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特開2023-117154ファイル共有管理装置およびその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117154
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ファイル共有管理装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/176 20190101AFI20230816BHJP
【FI】
G06F16/176
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019709
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美奈子
(57)【要約】
【課題】使い勝手のよいファイル共有管理装置およびその方法を提供すること。
【解決手段】複数ユーザ間でファイルを共有するファイル共有管理装置2は、ファイルを共有するユーザのアクセス権限ごとに用意される少なくとも一つの仮想共有フォルダ220を、通信ネットワークを介して複数のユーザ端末3へ提供し、仮想共有フォルダに属するファイルが当該仮想共有フォルダに格納されている仮想的位置とファイルの実体がストレージ装置4に格納されている実位置との対応関係を記憶し、ファイルの仮想的位置の表示関係と、ファイルを共有するアクセス権限に基づいて決定される実位置の関係とを分離して管理する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ユーザ間でファイルを共有するファイル共有管理装置であって、
ファイルを共有するユーザのアクセス権限ごとに用意される少なくとも一つの仮想共有フォルダを、通信ネットワークを介して複数のユーザ端末へ提供し、
前記仮想共有フォルダに属するファイルが当該仮想共有フォルダに格納されている仮想的位置と前記ファイルの実体がストレージ装置に格納されている実位置との対応関係を記憶し、
前記ファイルの前記仮想的位置の表示関係と、前記ファイルを共有するアクセス権限に基づいて決定される前記実位置の関係とを分離して管理する
ファイル共有管理装置。
【請求項2】
前記ユーザ端末から前記仮想共有フォルダ内のファイルに対するアクセス要求を受けると、前記ファイルの仮想的位置に対応する実位置を示すファイル位置情報を前記ユーザ端末へ送信し、前記ユーザ端末を前記ファイル位置情報に基づいて前記ストレージ装置にアクセスさせる
請求項1に記載のファイル共有管理装置。
【請求項3】
前記仮想共有フォルダは複数存在し、
前記ユーザ端末から、前記複数の仮想共有フォルダのうちいずれか一方の仮想共有フォルダからいずれか他方の仮想共有フォルダへのファイルの移動を要求されると、移動先の仮想的位置に関するアクセス権限に対応する実位置へ前記ファイルの実体を移動させるように、前記ストレージ装置に対して指示する
請求項2に記載のファイル共有管理装置。
【請求項4】
前記ユーザ端末から、いずれか一方の仮想共有フォルダからいずれか他方の仮想共有フォルダへのファイルのコピーを要求されると、コピー元の仮想的位置に関するアクセス権限とコピー先の仮想的位置に関するアクセス権限との両方に対応する実位置へ前記ファイルの実体を移動させるように、前記ストレージ装置に対して指示する
請求項3に記載のファイル共有管理装置。
【請求項5】
ユーザ端末を操作するユーザのアクセス権限に含まれていないファイルの名称を前記仮想共有フォルダに表示させ、ファイル名称または前記ファイルの管理者名での検索サービスを前記ユーザ端末に提供する
請求項1に記載のファイル共有管理装置。
【請求項6】
前記仮想共有フォルダに属する全ファイルまたは所定範囲のファイルの一覧データを出力する
請求項1に記載のファイル共有管理装置。
【請求項7】
前記複数ユーザには、前記仮想共有フォルダを管理する第1組織に属する第1ユーザと、前記第1組織と異なる第2組織に属する第2ユーザとが含まれており、
さらに、前記第2ユーザには、それぞれ別々の第2組織に属する第2ユーザが含まれている
請求項1に記載のファイル共有管理装置。
【請求項8】
コンピュータを用いて、複数ユーザ間でファイルを共有するファイル共有管理方法であって、
前記コンピュータは、
ファイルを共有するユーザのアクセス権限ごとに用意される少なくとも一つの仮想共有フォルダを、通信ネットワークを介して複数のユーザ端末へ提供し、
前記仮想共有フォルダに属するファイルが当該仮想共有フォルダに格納されている仮想的位置と前記ファイルの実体がストレージ装置に格納されている実位置との対応関係を記憶し、
前記ファイルの前記仮想的位置の表示関係と、前記ファイルを共有するアクセス権限に基づいて決定される前記実位置の関係とを分離して管理する
ファイル共有管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイル共有管理装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散して位置する複数ユーザは、通信ネットワークに設置されたファイルサーバなどを用いてファイルを共有し作業することができる(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-533678号公報
【特許文献2】特表2019-507409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファイル共有サービスを利用する場合、そのアクセス権限の管理に手間がかかり、ファイルの同一性維持にも注意を要する。ファイルを共有する相手が増えれば増えるほど手間がかかり、ファイル共有の信頼性を維持するためのコストが増大する。複数の関係組織(企業、大学、自治体など)と共同で作業する場合、秘密性を維持したままで関係組織ごとにファイルを共有する必要がある。
