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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117153
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】キャップ着脱装置および前処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01N35/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019707
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】芝吹 直伸
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA02
(57)【要約】
【課題】キャップの着脱を適切に行うことが可能なキャップ着脱装置および前処理装置を提供する。
【解決手段】キャップ着脱装置100は、上下方向に移動するとともに、容器1に対してキャップ2を着脱するようにキャップ2を把持して回転する操作部33を備える。操作部33は、第1の把持爪33A、第2の把持爪33Bおよび押圧部材33Cを含む。第1の把持爪33Aと第2の把持爪33Bとは、互いに対向するように設けられ、キャップ2の側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力を印加可能に構成される。押圧部材33Cは、キャップ2の上面に接触可能に構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動するとともに、容器に対してキャップを着脱するように前記キャップを把持して回転する操作部を備え、
前記操作部は、
互いに対向するように設けられ、前記キャップの側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力を印加可能に構成された第1の把持爪および第2の把持爪と、
前記キャップの上面に接触可能に構成された押圧部材とを含む、キャップ着脱装置。
【請求項2】
前記押圧部材は、円板形状を有する、請求項1記載のキャップ着脱装置。
【請求項3】
前記操作部を上下方向に移動させつつ回転させるように設けられた回転駆動部をさらに備える、請求項1または2記載のキャップ着脱装置。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記キャップの上面に接触したときに回転を停止するように構成された、請求項3記載のキャップ着脱装置。
【請求項5】
前記回転駆動部は、前記操作部が所定の位置から予め定められた所定距離だけ下方に移動するように駆動する、請求項3または4記載のキャップ着脱装置。
【請求項6】
前記回転駆動部の駆動に応答して、前記操作部を上下方向に移動させる移動部をさらに備え、
前記キャップは、ねじ込みキャップを含み、
前記移動部は、前記ねじ込みキャップのピッチと同一のピッチを有する直動ボールねじ部材を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のキャップ着脱装置。
【請求項7】
前記操作部を上下方向に移動させるように設けられた昇降駆動部と、
前記操作部を回転させるように設けられた回転駆動部と、
前記キャップの位置を検出するセンサとをさらに備える、請求項1または2記載のキャップ着脱装置。
【請求項8】
前記容器への前記キャップの取り付け時に、前記キャップから前記操作部への押圧力を吸収する緩衝部と、
前記容器への前記キャップの取り付け時に、前記操作部により前記キャップに加えられるトルクを規制する規制部とをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のキャップ着脱装置。
【請求項9】
前記規制部は、前記容器からの前記キャップの取り外し時に、前記操作部により前記キャップに加えられるトルクを規制しない、請求項8記載のキャップ着脱装置。
【請求項10】
容器に対してキャップを着脱する請求項1~9のいずれか一項に記載のキャップ着脱装置と、
前記容器に収容された試料に前処理を行う前処理部とを備える、前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ着脱装置および前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置において試料の分析が行われる前に、遠沈管等の容器を用いて試料の前処理が行われることがある。例えば、前処理においては、分析対象の試料および添加物がキャップ付きの容器に注入された後、容器の内容物の撹拌等が行われる。その後、内容物が容器から抽出され、所定のバイアルに注入される。前処理後の試料を含む内容物がバイアルから分析装置に供給されることにより、試料について所望の分析が行われる。
【0003】
