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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117106
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】時計および文字板
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20230816BHJP
   G04B 19/12 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G04B19/06 B
G04B19/06 C
G04B19/06 S
G04B19/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019623
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】山影 大輔
(57)【要約】
【課題】シート状の装飾部材を用いることによる外観品質の低下を防止することを可能とする時計および文字板を提供する。
【解決手段】時計は、指針を駆動する駆動機構と、板状の基材、および基材の表面に配置される、複数の繊維が積層されたシート状の装飾部材を有する文字板であって、指針と駆動機構との間に配置される文字板と、を有し、装飾部材には、駆動機構の前面の被隠蔽部を覆うように着色領域が配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を駆動する駆動機構と、
板状の基材、および前記基材の表面に配置される、複数の繊維が積層されたシート状の装飾部材を有する文字板であって、前記指針と前記駆動機構との間に配置される文字板と、を有し、
前記装飾部材には、前記駆動機構の前面の被隠蔽部を覆うように着色領域が配置される、
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記文字板と対向するように配置され、かつ複数のセル部と、前記複数のセル部を接続する接続部とを有するソーラーセルを有し、
前記着色領域は、前記接続部を前記被隠蔽部として覆うように配置される、
請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記装飾部材には、前記複数のセル部を覆うように非着色領域がさらに配置される、
請求項2に記載の時計。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記指針を駆動するムーブメントと、前記ムーブメントを保持する中枠とをさらに有し、
前記着色領域は、前記中枠を前記被隠蔽部として覆うように配置される、
請求項1に記載の時計。
【請求項5】
前記装飾部材は、藍を染料として含む液に浸されることによって着色された和紙である、
請求項1-4のいずれか一項に記載の時計。
【請求項6】
時刻を指示する指針と、前記指針を駆動する駆動機構と、を有する時計の文字板であって、
板状の基材と、
前記基材の表面に配置される、複数の繊維が積層されたシート状の装飾部材と、を有し、
前記指針と駆動機構との間に配置され、
前記装飾部材には、前記駆動機構の前面の被隠蔽部を覆うように着色領域が配置される、
ことを特徴とする文字板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計および文字板に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な装飾を施した時計の文字板が知られている。例えば、特許文献1には、透光性を有する上板と反射板とで和紙を挟み込んだ文字板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6814054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
和紙は薄く、繊維の間のすき間が大きい。したがって、上述したような文字板では、和紙を透過して時計の内部構造が視認され、外観品質が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、シート状の装飾部材を用いることによる外観品質の低下を防止することを可能とする時計および文字板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る時計は、指針を駆動する駆動機構と、板状の基材、および基材の表面に配置される、複数の繊維が積層されたシート状の装飾部材を有する文字板であって、指針と駆動機構との間に配置される文字板と、を有し、装飾部材には、駆動機構の前面の被隠蔽部を覆うように着色領域が配置されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る時計において、駆動機構は、文字板と対向するように配置され、かつ複数のセル部と、複数のセル部を接続する接続部とを有するソーラーセルを有し、装飾部材には、接続部を被隠蔽部として覆うように着色領域が配置されることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る時計において、複数のセル部を覆うように非着色領域がさらに配置されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