【0005】
ここで、フォルダ単位でアクセス権限を管理する方法と、ファイル単位でアクセス権限を管理する方法とがある。フォルダ単位でアクセス権限を管理する場合、同じファイルを複数の組織で共有するために、各組織との共有フォルダにそれぞれ同じファイルを格納することになる。しかし、そのファイルは各組織でそれぞれ別々に編集されるため、同一性を維持することができない。ファイル単位でアクセス権限を管理する方法の場合、ファイルの同一性を維持しやすい。しかし、共有対象の全てのファイルについて、そのファイルを利用できるユーザの情報を登録する必要があり、アクセス権限の設定に手間がかかり、人為的ミスを誘発するおそれもある。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使い勝手のよいファイル共有管理装置およびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従うファイル共有管理装置は、複数ユーザ間でファイルを共有するファイル共有管理装置であって、ファイルを共有するユーザのアクセス権限ごとに用意される少なくとも一つの仮想共有フォルダを、通信ネットワークを介して複数のユーザ端末へ提供し、仮想共有フォルダに属するファイルが当該仮想共有フォルダに格納されている仮想的位置とファイルの実体がストレージ装置に格納されている実位置との対応関係を記憶し、ファイルの仮想的位置の表示関係と、ファイルを共有するアクセス権限に基づいて決定される実位置の関係とを分離して管理する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、仮想共有フォルダにおけるファイルの表示関係と当該ファイルの実体がストレージ装置に格納される位置との関係を分離して管理することができ、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】仮想フォルダ管理装置を含む仮想フォルダ管理システムの全体概要図。
図2】仮想フォルダ管理システムのハードウェア構成図。
図3】仮想フォルダにおけるファイルの表示関係とクラウドストレージにおけるファイルの実体の格納場所との関係を模式的に示す説明図。
図4】仮想フォルダでは複数表示されているファイルの実体は、クラウドストレージでは同じ場所に格納されていることを示す説明図。
図5】ルートフォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダでの画面とクラウドストレージでのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す説明図。
図6】一方の組織との共有フォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダでの画面とクラウドストレージでのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す説明図。
図7】他方の組織との共有フォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダでの画面とクラウドストレージでのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す説明図。
図8】一方の組織との共有フォルダへのアクセス権限のみを持つユーザが、アクセス権限を有していない他方の組織の共有フォルダに格納されているファイルの存在を視認できることを示す説明図。
図9】仮想フォルダに対するアクセス権限を持つユーザを管理する画面の例。
図10】アクセス権限のない共有フォルダ内のファイル名を表示する画面例。
図11】仮想フォルダでの表示位置(仮想的位置)とクラウドストレージにファイルの実体が記憶されている位置との対応関係を管理するデータ紐付けリスト。
図12】アクセス権限を追加したときのデータ紐付けリスト。
図13図12に続くデータ紐付けリスト。
図14】仮想フォルダを利用可能なユーザを定義するアクセス権限リスト。
図15】仮想フォルダおよびクラウドストレージの各フォルダの区分を示すフォルダ区分リスト。
図16】仮想フォルダ管理処理のフローチャート。
図17】ログイン処理のフローチャート。
図18】ファイルアップロード処理のフローチャート。
図19】ファイルアクセス処理のフローチャート。
図20】ファイル移動処理のフローチャート。
図21】ファイル複製処理のフローチャート。
図22】ファイル名表示モードの有効化処理を示すフローチャート。
図23】ファイル名表示モードの無効化処理を示すフローチャート。
図24】データベース一覧の出力処理を示すフローチャート。
図25】ファイルの実体を格納させるクラウドストレージの変更処理を示すフローチャート。
図26】第2実施例に係り、ユーザ管理処理のフローチャート。
図27】第3実施例に係り、ファイルの実体を格納させるクラウドストレージの変更処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、ユーザがファイルを管理する画面(仮想フォルダ)と、ファイルのアクセス権限に基づいて定まるファイル実体の格納場所(クラウドストレージ)とを分離することにより、複数ユーザによるファイル共有を効率的に管理できるようにした。
【0011】
本実施形態によれば、ファイルの実体がクラウドストレージ上にあるため、仮想フォルダ側で同じファイルを異なるフォルダへ重複して格納でき、そのファイルを利用する全ユーザに対してファイルの同一性を保持することができる。
【0012】
本実施形態によれば、フォルダ単位でアクセス権限を付与するため、ファイルを共有するユーザの設定に人為的ミスが生じるのを抑制できる。
【0013】
本実施形態によれば、組織毎に共有フォルダを用意するため、ユーザは目的とするファイルを簡単に見つけることができる。
