(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117147
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】シートカッター付き加工装置およびメディアの切断方法
(51)【国際特許分類】
B26D 5/08 20060101AFI20230816BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20230816BHJP
B26D 3/08 20060101ALI20230816BHJP
B26D 5/30 20060101ALI20230816BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B26D5/08 B
B26D5/00 F
B26D3/08 Z
B26D5/30 B
B41J2/01 303
B41J2/01 305
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019698
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
【テーマコード(参考)】
2C056
3C024
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB46
2C056HA29
2C056HA37
3C024AA07
3C024GG00
3C024KK01
(57)【要約】
【課題】メディアの幅によらず適度な切れやすさを有するミシン目を形成する。
【解決手段】シートカッター付き加工装置は、メディア5にシートカッターが接触または離間するようにシートカッターを移動させるカッター離接装置と、カッター離接装置を切断方向Yに移動させるカッター移動装置と、を備える。第1登録部には、複数の切り残し部分NCの数およびその長さが登録されている。メディア情報入力部には、メディア5の切断方向Yの幅Lmが入力される。切断部分算出部は、メディア情報入力部に入力されたメディア5の幅Lmに応じ、複数の切り残し部分NCの数および長さが第1登録部に登録された数および長さとなるように、複数の切断部分Cの数および長さを算出する。切断制御部は、複数の切断部分Cの数および長さが切断部分算出部により算出された数および長さとなるように、カッター離接装置およびカッター移動装置を制御して、メディア5にミシン目MCを形成させる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のメディアを支持する支持台と、
前記メディアを所定の搬送方向に搬送するメディア搬送装置と、
前記メディアに対して加工を行う加工ヘッドと、
前記メディアを切断可能な刃部を先端に有するシートカッターと、
前記支持台に支持された前記メディアに前記刃部が接触し、または、前記メディアから前記刃部が離間するように、前記シートカッターを前記支持台に接近する方向、または、前記支持台から離れる方向に移動させるカッター離接装置と、
前記カッター離接装置を前記搬送方向に直交する切断方向に移動させるカッター移動装置と、
前記メディア搬送装置、前記加工ヘッド、前記カッター離接装置、および前記カッター移動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記カッター離接装置および前記カッター移動装置を制御して、前記シートカッターを前記メディアに接触させた状態で前記カッター離接装置を前記切断方向に移動させる切断動作と、前記シートカッターを前記メディアから離間させた状態で前記カッター離接装置を前記切断方向に移動させる切り残し動作と、を交互に実行させることにより、複数の切断部分と複数の切り残し部分とからなるミシン目を前記メディアに形成する切断制御部と、
前記複数の切り残し部分の数およびその長さが登録された第1登録部と、
前記メディアの前記切断方向の幅が入力されるメディア情報入力部と、
前記メディア情報入力部に入力された前記メディアの幅に応じ、前記複数の切り残し部分の数および長さが前記第1登録部に登録された数および長さとなるように、前記複数の切断部分の数および長さを算出する切断部分算出部と、を備え、
前記切断制御部は、前記複数の切断部分の数および長さが前記切断部分算出部により算出された数および長さとなるように、前記カッター離接装置および前記カッター移動装置を制御して、前記メディアに前記ミシン目を形成する、
シートカッター付き加工装置。
【請求項2】
前記メディアの前記切断方向の幅を測定する測定装置を備え、
前記メディア情報入力部には、前記測定装置によって測定された前記メディアの幅が入力される、
請求項1に記載のシートカッター付き加工装置。
【請求項3】
前記メディア情報入力部は、前記メディアの種類を入力可能に構成され、
前記第1登録部には、前記メディアの種類ごとに、前記複数の切り残し部分の数および長さが登録されている、
請求項1または2に記載のシートカッター付き加工装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記メディアの前記切断方向の両端部の切断部分の長さがそれぞれ登録された第2登録部を備え、
前記切断部分算出部は、前記第2登録部に登録された長さで前記切断方向の両端部の切断部分が形成されるように、前記切断方向の両端部の切断部分以外の前記複数の切断部分の数および長さを算出する、
請求項1~3のいずれか一つに記載のシートカッター付き加工装置。
【請求項5】
前記第2登録部に登録された前記切断方向の両端部の切断部分の長さは同じであり、
前記第1登録部に登録された前記複数の切り残し部分の長さは同じであり、
前記切断部分算出部は、前記切断方向の両端部の切断部分以外の前記複数の切断部分の長さを同じ長さとする、
請求項4に記載のシートカッター付き加工装置。
【請求項6】
前記加工ヘッドおよび前記カッター離接装置を保持するとともに前記切断方向に移動可能なキャリッジを備え、
前記カッター移動装置は、前記キャリッジを前記切断方向に移動させることにより、前記カッター離接装置を前記切断方向に移動させる、
請求項1~5のいずれか一つに記載のシートカッター付き加工装置。
【請求項7】
メディアを所定の切断方向に間欠的に切断して、前記切断方向に延びる複数の切断部分と複数の切り残し部分とからなるミシン目を前記メディアに形成する方法であって、
前記複数の切り残し部分の数およびその長さが予め定めた数および長さとなるように、前記メディアの前記切断方向の幅に応じて前記複数の切断部分の数および長さを算出する切断部分算出ステップと、
前記複数の切断部分の数および長さが前記切断部分算出ステップで算出された数および長さとなるように、前記メディアに前記ミシン目を形成する切断ステップと、を含む、
メディアの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートカッター付き加工装置とメディアの切断方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状のメディアに対して例えば印刷などの加工を行った後にシートを切断するシートカッター付きの装置が知られている。例えば特許文献1には、ロール紙などのロールメディアを搬送するシート搬送部と、メディアに画像を形成する記録ヘッドと、画像形成後のメディアを所定の長さに切断するシートカッターと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたインクジェットプリンタのシートカッターは、メディアの幅方向に回転しながら走行する一対の円形刃物を備え、一対の刃物を回転させてメディアを切断するように構成されている。上記の一対の円形刃物は、メディアを挟んで互いに対向配置されている。
