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  • 特開-筐体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117109
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20230816BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230816BHJP
   H02G 3/08 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H05K5/06 D
H05K5/02 L
H02G3/08 080
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019629
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 容宜
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 歩
【テーマコード(参考)】
4E360
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360AB33
4E360AB64
4E360BA04
4E360BB22
4E360BC05
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA12
4E360EA18
4E360ED02
4E360GA23
4E360GA29
4E360GA60
4E360GC04
4E360GC06
4E360GC08
5G361AA06
5G361AB09
5G361AC01
5G361AC03
5G361AD03
(57)【要約】
【課題】 高温環境下でもカバー変形を抑えパッキンの密着性を維持できる筐体を提供する。
【解決手段】 筐体は、第1のフランジを有しかつ第1の線膨張係数を有する第1の材質製の第1の部材と、第1のフランジの外縁に沿って並置される複数の固定点によって第1のフランジにフランジ面同士で固定される第2のフランジを有し且つ第1の部材との間で収容空間を画定しかつ第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有する第2の材質製の第2の部材と、複数の固定点よりも収容空間に近い内側に配置され、第1のフランジ及び第2のフランジのフランジ面間を封止するパッキン部材と、を有する。第1のフランジは、隣り合う固定点の間に設けられ且つ第1のフランジのパッキン部材よりも収容空間から遠い位置に閉じた閉端と第1のフランジの外縁にて開口する開端と有するスリットを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフランジを有しかつ第1の線膨張係数を有する第1の材質製の第1の部材と、
前記第1のフランジの外縁に沿って並置される複数の固定点によって前記第1のフランジにフランジ面同士で固定される第2のフランジを有し且つ前記第1の部材との間で収容空間を画定しかつ前記第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有する第2の材質製の第2の部材と、
前記複数の固定点よりも前記収容空間に近い内側に配置され、前記第1のフランジ及び前記第2のフランジのフランジ面間を封止するパッキン部材と、を有し、
前記第1のフランジは、隣り合う固定点の間に設けられ且つ前記第1のフランジの前記パッキン部材よりも前記収容空間から遠い位置に閉じた閉端と前記第1のフランジの外縁にて開口する開端と有するスリットを有する
ことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記第1のフランジは、前記スリットを複数個有する
ことを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記スリットは隣り合う固定点の中心を結ぶ線分の垂直二等分線上の前記第1のフランジに設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体。
【請求項4】
前記第1のフランジの外縁は前記第2のフランジの外縁に沿って前記収容空間側に屈曲されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の筐体。
【請求項5】
前記複数の固定点の各々はネジ部材で構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の筐体。
【請求項6】