【実施例0014】
図1図25を用いて第1実施例を説明する。図1は、仮想フォルダ管理システム1の全体概要図である。仮想フォルダ管理システム1は、例えば、「ファイル共有管理装置」としての仮想フォルダ管理サーバ2と、「ユーザ端末」としてのPC端末3(1),3(2)と、クラウドストレージ4を含む。PCはパーソナルコンピュータの略である。
【0015】
例えば、PC端末3(1)は自社端末、PC端末3(2)は他社端末である。自社端末とは、仮想フォルダ管理サーバ2を運用する組織(自社)に属するユーザが使用するPC端末である。他社端末とは、仮想フォルダ管理サーバ2の提供するファイル共有サービスを利用する他社に属するユーザが使用するコンピュータ端末である。自社は「第1組織」の例であり、他社は「第2組織」の例である。自社ユーザは「第1ユーザ」の例であり、他社ユーザは「第2ユーザ」の例である。図2に示すように、他社は、複数の異なる企業を含むことができる。図2では、それぞれ異なる他社に属するユーザの使用するPC端末3(2A),3(2B)を示す。PC端末3(2A)は、A社のユーザが使用する。PC端末3(2B)は、B社のユーザが使用する。本実施例の仮想フォルダ管理システム1は、3種類のユーザ(自社ユーザ、A社ユーザ、B社ユーザ)により使用される。さらに多くの他社ユーザが仮想フォルダ管理システム1を利用することもできる。PC端末3(1),3(2A),3(2B)はそれぞれ一つ以上であるが、通常は複数である。各PC端末を特に区別しない場合、PC端末3と呼ぶ。
【0016】
図1に戻る。仮想フォルダ管理サーバ2は、仮想フォルダアプリケーション200と、データベース210を含む。仮想フォルダアプリケーション200は、仮想フォルダ220を各PC端末3へ提供する。仮想フォルダ200は、共有フォルダをユーザへ提供する画面である。仮想フォルダ200におけるファイルの格納場所は、「仮想的位置」の例である。
【0017】
データベース210は、仮想フォルダ管理サービスで使用される複数のリスト(テーブル)T1~T3を記憶する。データ紐付けリストT1、アクセス権限リストT2、フォルダ区分リストT3についてはそれぞれ後述する。
【0018】
PC端末3は、上述の通りパーソナルコンピュータ端末であり、ウェブブラウザ300を含む。ユーザは、ウェブブラウザ300を介して仮想フォルダ管理サーバ2へアクセスし、自分がアクセス権限を持つ共有フォルダ内のファイル310をウェブブラウザ300内で起動させて利用する。ウェブブラウザ300に代えて、仮想フォルダ管理サービスを利用するための専用アプリケーションを採用してもよい。
【0019】
クラウドストレージ4は、共有されるファイルの実体(データ実体とも呼ぶ)400を記憶する装置である。図1では、複数のクラウドストレージとして2つのクラウドストレージ4(SA),4(SB)を示す。仮想フォルダ管理システム1は、3つ以上のクラウドストレージ4を含んでもよい。
【0020】
ユーザは、PC端末3を用いて仮想フォルダ管理サーバ2へアクセスし、ユーザに提供される仮想フォルダ220を通じて、所望のファイルのアップロード、閲覧、編集、削除を行う。本実施例では、共有ファイルの利用権限として、編集および削除の可能なアクセス権限を例示するが、ファイルの閲覧のみ許可するなどのように、さらに細かくアクセス権限を設定してもよい。
【0021】
仮想フォルダ220で管理されるファイルの実体は、クラウドストレージ4の所定の場所に保管されている。後述のように、クラウドストレージ4には、ファイルを共有するグループごとに格納場所が設定されている。ユーザが所望のファイルへのアクセスを要求すると、仮想フォルダアプリケーション200は、ファイルの実体の格納場所を示すURL(Uniform Resource Locator)をPC端末3へ返す。ウェブブラウザ300はURLで示されたクラウドストレージ4の保管場所へアクセスし、ファイルの実体400をウェブブラウザ300内で開く。
【0022】
図2は、仮想フォルダ管理システム1のハードウェア構成図である。仮想フォルダ管理サーバ2は、例えば、プロセッサ(CPU)21、メモリ22、補助記憶装置(SSD)23、通信インターフェース(IF)24およびユーザインターフェース装置(UI)25を備える。
【0023】
プロセッサ21がメモリ22に記憶された仮想フォルダアプリケーション200を読み込んで実行することにより、アクセス権限に応じた仮想フォルダ220がユーザごとに提供される。
【0024】
PC端末3も、プロセッサ31、メモリ32、補助記憶装置33、通信インターフェース34およびユーザインターフェース装置35を備える。メモリ32には、ウェブブラウザ300が記憶されている。
【0025】
ユーザインターフェース装置は、情報入力装置および情報出力装置を含む。情報入力装置には、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、音声入力装置、視線または動作でコンピュータを操作する装置などがある。情報出力装置には、例えば、モニタディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などがある。
【0026】
クラウドストレージ4は、制御装置41と、複数の記憶装置42を備える。制御装置41は、図示せぬストレージ管理プログラムを有し、RAID(Redundant Array of Independent Disk)で構成された各記憶装置42にファイル実体400を保存している。
【0027】
図3は、仮想フォルダ220におけるファイルの表示関係と、クラウドストレージ4におけるファイル実体400の格納場所との関係を模式的に示す。
【0028】
図3の左側には、A社およびB社のそれぞれとファイルを共有する自社ユーザに提供される仮想フォルダ220のフォルダ構成が示されている。仮想フォルダ220のルート直下には、「A社向け」フォルダ、「B社向けフォルダ」、「見積書」ファイル、「見積根拠」ファイルが記憶されているかのように、自社ユーザに向けて表示されている。
