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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117013
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】基地局および無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20230816BHJP
【FI】
H04W56/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019464
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知己
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD25
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、基地局と複数の無線装置との間の時刻同期の精度を高めることである。
【解決手段】基地局10は、同期用無線装置14との間でパケット送受信処理を実行する。パケット送受信処理は、同期パケットを各同期用無線装置14に同報送信する同期パケット送信処理、および同期パケットに応答した同期用無線装置14から送信された情報要求パケットを受信する要求受信処理を含む。同期パケットには、n台の同期用無線装置14-1~14-nのうち、同期パケットに応答すべきものを指定する応答指定情報が含まれている。要求受信処理は、情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含む。基地局10は、先のパケット送受信処理で同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先のパケット送受信処理で求められた情報要求受信時刻とを、次のパケット送受信処理で送信される同期パケットに含ませる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
各前記無線装置に同期パケットを同報送信する同期パケット送信処理と、
前記同期パケットに応答した前記無線装置から送信された情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
前記同期パケット送信処理は、
前記同期パケットに応答すべき前記無線装置を指定する応答指定情報を前記同期パケットに含ませる処理を含み、
前記要求受信処理は、
前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする基地局。
【請求項2】
複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、
前記制御部は、
各前記無線装置に同期パケットを同報送信する同期パケット送信処理と、
前記同期パケットに応答した前記無線装置から送信された情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
前記同期パケット送信処理は、
前記同期パケットに応答すべき前記無線装置を指定する応答指定情報を前記同期パケットに含ませる処理を含み、
前記要求受信処理は、
前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
先の前記送受信処理で求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される処理を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする基地局。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基地局において、
前記制御部は、
予め登録された複数の前記無線装置との間でパケットを送受信する処理を前記無線部と共に実行し、
繰り返し送信する前記同期パケットに、各前記無線装置が順に指定されるように、各前記無線装置に対する前記応答指定情報を順に含ませることを特徴とする基地局。
【請求項4】
請求項3に記載の基地局において、
前記制御部は、
前記同期パケットを送信した後に、前記情報要求パケットを受信しない場合には、次に送信する前記同期パケットに、先に送信した前記同期パケットと同一の前記無線装置を指定する前記応答指定情報を含ませ、
前記同期パケットを予め定められた回数に亘って送信しても前記情報要求パケットが前記無線部で受信されない場合には、前記応答指定情報によって指定される前記無線装置の登録を抹消することを特徴とする基地局。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の基地局において、
前記制御部は、
予め登録された複数の前記無線装置との間でパケットを送受信する処理を前記無線部と共に実行し、
前記制御部は、
前記要求受信処理を実行した後、次の前記同期パケット送信するまでの間に登録処理を前記無線部と共に実行し、
前記登録処理は、
未登録装置から送信された登録要求情報を受信し、当該登録要求情報を送信した前記未登録装置を、新たな前記無線装置として登録する処理を含むことを特徴とする基地局。
【請求項6】
基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、
前記制御部は、
前記基地局から送信される同期パケットを受信する同期パケット受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
自らを応答装置として指定する応答指定情報が前記同期パケットに含まれるときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理を、前記無線部と共に実行し、
自らを前記応答装置として指定する前記応答指定情報を含む前記同期パケットは、当該同期パケットより先に前記同期パケットを前記基地局が送信した時刻を示す同期パケット送信時刻を含み、
自らを前記応答装置として指定する前記応答指定情報を含む前記同期パケットの次に前記基地局が送信する前記同期パケットは、前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を含み、
前記同期パケット受信処理は、
前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
自らが前記応答装置として指定された前記同期パケット受信処理に対応する、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記基地局と前記無線装置との間の伝搬時間を求めることを特徴とする無線装置。
【請求項7】
基地局との間でパケットを送受信する無線部と、
前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、
前記制御部は、
前記基地局から送信され、同期パケットを受信する同期パケット受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、
自らを応答装置として指定する応答指定情報が前記同期パケットに含まれるときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理を前記無線部と共に実行し、
