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特開2023-117017積層体、滑り止め舗装構造体及び滑り止め舗装構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117017
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】積層体、滑り止め舗装構造体及び滑り止め舗装構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20230816BHJP
   E01C 7/35 20060101ALI20230816BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230816BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230816BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B32B27/30 A
E01C7/35
C09K3/00 R
C08J7/04 Z CFC
B32B27/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019474
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】山澤 英人
(72)【発明者】
【氏名】小高 一義
【テーマコード(参考)】
2D051
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
2D051AA08
2D051AE03
2D051AG14
2D051AG17
2D051AH02
4F006AA34
4F006AB24
4F006AB43
4F100AH06A
4F100AK25A
4F100AK53B
4F100AM00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02A
4F100CA24B
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ98
4F100JB12A
4F100JK08
(57)【要約】
【課題】硬化性及び靭性が良好なアクリル樹脂層を含み、各層の密着性が良好でかつ骨材の保持率が良好な滑り止め舗装構造体等の土木建築用積層体を提供する。
【解決手段】チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物を含むアクリル樹脂層、並びにエポキシ樹脂層を含み、所定の作製方法にて硬化性樹脂組成物から得られた硬化物の試験片を用いて、23℃における引張速度20mm/minの引張試験を行った際の破断時伸びが3%以上75%以下である、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物を含むアクリル樹脂層、並びにエポキシ樹脂層を含む積層体であって、
下記作製方法にて前記硬化性樹脂組成物から得られた硬化物の試験片を用いて、23℃における引張速度20mm/minの引張試験を行った際の、破断時伸びが、3%以上75%以下である、積層体。
(試験片の作製方法)
温度23℃、湿度50%の雰囲気下で硬化性樹脂組成物を型に注入し、温度23℃の雰囲気下、2時間かけて硬化させ、厚さ3mmの硬化物を得る。打ち抜き具を用いて硬化物からJIS K 6251:2010に準拠したダンベル状1号形試験片を採取する。
【請求項2】
道路舗装層、前記エポキシ樹脂層及び前記アクリル樹脂層がこの順に積層されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂層が骨材を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
道路舗装上に請求項3に記載の積層体を有する、滑り止め舗装構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の滑り止め舗装構造体の製造方法であって、
道路舗装上に、エポキシ樹脂を塗装し、前記エポキシ樹脂の上に滑り止め用骨材を散布して、エポキシ樹脂と滑り止め用骨材とを含むエポキシ樹脂層を形成する工程と、
前記エポキシ樹脂層の上に、チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)を含有する硬化性樹脂組成物を塗装してアクリル樹脂層を形成する工程と、を備える、滑り止め舗装構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、滑り止め舗装構造体及び滑り止め舗装構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗道上に樹脂を塗装し、次いで滑り止め用骨材を散布する滑り止め舗装には、エポキシ樹脂等を用いた滑り止め舗装が施工されている。このような滑り止め舗装の施工は、道路の滑り止め効果の向上、交通事故の低減等を目的としている。
【0003】
特許文献1には、骨材の脱離抑制を目的として、骨材を散布したエポキシ樹脂層上にラジカル重合性樹脂、芳香環の含有量が40質量%以下であるラジカル重合性単量体、硬化剤、及び、硬化促進剤を含有するラジカル重合性樹脂組成物により形成された上塗り層を設けることが記載されている。また、特許文献1には、エポキシ樹脂により形成された下地の上にラジカル重合性樹脂組成物からなる上塗り層を設けても、ラジカル重合性樹脂組成物が優れた常温硬化性を示していることが記載されている。
特許文献2には、骨材の良好な保持率を確保することを目的として、チオール化合物(A)、(メタ)アクリル系重合体又は多官能の(メタ)アクリレート(B)、単官能の(メタ)アクリレート(C)、還元剤(D)、及び硬化剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物を含むアクリル樹脂層、並びにエポキシ樹脂層を含む、積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-115291号公報
【特許文献2】特開2020-165289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のラジカル重合性樹脂組成物は、エポキシ樹脂により形成された下地の上に上塗り層として設けた際に、実使用上問題とならない常温硬化性を示すことが記載されている。しかしながら、前記ラジカル重合性樹脂組成物は、散布した骨材の保持率が必ずしも十分でなく、保持できなかった骨材を交通開放後に回収する必要が生じるという課題がある。
特許文献2に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むアクリル樹脂層、並びにエポキシ樹脂層を含む、積層体は、良好な骨材の保持率を示すことが記載されている。しかしながら、前記積層体には、引張破断伸度を改善する余地が認められる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、硬化性及び靭性が良好なアクリル樹脂層を含み、各層の密着性が良好でかつ骨材の保持率が良好な滑り止め舗装構造体等の土木建築用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[5]を要旨とする。
[1]チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物を含むアクリル樹脂層、並びにエポキシ樹脂層を含む積層体であって、
下記作製方法にて前記硬化性樹脂組成物から得られた硬化物の試験片を用いて、23℃における引張速度20mm/minの引張試験を行った際の、破断時伸びが、3%以上75%以下である、積層体。
(試験片の作製方法)
温度23℃、湿度50%の雰囲気下で硬化性樹脂組成物を型に注入し、温度23℃の雰囲気下、2時間かけて硬化させ、厚さ3mmの硬化物を得る。打ち抜き具を用いて硬化物からJIS K 6251:2010に準拠したダンベル状1号形試験片を採取する。
[2]道路舗装層、前記エポキシ樹脂層及び前記アクリル樹脂層がこの順に積層されている、[1]に記載の積層体。
[3]前記エポキシ樹脂層が骨材を含む、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]道路舗装上に[3]に記載の積層体を有する、滑り止め舗装構造体。
[5][4]に記載の滑り止め舗装構造体の製造方法であって、
道路舗装上に、エポキシ樹脂を塗装し、前記エポキシ樹脂の上に滑り止め用骨材を散布して、エポキシ樹脂と滑り止め用骨材とを含むエポキシ樹脂層を形成する工程と、
前記エポキシ樹脂層の上に、チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)を含有する硬化性樹脂組成物を塗装してアクリル樹脂層を形成する工程と、を備える、滑り止め舗装構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化性及び靭性が良好なアクリル樹脂層を含み、各層の密着性が良好でかつ骨材の保持率が良好な滑り止め舗装構造体等の土木建築用積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
