(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116994
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】耐候性試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019437
(22)【出願日】2022-02-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA03
2G050BA05
2G050BA09
2G050BA10
2G050BA11
2G050CA03
(57)【要約】
【課題】加圧時に容器本体内の水を排出する際に、容器本体内の圧力変化を抑制しつつ、容器本体内の水を排出することの可能な加圧装置を提供する。
【解決手段】加圧装置2は、加圧容器11内に気体を導入するガス導入管13、加圧容器11内の気圧を調整する圧力調整器16、加圧容器11内の試料Sに水を噴霧する水噴霧管17、加圧容器11内の水を排出する排水管19に設けられた排水タンク20a、加圧容器11と排水タンク20aとの間に設けられた流入バルブ20b、及び排水タンク20a内の水を排出する排出バルブ20cを備える。排出バルブ20cを閉状態、流入バルブ20bを開状態にして加圧容器11内の水を排水タンク20aに移動した後、流入バルブ20bを閉状態、排出バルブ20cを開状態にして排水タンク20a内の水を排出することで、加圧容器11内の水を排出する際の、加圧容器11内の圧力変動を抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試料が配置される容器本体と、
当該容器本体内に気体を導入するガス導入部と、
前記容器本体内の気圧を調整する圧力調整部と、
前記容器本体内に液体を供給する液体供給部と、
前記容器本体に接続される排液タンクと、
前記容器本体と前記排液タンクとの間に設けられ開閉可能な流入バルブと、
前記排液タンク内の前記液体を排出する開閉可能な排出バルブと、
を備えることを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
前記排液タンクを一又は複数有し、
前記排液タンクのうち前記流入バルブが同時に開状態となる排液タンクの容積の総和は、前記容器本体の容積以下であることを特徴とする請求項1に記載の加圧装置。
【請求項3】
前記試料の温度を調整する温度調整部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の加圧装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧装置と、
前記加圧装置の容器本体の外に配置された光源と、を有し、
前記容器本体は光を透過する光透過部を備え、
前記光源からの光を、前記光透過部を透過して前記容器本体内に配置された試料に照射することを特徴とする耐候性試験装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧装置と、
前記加圧装置の容器本体内に配置され、前記加圧装置内の試料に光照射を行う光源と、を備えることを特徴とする耐候性試験装置。
【請求項6】
加圧装置の容器本体内の液体の排液方法であって、
前記容器本体と当該容器本体に接続された排液タンクとの間に開閉可能な流入バルブを設けると共に、前記排液タンク内の前記液体を排出する開閉可能な排出バルブを設け、
前記排出バルブを閉状態にし前記流入バルブを開状態にして、前記容器本体内の前記液体を前記排液タンクに移動させた後、前記流入バルブを閉状態にし前記排出バルブを開状態に切り替えて、前記排液タンク内の前記液体を排出することを特徴とする排液方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧装置の容器本体内に試料を配置する工程と、
前記ガス導入部により前記容器本体内に気体を導入すると共に前記圧力調整部により前記容器本体内の気圧を所定気圧に調整する工程と、
前記液体供給部により前記容器本体内に液体を供給する工程と、
前記容器本体内に前記液体を供給した後、前記排出バルブを閉状態にし前記流入バルブを開状態にして、前記容器本体内の前記液体を前記排液タンクに移動させる工程と、
前記容器本体内の前記液体を前記排液タンクに移動させた後、前記流入バルブを閉状態に切り替える工程と、
前記流入バルブを閉状態に切り替えた後、前記排液タンク内の前記液体を排出する排出バルブを開状態に切り替えて前記排液タンク内の前記液体を排出する工程と、
を備えることを特徴とする耐候性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧装置、耐候性試験装置、排液方法及び耐候性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料や無機材料が、熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどの位の期間で劣化するかという熱酸化劣化や加水分解の試験を行う場合、実環境下で試験を行うことが最良である。しかし、実環境下での試験では、試験結果を得るまでに長時間を要してしまう。そのため、実環境よりも、より高温下で、雨を模した水噴霧の量や頻度、高酸素濃度下での促進試験が行われている。PCT試験(プレッシャークッカー試験)や高温恒湿試験などがそれである。
【0003】
また、太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどの位の期間で劣化するかという耐候性試験を行う場合、実環境下で試験を行うことが最良である。しかし、実環境下での試験では、試験結果を得るまでに長期間を要してしまうことがある。そこで、太陽光よりも高光量の光源を有する耐候促進試験装置を用いて耐候性試験を行い、各種材料の耐候性の試験結果を早期に取得することが行われている。このような耐候性試験装置として、サンシャインウェザオメーター(SWOM)、メタルウェザーメーター(MW)、スーパーUV(SUV)、キセノンウェザーメーター(例えば、特許文献1、2参照)などが知られている。
【0004】
サンシャインウェザオメーターは、カーボンアークからなる光源を備え、紫外部から可視光部の波長を含む光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧することにより、短期間で耐候性試験を実現する装置である。この装置では、試験期間を、ある程度短縮することができる。また、メタルウェザーメーター及びスーパーUVは、SWOMよりも強力な光源であるメタルハライドランプを備え、紫外部から可視光部までの高光量の光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧する装置である。これらの装置では、高光量の光源を用いているため、サンシャインウェザオメーターよりも短期間で耐候性試験を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平1-21891号公報
【特許文献2】特公平1-28897号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】エスペック株式会社、“プレッシャークッカー試験”、[online]、〔令和4年1月11日検索〕、インターネット(URL:https://www.espec.co.jp/products/env-test/pvl/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PCT試験は、100℃以上で、試験槽内の水蒸気圧力を試料の内部の水蒸気分圧よりも高めることにより、試料内部への侵入を短時間で行うことが出来る耐湿評価方法である(非特許文献1参照)。