前記第1の材質は合成樹脂であり、前記第2の材質製は金属又はセラミックである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体、特に屋外に設置できる電子機器の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カバー部とベース部の間にパッキンが設けられた電子機器の筐体が記載されている。一般に、電子機器は水に濡れると故障・機能不全の可能性があるため、例えば屋外のように水に濡れるおそれがある環境下に設置する場合、カバー部とベース部の間に浸水を防ぐためのパッキンを配した筐体で保護する必要がある。電子機器の筐体、特に無線機能をもった電子機器の筐体は、電波を透過しやすい、軽量化が可能等の理由で、カバー部が樹脂でつくられている。また、樹脂に比べて強度が高い、放熱性が高い等の理由で、ベース部は金属でつくられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カバー部の樹脂はベース部の金属より線膨張係数が大きいため、高温環境下では樹脂カバーが盛り上がって変形し、パッキンの密着が不十分になり、筐体内部に浸水する可能性があるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、高温環境下でもカバーの盛り上がり変形を抑えパッキンの密着性を維持できる筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明による筐体は、第1のフランジを有しかつ第1の線膨張係数を有する第1の材質製の第1の部材と、前記第1のフランジの外縁に沿って並置される複数の固定点によって前記第1のフランジにフランジ面同士で固定される第2のフランジを有し且つ前記第1の部材との間で収容空間を画定しかつ前記第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有する第2の材質製の第2の部材と、前記複数の固定点よりも前記収容空間に近い内側に配置され、前記第1のフランジ及び前記第2のフランジのフランジ面間を封止するパッキン部材と、を有し、前記第1のフランジは、隣り合う固定点の間に設けられ且つ前記第1のフランジの前記パッキン部材よりも前記収容空間から遠い位置に閉じた閉端と前記第1のフランジの外縁にて開口する開端と有するスリットを有することを特徴とする。
【0007】
本願発明によれば、特に無線機能をもった電子機器の筐体における、高温環境下で筐体内部への浸水を防ぎ筐体の樹脂カバーの熱による変形を抑制する筐体構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例の筐体を示す概略斜視図である。
図2図1の線xxを切り出した概略部分断面図である。
図3】本実施例の筐体の概略分解斜視図である。
図4】本実施例の比較例の筐体フランジの概略部分側面図である。
図5】本実施例の筐体フランジの概略部分側面図である。
【0009】
以下に本発明による実施例の筐体を説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0010】
図1は、実施例の電子機器の筺体10を示す斜視図である。図1において、破線、二点鎖線にて内部を透視した部品を示している。図2は、図1の線xxを切り出した概略部分斜視図である。図3は、筺体10の概略分解斜視図である。
【0011】
図1図3に示すように、実施例の電子機器筐体10は略長方体形状を有している。電子機器筐体10は、筒箱状の合成樹脂素材製のカバー部11、パッキン12、電子機器13、板状の金属素材製のベース部14及び複数のネジ15(カバー部11及びベース部14の固定点をなす締結部材)から構成される。
【0012】
なお、図1図3では、筺体10に収容された電子機器13に設けられている電源、電子部品、電子部品間のケーブル等を省略し図示していない。また、電子機器13を動作させるための外部の給電ケーブルや入出力ケーブルやアンテナ等を通過させるための接続孔が側面壁部の一部において設けられているが、省略し図示していない。
【0013】
(カバー部)
第1の材質であるABS(アクリルニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)等の合成樹脂からなるカバー部11は、収容部となる凹部の開口端面側壁から外側に突出している環状のフランジ11Fを有している。フランジ11Fを有するカバー部11を構成する合成樹脂は第1の線膨張係数を有する。
【0014】
カバー部用樹脂材料としては、ABS、PCの他、ASA(アクリレートスチレンアクリルニトリル)、AES(アクリロニトリルエチレン-プロピレン-ジエンスチレン)、ABS-PC等も挙げられる。
【0015】
(ベース部)
第2の材質であるアルミニウム等の金属からなるベース部14は、カバー部11の収容部の凹部に対応する略中央に電子機器13が固定される部分を備え、さらに電子機器13を囲む周縁端部に環状のフランジ14F(カバー部11のフランジ11Fに対応する環状フランジ)を有している。フランジ14Fを有するベース部14を構成する金属は、合成樹脂の第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有する。金属の例えばアルミニウムでは23(×10E-6/℃)、SUS304では17.3(×10E-6/℃)の熱線膨張係数を有するが、合成樹脂の例えばABSでは6.5~9.5(×10E-5/℃)、PCでは6.5~6.8(×10E-5/℃)の熱線膨張係数を有している。一般的に、金属の熱線膨張係数は合成樹脂の熱線膨張係数より、大体一桁が小さい。
