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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117156
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】内面露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/24 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G03F7/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019713
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏史
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢治
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA04
2H197AA06
2H197AA07
2H197AA08
2H197AA38
2H197AA41
2H197BA03
2H197BA11
2H197CA02
2H197CA04
2H197CA05
2H197CB16
2H197CC05
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD18
2H197CD47
2H197EA19
2H197FB03
2H197HA06
2H197JA05
(57)【要約】
【課題】中空を有する立体構造物の中空の内面に一括してリソグラフィを施すことが可能な内面露光装置を提供することである。
【解決手段】本発明の内面露光装置100は、中空Maを有する被露光物Mの中空Maの内面Mbを露光する内面露光装置であって、光源10と、光源10と被露光物Mとの間に配置する露光用マスク20と、被露光物Mの中空Ma内に配置され、光源10から出て露光用マスク20を透過した光を中空Maの内面Mbへ反射可能な反射面30aを有する反射ミラー30と、反射ミラー30を保持する反射ミラー保持部40と、被露光物Mを支持する被露光物ステージ50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空を有する被露光物の前記中空の内面を露光する内面露光装置であって、
光源と、
前記光源と前記被露光物との間に配置する露光用マスクと、
前記中空内に配置され、前記露光用マスクを透過した前記光源からの光が前記中空の内面へ反射可能な反射面を有する反射ミラーと、
前記反射ミラーを保持する反射ミラー保持部と、
前記被露光物を支持する被露光物ステージと、
を備える、内面露光装置。
【請求項2】
前記露光用マスクを透過した光が、前記中空の内面において所定のパターンを形成する投影光学系を備える、請求項1に記載の内面露光装置。
【請求項3】
前記反射ミラーが、前記反射面はその面の中で前記光源に最も近い頂点と、その頂点から、前記光源から遠ざかるにつれて前記内面に近づくように形成されてなる斜面とを有する、請求項1又は2のいずれかに記載の内面露光装置。
【請求項4】
前記反射面は、円錐形状、多角錐形状、及び、凸球面形状のいずれかである、請求項3に記載の内面露光装置。
【請求項5】
前記頂点が光軸方向から見て光軸からずれた位置に配置される、請求項3に記載の内面露光装置。
【請求項6】
前記被露光物ステージを前記光源の光が進行する方向に移動させる被露光物移動機構、及び、前記反射ミラー保持部を前記光源の光が進行する方向に移動させる反射ミラー移動機構のうち、少なくとも一方を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の内面露光装置。
【請求項7】
前記被露光物移動機構は、互いに直交するxyz軸の並進方向及びx軸、y軸、z軸と平行な軸回りの回転方向の6軸調整可能な6軸調整機構を有する、請求項6に記載の内面露光装置。
【請求項8】
前記反射ミラー移動機構は、互いに直交するxyz軸の並進方向及びx軸、y軸、z軸と平行な軸回りの回転方向の6軸調整可能な6軸調整機構を有する、請求項6又は7のいずれかに記載の内面露光装置。
【請求項9】
前記被露光物を光軸周りに回転する被露光物回転機構を備える、請求項6~8のいずれか一項に記載の内面露光装置。
【請求項10】
前記光源と照明光学系と前記露光用マスクと前記投影光学系とが光軸を一致するように固定台に設置された投影光学ユニットとして、一体で移動回転可能とされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内面露光装置。
【請求項11】
前記光源と照明光学系と前記露光用マスクと前記投影光学系と反射ミラーとが光軸を一致するように透明な容器に設置された露光ユニットとして、一体で移動回転可能とされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の内面露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒材料の精密加工には、切削加工が用いられバイトという工具を用いた加工が行われていた。しかし、製品の小型化や高精度化、省エネルギー化に伴い、加工する部品が小型・高精度になり従来の機械加工の延長線上の加工では、対応できない場合が出てきた。そこで、近年では、高エネルギーレーザを用いて熱反応により加工する方法が開発され、実用化されている。レーザー光により熱で溶融蒸発させることで所望の形状を加工するものである。
【0003】
一方で、マイクロからナノオーダ寸法の微細加工技術にはリソグラフィ技術があげられる。リソグラフィは、半導体集積回路や光エレクトロニクスデバイス、液晶パネルの製造、各種センサやアクチュエータの加工に利用されている微細加工技術であり、光源からの光をパターン化する原版(レチクル、マスク)を通過させ、感光性物質を表面に備える基板に照射して、パターンを転写する技術である。光源には、可視光や紫外光、遠紫外光、真空紫外光、極端紫外光、X線、電子ビーム、イオンビームが用いられ、発せられた光線または粒子線を、感光性物質のレジストに所望の形状で照射することにより感光させ、その後の現像処理によって感光部を保持または除去することで、所望の形状を有する感光性物質の微細パターンを得る技術である。
【0004】
感光性物質を所望のパターンに感光させるには、パターンを有する原版(レチクル、マスク)を用い、光の透過・遮光を制御する。特に、X線やレーザーのような指向性の強い光源の場合は、通過した光が直接被露光物上に照射されて露光する。その他の光源では、マスクまたはレチクルを通過した光はレンズまたはミラーを用いた投影光学系、またはレンズとミラーを組み合わせた投影光学系により被露光物上に投影し、マスクまたはレチクル上のパターンの投影像を作って露光する。