前処理において、容器に内容物を注入する前後、または容器から内容物を抽出する前後には、キャップ着脱装置によりキャップの着脱が行われる。例えば、特許文献1記載のキャップ開閉装置においては、グリップ開閉駆動部の一対のグリッパにより試料容器が把持されるとともに、ロボットハンドによりキャップが把持される。この状態で、グリップ開閉駆動部が回転されることにより、キャップの着脱が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-226484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャップの上部には天板が形成されるため、キャップの上部の強度は比較的高い反面、キャップの下部の強度は比較的低い。そのため、特許文献1記載のキャップ開閉装置において、ロボットハンドがキャップの下部を把持すると、キャップの下部が楕円状に変形することがある。ロボットハンドがキャップの上部を把持した場合でも、ロボットハンドからキャップに作用する力の方向によっては、キャップを把持する際にキャップが滑ったり、またはキャップが斜めになることがある。これらの場合、キャップの着脱を適切に行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、キャップの着脱を適切に行うことが可能なキャップ着脱装置および前処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上下方向に移動するとともに、容器に対してキャップを着脱するように前記キャップを把持して回転する操作部を備え、前記操作部は、互いに対向するように設けられ、前記キャップの側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力を印加可能に構成された第1の把持爪および第2の把持爪と、前記キャップの上面に接触可能に構成された押圧部材とを含む、キャップ着脱装置に関する。
【0008】
本発明の一態様は、容器に対してキャップを着脱する上記のキャップ着脱装置と、前記容器に収容された試料に前処理を行う前処理部とを備える、前処理装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャップの着脱を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係るキャップ着脱装置の構成を示す模式図である。
図2図1の操作部の構成を示す拡大図である。
図3】操作部の外観を示す斜視図である。
図4】キャップの取り外し時におけるキャップ着脱装置の動作を説明するための図である。
図5】キャップの取り外し時におけるキャップ着脱装置の動作を説明するための図である。
図6】キャップの取り外し時におけるキャップ着脱装置の動作を説明するための図である。
図7】キャップの取り付け時におけるキャップ着脱装置の動作を説明するための図である。
図8】キャップの取り付け時におけるキャップ着脱装置の動作を説明するための図である。
図9】キャップの取り付け時におけるキャップ着脱装置の動作を説明するための図である。
図10】前処理装置を含む分析システムの一例を示すブロック図である。
図11】他の実施に係るキャップ着脱装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)キャップ着脱装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係るキャップ着脱装置および前処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るキャップ着脱装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、キャップ着脱装置100は、基台部10、保持部20、着脱部30、回転駆動部40、移動部50および伝達部60を備える。基台部10は、前処理装置におけるキャップ着脱装置100の設置面に取り付けられる。保持部20は、着脱部30の軸が上下方向を向く状態で、着脱部30を保持する。
【0012】
着脱部30は、従動部31、規制部32、操作部33、開閉部34および緩衝部35を含む。従動部31は、上下方向に軸を有し、軸周りに回転可能な従動部材31A,31Bを含む。従動部材31Bは、従動部材31Aの下方に配置される。
【0013】
規制部32は、従動部材31Aが回転する際のトルクを従動部材31Bに伝達可能に従動部材31Aと従動部材31Bとを接続する。規制部32は、例えばワンウェイ式の摩擦クラッチを含み、従動部材31Aが順方向(例えば時計回り)に回転する際に、従動部材31Bに伝達されるトルクを規定値以下に規制する。トルクの規定値は調節可能である。一方、規制部32は、従動部材31Aが逆方向(例えば反時計回り)に回転する際に、従動部材31Bに伝達されるトルクを規制しない。
【0014】
操作部33は、上方からキャップを操作することにより、容器の上端にキャップを着脱可能に構成される。本例では、容器は、例えば試料分析の前処理において用いられる遠沈管である。キャップは、容器の上端にねじ込み可能なねじ込みキャップである。図2は、図1の操作部33の構成を示す拡大図である。図3は、操作部33の外観を示す斜視図である。
【0015】
図2に示すように、操作部33は、開閉可能な一対の把持爪33A,33Bおよび押圧部材33Cを有する。把持爪33A,33Bは、後述する開閉部34の駆動軸34Aの下端に接続される。図3に示すように、押圧部材33Cは、円板形状を有し、把持爪33A,33B間において、図2の駆動軸34Aに対して回転可能に駆動軸34Aの下端に接続される。
