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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117051
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】光沢ムラ測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/57 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01N21/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019531
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】592004404
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】井上 信一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 美範
(72)【発明者】
【氏名】星 武幸
(72)【発明者】
【氏名】矢田 紀子
(72)【発明者】
【氏名】溝上 陽子
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE04
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH02
2G059KK01
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】複数の観察角度の情報が統合された光沢ムラを表示可能にすることにより、人間が観察した際の感覚に近い評価を実現できる技術を提供する
【解決手段】光沢ムラ測定装置10は、複数の入射角θiの平行光11を試料Sに入射する入射部20と、試料Sにおける平行光11の反射面Saをテレセントリック光学系35を用いてグレースケールで撮像することにより、複数の入射角θiそれぞれに対応する複数の画像12を得る撮像部30と、撮像部30で得られた画像12を処理する画像処理部40と、を備えている。そして、画像処理部40は、複数の画像12ごとに異なる単一色Cを着ける画像着色手段41と、画像着色手段41で着色された複数の画像13を単一の画像14に統合する画像統合手段42と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入射角の平行光を試料に入射する入射部と、
前記試料における前記平行光の反射面をテレセントリック光学系を用いてグレースケールで撮像することにより、前記複数の入射角それぞれに対応する複数の画像を得る撮像部と、
前記撮像部で得られた前記画像を処理する画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部は、
前記複数の画像ごとに異なる単一色を着ける画像着色手段と、
前記画像着色手段で着色された前記複数の画像を単一の画像に統合する画像統合手段と、
を有する、
光沢ムラ測定装置。
【請求項2】
前記複数の入射角は、前記平行光が正反射となって前記撮像部へ到達する第一入射角と、前記第一入射角から一定角度を減らした第二入射角と、前記第一入射角から前記一定角度を増やした第三入射角と、からなり、
前記単一色は、赤、緑及び青の三原色である、
請求項1記載の光沢ムラ測定装置。
【請求項3】
平行光を試料に入射する入射部と、前記試料における前記平行光の反射面をテレセントリック光学系を用いてグレースケールで撮像する撮像部と、前記撮像部で得られた前記画像を処理する画像処理部と、を備えた光沢ムラ測定装置における光沢ムラ測定方法であって、
前記入射部は、複数の入射角で前記平行光を順次試料に入射し、
前記撮像部は、前記複数の入射角それぞれに対応する複数の画像を得て、
前記画像処理部は、前記複数の画像ごとに異なる単一色を着け、着色された前記複数の画像を単一の画像に統合する、
光沢ムラ測定方法。
【請求項4】
前記複数の入射角は、前記平行光が正反射となって前記撮像部へ到達する第一入射角と、前記第一入射角から一定角度を減らした第二入射角と、前記第一入射角から前記一定角度を増やした第三入射角と、からなり、
前記単一色は、赤、緑及び青の三原色である、