<積層体>
本発明の積層体は、アクリル樹脂層と、エポキシ樹脂層とを有する。
【0011】
≪アクリル樹脂層≫
本発明において、アクリル樹脂層は硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0012】
<硬化性樹脂組成物>
本発明における硬化性樹脂組成物は、チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)を含有する。
以下、本発明に用いる各成分について説明する。
【0013】
(チオール化合物(A))
チオール化合物(A)としては、脂肪族チオール及び芳香族チオフェノール等のチオール基を1個以上有するチオール化合物が挙げられる。
硬化性樹脂組成物を硬化したアクリル樹脂層は、薄膜にして硬化すると空気中の酸素の影響を受けて硬化性が低下する場合がある。一方、チオール化合物(A)を配合すると硬化性を改善できる。
【0014】
本発明において、チオール化合物(A)としては、脂肪族チオールが好ましい。チオール化合物(A)は、1級チオール化合物、2級チオール化合物及び3級チオール化合物のいずれも使用できる。硬化性改善の点から、チオール化合物(A)としては、単官能チオール化合物よりも多官能チオール化合物が好ましく、1級チオール基又は2級チオール基を2個以上有する多官能チオールがより好ましく、1級チオール基又は2級チオール基を3個以上有する多官能チオールがさらに好ましい。なお、多官能チオールとは、チオール基を2個以上有するチオール化合物であり、n官能チオールとは、チオール基をn個有するチオール化合物を意味する。
【0015】
1級チオール化合物の具体例としては、テトラエチレングリコールビスメルカプトアセテート、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等の2官能チオールが挙げられる。
【0016】
また、1級チオール化合物の具体例としては、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトブチレート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリス-[(3-メルカプトブチリルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、グリセロールトリス-(3-メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリス-(4-メルカプトブチレート)等の3官能チオールが挙げられる。
【0017】
また、1級チオール化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブチレート)等の4官能チオール;ジペンタエリスリトールヘキサメルカプトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(4-メルカプトブチレート)等の4官能を超える多官能チオール等が挙げられる。
【0018】
2級チオール化合物の具体例としては、3-メルカプト酪酸等の1官能チオールが挙げられる。
【0019】
また、2級チオール化合物の具体例としては、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4-メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(4-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(4-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(4-メルカプトバレレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトバレレート)、水素化ビスフェノールAビス(3-メルカプトブチレート)、ビスフェノールAジヒドロキシエチルエーテル-3-メルカプトブチレート、エチレングリコールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、オクタンジオールビス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)等の2官能チオールが挙げられる。
【0020】
また、2級チオール化合物の具体例としては、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシエチル)]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトバレレート)、トリス-[(3-メルカプトブチリルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)、トリス-2-(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)エチルイソシアヌレート等の3官能チオールが挙げられる。
【0021】
また、2級チオール化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)等の4官能チオールが挙げられる。
【0022】
また、2級チオール化合物の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(4-メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプト-3-フェニルプロピオネート)等の4官能を超える多官能チオール等が挙げられる。
【0023】
それらの中でも、薄膜での硬化性を改善できる点から、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシエチル)]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
チオール化合物(A)の分子量は、200~1000が好ましい。
チオール化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、1級チオール化合物と2級チオール化合物を併用して用いてもよい。
【0025】
(カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B))
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)を配合することで、後述するエポキシ樹脂層及び滑り止め用骨材との密着性を向上することができる。
【0026】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートは、1個の(メタ)アクリロイル基、及び1個以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートである。
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、酸無水物と水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるものが挙げられる。
【0027】
前記酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸等の脂肪族酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物;が挙げられる。
【0028】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレートが挙げられる。
これら酸無水物と水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応は、公知の方法によって実施できる。
【0029】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチルが挙げられる。
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤は、1個の(メタ)アクリロイル基を有する加水分解性シラン化合物である。
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
((メタ)アクリル系重合体又は化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C))
(メタ)アクリル系重合体又は化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)は、(メタ)アクリル系重合体(以下、「重合体(C1)」とも記す。)、及び化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート(C2)」とも記す。)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。(メタ)アクリル系重合体又は化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)を配合することで、硬化性樹脂組成物の粘度調整を行うことができ、さらに硬化時間を短縮させることができる。
【0032】