【0004】
特許文献1に記載されたような円形刃物を回転走行させるシートカッターでは、円周に沿って断続的に刃が形成された円形刃物を使用することにより、断続的なシートカット(いわゆるミシン目カット)を行うことができる。ミシン目カットされたメディアは、ミシン目の上流側と下流側とが分離しないため、例えば巻き取ることができる等の便利な面を有する。かつ、ユーザーはミシン目をちぎることにより、メディアのミシン目の両側の部分を容易に分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような円形刃物でミシン目を形成する方法では、ミシン目の切断部分および切り残し部分(非切断部分)のピッチが予め決められている。そのため、メディアの幅が狭い場合には、切り残し部分の合計の長さが短くなって、ミシン目が切れやすくなる。ミシン目が切れやすいと、メディアを巻き取る際にミシン目が切れてしまう等の問題が発生しやすくなる。メディアの幅が広い場合には、切り残し部分の合計の長さが長くなって、ミシン目をちぎりにくくなる。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メディアの幅によらず適度な切れやすさを有するミシン目を形成できるシートカッター付き加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示するシートカッター付き加工装置は、シート状のメディアを支持する支持台と、前記メディアを所定の搬送方向に搬送するメディア搬送装置と、前記メディアに対して加工を行う加工ヘッドと、前記メディアを切断可能な刃部を先端に有するシートカッターと、前記支持台に支持された前記メディアに前記刃部が接触し、または、前記メディアから前記刃部が離間するように、前記シートカッターを前記支持台に接近する方向、または、前記支持台から離れる方向に移動させるカッター離接装置と、前記カッター離接装置を前記搬送方向に直交する切断方向に移動させるカッター移動装置と、前記メディア搬送装置、前記加工ヘッド、前記カッター離接装置、および前記カッター移動装置を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、切断制御部と、第1登録部と、メディア情報入力部と、切断部分算出部と、を備えている。前記切断制御部は、前記カッター離接装置および前記カッター移動装置を制御して、前記シートカッターを前記メディアに接触させた状態で前記カッター離接装置を前記切断方向に移動させる切断動作と、前記シートカッターを前記メディアから離間させた状態で前記カッター離接装置を前記切断方向に移動させる切り残し動作と、を交互に実行させることにより、複数の切断部分と複数の切り残し部分とからなるミシン目を前記メディアに形成する。前記第1登録部には、前記複数の切り残し部分の数およびその長さが登録されている。前記メディア情報入力部には、前記メディアの前記切断方向の幅が入力される。前記切断部分算出部は、前記メディア情報入力部に入力された前記メディアの幅に応じ、前記複数の切り残し部分の数および長さが前記第1登録部に登録された数および長さとなるように、前記複数の切断部分の数および長さを算出する。前記切断制御部は、前記複数の切断部分の数および長さが前記切断部分算出部により算出された数および長さとなるように、前記カッター離接装置および前記カッター移動装置を制御して、前記メディアに前記ミシン目を形成する。
【0009】
また、ここに開示するメディア切断方法は、メディアを所定の切断方向に間欠的に切断して、前記切断方向に延びる複数の切断部分と複数の切り残し部分とからなるミシン目を前記メディアに形成する方法であって、切断部分算出ステップと、切断ステップと、を含む。前記切断部分算出ステップでは、前記複数の切り残し部分の数およびその長さが予め定めた数および長さとなるように、前記メディアの前記切断方向の幅に応じて前記複数の切断部分の数および長さを算出する。前記切断ステップでは、前記複数の切断部分の数および長さが前記切断部分算出ステップで算出された数および長さとなるように、前記メディアに前記ミシン目を形成する。
【0010】
上記シートカッター付き加工装置によれば、メディアの幅に応じ、切り残し部分の数および長さが予め登録された数および長さとなるように、切断部分の数および長さが算出される。切り残し部分の合計の長さは、メディアの幅によらず予め定められた長さとなる。上記メディアの切断方法においても同様である。そのため、上記シートカッター付き加工装置およびメディアの切断方法によれば、メディアの切断方向の長さによらず適度な切れやすさを有するミシン目を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るカッティングヘッド付きプリンタの斜視図である。
【
図2】カッティングヘッド付きプリンタの要部の模式的な一部破断右側面図である。
【
図3】第1キャリッジおよび第2キャリッジが連結された状態のプリントヘッドおよびカッティングヘッドの正面図である。
【
図4】第1キャリッジおよび第2キャリッジが分離された状態のプリントヘッドおよびカッティングヘッドの正面図である。
【
図5】センサの下方エリアであってメディアクランプ付近の平面図である。
【
図8】カッティングヘッド付きプリンタのブロック図である。
【
図9】ミシン目カットされたメディアの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[カッティングヘッド付きインクジェットプリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10)の斜視図である。
図2は、プリンタ10の要部の模式的な一部破断右側面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、シート状のメディア5に対して印刷およびカッティングを行う装置である。メディア5は、例えば、台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材であってもよく、記録紙や樹脂製のシート等であってもよい。メディア5は印刷およびカッティングのうちの少なくとも一方が可能なメディアであれば足り、特に限定されない。
【0013】
本明細書において「切断」とは、メディア5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、メディア5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とを含む。また、本明細書において「切断」とは、メディア5を連続的に切断する場合(以下、連続カットとも呼ぶ)と、メディア5断続的に切断する場合(以下、ミシン目カットとも呼ぶ)とを含む。
【0014】
プリンタ10は、本体11と、シート状のメディア5を供給する供給ローラ20(
図1では図示省略、
図2参照)と、印刷およびカッティング後のメディア5を巻き取る巻取ローラ25(
図1では図示省略、
図2参照)と、本体11に設けられメディア5を支持するプラテン12と、プラテン12に支持されたメディア5を所定の搬送方向に搬送する搬送装置30と、メディア5に対し印刷を行うプリントヘッド60と、メディア5を切断するカッティングヘッド70と、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70を移動させるヘッド移動装置40と、メディア5の幅を測定するセンサ90(
