着している撥水性樹脂も溶融して、これらが他の構成材料である、炭素繊維や樹脂炭化物、導電性粒子などの表面に濡れ広がる。それにより、導電性多孔質基材と微多孔層の排水性が高まるので、これを用いた燃料電池の性能が向上する。こうして、導電性多孔質基材上に微多孔層が形成されたガス拡散電極を得る。
【実施例0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0049】
<導電性多孔質基材シートの製造方法>
東レ(株)製ポリアクリロニトリル系炭素繊維“トレカ(登録商標)”T300(平均繊維径:7μm)を12mmの長さにカットし、水中に分散させて連続的に抄紙した後、ポリビニルアルコールの10質量%水溶液をスプレーコーティングし、乾燥することで、目付が20g/m2、幅450mmで長さ100mの炭素繊維からなる長尺の抄紙体を得た。当該抄紙体100質量部に対して、付着したポリビニルアルコールの付着量は20質量部だった。
【0050】
次に、鱗片状黒鉛(平均粒子径:5μm)とフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の質量比1:1の混合物)、メタノールを5:10:85の質量比で混合した樹脂組成物溶液を用意した。そして、抄紙体中の炭素繊維100質量部に対してフェノール樹脂と鱗片状黒鉛の合計が130質量部になるように、上記炭素繊維抄紙体上に樹脂組成物溶液をスプレーコーティングにて連続的に塗布し、100℃で5分間乾燥した。
【0051】
次いで、プレス成型機にて樹脂組成物を付着させた抄紙体を180℃で5分間加熱圧縮処理した。ここで、抄紙体とプレス成形機の熱板の間には離型紙を介して熱板と抄紙体が接着しないようにし、また、上下の熱板の周縁部にはスペーサーを配置して加熱圧縮後の抄紙体の厚み調整を行った。また、ロール状の抄紙体を所定の間隔で断続的にプレス成型機に挿入して成形を行うことを繰り返し、ロール全面を加熱圧縮した。その後、加熱炉にて、窒素雰囲気で2400℃の加熱を行い炭化させた後に巻き取り、ロール状に巻き取られた導電性多孔質基材シートを得た。
【0052】
<スプライスに使用した接着剤>
接着剤A:“ファルダ(登録商標)”LNA-31(東レ(株)製、ポリイミド系接着剤、厚さ:40μm、テープ状)
接着剤B:“セメダイン(登録商標)”EP106NL(セメダイン(株)製、エポキシ系接着剤、液状、常温での接着剤粘度:25Pa・s)
接着剤C:“カプトン(登録商標)”760H #25((株)寺岡製作所製、シリコン系接着剤(熱可塑性樹脂系接着剤)、テープ状)
接着剤D:“スコッチ(登録商標)”PPS-15(3M製、アクリル系接着剤(熱可塑性樹脂系接着剤)、テープ状)
接着剤E:“アロンアルファ(登録商標)”911T5(東亜合成(株)製、シアノアクリレート系接着剤(熱可塑性樹脂系接着剤)、液状、常温での接着剤粘度:10Pa・s)。
【0053】
<スプライス部の評価方法>
スプライス部に対して、以下に挙げる3点の項目を評価した。
(1)接着剤の基材端部からのはみ出し
(2)基材搬送時の様子
(A)破断
(B)蛇行
(C)工程汚染
(D)剥離の有無
(3)350℃の工程通過性
【0054】
以下、上述の評価方法について詳細に説明する。
【0055】
(1)接着剤の基材端部からのはみ出しに関し、スプライス部の接着剤が2つの導電性多孔質基材シートの長手方向端部(E12、E22)からはみ出しているかを目視で確認した。表1中では、はみ出しがあったものには「あり」、はみ出しがなかったものには「なし」と記載した。
【0056】
(2)基材搬送時の様子に関し、導電性多孔質基材シートを張力200N/mをかけながら搬送し、スプライス部の前後の位置での(A)破断や(B)蛇行、(C)工程汚染の有無、スプライス部の幅方向端部における(D)剥離の有無および程度を目視で確認した。表1中では、搬送時の様子に破断、蛇行、工程汚染、剥離が見られなかったものを「○」、破断、蛇行、工程汚染、剥離が多少見られたが問題はない程度であったものを「△」、破断、蛇行、工程汚染、剥離により問題が生じたものに「×」を記載した。
【0057】
(3)350℃の工程通過性に関し、上記(2)の評価の後、破断しなかった水準の導電性多孔質基材シートを張力200N/mで350℃に加熱した炉内を走行させ、接着が維持されるかを確認した。表1中では接着が維持されたものを「○」、接着部が剥離したものを「×」、上記(2)の評価の後、破断したものは評価ができなかったので「-(評価不能)」と記載した。
【0058】
(実施例1)
まず、450mmの幅の第1の導電性多孔質基材ロールをロール巻出装置に設置し、ロールから巻き出した第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1を、450mmの間隔で位置合わせ線が表示されたホットプレートの上に置き、その線と第1の導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11が同じ位置になるように調整し、マスキングテープ(弱粘着テープ)で第1の導電性多孔質基材シート1をホットプレート上に固定した。
【0059】
次に、ホットプレートを100℃に加熱した後、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1上に、10mm×440mmの大きさの接着剤Aを、440mmの辺が第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部E12と平行になるようにハンドロールにて貼り合わせることにより形成した(