【0016】
キャップ2が把持爪33A,33Bの間にある状態で把持爪33A,33Bが閉じられることにより、キャップ2が把持される。このとき、図2に矢印Aで示すように、把持爪33Aの先端からキャップ2の側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力が印加される。同様に、図2に矢印Bで示すように、把持爪33Bの先端からキャップ2の側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力が印加される。この場合、キャップ2に上向きの力が発生する。
【0017】
この構成によれば、図2に矢印Cで示すように、押圧部材33Cは、キャップ2への上向きの力に抗して、上方から下方にキャップ2の上面を押圧する。これにより、キャップ2に変形、滑りおよび傾きを発生させることなく、操作部33は安定な状態で水平にキャップ2を把持することができる。この状態で、操作部33が回転されることにより、容器1に対してキャップ2が着脱される。
【0018】
図1に示すように、開閉部34は、例えばエアシリンダを含み、駆動軸34Aを有する。開閉部34は、例えば保持部20の上部に固定される。駆動軸34Aの下端部は、従動部31の中心を挿通された状態で、把持爪33A,33Bおよび押圧部材33Cに接続される。開閉部34は、駆動軸34Aを駆動することにより、操作部33の把持爪33A,33Bを開閉させる。開閉部34は、ソレノイド等の他のアクチュエータを含んでもよい。
【0019】
緩衝部35は、例えばばね部材を含み、操作部33が従動部31に対して上下方向に移動可能にかつ従動部材31Bが回転する際のトルクを操作部33に伝達可能に操作部33を従動部材31Bの下部に保持する。この構成によれば、キャップ2から操作部33の下部に所定値以上の上向きの押圧力が加わった場合、操作部33が上方に移動されることにより操作部33の押圧力が吸収される。
【0020】
回転駆動部40は、電動モータ等の単一のアクチュエータを含み、回転軸41を有する。回転駆動部40は、例えば保持部20の上部に固定される。移動部50は、例えば直動ボールねじ部材を含み、基台部10と保持部20とに接続される。直動ボールねじ部材のピッチは、キャップ2のピッチと同じである。移動部50には、回転駆動部40の回転軸41が取り付けられる。移動部50は、回転駆動部40の回転に応答して、保持部20を基台部10に対して上下方向に移動させる。
【0021】
伝達部60は、例えばベルト部材であり、着脱部30の従動部31の従動部材31Aおよび回転駆動部40の回転軸41に架け渡される。これにより、回転駆動部40の回転が従動部材31Aに伝達される。以下、キャップ着脱装置100の動作について説明する。
【0022】
(2)キャップ着脱装置の動作
図4図6は、キャップ2の取り外し時におけるキャップ着脱装置100の動作を説明するための図である。図4に示すように、キャップ2の取り外し時には、着脱部30の操作部33は、キャップ2を把持せずに把持爪33A,33Bを開いた状態で、容器1の上方に位置する。この状態で、回転駆動部40が順方向に回転する。この場合、移動部50により保持部20が基台部10に対して下方に移動する。また、回転駆動部40の回転は、伝達部60により着脱部30に伝達される。したがって、着脱部30の操作部33は、回転しつつ、保持部20の移動に伴って下方に移動する。
【0023】
その後、図5に示すように、操作部33の押圧部材33Cがキャップ2の上面に接触する。この場合、押圧部材33Cの回転は停止する。そのため、キャップ2の上面が押圧部材33Cにより擦れることがないので、キャップ2の上面が損傷することが防止される。一方、着脱部30の把持爪33A,33Bは、回転を継続する。着脱部30が予め定められた所定距離だけ下方に移動すると、着脱部30の移動が停止される。このとき、キャップ2の上部が把持爪33A,33Bの間に位置する。
【0024】
ここで、把持爪33A,33Bが閉じられることにより、把持爪33A,33Bによりキャップ2に上向きの力が発生するとともに、押圧部材33Cにより操作部33の上面が下方に押圧される。この場合、押圧部材33Cは円板形状を有するので、押圧部材33Cとキャップ2の上面との接触面積は比較的大きい。そのため、押圧部材33Cからキャップ2の上面に加わる押圧は比較的小さい。これにより、キャップ2の上面が損傷することが防止される。
【0025】
キャップ2の上面が押圧部材33Cに押圧されることにより、キャップ2が把持爪33A,33Bにより安定な状態で水平に把持される。この状態で、回転駆動部40が逆方向に回転する。このとき、操作部33によりキャップ2に加えられるトルクは規制されない。そのため、キャップ2が容器1から効率的に緩められる。また、移動部50により保持部20が基台部10に対して上方に移動する。これにより、容器1からキャップ2が取り外される。
【0026】
容器1からキャップ2が取り外された後、図6に示すように、操作部33の逆方向の回転が継続される。この場合、操作部33がキャップ2を把持した状態で、移動部50により保持部20が基台部10に対して上方に移動する。これにより、キャップ2の取り外し動作が終了する。