図3参照)と、印刷およびカッティングが終了したメディア5を切断するシートカッターユニット100と、制御装置200と、を備えている。
【0015】
詳細は後述するが、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70は、図示Y方向に移動可能に構成されている。また、メディア5は、図示X方向に搬送される。以下では、Y方向を主走査方向ともいい、X方向を副走査方向ともいう。主走査方向Yは、ここでは、左右方向である。主走査方向Yはシートカッターユニット100がメディア5を切断する切断方向でもある。副走査方向Xは、ここでは、前後方向である。副走査方向Xは搬送装置30がメディア5を搬送する搬送方向である。主走査方向Y(切断方向)と副走査方向X(搬送方向)とは直交している。ここでは、前方は、プリンタ10の前方である。後方は、プリンタ10の後方である。なお、主走査方向Yはメディア5の幅方向に対応し、副走査方向Xはメディア5の長手方向に対応する。図面の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。
【0016】
図2に示すように、プリンタ10は、印刷前のメディア5が巻かれた供給ローラ20を備えている。供給ローラ20はプラテン12の後斜め下方に配置されている。印刷時またはカッティング時には、供給ローラ20に巻かれたメディア5は、プラテン12上を経由して副走査方向Xに移動される。巻取ローラ25は、印刷およびカッティング済みのメディア5をロール状に巻き取るように構成されている。
図2に示すように、巻取ローラ25はプラテン12の前斜め下方に配置されている。
【0017】
図1に示すように、搬送装置30は、グリットローラ31と、ピンチローラ32と、フィードモータ33(
図8参照)とを備えている。グリットローラ31は、プラテン12に設けられている。グリットローラ31は、フィードモータ33に駆動されることによって回転する。ピンチローラ32は、グリットローラ31の上方に配置されている。ピンチローラ32は、グリットローラ31と対向するように設けられている。ピンチローラ32は、グリットローラ31に対し接近および離反が可能なように、上下に揺動自在に構成されている。メディア5がピンチローラ32とグリットローラ31との間に挟み込まれた状態でグリットローラ31が回転すると、メディア5は前方または後方に搬送される。なお、
図1では、3つのグリットローラ31および2つのピンチローラ32しか図示されていないが、実際にはより多くのグリットローラ31およびピンチローラ32がそれぞれ主走査方向Yに配列されていてもよい。フィードモータ33は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
【0018】
図1に示すように、プリンタ10は、搬送装置30による搬送時にメディア5が浮き上がることを抑制するメディアクランプ35を備えている。メディアクランプ35は、メディア5の右縁の浮き上がりを抑制する右側クランプ35Rと、メディア5の左縁の浮き上がりを抑制する左側クランプ35Lと、を含んでいる。右側クランプ35Rと左側クランプ35Lとは、左右対称に構成されている。右側クランプ35Rおよび左側クランプ35Lは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる平板状の部材である。右側クランプ35Rおよび左側クランプ35Lは、それぞれ、プラテン12上を主走査方向Yに移動可能に構成されている。右側クランプ35Rおよび左側クランプ35Lは、メディア5の幅に合わせて、プラテン12上を主走査方向Yに移動される。
【0019】
図3および
図4は、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70の正面図である。そのうち、
図3は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが連結された状態を示している。
図4は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが分離された状態を示している。ヘッド移動装置40は、プリントヘッド60を保持する第1キャリッジ51と、カッティングヘッド70を保持する第2キャリッジ52とを主走査方向Yに移動させるように構成されている。ヘッド移動装置40は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが連結された状態では、両者を一体で移動させる。また、ヘッド移動装置40は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが分離された状態では、第2キャリッジ52だけを単独で移動させる。なお、詳しくは後述するが、第2キャリッジ52には、シートカッターユニット100が搭載されている。ヘッド移動装置40は、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70を主走査方向Yに移動させるものであると同時に、シートカッターユニット100を主走査方向Yに移動させるカッター移動装置でもある。
【0020】
図3および
図4に示すように、ヘッド移動装置40は、ガイドレール41と、ベルト42と、スキャンモータ43(
図8参照)とを備えている。ガイドレール41は、プラテン12の上方に設けられている。ガイドレール41は主走査方向Yに延びている。ガイドレール41には、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが摺動自在に係合している。第2キャリッジ52の背面上部には、主走査方向Yに延びるベルト42が固定されている。ベルト42は、スキャンモータ43に接続されている。スキャンモータ43が回転すると、ベルト42が主走査方向Yに走行する。これにより、第2キャリッジ52は主走査方向Yに移動する。スキャンモータ43は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
【0021】
第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とは、連結部材51a、52aによって連結され、または分離される。
図3および
図4に示すように、連結部材51a、52aは、第1キャリッジ51に設けられた第1連結部材51aと、第2キャリッジ52に設けられた第2連結部材52aとを有している。第1連結部材51aは、第1キャリッジ51の左側部分に設けられている。第2連結部材52aは、第2キャリッジ52の右側部分に設けられている。本実施形態では、連結部材51a、52aは、磁力を利用して第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とを連結する。第1連結部材51aと第2連結部材52aのうちの一方は磁石を備え、他方は磁石に吸着する磁性体を備えている。ただし、連結部材51a、52aは磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とは、第1連結部材51aと第2連結部材52aとが接触することにより連結される。
【0022】
第1キャリッジ51の右側には、L字状に形成された受け金具51bが設けられている。また、ガイドレール41の右端付近には、第1キャリッジ51を固定するためのロック装置80が設けられている。ロック装置80は、受け金具51bに引っ掛けられるフック81と、フック81をロック位置(
図4参照)と非ロック位置(
図3参照)との間で移動させるロック用ソレノイド82(
図8参照)とを備えている。ロック用ソレノイド82は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