前記同期パケットは、
前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻を含み、
自らを前記応答装置として指定する前記応答指定情報を含む前記同期パケットの次に前記基地局が送信する前記同期パケットは、前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を含み、
前記同期パケット受信処理は、
前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、
前記要求送信処理は、
前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、
前記制御部は、
自らが前記応答装置として指定された前記同期パケット受信処理に対応する、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記基地局と前記無線装置との間の伝搬時間を求めることを特徴とする無線装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の無線装置において、
前記基地局は、予め登録された複数の無線機との間でパケットを送受信し、
前記同期パケットは、
前記基地局が前記同期パケットを送信した回数を示すシーケンス番号と、前記基地局が登録している前記無線機の個数を示す登録装置数と、を含み、
前記制御部は、
自らを指定する応答指定情報が含まれていた前記同期パケットのうち最新のものに含まれる前記シーケンス番号と、
最後に受信された前記同期パケットに含まれていた前記シーケンス番号および前記登録装置数とに基づいて、自らの登録が抹消されたか否かを判定することを特徴とする無線装置。
【請求項9】
請求項8に記載の無線装置において、
前記制御部は、
前記基地局に自らが登録されていないときに、前記同期パケットを受信したときから所定の登録要求待ち時間が経過したときに、前記基地局に対して登録要求パケットを送信する処理を前記無線部と共に実行することを特徴とする無線装置。
【請求項10】
請求項6または請求項7に記載の無線装置において、
前記基地局は、予め登録された複数の無線機との間でパケットを送受信し、
前記制御部は、
前記基地局に自らが登録されていないときに、前記同期パケットを受信したときから所定の登録要求待ち時間が経過したときに、前記基地局に対して登録要求パケットを送信する処理を前記無線部と共に実行することを特徴とする無線装置。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の無線装置において、
前記伝搬時間に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求めることを特徴とする無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基地局および無線装置に関し、特に、パケットの送受信による同期処理に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)が広く用いられている。無線LANには、インターネット等の通信網に通信接続された複数のアクセスポイントが設置されるものがある。パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の情報端末は、アクセスポイントとの間で無線信号によるパケット通信を行い、アクセスポイントを介して通信網に通信接続する。
【0003】
各アクセスポイントは、情報端末との間で無線通信が可能なサービスエリアを形成する。また、各アクセスポイントは情報端末との間で時分割通信を行い、複数の通信回線を実現する。情報端末は、あるサービスエリアから他のサービスエリアに移動するときにはハンドオーバ処理によって途切れのない通信を行う。このように、各アクセスポイントが時分割通信を行い、複数のアクセスポイントが連携して動作するためには、各アクセスポイントのパケット送受信タイミングが同期している必要がある。
【0004】
そこで、各アクセスポイントは、例えば、GPS(Global Positioning System)から送信された信号から同期処理用の時刻情報を取得する。また、各アクセスポイントが、NTP(Network Time Protocol)を用いてインターネットから時刻情報を取得する無線LANもある。
【0005】
以下の特許文献1には、基地局と複数の同期用無線装置との間でパケットを送受信することで、各同期用無線装置が備えるローカル時計を、基地局が備える基地局時計に同期させる無線通信システムが記載されている。基地局は、GPS衛星から基準時刻情報を受信し、基地局時計が発する時刻を基準時刻情報が示す基準時刻に同期させる。これによって、各同期用無線装置が備えるローカル時計が発する時刻が、基準時刻に同期する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-184145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている無線通信システムでは、基地局が複数の同期用無線装置に同期パケットを同報送信し、各同期用無線装置は、同期パケットに応答して基地局に情報要求パケットを送信する。基地局から送信された1つの同期パケットに対して複数の同期用無線装置が情報要求パケットを送信するため、複数の同期用無線装置のそれぞれが1回の同期処理を実行するのに必要な時間が長くなる。これによって、同期処理の頻度が低下し、同期用無線装置の台数によっては時刻同期の精度が低下してしまうことがある。
【0008】
本発明の目的は、基地局と複数の無線装置との間の時刻同期の精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、各前記無線装置に同期パケットを同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答した前記無線装置から送信された情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記同期パケット送信処理は、前記同期パケットに応答すべき前記無線装置を指定する応答指定情報を前記同期パケットに含ませる処理を含み、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、先の前記送受信処理で前記同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先の前記送受信処理で求められた前記情報要求受信時刻とを、次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数の無線装置との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える基地局において、前記制御部は、各前記無線装置に同期パケットを同報送信する同期パケット送信処理と、前記同期パケットに応答した前記無線装置から送信された情報要求パケットを受信する要求受信処理と、を含む送受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、前記同期パケット送信処理は、前記同期パケットに応答すべき前記無線装置を指定する応答指定情報を前記同期パケットに含ませる処理を含み、前記要求受信処理は、前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、先の前記送受信処理で求められた前記情報要求受信時刻と、次の前記送受信処理で前記同期パケットが送信される処理を示す同期パケット送信時刻とを、当該次の前記送受信処理で送信される前記同期パケットに含ませることを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記制御部は、予め登録された複数の前記無線装置との間でパケットを送受信する処理を前記無線部と共に実行し、繰り返し送信する前記同期パケットに、各前記無線装置が順に指定されるように、各前記無線装置に対する前記応答指定情報を順に含ませる。