【0027】
図7図9は、キャップ2の取り付け時におけるキャップ着脱装置100の動作を説明するための図である。図7に示すように、キャップ2の取り付け時には、着脱部30の操作部33は、把持爪33A,33Bを閉じるとともに押圧部材33Cをキャップ2の上面に接触させることによりキャップ2を安定的に把持した状態で、容器1の上方に位置する。
【0028】
この状態で、回転駆動部40が順方向に回転することにより、着脱部30の操作部33は、回転しつつ、保持部20の移動に伴って下方に移動する。その後、図8に示すように、操作部33に把持されたキャップ2が容器1の上端に当接した状態で、操作部33の順方向の回転が継続される。この場合、キャップ2が容器1に締め込まれる。これにより、容器1にキャップ2が同時に取り付けられる。
【0029】
ここで、操作部33は緩衝部35により従動部31に対して上下方向に移動可能に保持されている。そのため、キャップ2が容器1に当接することにより操作部33の下部に所定値以上の上向きの押圧力が加わった場合、操作部33が上方に移動されることにより操作部33の押圧力が吸収される。また、従動部材31Aが順方向に回転する際のトルクが規定値に達すると、規制部32により従動部材31Bが空回りする。これにより、キャップ2の締め込み具合を均一にすることができる。
【0030】
容器1にキャップ2が取り付けられた後、図9に示すように、操作部33の把持爪33A,33Bが開かれる。これにより、操作部33によるキャップ2の把持が解除される。その後、回転駆動部40が逆方向に回転する。この場合、操作部33がキャップ2を把持しない状態で、移動部50により保持部20が基台部10に対して上方に移動する。これにより、キャップ2の取り付け動作が終了する。
【0031】
(3)前処理装置
図10は、前処理装置を含む分析システムの一例を示すブロック図である。図10に示すように、分析システム500は、前処理装置200および分析装置300を含む。前処理装置200は、図1のキャップ着脱装置100に加えて、試料収容部110、添加部120、振とう部130、分離部140、注入部150および廃棄部160を含む。キャップ着脱装置100は、試料収容部110、添加部120および注入部150の各々に設けられる。
【0032】
試料収容部110には、複数の容器1が順次導入される。試料収容部110は、導入された容器1からキャップ2を取り外した後、容器1に分析対象の試料を収容し、容器1にキャップ2を取り付ける。分析対象の試料は、例えば食品を含む。その後、試料収容部110は、容器1を振とう部130に搬出するとともに、振とう部130から搬入された容器1を添加部120に搬出する。
【0033】
添加部120は、試料収容部110から搬入された容器1からキャップ2を取り外した後、容器1に所定の溶媒または内部標準試薬等を添加し、容器1にキャップ2を取り付ける。その後、添加部120は、容器1を振とう部130に搬出するとともに、振とう部130から搬入された容器1を分離部140に搬出する。
【0034】
振とう部130は、試料収容部110から搬入された容器1を振とうすることにより容器1の内容物を撹拌した後、容器1を試料収容部110に搬出する。また、振とう部130は、添加部120から搬入された容器1を振とうすることにより容器1の内容物を撹拌した後、容器1を添加部120に搬出する。
【0035】
分離部140は、添加部120から搬入された容器1に遠心力を加えることにより容器1の内容物を成分ごとに分離する。その後、分離部140は、容器1を注入部150に搬出する。これらの添加部120、振とう部130または分離部140は、容器1に収容された試料に前処理を行う前処理部の例である。
【0036】
注入部150には、分析用の複数のバイアル211を保持するバイアルラック210が導入される。注入部150は、分離部140から搬入された容器保持ラック3の容器1からキャップ2を取り外した後、容器1の容器1から内容物の一部を抽出し、抽出された内容物をバイアルラック210の各バイアル211に注入する。これにより、前処理後の試料を含む内容物が各バイアル211に収容される。
【0037】
その後、注入部150は、容器1にキャップ2を取り付け、容器1を廃棄部160に搬出する。また、注入部150は、バイアルラック210を分析装置300に搬出する。廃棄部160は、注入部150から搬入された容器1の内容物を廃棄する。
【0038】
分析装置300は、前処理装置200から搬入されたバイアルラック210の各バイアル211の内容物について所定の分析を行う。分析は、例えば試料である食品中の残留農薬の定量を含む。分析装置300は、例えば液体クロマトグラフィ質量分析装置(LC/MS)であってもよいし、ガスクロマトグラフィ質量分析装置(GC/MS)であってもよいし、他の分析装置であってもよい。
【0039】
前処理装置200の試料収容部110、添加部120および注入部150の各々において、キャップ着脱装置100を用いることにより、キャップ2の着脱を適切にかつ効率的に行うことができる。これにより、スループットを向上させることができる。また、省人化を行うことができる。
【0040】
(4)変形例
