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  • 特開-耐火ケーブルおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117092
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】耐火ケーブルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/08 20060101AFI20230816BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01B13/08
H01B7/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019599
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 淑豪
(72)【発明者】
【氏名】中川 諒
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 嘉典
【テーマコード(参考)】
5G315
5G325
【Fターム(参考)】
5G315CA01
5G315CB03
5G315CC02
5G315CD10
5G325DA11
(57)【要約】
【課題】作業員が常時監視しなくても、効率よく耐火ケーブルを製造可能な方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決する耐火ケーブルの製造方法では、導体10上に耐火テープ22を縦添えする工程と、耐火テープ22の外周にガラスヤーン24を巻き付ける工程とを有し、ガラスヤーン24として複数の原糸が撚り合わせられたものを使用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に耐火テープを縦添えする工程と、
前記耐火テープの外周にガラスヤーンを巻き付ける工程とを有し、
前記ガラスヤーンとして複数の原糸が撚り合わせられたものを使用することを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法。
【請求項2】
請求項1の耐火ケーブルの製造方法において、
前記ガラスヤーンの巻き付け方向と前記ガラスヤーンの原糸の撚り合わせ方向とが一致していることを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法。
【請求項3】
導体を耐火層と絶縁体層とで被覆した耐火絶縁線心を有し、
前記耐火層が、前記導体上に縦添えされた耐火テープと、前記耐火テープの外周に巻き付けられたガラスヤーンとから構成され、
前記ガラスヤーンとして複数の原糸が撚り合わせられたものが使用されていることを特徴とする耐火ケーブル。
【請求項4】
請求項3の耐火ケーブルにおいて、
前記ガラスヤーンの巻き付け方向と前記ガラスヤーンの原糸の撚り合わせ方向とが一致していることを特徴とする耐火ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火ケーブルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや地下街等の防災設備の電気配線として使用される耐火ケーブルは、その耐火性能や電気特性、構造、寸法等が消防庁告示により規定されている。
【0003】
このような基準を満たす耐火ケーブルとして、導体の周囲に耐火層や絶縁体層、シース等を配置したケーブルが知られている(例えば特許文献1)。当該文献では、導体にマイカテープ(耐火テープ)を縦添えし、その上にガラスマイカテープを巻き付けることで、耐火層を形成している。また近年、マイカテープの周囲にガラスヤーンを巻き付けた耐火層も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-41876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイカテープの周囲にガラスヤーンを巻き付けて、耐火ケーブルの耐火層を形成する場合、図1に示すような、粗巻装置100が用いられることがある。図1に示す粗巻装置100では、ガラスヤーン24がボビン(図示せず)に巻き取られた状態で粗巻装置100の粗巻ヘッド120内に収容されている。耐火層20を形成する際には、まず治具110を用いて、導体10にマイカテープ22を縦添えする。そして、粗巻ヘッド120から一定の長さのガラスヤーン24を繰り出し、導体10およびマイカテープ22を所定の方向に送り出しながら、粗巻ヘッド120を回転させる。これにより、ガラスヤーン24がらせん状に、マイカテープ22の周囲に巻き付けられる。