【0029】
図3の右側には、2つのクラウドストレージ4(SA),4(SB)でのフォルダ構成(ディレクトリ構成)が示されている。クラウドストレージ4(SA)のルートディレクトリには、「A社」、「B社」、「ルート」、「A社・B社」、「A社・ルート」、「B社・ルート」、「A社・B社・ルート」といったフォルダが設けられている。「A社・B社」フォルダは、A社ユーザとB社ユーザ(および自社ユーザ)に共有される記憶領域であることを示す。
【0030】
クラウドストレージ4(SB)のルートディレクトリにも、「A社」、「B社」、「ルート」、「A社・B社」、「A社・ルート」、「B社・ルート」、「A社・B社・ルート」といったフォルダが設けられている。
【0031】
クラウドストレージ4(SA),4(SB)には、ファイルを共有するためのアクセス権限の種類ごとに(ファイルを共有するユーザグループごとに)、ファイル実体400を記憶するための記憶領域が用意される。
【0032】
仮想フォルダ220に格納されるファイルの実体400は、クラウドストレージ4(SA)またはクラウドストレージ4(SB)のいずれに記憶されてもよい。例えば、A社ユーザと自社ユーザにより共有される「A社向け」フォルダに格納されるファイルの実体は、クラウドストレージ4(SA)に置かれてもよいし、クラウドストレージ4(SB)に置かれてもよい。仮想フォルダ220の「A社向け」フォルダ内の或るファイルの実体400は、クラウドストレージ4(SA)の「A社」フォルダに保存され、仮想フォルダ220の「A社向け」フォルダ内の他のファイルの実体400は、クラウドストレージ4(SB)の「A社」フォルダに保存されてもよい。
【0033】
ユーザは、仮想フォルダ管理サーバ2へファイルをアップロードする際に、保存先のクラウドストレージ4を明示的に選択することができる。あるいは、アップロードされたファイルをいずれのクラウドストレージ4に保存させるかは、仮想フォルダ管理サーバ2が所定の条件に基づいて自動的に決定することもできる。仮想フォルダ管理サーバ2は、例えば、クラウドストレージ4との契約内容、クラウドストレージ4の記憶装置42が設置された地域の情報、クラウドストレージ4の応答性能などに基づいて、ファイルの保存先を決定することができる。なお、ファイル実体400を保存するクラウドストレージ4を、手動または自動的に後から変更することもできる。
【0034】
図4は、仮想フォルダ220で複数表示されているファイルの実体が、クラウドストレージ4では同じ場所に格納されていることを示す。
【0035】
仮想フォルダ220の「A社向け」フォルダと「B社向け」フォルダには、それぞれ「WBS」ファイルが記憶されているかのように表示されている。しかし、「A社向け」フォルダに記憶された「WBS」ファイルの実体と「B社向け」フォルダに記憶された「WBS」ファイルの実体とは、いずれもクラウドストレージ4(SA)の「A社・B社」フォルダ内にある同一のファイルである。
【0036】
仮想フォルダ220内の別々の共有フォルダにそれぞれ格納されたファイル(ここでは「WBS」ファイル)は、それら複数の共有フォルダのアクセス権限を統合した記憶領域(ここではクラウドストレージ4(SA)の「A社・B社」フォルダ)に保存されている一つのファイル実体と紐付けられている。したがって、A社ユーザとB社ユーザ(および自社ユーザ)は、常に同じファイルにアクセスして利用することができる。
【0037】
図5は、仮想フォルダ220のルートフォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダ220での画面構成(フォルダ構成。以下同じ)とクラウドストレージ4(SA)でのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す。
【0038】
図6は、仮想フォルダ220の「A社向け」フォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダ220から提供される画面構成とクラウドストレージ4(SA)でのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す。
【0039】
図7は、仮想フォルダ220の「B社向け」フォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダ220での画面構成とクラウドストレージ4(SA)でのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す。
【0040】
図8は、仮想フォルダ220の「B社向け」フォルダへのアクセス権限を持つユーザの、仮想フォルダ220での画面構成(フォルダ名表示モード)とクラウドストレージ4(SA)でのアクセス権限に基づく格納場所との対応関係を示す。フォルダ名表示モードとは、そのユーザがアクセス権限を持たない他の共有フォルダについても、仮想フォルダ220に表示させるモードである。ユーザは、ファイル名表示モードで仮想フォルダ220を表示させることにより、仮想フォルダ220内の全フォルダ(および全ファイルまたは特定の範囲内のフォルダ(およびファイル)について、その名称と管理者名とを確認することができる。
【0041】
図9は、仮想フォルダ220の「B社向け」フォルダに対するアクセス権限を持つユーザを管理する画面の例。この管理画面は、仮想フォルダ220のルート直下の各フォルダについて、アクセス権限を持つユーザ名を管理する。ユーザ名には、当該フォルダの作成者名と、当該フォルダの更新者名とが含まれる。
【0042】
図10は、仮想フォルダ220の「B社向け」フォルダに対するアクセス権限のみを持つユーザに提供される、ファイル名表示モードでの画面構成である。
【0043】