重合体(C1)は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。重合体(C1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリレート(共)重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体、重合性二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル酸(共)重合体は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリル酸(共)重合体としては、例えば、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と他の単量体(ただし、(メタ)アクリレートを除く。)との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体が挙げられる。他の単量体を用いる場合、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(メタ)アクリレート(共)重合体は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリレート(共)重合体としては、例えば、1種以上の(メタ)アクリレートのみを重合した(共)重合体、1種以上の(メタ)アクリレートと他の単量体(ただし、(メタ)アクリル酸を除く。)との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基含有単量体が挙げられる。他の単量体を用いる場合、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(メタ)アクリレートとしては、後述する化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の説明において例示する単官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体は、前記(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と前記(メタ)アクリレートに由来する構成単位とを有する共重合体である。
【0037】
重合性二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有し、かつ重合性二重結合を有する単独重合体又は共重合体である。
【0038】
(メタ)アクリレート(C2)としては、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0039】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロプレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート等のアルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
前記多官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基と複数のウレタン結合とを有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基(-NCO)を有するウレタンオリゴマーと、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて製造することができる。
【0045】
前記ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0046】
また、前記ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、2価フェノールと、アルキレンオキサイドとの付加反応生成物が挙げられる。
2価フェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
【0047】
また、前記ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多塩基酸との反応で得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、メチルペンタンジオールが挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸が挙げられる。
【0048】
また、前記ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールとラクトンとから得られるポリラクトンジオールが挙げられる。
【0049】
また、前記ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリオールとしては、例えば、ジオールと、カーボネート化剤との反応で得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。
ジオールとしては、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
カーボネート化剤としては、例えば、ホスゲン、ジメチルカーボネートが挙げられる。
【0050】
ポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。
【0052】
また、ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネートと、水と、トリメチロールプロパン等とのアダクト化合物が挙げられる。
【0053】
また、ウレタンオリゴマーの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネートの三量体環化化合物が挙げられる。
【0054】
イソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられる水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造において、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基以外のビニル基を有する化合物(アリル基を有するアルコール等)とを併用してもよい。この場合、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基に加えて、水酸基及びビニル基を有する化合物由来のビニル基を有する。
【0057】
前記アリル基を有するアルコールとしては、例えば、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
【0058】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基とポリエステル骨格とを有する化合物である。ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、多塩基酸及び多価アルコールを反応させて得られたポリエステルと、その末端水酸基又は末端カルボキシ基とエステル結合が可能な官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させて製造することができる。
【0059】
前記ポリエステルの製造に用いられる多塩基酸としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸等の二塩基酸が挙げられる。多塩基酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記ポリエステルの製造に用いられる多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の2価アルコールが挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分との反応物である。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、固形状のもの、液状のもの等、様々なものを用いることができる。
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの製造に用いられる単量体成分には、必要に応じて(メタ)アクリル酸以外の他の単量体が含まれていてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸と共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、後述する化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の説明において例示する単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル系重合体又は化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)としては、例えば、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリレート(共)重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。(メタ)アクリル系重合体又は化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