図1のLが10mmでWが440mmとなるようにした)。このとき、第1の導電性多孔質基材シート1において、幅方向端部からのクリアランス(
図1のh3およびh4)がそれぞれ5mm、長手方向端部E12からのクリアランス(
図1のh1)が7.5mmとなるようにした。
【0060】
次に、第2の導電性多孔質基材ロールをロール巻取装置に設置し、ロールから第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2を、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1上に来るように巻き出した。
【0061】
次に、第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2と第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1の重なる長さ(
図1のS)が25mmで、かつホットプレート上に表示された線と第2の導電性多孔質基材シートの幅方向端部E21の位置が同じになるように調整した(この調整により
図1のh2が7.5mmとなる)。
【0062】
次に、ホットプレートを200℃に加熱し、上記2つの導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域が重なる部分を覆うように、圧力が20kPaに相当するおもりを置き、30秒保持することで、当該2つの導電性多孔質基材シートをスプライスした。スプライス部において、2つの導電性多孔質基材は十分接着されており、当該2つの導電性多孔質基材シートの長手方向端部(
図1のE12およびE22)からの接着剤のはみ出しもなかった。
【0063】
次いで、スプライス部において、第1の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T1を固定したマスキングテープを除去し、第2の導電性多孔質基材ロールを設置した巻取装置を駆動し、当該2つの導電性多孔質基材シートが連結した導電性多孔質基材シートを巻き取った。
【0064】
さらに、得られた導電性多孔質基材シートに200N/mの張力を付与した状態でガイドロールを介しての搬送を行ったところ、破断や蛇行がなく搬送することが可能で、工程の汚染やスプライス部の幅方向端部における剥離もなかった。また、350℃の加熱工程も同じ張力にて通過させることができた。
【0065】
(実施例2~13)
接着剤を貼り合わせる位置、接着剤の長さ、加熱温度、加圧圧力、加熱し加圧する時間を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にスプライスした。なお、2つの導電性多孔質基材のシートが重なる部分の長さSは、実施例10では12mm、実施例11では40mm、実施例12では13mm、実施例13では45mmとした。結果を表1に示す。
【0066】
実施例2、6、8、12では、接着力がやや弱いため、導電性多孔質基材シート搬送時にスプライス部の導電性多孔質基材の幅方向の端部で一部剥離した。また、実施例5、7、9、10では、接着剤が導電性多孔質基材の端部から一部はみ出し、導電性多孔質基材シート搬送時にガイドロールなどを一部汚染した。また、実施例11では、スプライス部において熱硬化性樹脂系接着剤3が形成されていない両端部のクリアランス(h1およびh2)が大きく、搬送時にここを起点に一部剥離が見られた。また、実施例13では、熱硬化性樹脂系接着剤3の導電性多孔質基材シート長手方向における長さLが35mと大きく剛性が高いため、導電性多孔質基材がガイドロールに沿って曲がる際に一部割れが生じた。
【0067】
(実施例14)
接着剤を接着剤Bに変えて、加圧する圧力を表1の通りにした以外は、実施例1と同様にスプライスした。なお、接着剤Bは液状であるため、ディスペンサを用いて導電性多孔質基材上に接着剤Bを吐出し形成した。結果を表1に示す。
【0068】
接着剤Bは常温で接着性があるので、第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2の位置調整をする際に、位置調整を終える前に導電性多孔質基材シート同士が貼り付いてしまったため、2つの導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11とE21の位置がずれ、導電性多孔質基材シート搬送時に基材がやや蛇行した。
【0069】
(比較例1、2)
接着剤の種類を表2の通りにした以外は、実施例1と同様にスプライスした。結果を表2に示す。
【0070】
比較例1および2では、350℃の加熱工程通過時に接着が維持されずスプライス部で導電性多孔質基材シートが破断した。また、比較例2で用いた接着剤は常温で接着性があるので、スプライス時の位置調整をする際に当該2つの導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11とE21の位置がずれ、導電性多孔質基材シート搬送時に基材がやや蛇行した。
【0071】
(比較例3)
接着剤を接着剤Eに変えて、加圧する圧力を表2の通りにした以外は、実施例14と同様にスプライスした。結果を表2に示す。
【0072】
接着剤Eは常温で接着力があるので、第2の導電性多孔質基材シートの長手方向端部領域T2の位置調整をする際に、位置調整を終える前に導電性多孔質基材シート同士が貼り付いてしまったため、当該2つの導電性多孔質基材シートの幅方向端部E11とE21の位置がずれ、導電性多孔質基材シート搬送時に基材が蛇行し、破断に至った。
【0073】
【0074】