請求項3記載の光沢ムラ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の光沢ムラを測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
「光沢」とは、JISによれば、表面の選択的な方向特性によって、物体の明るい反射がその表面に写り込んでいるように見える見え方、と定義されている(非特許文献1参照)。物体の光沢を測定する技術としては、JISの光沢度測定が知られている(非特許文献2参照)。
【0003】
一方、物体の光沢ムラについては、標準的な測定技術がなく、部分的な光沢(反射)分布の測定や、カメラによる光沢ムラの撮影が行われている。例えば、テレセントリック光学系を用いて物体の光沢ムラを測定する技術は、本発明者によって特許出願されている(特許文献1参照)。
【0004】
物体の光沢ムラは、光沢エリアの周辺部に見られ、その材質や質感を見分けるための重要な情報となっている。人間は、物体又は目を動かしながら反射する光を動かして観察することで、容易に光沢ムラの全体像を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-220224号公報「反射光ムラ測定方法および装置」
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS Z 8120:2001「光学用語」
【非特許文献2】JIS Z 8741-1997「鏡面光沢度‐測定方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光沢ムラを撮影し定量化することは容易ではない。その理由は、第一に光沢ムラの見られる範囲が正反射近傍のわずかな領域であるため、第二に反射角度の違いで光沢ムラの見え方が変化するためである。
【0008】
また、一つの観察角度だけならば比較的容易に光沢ムラは測定できる。ところが、人間は複数の観察角度の情報を統合して光沢ムラを評価している。このような各反射角度で得られた光沢ムラ画像の統合方法は知られていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、複数の観察角度の情報が統合された光沢ムラを表示可能にすることにより、人間が観察した際の感覚に近い評価を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため、試料の測定面全体を一つの反射角度の光沢ムラとして測定(撮影)するためにテレセントリック光学系を導入し、試料からの反射光を入射角度を変えて撮影した複数の画像を統合することを提示する。
【0011】
すなわち、本発明に係る光沢ムラ測定装置は、
複数の入射角の平行光を試料に入射する入射部と、
前記試料における前記平行光の反射面をテレセントリック光学系を用いてグレースケールで撮像することにより、前記複数の入射角それぞれに対応する複数の画像を得る撮像部と、
前記撮像部で得られた前記画像を処理する画像処理部と、
を備えている。
そして、前記画像処理部は、
前記複数の画像ごとに異なる単一色を着ける画像着色手段と、
前記画像着色手段で着色された前記複数の画像を単一の画像に統合する画像統合手段と、
を有する。
【0012】
本発明に係る光沢ムラ測定方法は、平行光を試料に入射する入射部と、前記試料における前記平行光の反射面をテレセントリック光学系を用いてグレースケールで撮像する撮像部と、前記撮像部で得られた前記画像を処理する画像処理部と、を備えた光沢ムラ測定装置における光沢ムラ測定方法である。
そして、前記入射部は、複数の入射角で前記平行光を順次試料に入射し、
前記撮像部は、前記複数の入射角それぞれに対応する複数の画像を得て、
前記画像処理部は、前記複数の画像ごとに異なる単一色を着け、着色された前記複数の画像を単一の画像に統合する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料の反射面をテレセントリック光学系を用いてグレースケールで撮像することにより、試料の同じ部分における入射角の異なる複数の画像を得ることができ、これらの複数の画像を異なる色にして統合することにより、複数の入射角に対する反射の情報が含まれた一つの画像を得ることができる。したがって、複数の観察角度の情報が統合された光沢ムラを一つの画像で表示できるので、人間が観察した際の感覚に近い評価を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1の光沢ムラ測定装置を示す構成図である。