(化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D))
化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つのみ有する(メタ)アクリレートである。
化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)を配合することで、硬化性樹脂組成物の硬化物の硬化性、靭性、耐候性、耐薬品性、耐汚染性及び耐磨耗性等これら各種物性を制御することが可能となる。
【0065】
化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
また、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0067】
また、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
また、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
また、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロテンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環を有する(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトシキエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
また、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0071】
化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、前述した中でも、粘度を低減できる点から、メチルメタクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0073】
(還元剤(E)及び硬化剤(F))
本発明において、硬化性樹脂組成物は、レドックス系重合開始剤から発生するラジカルによって、重合反応が進行し、硬化し、アクリル樹脂層となる。レドックス系重合開始剤は、還元剤(E)と、硬化剤(F)とを併用した重合開始剤である。
【0074】
レドックス系重合開始剤に用いられる還元剤(E)と硬化剤(F)の組み合わせの例として、例えば、下記の(i)~(iv)が挙げられる。
【0075】
(i)還元剤(E):芳香族3級アミン類と、硬化剤(F):ジベンゾイルパーオキサイドとの組み合わせ。
芳香族3級アミン類としては、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N-(2-ヒドロキシエチル)N-メチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが挙げられる。
また、芳香族3級アミン類としては、例えば、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン又はN,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
芳香族3級アミン類は、p(パラ)体に限定されず、o(オルト)体、m(メタ)体でもよい。
【0076】
(ii)還元剤(E):金属石鹸類と、硬化剤(F):ハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
金属石鹸類としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸ニッケル、コバルトアセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートが挙げられる。
【0077】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0078】
(iii)還元剤(E):チオ尿素化合物と、硬化剤(F):ハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
チオ尿素化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジプロピルチオ尿素、N,N’-ジ-n-ブチルチオ尿素、N,N’-ジラウリルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、1-アセチル-2-チオ尿素、1-ベンゾイル-2-チオ尿素が挙げられる。
ハイドロパーオキサイドとしては、前記(ii)に記載のハイドロパーオキサイドと同じ化合物を使用することができる。
【0079】
(iv)還元剤(E):チオ尿素化合物と、硬化剤(F):モノカーボネート型過酸化物との組み合わせ。
チオ尿素化合物としては、前記(ii)に記載のチオ尿素化合物と同じ化合物を使用することができる。
モノカーボネート型過酸化物としては、例えば、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0080】
還元剤(E)及び硬化剤(F)は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤(E)と硬化剤(F)との組み合わせとしては、アクリル樹脂の硬化時間を短くして生産性を向上する点から、前記(i)の組み合わせが好ましい。前記(i)の組み合わせにおける芳香族3級アミン類としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが好ましい。
【0081】
本発明において、硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前述したチオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、還元剤(E)、及び硬化剤(F)以外の成分(以下、「他の成分」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
【0082】
他の成分としては、例えば、パラフィンワックス、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、揺変剤、消泡剤、重合禁止剤、各種添加剤、硬化剤(F)以外のラジカル重合開始剤(熱重合開始剤、光重合開始剤等)が挙げられる。
【0083】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、酸素による硬化阻害を抑制するために、パラフィンワックスを加えてもよい。
パラフィンワックスの融点は、40℃~80℃が好ましい。融点が40℃以上であれば、アクリル樹脂を硬化させる際に十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。融点が80℃以下であれば、硬化性樹脂組成物を調製する際、パラフィンワックスのアクリル樹脂への溶解性が良好となる。
【0084】
パラフィンワックスは、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。融点の異なるパラフィンワックスを併用することによって、温度が変わったときであっても、十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。融点の異なる2種以上のパラフィンワックスを併用する際には、融点の差が5℃~20℃程度のものを併用することが好ましい。
【0085】
パラフィンワックスとしては、表面硬化性を向上させる点で、有機溶剤に分散したワックスを用いても良い。分散状態のワックスの粒子径は、0.1μm~50μmが好ましい。ワックスが有機溶剤に分散状態にあり、分散状態のワックスの粒子径が0.1μm~50μmに微粒子化されていることにより、空気遮断作用を効果的に発現する。分散状態のパラフィンワックスは市販されており、これをそのまま添加することができる。
【0086】
パラフィンワックスの具体的な製品名としては、例えば、パラフィン115(カタログ記載の融点:47℃、日本精蝋株式会社製)、パラフィン130(カタログ記載の融点:55℃、日本精蝋株式会社製)、パラフィン150(カタログ記載の融点:66℃、日本精蝋株式会社製)が挙げられる。
【0087】
本発明において硬化性樹脂組成物には、硬化時間をより短縮する目的で、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを加えてもよい。末端にイソシアネート基を有するプレポリマーは、反応性が高く、空気中の水分や硬化性樹脂組成物中の単量体成分と反応しやすい。従って、硬化性樹脂組成物がイソシアネート基を有するプレポリマーを含有すれば、硬化時間をより短縮できる。末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとしては、イソシアネートプレポリマー及びイソシアネートプレポリマーと2個以上の活性水素基を有するポリオールから合成されるプレポリマーを意味する。
【0088】
イソシアネートプレポリマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等をプレポリマー化したポリイソシアヌレートが挙げられる。イソシアネートプレポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
2個以上の活性水素基を有するポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類や、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール類;ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレンプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(カプロラクトン)ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリ(ブチレンカーボネート)ポリオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ(ヘキサンアジペート)ジオール等の高分子ポリオールが挙げられる。これらは、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとの反応性の点から、通常、平均官能基数2~6の範囲にあるものが好ましい。
【0090】
また、前記ポリオールの他に、例えば、エチレンジアミン、エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミン等の脂肪族ポリアミン;4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン等の芳香族ポリアミンを用いることもできる。本発明に用いられる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーは、イソシアネート基(-NCO)が、ポリオールやポリアミン等の活性水素化合物の活性水素基(-OH,-NH等)に対し、例えば、NCO/H当量比が、1.2~10となる割合で、反応温度約40℃~130℃で4時間~10時間反応させて製造することができる。
【0091】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、硬化時の収縮の低減を図るために可塑剤を加えてもよい。可塑剤を加えることで多官能の(メタ)アクリレートと、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)との配合割合が低くなるため、硬化性樹脂組成物の硬化時の収縮を低減することができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル等のフタル酸エステルが挙げられる。
【0092】
また、可塑剤としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステルが挙げられる。
【0093】
また、可塑剤としては、例えば、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステルが挙げられる。
【0094】
また、可塑剤としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステルが挙げられる。
【0095】
また、可塑剤としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソペンチルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンジカルボン酸エステルが挙げられる。
【0096】
また、可塑剤としては、例えば、塩素化パラフィン等のパラフィン(ただし、前記パラフィンワックスを除く。)が挙げられる。
【0097】
可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、硬化物の酸化劣化を防止するために、酸化防止剤を加えてもよい。酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0099】
また、酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト等のリン系酸化防止剤が挙げられる。
【0100】
また、酸化防止剤としては、例えば、ジヘキシルスルフィド、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0101】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、硬化物の光劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を加えてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-オクチルオキシベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノンの誘導体が挙げられる。
【0102】
また、紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジターシャリイブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、又はこれらのハロゲン化物が挙げられる。
【0103】
また、紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-ターシャリイブチルフェニルサリシレート等のフェニルサリシレート類が挙げられる。
【0104】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、揺変性を付与するために、揺変剤を加えてもよい。揺変剤としては、例えば、ウレタンウレア系揺変剤、脂肪酸アマイド、有機ベントナイト等の有機系揺変剤が挙げられる。
また、揺変剤としては、例えば、微粒子シリカ等の無機系揺変剤が挙げられる。
【0105】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、アクリル樹脂中の気泡を取り除くために、消泡剤を加えてもよい。消泡剤としては、例えば、特殊アクリル系重合物を溶剤に溶解させたアクリル系消泡剤、特殊ビニル系重合物を溶剤に溶解させたビニル系消泡剤が挙げられる。
【0106】
消泡剤の具体的な製品名としては、例えば、楠本化成株式会社製のディスパロンシリーズである、OX-880EF、OX-881、OX-883、OX-8040、1922、1927、P-410EF、P-420、P-425、PD-7、1970、230、230HF、LF-1982が挙げられる。
【0107】
また、消泡剤の具体的な製品名としては、例えば、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-052、BYK-1752が挙げられる。
【0108】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、アクリル樹脂の貯蔵安定性を向上するために、重合禁止剤を加えてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。
【0109】
本発明において、硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上するために、熱重合開始剤を加えてもよい。熱重合開始剤としては、公知の過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
本発明において、硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上するために、公知の光重合開始剤を加えてもよい。
【0110】
[各成分の配合量]
チオール化合物(A)の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量部に対して、0.05質量部~2質量部が好ましく、0.1質量部~1.5質量部がより好ましい。
チオール化合物(A)の含有量が前記範囲内であれば、多いほど硬化性樹脂組成物を薄膜で硬化させたときの硬化性が良好になる傾向がある。チオール化合物(A)の含有量が前記範囲内であれば、少ないほど、チオール化合物(A)は比較的高価であるので、硬化性樹脂組成物の経済性が向上する傾向がある。
【0111】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量%に対して、1質量%~10質量%が好ましく、2質量%~8質量%がより好ましい。カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量が前記範囲内であれば、多いほど、エポキシ樹脂層及び滑り止め用骨材との密着性を向上する傾向がある。カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量が前記範囲内であれば、少ないほど、硬化性樹脂組成物から得られた硬化物の、破断時伸が伸びる傾向がある。
【0112】