【0023】
図3に示すように、プリントヘッド60による印刷を行う際には、フック81が非ロック位置に設定される。第2キャリッジ52が右方に移動し、第1連結部材51aと第2連結部材52aとが接触すると、第2キャリッジ52と第1キャリッジ51とが連結される。その結果、第1キャリッジ51は、第2キャリッジ52とともに主走査方向Yに移動可能となる。ヘッド移動装置40は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52が連結された状態において、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70を主走査方向Yに移動させる。
【0024】
カッティングヘッド70によるカッティングの際には、
図4に示すように、第1キャリッジ51が可動範囲右端の待機位置に位置付けられ、ロック装置80のフック81がロック位置に設定される。これにより、第1キャリッジ51の移動が阻止される。この状態で第2キャリッジ52が左方へ移動すると、第1連結部材51aと第2連結部材52aとが離反し、第2キャリッジ52と第1キャリッジ51との連結が解除される。その結果、第1キャリッジ51が待機位置に待機した状態で、第2キャリッジ52が主走査方向Yに移動可能となる。
【0025】
第1キャリッジ51は、プリントヘッド60を保持している。プリントヘッド60は、プラテン12に支持されたメディア5に向かってインクを吐出することにより、メディア5に対して印刷を行う。印刷はメディア5に対する加工の一例であり、プリントヘッド60は、メディア5に対して加工を行う加工ヘッドの一例である。プリントヘッド60は、複数のインクヘッド61を備えている。複数のインクヘッド61の下面には、それぞれ、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が形成されている。インクヘッド61の数量は特に限定されず、インクヘッド61が吐出するインクの種類や色も何ら限定されない。
【0026】
第2キャリッジ52は、カッティングヘッド70と、センサ90と、シートカッターユニット100とを保持している。カッティングはメディア5に対する加工の一例であり、カッティングヘッド70も、メディア5に対して加工を行う加工ヘッドの一例である。第2キャリッジ52は、シートカッターユニット100と加工ヘッドの一例としてのカッティングヘッド70とを保持するとともに、主走査方向Yに移動可能に構成されている。カッター移動装置としてのヘッド移動装置40は、第2キャリッジ52を主走査方向Yに移動させることにより、シートカッターユニット100を主走査方向Yに移動させる。
【0027】
カッティングヘッド70は、加工カッター71と、加工カッター保持装置72とを備えている。加工カッター71は、加工データに含まれるカットデータに基づいて、プラテン12に支持されたメディア5を切断するカッターである。加工データは、印刷データおよびカットデータのうちの少なくとも一方を含んでいる。加工カッター保持装置72は、加工カッター71を上下方向に移動させてプラテン12上のメディア5に接触または離反させる。
【0028】
加工カッター保持装置72は、加工カッター71を上下方向に移動させるソレノイド72aを備えている。ソレノイド72aがON/OFFされると、加工カッター71は上下方向に移動してメディア5に接触し、あるいはメディア5から離反する。加工カッター71は、メディア5に接触することにより、メディア5を切断可能である。ソレノイド72aは、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
【0029】
センサ90は、第2キャリッジ52とともに主走査方向Yに移動されながら、メディア5とプラテン12との境界を検出することにより、メディア5の主走査方向Yの幅を検出する。センサ90は、印刷時にメディア5に印刷され、カッティング時の位置の基準となるクロップマーク(図示せず)を検出するセンサでもある。センサ90は、ここでは、明度がある程度以上異なる色を識別可能なセンサである。センサ90は、例えば、カメラである。
図5は、センサ90の下方エリアであってメディアクランプ35(詳しくは、左側クランプ35L)付近の平面図である。
図5のラインLsは、平面視におけるセンサ90の主走査方向Yの移動経路を示している。
図5に示すように、平面視におけるセンサ90の主走査方向Yの移動経路Lsは、メディアクランプ35上を通っている。プラテン12上にメディア5が載置され、メディア5をメディアクランプ35が押さえている状態では、センサ90は、メディアクランプ35とメディア5との色の違いから、メディア5とメディアクランプ35との境界をメディア5の主走査方向Yの端部と認識する。メディアクランプ35が取り外された状態では、センサ90は、プラテン12とメディア5との色の違いから、メディア5の主走査方向Yの端部を認識する。
【0030】
図5に示すように、プラテン12のうち加工カッター71の移動経路の下方に位置する部分には、第1溝13aが設けられている。第1溝13aは、加工カッター71の下降時の下端よりも下方に位置するようにプラテン12の表面から凹んでいる。第1溝13aは、主走査方向Yに延びている。第1溝13aには、加工カッター71によって切断可能なカッターパッド(図示せず)が嵌め込まれている。第1溝13aは、副走査方向Xに関して、メディアクランプ35と重なる場所に設けられている。プラテン12のうちメディアクランプ35よりも後方には、第2溝13bが設けられている。第2溝13bは、シートカッターユニット100のシートカッター100Aが通る溝である。第2溝13bは、主走査方向Yに延びている。シートカッター100Aは、メディアクランプ35よりも副走査方向Xの上流側でメディア5を切断する。第2溝13bは、シートカッター100Aの移動経路の下方に設けられ、プラテン12の表面から凹んでいる。第2溝13bにも、シートカッター100Aによって切断可能な、図示しないカッターパッドが嵌め込まれている。
【0031】
シートカッターユニット100は、印刷およびカッティング済みのメディア5を主走査方向Yにミシン目カットまたは連続カットする。
図2に示すように、シートカッターユニット100は、第2キャリッジ52に搭載され、カッター移動装置としてのヘッド移動装置40により主走査方向Yに移動される。第2キャリッジ52において、シートカッターユニット100は、カッティングヘッド70よりも副走査方向Xの上流側(ここでは後方)に設けられている。
【0032】
図6は、シートカッターユニット100の斜視図である。
図7は、シートカッターユニット100の左側面図である。
図6および
図7は、シートカッターユニット100からカバーを取り外した状態を示す図である。
図6および
図7に示すように、シートカッターユニット100は、メディア5を切断するシートカッター100Aと、シートカッター100Aを保持するシートカッター保持装置100Bと、を備えている。シートカッター保持装置100Bは、シートカッター100Aを上下方向に移動させて、プラテン12に支持されたメディア5にシートカッター100Aを接近または離反させる。
【0033】
図6に示すように、シートカッター100Aは、上下方向に延びる板状のカッターである。シートカッター100Aは、メディア5を切断可能な刃部101を先端に備え、刃部101によりメディア5を切断する。刃部101は、副走査方向X(メディア5の切断方向である主走査方向Yに直交する方向)視において略三角形に形成され、その先端は尖っている。シートカッター100Aは、それ自体は回転または移動不能にシートカッター保持装置100Bに固定されている。シートカッター100Aは、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70よりも副走査方向Xの上流側(ここでは後方)に設けられている。