【0012】
望ましくは、前記制御部は、前記同期パケットを送信した後に、前記情報要求パケットを受信しない場合には、次に送信する前記同期パケットに、先に送信した前記同期パケットと同一の前記無線装置を指定する前記応答指定情報を含ませ、前記同期パケットを予め定められた回数に亘って送信しても前記情報要求パケットが前記無線部で受信されない場合には、前記応答指定情報によって指定される前記無線装置の登録を抹消する。
【0013】
望ましくは、前記制御部は、予め登録された複数の前記無線装置との間でパケットを送受信する処理を前記無線部と共に実行し、前記制御部は、前記要求受信処理を実行した後、次の前記同期パケット送信するまでの間に登録処理を前記無線部と共に実行し、前記登録処理は、未登録装置から送信された登録要求情報を受信し、当該登録要求情報を送信した前記未登録装置を、新たな前記無線装置として登録する処理を含む。
【0014】
また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記制御部は、前記基地局から送信される同期パケットを受信する同期パケット受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、自らを応答装置として指定する応答指定情報が前記同期パケットに含まれるときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理を、前記無線部と共に実行し、自らを前記応答装置として指定する前記応答指定情報を含む前記同期パケットは、当該同期パケットより先に前記同期パケットを前記基地局が送信した時刻を示す同期パケット送信時刻を含み、自らを前記応答装置として指定する前記応答指定情報を含む前記同期パケットの次に前記基地局が送信する前記同期パケットは、前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、自らが前記応答装置として指定された前記同期パケット受信処理に対応する、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記基地局と前記無線装置との間の伝搬時間を求めることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、基地局との間でパケットを送受信する無線部と、前記無線部を制御する制御部と、を備える無線装置において、前記制御部は、前記基地局から送信され、同期パケットを受信する同期パケット受信処理を前記無線部と共に繰り返し実行し、自らを応答装置として指定する応答指定情報が前記同期パケットに含まれるときに、情報要求パケットを送信する要求送信処理を前記無線部と共に実行し、前記同期パケットは、前記同期パケット自らが前記基地局から送信された時刻を示す同期パケット送信時刻を含み、自らを前記応答装置として指定する前記応答指定情報を含む前記同期パケットの次に前記基地局が送信する前記同期パケットは、前記基地局が前記情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を含み、前記同期パケット受信処理は、前記同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理を含み、前記要求送信処理は、前記情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理を含み、前記制御部は、自らが前記応答装置として指定された前記同期パケット受信処理に対応する、前記同期パケット送信時刻、前記同期パケット受信時刻、前記情報要求送信時刻、および、前記情報要求受信時刻に基づいて、前記基地局と前記無線装置との間の伝搬時間を求めることを特徴とする。
【0016】
望ましくは、前記基地局は、予め登録された複数の無線機との間でパケットを送受信し、前記同期パケットは、前記基地局が前記同期パケットを送信した回数を示すシーケンス番号と、前記基地局が登録している前記無線機の個数を示す登録装置数と、を含み、前記制御部は、自らを指定する応答指定情報が含まれていた前記同期パケットのうち最新のものに含まれる前記シーケンス番号と、最後に受信された前記同期パケットに含まれていた前記シーケンス番号および前記登録装置数とに基づいて、自らの登録が抹消されたか否かを判定する。
【0017】
望ましくは、前記制御部は、前記基地局に自らが登録されていないときに、前記同期パケットを受信したときから所定の登録要求待ち時間が経過したときに、前記基地局に対して登録要求パケットを送信する処理を前記無線部と共に実行する。
【0018】
望ましくは、前記基地局は、予め登録された複数の無線機との間でパケットを送受信し、前記制御部は、前記基地局に自らが登録されていないときに、前記同期パケットを受信したときから所定の登録要求待ち時間が経過したときに、前記基地局に対して登録要求パケットを送信する処理を前記無線部と共に実行する。
【0019】
望ましくは、前記無線装置は、前記伝搬時間に基づいて、前記無線装置が発する時刻を求める。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基地局と複数の無線装置との間の時刻同期の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】通信システムの構成を示す図である。
図2】同期処理のシーケンスチャートである。
図3】通信システムで用いられるパケットの構成を示す図である。
図4】登録処理のシーケンスチャートである。
図5】応用実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図6】アドホック通信システムの構成を示す図である。
図7】基地局のハードウエアの例を示す図である。
図8】同期用無線装置のハードウエアの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、本発明の実施形態に係る通信システム100の構成が示されている。通信システム100は、基地局10、アクセスポイント12-1~12-n、および情報端末20を備えている。
【0023】
各アクセスポイント12-j(jは、1~nのうちいずれかの整数)はインターネット18に接続されており、無線LANを構成する。情報端末20は、例えば、業務用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等である。
【0024】