(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量%に対して、5質量%~60質量%が好ましく、15質量%~45質量%がより好ましい。(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量が前記範囲内であれば、多いほど硬化性樹脂組成物の硬化時間を短縮し、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量が前記範囲内であれば、少ないほど硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる傾向がある。
【0113】
前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量%に対して、40質量%~90質量%が好ましく、45質量%~85質量%がより好ましく、50質量%~70質量%がさらに好ましい。前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量が前記範囲内であれば、多いほど硬化性樹脂組成物の粘度が低くなり、少ないほど硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。
【0114】
前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)としては、メチルメタクリレートを含有することが好ましい。メチルメタクリレートの含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量%に対して、30質量%~70質量%が好ましく、40質量%~60質量%がより好ましく、45質量%~55質量%がさらに好ましい。
【0115】
メチルメタクリレートの含有量が前記範囲内であれば、多いほど硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる。また、メチルメタクリレートの含有量が前記範囲内であれば、少ないほど、メチルメタクリレートの揮発に伴う硬化性樹脂組成物の増粘や糸曳が発生しにくくなり、塗装作業性が良好となる。
【0116】
還元剤(E)の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましく、0.3質量部~3質量部がさらに好ましい。還元剤(E)の含有量が前記範囲内であれば、多いほど硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。還元剤(E)の含有量が前記範囲内であれば、少ないほど硬化性樹脂組成物のゲル化時間が長くなり、硬化性樹脂組成物の撹拌作業を行いやすくなる。
【0117】
硬化剤(F)の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)の含有量と(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)の含有量と前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)の含有量との合計100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましく、0.3質量部~3質量部がさらに好ましい。硬化剤(F)の含有量が前記範囲内であれば、多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。硬化剤(F)の含有量が前記範囲内であれば、少ないほど、硬化性樹脂組成物のゲル化時間が長くなり、硬化性樹脂組成物の撹拌作業を行いやすくなる。
【0118】
本発明において、硬化性樹脂組成物は、チオール化合物(A)、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の少なくとも1種である化合物(B)、(メタ)アクリル系重合体又は前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)、前記化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)、及び還元剤(E)、必要に応じて他成分を混合して硬化剤未配合の樹脂組成物を調製し、硬化反応を行う直前に硬化剤(F)を硬化剤未配合の樹脂組成物に配合する方法によって重合反応を開始し、硬化物を得る方法が好ましい。
【0119】
アクリル樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物の塗布厚は、0.3mm~3mmが好ましく、0.5mm~2mmがより好ましい。塗布厚が前記範囲内であれば、薄いほど滑り止め舗装としての効果が良好となる傾向にあり、厚いほど滑り止め用骨材の離脱量が少なくなる傾向にある。
【0120】
硬化性樹脂組成物の塗工手段としては、例えば、ローラー、金鏝、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられる。
また、施工性の点から、硬化性樹脂組成物の塗工時の温度は、-30℃~60℃が好ましく、-10℃~40℃がより好ましく、重合時間は20分間~60分間の範囲が好ましい。
【0121】
重合時間が20分間以上であると、硬化性樹脂組成物の良好な塗装作業性、滑り止め用骨材のグリップ性が得られ、60分間以下であると、全体の重合時間を短くすることができる。
還元剤(E)及び硬化剤(F)の配合量を塗工の際の温度に応じて調整することで、重合時間を調整できる。
【0122】
重合反応後、次いで養生を行うことが好ましい。養生温度は、-10℃~65℃が好ましく、10℃~60℃がより好ましく、15℃~55℃がさらに好ましい。養生温度を-10℃~65℃とすることで、硬化性樹脂組成物の重合反応が十分に進行し、硬化物の特性が良好となる。養生時間は、養生温度によって異なるが、10分間~24時間が好ましい。
硬化物中の気泡を抑制するために、硬化性樹脂組成物に硬化剤(F)を配合した後に、硬化性樹脂組成物に対して真空脱泡や振動脱泡等を実施してもよい。
【0123】
本発明における硬化性樹脂組成物の硬化物は、下記作製方法にて樹脂組成物から得られた試験片を用いて、23℃における引張速度20mm/minの引張試験を行った際の、破断時伸びが、3%以上50%以下である。
また、引張試験を行った際の、引張破壊強度が、20N/mm以上であることが好ましく、25N/mm以上であることがより好ましい。
破断時伸びを、3%以上75%以下とすることで、十分な靭性を有するため、滑り止め舗装構造体を始めとする土木建築用積層体として好適に使用できる。
また、引張破壊強度を、20N/mm以上とすることで、十分な強度を有するため、滑り止め舗装構造体を始めとする土木建築用積層体として好適に使用できる。
【0124】
(試験片の作製方法)
温度23℃、湿度50%の雰囲気下で硬化性樹脂組成物を型に注入し、温度23℃の雰囲気下、2時間かけて硬化させ、厚さ3mmの硬化物を得る。打ち抜き具を用いて硬化物からJIS K 6251:2010に準拠したダンベル状1号形試験片を採取する。
【0125】
≪エポキシ樹脂層≫
本発明において、エポキシ樹脂層は、後述する土木建築用として使用される公知のエポキシ樹脂によって形成される。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂を用いることができる。これらの中でも、土木建築用に圧倒的に用いられているものは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。また、前記エポキシ樹脂としては、常温での硬化性を向上するため、硬化剤としてアミン化合物をエポキシ樹脂中1質量%~50質量%、硬化促進剤を樹脂組成物中0.1質量%~5質量%配合することが一般的である(例えば、特許第3874167号公報、樹脂舗装技術協会「ニート工法樹脂系すべり止め舗装要領書(2013年度版)」等を参照。)。
【0126】
前記エポキシ樹脂を用いてエポキシ樹脂層を形成する方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂を、刷毛、金鏝、レーキ等を使用して基材や舗道に塗布する方法が挙げられる(例えば、樹脂舗装技術協会「ニート工法樹脂系すべり止め舗装要領書(2013年度版)」を参照。)。
【0127】
<土木建築用積層体>
本発明の積層体は、土木建築用積層体として好適に使用できる。
本発明の積層体は、土木建築用積層体として、アスファルトやコンクリート等の床面、壁面、道路の舗装面等の被覆材料として使用することができる。
【0128】
土木建築用積層体としては、アクリル樹脂層の上にエポキシ樹脂層を積層した積層体であってもよく、エポキシ樹脂層の上にアクリル樹脂層を積層した積層体であってもよい。また、アクリル樹脂層とエポキシ樹脂層との間に他の層を有していてもよい。エポキシ樹脂よりも硬化時間が短いアクリル樹脂によって形成されるアクリル樹脂層を含むことで、全体の施工時間を短くすることができる。前記アクリル樹脂層及び前記エポキシ樹脂層の少なくとも1種は、骨材等の他の材料を含んでいてもよい。
【0129】
被覆材料としては、例えば、土木建築用塗料、道路用塗料、補修材、目地材等の土木建築用塗料から形成される被覆材料が挙げられる。
【0130】
土木建築用塗料としては、例えば、壁面用塗料、床用塗料、屋根用塗料、橋梁用塗料、プラント用塗料、鉄構造物用塗料、コンクリート用塗料が挙げられる。