図2】試料の反射面を拡大して示す断面図であり、図2[A]は凸構造の一例、図2[B]は凹構造の一例である。
図3】画像処理部で処理される画像を単純化して示す平面図である。
図4】画像処理部で処理される画像の実施例を示す写真である。
図5】画像処理部で統合された画像の実施例を示す写真であり、図5[A]、図5[B]、図5[C]及び図5[D]はそれぞれ異なる材質からなる試料の画像である。
図6】実施形態2の光沢ムラ測定装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1の光沢ムラ測定装置を示す構成図である。以下、図1に基づき説明する。
【0017】
本実施形態1の光沢ムラ測定装置10は、複数の入射角θiの平行光11を試料Sに入射する入射部20と、試料Sにおける平行光11の反射面Saをテレセントリック光学系35を用いてグレースケールで撮像することにより、複数の入射角θiそれぞれに対応する複数の画像12を得る撮像部30と、撮像部30で得られた画像12を処理する画像処理部40と、を備えている。そして、画像処理部40は、複数の画像12ごとに異なる単一色Cを着ける画像着色手段41と、画像着色手段41で着色された複数の画像13を単一の画像14に統合する画像統合手段42と、を有する。
【0018】
光沢ムラ測定装置10は、次のように構成してもよい。複数の入射角θiは、平行光11が正反射となって撮像部30へ到達する第一入射角θi1と、第一入射角θi1から一定角度αを減らした第二入射角θi2と、第一入射角θi1から一定角度αを増やした第三入射角θi3と、からなる。単一色Cは、赤R、緑G及び青Bの三原色である。この場合、撮像部30は、複数の入射角θi(θi1,θi2,θi3)それぞれに対応する複数の画像12(121,122,123)を得る。画像着色手段41は、複数の画像12(121,122,123)ごとに異なる単一色C(G,R,B)を着け、複数の画像13(13G,13R,13B)を得る。画像統合手段42は、複数の画像13(13G,13R,13B)を単一の画像14に統合する。
【0019】
次に、光沢ムラ測定装置10の各構成要素について詳しく説明する。
【0020】
入射部20は、光源21及びコリメータレンズ22を有し、光源21の光をコリメータレンズ22で平行光11に変換する。光源21及びコリメータレンズ22は、一体化されて架台等に固定され、固定位置を変えることにより複数の入射角θiを設定可能である。なお、入射角θiとは反射面Saの法線と反射面Saに入射する平行光11とのなす角であり、反射角θrとは反射面Saの法線と反射面Saから反射する平行光11とのなす角である。正反射の場合は、入射角θiと反射角θrが等しい。
【0021】
撮像部30は、テレセントリック光学系35を構成する第一レンズ31、第二レンズ32及び絞り33、並びにカメラ34を有し、反射面Saから反射角θrで反射してきた平行光11の画像をカメラ34で取得する。絞り33の開口部は、第一レンズ31及び第二レンズ32の焦点に位置する。テレセントリック光学系35は、これらのレンズ構成に限らず、よく知られた他のレンズ構成にしてもよい。カメラ34は、CCDセンサ又はCMOSセンサなどの二次元イメージセンサを有する。その二次元イメージセンサの受光面で捉えた画像は、二次元座標上のフォトセルごとの光量(すなわち光量分布)として電気信号に変換され、画像処理部40へ出力されるとともに、ディスプレイなどに拡大表示される。テレセントリック光学系35では、全ての光線が光軸に平行となるため、撮像される物体の大きさが物体までの距離によらずに同じになる。テレセントリック光学系35及びカメラ34は、一体化されて架台等に固定され、固定位置を変えることにより任意の反射角θrを設定可能である。
【0022】
画像着色手段41及び画像統合手段42を有する画像処理部40は、例えばパーソナルコンピュータ内にコンピュータプログラムによって実現されている。パーソナルコンピュータは、CPU、ROM、RAM及びHDD等からなる一般的なものでよい。コンピュータプログラムは、HDDに格納されており、HDDからRAMにロードされ、CPUにて実行される。HDDの代わりにSSD等を用いてもよい。
【0023】