各アクセスポイント12-jは、情報端末20との無線通信が可能なサービスエリアを形成する。情報端末20は、自らが存在するサービスエリアを形成するアクセスポイントと無線通信を行い、インターネット18に通信接続する。
【0025】
基地局10は、動作タイミング規定用の基地局時計を備えている。基地局10は、GPS衛星から基準時刻情報を受信し、基地局時計が発する時刻(基地局時刻)を基準時刻情報が表す基準時刻に合わせる。
【0026】
アクセスポイント12-jは、同期用無線装置14-jおよび無線LANノード16-jを備えている。同期用無線装置14-jは、無線LANノード16-jに時刻を出力するローカル時計を備えている。基地局10は、アクセスポイント12-1~12-nがそれぞれ備える同期用無線装置14-1~14-nのID(Identification)を自らのメモリに記憶し、基地局10には、同期用無線装置14-1~14-nが無線通信の相手として登録されている。なお、以下の説明では、同期用無線装置14-1~14-nを包括的に示す符号として、「14」の符号を用いる場合がある。
【0027】
基地局10は、自らに登録された同期用無線装置14-jとの間で通信を行い、同期用無線装置14-jと共に同期処理を実行する。同期用無線装置14-jは、同期処理を実行することによって、自らのローカル時計が発する時刻を基地局時刻に合わせる。ローカル時計は、基地局時刻に合わせられた時刻を無線LANノード16-jに与える。無線LANノード16-jは、ローカル時計から与えられた時刻に従うタイミングで動作する。これによって、無線LANノード16-1~16-3の動作が同期する。
【0028】
図2には、通信システム100で実行される同期処理のシーケンスチャートが示されている。同期処理では、基地局10が所定の送信周期STで各同期用無線装置14に同期パケットを繰り返し送信する。同期パケットには、n台の同期用無線装置14-1~14-nのうち、同期パケットに応答すべきもの(応答装置)1台を指定する応答指定情報が含まれている。
【0029】
基地局10が繰り返し送信する同期パケットには、同期用無線装置14-1~14-nが応答装置として1台ずつ順に指定されるように、各同期用無線装置14-1~14-nに対する応答指定情報が順に含められる。本実施形態では、基地局10は、第1回目に送信する同期パケットに、同期用無線装置14-1を応答装置として指定する応答指定情報を含ませる。基地局10は、第2回目に送信する同期パケットに、同期用無線装置14-2を応答装置として指定する応答指定情報を含ませる。・・・・・基地局10は、第j回目に送信する同期パケットに、同期用無線装置14-jを応答装置として指定する応答指定情報を含ませる。・・・・・基地局10は、第n回目に送信する同期パケットに、同期用無線装置14-nを応答装置として指定する応答指定情報を含ませる。
【0030】
基地局10は、第n+1回目に送信する同期パケットを、再び第1回目に送信する同期パケットとする。すなわち、基地局10は、再度の第1回目(実際の回数をnで除した際の余り)に送信する同期パケットに、同期用無線装置14-1を再び応答装置として指定する応答指定情報を含ませる。このように、同期用無線装置14-1~14-nが1台ずつ順に、さらには巡回的に指定されるように、各同期用無線装置14-1~14-nに対する応答指定情報が、繰り返し送信される同期パケットに順に含められる。
【0031】
各同期用無線装置14-jは、自らを応答装置として指定する同期用パケットを受信したときは、情報要求パケットを基地局10に送信する。基地局10は、情報要求パケットを受信し、情報要求パケットに応じて求めた情報を、次に送信する同期パケットに含ませる。応答装置として指定された同期用無線装置は、第j+1番目に基地局10から送信された同期パケットを受信し、同期パケットに含まれる情報を用いて同期処理を実行する。
【0032】
図3には、通信システム100で用いられるパケットの構成が示されている。この図に示されたパケットの構成は概略を示したものであり、必要に応じて様々な情報が付け加えられてもよい。パケットは、ヘッダ部30およびペイロード部32を備えている。ヘッダ部30は、送信先アドレス、送信元アドレス、種別情報およびシーケンス番号を含んでいる。
【0033】
送信先アドレスは、パケットの宛先の装置を示すアドレスである。送信元アドレスは、パケットを送信する装置を示すアドレスである。各アドレスには、基地局10または同期用無線装置14に割り当てられたIDが用いられてよい。種別情報は、パケットが同期パケット、情報要求パケット、または、後述する登録要求パケットのいずれであるかを示す。シーケンス番号は、1回送信されるごとに、1が加算されていく番号であり、パケットが送信された回数を示す。シーケンス番号は、パケットが、同期パケット、情報要求パケット、および登録要求パケットのそれぞれである場合について独立にカウントされる。
【0034】
ペイロード部32は、初期時刻、情報要求受信時刻、応答指定情報、登録装置数および誤り訂正符号を備えている。初期時刻、情報要求受信時刻および応答指定情報は、このパケットの種別が同期パケットである場合に用いられる。初期時刻は、1つ前の同期シーケンスにおいて、基地局10から同期パケットが送信された時刻を示す。情報要求受信時刻は、1つ前の同期シーケンスにおいて、情報要求パケットが基地局10で受信された時刻を示す。ここで、同期シーケンスとは、1送信周期STの間に基地局10と各同期用無線装置14との間で実行される一連の処理をいう。
【0035】
応答指定情報は、応答装置として指定した同期用無線装置14のIDを含む。すなわち、応答指定情報に含まれているIDを有する同期用無線装置14が応答装置として指定される。登録装置数は、基地局10に登録されている同期用無線装置14の数を示す。誤り訂正符号は、パケットを構成する符号についての誤り検出および誤り訂正を、基地局10および同期用無線装置14が実行するための符号である。
【0036】
同期処理について図2に戻って具体的に説明する。基地局10は、初期時刻t0-jに同期用無線装置14-1~14-nを宛先とする同期パケットを送信する(S1-1)。同期パケットは、同期処理を実行するタイミングを規定するために同期用無線装置14-1~14-nに送信するパケットである。同期パケットを送信する際に、基地局10は、同期用無線装置14-1~14-nに対して共通に割り当てられた同報アドレスを同期パケットに含ませる。各同期用無線装置14は、同期パケットを受信し、同期パケットに同報アドレスが含まれていることを認識することで、同期パケットに応じた処理を実行する。
【0037】
図2に示されているように、同期用無線装置14-1は、初期時刻t0-1より後の時刻t1-1に、第1回目の同期シーケンスにおいて基地局10から送信された同期パケットを受信する(S1-1)。同期用無線装置14-1は、受信した同期パケットに、自らを応答装置として指定する応答指定情報が含まれていることを認識すると、時刻t2-1に情報要求パケットを基地局10に送信する(S2-1)。基地局10は、時刻t3-1に情報要求パケットを受信する。
【0038】
同様に、同期用無線装置14-2は、初期時刻t0-2より後の時刻t1-2に、第2回目の同期シーケンスにおいて基地局10から送信された同期パケットを受信する(S1-2)。同期用無線装置14-2は、受信した同期パケットに、自らを応答装置として指定する応答指定情報が含まれていることを認識すると、時刻t2-2に情報要求パケットを基地局10に送信する(S2-2)。基地局10は、時刻t3-2に情報要求パケットを受信する。