図11は、仮想フォルダ220での表示位置(仮想的位置)とクラウドストレージ4にファイルの実体が記憶されている位置(実位置)との対応関係を管理するデータ紐付けリストT1の例である。
【0044】
データ紐付けリストT1は、例えば、管理番号と、そのフォルダの名称(ファイル名称を含む。以下同じ)と、種類(フォルダかファイル化の区別)と、識別子と、そのフォルダが存在するクラウドストレージ4での格納場所を示すURLと、そのフォルダの仮想フォルダ220での保存場所(仮想的位置)と、そのフォルダの実体が保存されているクラウドストレージ4での保存場所(実位置)とを管理する。図中、「AB」とは、「A社向けフォルダ」のアクセス権限と「B社向け」フォルダのアクセス権限とが統合された記憶領域(ディレクトリ)であることを示す。「AR」とは、「A社向け」フォルダのアクセス権限とルートフォルダのアクセス権限とが統合された記憶領域であることを示す。なお、図中および以下では、ファイルのURLを「URL」と略記することがある。
【0045】
「WBS」ファイルに着目する。データ紐付けリストT1の「仮想フォルダの保存場所」によれば、「WBS」ファイルは、仮想フォルダ220の「A社向け」フォルダおよび「B社向け」フォルダの両方に保存されていることがわかる。そして、「クラウドストレージSAの保存場所」によれば、「WBS」ファイルの実体は、A社およびB社の両方がアクセス権限を持つ記憶領域に保存されていることがわかる。
【0046】
図12は、アクセス権限を追加したときのデータ紐付けリストT1を示す。ここでは、4番目の「サービス仕様書」ファイルに対して、B社ユーザにもアクセス権限を与える場合を説明する。図12は、「サービス仕様書」ファイルを仮想フォルダ220の「B社向け」フォルダにコピーした直後を示す。
【0047】
図13は、クラウドストレージ4(SA)での「サービス仕様書」ファイルの実体の格納場所が、「A社」フォルダから「A社・B社」フォルダへ移された様子を示す。
【0048】
図14は、仮想フォルダ220を利用可能なユーザを定義するアクセス権限リストT2の例である。「全体権限」、「A社」、「B社」、「×××部門」、「yyyグループ」、「zzz部署」などのように、ファイルを共有するユーザのグループごとにアクセス権限が設定される。グループは、仮想フォルダ220の全体、会社単位、部門単位、部署単位、チーム単位などのように、種々のレベルで設定可能である。
【0049】
図15は、仮想フォルダ220およびクラウドストレージ4の各フォルダの区分を示すフォルダ区分リストT3の例である。フォルダ区分リストT3は、例えば、ファイル名称、種類、識別子、フォルダURL、アクセス権限を持つグループを管理する。フォルダ区分リストT3は、仮想フォルダ220の全フォルダと各クラウドストレージ4の全フォルダ(全ディレクトリ)とを管理する。フォルダURLは、クラウドストレージ4の記憶領域のうちファイル実体を記憶する領域を特定するフォルダ位置情報である。
【0050】
図16を用いて、仮想フォルダ管理処理を説明する。図16に示す処理は、仮想フォルダ管理サーバ2のシステム管理者側で実施されるステップS1~S5と、仮想フォルダ管理サーバ2を使用するユーザ側で実施されるステップS100~S900を含む。以下、仮想フォルダ管理サーバ2をサーバ2と略記する場合がある。
【0051】
システム管理者は、ファイルを共有するグループ数(n)をユーザインターフェース装置25から仮想フォルダ管理サーバ2へ入力して確定させる(S1)。これによりサーバ2は、入力されたグループ数の全ての組み合わせに対応するフォルダ(ディレクトリ)を各クラウドストレージ4に予め作成させる(S2)。ファイル実体400は、クラウドストレージ4のフォルダに直接格納されることができる。あるいは、ファイル実体の物理的所在を示すリンク情報(ポインタ情報)をクラウドストレージ4のフォルダに格納し、実際の格納場所はクラウドストレージ4内の他の領域に設定してもよい。
【0052】
サーバ2は、システム管理者からの入力にしたがって、アクセス権限リストT2およびフォルダ区分リストT3を作成する(S3,S4)。さらに、サーバ2は、システム管理者からの入力にしたがって、アクセス権限リストT2にユーザ名を登録する(S5)。ユーザの氏名に代えて、あるいはユーザの氏名と共に社員番号のような識別情報を用いてもよい。
【0053】
ユーザ側の処理には、ログイン処理(S100)、ファイルアップロード処理(S200)、ファイルアクセス処理(S300)、ファイル移動処理(S400)、ファイル複製処理(S500)、ファイル名表示モードの有効化処理(S600)、ファイル名表示モードの無効化処理(S700)、データベース一覧の出力処理(S800)および格納先クラウドストレージの変更処理(S900)がある。以下、これら各処理について説明する。
【0054】
図17は、ログイン処理(S100)のフローチャートである。サーバ2は、PC端末3からログイン要求を受信すると、不図示のユーザ認証を行う。
【0055】
サーバ2は、ユーザ認証に成功すると、ユーザの所属するグループ数(Gr)を確認する(S101)。サーバ2は、所属グループ数が複数あるか判定する(S102)。サーバ2は、ユーザの所属するグループが複数あると判定すると(S102:YES)、所属するグループの全てについて(S103,S106)、所属グループがアクセス権限を持つファイル(フォルダを含む。以下同様)の一覧を取得し(S104)、取得したアクセス権限の一覧を前のループで取得したアクセス権限の一覧に結合させる(S105)。図中では、ファイルとフォルダの両方が対象であることを示すために「ファイル・フォルダ」と表記している。
【0056】
一方、サーバ2は、ユーザの所属するグループが一つの場合(S102:NO)、その唯一のグループがアクセス権限を持つファイルの一覧を取得する(S107)。
【0057】