【0006】
ここで、従来のガラスヤーン24は、原糸を複数本引き揃えただけの構造を有している。そのため、図2に示すように、ガラスヤーン24をボビン(図示せず)から繰り出す際に、一部の原糸が弛んだりほつれたりすることがある。そして、これらが粗巻ヘッド120に絡まったり、粗巻ヘッド120の回転によって切れたり、さらには絡まった部分がコブとなって、耐火ケーブルに不良が生じることがある。また、このような不具合が生じると、当該箇所の修繕が必要である。さらに、粗巻装置100を停止させる必要があり、耐火ケーブルを効率よく製造できない。また、このような不具合に対応するため、粗巻装置100を常時、作業員が監視する必要もある。
【0007】
本発明の主な目的は、作業員が常時監視しなくても、効率よく耐火ケーブルを製造可能な方法、およびこれから得られる耐火ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題を解決するため技術的検討を重ねたところ、複数の原糸を撚り合わせたガラスヤーンを用いることにより、ガラスヤーンの一部が弛んだり、ほつれたりすることが殆どなくなり、効率よく耐火ケーブルを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の一態様によれば、
導体上に耐火テープを縦添えする工程と、
前記耐火テープの外周にガラスヤーンを巻き付ける工程とを有し、
前記ガラスヤーンとして複数の原糸が撚り合わせられたものを使用することを特徴とする、耐火ケーブルの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の他の態様によれば、
導体を耐火層と絶縁体層とで被覆した耐火絶縁線心を有し、
前記耐火層が、前記導体上に縦添えされた耐火テープと、前記耐火テープの外周に巻き付けられたガラスヤーンとから構成され、
前記ガラスヤーンとして複数の原糸が撚り合わせられたものが使用されていることを特徴とする耐火ケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐火ケーブルの製造中に、ガラスヤーンの一部が弛んだり、ほつれたりすることが殆どなく、効率よく耐火ケーブルを製造可能である。また、当該方法で製造された耐火ケーブルは、絶縁性能の低下が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】導体の周囲に耐火層を形成する際の様子を示す図である。
図2】ガラスヤーンをボビンから繰り出した際の状態を示す図である。
図3】耐火ケーブルの概略断面図である。
図4】耐火層の概略構成を示す斜視図である。
図5】ガラスヤーンの構造を示す斜視図である。
図6】耐火試験(露出試験)の概要を示す図である。
図7】耐火試験(電線管試験)の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかる耐火ケーブルについて説明し、その後、耐火ケーブルの製造方法について説明する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は下限値および上限値を当該数値範囲に含む意味を有している。
【0014】
図3は本実施形態の耐火ケーブル1の概略的な構成を示す断面図である。
図3に示すとおり、本実施形態の耐火ケーブル1は、導体10を、耐火層20と絶縁体層30とで順に被覆した耐火絶縁線心40を、複数本(図3の例では4本)撚り合わせ、その外周をシース50で被覆した構造を有している。
【0015】
導体10は、電気を導通可能な材料で構成されていればよく、例えば銅から構成される線状の部材である。また、その径は、耐火ケーブルの用途に応じて適宜選択される。
【0016】
耐火層20は、導体10の外周を被覆する層であり、高温環境下でも導体10を絶縁するための層である。本実施形態の耐火層20は、図4に示すように、マイカテープ22とガラスヤーン24と、から構成されている。図4に示すように、本実施形態では、マイカテープ22が導体10に縦添えされ、ガラスヤーン24がマイカテープ22に巻き付けられている。すなわち、ガラスヤーン24の粗巻きで押え巻が施されている。
【0017】