道路用塗料としては、例えば、滑り止め用塗料、排水性塗料、遮熱塗料、道路マーキング用塗料、床版防水工法用塗料が挙げられる。
【0131】
補修材としては、例えば、コンクリート用補修材、道路用補修材が挙げられる。
目地材としては、例えば、タイル用目地材、石材用目地材、コンクリート用目地材、アスファルト用目地材が挙げられる。
【0132】
<滑り止め舗装構造体>
本発明の滑り止め舗装構造体とは、アスファルトやコンクリート舗装等の道路舗装面に、バインダーとなるエポキシ樹脂を薄く均一に塗布し、前記エポキシ樹脂の上に後述する滑り止め用骨材を散布して路面に固着させたエポキシ樹脂層の上に、上塗りとして上記の硬化性樹脂組成物を塗工して、アクリル樹脂層を形成した舗装構造体を意味する。
【0133】
積層体が滑り止め用骨材を含有することで、積層体に滑り止め機能を付与することができる。骨材の具体例としては、砂、硅砂、川砂、寒水石、エメリー、大理石、炭酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化ほう素粉、アルミナ、スラグ、ガラス粉末、セラミック骨材、陶器屑、着色骨材等が挙げられる。これら骨材は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0134】
また、骨材の粒径は、アクリル樹脂層又はエポキシ樹脂層の厚みにもよるが、ふるい分けによる粒径で5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。骨材の粒子径が5mm以下であると、積層体に対して柔軟性が得られやすい。
【0135】
<滑り止め舗装構造体の製造方法>
本発明の滑り止め舗装構造体は、道路舗装面として、特にアスファルトやコンクリート舗装面を対象とし、これらの表面を被覆することにより製造できる。
本発明の滑り止め舗装構造体の製造方法は、上記の本発明の滑り止め舗装構造体の製造方法であって、道路舗装面上に、下地として土木建築用として使用される公知のエポキシ樹脂を塗装し、前記エポキシ樹脂の上に滑り止め用骨材を散布して、エポキシ樹脂と滑り止め用骨材を含むエポキシ樹脂層を形成する工程と、前記エポキシ樹脂層の上に、上塗りとして前記硬化性樹脂組成物を塗装してアクリル樹脂層を形成する工程とを備える。
【0136】
例えば、まず道路舗装面上にエポキシ樹脂を塗装し、次に、エポキシ樹脂がゲル化する前に、エポキシ樹脂の上に滑り止め用骨材を散布する。道路舗装面上に塗装したエポキシ樹脂の塗布厚は、0.5mm~2mmが好ましく、1mm~1.8mmがより好ましい。塗布厚が薄すぎると硬化性が低下し、滑り止め用骨材の離脱量が多くなる傾向にあり、厚すぎるとコストが上がる。なお、滑り止め用骨材は、下地を形成するエポキシ樹脂が見えなくなる様に、手撒きあるいは散布機を用いて過剰に散布する。エポキシ樹脂が硬化した後に、余剰の滑り止め用骨材を回収する。
【0137】
このようにして形成したエポキシ樹脂と骨材を含むエポキシ樹脂層の表面に、エポキシ樹脂と滑り止め用骨材表面との隙間を埋めながら、硬化性樹脂組成物を塗工する。次いで、硬化性樹脂組成物を硬化してアクリル樹脂層を形成する。
【0138】
エポキシ樹脂の塗工手段としては、例えば、ローラー、金鏝、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられる。
また、施工性の点から、硬化性樹脂組成物の塗工時の温度は-30℃~60℃が好ましく、-10℃~40℃がより好ましく、硬化時間は20分間~60分間の範囲が好ましい。
【0139】
硬化時間が20分間以上であると、硬化性樹脂組成物の良好な塗装作業性、滑り止め用骨材のグリップ性が得られる。硬化時間が60分間以下であると、アクリル樹脂層と下地であるエポキシ樹脂層との良好な密着性が得られる。
このような滑り止め舗装構造体の製造方法により、滑り止め用骨材をエポキシ樹脂層のアクリル樹脂層側に存在させ、より滑り止め用骨材が脱離しにくい滑り止め舗装構造体を得ることができる。
【0140】
滑り止め舗装構造体の骨材の保持率は、95%以上が好ましく、96%以上がより好ましく、97.5%以上がさらに好ましい。骨材の保持率の上限は100%以下である。骨材の保持率が95%以上であると、滑り止め用骨材の脱離が少なく、滑り止め舗装構造体として好適に使用することができる。
【実施例0141】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中「部」は「質量部」を意味する。
【0142】
[合成例1:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)の合成]
攪拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、135部の脱イオン水、及び分散剤として0.4部のポリビニルアルコール(ケン化度80モル%、重合度1700)を加えて攪拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、一旦攪拌を停止した。
60部のメチルメタクリレート、40部のn-ブチルメタクリレート、重合開始剤として0.2部の2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、連鎖移動剤として0.8部のn-ドデシルメルカプタン、電解質として0.1部の炭酸ナトリウムを加えて再度攪拌し、75℃に昇温して2.5時間反応させた。さらに、98℃に昇温して1.5時間保持した後、反応を終了させた。
40℃に冷却した後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水した後、40℃で16時間乾燥して、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)のガラス転移温度(Tg)は65℃であり、重量平均分子量は42000であった。
【0143】
(樹脂組成物の調製)
<樹脂組成物(S-1)の調製>
攪拌機、温度計、冷却管付きの1Lフラスコに、化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)として、1部の1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(三菱ケミカル株式会社製、アクリエステルBDMA)と、化合物(B)を除く単官能の(メタ)アクリレート(D)として50部のメチルメタクリレートと、15部の2-エチルヘキシルアクリレート(以下「2-EHA」と略す。)と2部の2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(以下「HPMA」と略す。)、還元剤(E)として1部のN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン(以下「DIPT」と略す。)と、他の成分として0.4部のパラフィン-130(日本精蝋株式会社製)と、0.3部のパラフィン-150(日本精蝋株式会社製)と、0.2部のパラフィンHNP-9(日本精蝋株式会社製)及び0.01部の2-メチルヒドロキノンとを投入した後、攪拌しながら、(メタ)アクリル系重合体(B)として25部の合成例1で得られたポリマー1を投入した。
引き続き、60℃で2時間加熱して溶解した。
溶解を確認後、40℃に冷却し、チオール化合物(A)として、1部のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製、PEMP、以下「PEMP」と略す。)とカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)として、8部のコハク酸2-アクリロイルオキシエチル(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A-SA)と、化合物(B)である(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤として、1部の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503)を投入し、樹脂組成物(S-1)を得た。得られた樹脂組成物(S-1)の配合組成を表1に示す。
【0144】
<樹脂組成物(S-2)~(S-9)の調製>
表1に記載の配合組成にすること以外は、樹脂組成物(S-1)の調製と同様にして樹脂組成物(S-2)~(S-9)を得た。
【0145】
表中の略号は下記の通りである。
JER816A:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製)
JERキュアFL51:アミン系エポキシ樹脂硬化剤(三菱ケミカル株式会社製)
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学株式会社製)
カレンズMT PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製)
カレンズMT BD1:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製)
NKエステルA-SA:コハク酸2-アクリロイルオキシエチル(新中村化学工業株式会社製)
KBM-503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