る時計において、駆動機構は、指針を駆動するムーブメントと、ムーブメントを保持する中枠とをさらに有し、装飾部材には、中枠を被隠蔽部として覆うように着色領域が配置されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る時計において、装飾部材は、藍を染料として含む液に浸されることによって着色された和紙であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る文字板は、時刻を指示する指針と、指針を駆動する駆動機構と、を有する時計の文字板であって、板状の基材と、基材の表面に配置される、複数の繊維が積層されたシート状の装飾部材と、を有し、指針と駆動機構との間に配置され、装飾部材には、駆動機構の前面の被隠蔽部を覆うように着色領域が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る時計および文字板は、シート状の装飾部材を用いることによる外観品質の低下を防止することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】時計1の平面図である。
図2】時計1の断面図である。
図3】文字板13の模式的な断面図である。
図4】文字板13に表現される模様の例について説明するための図である。
図5】文字板13に表現される模様の例について説明するための図である。
図6】文字板13の製造方法の流れを示すフロー図である。
図7】装飾部材の表面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、実施形態に係る時計1の平面図である。図2は、図1のII-II断面における時計1の断面図である。時計1は、太陽光によって動作するソーラー式時計である。時計1は、外装ケース11、風防ガラス12、文字板13、指針14、駆動機構15を有する。
【0016】
外装ケース11は、時計1の各構成部材を収容する。外装ケース11は、筒状の胴部111、胴部111の一方の開口に設けられた環状のベゼル112および胴部111の他方の開口を塞ぐ裏蓋113を有する。外装ケース11は、ステンレスにより形成される。外装ケース11は、チタン等の他の金属または樹脂により形成されてもよい。
【0017】
風防ガラス12は、外装ケース11のベゼル112に囲まれるように取付けられる。風防ガラス12は、円板形状であり、透光性を有するサファイアガラス、ミネラルガラス等のガラスにより形成される。風防ガラス12は、文字板13、指針14等を時計1の外部から視認可能に被覆する。
【0018】
文字板13は、指針14によって指示される、数字やバーインデックス等の時字Hが形成された平板状の円形の部材である。文字板13は、外装ケース11に収容され、指針14と駆動機構15との間に配置される。文字板13の表面(風防ガラス12側の面をいう。)には、後述するように、日本の伝統的な染色方法である藍染めの技法により所定の模様が表現されている。図1に示す例では、所定の模様として、正六角形状の模様が表現されている。文字板13の構造については図3を用いて後述するため、図2では文字板13の断面構造の詳細は省略されている。
【0019】
指針14は、時針、分針および秒針を含み、文字板13の時字Hを指示することによって時刻を表示する。指針14は、文字板13に形成された貫通孔を介して駆動機構15に接続される。指針14は、駆動機構15から伝達される回転力により駆動する。
【0020】
駆動機構15は、指針14を駆動するための構成であり、ソーラーセル16、ムーブメント17、二次電池18および中枠19を有する。図2では、ソーラーセル16、ムーブメント17および二次電池18の断面構造の詳細は省略されている。
【0021】
ソーラーセル16は、光電効果によって電力を発生させ、発生した電力により二次電池18を充電する。ソーラーセル16は、駆動機構15の前面に、文字板13と対向するように配置される。ソーラーセル16は、時計1に入射して文字板13を透過した光によって電力を生成する。
【0022】
ムーブメント17は、指針14を駆動するための回転力を発生させるための構成であり、例えば、水晶振動子、ステッピングモータおよび輪列を備える。水晶振動子は、二次電池18から電力を供給されることにより、所定の周波数の信号を発生させる。ステッピングモータは、水晶振動子が発生させた信号に基づいて、所定の周期で回転力を発生させる。輪列は、複数の歯車から構成され、ステッピングモータが発生させた回転力を、回転速度を変化させながら指針14に伝達する。
【0023】
二次電池18は、ムーブメント17に電力を供給するための部材であり、例えばリチウムイオン電池である。二次電池18は、不図示の充電回路を介してソーラーセル16から電力を供給されることにより充電される。また、二次電池18は、不図示の電源回路を介してムーブメント17の水晶振動子等に電力を供給する。
【0024】
中枠19は、樹脂等により形成され、ムーブメント17および二次電池18を外装ケース11に対して動かないように保持する。
【0025】
図3は、文字板13の模式的な断面図である。図3においては、文字板13の表面が上側に位置し、文字板13の裏面が下側に位置するように図示されている。文字板13は、基材131、接着剤132、装飾部材133および保護板134を有する。
【0026】