【0008】
水蒸気分圧を高めるには、試験槽内部を加圧することによりなされているため、試験槽は加圧容器となる。
【0009】
しかしながら、PCT試験では、水蒸気分圧を高めているだけであり、雨を想定した水や、液体が試料表面に当たる際の劣化は再現出来ない、という課題がある。
【0010】
さらに、湿度による劣化は加水分解が主であるが、実環境下では加水分解と同時に熱による酸化劣化も生じており、PCT試験では、この両者を再現出来ないという課題があり、熱による熱酸化、水噴霧による劣化、加湿による加水分解を加圧容器内で同時に行える装置が望まれている。
【0011】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の耐候性試験装置では、耐候性試験を促進するため、高光量の光源を用いることに加えて、試料を配置する装置容器内の気圧(例えば酸素分圧)などを大気圧よりも大きくすることが行われている。さらに大気圧よりも気圧を大きくした装置容器内に水を噴霧することにより、より実暴を再現した耐候性試験を行えるとしている。
【0012】
しかしながら、熱酸化や水噴霧、加水分解の試験や、耐候性試験において、大気圧よりも気圧の高い容器内に水を噴霧する場合には、噴霧した水の装置容器外への排出が課題となる。特許文献1及び特許文献2の装置容器は密閉容器であるため、水噴霧により装置容器内に溜まった水を排出すると、装置容器の圧力も同時に低下してしまい、一時的に圧力による加圧の効果は得られなくなる。そのため液体を加圧容器から排出する際の加圧容器内の圧力の低下を抑制し、低下した圧力をいち早く設定した圧力へ戻すことが重要であり、圧力をいち早く戻すことの可能な装置が望まれていた。
【0013】
本発明は、上記未解決の課題を解決するためになされたものであり、加圧時に容器本体内の水を排出する際に、容器本体内の圧力変化を抑制しつつ、容器本体内の水を排出することの可能な加圧装置、耐候性試験装置、排液方法及び耐候性試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、内部に試料が配置される容器本体と、容器本体内に気体を導入するガス導入部と、容器本体内の気圧を調整する圧力調整部と、容器本体内に液体を供給する液体供給部と、容器本体に接続される排液タンクと、容器本体と排液タンクとの間に設けられ開閉可能な流入バルブと、排液タンク内の液体を排出する開閉可能な排出バルブと、を備える加圧装置、が提供される。
【0015】
また、本発明の他の態様によれば、上記態様の加圧装置と、加圧装置の容器本体の外に配置された光源と、を有し、容器本体は光を透過する光透過部を備え、光源からの光を、光透過部を透過して容器本体内に配置された試料に照射する耐候性試験装置、が提供される。
【0016】
さらに、本発明の他の態様によれば、上記態様の加圧装置と、加圧装置の容器本体内に配置され、加圧装置内の試料に光照射を行う光源と、を備える耐候性試験装置、が提供される。
【0017】
さらにまた、本発明の他の態様によれば、加圧装置の容器本体内の液体の排液方法であって、容器本体と容器本体に接続された排液タンクとの間に開閉可能な流入バルブを設けると共に、排液タンク内の液体を排出する開閉可能な排出バルブを設け、排出バルブを閉状態にし流入バルブを開状態にして、容器本体内の液体を排液タンクに移動させた後、流入バルブを閉状態にし排出バルブを開状態に切り替えて、排液タンク内の液体を排出する排液方法、が提供される。
【0018】
またさらに、上記態様の加圧装置の容器本体内に試料を配置する工程と、ガス導入部により容器本体内に気体を導入すると共に圧力調整部により容器本体内の気圧を所定気圧に調整する工程と、液体供給部により容器本体内に液体を供給する工程と、容器本体内に液体を供給した後、排出バルブを閉状態にし流入バルブを開状態にして、容器本体内の液体を排液タンクに移動させる工程と、容器本体内の液体を排液タンクに移動させた後、流入バルブを閉状態に切り替える工程と、流入バルブを閉状態に切り替えた後、排液タンク内の液体を排出する排出バルブを開状態に切り替えて排液タンク内の液体を排出する工程と、を備える耐候性試験方法、が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、加圧時に容器本体内の水を排出する際に、容器本体内の圧力変化を抑制しつつ、容器本体内の水を排出することの可能な加圧装置、耐候性試験装置、排液方法及び耐候性試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一実施形態に係る加圧装置を適用した耐候性試験装置の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図2】従来の加圧装置の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図3】加圧時に容器本体内の水を排出する際の容器本体内の圧力変化の状態を示したグラフであって(a)は従来の加圧装置、(b)は第一実施形態に係る加圧装置を用いた場合の圧力の変化状態を示す。
【
図4】第一実施形態に係る加圧装置の変形例を模式的に示す部分断面図である。
【
図5】加圧装置に含まれる排水機構の変形例を模式的に示す部分断面図である。
【
図6】第二実施形態に係る加圧装置を適用した耐候性試験装置の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図7】第三実施形態に係る加圧装置を適用した耐候性試験装置の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図8】第四実施形態に係る加圧装置を適用した耐候性試験装置の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図9】第四実施形態に係る加圧装置の変形例を適用した耐候性試験装置の一例を模式的に示す部分断面図である。
【
図12】加圧容器内の水を排出した後、加圧容器内の圧力が初期圧力に復帰するまでの所要時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0023】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
〔第一実施形態〕
【0024】
まず、第一実施形態を説明する。第一実施形態では、本発明に係る加圧装置を耐候性試験装置に適用した場合について説明する。
〔耐候性試験装置1〕
【0025】
図1は、耐候性試験装置1の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、耐候性試験装置1は、加圧装置2と、光照射装置3と、制御部4と、入力部5と、を備える。
〔加圧装置〕
【0027】
加圧装置2は、加圧容器(容器本体)11と、試料保持部12と、ガス導入管13(ガス導入部)と、湿度調整器14と、ガス排気管15と、圧力調整器16(圧力調整部)と、水噴霧管17(液体供給部)と、水流量調整器18と、排水管19と、排水機構20と、温度調整器(温度調整部)21と、液面計22と、モニタ部26と、湿度計30と、を備えている。
【0028】
耐候性試験装置1では、加圧容器11内に設けられた試料保持部12に試料Sを保持させ、ガス導入管13から酸素や窒素等のガスを導入しつつ、圧力調整器16で加圧容器11内を所定の内圧となるように調整する。そして、その加圧状態で、太陽光等を模した光照射装置3からの光Lを試料Sに照射しつつ、水噴霧管17の先端から水を試料Sに噴霧し、さらに、温度調整器21により試料Sを加熱する。温度調整器21は、必要に応じて試料Sを冷却してもよい。ガス導入管13から導入される酸素等のガスは湿度調整器14により湿度調整が行われていてもよい。このような環境に試料Sを所定期間置いておき、試料Sが太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う。なお、耐候性試験装置1は、上述した各構成部が収納される図示しない紫外線漏洩防止用の筐体をさらに備え、光照射装置3が照射する紫外線や高光量の光が外に漏れないように構成されていてもよい。