【0034】
シートカッター保持装置100Bは、プラテン12に支持されたメディア5に刃部101が接触するように、シートカッター100Aをプラテン12に接近する方向に移動させる。プラテン12に接近する方向は、ここでは下方である。シートカッター保持装置100Bは、また、シートカッター100Aがプラテン12から離間するように、シートカッター100Aをプラテン12から離れる方向に移動させる。プラテン12から離れる方向は、ここでは上方である。
図6に示すように、シートカッター保持装置100Bは、フレーム部材110と、シートカッター100Aを保持するホルダ120と、上下方向に摺動可能なようにホルダ120を支持するスライドガイド130と、ホルダ120を摺動させる駆動力を発生させるアクチュエータ140と、アクチュエータ140の駆動力をホルダ120に伝達するリンク部材150と、ホルダ120を引き上げるスプリング160と、フレーム部材110に取り付けられた支持板170と、を備えている。
【0035】
フレーム部材110は、第2キャリッジ52に固定されるとともに、シートカッター保持装置100Bの他の全ての部材を直接または間接に支持している。フレーム部材110は、直接には、スライドガイド130および支持板170を支持している。
図6に示すように、フレーム部材110は、ここでは、上下方向および主走査方向Yに延びる平板状の部材である。支持板170は、フレーム部材110に支持され、フレーム部材110から前方に向かって延びている。スライドガイド130は、フレーム部材110の前面下部に設けられている。スライドガイド130は、ここでは、上下方向に延びる一対のガイドレールである。フレーム部材110は、スプリング160が係止されるスプリング係止部111を備えている。スプリング係止部111は、スライドガイド130の上方に設けられている。
【0036】
ホルダ120は、シートカッター100Aを保持する部材である。ホルダ120は、スライドガイド130に沿って上下方向に移動可能に構成されている。
図6に示すように、ホルダ120は、カッターホルダ121と、スライダ122と、スプリング係止部123と、リンク接続部124と、を備えている。スライダ122は、上下方向に摺動自在にスライドガイド130に係合している。カッターホルダ121は、シートカッター100Aを保持可能かつスライダ122に着脱可能に構成されている。カッターホルダ121は、スライダ122の下端に着脱されるように構成されている。ユーザーは、カッターホルダ121をスライダ122から取り外すことによりシートカッター100Aの交換を容易に行うことができる。
【0037】
カッターホルダ121は、カッター固定部121aとローラ121bとを備えている。カッター固定部121aは、締め込むことによりシートカッター100Aを固定し、緩めることによりシートカッター100Aを解放するように構成されている。ローラ121bは、その下端がシートカッター100Aの先端よりもわずかに高い位置に位置するように設けられている。ローラ121bは、副走査方向Xに延びる回転軸を備え、主走査方向Yに回転可能である。ローラ121bは、シートカッターユニット100が主走査方向Yに移動する際にメディア5に当接し、メディア5の浮きを防止する部材である。
【0038】
スプリング係止部123は、スライダ122の上端に設けられている。リンク接続部124は、スプリング係止部123よりも下方に設けられている。リンク接続部124は、ここでは、前方に向かって開いたC字状に構成されている。
【0039】
スプリング160は、フレーム部材110のスプリング係止部111とスライダ122のスプリング係止部123との間に、引っ張られた状態で保持されている。スプリング160の上端フック161は、フレーム部材110のスプリング係止部111に引っ掛けられている。スプリング160の下端フック162は、ホルダ120のスプリング係止部123に引っ掛けられている。スプリング160は、その復元力によってホルダ120を上方に向かって付勢している。スプリング160は、アクチュエータ140が駆動していないときには、シートカッター100Aがプラテン12よりも上方に位置するようにホルダ120を吊り上げている。
【0040】
アクチュエータ140は、支持板170に支持されている。
図7に示すように、アクチュエータ140は、上下方向に伸縮するロッド141と、ロッド141を駆動する駆動部142と、を備えている。アクチュエータ140の構成は限定されないが、ここでは、アクチュエータ140は電磁式のアクチュエータである。駆動部142はソレノイドコイルである。駆動部142は制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。駆動部142がONすると、ロッド141は上方に向かって引き上げられる。ロッド141の下端部(先端部)には、リンク部材150の一方の端部151が接続されるリンク接続部141aが設けられている。リンク接続部141aは、円柱状に形成され、リンク部材150の端部151が回動自在に接続される。
【0041】
支持板170のアクチュエータ140よりも下方には、リンク部材150の回転軸171が設けられている。回転軸171には、リンク部材150の軸受部153が回転可能に装着されている。
図7に示すように、リンク部材150は、棒状の部材であり、ロッド141に接続された端部151と、ホルダ120に接続された端部152と、両端部151、152の間に設けられた軸受部153と、を有している。リンク部材150は、ロッド141の駆動力をホルダ120に伝達する部材である。ホルダ120は、リンク部材150を介して伝達されたロッド141の駆動力により、スライドガイド130に沿って上下方向に移動する。ここでは、アクチュエータ140のロッド141が引き上げられると、ホルダ120は下降する。これにより、シートカッター100Aがプラテン12上のメディア5に接近する。リンク部材150のホルダ120側の端部152は、リンク接続部124のC字型の凹部に挿入されている。
【0042】
図8は、プリンタ10のブロック図である。
図8に示すように、制御装置200は、巻取ローラ25、搬送装置30のフィードモータ33、ヘッド移動装置40のスキャンモータ43、プリントヘッド60のインクヘッド61、カッティングヘッド70のソレノイド72a、ロック装置80のロック用ソレノイド82、およびシートカッターユニット100のアクチュエータ140の駆動部142に電気的に接続され、それらの動作を制御している。また、制御装置200は、センサ90に接続され、センサ90からの信号を受信している。制御装置200の構成は特に限定されないが、例えば、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
【0043】
図8に示すように、制御装置200は、シートカッター100Aによるメディア5のミシン目カット動作を制御する制御部として、第1登録部201と、第2登録部202と、メディア情報入力部203と、切断部分算出部204と、切断制御部205と、を備えている。ミシン目カットでは、ヘッド移動装置40を制御してシートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させるとともに、シートカッター保持装置100Bを制御してシートカッター100Aをプラテン12に接近または離反させ、メディア5に複数の切断部分Cと複数の切り残し部分NCとから構成されたミシン目MC(いずれも