【0039】
このように、jを1~nのうちいずれかの整数として、同期用無線装置14-jは、初期時刻t0-jより後の時刻t1-jに、第j番目の同期シーケンスにおいて基地局10から送信された同期パケットを受信する(S1-j)。同期用無線装置14-jは、受信した同期パケットに、自らを応答装置として指定する応答指定情報が含まれていることを認識すると、時刻t2-jに情報要求パケットを基地局10に送信する(S2-j)。基地局10は、時刻t3-iに情報要求パケットを受信する。
【0040】
第j番目の同期シーケンスにおいて、基地局10は、同期パケットを送信した初期時刻t0-j(同期パケット送信時刻t0-j)を自らの基地局時計によって求め、初期時刻t0-jを記憶する。また、基地局10は、情報要求パケットを受信した情報要求受信時刻t3-jを自らの基地局時計によって求め、情報要求受信時刻t3-jを記憶する。
【0041】
基地局10は、第j+1番目の同期シーケンスにおいて送信する同期パケットに、同期パケット送信時刻t0-jと、情報要求受信時刻t3-jを含ませる。
【0042】
第j番目の同期シーケンスにおいて同期用無線装置14-jは、同期パケットを受信した同期パケット受信時刻t1-jを、自らが備えるローカル時計によって求め、同期パケット受信時刻t1-jを記憶する。また、同期用無線装置14-jは、情報要求パケットを送信した情報要求送信時刻t2-jを、自らが備えるローカル時計によって求め、情報要求送信時刻t2-jを記憶する。
【0043】
また、第j+1番目の同期シーケンスにおいて同期用無線装置14-jは、受信した同期パケットから、同期パケット送信時刻t0-jおよび情報要求受信時刻t3-jを取得する。
【0044】
このように、同期用無線装置14-jは、第j番目の同期シーケンスと、第j+1番目の同期シーケンスを実行することで、同期パケット送信時刻t0-j、同期パケット受信時刻t1-j、情報要求送信時刻t2-jおよび情報要求受信時刻t3-jを取得する。
【0045】
同期用無線装置14-jは、次の(数1)に従って、同期用無線装置14-jと基地局10との間の伝搬時間Djを求める。ただし、(数1)では、数式を見易くするため、「-j」の符号は単に「j」と表記されている。伝搬時間Djは、基地局10と同期用無線装置14-jとの間でパケットを送信するのに要される遅延時間である。
【0046】
(数1)Dj=[(t1j-t0j)+(t3j-t2j)]/2
【0047】
(数1)は次のように導かれる。初期時刻t0-jおよび情報要求受信時刻t3-jは基地局10が備える基地局時計によって求められた時刻であり、同期パケット受信時刻t1-jおよび情報要求送信時刻t2-jは、同期用無線装置14-jが備えるローカル時計によって求められた時刻である。基地局時計に対してローカル時計がオフセット時間Toだけ進んでいるものとすると、同期パケットの伝搬時間Ds、および情報要求パケットの伝搬時間Ddはそれぞれ(数2)および(数3)のように表される。
【0048】
(数2)Ds=t1j-t0j-To
(数3)Dd=t3j-t2j+To
【0049】
伝搬時間Dsと伝搬時間Ddは等しくDjであるため、(数2)および(数3)の両辺を加算して2で割ることで(数1)が求められる。
【0050】
同期用無線装置14-jは、次の(数4)に従ってオフセット時間Toを求める。
【0051】
(数4)To=(t1j-t0j)-Dj
【0052】
同期用無線装置14-jは、自らのローカル時計の時刻からオフセット時間Toを減算することで、自らのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。同期用無線装置14-jは、無線LANノード16-j(図1)に自らのローカル時計の時刻を出力する。
【0053】
なお、同期用無線装置14-jは、(数4)の代わりに、次の(数5)に基づいてオフセット時間Toを求め、自らのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせてもよい。
【0054】
(数5)To=[(t1j-t0j)-(t3j-t2j)]/2
【0055】
(数5)は、(数2)および(数3)をオフセット時間Toについて解くことで求められる式である。また、(数5)は、(数4)のDjに(数1)のDjを代入することによっても求められる。
【0056】
n台の同期用無線装置14-1~14-nのうち、同期用無線装置14-jを除くその他の同期用無線装置14-k(kは、1~nのうちjを除く、いずれかの整数)も同様の処理を実行する。すなわち、同期用無線装置14-kは、第k番目の同期シーケンスを実行した後に、第k+1番目の同期シーケンスを実行することで、同期パケット送信時刻t0-k、同期パケット受信時刻t1-k、情報要求送信時刻t2-kおよび情報要求受信時刻t3-kを取得する。同期用無線装置14-kは、同期用無線装置14-jと同様の処理によってオフセット時間を求め、自らが備えるローカル時計の時刻からオフセット時間を減算した時刻に、自らが備えるローカル時計の時刻を合わせる。同期用無線装置14-kは、自らに付設された無線LANノードに自らのローカル時計が発する時刻を出力する。
【0057】
なお、同期用無線装置14-jは、第j+1番目の同期シーケンスを実行する度に、(数1)に従って伝搬時間Djを更新し、第j+1番目でない第h番目の同期シーケンスでは、先に求め記憶した伝搬時間Djを用いて同期処理を実行してよい。すなわち、第h番目の同期シーケンスでは、同期用無線装置14-jは、先の第j+1番目の同期シーケンスを実行したときに求め記憶した伝搬時間Djを用いて、(数4)と同様の意義を有する下記の(数6)に従ってオフセット時間Toを求め同期処理を実行してよい。ここで、先の第j+1番目とは、最後に第1回目~第n回目として一巡した同期シーケンスに対し、先に第1回目~第n回目として一巡した同期シーケンスのうちの第j+1番目の同期シーケンスをいう。
【0058】
(数6)To=[t1(h-1)-t0(h-1)]-Dj
【0059】
(数6)における同期パケット受信時刻t1(h-1)は、第h-1番目の同期シーケンスで、同期用無線装置14-jが同期パケットを受信した時刻である。同期パケット送信時刻t0(h-1)は、第h番目の同期シーケンスで同期用無線装置14-jが受信した同期パケットに含まれる同期パケット送信時刻である。
【0060】
なお、第j+1番目の同期シーケンスを実行したときに、同期用無線装置14-jは、過去において第1回目~第n回目の同期シーケンスをN回繰り返したN巡回について、(数1)に従って求めたN個の伝搬時間Djと、最後の1巡回について(数1)に従って求めた伝搬時間Djとによる統計値に基づいて、統計的伝搬時間djを求めてもよい。ここで、統計値は、N+1個の伝搬時間Djの平均値、中央値等であってよい。各同期シーケンスでは、同期用無線装置14-jは、伝搬時間Djに代えて統計的伝搬時間djを(数4)または(数6)に対して用いて、オフセット時間Toを求めてもよい。ここで(数4)は、第j+1番目の同期シーケンスが実行された後に用いられる式であり、(数6)は、第h番目の同期シーケンスが実行された後に用いられる式である。
【0061】