〔加圧容器〕
【0029】
加圧容器11は、加圧可能な密閉容器であり、試料保持部12等を収納する収納部11aと、収納部11aの開口を塞ぐ蓋11bとを有している。加圧容器11は、例えば上部の蓋11bが取外し可能となっており、試料Sを設置する際に蓋11bを収納部11aから取り外して使用する。試料Sを設置した後、蓋11bは、内部が気密状態となるように収納部11aに取り付けられ、例えばそれぞれの円周部分をボルト等によって締めて固定される。加圧容器11の材料は、加圧容器11内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金などから構成することができる。
【0030】
収納部11aには、ガス導入管13、ガス排気管15、水噴霧管17、排水管19が接続されており、各管の先端が収納部11aの内部に位置するように構成されている。これにより、ガス導入管13から加圧容器11内に所定の試験ガス(酸素等)を導入できると共に、ガス排気管15から不要なガスを排出可能となり、また、水噴霧管17から試料Sに水を噴霧することができると共に、排水管19から不要な水を排出可能となる。
図1に示す耐候性試験装置1では、蓋11bを取り外す構成であるため、各種の管を収納部11aにまとめて接続しているが、これらの管の一部を蓋11bに接続してもよい。
【0031】
蓋11bの中央の試料保持部12(試料S)に対向する領域には、開口11cが設けられている。この開口11cには、石英ガラス板11d(光透過部)が気密に嵌め込まれている。石英ガラス板11dは、試料保持部12に対向するように位置し、光照射装置3から照射される光Lを減衰させることなく透過させて試料Sに光Lがそのまま照射されるように構成されている。石英ガラス板11dは、光照射装置3から照射される光L(特に紫外線)を透過可能であれば他の材料からなる光透過部材であってもよい。なお、石英ガラス板11dは、加圧容器11の一部を構成することから、加圧容器11内の雰囲気や圧力を保つ構造となっている。
〔試料保持部〕
【0032】
試料保持部12は、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材である。試料保持部12は、例えば板状部材12aとそれを支持する支持部材12bとから構成され、試料Sは板状部材12aの上に配置されて、アルミテープなどで貼り付けられることにより保持される。板状部材12aは、水平となるように支持部材12bに取り付けられてもよいが、水噴霧管17から噴霧される水が試料S上に滞留しないように、水平方向に対して傾斜していてもよい。また、板状部材12aには、温度調整器21が内蔵されていてもよい。温度調整器21は、ヒータ及び冷却用流路を内蔵して構成することができ、熱電対の値をフィードバックすることにより、試料Sを加熱したり又は冷却したりして、試料Sの温度を調整する。温度調整器21により、試料保持部12に保持される試料Sを所定の温度に加熱したり冷却したりして耐候性試験を行うことが可能となる。温度調整器21による試料Sの加熱において、加熱温度は室温以上で且つ試料Sの分解温度以下であることが好ましい。分解温度以下の加熱であることにより、熱による劣化だけを先に促進させずに、光や酸素、湿度等による劣化とのバランスを調整できる。なお、温度調整器21の代わりに又は併用して、ガス導入管13から導入されるガスを加熱したり冷却したりするガス温度調整機構を設けてもよいし、加圧容器11に温度調整器を設けて容器自体を温度調整してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。
〔光照射装置〕
【0033】
光照射装置3は、光Lを照射する光源3aと、光源3aからの光から一部の波長の光を取り除く光学フィルタ3bとを有して構成される。光源3aは、少なくとも紫外線を含む光Lを照射する光源であればよく、例えば、耐候性試験に用いられるカーボンアーク、高圧水銀、キセノンランプ、メタルハライドなどを単独で又は2つの異なった種類の光源を組み合わせて使用することができる。光源3aは、LED光源やレーザー光源であってもよい。但し、光源3aとしては、太陽光の波長に最も近いキセノンを使用することが好ましい。また、光源3aから照射される光は、波長290nm~390nmの範囲の光を含んでいることが好ましく、少なくとも波長290nm~390nmの範囲の一部の光を含んでいることが好ましい。光源3aから照射される光のスペクトル形状は、太陽光のスペクトル形状に近いことが好ましく、290nmよりも短い波長の光は、含んでいてもよいが、光学フィルタ3bによりカットした方が好ましい。また、光源3aから照射される光Lにおいて、波長390nmよりも長い波長の光は、試料Sを劣化させる直接の要因とはならないものの、特に赤外部の波長の光は試料Sを加熱するなどの作用があるため、残してもよい。一方、試料Sの温度調整は上述した温度調整器21等で行うことから、光Lによる加熱の影響を排除するため、波長390nmより大きい赤外光を光学フィルタ3bでカットしてもよい。
【0034】
光照射装置3は、光源3aからの光Lを平行光として試料Sに照射するように構成されていることが好ましいが、これに限定されない。例えば、光源3aからの光Lがある程度、放射状に広がる構成であってもよい。この場合は、光照射装置3からの光Lの照度が試料Sにおいて均一になるように(複数の試料Sを試験する場合は各試料Sでの照度が同じになるように)、試料Sの配置等を考慮することが好ましい。光源3aからの光Lを平行光として試料Sに照射するように構成することによって、試料Sに照射される光がより均一となり、試料Sの一部に強い光が照射されるといったことがなくなり、耐候性試験を安定して行うことができる。複数の試料を同時に試験する場合には、照射される光が平行光であることにより、各試料Sに照射される光の照度ムラがなくなるため、耐候性試験の最中(例えば3カ月~6カ月の間)、照度ムラをならすための試料Sの配置換え等の作業を行わなくてよい。これにより、より正確な耐候性試験結果をより少ない作業量で得ることが可能となる。この場合において、上記の光学系は、少なくとも1つのコリメートレンズを含んで構成されてもよい。この耐候性試験装置では、上述したように、光照射装置が加圧容器の外に配置されており、平行光を生成するための光学系の大きさの制限もそれほどないため、より最適な光学系を用いることが可能となる。
【0035】
また、光照射装置3から照射される光Lの光量は太陽光よりも高光量であればよく、例えば、光源3aから照射される光のうち波長365nmの光量において、15mW/cm2以上60mW/cm2以下であることが好ましい。なお、ここでいう「光量」は、波長365nmでの光量を測定する装置(例えば、ウシオ電機株式会社製のUIT-250 受光器UVD-S365)で測定した値であり、波長365nmを絶対値校正波長とした波長分布であり、例えば感度波長域310nm~390nmの幅の光量を検出した値である。
〔ガス導入管〕
【0036】
ガス導入管13は、加圧容器11の外からのガスを加圧容器11内に導入するための管であり、加圧容器11内の雰囲気を変えたり、圧力を高めたりするための部材である。ガス導入管13から加圧容器11内に導入されるガスは、少なくとも圧力調整器16で設定された圧力以上の圧力で加圧容器11内に導入される。ガス導入管13から導入されるガスは、例えば、酸素ガス又は窒素ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスとが混合したガスであってもよい。ガス導入管13には、マスフローコントローラ(不図示)を設けて、導入するガスの流量を調整するようにしてもよいし、二種以上のガスを導入する場合には、ガス混合器(不図示)を設けて、導入するガスの切替えや混合等を行ってもよい。