基材131は、透光性の樹脂により平板状に形成される。透光性の樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等である。好ましくは、基材131は、無色透明の樹脂により形成される。基材131は、例えば、100μmの厚さを有する。
【0027】
接着剤132は、基材131の表面と装飾部材133の裏面とを接着する。接着剤132は、例えばエチレン酢酸ビニルを含むホットメルト接着剤である。なお、図4に示す例では接着剤132によって基材131の表面と装飾部材133の裏面とが離間しているが、装飾部材133の裏面の一部又は全部が基材131の表面と接触していてもよい。
【0028】
装飾部材133は、複数の植物繊維等の繊維が積層されたシート状の部材である。装飾部材133は、例えば、複数の繊維が不規則に並んで積層された紙(和紙および洋紙をいう。)である。好ましくは、装飾部材133は、複数の繊維が不規則に絡み合って積層された和紙である。装飾部材133は、繊維のすき間から光を透過させるため、透光性を有する。和紙は洋紙と比較して複数の繊維の間にすき間が多く存在するため、装飾部材133が和紙であることにより、時計1に入射した光の透過率が増加し、ソーラーセル16の発電効率が向上する。また、装飾部材133が和紙であることにより、和紙に特有のざらつきや繊維が絡み合ったような質感等が時計1の美観を向上させる。装飾部材133は、糸状に束ねられた複数の繊維が織り上げられることによって積層された布でもよい。装飾部材133が和紙である場合、装飾部材133は、例えば、30-50μmの厚さを有する。
【0029】
装飾部材133の表面には、起伏が形成されている。装飾部材133の表面の起伏は、装飾部材133が一般的に有する起伏とは別に、装飾部材133の繊維の一部を変形させることにより形成された起伏を含む。例えば、装飾部材133の表面の起伏は、装飾部材133を折り曲げて繊維の一部を変形させることにより形成された起伏を含む。装飾部材133の表面の起伏は、装飾部材133の表面の一部を押圧して繊維の一部を変形させることによって形成された起伏を含んでもよい。このようにすることで、シート状の装飾部材133により立体感や奥行きが表現される。装飾部材133の一例である和紙は繊維が不規則に絡み合って積層されているため、一般的に、その表面には高低差が5μm以下の小さな起伏が形成されているが、和紙を折り曲げたり押圧したりすることにより、高低差が10μm以上の大きな起伏が形成される。
【0030】
装飾部材133の表面の起伏は、絞りと呼ばれる、藍染めにおいて模様を表現するための技法を用いて形成された起伏を含んでもよい。絞りと呼ばれる技法では、装飾部材133は、繊維を変形させた状態で藍を染料として含む液に浸されることによって着色される。
【0031】
例えば、折り絞りという技法では、装飾部材133が折り畳まれた状態で、藍を染料として含む液に浸される。折り目に相当する領域には染料が浸透しにくいため、折り方に応じて着色領域と非着色領域とが幾何学的な配置で形成され、模様が表現される。このとき、装飾部材133が折り畳まれることにより、折り目に相当する領域の繊維が変形し、装飾部材133の表面に起伏が形成される。また、板締め絞りという技法では、装飾部材133が所定の形状を有する板によって挟み込まれて押圧された状態で、藍を染料として含む液に浸される。板によって押圧された領域には染料が浸透しにくいため、板の形状に対応する非着色領域を着色領域が囲むような配置で着色領域と非着色領域とが形成され、模様が表現される。このとき、装飾部材133の一部が押圧されることにより、押圧された領域が薄くなるように押圧された領域の繊維が変形し、装飾部材133の表面に起伏が形成される。これらのようにすることで、装飾部材133を着色する過程で、装飾部材133の表面に容易に起伏が形成される。
【0032】
保護板134は、装飾部材133が利用者から視認可能となるような透光性の樹脂により平板状に形成され、装飾部材133の上面を覆うように配置される。透光性の樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等である。好ましくは、保護板134は、無色透明の樹脂により形成される。保護板134は、例えば、100μmの厚さを有する。
【0033】
図4は、文字板13に表現される模様の例について説明するための図である。
【0034】
装飾部材133は、着色領域133aと非着色領域133bとを有する。装飾部材133は、藍染めによって着色される。すなわち、装飾部材133は、藍を染料として含む液体に浸されることによって着色される。これにより、藍に特有の色合いが時計1の美観を向上させる。
【0035】
文字板13は、装飾部材133の着色領域133aと非着色領域133bとの配置によって所定の模様を表現する。図4に示す例では、着色領域133aは、装飾部材133の中心およびその近傍の領域C1と、中心から外周に向かって延伸する三本の直線上の領域L1-L3と、外周に沿った領域E1とを有している。これにより、文字板13に、図1に示したような正六角形状の模様が表現されている。
【0036】