このような処理によって、各無線LANノードは、基地局時刻に同期した時刻を取得する。基地局時刻は、GPS衛星から送信される基準時刻に同期しているため、各無線LANノードが認識する時刻は、基準時刻に同期する。これによって、複数の無線LANノードのそれぞれの動作が同期する。
【0062】
本実施形態に係る通信システム100では、同期シーケンスが繰り返し実行される。各同期用無線装置14は、同期パケットを受信する度に、各自が備えるローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。これによって、各無線LANノードが認識する時刻を基準時刻に同期させる同期処理が送信周期TSごとに実行される。
【0063】
通信システム100で実行される処理によれば、特許文献1に記載されているように、1回の同期シーケンスにつき複数台の同期用無線装置が同期処理を実行する場合に比べて送信周期STが短くなる。これによって、同期用無線装置14の1台あたりの同期処理の頻度が高くなり、ローカル時計が示す時刻と、基準時計が示す時刻との誤差が小さくなる。また、通信システム100で実行される処理によれば、同期パケットを受信した同期用無線装置14-1~14-nのうち、同期パケットに含まれる応答指定情報によって応答装置として指定されたものだけが、情報要求パケットを基地局10に送信する。これによって、1回の同期シーケンスで基地局10で受信される情報要求パケットの数が少なくなり、同期シーケンスが単純化される。さらに、複数台の同期用無線装置14に対応する複数の情報要求受信時刻を、1つの同期パケットに含ませる必要がなく、同期パケットに含ませる情報量が削減される。
【0064】
パケット通信に関する規格であるIEEE1588では、マスタ(基地局)からスレーブ(同期用無線装置)に送信されるパケットとして、Syncメッセージ、Follow-upメッセージおよびDelay-Responseメッセージが規定されている。また、スレーブからマスタに送信されるパケットとしてDelay-Requestメッセージが規定されている。本実施形態に係る通信システム100では、Syncメッセージに相当する同期パケット、およびDelay-Requestメッセージに相当する情報要求パケットのみが繰り返し同期処理に用いられる。したがって、用いられるパケットの種類は2種類でよいため、IEEE1588に従った場合に比べて処理が簡単となり、迅速に同期処理が行われる。
【0065】
上記では、先に基地局10から送信される同期パケットについての初期時刻t0-jを、次に送信される同期パケットによって基地局10から同期用無線装置14-jに送信する実施形態について説明した。初期時刻t0-jは、その初期時刻t0-jに送信される同期パケット自身によって基地局10から同期用無線装置14-jに送信してもよい。この場合、基地局10は、同期パケットを送信する際に、第1の同期パケットが送信される初期時刻t0-jを求め、第1の同期パケットに初期時刻t0-jを含ませる。
【0066】
第1の同期パケットを受信した各同期用無線装置14-jは、同期パケット受信時刻t1-jを求めて記憶すると共に、第1の同期パケットから初期時刻t0-jを抽出し記憶する。そして、情報要求パケットを送信すると共に、情報要求送信時刻t2-jを求めて記憶する。同期用無線装置14-jは、次の同期シーケンスで基地局10から送信される同期パケット(第2の同期パケット)を受信し、第2の同期パケットから情報要求受信時刻t3-jを抽出し記憶する。同期用無線装置14-jは、先に記憶された初期時刻t0-j、同期パケット受信時刻t1-j、および情報要求送信時刻t2-jに加え、第2の同期パケットから抽出された情報要求受信時刻t3-jに基づいてオフセット時間Toを求め、各自が備えるローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。
【0067】
なお、上記では、第j回目の同期シーケンスで、同期用無線装置14-jが応答装置として指定される例が示された。この例は説明の便宜上のものであり、第j回目の同期シーケンスでは、必ずしも同期用無線装置14-jが応答装置として指定されなくてもよい。すなわち、第j回目の同期シーケンスで、任意の同期用無線装置14が応答装置として指定され、複数回に亘る同期シーケンスによって、1台ずつ順に同期用無線装置14が応答装置として指定されてよい。
【0068】
通信システム100では、同期用無線装置14-1~14-nが基地局10に登録されており、基地局10は、同期用無線装置14-1~14-nとの間で同期処理を実行し、同期用無線装置14-1~14-nとの間で無線通信を行う。以下では、既に登録された同期用無線装置14-1~14-nとは異なる新たな同期用無線装置14-(n+1)を基地局10が登録する登録処理について説明する。
【0069】
図4には、通信システム100で実行される登録処理のシーケンスチャートが示されている。新たな同期用無線装置14-(n+1)は、時刻t0-1に基地局10から送信された同期パケットを時刻τ1に受信する。同期用無線装置14-(n+1)は、時刻τ1から登録要求待ち時間TRが経過した時に、登録要求パケットを基地局10に送信する(S3)。登録要求パケットには、その送信元である同期用無線装置14-(n+1)のIDが含められる。
【0070】
登録要求待ち時間TRは、既に登録されている同期用無線装置14-1が情報要求パケットを基地局10に送信した後に、同期用無線装置14-(n+1)から登録要求パケットが送信されるように決定される。また、登録要求待ち時間TRは、同期用無線装置14-(n+1)が受信した同期パケットに対応する同期シーケンスが完了する前に、登録要求パケットが基地局10で受信されるように決定される。
【0071】
基地局10は、時刻τ2に登録要求パケットを受信すると、登録要求パケットから送信元のIDを取得し記憶する。これによって、同期用無線装置14-(n+1)が基地局10に登録される。
【0072】
基地局10は、同期用無線装置14-(n+1)を登録した同期シーケンスの直後の同期シーケンスで送信する同期パケットに、新たに登録した同期用無線装置14-(n+1)を応答装置として指定する応答指定情報を含ませる。
【0073】
図4に示されているように、同期用無線装置14-(n+1)は、初期時刻t0-2より後の時刻t1-2に、第2回目の同期シーケンスにおいて基地局10から送信された同期パケットを受信する(S1-2)。同期用無線装置14-(n+1)は、受信した同期パケットに、自らを応答装置として指定する応答指定情報が含まれていることを認識すると、時刻t2-2に情報要求パケットを基地局10に送信する(S2-2)。基地局10は、時刻t3-2に情報要求パケットを受信する。
【0074】
同期用無線装置14-2は、初期時刻t0-3より後の時刻t1-3に、第3回目の同期シーケンスにおいて基地局10から送信された同期パケットを受信する(S1-3)。同期用無線装置14-3は、受信した同期パケットに、自らを応答装置として指定する応答指定情報が含まれていることを認識すると、時刻t2-3に情報要求パケットを基地局10に送信する(S2-3)。基地局10は、時刻t3-3に情報要求パケットを受信する。
【0075】