〔湿度調整器〕
【0037】
湿度調整器14は、例えばガス導入管13に接続されており、湿度調整器14内の水をバブリングし、ガス導入管13により導入されるガスを加湿したり、除湿する等、ガスの湿度を調整する装置である。湿度調整器14により、加圧容器11内の湿度が所定の範囲に設定される。湿度調整器14は、加圧容器11内に湿度計30を設け、湿度計30からの湿度情報をモニタ部26でモニタし、モニタした信号に基づき制御部4によって制御してもよい。なお、ここでは、湿度調整器14を用いて導入されるガスの湿度調整を行っているが、湿度調整器14に替えて加湿器によってガスの湿度を調整するようにしてもよい。
〔ガス排気管〕
【0038】
ガス排気管15は、加圧容器11内のガスを排出するための管である。ガス排気管15には、圧力調整器16が取り付けられており、圧力調整器16により加圧容器11内の圧力が設定した圧力に保持される。圧力調整器16は、加圧容器11内の圧力が設定した圧力以上になったことが図示しないセンサ等により検出されると、制御部4の制御により、圧力調整器16内のバルブを開き、設定した圧力になるように圧力を調整する。
〔水噴霧管〕
【0039】
水噴霧管17は、加圧容器11内に設置された試料Sに水を噴霧するための部材である。水噴霧管17は、加圧容器11の外から供給された水の流量を水流量調整器18により調整した後、加圧容器11内において試料Sに噴霧する。水流量調整器18は、水噴霧管17から試料Sに噴霧される水の量を調整する装置であり、必要な量に応じて水量を設定する。加圧容器11内の水噴霧管17の先端には、スプレーノズルが取り付けられており、このスプレーノズルにより水を試料Sの全体に噴霧(スプレー状、ミスト状、シャワー状)できるようになっている。水流量調整器18による調整で、このスプレーノズルから噴霧する水の勢いを調整することも可能である。水噴霧管17及び水流量調整器18からなる噴霧装置は、実環境下での雨を模した装置であり、噴霧する水は、純水、水道水、酸性雨を模したペーハー(pH)を調整した水、金属イオンを含んだ水、またはこれらを混合した水、または過酸化水素水等であってもよい。
【0040】
なお、ここでは、試料Sに水を噴霧する場合について説明したが、水以外の液体であってもよく、また、試料Sに水等の液体を噴霧する場合に限らず、試料Sに水等の液体を浴びせる、或いは試料Sに液体等が接触しないように加圧容器11内に液体を供給する場合等であっても適用することができる。
〔排水管〕
【0041】
排水管19は、加圧容器11内において水噴霧管17から噴霧された水を加圧容器11の外に排出するための部材である。排水管19には、排水機構20が取り付けられており、排水機構20を動作させることにより、不要な水を排出する。
〔排水機構〕
【0042】
排水機構20は、排水管19に接続された排水タンク(排液タンク)20aと、排水管19の、排水タンク20aの流入側に設けられた開閉可能な流入バルブ20bと、排水管19の、排水タンク20aの排出側に設けられた開閉可能な排出バルブ20cと、を備える。流入バルブ20b及び排出バルブ20cは、耐候性試験中は通常閉じた状態であり、加圧容器11内の圧力や雰囲気(酸素ガス濃度等)を保つように制御されている。
【0043】
排水タンク20aの容積は、加圧容器11の容積以下に設定される。具体的には排水タンク20aの容積は、加圧容器11の容積に対して、1/6以下に設定することが好ましい。さらに好ましくは1/6以下、1/60以上である。
また、流入バルブ20b及び排出バルブ20cは、制御部4により制御され、流入バルブ20bは、水噴霧管17による水の噴霧が終了した時、開状態に制御され、加圧容器11内の水が全て排水タンク20aに移動した時、閉状態に制御される。一方、排出バルブ20cは、加圧容器11内の水が排水タンク20aに移動し流入バルブ20bが閉状態に制御された後に、開状態に制御され、排水タンク20aに貯液された水を排出する。
〔液面計〕
【0044】
加圧容器11及び排水タンク20aには、それぞれ容器(タンク)内の水位を検出する液面計22として、加圧容器11の水位を検出する液面計22a及び排水タンク20aの水位を検出する液面計22bが設けられている。液面計22(22a、22b)で検出した情報はモニタ部26を介して制御部4に入力される。
【0045】
また、加圧容器11には、加圧容器11内の各種の状態を検出するセンサであり、例えば、温度(内部温度または試料温度)、圧力、ガス濃度、ガス流量等を検出する図示しない各種センサが設けられ、各種センサの検出した情報は制御部4に入力される。
なお、モニタ部26は、液面計22及び湿度計30の計測信号を入力し、これら計測信号を図示しない表示装置に表示すると共に、各計測信号を制御部4に送信する。耐候性試験装置1cの利用者はモニタ部26の表示を参照することによって、加圧容器11内及び排水タンク20a内の液面や、加圧容器11内の湿度を監視することができる。
〔制御部〕
【0046】
制御部4は、耐候性試験装置1の動作全体を制御する装置であり、例えば、CPU等を備えたコンピュータから構成される。制御部4は、入力部5、ガス導入管13に設けられた図示しないマスフローコントローラ、湿度調整器14、圧力調整器16、水流量調整器18、流入バルブ20b、排出バルブ20c、及び温度調整器21に配線等を介して電気的に接続されている。制御部4は、入力部5からの入力情報、モニタ部26を介して液面計22及び湿度計30からの検出情報、図示しない各種センサからのガスの導入流量、加圧容器11内の気圧や温度、湿度、水位等に基づいて、ガス導入管13のマスフローコントローラ、湿度調整器14、圧力調整器16、水流量調整器18、流入バルブ20b、排出バルブ20c及び温度調整器21等の動作を制御する。制御部4による制御により、耐候性試験装置1内に配置される試料Sが所定の環境下に配置される。また、制御部4は、加圧容器11の外に配置されている光照射装置3にも配線等を介して電気的に接続されており、照射する光Lの光量や照射時間や間隔等が制御されている。
【0047】
制御部4による制御では、具体的には、ガス導入管13のマスフローコントローラや圧力調整器16等を制御して、ガス導入管13から導入するガスの濃度や加圧容器11内の圧力を調整する。例えば、ガス導入管13から導入するガスを加圧して、当該ガスに含まれる酸素分圧を大気中の酸素分圧よりも大きくなるようにしてもよい。また、制御部4は、ガス導入管13によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度となるようにマスフローコントローラを制御してガスを混合してもよい。さらに、制御部4は、ガス導入管13によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度に混合した後、圧縮ポンプなどで加圧容器11内に導入された混合ガスを加圧してもよい。
【0048】
また、制御部4による制御において、圧力調整器16による加圧容器11内の気圧はゲージ圧で1MPa以下となるように調整されることが好ましい。この時に加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として1%~100%のガスが好ましい。さらに好ましくはゲージ圧で0.5MPa以下が好ましい。この加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として4%~100%のガスが好ましい。このように気圧を抑えることにより、加圧容器11の容器厚さを低減することができ、その結果、加圧容器11や耐候性試験装置1の小型化や軽量化を図ることができる。