文字板13と対向するように配置されるソーラーセル16は、光電効果により電力を発生させる複数のセル部161と、複数のセル部161を接続する接続部162とを有する。装飾部材133には、文字板13が外装ケース11に収容されたときに、接続部162を覆うように着色領域133aが配置される。すなわち、文字板13が外装ケース11に収容されたときに、接続部162は着色領域133aと対向する。図4に示す例では、接続部162は、ソーラーセル16の中心付近の領域D1と、中心から外周に向かって延伸する三本の直線状の領域M1-M3と、外周に沿った領域F1とを有する。装飾部材133の領域C1は接続部162の領域D1を覆い、装飾部材133の領域L1-L3は接続部162の領域M1-M3をそれぞれ覆い、装飾部材133の領域E1は接続部162の領域F1を覆うように配置されている。また、非着色領域133bは、セル部161を覆うように配置されている。
【0037】
このように、着色領域133aがソーラーセル16の接続部162を覆うように配置されることにより、接続部162が文字板13を透過して視認されにくくなるため、装飾部材133を用いることによる時計1の外観品質の低下が防止される。すなわち、ソーラーセルのセル部と接続部とは異なる材料で形成されるため、その質感や色合いが相互に異なる。したがって、部分的に質感や色合いが異なる接続部が文字板を透過して視認され、時計の外観品質を低下させるおそれがあった。特に、装飾部材として複数の繊維が積層された部材を用いた場合、繊維の間にすき間が存在するため、接続部がより視認されやすくなるおそれがあった。
【0038】
これに対し、文字板13では、装飾部材133において、着色領域133aが接続部162を覆うように配置されている。着色領域133aの光透過率は小さいため、接続部162が隠蔽されて時計1の外観品質の低下が防止される。なお、接続部162は、駆動機構の前面の被隠蔽部の一例である。
【0039】
また、大きい光透過率を有する非着色領域133bがソーラーセル16のセル部161を覆うように配置されることにより、時計1に入射した光の多くがセル部161に到達するようになり、ソーラーセル16の発電効率が向上する。なお、非着色領域133bは全く着色がされていない領域に限られず、着色の程度が着色領域133aよりも小さい領域を含んでもよい。一般的に、着色がされていない装飾部材133は白色またはそれに近い色である。この場合、非着色領域133bは、着色領域133aよりも明度の大きい領域を含む。
【0040】
図5は、文字板13に表現される模様の他の例について説明するための図である。図5に示す例では、着色領域133aは、装飾部材133の中心およびその近傍の領域C2と、中心から外周に向かって延伸する六本の直線上の領域L4-L9と、外周に沿った領域E2とを有している。これにより、正六角形の辺と対角線からなる模様が表現されている。また、ソーラーセル16の接続部162は、図4に示す例と同様に、ソーラーセル16の中心付近の領域D1と、中心から外周に向かって延伸する三本の直線状の領域M1-M3と、外周に沿った領域F1とを有する。
【0041】
装飾部材133の領域C2は接続部162の領域D1を覆い、装飾部材133の領域L4、L6およびL8は接続部162の領域M1-M3をそれぞれ覆い、装飾部材133の領域E2は接続部162の領域F1を覆うように配置されている。装飾部材133の領域L5、L7、L9は、セル部161を覆うように配置されている。このように、着色領域133aは、接続部162とセル部161の一部とを覆うように配置されてもよい。この場合も、接続部162が文字板13を透過して視認されることが防止され、時計1の美観が向上する。また、セル部161の一部が非着色領域133bに覆われているため、ソーラーセル16の発電効率がある程度向上する。
【0042】
なお、文字板13に表現される模様は、図4および図5に示した例に限られず、ソーラーセル16の接続部162の形状に基づいて任意に定められてよい。
【0043】
図6は、文字板13の製造方法の流れを示すフロー図である。なお、以下では装飾部材133が和紙である場合の製造方法が説明されるが、装飾部材133が複数の繊維が積層されたシート状の任意の部材である場合の製造方法も同様である。
【0044】
まず、装飾部材133として和紙が準備される(ステップS11)。準備される和紙は文字板13よりも大きいものであり、例えばA4サイズのものである。
【0045】
次に、装飾部材133の表面に起伏が形成される(ステップS12)。装飾部材133は、着色されたときに所定の模様を表現できるように所定の形状に折り畳まれる。装飾部材133は、着色されたときに所定の模様を表現できるように、所定の形状の板によって挟み込まれてもよい。これらにより、装飾部材133の表面に起伏が形成される。
【0046】
次に、装飾部材133が染色される(ステップS13)。装飾部材133は、藍を含む液に浸された後、空気中で藍が酸化することにより着色される。着色は、着色領域133aの色が所望の濃さとなるまで複数回繰り返されてもよい。着色された装飾部材133は、空気中で乾燥される。
【0047】
なお、ステップS12またはS13の前に、装飾部材133の一方の面に、防水性を有するこんにゃく糊が塗布されてもよい。これにより、装飾部材133の耐水性が向上し、装飾部材133が染料を含む液に浸されたときに破れにくくなる。
【0048】
次に、基材131に装飾部材133が接着される(ステップS14)。基材131の表面に接着剤132が加熱された状態で塗布され、接着剤132を覆うように装飾部材133が配置される。その後、接着剤132が冷却される。これにより、基材131に装飾部材133が接着される。
【0049】
ステップS14において、接着剤132は、装飾部材133の厚さよりも薄くなるように塗布されることが好ましい。これにより、装飾部材133の表面に接着剤132が含浸しにくくなるため、装飾部材133の繊維の膨張感や立体感が視認され、時計1の美観が向上する。