このように、同期用無線装置14-(n+1)が、登録要求パケットを基地局10に送信した同期シーケンスの直後の同期シーケンスでは、同期用無線装置14-2が応答装置として指定されず、同期用無線装置14-(n+1)が先に応答装置として指定される。そして、同期用無線装置14-(n+1)が応答装置として指定された後に繰り返される同期シーケンスで、同期用無線装置14-2以降が順に応答装置として指定される。これによって、新たに登録された同期用無線装置14-(n+1)に対する同期処理が、他の登録済みの同期用無線装置14に対する同期処理よりも優先的に実行される。
【0076】
上記では、第1回目の同期シーケンスにおいて、同期用無線装置14-(n+1)を基地局10に登録する処理が示された。同期用無線装置14-(n+1)は、第j回目の同期シーケンスで基地局10に登録されてもよい。この場合、同期用無線装置14-(n+1)が基地局10に登録された同期シーケンスの直後の同期シーケンスにおいて、同期用無線装置14-(n+1)が応答装置として指定される。さらに、同期用無線装置14-(n+1)の登録がなければ応答装置として指定される予定であった他の同期用無線装置14が、同期用無線装置14-(n+1)の次に応答装置として指定される。
【0077】
なお、登録要求待ち時間TRは、同期用無線装置14ごとにランダムに決定される値であってよい。この場合、同期用無線装置14はキャリアセンスを実行する。すなわち、登済みの他の同期用無線装置14から送信された情報要求パケットが基地局10に送信されている間は、同期用無線装置14-(n+1)は登録要求パケットの送信動作を停止する。そして、情報要求パケットが基地局10に送信された後に、同期用無線装置14-(n+1)は基地局10に登録要求パケットを送信する。
【0078】
通信システム100では、同期パケットを送信してから送信周期STが経過するまでの間に、基地局10が情報要求パケットを受信しない場合、基地局10は、次の同期シーケンスにおいて、先の同期シーケンスと同一の同期用無線装置14を応答装置として指定する。すなわち、基地局10は、次の同期シーケンスにおいて、先の同期シーケンスと同一の同期用無線装置14を応答装置として指定する応答指定情報を同期パケットに含ませる。
【0079】
基地局10で情報要求パケットが受信されない原因には、通信状況が良好でないこと、応答装置として指定された同期用無線装置14の電源が遮断されたこと、応答装置として指定された同期用無線装置14に動作不良が生じたこと等がある。
【0080】
このように、基地局10が情報要求パケットを受信しない場合、最初に情報要求パケットを受信しない同期シーケンスを含めて、最大M回に亘って同一の同期用無線装置14を応答装置として指定する同期シーケンスを実行する。ここでMは、予め定められた2以上の整数である。
【0081】
これによって、偶発的に通信状況が良好でなくなった場合であっても、同期シーケンスがM回実行される間に通信状況が良好になったときには、応答装置として指定された同期用無線装置14と基地局10との間で同期処理が実行される。
【0082】
基地局10は、第M+1回目の同期シーケンスに亘って情報要求パケットを受信しないときには、第M+1回目の同期シーケンスにおいて、応答装置として指定していた同期用無線装置14のIDを自らのメモリから削除し、その同期用無線装置14の登録を抹消する。
【0083】
次に、同期用無線装置14が、自らが基地局10に登録されているか否かを判定する処理について説明する。同期用無線装置14は繰り返し同期パケットを受信し、自らを応答装置として指定する応答指定情報が同期パケットに含まれているときは、情報要求パケットを基地局10に送信する。同期用無線装置14は、順次受信する同期パケットのそれぞれから、シーケンス番号と登録装置数を取得する。そして、最後に受信した同期パケットに含まれていたシーケンス番号から、最後に自らを応答装置として指定した同期パケットに含まれていたシーケンス番号を減算した番号差が、最新の登録装置数のM倍以上であるときに、自らが基地局10に登録されていないと判定する。一方、同期用無線装置14は、番号差が最新の登録装置数のM倍未満であるときには、自らは基地局10に登録されていると判定する。同期用無線装置14は、自らが基地局10に登録されていないと判定したときは、次に同期パケットを受信したときに、登録要求パケットを基地局10に送信してもよい。
【0084】
図5には、応用実施形態に係る通信システム102の構成が示されている。この通信システム102は、図1に示される通信システム100に対し、中継局42を設けたものである。中継局42は、中継無線装置44および中継基地局46を備える。中継無線装置44は同期用無線装置14と同様の構成を有し、同期用無線装置14と同様の処理を実行する。中継基地局46は基地局10と同様の構成を有し、基地局10と同様の処理を実行する。
【0085】
中継無線装置44は基地局10との間で同期処理を実行し、そのローカル時計の時刻を基地局時刻に合わせる。中継無線装置44は、ローカル時計の時刻を中継基地局46に与える。中継基地局46は、自らが備える基地局時計の基地局時刻を、中継無線装置44から与えられた時刻に合わせる。
【0086】
中継基地局46は、各アクセスポイント12-j(j=1または2)が備える同期用無線装置14-jとの間で同期処理を実行する。同期処理を実行すると共に、同期用無線装置14-jは、それぞれに付設された無線LANノード16-jにローカル時計の時刻を与える。
【0087】
このような処理によって、各無線LANノード16-jは、中継基地局46の基地局時刻に同期し、さらには、基地局10の基地局時刻に同期した時刻を取得する。各無線LANノード16-jが同期用無線装置14-jから与えられた時刻に従ったタイミングで動作することで、複数のアクセスポイントの動作が同期する。また、基地局10の基地局時刻は、GPS衛星から送信される基準時刻に同期しているため、各アクセスポイントが認識する時刻は、基準時刻に同期する。
【0088】
この通信システム102では、各アクセスポイント12-jが、中継局42との間で同期処理を実行し、中継局42が基地局10との間で同期処理を実行する。したがって、図1に示される通信システム100に比べて、基地局10と各アクセスポイント12-jの間の距離を大きくしてもよい。
【0089】
同期用無線装置および無線LANノードは、無線LANのアクセスポイントを構成する他、アドホック無線装置を構成してもよい。複数のアドホック無線装置はマルチホップ通信によって、送信元のアドホック無線装置から宛先のアドホック無線装置にパケットを送信する。マルチホップ通信とは、送信元のアドホック無線装置から送信されたパケットが、他の1つまたは複数のアドホック無線装置による中継送信によって、通信状況によっては直接、宛先のアドホック無線装置に伝送される通信形態をいう。
【0090】
図6にはアドホック通信システム104の構成が示されている。アドホック無線装置48-j(j=1~n)は、同期用無線装置14-jおよび無線LANノード16-jを備える。同期用無線装置14-jは、基地局10との間で同期処理を実行し、基準時刻に同期した時刻を発生する。同期用無線装置14-jは基準時刻に同期した時刻を無線LANノード16-jに与える。無線LANノード16-jは、同期用無線装置14-jから与えられた時刻に従って動作する。これによって無線LANノード16-1~16-3の動作タイミングが同期する。無線LANノード16-1~16-nは動作タイミングが同期した状態でマルチホップ通信を行う。
【0091】