【0049】
また、制御部4は、湿度調整器14を制御して、実環境下における湿度による耐候性を再現するようにしてもよい。制御部4による湿度の調整は、図示しないセンサによって検出される湿度の情報に基づいて湿度調整器14による導入ガスへの湿度調整を行うことにより行われる。耐候性試験装置1での加湿は、ある程度の加湿が行われればよいが、加圧容器11内の湿度が40%~100%であることが好ましく、湿度が50%~100%であることがより好ましい。制御部4は、このような湿度範囲となるように湿度調整器14を制御する。なお、促進耐候性試験を行う場合には、実環境下における太陽光に含まれる紫外線量により試料が劣化する際に必要な酸素量に対して、耐候性試験装置1の光源3aから照射される紫外線量の光量に応じて加圧容器11内の酸素濃度を選択することが好ましい。さらに、試料S内部への酸素の拡散を促進するために、加圧容器内の圧力を高めることにより、試料Sの劣化を促進することが可能となる。
【0050】
制御部4は、さらに、水流量調整器18を制御することにより、水噴霧管17により試料Sに対して水の噴霧を行ったときには、水流量調整器18の作動を停止した後、流入バルブ20bを開状態に制御し、加圧容器11内の水が全て排水タンク20aに移動した時、閉状態に制御する。制御部4は、流入バルブ20bが閉状態に切り替わると、続いて排出バルブ20cを開状態に制御し、排水タンク20aに貯液された水が全て排出されたとき、排出バルブ20cを閉状態に制御する。制御部4では、例えば加圧容器11内に設けた液面計22aの検出値に基づき、加圧容器11内の水が全て排水タンク20aに移動したことを検出する。また、制御部4では、例えば排水タンク20a内に設けた液面計22bの検出値に基づき、排水タンク20a内の水が全て排出されたことを検出する。また、制御部4は、液面計22a、22bの検出置に基づき、加圧容器11内の水位や排水タンク20a内の水位が規定値を超えるとき、異常と判定し、流入バルブ20bや排出バルブ20cを制御し、加圧容器11内、或いは排水タンク20a内の水を排出させると共に、水噴霧管17による水の供給を停止させる等といった、異常発生時の処理を行う。
〔耐候性試験方法〕
【0051】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置1を用いた耐候性試験方法について説明する。
【0052】
耐候性試験方法では、まず耐候性試験に用いる試料Sを準備する。試料Sは1つでもよいし、複数であってもよい。また、試料Sは、化粧シート、各種の無機材料や有機材料からなる部材であってよく、特に限定されない。このような試料Sが準備されると、加圧容器11の蓋11bを取り外して、板状部材12aに試料Sを貼り付ける等により保持させる。その後、蓋11bを収納部11aに気密に取り付けてボルト等により固定する。これにより試料Sが収納された加圧容器11が密閉状態となる。
【0053】
続いて、制御部4の制御により、圧力調整器16による圧力を設定すると共に、ガス導入管13から所定流量のガス(酸素ガスや窒素ガス)を加圧容器11内に導入する。導入するガスの濃度や圧力(分圧)が所定の値となるように制御される。また、制御部4による水流量調整器18の制御により水量が調整された水が水噴霧管17のノズルから試料Sに連続的に又は所定の周期で供給される。さらに、制御部4の制御により、温度調整器21が温度調整を行い、試料Sを所定の温度(例えば80℃)に保温する。この状態で、耐候性試験装置1では、光照射装置3から所定の光Lが石英ガラス板11dを介して加圧容器11内に照射され、試料Sが照射される。また、試料Sへの水の噴霧が行われたときには、噴霧終了後、排水機構20が作動し、流入バルブ20bが開状態に制御されて、加圧容器11内の水が排水タンク20aに移動し、続いて流入バルブ20bを閉状態に切り替えられた後、排出バルブ20cが開状態に切り替えられて排水タンク20a内の水が排水タンク20a外に排出される。
【0054】
続いて、このような光の照射、加圧、温度調整、及び水の供給を続けた状態を継続的に行って試料Sの劣化状態を試験する。このような試験は、例えば、3ヶ月~6ヶ月間連続して行ってもよいし、6ヶ月以上又は1年以上継続してもよい。また、所定の加圧及び温度調整を行った状態で、光の照射、水の噴霧等を所定の周期で繰り返してもよい。このような試験状態は、実環境下での試験と同様となるように適宜、選択され得る。
【0055】
なお、実環境下での試料の劣化は光が要因となる劣化だけでなく、雨や大気中に含まれる水分(湿度)による試料の劣化もある。試料表面に雨や湿度等により付着した水は、試料表面から試料内部へと拡散していき加水分解等により試料が劣化する。そこで、耐候性試験装置1では、光源の光量と酸素の関係と同様に、水による劣化を促進させるために、水噴霧の量、加圧容器11内の湿度も選択することができるようになっている。さらに加圧容器11内を加圧することにより、試料内部への水の拡散を促進させている。また、光照射により劣化した試料と酸素との反応、水による加水分解反応をさらに促進させるために試料Sの温度を変更できるようにもなっている。この試料の温度は、光照射装置3からの光の光量に基づいて調整されるようであってもよい。耐候性試験装置1では、これら光量、酸素濃度、圧力、水、湿度、温度を適切に選択することにより、光による劣化と水による劣化とがバランスよく進行し、例えば光による影響のみを強く受けるといったような弊害を受けることなく、実環境下で長期間かけて行ったものと同様な耐候性試験結果を短期間で得ることが可能となる。
〔効果〕
【0056】
以上、耐候性試験装置1では、光源3aを有する光照射装置3が加圧容器11の外に配置されており、加圧容器11の外から加圧容器11内の試料Sに対して光Lを照射するように構成されている。この場合、光照射装置3が加圧容器11の外にあるため、光照射装置3が高圧雰囲気等により破損することがなく、また仮に何等かの原因で破損しても、加圧容器11内の圧力を急激に高めるようなことがなく、加圧容器11への影響が低減されている。これにより、この耐候性試験装置1によれば、加圧容器11を用いることで耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能となる。また、耐候性試験装置1によれば、光照射装置3が加圧容器11の外に配置されるため、安全性の基準を高くする必要のある加圧容器11を必要以上に大きくする必要がなくなり、より小型の加圧容器11を用いた装置とすることができる。この点でも安全性を向上することができる。さらに、光照射装置3を加圧容器11の外に配置することにより、例えば、照射する光Lの光量を高くしたり、照射する光Lの波長を選別しやすくしたり、又は、試料Sに照射する光の照度ムラを低減したり等の光照射装置3における光学設計を行いやすくなるため、実環境下(特に光学的な面)での試験に近づけたり、又は実環境下に近い状態のまま試験を促進したりすることができ、実環境下での試験結果を再現しつつ耐候性試験を促進することが可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、試料Sへの水の噴霧が行われたときには、噴霧終了後、加圧容器11内の水を排水タンク20aに移動している。
【0058】
ここで、
図2に示す加圧装置2′のように、排水機構20を設けずに、加圧容器11に排水のための排水管19を設け、排水管19に設けたバルブ19aを操作して加圧容器11内の水を排水する構成の場合、バルブ19aを開状態に切り替えると、加圧容器11内の液体と共に加圧のためのガスも排水管19を通して排出されてしまい、加圧容器11内の圧力が