図9参照)とを形成する。制御装置200は、印刷動作を制御する制御部やカッティング動作を制御する制御部など他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。なお、特に詳細に説明しないが、プリンタ10は、シートカッター100Aを使ってメディア5を連続カットする(例えば、メディア5を主走査方向Yに全切断してロールから切り離したり、剥離紙だけを主走査方向Yに全切断したりする)ことも可能である。
【0044】
第1登録部201には、複数の切り残し部分NCの数およびその長さが登録されている。従って、複数の切り残し部分NCの合計の長さは、予め定められた長さである。本実施形態では、第1登録部201に登録された複数の切り残し部分NCの長さは同じである。よって、切り残し部分NCの合計の長さは、1つの切り残し部分NCの長さと切り残し部分NCの数とを乗じた長さに等しい。ただし、第1登録部201に登録された複数の切り残し部分NCの長さは、一部または全部が異なっていてもよい。第1登録部201には、メディア5の種類ごとに、複数の切り残し部分NCの数および長さが登録されている。メディア5が切れやすいメディアの場合、第1登録部201に登録された切り残し部分NCの合計の長さは長く、メディア5が切れにくいメディアの場合、第1登録部201に登録された切り残し部分NCの合計の長さは短い。ミシン目MCの切りやすさは、メディア5が同じであれば、主として、切り残し部分NCの合計の長さに依存する。
【0045】
本実施形態では、1つの切り残し部分NCの長さは、メディア5の種類によらず、同じ長さが登録されている。切り残し部分NCの合計の長さは、切り残し部分NCの数を変えることにより、メディア5の種類ごとに変えられている。これは、1つの切り残し部分NCの長さには、ユーザーがちぎりやすい好適な範囲が存在することによる。メディア5が切れやすいメディアの場合、第1登録部201に登録された切り残し部分NCの数は多く、メディア5が切れにくいメディアの場合、第1登録部201に登録された切り残し部分NCの数は少ない。
【0046】
第2登録部202には、メディア5の主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCR(符号CLは、メディア5の左端の切断部分Cを表し、符号CRは、メディア5の右端の切断部分Cを表す、
図9参照)の長さがそれぞれ登録されている。ユーザーがミシン目MCを容易に切れるようにするためには、少なくとも一方の端部に切断部分Cが形成されている(端部が切れている)ことが好ましい。さらには、両方の端部に切断部分Cが形成されていることが好ましい。そのため、第2登録部202には、主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCRの好適な長さがそれぞれ登録されている。本実施形態では、メディア5の主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCRの登録された長さは同じである。ただし、両端部の切断部分CLおよびCRの登録された長さは、異なっていてもよい。
【0047】
メディア情報入力部203には、メディア5の主走査方向Yの幅が入力される。ここでは、メディア情報入力部203には、センサ90によって測定されたメディア5の幅が入力される。ただし、メディア5の幅は、ユーザーによってメディア情報入力部203に入力されてもよい。また、メディア情報入力部203は、メディア5の種類を入力可能に構成されている。メディア5の種類は、例えばユーザーにより、または例えば、プリンタ10に接続されたシステムにより入力される。メディア情報入力部203に入力されたメディア5の種類に基づいて、第1登録部201に登録された切り残し部分NCの数および長さ(メディア5の種類毎に登録されている)のうちの1つが選択される。
【0048】
なお、前述したように、メディアクランプ35でメディア5を押さえている場合には、センサ90によって測定されるメディア5の幅は、メディアクランプ35とメディア5との境界をメディア5の端部とみなした幅である。また、メディア5の端部の切断部分CLまたはCRの長さは、メディアクランプ35とメディア5との境界を起点として算出される。
【0049】
切断部分算出部204は、メディア情報入力部203に入力されたメディア5の幅に応じ、複数の切り残し部分NCの数および長さが第1登録部201に登録された数および長さとなるように、複数の切断部分Cの数および長さを算出する。本実施形態では、切断部分算出部204は、第2登録部202に登録された長さで主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCRが形成されるように、主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCR以外の複数の切断部分CC(
図9参照)の数および長さを算出する。切断部分算出部204は、ここでは、メディア5の主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCR以外の切断部分CCの長さを同じ長さとするように設定されている。これにより、メディア5の左端の切断部分CLと右端の切断部分CRとの間の部分では、同じ長さの複数の切断部分CCが等間隔で配置される。切断部分Cおよび切り残し部分NCの位置の算出方法の詳細については後述する。
【0050】
切断制御部205は、シートカッター保持装置100Bおよびヘッド移動装置40を制御して、複数の切断部分Cと複数の切り残し部分NCとで構成されたミシン目MCをメディア5に形成する。詳しくは、切断制御部205は、シートカッター100Aをメディア5に接触させた状態でシートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させる切断動作と、シートカッター100Aをメディア5から離間させた状態でシートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させる切り残し動作と、を交互に実行させることにより、ミシン目MCをメディア5に形成する。本実施形態では、切断制御部205は、複数の切断部分Cの数および長さが切断部分算出部204により算出された数および長さとなるように、シートカッター保持装置100Bおよびヘッド移動装置40を制御して、メディア5にミシン目MCを形成する。
【0051】
[ミシン目カットのプロセス]
以下、シートカッター100Aによるメディア5のミシン目カットのプロセスについて説明する。
図9は、ミシン目カットされたメディア5の模式的な平面図である。
図9に示すように、ミシン目カットされたメディア5には、左端部の切断部分CLと、中央部の複数の切断部分CCと、右端部の切断部分CRとが形成される。切断部分Cは、上下方向に関してシートカッター100Aの刃部101がメディア5と重なるようにシートカッター100Aを降ろした状態で、第2キャリッジ52を主走査方向Yに移動させることにより形成される。左端部の切断部分CL、中央部の複数の切断部分CC、右端部の切断部分CRの間にはそれぞれ、メディア5が切り残された切り残し部分NCが形成される。切り残し部分NCは、シートカッター100Aがメディア5と離間するようにシートカッター100Aを上げた状態で、第2キャリッジ52を主走査方向Yに移動させることにより形成される。ミシン目MCは、左端部の切断部分CLと、中央部の複数の切断部分CCと、右端部の切断部分CRと、複数の切り残し部分NCとからなっている。
【0052】
