IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タニコー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-誘導加熱調理器 図1
  • 特開-誘導加熱調理器 図2
  • 特開-誘導加熱調理器 図3
  • 特開-誘導加熱調理器 図4
  • 特開-誘導加熱調理器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117052
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
H05B6/12 308
H05B6/12 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019532
(22)【出願日】2022-02-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】592193535
【氏名又は名称】タニコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】菅野 知志
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大型のトッププレートであっても使用時に撓まないようにした当該トッププレートの支持、並びに加熱調理器の筐体内に籠る熱の効果的な排気を可能にした誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】鍋等の調理器具が載置される1つのトッププレート2と、該トッププレート2の下方にスペーサを備えた微小隙間を介して配置され、前記鍋等を誘導加熱する複数の加熱コイルユニット3と、出力制御用の制御部を備える複数のインバータ6と、前記トッププレート2,複数の加熱コイルユニット3,複数のインバータ6が配置された筐体1とを備え、前記加熱コイルユニットが、複数の加熱コイル31とその加熱コイル31が配置されたコイル載置台32を備え、前記コイル載置台32は、前記筐体1上部の開口部内周縁に形成されたコイル載置台32の支持縁部1aと、前記筐体1内部の左右幅方向に配置した区分壁1bの上端部とに、支持されるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋等の調理器具(以下、鍋等という。)が載置される1つのトッププレートと、該トッププレートの下方にスペーサを備えた微小隙間介して配置され前記鍋等を誘導加熱する複数の加熱コイルユニットと、出力制御用の制御部を備える複数のインバータと、前記トッププレート,複数の加熱コイルユニット,複数のインバータが配置された筐体とを備え、
前記加熱コイルユニットが、複数の加熱コイルとその加熱コイルが配置されたコイル載置台を備え、前記コイル載置台は、前記筐体上部の開口部内周縁に形成されたコイル載置台の支持縁部と、前記筐体内部の左右幅方向に配置した区分壁の上端部とに、支持されることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記区分壁は、前記筐体の内部に配置される複数のインバータの側面を含む配置境界に設置される請求項1の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイルユニットは、2個以上の加熱コイルが、略平板状のコイル載置台の上に並べて配置されており、前記コイル配置台が前部下面に加熱コイル冷却用の冷却ファンを備えている請求項1又は2の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記筐体は、複数の加熱コイルユニットの下方に、各加熱コイルを駆動制御するインバータであって後部に冷却ファンを備えたインバータが、前記筐体の前面側へ引出せるように設けられ、前記冷却ファンに対応する当該筐体の後部立壁には通気口が設けられている請求項1~3のいずれかの誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記筐体は、底板の下面に、当該筐体から出入れする防塵フィルタを交換自在に備える請求項1~4のいずれかの誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記筐体は、その前部立壁を、筐体の高さ方向に関し起伏自在に設けるか、又は着脱可能に設け、前記インバータをその筐体に出入れできるようにした請求項1~5のいずれかの誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのトッププレートの下方に複数の加熱コイルユニットを設けた誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱調理器において、1つのトッププレートの略全域において誘導加熱ができるように、複数の加熱コイルが配置された調理器が特許文献1,2等により提案されているが、レストラン等で使用される業務用の誘導加熱調理器では、一般家庭用のトッププレートの加熱部の大きさに比べて大きい面積の加熱部を備えた誘導加熱調理器の需要が高まっている。