図3(a)に示すように著しく低下し、大気圧付近まで低下してしまう。また、バルブ19aを開状態としている時間が長いほど、圧力低下がより激しくなり、圧力の低下分が大きいときほど、所定の圧力まで回復するのに時間がかかる。
【0059】
しかしながら、
図1に示す本実施形態に係る耐候性試験装置1では、試料Sへの水の噴霧が行われた後、加圧容器11内の水を排出する際には、まず、排出バルブ20cを閉状態に維持したまま流入バルブ20bのみを開状態にして加圧容器11内の水を排水タンク20aに移動し、加圧容器11内の水を排水タンク20aに移動し終えた後に、流入バルブ20bを閉状態に切り替え、その後、排出バルブ20cを開状態に切り替えて、排水タンク20a内の水を排出している。また、排水タンク20aの容積を、加圧容器11の容積以下としている。そのため、加圧容器11内から水を排出する際、つまり、加圧容器11内から排水タンク20aに水を移動する際に、加圧容器11内の気圧が大幅に低下することを抑制することができる。つまり、加圧容器11内の気圧変動を抑制しつつ加圧容器11内の水を排出することができる。そのため、耐候性試験中に、加圧容器11内の気圧が低下することによって、実環境の再現性が大きく低下することを防止することができ、耐候性試験の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0060】
つまり、本実施形態にかかる耐候性試験装置1は、排水タンク20aが設けられているため、流入バルブ20bが開状態に切り替わった場合、
図3(b)に示すように、加圧容器11内の圧力は低下するものの、大気圧まで低下することはなく、排水タンク20aの容積に応じた圧力まで低下すると、以後はそのままの圧力を維持する。そのため、加圧容器11内の圧力が大気圧まで低下することを抑制することができると共に、容器内圧力が所定の圧力まで復帰するのに要する所要時間を短縮することができる。そのため加圧容器11内の圧力変動を抑制し速やかに所定の圧力に復帰させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光源3aは、15mW/cm2以上60mW/cm2以下の光量を有するキセノンランプであることが好ましい。この場合、高光量の光Lを試料Sに照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。また、キセノン(Xe)ランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、上述した光源を用いることにより、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光源3aからの光Lは、少なくとも紫外線を含むことが好ましい。この場合、太陽光に含まれていて材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0063】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光照射装置3は、光源3aからの光から波長290nm以下の紫外線及び赤外線の少なくとも一方を取り除く光学フィルタ3bをさらに有してもよい。太陽光に含まれる紫外線のうち波長290nm以下の紫外線は微量であるため、290nm以下の紫外性を取り除く光学フィルタ3bを用いることにより、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。また、試料に照射される光に赤外線が含まれる場合、赤外線により試料が加熱されることになるが、制御しやすい別途の温度調整器21を設ける場合等、赤外線を取り除く光学フィルタを用いることにより、赤外線の影響を低減した試験が可能となり、より希望した試験条件での耐候性試験を行うことが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1は、加圧容器11内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入管13と、加圧容器11内の気圧を調整する圧力調整器16と、気体の湿度調整を行う湿度調整器14と、加圧容器11内において試料Sに液体を噴霧する水噴霧管17と、試料Sの温度を調整する温度調整器21と、気体の導入量、気圧、気体の湿度、及び試料の温度等を検出する各種センサ及び液面計22と、これらセンサの検出値に基づいて、ガス導入管13、圧力調整器16、湿度調整器14、水噴霧管17、及び、温度調整器21を制御する制御部4と、をさらに備えている。これにより、熱、水(雨)、酸素による試料Sの劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。即ち、上記の構成によれば、酸素による試料Sの劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部4は、ガス導入管13から導入される酸素ガスの気体全体に対する濃度が20%以上となるように、ガス導入管13のマスフローコントローラを制御してもよい。この場合、より実環境下に近い耐候性試験の結果を得ることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部4は、ガス導入管13から導入される酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、ガス導入管13のマスフローコントローラ及び圧力調整器16を制御してもよい。この場合、酸素による劣化を更に促進させて、実環境下に近い耐候性試験を更に促進することが可能となる。なお、ここで用いる「酸素分圧」は、大気圧を0MPaとした場合の装置内の酸素分圧の値である。
〔変形例1〕
【0067】
第一実施形態においては、本発明に係る加圧装置2を、太陽光による劣化を再現する耐候性試験装置1に適用しているが、
図4に示すように、光照射装置3を設けずに、太陽光による劣化を再現せず、熱、水(雨)、酸素による試料Sの劣化を再現する加圧装置2として用いることも可能である。
【0068】
すなわち、
図4に示すように、加圧装置2と、制御部4と、入力部5と、を設ける。加圧装置2は、光照射装置3を持たないため、加圧装置2において、加圧容器11の蓋11b′には、石英ガラス板11dが設けられていなくてもよい。また、加圧装置2は、紫外線漏洩防止用の筐体等に収納されていなくてもよい。
【0069】
このように、太陽光による劣化を再現しない加圧装置2であっても、第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
〔変形例2〕
【0070】
排水機構20は、
図1及び
図4に示すように、排水タンク20aの流入側に流入バルブ20bを備え、排出側に排出バルブ20cを備える構成に限らない。
図5に示すように排水機構20′は、加圧容器11の収納部11aの底部に、上端が開口された筒状の排水タンク20a′を直接設けてもよい。すなわち、
図5に示すように、収納部11aの底部と排水タンク20a′の上端とが、収納部11aの内部の底面で面一又は排水タンク20a′の上端が、収納部11aの底面よりも低くなるように排水タンク20a′を設け、排水タンク20a′の上端、つまり収納部11aの底面に開閉可能な流入バルブ20b′を設ける。排水タンク20a′の下端に排水管19′を設け、排水管19′の排水タンク20a′の排出側に開閉可能な排出バルブ20c′を設ける。
【0071】
このような構成であっても第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
〔第二実施形態〕
【0072】
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