次に、光沢ムラ測定装置10の動作について説明する。
【0024】
図2に示すように、試料Sの反射面Saは、拡大すると微細な凹凸構造になっている。図2[A]は凸構造の反射面Saの一例であり、図2[B]は凹構造の反射面Saの一例である。図から明らかなように、反射面Saには、第一入射角θi1で正反射して反射角θrとなる面以外に、第二入射角θi2又は第三入射角θi3でも反射角θrとなる面が存在する。その結果、反射面Saに光沢ムラが生じている。なお、図2に示す凹凸構造は曲面になっているが、凹凸構造が平面の傾きからなる場合も同様である
【0025】
そこで、光沢ムラ測定装置10では、入射部20から複数の入射角θi(θi1,θi2,θi3)で平行光11を試料Sに照射し、複数の入射角θi(θi1,θi2,θi3)それぞれに対応する複数の画像12(121,122,123)を撮像部30で得る。例えば、最初に第二入射角θi2で撮像した画像122を取得し、続いて第一入射角θi1で撮像した画像121を取得し、最後に第三入射角θi3で撮像した画像123を取得する。このとき、試料S及びカメラ34の位置が固定されているため、反射角θrは常に一定である。
【0026】
撮像部30で得られた複数の画像12(121,122,123)のデータは、画像処理部40へ出力される。画像処理部40では、画像着色手段41が複数の画像12(121,122,123)ごとに異なる単一色C(R,G,B)を着ける。例えば、第一入射角θi1に対応する画像121には緑Gを着けて画像13Gとし、第二入射角θi2に対応する画像122には赤Rを着けて画像13Rとし、第三入射角θi3に対応する画像123には青Bを着けて画像13Bとする。最後に、画像統合手段42が、画像着色手段41で着色された複数の画像13(13G,13R,13B)を、加法混色によって単一の画像14に統合する。この画像14が光沢ムラの測定結果である。
【0027】
なお、赤R、緑G、青Bの各成分で統合してカラー画像を表示するソフトウェアでは、赤R、緑G、青Bの各成分を等しくすることによりグレースケール画像を表示する。この場合、グレースケール画像の例えば緑G及び青Bの成分を無効とすることにより、グレースケール画像に赤Rを着けることができる。
【0028】
ここで、図3に基づき画像処理部40の動作の具体例を説明する。わかりやすくするために単純化して、画像は5×5画素、光量は二値(反射するか否か)とする。画像121,122,123は、グレースケール画像であり、各入射角に対して反射角θrで反射する部分を白(縦線)表示、反射しない部分を黒表示とする。詳しく言えば、画像121では第一入射角θi1で反射する部分、画像122では第二入射角θi2で反射する部分、画像123では第三入射角θi3で反射する部分を、それぞれ白(縦線)で表示する。
【0029】
各画像121,122,123の白(縦線)の部分は、次の工程で着色される。つまり、左上から右下への斜線を「左斜線」、右上から左下への斜線を「右斜線」と呼ぶと、画像13Rでは第二入射角θi2で反射する部分を赤R(左斜線)、画像13Gでは第一入射角θi1で反射する部分を緑G(ドット)、画像13Bでは第三入射角θi3で反射する部分を青B(右斜線)でそれぞれ表示する。
【0030】
続いて、画像13G,13R,13Bを加法混色によって統合すると、画像14になる。画像14では、赤R、緑G及び青Bの他に、赤Rと緑Gが混じったイエロー(左斜線+ドット)、緑Gと青Bが混じったシアン(ドット+右斜線)、青Bと赤Rが混じったマゼンダ(右斜線+左斜線)、赤R、緑G及び青Bの全てが混じった白(左斜線+ドット+右斜線)がそれぞれ表示されている。このとき、全ての入射角θiに対して反射角θrで反射しない部分は黒表示となる。
【0031】
イエロー(左斜線+ドット)になる部分は、赤Rと緑Gが混じっているので、第二入射角θi2で反射する面と第一入射角θi1で反射する面とを有する。シアン(ドット+右斜線)になる部分は、緑Gと青Bが混じっているので、第一入射角θi1で反射する面と第三入射角θi3で反射する面とを有する。マゼンダ(右斜線+左斜線)になる部分は、青Bと赤Rが混じっているので、第三入射角θi3で反射する面と第二入射角θi2で反射する面とを有する。そして、白(左斜線+ドット+右斜線)になる部分は、緑Gと赤Rと青Bが混じっているので、第一入射角θi1で反射する面と第二入射角θi2で反射する面と第三入射角θi3で反射する面とを有する。このように、画像14には複数の入射角θi(θi1,θi2,θi3)による反射の情報が反映されている。