【0050】
次に、基材131および装飾部材133が文字板13の形状である円形に切断される(ステップS15)。好ましくは、基材131および装飾部材133は、レーザ光を照射することにより切断される。これにより、プレス等により切断される場合と比較して、装飾部材133の外周部で繊維のほつれが生じにくくなる。なお、あらかじめ文字板13の形状に切断された基材131および装飾部材133が準備されてもよい。この場合は、ステップS15が省略される。
【0051】
次に、装飾部材133の上面を覆うように保護板134が配置される(ステップS16)。以上で、文字板13が製造される。なお、装飾部材133の表面にさらに接着剤が塗布され、装飾部材133と保護板134が接着されてもよい。これにより、保護板134が装飾部材133から分離することが防止される。
【0052】
図7は、実施形態に係る文字板13の、保護板134が取り外された状態を示す図である。図7は、折り絞りによって着色された装飾部材133を示している。図7に示すように、装飾部材133の一部が折り曲げられたことにより隆起しており、大きい起伏が形成されている。
【0053】
以上説明したように、時計1は、指針14を駆動する駆動機構15と、板状の基材131と、基材131の表面に配置され、複数の繊維が積層されたシート状の装飾部材133と、を有し、かつ指針14と駆動機構15との間に配置される文字板13と、を有する。装飾部材133には、駆動機構の前面の被隠蔽部を覆うように着色領域133aが配置される。これにより、被隠蔽部が装飾部材133を透過して視認されにくくなるため、時計1は、シート状の装飾部材133を用いることによる外観品質の低下を防止することを可能とする。
【0054】
また、駆動機構15は、文字板13と対向するように配置され、かつ複数のセル部161と、複数のセル部を接続する接続部162とを有するソーラーセル16を有する。装飾部材133には、接続部162を被隠蔽部として覆うように着色領域133aが配置される。これにより、装飾部材133を透過して視認されやすい性質を有する接続部162が視認されにくくなるため、時計1は、シート状の装飾部材133を用いることによる外観品質の低下を防止することを可能とする。
【0055】
すなわち、装飾部材133は複数の繊維が積層されているため、その性質上、場所ごとに繊維の密度が異なり、光透過率にばらつきが生じる。他方で、駆動機構15がソーラーセル16を有する場合には、所望の発電効率を達成するため、装飾部材133の光透過率を所定値以上にする必要がある。その結果、装飾部材133の光透過率がばらついても所望の発電効率が達成されるように、装飾部材133の光透過率は、マージンを含んで大きく設定される。このように装飾部材133の光透過率が大きく設定されることにより、ソーラーセル16の接続部162は、装飾部材133を透過して利用者に視認されやすくなり、時計の外観品質に大きな影響を及ぼすおそれがある。装飾部材133に、接続部162を被隠蔽部として覆うように着色領域133aが配置されることにより、接続部162が装飾部材133を透過して視認されやすくなり、上述したような弊害が防止される。
【0056】
また、装飾部材133には、複数のセル部161を覆うように非着色領域133bが配置される。一般的に、着色されていない装飾部材133は白色またはそれに近い色であるため、高い光透過率を有する。装飾部材133に非着色領域133bが配置されることにより、時計1に入射した光の多くがソーラーセル16に到達し、ソーラーセル16の発電効率が向上する。
【0057】
また、装飾部材133は、藍を染料として含む液に浸されることによって着色された和紙である。これにより、藍に特有の色合いが時計1の美観を向上させる。また、和紙に特有の、ざらついていたり繊維が絡み合っていたりするような質感が時計1の美観を向上させる。
【0058】
時計1の実施形態は上述した例に限られない。例えば、時計1は、次に述べるような変形例が適用されて実施されてもよい。
【0059】
上述した説明では、時計1はソーラーセル16を有するソーラー式時計であるものとしたが、ソーラーセル16を有しないクォーツ式時計または機械式時計であってもよい。この場合、装飾部材133には、中枠19を駆動機構15の前面の被隠蔽部として覆うように着色領域133aが配置されてもよい。また、装飾部材133には、駆動機構15の前面に露出したムーブメント17の回動部品を駆動機構15の前面の被隠蔽部として覆うように着色領域133aが配置されてもよい。
【0060】
上述した説明では、装飾部材133は、藍染めによって着色されるものとしたが、このような例に限られず、任意の染料または顔料によって、任意の方法で着色されてもよい。
【0061】
上述した説明では、文字板13は円形であるものとしたが、このような例に限られない。文字板13は、時計1のデザインに応じて、多角形状等の任意の形状であってよい。
【0062】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 時計
13 文字板
131 基材
133 装飾部材
14 指針
15 駆動機構
16 ソーラーセル
161 セル部
162 接続部
17 ムーブメント
19 中枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7