【0003】
大型の誘導加熱調理器では、複数の例えば4つ以上の加熱コイルを下面に備えると、トッププレートの面積が大きくなるため、そのトッププレートの上で複数の鍋等を同時に加熱する使用態様が採られる場合に、トッププレートに撓みが生じないような支持態様が必要になる。
【0004】
また、1つのトッププレートにおいてその略全域での誘導加熱調理を可能とするため、そのトッププレートの下方に位置する調理器本体たる筐体内には、多数の加熱コイルが略密集状態で配置されている。このため筐体内には加熱コイルの発熱に伴う熱が籠り加熱効率が低下したりインバータ等の制御部に悪影響を及ぼしたりすることがないように、筐体内に籠りやすい熱を適切に排気する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-69688号公報
【特許文献2】特開2016-85951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、大型(又は大版)の1つのトッププレートの下に多数の加熱コイルを配置し、前記トッププレート上の略全域において加熱調理を可能にした誘導加熱調理器において、大型のトッププレートであっても使用時に撓まないようにした当該トッププレートの支持、並びに加熱調理器の筐体内に籠る熱の効果的な排気を可能にした誘導加熱調理器を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明誘導加熱調理器の構成は、鍋等の調理器具(以下、鍋等という。)が載置される1つのトッププレートと、該トッププレートの下方にスペーサを備えた微小隙間介して配置され前記鍋等を誘導加熱する複数の加熱コイルユニットと、出力制御用の制御部を備える複数のインバータと、前記トッププレート,前記複数の加熱コイルユニット,前記複数のインバータが配置された筐体とを備え、
前記加熱コイルユニットが、複数の加熱コイルとその加熱コイルが配置されたコイル載置台を備え、前記コイル載置台は、前記筐体上部の開口部内周縁に形成されたコイル載置台の支持縁部と、前記筐体内部の左右幅方向に配置した区分壁の上端部とに、支持されることを主な特徴とする。
【0008】
前記区分壁は、前記筐体の内部に配置される複数のインバータの側面を含む配置境界に設置されている。筐体側面とインバータの間に追加しても良い。
【0009】
前記加熱コイルユニットは、2個以上の加熱コイルが、略平板状のコイル載置台の上に並べて配置されており、前記コイル載置台が前部下面に加熱コイル冷却用の冷却ファンを備えている
【0010】
本発明誘導加熱調理器では、前記筐体内において複数の加熱コイルユニットの下方に、各加熱コイルを駆動制御するインバータが、前記筐体の前方側(手前)へ引出しできるように設けられている。前記インバータは、後部に冷却ファンを備え底部に通気部を備えている。前記冷却ファンに対応する前記筐体の後部立壁には、通気口が設けられている。
【0011】
前記筐体の底板は、少なくとも四隅に4個のアジャスタ脚を備えている。筐体の左右幅が大きい場合には、中間にアジャスタ脚を追加してもよい。前記底板は、ろ過部材を出入れして交換できるようにしたフィルタを備えている。
また、前記筐体は、その前部立壁を、筐体の高さ方向に関し起伏自在に設けるか、又は着脱可能に設け、前記インバータをメンテナンス等のためにその筐体に出入れできるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明誘導加熱調理器では、大型トッププレートであっても、そのプレートは、トッププレートの下面に配置される、筐体上部の開口部の縁部と区分壁とに支持された複数の加熱コイルユニットを介して当該筐体の上面に配置されるから、使用時に鍋等による荷重が掛かっても撓むことがない。また、加熱コイルユニット毎に冷却ファンを備えており、区分壁によって空気流路が形成されるので、多数の加熱コイルを効率よく冷却できるため加熱効率の低下や制御部の悪影響を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明誘導加熱調理器の実施形態の一例を分解状態で示した斜視図。