【0016】
ベース部用金属材料としては、アルミニウムの他、鉄、ステンレス鋼等もが挙げられる。
【0017】
また、ベース部14のカバー部11の反対側には、外部へ所定ピッチで突出した複数の平行フィン14Pの放熱部が設けられている。
【0018】
(固定点)
カバー部11及びベース部14の固定点をなす締結部材であるネジ15は、カバー部11のフランジ11Fの外縁に沿って並置される複数の貫通孔11Hから、ベース部14のフランジ14Fに形成された貫通孔11Hに対応する複数の雌ネジ14Hへ、螺合させられ、両フランジ(カバー部11及びベース部14)を固定する(図3、参照)。固定点である締結部材はネジの他、ボルト・ナットやスナップ結合機構等でもよい。
【0019】
カバー部11とベース部14のフランジ11F、14F同士がパッキン12を介して固定点で接合されことによって、ベース部14及びカバー部11の中央内側に、例えばアンテナ機器等の電子機器13を収容する密閉された収容空間SP(図2、参照)が画定される。すなわち、カバー部11のフランジ11Fとベース部14のフランジ14Fの間にパッキン12を挟んで、複数のネジ15によってフランジ同士を締付けることによって、筐体内部を液密的に封止している。
【0020】
なお、防水のために、カバー部11のフランジ11Fの外縁は、ベース部14のフランジ14Fの外縁に沿って収容空間SP側に屈曲されている。
【0021】
(パッキン)
環状のパッキン12は、複数の固定点(ネジ15)よりも収容空間SPに近い内側に配置され、フランジ11F及びフランジ14Fのフランジ面間を封止する。そのための、ベース部14のフランジ14Fには、パッキン12が配置できるように複数の固定点(ネジ15)よりも収容空間SPに近い内側に同環状のパッキン用溝14aが設けられている。パッキン用溝14aは、その深さがパッキン12の厚みより浅くなっており、組み立て時、パッキン12は溝14aに収められるが、カバー部11側には突出するように形成されている。
【0022】
パッキン12の材料としては、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)等のゴムや樹脂が挙げられる。
【0023】
(スリット)
フランジ11Fには、各々が隣り合うネジ15(固定点)の間に設けられ且つフランジ11Fのパッキン12よりも収容空間SPから遠い位置に閉じた閉端とフランジ11Fの外縁にて開口する開端と有する複数のスリット11aが設けられている。各スリット11aは隣接するネジ15(固定点)の対の間に各一か所配置されるけれども、ネジ15の配置ピッチが小さく、発生する熱膨張ひずみが十分に小さい個所については省略可能である。
【0024】
各スリット11aの開端形状がフランジ11Fの外端までスリットを切った形状である理由は、フランジ11Fの外縁で閉端のスリットであると、フランジ11Fのひずみが吸収できないためである。
【0025】
フランジ11Fの外縁開端から閉端までスリット長が長いほどスリット11aの熱膨張ひずみの吸収には有効であるが、防水のために、パッキン12(パッキン用溝14a)の外側にスリット11aの閉端を配置する必要がある。
【0026】
スリット11aの各々は、隣り合うネジ15(固定点)の中心を結ぶ線分の垂直二等分線上のフランジ11Fに設けられている。ネジ15で樹脂のフランジ11Fと金属のフランジ14Fが締結されているので、締結箇所から最も離れた樹脂のフランジ11Fの場所(隣接ネジ間の該垂直二等分線上)に熱膨張ひずみが発生するためである。
【0027】
(動作の説明)
一般に、合成樹脂製のカバー部11は、金属製のベース部14と比べて熱による膨張(ひずみ)が大きい。そのため、高温環境下においてカバー部11にスリット11aを設けない比較例筐体の場合、図4に示すようにカバー部11をベース部14に固定している隣接するネジ15の間のカバー部11のフランジ11Fが浮き上がるように変形し盛り上がりMが生じ、内部のパッキンの密着が不十分になってしてしまう。
【0028】
これに対し、本実施例によれば、図5に示すようにカバー部11の貫通孔11Hの間にスリット11aを設けることにより、樹脂のカバー部11のフランジ11Fの変形を吸収し、線膨張係数の差による熱膨張ひずみを小さくすることができる。そのため、パッキンの密着が確保され筐体内部への浸水を防ぐことができる。本実施例ではフランジの外縁にて複数のスリットを設けることを説明したが単一のスリットを設けてもよい。
【0029】
(効果の説明)
以上のように本実施例によれば、カバー部11に変形を吸収するスリット11aを設けることにより、熱膨張によるカバー部11の浮き上がりを抑制し筐体内部への浸水を防ぐことができる。
【0030】
本実施例では、金属材料の他に、カバー部11の合成樹脂材料よりも熱線膨張係数の小さい第2の材質であるセラミック等の異種材料を用いたベース部14でも利用でき、ハイブリッド筐体全般に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
10…筐体
11…カバー部
11a…スリット
11F…フランジ
12…パッキン
13…電子機器
14…ベース部
14F…フランジ
15…ネジ

図1
図2
図3
図4
図5