【0032】
なお、この具体例では、グレースケール画像の白表示(反射する部分)が色情報あり、黒表示(反射しない部分)が色情報なし(以下「第一着色方法」という。)とし、白表示の部分にのみ着色した。しかし、これとは逆に、グレースケール画像の白表示(反射する部分)が色情報なし、黒表示(反射しない部分)が色情報あり(以下「第二着色方法」という。)としてもよい。言い換えると、グレースケール画像の黒が濃くなる部分ほど色を濃く(明るく)着色してもよい。第一着色方法と第二着色方法のどちらを選ぶかは、例えば光沢ムラの見やすさを基準に判断すればよい。以下の実施例(図4及び図5)では、第二着色方法を採用している。
【0033】
次に、図4に基づき、画像処理部40で処理される画像12,13,14の実施例について説明する。
【0034】
第一入射角θi1及び反射角θrをともに20.0°、一定角度αを1.0°とすることにより第二入射角θi2を19.0°、第三入射角θi3を21.0°とした。実際の画像13R,13G,13B,14はカラー表示である。
【0035】
各入射角で撮像された画像121,122,123は、グレースケールであり、光量が多い部分ほど明るく(白く)、光量が少ない部分ほど暗く(黒く)表示されている。正反射の画像121が最も明るく、正反射からずれた画像122,123は暗くなっている。画像121,122,123はそれぞれ着色されて画像13G,13R,13Bとなる。画像13G,13R,13Bでは、光量が少ない部分ほど色が濃く(明るく)表示されている。そのため、画像13G,13R,13Bの模様は、グレースケールの画像121,122,123の模様とほぼ同じである。画像13G,13R,13Bは加法混色によって統合されて画像14となる。よって、一つの画像14には三つの画像13R,13G,13Bの情報が含まれている。
【0036】
次に、図5に基づき、画像処理部40で統合された画像14の実施例を説明する。
【0037】
図5[A]、図5[B]、図5[C]及び図5[D]はそれぞれ異なる材質からなる試料Sの画像14であり、図5[A]は陶器(タイル)、図5[B]は印刷用紙(アート紙)、図5[C]はプラスチック板、図5[D]はインクジェット用紙である。このとき、第一入射角θi1及び反射角θrをともに20.0°、一定角度αを0.5°とすることにより、第二入射角θi2を19.5°、第三入射角θi3を20.5°とした。実際の画像14はカラー表示になっている。各図は、各材質に特有の表面凹凸構造をよく表している。これは、斜光で凹凸を観察している、又は、反射面の傾きを抽出しているとも言える。
【0038】
次に、光沢ムラ測定装置10の作用及び効果について説明する。
【0039】
(1)光沢ムラ測定装置10によれば、試料Sの反射面Saをテレセントリック光学系35を用いてグレースケールで撮像することにより、試料Sの同じ部分における入射角θiの異なる複数の画像12を得ることができ、これらの複数の画像12を異なる色にして統合することにより、複数の入射角θiに対する反射の情報が含まれた一つの画像14を得ることができる。したがって、複数の観察角度の情報が統合された光沢ムラを一つの画像14で表示できるので、人間が観察した際の感覚に近い評価を実現できる。つまり、画像14は人間にとってわかりやすい光沢ムラを示している。
【0040】
換言すると、光沢ムラ測定装置10は光沢ムラ情報を一括してデータ化する装置であり、このデータ化された光沢ムラは視覚的にも理解しやすい表示になっている。また、画像14に統合された各画像12が反射面Saの角度情報であることから、反射面Saのジオメトリ解析に活用することもできる。
【0041】
(2)反射面Saの傷や汚れは、特定の入射角でしか見られないものがある。画像14には複数の入射角θiに対する反射の情報が含まれているので、多くの画像を用いることなく一つの画像14だけで反射面Saの傷や汚れを発見できる。よって、従来にない優れた表面検査装置として使用することもできる。
【0042】
(3)異なる色の複数の画像13が一つの画像14に統合されているため、複数の画像13が見つからない場合でも一つの画像14から複数の画像13を取り出すことができ、測定データの散逸を防止できる。
【0043】