図2】組立てた図1の誘導加熱調理器において、筐体の前部立壁を外した状態の正面図。
図3図2のA部の拡大図。
図4図2の誘導加熱調理器における縦断側面図。
図5図4のB部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、略全域が加熱領域である大型のトッププレートを有する誘導加熱調理器の前記トッププレートを使用時に撓むことなく支持できると共に、多数の加熱コイルを備えていることによって筐体内にこもりがちな熱を効率よく排気できるようにした誘導加熱調理器の構成を見出し、以下の実施形態により説明する本発明を完成するに至ったものである。
実施の形態
【0015】
次に図を参照して本発明誘導加熱調理器の一例について説明する。
図1は本発明誘導加熱調理器の実施の形態の一例を分解状態で示した斜視図、図2図1の本発明誘導加熱調理器の組立状態において筐体の前部立壁を外した状態の正面図、図3図2のA部の拡大図、図4は本発明誘導加熱調理器の縦断側面図、図5図4のB部の拡大図である。
なお、図においてX、Y及びZの方向は、誘導加熱調理器IHの左右幅方向、前後幅方向、及び高さ方向を示す。
【0016】
図1図5に示すように、本発明に係る誘導加熱調理器IHは、平面から見て横長な直方体状の筐体1の上面に平面視略長方形のトッププレート2を備えると共に、該トッププレート2の接近した下方に複数の、図の例では3つの加熱コイルユニット3を備えている。トッププレート2には、結晶化ガラスなど適宜の電気絶縁材料で形成した板状部材が用いられる。
【0017】
3は、加熱コイルユニットで、実施例では平面視略短形を呈する複数の加熱コイル31と、この加熱コイル31をほぼ隙間なく並べて配置したコイル載置台32と、コイル載置台32の前部(手前側)に設けた通気穴4に下面から配置した冷却ファン5とを備えている。図示した例では、3つの加熱コイルユニット3が筐体1に配置されているが、左右の加熱コイルユニット3は、3個の加熱コイル31を備え、中間の加熱コイルユニット3は6個の加熱コイル31を備えたものである。加熱コイルユニット3が備える加熱コイル31の数は2以上の任意である。また、加熱コイル載置台32の形状、大きさも、設置する加熱コイル31の形状や個数に応じて任意である。
【0018】
各加熱コイル31とコイル載置台32とは、図3図5に拡大例示する構造により結合されている。図3図5において電気導体で巻回形成された加熱コイル31は、その上下面にスペーサ31aを介して形成した微小隙間gを有して2枚の集成雲母31bで挟まれている。以下、この形態のものを加熱コイル31とする。
【0019】
上記構成の加熱コイル31は、コイル載置台32の上にバネ32aを備える取付けネジ32bによって載置結合される。32cは前記取付けネジ32bの固定ナットであり、取付ネジ32bは、前記スペーサ31aを径方向の遊びをもって貫通している。各加熱コイル31において、夫々の上面(上位の集成雲母31bの上面)とトッププレート2の下面の間のギャップには、スペーサSPと温度センサSCが配置されている。スペーサSPは、各加熱コイル31と加熱対象(鍋等)との距離を設計値に保持するためである。各温度センサSCは、各加熱コイルによる発熱状態を、インバータ6の制御部に供給して、各インバータ6の制御要素として用いられる。
【0020】
図示したコイル載置台32では、前部(手前側)に2つの通気穴4が形成されており、各通気穴4には、コイル載置台32の下面に取付けアタッチメント5aを介して作動時の加熱コイルユニット3を冷却するための冷却ファン5が設けられている。なお、図示したコイル載置台32は、平面視略縦長の長方形であり、周囲の縁が立上がった浅底トレー状であるが、コイル載置台32の平面形状は、加熱コイル31の平面形状に合わせて任意の形状にすることが可能であり、縁の立上がりのない平板状でもよい。
【0021】
筐体1は、図2に示すように、その上面が全面開口しており、開口端から僅かに下がった位置の当該筐体1の内周部、又は少なくとも開口部の前後部に、前記コイル載置台32を下から支持する支持縁部1aが形成されている。
【0022】