図9に示すように、左端部の切断部分CLの長さ、および、右端部の切断部分CRの長さは、いずれも長さL1に設定されている。1つの切り残し部分NCの長さは、長さL2に設定されている。切り残し部分NCの数は、M個に設定されているとする(
図9では5個として図示)。従って、切り残し長さの合計は、L2×Mである。1つの切り残し部分NCの長さL2は、好適には、例えば、1mm以上3mm以下である。切り残し部分NCの数Mは、好適には、例えば、5個以上15個以下である。ただし、1つの切り残し部分NCの長さL2および切り残し部分NCの数Mは、特に限定されない。メディア5の種類が異なる場合には、切り残し部分NCの数は、Mとは異なる自然数に設定され得る。センサ90の測定により、メディア5の主走査方向Yの幅は、長さLmであるとする。
【0053】
この場合、本実施形態では、両端部の切断部分CLおよびCRの間に切り残し部分NCが均等に形成される(従って、中央部の複数の切断部分CCも均等に配置される)ため、中央部の複数の切断部分CCの長さL3は、それぞれ、
L3=(Lm-2×L1-M×L2)/(M-1)
となる。
【0054】
上記ミシン目カットの最初のステップでは、まず、メディア5の種類が入力される。これにより、切り残し部分NCの数がM個、切り残し長さの合計がL2×Mに設定される。次に、第2キャリッジ52が主走査方向Yに移動され、センサ90がメディア5の両端の位置を特定する。これにより、メディア5の主走査方向Yの幅Lmがメディア情報入力部203に入力される。これにより、上記した式による、中央部の切断部分CCの長さL3の算出が可能となる。
【0055】
ミシン目形成の段階では、まず、メディア5の主走査方向Yの一方の端部(例えば、左端)のさらに外側にシートカッター100Aが位置するように第2キャリッジ52が移動される。次に、シートカッター100Aが下降される。続いてシートカッター100Aが下がった状態のまま、第2キャリッジ52がメディア5の方(ここでは右方)に移動される。シートカッター100Aの刃部101がメディア5に触れた時点から、メディア5には左端の切断部分CLが形成され始める。
【0056】
切断部分算出部204の計算結果に基づいて、左端の切断部分CLの終端位置(右端の位置)は決定されている。切断制御部205は、左端の切断部分CLの終端位置に対応する主走査方向Yの位置に第2キャリッジ52が到達すると、第2キャリッジ52を停止させる。その後、切断制御部205は、シートカッター100Aを上昇させ、メディア5から離間する。本実施形態では、シートカッター100Aの昇降は、第2キャリッジ52が停止した状態で行われる。続いて、第2キャリッジ52が距離L2(切り残し部分NCの長さ)だけ主走査方向Yに移動される。これにより、切り残し部分NCが形成される。第2キャリッジ52の停止後、切断制御部205は、シートカッター100Aを再び下降させる。これにより、シートカッター100Aがメディア5を貫通する。この後、第2キャリッジ52が距離L3(中央部の切断部分CCの長さ)だけ主走査方向Yに移動され、中央部の切断部分CCのうちの1つ目が形成される。以下、同様である。なお、可能であれば、シートカッター100Aの昇降は、第2キャリッジ52を走行させながら行われてもよい。
【0057】
例えば、
図9に二点鎖線で示すように、メディアクランプ35が長さL4ずつメディア5の両端に被さるように配置された場合、メディア5の主走査方向Yの幅は、Lm-2×L4と認識される。そのため、中央部の複数の切断部分CCの長さは、それぞれ、(Lm-2×L4-2×L1-M×L2)/(M-1)となる。プリンタ10に認識されるメディア5の左端および右端の位置は、メディアクランプ35がない場合のメディア5の端部(真の端部)から、それぞれ長さL4だけ内側となる。プリンタ10は、この認識されたメディア5の左端および右端の位置を端部の切断部分CLおよびCRの計算上の起点とする。よって、この場合、左右両端の切断部分CLおよびCRの長さは、それぞれ、L1+L4となる。
【0058】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態に係るプリンタ10は、シート状のメディア5を支持するプラテン12と、メディア5を副走査方向Xに搬送する搬送装置30と、メディア5に対して加工を行う加工ヘッドとしてのプリントヘッド60およびカッティングヘッド70と、メディア5を切断可能な刃部101を先端に有するシートカッター100Aと、プラテン12に支持されたメディア5に刃部101が接触し、または、メディア5から刃部101が離間するように、シートカッター100Aをプラテン12に接近する方向、または、プラテン12から離れる方向に移動させるシートカッター保持装置100Bと、シートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させるヘッド移動装置40と、これらを制御する制御装置200と、を備えている。制御装置200は、第1登録部201と、メディア情報入力部203と、切断部分算出部204と、切断制御部205と、を備えている。第1登録部201には、複数の切り残し部分NCの数およびその長さが登録されている。メディア情報入力部203には、メディア5の主走査方向Yの幅が入力される。切断部分算出部204は、メディア情報入力部203に入力されたメディア5の幅に応じ、複数の切り残し部分NCの数および長さが第1登録部201に登録された数および長さとなるように、複数の切断部分Cの数および長さを算出する。切断制御部205は、シートカッター保持装置100Bおよびヘッド移動装置40を制御して、複数の切断部分Cと複数の切り残し部分NCとからなるミシン目MCをメディア5に形成する。詳しくは、切断制御部205は、シートカッター100Aをメディア5に接触させた状態でシートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させる切断動作と、シートカッター100Aをメディア5から離間させた状態でシートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させる切り残し動作と、を交互に実行させることにより、ミシン目MCをメディア5に形成する。本実施形態では、切断制御部205は、複数の切断部分Cの数および長さが切断部分算出部204により算出された数および長さとなるように、シートカッター保持装置100Bおよびヘッド移動装置40を制御して、メディア5にミシン目MCを形成する。かかるプリンタ10によれば、メディア5の幅によらず適度な切れやすさを有するミシン目MCを形成することができる。
【0059】
従来のシートカットでは、ミシン目の切断部分および切り残し部分のピッチが予め決められていた。そのため、メディアの幅が狭い場合には、切り残し部分の合計の長さが短くなって、ミシン目が切れやすかった。ミシン目が切れやすいと、メディアを巻き取る際にミシン目が切れてしまう等の問題が発生しやすくなる。一方で、メディアの幅が広い場合には、切り残し部分の合計の長さが長くなって、ミシン目をちぎりにくくなる。このように、従来のシートカットでは、ミシン目のちぎれやすさは、メディアの幅に依存していた。また、幅の広いメディアにおいて切り残し部分の合計の長さが長くなることは、通常、切り残し部分および切断部分の数が増えることを意味する。従って、幅の広いメディアにおいて切り残し部分の合計の長さが必要以上に長くなると、切り残し部分および切断部分の数が必要以上に増え、シートカットに要する時間が増加する。
【0060】