最後にサーバ2は、取得したファイルの一覧を構造化して、PC端末3のウェブブラウザ300に提供し、PC端末3の画面に表示させる(S108)。ここで構造化して表示するとは、ルートとフォルダおよびファイルの関係、フォルダとフォルダの関係、フォルダとファイルの関係を構造化してユーザに示すことである。
【0058】
図18は、ファイルアップロード処理(S200)のフローチャートである。ユーザは、PC端末3を介してサーバ2にファイルをアップロードすることができる。サーバ2は、ファイルアップロードの要求を受けると、サーバ2の利用するクラウドストレージ4が複数あるか判定する(S201)。サーバ2は、複数のクラウドストレージ4を利用している場合(S201:YES)、どのクラウドストレージ4を使用するのかについて、ユーザからの選択を待つ(S202)。すなわち、本実施例の仮想フォルダ管理システム1は、ユーザが複数のクラウドストレージ4のうちいずれのクラウドストレージ4を使用するのかを選択できる。
【0059】
続いてサーバ2は、PC端末3からの入力にしたがって、アップロード対象ファイルが格納される仮想フォルダ220での保存場所、すなわち、アップロード対象ファイルが仮想フォルダ220のフォルダ構成上の表示位置を取得する(S203)。ステップS201でクラウドストレージ4が1つしかないと判定された場合(S201:NO)、ステップS202をスキップし、ステップS203へ移る。
【0060】
サーバ2は、PC端末3からの入力にしたがって、アップロード対象ファイルが選択されたことを確認し(S204)、PC端末3からサーバ2へ対象ファイルのアップロードが開始されたことを確認する(S205)。
【0061】
サーバ2は、PC端末3からのファイルを受領すると、データ紐付けリストT1を更新する(S206)。すなわちサーバは、データ紐付けリストT1のうち、受領したファイルの「名称」、「種類」、「仮想フォルダでの格納場所」を更新する。サーバ2は、データ紐付けリストT1の「仮想フォルダの格納場所」から必要なアクセス権限を確認する(S207)。例えば、仮想フォルダの「A社向け」にアップロードされたファイルに必要なアクセス権限は、A社との共有フォルダへのアクセス権限である。
【0062】
サーバ2は、必要なアクセス権限に基づいて、データ紐付けリストT1の「クラウドストレージ4の保存場所」を更新する(S208)。サーバ2は、選択されたクラウドストレージ4の所定の場所、すなわちアップロードされたファイルのアクセス権限に対応する保存場所へ、ファイルの実体を保存させる(S209)。
【0063】
サーバ2は、ファイルの実体の格納先を示すURLをクラウドストレージ4から取得し(S210)、データ紐付けリストT1に書き込む(S211)。
【0064】
図19は、ファイルアクセス処理(S300)のフローチャートである。サーバ2は、PC端末3からのアクセス要求を受け、ユーザによりファイルが選択されたことを確認する(S301)。サーバ2は、選択されたファイルの実体が格納されている場所を示すURLをデータ紐付けリストT1から取得し(S302)、そのURLをPC端末3へ送信する(S303)。PC端末3のウェブブラウザ300は、サーバ2から受信したURLにアクセスし、ファイルを開く。
【0065】
図20は、ファイル移動処理(S400)のフローチャートである。サーバ2は、PC端末3からの入力された操作に基づき、仮想フォルダ220でのファイルの移動要求を確認する(S401)。ユーザは、例えば、ドラッグアンドドロップのような操作により、仮想フォルダ220上でファイルを移動または複製させることができる。
【0066】
サーバ2は、ファイルの移動先フォルダを特定する識別子を取得し(S402)、同一フォルダ内での移動であるか、すなわちファイルのアクセス権限に変化がないか判定する(S403)。
【0067】
サーバ2は、同一フォルダ内での移動であると判定すると(S403:YES)、データ紐付けリストT1の「仮想フォルダの保存場所」を更新する(S404)。一方、サーバ2は、移動元フォルダと移動先フォルダとが異なるアクセス権限を必要とする場合(S403:NO)、ファイル複製処理(S500)へ移行する。
【0068】
図21は、ファイル複製処理(S500)のフローチャートである。サーバ2は、移動先フォルダを、データ紐付けリストT1の「仮想フォルダの保存場所」に追加する(S501)。さらに、サーバ2は、データ紐付けリストT1の「クラウドストレージの保存場所」の情報を変数Fbに格納する(S502)。サーバ2は、「仮想フォルダの保存場所」から必要なアクセス権限を確認し(S503)、データ紐付けリストT1の「クラウドストレージの保存場所」を更新する(S504)。サーバ2は、「クラウドストレージの保存場所」を変数Faに格納する(S505)。
【0069】
サーバ2は、変数Fbで示されるフォルダ(ディレクトリ)に格納されている対象ファイルを、変数Faで示されるフォルダ(ディレクトリ)へ移動させる(S506)。サーバ2は、ファイル移動後におけるクラウドストレージでの保存場所を示すURLを取得し(S507)、取得したURLでデータ紐付けリストT1の「ファイルURL」を更新する(S508)。
【0070】
図22は、ファイル名表示モードの有効化処理(S600)を示すフローチャートである。ファイル名表示モードとは、アクセス権限とは無関係に、仮想フォルダ220に保存されている全ファイルの名称およびその管理者名を表示させるモードである。本実施例の仮想フォルダ管理システム1は、共有対象のファイル(およびフォルダ)の表示と、それら共有対象のファイル(およびフォルダ)の実体の格納先とを切り離して管理するため、アクセス権限のないユーザによるファイル実体へのアクセスを禁止したままで、そのユーザにファイル名などを提供することができる。
【0071】