ポリマー1:合成例1で製造したMMA/n-ブチルメタクリレート=60/40の共重合体、重量平均分子量は42000
アクリエステルBDMA:1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(三菱ケミカル株式会社製)
ブレンマーPDP-400N:ポリプロピレングリコールジメタクリレート(日油株式会社製)
SUA-017:数平均分子量6300の2官能ウレタンアクリレート(亜細亜工業株式会社製)
MMA:メチルメタクリレート
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
n-BMA:n-ブチルメタクリレート
HPMA:2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート
DIPT:N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン(日本乳化剤株式会社製)
パラフィン130、パラフィン150、パラフィンHNP-9:パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製)
DINCH:1,2‐シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(BASFジャパン株式会社製)
アデカサイザーP300:アジピン酸ポリエステル系可塑剤(株式会社ADEKA製)
【0146】
[実施例1]
64.0部のJER816Aと、36.0部のJERキュアFL51とを混合しエポキシ樹脂を得た。室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、得られたエポキシ樹脂と樹脂組成物S-1とJISモルタル板(30cm×30cm×厚さ6cm)とを、温度23℃、相対湿度50%の環境可変室(3m×7m×高さ3m)内に4時間以上放置して、環境可変室の温度と同じになるように調整した。
その後、エポキシ樹脂をJISモルタル板に塗布量1.9kg/mとなる量を鏝で塗装し、4時間養生してエポキシ樹脂層を形成した。
次いで、100部の樹脂組成物S-1に、過酸化ベンゾイル(化薬ヌーリオン株式会社製、パーカドックスGB-50L、純度50%)を2部加えて混合し、得られた硬化性樹脂組成物を骨材の表面にウーローラー(大塚刷毛製造株式会社製塗装用ローラー)で塗布量0.5kg/mとなる量を塗装し、アクリル樹脂層を形成した。
これにより、JISモルタル板上にエポキシ樹脂層とアクリル樹脂層を有する積層体形成した。
【0147】
[実施例2~6、比較例1~4]
表1に示す構成とした他は、実施例1と同様にしてJISモルタル板上にエポキシ樹脂層とアクリル樹脂層を有する積層体を形成した。
【0148】
<アクリル樹脂層の指触乾燥性>
アクリル樹脂層の指触乾燥性は、アクリル樹脂層表面のタックの有無により確認し、以下の評価基準で指触乾燥性を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0149】
(評価基準)
○:60分未満でタックがなくなる。
△:60分以上、300分未満でタックがなくなる。
×:300分以上でタックがなくなる、又は、タックがなくならない。
【0150】
<アクリル樹脂層とエポキシ樹脂層の密着性>
積層体上に、カッターナイフで2mm間隔の碁盤目状の切れ込みを入れ、2mm×2mmのマスを25マス作製した。切れ込みを入れた積層体上にセロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、商品名:セロテープ(登録商標))を貼り付け、1分間養生後、セロハン粘着テープを引き剥がした。積層体上のアクリル樹脂層の剥離状態によって、アクリル樹脂層とエポキシ樹脂層の密着性を下記の評価基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0151】
(評価基準)
○:アクリル樹脂層の剥離が、0マス。
△:アクリル樹脂層の剥離が、1マス以上、4マス以下。
×:アクリル樹脂層の剥離が、5マス以上。
【0152】
(引張試験)
温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、硬化剤未配合の樹脂組成物100部に過酸化ベンゾイル(化薬ヌーリオン株式会社製、パーカドックスGB-50L、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合し、硬化剤入り樹脂組成物を得た。これを型に注入し、温度23℃の雰囲気下、2時間かけて硬化させた後に硬化物を取り出して、厚さ3mmの注型板を得た。打ち抜き具を用いて注型板からJIS K 6251:2010に準拠したダンベル状1号形試験片を採取した。
【0153】
得られた試験片について、23℃における引張速度20mm/minの引張試験を行った際の、引張破壊強度及び破断時伸びを測定した。その結果を表1に示す。
【0154】
[実施例7]
64.0部のJER816Aと、36.0部のJERキュアFL51とを混合しエポキシ樹脂を得た。室内温度23℃、湿度50%の環境可変室内で、得られたエポキシ樹脂と樹脂組成物S-1と密粒アスファルト板(サイズ:300mm×300mm×50mm 大有建設株式会社製)とを、温度23℃、相対湿度50%の環境可変室(3m×7m×高さ3m)内に4時間以上放置して、環境可変室の温度と同じになるように調整した。
その後、エポキシ樹脂を密粒アスファルト板に塗布量1.9kg/mとなる量を鏝で塗装し、その後、直ちに滑り止め用の骨材(美州興産株式会社製、セラサンドA1粒、粒径2mm~3.3mm)を600g散布し、4時間養生後に固着していない骨材170gを除去してエポキシ樹脂層を形成した。
次いで、100部の樹脂組成物S-1に、過酸化ベンゾイル(化薬アクゾ社製、パーカドックスCH-50L、純度50%)を3部加えて混合し、得られた硬化性樹脂組成物を骨材の表面にウーローラー(大塚刷毛製造株式会社製塗装用ローラー)で塗布量0.3kg/mとなる量を塗装し、アクリル樹脂層を形成した。
これにより、密粒アスファルト板上にエポキシ樹脂層とアクリル樹脂層を有する積層体である滑り止め舗装構造体を形成した。
【0155】
[実施例8、比較例5]
表2に示す構成とした他は、実施例7と同様にして密粒アスファルト板上にエポキシ樹脂層とアクリル樹脂層を有する積層体である滑り止め舗装構造体を形成した。
【0156】
[比較例6、7]
実施例7においてエポキシ樹脂層の養生時間を変更した点とアクリル樹脂層を形成しない点以外は、実施例7と同様にして密粒アスファルト板上にエポキシ樹脂層を有する積層体である滑り止め舗装構造体を形成した。
【0157】
<骨材の保持率の評価>
タイヤ据え切り試験機(インテスコ株式会社製)を用い、実施例及び比較例にて得た各滑り止め舗装構造体を用いて、以下の条件で据え切り試験を行い、据え切り部面積における骨材の保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0158】
(試験条件)
取り付け自動車タイヤ:乗用車用14インチラジアルタイヤ
試験体駆動方式:試験体反復角度:±30°
反復速度:6rpm
載荷荷重:3KN
測定温度:23℃
据え切り回数:10往復
【0159】
(評価方法)
骨材の保持率(%)=(初期骨材量-(試験前滑り止め舗装構造体重量-試験後滑り止め舗装構造体重量)/初期骨材量)×100
なお、据え切り後の骨材保持量は、初期骨材量から滑り止め舗装構造体の据え切り前後の重量差を差し引いた値を初期骨材量で除した値の百分率から算出することができる。
【0160】
【表1】
【0161】
表1に示すように、本発明の範囲内にある実施例1~6は、硬化性樹脂組成物の塗膜は、エポキシ樹脂層上における指触乾燥性が良好であり、かつ、アクリル樹脂層とエポキシ樹脂層の密着性及び靭性に優れることが分かった。
これに対して、比較例1の硬化性樹脂組成物は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の1種以上である化合物(B)を含まないため、塗膜の指触乾燥性が不良となった。
比較例2の硬化性樹脂組成物は、前記化合物(B)を除く多官能の(メタ)アクリレート(C)及びMMAの含有量が多くなることで、塗膜の指触乾燥性が改善したが、破断時伸びが悪く、靭性が不良であった。
比較例3の硬化性樹脂組成物は、チオール化合物(A)を含まないため、塗膜の指触乾燥性が不良となった。
比較例4の硬化性樹脂組成物は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の1種以上である化合物(B)を含まないため、アクリル樹脂層とエポキシ樹脂層の密着性が不良となった。
また、比較例1、3は、アクリル樹脂層にタックが残っているため、アクリル樹脂層とエポキシ樹脂層の密着性を評価できなかった。
【0162】
【表2】
【0163】
表2に示すように、本発明の範囲内にある実施例7、8は、骨材の保持率が95%以上となり良好な結果となった。
これに対して、比較例5、6は、骨材の保持率が92%以下となり骨材の保持率が十分でなく、保持できなかった骨材を交通開放後に回収する必要が生じることを示唆する結果となった。
比較例7は、エポキシ樹脂の養生時間を長くすることで骨材の保持率は改善したが、交通開放時間が長くなることを示唆する結果となった。