【0073】
第二実施形態に係る耐候性試験装置1aは、
図6に示すように、第一実施形態において、排水機構20の構成が異なること以外は、同様である。耐候性試験装置1と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
図6に示すように、第二実施形態における排水機構20-1は、複数の排水タンク20a-1~20a-nを有する。排水タンク20a-1~20a-nのそれぞれは、排水管19-1~19-nに設けられ、排水管19-1~19-nの上流側は一つの管となって加圧容器11の底部に接続される。各排水管19-1~19-nの、排水タンク20a-1~20a-nの流入側には、開閉可能な流入バルブ20b-1~20b-nが設けられ、各排水管19-1~19-nの、排水タンク20a-1~20a-nの排出側には、開閉可能な排出バルブ20c-1~20c-nが設けられている。また、各排水タンク20a-1~20a-nには液面計22b-1~22b-nが設けられている。
【0075】
各排水タンク20a-1~20a-nの容積は、排水タンク20a-1~20a-nのうち同時に開状態に制御される排水タンクの容積の総和が、加圧容器11の容積に対して、1/6以下に設定することが好ましい。さらに好ましくは1/6以下、1/60以上に設定することが好ましい。
【0076】
排水機構20-1がこのような構成を有する結果、上記第一実施形態と同等の作用効果を得ることができると共に、複数の排水タンク20a-1~20a-nを備えているため、一つの排水タンクへの流入を行うと同時に他の排水タンクからの排出を行うことができ、加圧容器11内の水の排出をより短時間で行うことができ、加圧容器11内の気圧変動をより低減することができる。
〔第三実施形態〕
【0077】
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
【0078】
第三実施形態に係る耐候性試験装置1bは、
図7に示すように、加圧容器11-1内に、光源3aが設けられていること以外は、第一実施形態における耐候性試験装置1と同様であるので、同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0079】
加圧容器11-1は、加圧可能な密閉容器であり、加圧容器11-1内に光源3aと試料保持部12-1とが設けられている。加圧容器11-1には、例えば、図示しない蓋が設けられており、蓋を取り外し、加圧容器11-1内の試料保持部12-1に試料Sを配置した後、蓋をすることにより、内部が気密状態となるようになっている。加圧容器11-1の材料は、容器内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金などから構成することができる。
【0080】
光源3aは、石英ガラス等で構成される保護管3c内に収納され、保護管3cを長手方向が、加圧容器11-1の上下方向となるように、保護管3cの両端を加圧容器11-1の上面及び下面に固定することによって、上面視で加圧容器11-1の略中央部に配置されるようになっている。
【0081】
試料保持部12-1は、例えば正八角形の幅広の枠状に形成され、対向する一組の2辺が加圧容器11-1の上下と対向し、且つ、保護管3cを軸として回転可能に配置される。試料保持部12-1は、図示しない駆動装置によって保護管3cを軸として回転駆動される。試料Sは、試料保持部12-1の上下の一組の2辺を除く、6辺それぞれの、保護管3cと対向する側の面に固定される。これによって、試料保持部12-1の保護管3cと対向する面に設けられた試料Sに対し、光源3aからの光Lが照射されるようになっている。
【0082】
また、水噴霧管17-1は、加圧容器11-1の底面を通して加圧容器11-1の上面方向に伸びて設けられ、水噴霧管17-1の、試料Sと対向する位置3箇所には、試料Sと対向するようにスプレーノズル17aが設けられている。
【0083】
これにより、試料Sを試料保持部12-1に固定した状態で、試料保持部12-1を回転させると共に、スプレーノズル17aから水を噴霧させることによって、回転する試料Sに対して光照射が行われると共に、スプレーノズル17aと対向する位置にきた試料Sに対して水が噴霧されるようになっている。
【0084】
このような構成を有する結果、光源3aが、加圧容器11-1内に設けられた加圧装置2-1を用いた耐候性試験装置1bであっても、上記第一実施形態と同等の作用効果を得ることができる。また、
図4に示す加圧装置2や、第二実施形態における耐候性試験装置1aに適用した場合であっても同等の作用効果を得ることができる。
〔第四実施形態〕
【0085】
次に、本発明の第四実施形態を説明する。
【0086】
第四実施形態に係る耐候性試験装置1cは、
図8に示すように、第一実施形態に係る耐候性試験装置1において、加圧容器11に圧力計を設け、加圧容器11内の圧力変動が小さくなるように加圧容器11に導入するガスの供給量を制御するようにしたものである。
【0087】
具体的には、耐候性試験装置1cは、
図1に示す第一実施形態に係る耐候性試験装置1において、さらに、加圧容器11に設けられた圧力計25aと、排水タンク20aに設けられた圧力計25bと、を備える。これら圧力計25a、25bの計測信号はモニタ部26に入力される。モニタ部26では、これら圧力計25a、25bの計測信号を入力し、液面計22や湿度計30の計測信号と同様に、図示しない表示装置に表示すると共に、各計測信号を制御部4-1に送信する。耐候性試験装置1cの利用者はモニタ部26の表示を参照することによって、加圧容器11及び排水タンク20a内の液面や、加圧容器11内の湿度と共に、加圧容器11内及び排水タンク20a内の圧力を監視することができる。
【0088】
また、ガス導入管13は、湿度調整器14の上流側で分岐し、分岐したガス導入管13aは、排水タンク20aに接続される。湿度調整器14の流入側の、ガス導入管13にはガスバルブ27が設けられ、排水タンク20aの流入側の、ガス導入管13aにはガスバルブ28が設けられ、これらガスバルブ27及び28は流量調整可能なガスバルブであって、制御部4-1によって流量調整が行われる。
【0089】
制御部4-1は、第一実施形態における制御部4と同様に、液面計22a、22bの検出信号をもとに、流入バルブ20b、排出バルブ20cを制御すると共に、モニタ部26からの湿度計30の計測信号に基づき、加圧容器11内の湿度が所定の湿度となるように湿度調整器14を制御する。また、制御部4-1は、モニタ部26からの圧力計25a、25bの計測信号に基づき、圧力計25a、25bの計測値が、予め設定した圧力となるように、ガスバルブ27及び28を制御する。このとき、排水タンク20a内の目標圧力は、加圧容器11内の目標圧力と同一または加圧容器11内の目標圧力よりも多少小さな値に設定される。このように、排水タンク20a内の圧力を加圧容器11内の圧力と同一又はこれよりも多少小さな値に設定することによって、加圧容器11内の水を排水タンク20aに移動するために、流入バルブ20bを開状態に切り換えた場合の加圧容器11内の圧力変動を抑制することができる。
【0090】
また、排水タンク20aに供給するガスとして、加圧容器11に供給するガスと同一種のガスを供給している。そのため、仮に、何らかによって、排水タンク20a内のガスが加圧容器11側に逆流したとしても、加圧容器11内のガスは同一種のガスである。そのため、異なるガスが排水タンク20a側から加圧容器11側に逆流することに起因して、加圧容器11内のガス濃度が変化し、耐候試験時間や劣化状態(外観の変化)がばらつく等の不具合が生じることを回避することができる。
【0091】
なお、加圧容器11及び排水タンク20a内の圧力を制御する場合には、排水タンク20aの容積は、加圧容器11の容積よりも小さくする必要はなく、任意の容積とすることができる。