アクセス権限のないユーザは、ファイル名のみしか表示されない場合であっても、ファイル名からその内容をある程度推定することはできる。例えば、或るユーザが初めて「サービス仕様書」を作成することになった場合、手本となる資料がないと手間がかかる。そこで、ユーザは、ファイル名表示モードで仮想フォルダ220の全ファイルを表示し、「サービス仕様書」というキーワードで検索することにより、過去に作成された「A社向けaaaサービス仕様書」、「サービス仕様書(B社bbbプロジェクト)」といったドキュメントを発見できる可能性がある。ユーザは、過去のドキュメントの管理者から許可をもらうことで、過去のドキュメントを再利用することができ、新たなドキュメントを効率よく作成することができる。
【0072】
サーバ2は、データ紐付けリストT1に登録されている全ファイル(全フォルダ)を構造化して仮想フォルダ220の画面を生成し、PC端末3へ提供する(S601)。サーバ2は、仮想フォルダ220に表示されたファイル(フォルダを含む)に対するアクセス要求を受信したか判定する(S602)。サーバ2は、アクセス要求を受信すると(S602:YES)、そのアクセス要求についてアクセス権限の有無を判定し(S603)、アクセス権限を有する場合はファイルアクセス処理(S300)を実行する。ファイルへのアクセス要求を受信していない場合(S602:NO)およびアクセス権限のないアクセス要求を受信した場合(S603:NO)、ステップS601へ戻る。
【0073】
図23は、ファイル名表示モードの無効化処理(S700)を示すフローチャートである。図22で述べたファイル名表示モードは、手動または自動的に解除することができ、通常の表示モードへ復帰させることができる。アクセス権限のあるファイルのみ仮想フォルダ220に表示する通常モードへ復帰させる処理を、「ファイル名表示モードの無効化処理」と呼ぶ。
【0074】
ファイル名表示モードの無効化処理は、図17で述べたログイン処理(S100)と同様である。サーバ2は、ユーザの所属するグループ数(Gr)を確認し(S701)、所属グループ数が複数あるか判定する(S702)。サーバ2は、ユーザの所属するグループが複数あると判定すると(S702:YES)、所属するグループの全てについて(S703,S706)、所属グループがアクセス権限を持つファイルの一覧を取得し(S704)、取得したアクセス権限の一覧を前のループで取得したアクセス権限の一覧に結合させる(S705)。一方、サーバ2は、ユーザの所属するグループが一つの場合(S702:NO)、その唯一のグループがアクセス権限を持つファイルの一覧を取得する(S707)。サーバ2は、取得したファイルの一覧を構造化して、PC端末3のウェブブラウザ300に提供し、PC端末3の画面に表示させる(S708)。これにより、ユーザの使用するPC端末3の画面には、そのユーザがアクセス権限を持つファイルのみが表示される。
【0075】
図24は、データベース一覧の出力処理(S800)を示すフローチャートである。監査または棚卸へ対応するために、ファイル数を調べたり、ファイルの共有先を調べたりする場合がある。この場合に、ユーザは、PC端末3を介してサーバ2に対し、データ紐付けリストT1の記憶内容を出力するよう要求することができる。
【0076】
サーバ2は、ファイル一覧の出力要求をPC端末3から受信すると、データ紐付けリストT1の全行をCSV(Comma Separated Value)ファイルへ出力する(S801)。さらに、サーバ2は、アクセス権限リストT2の全行もCSVファイルへ出力する(S802)。サーバ2は、CSVファイルをPC端末3へ送信する(S803)。
【0077】
図25は、ファイルの実体を格納させるクラウドストレージの変更処理(S900)を示す。本実施例の仮想フォルダ管理システム1では、共有ファイルの表示(ユーザへの見せ方)と、共有ファイルの実体の格納先とを切り離して管理するため、ファイル実体を記憶するクラウドストレージ4を変更しても、仮想フォルダ220の表示に影響はない。クラウドストレージ4の変更は、データ紐付けリストT1の「クラウドストレージの保存場所」を更新するだけで実現できる。以下、クラウドストレージ4(SA)からクラウドストレージ4(SB)へファイル実体の格納先を変更する例を説明する。
【0078】
サーバ2は、PC端末3からファイル実体を保存する格納先クラウドストレージ4(SB)が選択されたことを受信すると(S901)、PC端末3からの入力にしたがって、クラウドストレージの変更が指示されたことを確認する(S902)。
【0079】
サーバ2は、データ紐付けリストT1の「クラウドストレージSAの保存場所」の情報を変数Fbに格納し(S903)、データ紐付けリストT1の「仮想フォルダの保存場所」から、格納先変更対象のファイルにアクセスするために必要なアクセス権限を確認する(S904)。
【0080】
サーバ2は、データ紐付けリストT1の「クラウドストレージの保存場所」をクラウドストレージ4(SB)に変更し(S905)、「クラウドストレージSBの保存場所」の情報を変数Faへ格納する(S906)。
【0081】
サーバ2は、変数Fbで示されるフォルダに格納されている格納先移動の対象ファイルをPC端末3へ転送させる(S907)。サーバ2は、PC端末3が対象ファイルをクラウドストレージ4(SB)へ転送して記憶させたことを確認する(S908)。PC端末3は、クラウドストレージ4(SB)での対象ファイルの保存場所を示すURLを取得する。サーバ2は、PC端末3を介してそのURLを取得し(S909)、データ紐付けリストT1の「ファイルのURL」を更新する(S910)。
【0082】
このように構成される本実施例によれば、ユーザが共有ファイルを管理する画面(仮想フォルダ220)と、共有ファイルのアクセス権限に基づいて定まるファイル実体の格納場所(クラウドストレージ4)とを分離して管理するため、複数ユーザによるファイル共有を効率的に行うことができ、使い勝手が向上する。
【0083】
本実施例によれば、共有ファイルの実体がクラウドストレージ4にあるため、仮想フォルダ220側で同じファイルを異なるフォルダへ重複して格納でき、そのファイルを利用する全ユーザに対してファイルの同一性を保持することができる。