筐体1は、その内部に後述するインバータ6の大きさ(主として正面から見た左右幅)に対応して複数の区分壁1bを備える。区分壁1bは、筐体1の底板1cに設けた支持ブラケット1dに支持されて立設されており、各区分壁1bの高さは、前記支持縁部1aの底板1cからの高さと同じに整えられている。これは複数の加熱コイルユニット3の各コイル載置台32を同高さに支持し、トッププレート2の下面に対する加熱コイル31のギャップを一定にするためである。なお、上記の支持ブラケット1は、インバータ6を出入れ可能に支持する支持部としても機能するように形成されている。
【0023】
筐体1の底板1cは、前部寄りに2つの開口部1eを設け、その開口部1eに、防塵壁フィルタ7を配置している。ここで防塵フィルタ7は、フィルタ枠7aに着脱可能であり、フィルタ枠7aは防塵フィルタ7の交換のために開口部1eから出入れ可能に設けられている。筐体1の底板1cには、ほぼ四隅と中間部に、高さ調整可能なアジャスタ脚1fが配置されている。
【0024】
図2に示すように、インバータ6は、12個の加熱コイル31を制御するために3台が筐体1内に配置されている。図2では、各インバータ6が、その底面の左右部において上述した区分壁1bを垂直壁部で支持している断面倒L状の支持ブラケット1dの水平壁部に支持されるように示されている。この支持構造により各インバータ6は、メンテナンス等のために筐体1の内部から前方へ引出すことができる。なお、インバータ6の出入れ可能な支持形態は図示した例に限られるものではない。例えば、図4のようにインバータ6を支持台6bに載せる形もある。
【0025】
インバータ6の筐体1の内部からの出入れを可能とするため、筐体1の前部立壁1gは、筐体1の前面開口部に対してヒンジ等を介した開閉自在の設置、又は着脱自在の設置(図1参照)が採択される。出入れのため、インバータ6の前部は、着脱式のインバータ押え6cにより筐体1に支持されている。前部立壁1gには本発明誘導加熱調理器IHを操作するための操作部8が設けられている。
【0026】
各インバータ6は、夫々に対応する夫々の加熱コイル31に接続されて各加熱コイルユニット3を駆動制御する機器であるが、動作時に発熱するため、排熱用の冷却ファン6aを各インバータ6の後面に備え底部には通気部を備えている。筐体1において後部立壁1hには通気口1iが設けられている。
【0027】
筐体1の後部の上部には、冷却ファン5により筐体内部から送られてくる空気を排出する排気口1jが設けられている。
【0028】
以上のように構成される本発明誘導加熱調理器IHは、公知の誘導加熱調理器と同じように使用するものであるが、主として業務用の大型の加熱面を有する調理器に形成されているため、次のような特長を発揮する。
【0029】
加熱面であるトッププレート2の下面の略全域には、加熱コイル31がほぼ隙間なく配置されているから、トッププレート2のどの場所に置いても鍋等の調理器具を誘導加熱することができる。
【0030】
本発明誘導加熱調理器では、多数の加熱コイル31を駆動する場合には、筐体1内部に熱がこもり、筐体1内部の温度が高くなり過ぎる恐れがあるのを未然に防ぐため、加熱コイルユニット3ごとに冷却ファン5を設けて加熱コイル31の熱を冷却するようにし、区分壁1bによって空気流路が形成されるので、大型誘導加熱調理器にありがちな加熱効率の低下や制御部への悪影響を防ぐことができる。
【0031】
また、大型のトッププレート2の上に複数の鍋等を載せて加熱調理する場合でも、トッププレート2に撓みが生じて加熱コイル31との適切な設計距離が損なわれることがないようにトッププレート2の配置に工夫した支持構造を採用しているから、常時適切な加熱状態を維持することができる。
【0032】
更に、各インバータ6は、夫々に筐体1内部から筐体1の前面側に出入れ可能であるから、各インバータ6のメンテナンスが行いやすい。また、本発明ではトッププレート2を筐体1の上面から外すと、各加熱コイルユニット3が筐体1上部に露出するから、各ユニット3ごとにメンテナンスが行いやすいという誘導加熱調理器の駆動部に対するメンテナンス面での特長も備える。
【符号の説明】
【0033】
IH 本発明誘導加熱調理器
1 筐体
1a 支持縁部
1b 区分壁
1c 底板
1d 支持ブラケット
1e 開口部
1f アジャスタ脚
1g 筐体の前部立壁
1h 筐体の後部立壁
1i 通気口
1j 排気口
2 トッププレート
3 加熱コイルユニット
31 加熱コイル
32 コイル載置台
4 通気穴
5 冷却ファン
6 インバータ
7 防塵フィルタ
8 操作部
SP スペーサ
SC 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5