耐火層20を構成するマイカテープ22は、高温でも絶縁性を発揮する層である。マイカは暗緑色を呈する天然鉱物であり(「雲母」とも称される)、電気絶縁性、耐熱性に優れる物質である。マイカそのものは鉱物であるが、テープ状に加工されると、良好な可撓性を示し、ケーブルに好適な材料となる。マイカテープ22は、ガラスクロスにマイカを接着したガラスマイカテープであってもよく、ポリエチレン等のプラスチックフィルムにマイカを接着したプラスチックマイカテープであってもよい。
なお、マイカテープ22は耐火テープの一例であって他の素材によるテープが使用されてもよい。
【0018】
一方、耐火層20を構成するガラスヤーン24は、原糸を複数本含み、当該複数の原糸が撚り合わせられた構造を有している。ガラスヤーン24中の原糸の数は、本実施形態では3本であるが、当該本数に限定されない。ガラスヤーン24に要求される強度や、各原糸の太さ等に応じて適宜選択される。また、ガラスヤーン24の撚りピッチは、耐火ケーブル1(耐火絶縁線心40)の製造中に、複数の原糸の一部が、弛んだりほつれたりしなければ特に制限されないが、通常5mm~10mmが好ましい。ガラスヤーン24の撚りピッチが当該範囲であると、粗巻装置100でマイカテープ22の周囲に巻き付ける際に、不具合が生じ難い。
【0019】
また、ガラスヤーン24の原糸の撚り合わせ方向と、ガラスヤーン24の巻き付け方向とが一致していることが好ましい。図4に、ガラスヤーン24の巻き付け方向をAで示し、図5のガラスヤーン24の拡大図に、ガラスヤーン24の原糸の撚り合わせ方向をBで示す。本実施形態では、ガラスヤーン24の巻き付け方向Aおよびガラスヤーン24の原糸の撚り合わせ方向Bが、いずれも右巻きで右撚りである。ガラスヤーン24の巻き付け方向Aとガラスヤーン24の原糸の撚り合わせ方向Bとが同一であると、ガラスヤーン24の締め付けが強くなり、導体10と耐火層20との間に異物が混入し難くなる。その結果、耐火ケーブル1の使用時に、有機物が不完全燃焼して炭化物が発生した場合であっても、導体10と耐火層20との間に当該炭化物が混入し難く、耐火ケーブル1の絶縁性能低下が抑制される。
なお、ガラスヤーン24の原糸の撚り合わせ方向Bは左撚りであってもよく、その場合、ガラスヤーン24の巻き付け方向Aも左巻きが好ましい。
【0020】
また、ガラスヤーン24の巻き付けピッチは、導体10のサイズにもよるが、通常4mm~15mmが好ましい。ガラスヤーン24の巻き付けピッチが当該範囲であると、マイカテープ22と導体10との間に隙間が生じ難い。
【0021】
絶縁体層30は、上述の耐火層20を被覆する層である。
絶縁体層30は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン等を押出して形成される。ポリオレフィンの例には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・ブテン共重合体等が含まれる。
また、ポリオレフィンの例には、メタロセン触媒によりエチレンにプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィンや環状オレフィン等を一種または二種以上共重合させた共重合体も含まれる。これらは単独または混合して使用される。
耐火性能、環境保全性などの観点から、絶縁体層30の材料として、低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)単独がより好ましい。
【0022】
絶縁体層30は、上記塩化ビニル樹脂やポリオレフィン等の絶縁性の樹脂以外に、酸化防止剤、紫外線安定剤等の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
ただし、難燃剤を含むと、絶縁体層30の電気特性や耐水性等が低下する場合があるため、難燃剤は含まないことが好ましい。
【0023】
ここで、耐火ケーブル1では、上述の導体10、耐火層20および絶縁体層30を有する耐火絶縁線心40が、複数本(図3の例では4本)撚り合わせられている。耐火絶縁線心40の撚りピッチは電気用品安全法に基づいた値を有している。耐火絶縁線心40の撚り合わせ方向は、特に制限されないが、上述のガラスヤーン24の巻き付け方向Aと同一であると、導体10と耐火層20との間に隙間が生じ難くなるため好ましい。
【0024】
シース50は、上述の撚り合わせた耐火絶縁線心40を被覆する層であり、例えば、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン、もしくはこれらの樹脂に難燃剤を配合した難燃性ポリマー等を押出して形成される。