それに対して、本実施形態にかかるプリンタ10によれば、切り残し部分NCの合計の長さは、第1登録部201に登録された切り残し部分NCの数および長さによって定まる所定の長さ(上記した例では、L2×M)となる。ミシン目MCの切りやすさは、メディア5が同じであれば、主として、切り残し部分NCの合計の長さに依存する。そのため、本実施形態に係るプリンタ10によれば、メディア5の主走査方向Yの長さによらず、適度な切れやすさを有するミシン目MCを形成することができる。また、幅の広いメディア5においても切り残し部分NCの数が多くならないため、シートカットに要する時間の増加を抑制できる。
【0061】
本実施形態では、プリンタ10は、メディア5の主走査方向Yの幅を測定するセンサ90を備え、メディア情報入力部203には、センサ90によって測定されたメディア5の幅が入力される。かかるプリンタ10によれば、メディア5の主走査方向Yの幅をユーザーが知らなくても、またはユーザーが測定しなくても、メディア5の幅をプリンタ10に入力することができる。なお、メディア5の主走査方向Yの幅を測定する測定装置は、撮像装置を備えたものには限定されない。メディア5の主走査方向Yの幅を測定する測定装置は、例えば、メディア5に接触するプローブを備えていてもよい。
【0062】
本実施形態では、メディア情報入力部203は、メディア5の種類を入力可能に構成されている。第1登録部201には、メディア5の種類ごとに、複数の切り残し部分NCの数および長さが登録されている。前述したように、ミシン目MCの切れやすさは、メディア5の種類にも依存する。よって、かかる構成によれば、メディア5の種類に応じた切り残し部分NCの数および長さを登録することにより、メディア5の種類によらず、適度な切れやすさを有するミシン目MCを形成することができる。
【0063】
本実施形態では、制御装置200は、メディア5の主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCRの長さがそれぞれ登録された第2登録部202を備えている。切断部分算出部204は、第2登録部202に登録された長さで主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCRが形成されるように、両端部の切断部分CLおよびCR以外の複数の切断部分CCの数および長さを算出する。かかる構成によれば、メディア5の両端部に適切な長さの切断部分CLおよびCRが形成されるため、ユーザーは、ミシン目MCを容易に切ることができる。
【0064】
本実施形態では、第2登録部202に登録された主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCRの長さは同じである。また、第1登録部201に登録された複数の切り残し部分NCの長さは同じである。切断部分算出部204は、主走査方向Yの両端部の切断部分CLおよびCR以外の複数の切断部分CCの長さを同じ長さとするように設定されている。かかる構成によれば、端部の切断部分CLとCRとの間(中央部)において、切断部分CCおよび切り残し部分NCが均等に形成される。その結果、メディア5の主走査方向Yの中央部におけるメディア5の切れやすさが均等になる。そのため、例えば、メディア5の巻き取りにおいてミシン目MCの一部だけが切れ、巻き取りに支障が発生するようなことが起こりにくい。
【0065】
本実施形態に係るプリンタ10は、加工ヘッド(ここでは、カッティングヘッド70)およびシートカッター保持装置100Bを保持するとともに、主走査方向Yに移動可能なキャリッジ(ここでは、第2キャリッジ52)を備えている。カッター移動装置としてのヘッド移動装置40は、第2キャリッジ52を主走査方向Yに移動させることにより、シートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させる。かかる構成によれば、カッティングヘッド70を主走査方向Yに移動させるヘッド移動装置40によってシートカッター100Aを移動させることもできるため、プリンタ10の部材を節減できる。なお、シートカッター保持装置100Bを保持するキャリッジは第1キャリッジ51でもよく、キャリッジに保持される加工ヘッドは、プリントヘッド60でもよい。また、シートカッター保持装置100Bは、加工ヘッドを移動させるヘッド移動装置とは別のカッター移動装置によって移動されてもよい。
【0066】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、中央部の切断部分CCおよび切り残し部分NCは均等に配置されていたが、均等に配置されなくてもよい。例えば、中央部の切り残し部分NCは、中央寄りほど密に(中央寄りほど切断部分CCの長さが短くなるように)設けられていてもよく、中央寄りほど疎に(中央寄りほど切断部分CCの長さが長くなるように)設けられていてもよい。全ての切り残し部分NCの長さは同じでなくてもよく、一部または全部の切り残し部分NCの長さは異なっていてもよい。
【0067】
例えば、上記した実施形態では、シートカッターを備える装置はカッティングヘッド付きプリンタであったが、それには限定されない。シートカッターを備える装置は、シート状のメディアに対して何らかの加工を行う加工装置であればよい。加工装置は、例えば、シート状のメディアに印刷を行うプリントヘッドを備えるとともにカッティングヘッドを備えないプリンタや、シート状のメディアを切断するカッティングヘッドを備えるとともにプリントヘッドを備えないカット機などであってもよい。加工装置がカッティングヘッド付きプリンタである場合でも、その構成は、実施形態に示したようなものには限定されない。
【0068】
上記した実施形態に係る加工装置は、加工後のメディアを巻き取る巻取ローラを備えていたが、加工装置は巻取ローラを備えるものには限定されない。また、加工装置は、ロール状に捲回されたメディアに対して加工を行うものには限定されない。
【0069】
上記したミシン目の形成作業の一部または全部は、自動化された装置ではなく、ユーザー等の作業によって実現されてもよい。そのような方法は、メディアを所定の切断方向に間欠的に切断して、切断方向に延びる複数の切断部分と複数の切り残し部分とからなるミシン目をメディアに形成する方法であって、切断部分算出ステップと、切断ステップと、を含んでいてもよい。切断部分算出ステップでは、複数の切り残し部分の数およびその長さが予め定めた数および長さとなるように、メディアの切断方向の幅に応じて複数の切断部分の数および長さを算出する。切断ステップでは、複数の切断部分の数および長さが切断部分算出ステップで算出された数および長さとなるように、メディアにミシン目を形成する。かかる方法によっても、上記したプリンタ10と同様に、メディアの幅によらず適度な切れやすさを有するミシン目を形成することができる。
【0070】
その他、ここに記載された実施形態は、特に断らない限り、本発明を限定しない。例えば、上記したシートカッター保持装置の構成などは例示に過ぎず、加工装置の構成は特に限定されない。
【符号の説明】
【0071】
5 メディア
10 カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ(加工装置)
12 プラテン(支持台)
30 搬送装置(メディア搬送装置)
40 ヘッド移動装置(カッター移動装置)
52 第2キャリッジ(キャリッジ)
60 プリントヘッド(加工ヘッド)
70 カッティングヘッド(加工ヘッド)
90 センサ(測定装置)
100 シートカッターユニット
100A シートカッター
100B シートカッター保持装置(カッター離接装置)
101 刃部
200 制御装置
201 第1登録部
202 第2登録部
203 メディア情報入力部
204 切断部分算出部
205 切断制御部
MC ミシン目
C 切断部分
NC 切り残し部分