本実施の形態において、押圧部材33Cは円板形状を有するが、実施の形態はこれに限定されない。押圧部材33Cは、三角板形状または四角板形状等の多角板形状を有してもよい。あるいは、押圧部材33Cは上下方向に延びる棒形状を有してもよく、押圧部材33Cは複数設けられてもよい。
【0041】
(5)効果
本実施の形態に係るキャップ着脱装置100においては、操作部33の互いに対向するように設けられた把持爪33A,33Bにより、キャップ2の側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力が印加される。この場合、キャップ2に上向きの力が発生する。また、操作部33の押圧部材33Cがキャップ2の上面に接触する。これにより、キャップ2への上向きの力に抗して、押圧部材33Cにより上方から下方にキャップ2の上面を押圧される。そのため、キャップ2に変形、滑りおよび傾きが発生することなく、操作部33により安定な状態で水平にキャップ2が把持される。
【0042】
この構成によれば、容器1に対して垂直にキャップ2を取り付けることが可能である。また、容器1に対するキャップ2の取り付け不良により容器1から液漏れが発生することもない。これにより、キャップ2の着脱を適切に行うことができる。
【0043】
また、本実施の形態では、単一の回転駆動部40により操作部33が上下方向に移動されつつ容器1に対してキャップ2を着脱するようにキャップ2が回転される。ここで、押圧部材33Cがキャップ2の上面に接触したとき、押圧部材33Cの回転が停止する。この場合、キャップ2の上面が押圧部材33Cにより擦れることがない。
【0044】
さらに、押圧部材33Cは円板形状を有するので、押圧部材33Cとキャップ2の上面との接触面積は比較的大きい。そのため、押圧部材33Cからキャップ2の上面に加わる押圧は比較的小さい。これらの構成によれば、キャップ2の上面が損傷することがない。したがって、容器1の内容物についての情報を示す二次元バーコード等の識別子をキャップ2の上面に貼付した場合でも、識別子が読み取り不可能に損傷することが防止される。
【0045】
また、回転駆動部40は、操作部33が所定の位置から予め定められた所定距離だけ下方に移動するように駆動する。この場合、キャップ2の位置を検出するためのセンサを設けることなく、簡単な構成で把持爪33A,33Bからキャップ2の側面上部に力を印加することができる。
【0046】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態において、回転駆動部40は着脱部30を上下方向に移動させつつ回転させるように設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。図11は、他の実施に係るキャップ着脱装置100の構成を示す模式図である。図11に示すように、本実施の形態に係るキャップ着脱装置100は、移動部50に代えて昇降駆動部70を備える。
【0047】
昇降駆動部70は、保持部20を保持しつつ例えば基台部10の上部に固定される。昇降駆動部70は、例えばエアシリンダまたはソレノイド等のアクチュエータを含み、保持部20を基台部10に対して上下方向に移動させる。この構成においては、着脱部30の上下方向の移動と、着脱部30の回転とを個別に行うことができる。
【0048】
本実施の形態に係るキャップ着脱装置100は、キャップ2の位置を検出するセンサ80をさらに備えてもよい。本例では、センサ80は、投光部81と受光部82とを含む非接触式センサであるが、他の種類のセンサであってもよい。投光部81は、光を出射可能である。受光部82は、投光部81から出射された光を受光可能である。投光部81および受光部82は、把持爪33A,33Bにそれぞれ取り付けられてもよい。
【0049】
この構成においては、着脱部30はキャップ2を把持しない状態で昇降駆動部70により容器1の上方から下降される。ここで、把持爪33A,33B間にキャップ2が存在しない場合、受光部82は、投光部81から出射された光を受光する。一方、把持爪33A,33B間にキャップ2が存在する場合、受光部82は、投光部81から出射された光を受光しない。したがって、受光部82が光を受光しなくなった時点で把持爪33A,33Bを閉じることにより、容器1またはキャップ2の位置が未知である場合でも、把持爪33A,33Bからキャップ2の側面上部に容易に力を印加することができる。
【0050】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0051】
(第1項)一態様に係るキャップ着脱装置は、
上下方向に移動するとともに、容器に対してキャップを着脱するように前記キャップを把持して回転する操作部を備え、
前記操作部は、
互いに対向するように設けられ、前記キャップの側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力を印加可能に構成された第1の把持爪および第2の把持爪と、
前記キャップの上面に接触可能に構成された押圧部材とを含んでもよい。
【0052】