ポリオレフィンの種類は、上述の絶縁体層30で挙げたポリオレフィンと同様である。当該ポリオレフィンは、単独または混合して使用される。
シース50の材料としては、上記の中でも、塩化ビニル樹脂;難燃性ポリエチレン;ポリエチレンと、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)等のエチレン系コポリマーとの混合ポリマーに難燃剤を配合した組成物;が、難燃性、耐火性能、耐外傷性、耐候性等の観点で好ましい。また、端末処理の際の被覆(シース)除去性の観点からは、難燃性ポリエチレンが特に好ましい。
【0025】
シース50が含む難燃剤の例には、酸化アンチモン、酸化モリブデン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物;ハロゲン系難燃剤;赤リン等のリン系難燃剤等が含まれる。
これらの中でも、環境保全性の観点から、ノンハロゲン系の難燃剤が好ましく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物が好ましい。
【0026】
また、シース50は、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑材等をさらに含んでいてもよい。また、シース50は、電子線や有機過酸化物等で架橋されてもよい。
【0027】
次に、耐火ケーブル1の製造方法について説明する。
【0028】
始めに、導体10上にマイカテープ22を1枚縦添えする。マイカテープ22を2枚縦添えしてもよく、かかる場合は、1枚目のマイカテープの重なり部分に対し2枚目のマイカテープ22の重なり部分が反転するように、2枚目のマイカテープ22を縦添えする。
その後、マイカテープ22の外周にガラスヤーン24を巻き付け(ガラスヤーン24で押え巻きし)、耐火層20を形成する。当該工程ではガラスヤーン24の原糸の撚り合わせ方向B(本実施形態では右撚り)に合わせて、ガラスヤーン24の巻き付け方向Aを右巻きとする。
【0029】
また、本実施形態では、図1に示す粗巻装置100の治具110によって、マイカテープ22を縦添えし、その後、粗巻ヘッド120の回転によりガラスヤーン24をマイカテープ22の外周に巻き付ける。このとき、マイカテープ22を巻き付けた導体10を一定速度で所定の方向に移動させながら、粗巻ヘッド120を回転させることで、マイカテープ22の外周にガラスヤーン24をらせん状に巻き付けることができる。
粗巻ヘッド120の回転速度は、ガラスヤーン24の所望の巻き付けピッチに応じて適宜調整される。
【0030】
続いて、耐火層20の外側に絶縁材料を押し出し被覆し、絶縁体層30(耐火絶縁線心40)を形成する。得られた耐火絶縁線心40を複数本撚り合わせる。
当該工程では、耐火層20のガラスヤーン24の巻き付け方向Aに合わせて耐火絶縁線心40の撚り合わせ方向を設定することが好ましい。本実施形態では、ガラスヤーン24の巻き付け方向Aが右巻きであるため、耐火絶縁線心40の撚り合わせ方向も右撚りとしている。
【0031】
その後、耐火絶縁線心40の当該撚り合わせ体を押出機に送り出し、その外周にシース材料を押し出し被覆してシース50を形成する。このような工程の処理を実行することにより耐火ケーブル1を製造することができる。
【0032】
以上の本実施形態によれば、ガラスヤーン24として複数の原糸が撚り合わせられたものを使用しているため、ガラスヤーン24をマイカテープ22の周囲に巻き付ける際、ガラスヤーン24の原糸の一部が弛んだりほつれたりし難い。したがって、ガラスヤーン24の巻き付け時に機械を止めたり、切断部を修繕したりする必要がない。さらに、ガラスヤーン24の巻き付け時に上記不具合が生じ難いため、効率よく耐火ケーブル1を製造できる。さらにガラスヤーン24を巻き付けるための粗巻ヘッド120を常時監視する必要がなく、無人で製造することも可能である(下記実施例1参照)。
【0033】
また、原糸が撚り合わせられたガラスヤーン24を用いることにより、ガラスヤーン24の締め付けが強くなり、導体10と耐火層20との間に異物が混入しにくい。そのため、耐火ケーブル1の導体10と耐火層20との間に異物が混入し難く、当該耐火ケーブル1では絶縁性能が低下し難い(下記実施例2参照)。
【実施例0034】
[実施例1]
(1)サンプルの作製
(1.1)比較例サンプル
直径約1.2mmの銅導体を準備した。