無線LANノード16-jには、情報端末20-jが接続されている。情報端末20-jは、無線LANノード16-jにマルチホップ通信を行わせることで、宛先の情報端末との間でパケット通信を行う。
【0092】
図7には基地局10のハードウエアの例が示されている。基地局10は、GPS受信部50、基地局時計51、制御部52、メモリ53および無線部54を備える。GPS受信部50は、GPS衛星から基準時刻情報を受信し、基準時刻を制御部52に出力する。基地局時計51は、基地局時刻を制御部52に出力する。制御部52は、基地局時計51を制御して、基地局時刻を基準時刻に合わせる。
【0093】
無線部54はパケットを受信し制御部52に出力する。また、無線部54は、制御部52から出力されたパケットを送信する。
【0094】
制御部52は、例えば、メモリ53若しくは外部の装置から読み込まれたプログラム、または、予め書き込まれたプログラムによって演算処理を実行するプロセッサによって構成される。制御部52は、無線部54と共にパケット送受信処理を実行する。
【0095】
パケット送受信処理は、例えば、(1)同期パケットを各同期用無線装置14(無線装置)に同報送信する同期パケット送信処理、および(2)同期パケットに応答して各同期用無線装置14から送信された各情報要求パケットを受信する要求受信処理を含む。
【0096】
また、パケット送信処理は、同期パケットを各同期用無線装置14に同報送信する処理と、同期パケットに応答すべき同期用無線装置14を指定する応答指定情報を同期パケットに含ませる処理を含む。
【0097】
要求受信処理は、情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を求める処理を含む。制御部52は、先のパケット送受信処理で同期パケットが送信された時刻を示す同期パケット送信時刻と、先のパケット送受信処理で同期用無線装置14に対応して求められた情報要求受信時刻とを、次のパケット送受信処理で送信される同期パケットに含ませる。なお、同期パケット送信時刻は、先のパケット送受信処理で同期パケットが送信された時刻ではなく、同期パケット自らが送信される時刻であってもよい。
【0098】
また、制御部52は、予め登録された同期用無線装置14との間でパケットを送受信する処理を無線部54と共に実行してよい。制御部52は、繰り返し送信する同期パケットに、複数の同期用無線装置14が順に指定されるように、各同期用無線装置14に対する応答指定情報を順に含ませてよい。
【0099】
制御部52は、同期パケットを送信した後に、情報要求パケットを受信しない場合には、次に送信する同期パケットに、先に送信した同期パケットと同一の同期用無線装置14を指定する応答指定情報を含ませてよい。この場合、制御部52は、同期パケットを予め定められた回数(M回)に亘って送信しても情報要求パケットが無線部54で受信されない場合には、応答指定情報によって指定される同期用無線装置14の登録を抹消してよい。
【0100】
制御部52は、要求受信処理を実行した後、次の同期パケット送信するまでの間に登録処理を無線部54と共に実行してよい。登録処理は、基地局10で登録されていない同期用無線装置14(未登録装置)から送信された登録要求情報を受信し、この登録要求情報を送信した未登録装置を、新たな同期用無線装置14として登録する処理を含んでよい。
【0101】
図8には同期用無線装置14のハードウエアの例が示されている。同期用無線装置14は、制御部56、ローカル時計57、インターフェース58、メモリ59および無線部60を備える。インターフェース58には、上記の無線LANノード、情報端末等の情報処理装置が接続される。ローカル時計57は、インターフェース58に接続された情報処理装置の動作タイミングを規定する時刻を発し、制御部56に出力する。
【0102】
無線部60はパケットを受信し制御部56に出力する。また、無線部60は、制御部56から出力されたパケットを送信する。
【0103】
制御部56は、例えば、メモリ59若しくは外部の装置から予め読み込まれたプログラム、または、予め書き込まれたプログラムによって演算処理を実行するプロセッサによって構成される。制御部56は、パケット受信処理および要求送信処理を無線部60と共に実行する。
【0104】
パケット受信処理は、例えば、基地局10から送信され、同期パケットを受信する処理を含む。また、要求送信処理は、例えば、自らを応答装置として指定する応答指定情報が同期パケットに含まれるときに、情報要求パケットを送信する処理を含む。
【0105】
同期用無線装置14を応答装置として指定する応答指定情報を含む同期パケットは、その同期パケットより先に同期パケットを基地局10が送信した時刻を示す同期パケット送信時刻を含む。また、同期用無線装置14を応答装置として指定する応答指定情報を含む同期パケットの次に基地局10が送信する同期パケットは、基地局10が情報要求パケットを受信した時刻を示す情報要求受信時刻を含む。
【0106】
同期パケット受信処理には、同期パケットを受信した時刻を示す同期パケット受信時刻を求める処理が含まれる。要求送信処理には、情報要求パケットを送信した時刻を示す情報要求送信時刻を求める処理が含まれる。なお、同期パケット送信時刻は、先のパケット受信処理で基地局10が同期パケットを送信した時刻ではなく、同期パケット自らが基地局10から送信された時刻であってもよい。
【0107】
制御部56は、自らを備える同期用無線装置14が応答装置として指定された同期パケット受信処理に対応する、初期時刻、同期パケット受信時刻、情報要求送信時刻、および、情報要求受信時刻に基づいて、基地局10と同期用無線装置14との間の伝搬時間を求める。同期用無線装置14は、このようにして求めた伝搬時間と、同一の同期シーケンスにおける同期パケット送信時刻および送信パケット受信時刻とに基づいてローカル時計57を制御し、ローカル時計57が発する時刻を基地局時刻に合わせる。
【0108】
制御部56は、インターフェース58に接続された情報処理装置に、ローカル時計57が発する時刻を出力する。
【0109】
同期パケットは、基地局10が同期パケットを送信した回数を示すシーケンス番号と、基地局10が登録している無線機(同期用無線装置)の個数を示す登録装置数とを含んでよい。この場合、制御部56は、自らを搭載する同期用無線装置14を指定する応答指定情報が含まれていた同期パケットのうち最新のものに含まれるシーケンス番号と、最後に受信された同期パケットに含まれていたシーケンス番号および登録装置数とに基づいて、自らの登録が抹消されたか否かを判定してよい。
【0110】
制御部56は、基地局10に自らが登録されていないときに、同期パケットを受信したときから所定の登録要求待ち時間が経過したときに、基地局10に対して登録要求パケットを送信する処理を無線部60と共に実行してよい。
【符号の説明】
【0111】
10 基地局、12-1~12-n アクセスポイント、14,14-1~14-n 同期用無線装置、16-1~16-n 無線LANノード、18 インターネット、20 情報端末、22 ヘッダ部、32 ペイロード部、42 中継局、44 中継無線装置、46 中継基地局、48-1~48-n アドホック無線装置、50 GPS受信部、51 基地局時計、53,59 メモリ、52,56 制御部、54,60 無線部、57 ローカル時計、58 インターフェース。
図1
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図8