【0084】
本実施例によれば、フォルダ単位でアクセス権限を付与するため、ファイルを共有するユーザの設定に人為的ミスが生じるのを抑制できる。
【0085】
本実施例によれば、組織毎に共有フォルダを用意するため、ユーザは目的とするファイルを簡単に見つけることができる。
【0086】
本実施例によれば、ファイルURLを発行できる複数のクラウドストレージ4をまとめて管理することができる。したがって、システム管理者は、仮想フォルダ管理システム1に新たなクラウドストレージを容易に追加することができる。さらに、本実施例では、仮想フォルダ管理システム1で使用するクラウドストレージ4の入れ替えも容易に行うことができ、高性能で信頼性の高いクラウドストレージを使うことで、仮想フォルダ管理システム1の信頼性と性能を維持できる。
【0087】
本実施例では、クラウドストレージ4でのファイル実体の保存場所と仮想フォルダ220でのファイルの保存場所とを切り離し、両者をデータ紐付けリストT1で対応させて管理するため、仮想フォルダ220での保存場所の変更に容易に対応でき、使い勝手が向上する。ファイル共有サービスの中には、ファイル格納先(名称)に基づいてファイルURLが発行されるサービスがある。この場合、保存先の変更またはフォルダ名の変更によって、ファイルURLは使用できなくなる。しかし、本実施例の仮想フォルダでは、保存先の変更やフォルダ名の変更は仮想フォルダ側のみで発生するため、ファイル実体に影響を生じない。
【実施例0088】
図26を用いて実施例2を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、実施例1との相違を中心に述べる。図27は、ユーザ管理処理のフローチャートである。
【0089】
システム管理者は、仮想フォルダ管理システム1にユーザを登録する際に、ユーザが仮想フォルダ管理サーバ2を利用するための第1認証情報と、ユーザがクラウドストレージ4を利用するための第2認証情報とを決定する。ここでは、システム管理者がサーバ2を用いて第1認証情報と第2認証情報を設定する場合を説明する。
【0090】
サーバ2は、仮想フォルダ管理システム1に登録する対象ユーザの情報を、図示せぬ記憶媒体または社員管理システムなどから取得する(S1001)。対象ユーザの情報は、例えば、ユーザの氏名、所属先、社員番号などを含む。
【0091】
サーバ2は、対象ユーザがPC端末3から仮想フォルダ管理サーバ2にアクセスするための第1認証情報を生成する(S1002)。さらに、サーバ2は、対象ユーザがPC端末3からクラウドストレージ4へアクセスするための第2認証情報を生成する(S1003)。そして、サーバ2は、第1認証情報を、電子メールなどの電子的メッセージとして、対象ユーザの使用するPC端末3へ送信する(S1004)。
【0092】
サーバ2は、以下の複数の方法のいずれかで、第2認証情報を対象ユーザに提供することができる。
【0093】
第1の方法では、サーバ2から対象ユーザの使用するPC端末3へ第2認証情報を送信する。第2の方法では、サーバ2内で第2認証情報を保管し、対象ユーザがPC端末3を用いてクラウドストレージ4へアクセスする際に、ファイルのURLと第2認証情報とをPC端末3へ送信する。PC端末3は、サーバ2から受領した第2認証情報を用いてクラウドストレージ4へアクセスし、ファイルの実体をダウンロードする。
【0094】
このように構成される本実施例も実施例1と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、仮想フォルダ管理システム1を使用するユーザを登録する手間を軽減でき、システム管理者にとっての使い勝手が向上する。
【実施例0095】
図27を用いて実施例3を説明する。本実施例では、ファイルの格納先クラウドストレージを変更する際に、サーバ2内の一時的記憶領域を利用する。図27は、格納先クラウドストレージの変更処理(S900A)のフローチャートである。本処理は、図25で述べた処理(S900)と、ステップS907A,908A,909Aが異なる。
【0096】
サーバ2は、メモリ22または補助記憶装置23内に、ファイル移動用の一時的記憶領域(不図示)を有している。サーバ2は、変数Fbで示されるフォルダに格納されている格納先移動の対象ファイルをクラウドストレージ4から一時的記憶領域へダウンロードする(S907A)。サーバ2は、ダウンロードした対象ファイルをクラウドストレージ4(SB)へアップロードして記憶させたことを確認する(S908A)。サーバ2は、クラウドストレージ4(SB)での対象ファイルの保存場所を示すURLを取得する。
【0097】
このように構成される本実施例も実施例1と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、ファイルの格納先クラウドストレージを変更する際に、PC端末3内に保存せず、サーバ2内の一時的記憶領域を使用するため、PC端末3の盗難などによって秘密情報が外部へ漏洩する可能性を低減することができる。なお、一時的記憶領域に記憶されたファイル実体は、他のファイル実体によって上書きされるか、あるいは、一定時間経過後に消去される。
【0098】
なお、本発明は上記した実施例に限定されず、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1:仮想フォルダ管理システム、2:仮想フォルダ管理サーバ、3:PC端末、4:クラウドストレージ、200:仮想フォルダアプリケーション、210:データベース、220:仮想フォルダ、300:ウェブブラウザ、310:ファイル、400:ファイル実体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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