一方で図1の粗巻装置の粗巻ヘッド内に、3本の原糸を引き合わせたガラスヤーンを巻き取ったボビンを配置した。そして、当該粗巻装置を用い、銅導体に約0.13mm厚のプラスチックマイカテープを2枚縦添えした。そして、上記ボビンからガラスヤーンを繰り出し、銅導体およびマイカテープを一定方向に移動させながら、粗巻ヘッドを回転させ、マイカテープの周囲にガラスヤーンを巻きつけた。
耐火層(マイカテープおよびガラスヤーン)形成後の外径は、約2.3mmとした。
なお、ガラスヤーンの巻き付け方向も「右巻き」とし、巻き付けピッチは約4mmとした。
【0035】
上記耐火層の外側に、低密度ポリエチレン(LDPE)を押し出し被覆し、外径約3.9mmの絶縁体層を形成し、耐火絶縁線心を得た。そして、耐火絶縁線心を30本撚り合わせた。耐火絶縁線心の撚り合わせ方向は「右撚り」とした。30本の耐火絶縁線心を互いに識別するため、絶縁体層に1~30のナンバリングをそれぞれ印字した。
その後、耐火絶縁線心の撚り合わせ体を押出機に送り出し、その外周に難燃性ポリエチレン(酸素指数(JIS K7201)27)を押し出し被覆して、外径約28mmのシースを形成した。
【0036】
(1.2)実施例サンプル
ガラスヤーンとして、3本の原糸を撚り合わせたものを使用した以外は、比較例サンプルと同様に耐火ケーブルを製造した。なお、ガラスヤーンの原糸の撚り合わせ方向は「右撚り」であり、ガラスヤーンの巻き付け方向も「右巻き」とした。
【0037】
(2)サンプルの評価
上記各サンプルの耐火ケーブル製造時の作業性や、機械停止回数、作業線速、作業時間、無人運転の可否について、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(3)まとめ
表1に示すように、実施例サンプルでは、原糸を撚り合わせたガラスヤーンを用いることで、ガラスヤーンに起因する機械の停止をほぼ抑制できた。さらに、実施例サンプルでは、平均作業線速を1.8倍程度に向上させることができ、同一の長さの耐火ケーブルを製造するのにかかる時間を44%削減できた。さらに、実施例サンプルでは、製造装置の無人運転も可能であった。
【0040】
[実施例2]
(1)サンプルの絶縁性能評価
実施例1にかかる各サンプルに対し、消防庁告示第10号に基づく耐火試験を行った。
本試験では、図6および図7に示すとおり、露出試験と電線管試験との2種の試験を実施した。露出試験(図6)では1.3mのケーブルを被試験体として使用し、ケーブル自重の2倍の荷重をかけながら耐火試験を実施した。電線管試験(図7)では1.3mの
ケーブルを被試験体として使用し、これを長さ400mmの金属製電線管に挿入して電線
管の両端にロックウールを充填し、耐火試験を実施した。
かかる耐火試験に際し、その耐火試験前後および耐火試験中の絶縁耐力や絶縁抵抗を観察し測定した。観察結果および測定結果を表2に示す。絶縁耐力は表2に記載の一定電圧を一定時間印加し絶縁破壊が起こったかどうかを評価している。絶縁抵抗は測定装置から読み取った値に対し心数(30心)を乗じた結果を示している。
併せて、耐火試験終了後に、各サンプルに対し電圧を印加していき当該サンプルが絶縁破壊を起こす電圧値(破壊電圧)も測定した。測定結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
(2)まとめ
表2に示すように、耐火試験の露出試験および電線管試験のいずれにおいても、各サンプルは絶縁耐力が良好で絶縁破壊を起こさなかったものの、実施例サンプルは比較例サンプルより絶縁抵抗および破壊電圧が高く維持されていた。これはケーブルの導体と耐火層との間に対し炭化物が混入するのが防止されたためであり、複数の原糸が撚り合わせられたガラスヤーンを用いること、さらにガラスヤーンの巻き付け方向とガラスヤーンの原糸の撚り合わせ方向とを一致させることは、耐火試験において絶縁性能が低下するのを抑制するのにも有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は耐火ケーブルの製造方法にかかり、作業員が常時監視しなくても、効率よく耐火ケーブルを製造することが可能である。また、当該製造方法で得られる耐火ケーブルは、絶縁性能が良好である。
【符号の説明】
【0044】
A 巻き付け方向
B 撚り合わせ方向
1 耐火ケーブル
10 導体
20 耐火層
22 マイカテープ
24 ガラスヤーン
30 絶縁体層
40 耐火絶縁線心
50 シース
100 粗巻装置
110 治具
120 粗巻ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7