このキャップ着脱装置においては、操作部の互いに対向するように設けられた第1の把持爪および第2の把持爪により、キャップの側面上部に、外方から内方に向かって斜め上向きの力が印加される。この場合、キャップに上向きの力が発生する。また、操作部の押圧部材がキャップの上面に接触する。これにより、キャップへの上向きの力に抗して、押圧部材により上方から下方にキャップの上面を押圧される。そのため、キャップに変形、滑りおよび傾きが発生することなく、操作部により安定な状態で水平にキャップが把持される。
【0053】
この構成によれば、容器に対して垂直にキャップを取り付けることが可能である。また、容器に対するキャップの取り付け不良により容器から液漏れが発生することもない。これにより、キャップの着脱を適切に行うことができる。
【0054】
(第2項)第1項に記載のキャップ着脱装置において、
前記押圧部材は、円板形状を有してもよい。
【0055】
この場合、押圧部材とキャップの上面との接触面積は比較的大きいので、押圧部材からキャップの上面に加わる押圧は比較的小さい。これにより、キャップの上面が損傷することを防止することができる。
【0056】
(第3項)第1項または第2項に記載のキャップ着脱装置は、
前記操作部を上下方向に移動させつつ回転させるように設けられた回転駆動部をさらに備えてもよい。
【0057】
この場合、単一の回転駆動部を用いて、操作部を上下方向に移動させるとともに、容器に対してキャップを着脱するようにキャップを回転させることができる。
【0058】
(第4項)第3項に記載のキャップ着脱装置において、
前記押圧部材は、前記キャップの上面に接触したときに回転を停止するように構成されてもよい。
【0059】
この場合、キャップの上面が押圧部材により擦れることがないので、キャップの上面が損傷することが防止される。
【0060】
(第5項)第3項または第4項に記載のキャップ着脱装置において、
前記回転駆動部は、前記操作部が所定の位置から予め定められた所定距離だけ下方に移動するように駆動してもよい。
【0061】
この場合、キャップの位置を検出するためのセンサを設けることなく、簡単な構成で第1の把持爪および第2の把持爪からキャップの側面上部に力を印加することができる。
【0062】
(第6項)第3項~第5項のいずれか一項に記載のキャップ着脱装置は、
前記回転駆動部の駆動に応答して、前記操作部を上下方向に移動させる移動部をさらに備え、
前記キャップは、ねじ込みキャップを含み、
前記移動部は、前記ねじ込みキャップのピッチと同一のピッチを有する直動ボールねじ部材を含んでもよい。
【0063】
この場合、簡単な構成で、単一の回転駆動部によりねじ込みキャップを着脱可能に操作部を回転させつつ上下方向に移動させることができる。
【0064】
(第7項)第1項または第2項に記載のキャップ着脱装置は、
前記操作部を上下方向に移動させるように設けられた昇降駆動部と、
前記操作部を回転させるように設けられた回転駆動部と、
前記キャップの位置を検出するセンサとをさらに備えてもよい。
【0065】
この場合、容器またはキャップの位置が未知である場合でも、第1の把持爪および第2の把持爪からキャップの側面上部に力を印加することができる。
【0066】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に記載のキャップ着脱装置は、
前記容器への前記キャップの取り付け時に、前記キャップから前記操作部への押圧力を吸収する緩衝部と、
前記容器への前記キャップの取り付け時に、前記操作部により前記キャップに加えられるトルクを規制する規制部とをさらに備えてもよい。
【0067】
この場合、キャップから操作部への押圧力が緩衝部により吸収されつつ、規制部により規制されたトルクでキャップが容器に取り付けられる。これにより、均一な締め込み具合でキャップを容器に取り付けることができる。
【0068】
(第9項)第8項に記載のキャップ着脱装置において、
前記規制部は、前記容器からの前記キャップの取り外し時に、前記操作部により前記キャップに加えられるトルクを規制しなくてもよい。
【0069】
この場合、容器からキャップを効率的に取り外すことができる。
【0070】
(第10項)他の態様に係る前処理装置は、
容器に対してキャップを着脱する請求項1~9項のいずれか一項に記載のキャップ着脱装置と、
前記容器に収容された試料に前処理を行う前処理部とを備えてもよい。
【0071】
この前処理装置においては、上記のキャップ着脱装置によりキャップの着脱を適切に行うことができる。これにより、スループットを向上させることができる。また、省人化を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1…容器,2…キャップ,10…基台部,20…保持部,30…着脱部,31…従動部,31A,31B…従動部材,32…規制部,33…操作部,33A,33B…把持爪,33C…押圧部材,34…開閉部,34A…駆動軸,35…緩衝部,40…回転駆動部,41…回転軸,50…移動部,60…伝達部,70…昇降駆動部,80…センサ,81…投光部,82…受光部,100…キャップ着脱装置,110…試料収容部,120…添加部,130…振とう部,140…分離部,150…注入部,160…廃棄部,200…前処理装置,210…バイアルラック,211…バイアル,300…分析装置,500…分析システム
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