【0092】
また、本実施形態では、第一実施形態に係る耐候性試験装置1において、加圧容器11内の圧力変動が小さくなるようにガス供給量を直接制御する場合について説明したが、
図4に示す加圧装置2や、第二及び第三実施形態における耐候性試験装置1a、1bにおいて、ガス供給量を直接制御することも可能であり、この場合も上記第四実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
〔変形例〕
【0093】
上記第四実施形態における耐候性試験装置1cにおいて、ガスバルブ27及び28に換えて、
図9に示すようにマスフローコントローラ(MFC)27′及び28′を用いてもよい。マスフローコントローラ27′、28′を用いることによって、流量の調整をより正確に行うことができる。
〔第五実施形態〕
【0094】
次に、本発明の第五実施形態を説明する。
【0095】
第五実施形態に係る耐候性試験装置は、上記各実施形態における加圧容器の収納部11aの形状を規定したものである。ここでは、第一実施形態に係る耐候性試験装置1に適用する場合について説明するが、第二及び第四実施形態に係る耐候性試験装置に適用することも可能である。また、図示しないが第三実施形態に係る耐候性試験装置に適用することも可能である。
【0096】
上述のように、本発明に係る耐候性試験装置1では、加圧容器11に溜まった水を排水することにより生じる、加圧容器11内の圧力変動を抑制するようにしたものであるため、加圧容器11内の水の排出に要する時間を短縮することが好ましい。
【0097】
そこで、第五実施形態に係る耐候性試験装置では、
図10(a)に示すように、収納部11aの内側底面を球面にし、球形の内側底部の最も低くなる位置に排水管19を取り付けている。
【0098】
このような構成とすることによって、排水管19に取り付けられた流入バルブ20bを開状態とすることにより、加圧容器11内の球形部分に溜まった水を速やかに排水タンク20aに移動させることができる。
【0099】
球形の最も底となる位置に排水管19を設ける場合には、
図10(b)に示すように、試料保持部12の配置位置をずらしてもよく、その場合には、石英ガラス板11dに対する板状部材12aの傾斜角度を、板状部材12aと石英ガラス板11dとが平行に近づくように調整し、試料Sに十分に光Lが照射されるようにしてもよい。また、
図10(c)に示すように、石英ガラス板11dに対する板状部材12aの角度は維持したまま、支持部材12bを傾けて配置することで、試料Sに十分に光Lが照射されるようにしてもよい。
【0100】
また、
図10(a)~(c)に示すように収納部11aの内側を球形にすると共にさらに、
図10(d)に示すように、蓋11bの内側も、外側に凸となる球形にしてもよい。このようにすることによって、圧力が分散されるため、蓋11bの厚みを薄くすることができ、軽量化を図ることができる。そのため、蓋11bの操作性を向上させることができる。
【0101】
また、収納部11aの内側を
図11(a)の断面図に示すように、一方向に傾斜した斜面となるように形成してもよい。この場合には、収納部11a内側の、斜面の最も低くなる部分に、排水管19を設ければよい。
【0102】
さらに、収納部11aの内側を
図11(b)に示すようにすり鉢状に形成し、すり鉢の底となる位置に排水管19を設けてもよく、その際、
図11(c)に示すように、試料保持部12の配置位置をずらしてもよい。さらに、
図11(d)に示すように、すり鉢の底となる位置が、上面視で収納部11aの中央部からずれた位置にあってもよい。
さらにまた、板状部材12aの傾きはそのままで、加圧容器11本体を傾斜させることで、排水性能を向上させるようにしてもよい。
【0103】
また、
図11(a)~(d)においても、
図10(d)に示すように、蓋11bの内側を、外側に凸となる球形となるようにしてもよい。
【0104】
以上、本実施形態に係る耐候性試験装置について説明してきたが、本発明に係る耐候性試験装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。
【実施例0105】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0106】
図1に示す第一実施形態に係る耐候性試験装置1を用いて、流入バルブ20bを開状態とし、加圧容器11と排水タンク20aとを接続状態として、そのときの加圧容器11の圧力低下量ΔP0と、平衡圧力と、を計測し、その後流入バルブ20bを閉状態に切り替え、加圧容器11の圧力が元の圧力P0に復帰するまでの所要時間Tを計測した。加圧容器11の容積は60(L)、初期圧力はP0である。また、排水タンク20aの容積はVh(L)、初期圧力は0.1MPaである。なお、圧力は絶対圧(大気圧:0.1MPa)で表している。そして、加圧容器11の初期圧力P0、つまり、流入バルブ20bを開状態に切り替える前の加圧容器11内の圧力が0.4MPaの場合と、0.6MPaである場合とについて、排水タンク20aの容積Vh(L)を変化させ、各容積Vh(L)であるときに、0.4L/minでガスを加圧容器11に導入した場合の、元の圧力P0に復帰するまでの所要時間Tを計測した。測定結果を、表1(加圧容器11内の初期圧力が0.4MPaである場合)及び表2(加圧容器11内の圧力が0.6MPaである場合)に示す。また、表1、表2に、比較例として、排水タンク20aを設けない場合の計測結果を示す。
【0107】
さらに、加圧容器11内の初期圧力が0.4MPaである場合及び加圧容器11内の圧力が0.6MPaである場合の排水タンク20aの容積と、加圧容器11内の圧力が元の圧力P0に復帰するまでの所要時間Tとの対応を表すグラフを
図12に示す。
【表1】
【0108】
【0109】
表1、表2及び
図12のグラフから、排水タンク20aを設けない場合に比較して、排水タンク20aを設けた場合の方が平衡圧力が高いことがわかる。また、加圧容器11の容積と排水タンク20aの容積とが同一である場合、加圧容器11内の平衡圧力は、初期圧力P0が0.4MPaである場合は0.25MPaであり、平衡圧力は元の圧力の略半分近くまで低下し、元の圧力0.4MPaに戻るまで225分かかることがわかる。また、初期圧力P0が0.6MPaである場合は平衡圧力は0.3MPaであり、元の圧力0.6MPaの半分にまで低下し、その結果、元の圧力に戻るまで450分かかることがわかる。また、加圧容器11の容積より排水タンク20aの容積が大きいと、平衡圧力はさらに低下し、逆に、加圧容器11の容積が排水タンク20aの容積よりも大きいと平衡圧力は高くなることがわかる。したがって、加圧容器11の圧力が初期圧力P0に復帰する時間を考慮すると、加圧容器11の容積と排水タンク20aの容積とが、6対1以上12対1以下程度であることが好ましいことがわかる。
本発明は、上記未解決の課題を解決するためになされたものであり、加圧時に容器本体内の水を排出する際に、容器本体内の圧力変化を抑制しつつ、容器本体内の水を排出することの可能な耐候性試験装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、内部に試料が配置される容器本体と、容器本体内に気体を導入するガス導入部と、容器本体内の気圧を調整する圧力調整部と、容器本体内に液体を供給する液体供給部と、容器本体に接続される排液タンクと、容器本体と排液タンクとの間に設けられ開閉可能な流入バルブと、排液タンク内の液体を排出する開閉可能な排出バルブと、を備える加圧装置と、加圧装置の容器本体の外に配置された光源と、を有し、容器本体は光を透過する光透過部を備え、光源からの光を、光透過部を透過して容器本体内に配置された試料に照射する耐候性試験装置、が提供される。