(4)光沢ムラ測定装置10の動作を方法の発明として捉えると、次の光沢ムラ測定方法となる。すなわち、本実施形態1の光沢ムラ測定方法は、平行光11を試料Sに入射する入射部20と、試料Sにおける平行光11の反射面Saをテレセントリック光学系35を用いてグレースケールで撮像する撮像部30と、撮像部30で得られた画像12を処理する画像処理部40と、を備えた光沢ムラ測定装置10における光沢ムラ測定方法である。そして、入射部20は、複数の入射角θi1,θi2,θi3で平行光11を順次試料Sに入射する。撮像部30は、複数の入射角θi1,θi2,θi3それぞれに対応する複数の画像121,122,123を得る。画像処理部40は、複数の画像121,122,123ごとに異なる単一色C(G,R,B)を着け、着色された複数の画像13G,13R,13Bを単一の画像14に統合する。この光沢ムラ測定方法についても、光沢ムラ測定装置10と同等の作用及び効果を奏する。
【0044】
<実施形態2>
図6は、実施形態2の光沢ムラ測定装置を示す構成図である。以下、図6に基づき説明する。本実施形態2では、実施形態1(図1)と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0045】
本実施形態2の光沢ムラ測定装置50は、入射部60の構成が実施形態1(図1)と異なる。入射部60は、光源21及びコリメータレンズ22の他に、ミラー61及びモータ62を有する。例えば、ミラー61は平面鏡であり、モータ62はステッピングモータである。モータ62の回転軸にミラー61が取り付けられているので、モータ62を制御することによりミラー61を任意の角度φに回転させることができる。光源21、コリメータレンズ22、ミラー61及びモータ62は、一体化されて架台等に固定される。
【0046】
光源21の光はコリメータレンズ22で平行光11に変換され、平行光11はミラー61で反射して試料Sへ向かう。このとき、モータ62でミラー61の角度φを変えることによって、入射角θiを変えることができる。例えば、角度φ1としたときは入射角θi1となり、角度φ2としたときは入射角θi2となり、角度φ3としたときは入射角θi3となる。
【0047】
光沢ムラ測定装置50によれば、モータ62でミラー61を回転させてミラー61の角度φを変えることにより、簡単に入射角θiを変えることができるので、取扱い性及び操作性を向上できる。なお、本実施形態2では反射面Saの法線を挟んで入射部60と撮像部30が対向する配置としたが、これに限らず、光源21及びコリメータレンズ22はどこに置いてもよい。例えば、光源21及びコリメータレンズ22を撮像部30の近傍に配置し、反射面Saの法線を挟んでミラー61を対向させてもよい。この場合は、コンパクト化が図れる他、コリメータレンズ22からの平行光11をミラー61に垂直に近い角度で入射可能となることから、入射角θiを大きくするときでもミラー61で平行光11の全部を反射できるので、試料Sに到達する平行光11の幅が狭くならない。本実施形態2のその他の作用及び効果は、実施形態1のそれらと同等である。
【0048】
<その他>
以上、上記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができ、そのように変更された技術も本発明に含まれる。例えば、赤R、緑G及び青B並びに加法混色の代わりに、シアン、マゼンタ及びイエロー並びに減法混色を用いてもよい。異なる単一色Cは、三色に限らず、二色又は四色以上としてもよい。複数の入射角及び複数の画像は、それぞれ三つに限らず、二つ又は四つ以上としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10,50 光沢ムラ測定装置
θi入射角
θi1 第一入射角
θi2 第二入射角
θi3 第三入射角
θr 反射角
C 単一色
R 赤
G 緑
B 青
S 試料
Sa 反射面
11 平行光
12,121,122,123 画像(グレースケール)
13,13G,13R,13B 画像(着色後)
14 画像(統合後)
20,60 入射部
21 光源
22 コリメータレンズ
61 ミラー
62 モータ
30 撮像部
31 第一レンズ
32 第二レンズ
33 絞り
34 カメラ
35 テレセントリック光学系
40 画像処理部
41 画像着色手段
42 画像統合手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6