【0005】
従来、このリソグラフィ技術は、半導体ウエハやガラス基板等の平面度が良い平面基板を被露光物として利用されてきた。最近になって、円柱状や円筒状等の曲面の被露光物へリソグラフィを施す加工技術についての提案がされている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-171896号公報
【特許文献2】特許第5067757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、可視光を露光光源として、投影レンズを介してレチクル上のパターンを円柱上の被露光物の外表面上に投影してパターンの光像を形成し、被露光物の外表面上に塗布したレジストを感光させてパターンを形成する投影露光方法および装置が開示されている。しかし、この方法では、円筒や角筒等、周囲を囲まれており、表面からでは光が直接当たらない内側面を持つ構造物にリソグラフィを施すことができない。
【0008】
かかる問題に対して、特許文献2には、露光光線を導光する光ファイバーと反射素子が配置されたガイドロッドを備え、被露光物と相対的に移動、角度を変えることで、被露光物の内側に塗布された感光性物質に光ファイバーと反射素子によって照射された光を当て、感光性物質に所定のパターンを感光させる露光装置および露光方法が開示されている。
【0009】
上記のいずれの方法でも、中空を有する立体構造物の中空の内面に一括してリソグラフィを施すことはできない。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、中空を有する立体構造物の中空の内面に一括してリソグラフィを施すことが可能な内面露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0012】
本発明の一態様に係る内面露光装置は、中空を有する被露光物の前記中空の内面を露光する内面露光装置であって、光源と、前記光源と前記被露光物との間に配置する露光用マスクと、前記中空内に配置され、前記露光用マスクを透過した前記光源からの光が前記中空の内面へ反射可能な反射面を有する反射ミラーと、前記反射ミラーを保持する反射ミラー保持部と、前記被露光物を支持する被露光物ステージと、を備える。
【0013】
上記態様に係る内面露光装置は、前記露光用マスクを透過した光が、前記中空の内面において所定のパターンを形成する投影光学系を備えてもよい。
【0014】
上記態様に係る内面露光装置は、前記反射ミラーが、前記反射面はその面の中で前記光源に最も近い頂点と、その頂点から、前記光源から遠ざかるにつれて前記内面に近づくように形成されてなる斜面とを有してもよい。
【0015】
上記態様に係る内面露光装置は、前記反射面は、円錐形状、多角錐形状、及び、凸球面形状のいずれかであってもよい。
【0016】
上記態様に係る内面露光装置は、前記頂点が光軸方向から見て光軸からずれた位置に配置されてもよい。
【0017】
上記態様に係る内面露光装置は、前記被露光物ステージを前記光源の光が進行する方向に移動させる被露光物移動機構、及び、前記反射ミラー保持部を前記光源の光が進行する方向に移動させる反射ミラー移動機構のうち、少なくとも一方を備えてもよい。
【0018】
上記態様に係る内面露光装置は、前記被露光物移動機構は、互いに直交するxyz軸の並進方向及びx軸、y軸、z軸と平行な軸回りの回転方向の6軸調整可能な6軸調整機構を有してもよい。
【0019】
上記態様に係る内面露光装置は、前記反射ミラー移動機構は、互いに直交するxyz軸の並進方向及びx軸、y軸、z軸と平行な軸回りの回転方向の6軸調整可能な6軸調整機構を有してもよい。
【0020】
上記態様に係る内面露光装置は、前記被露光物を光軸周りに回転する被露光物回転機構を備えてもよい。
【0021】
上記態様に係る内面露光装置は、前記光源と照明光学系と前記露光用マスクと前記投影光学系とが光軸を一致するように固定台に設置された投影光学ユニットとして、一体で移動回転可能とされていてもよい。
【0022】
上記態様に係る内面露光装置は、前記光源と照明光学系と前記露光用マスクと前記投影光学系と反射ミラーとが光軸を一致するように透明な容器に設置された露光ユニットとして、一体で移動回転可能とされていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、中空を有する立体構造物の中空の内面に一括してリソグラフィを施すことが可能な内面露光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図2】露光用マスクの中心部分と外周部分のパターンでマスクパターンの露光量が変化することを説明するための図である。
図3】被露光物として、円筒の外側からパターンの観察が可能な透明で腐食しない石英ガラスからなる円筒試料を用いて露光を行っている写真であり、(a)は、円筒試料近傍を斜めから見た写真であり、(b)は、円筒試料近傍を横から見た写真である。
図4】(a)は、図3と同じ石英ガラスからなる円筒試料の内面に、図3よりも微細なパターンの露光を行う際に用いた露光用マスクの図であり、(b)は、実際に露光を行っている際の円筒試料近傍を横から見た写真である。
図5】(a)は、図4(a)に示した露光用マスクと同様の図であり、(b)は、現像を行った後に円筒試料内面に形成されたパターンの写真である。
図6図1に示した反射ミラーを変形させた反射ミラーを備える内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図7】(a)は反射面の頂点が光軸方向から見て光軸からずれた位置に配置されている反射ミラーであり、(b)は(a)に対してさらに円錐ミラーの円錐部分の高さが低い反射ミラーであり、(c)は(a)に対してさらに円錐ミラーの円錐部分の高さが高い反射ミラーである。
図8】(a)は図1の反射ミラー30を使った場合の露光されるパターンを模式的に示す図であり、(b)は図2の反射ミラー31を使った場合の露光されるパターンを模式的に示す図である。
図9】第2実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図10】第3実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図11】第4実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図12】第5実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図13】他の実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図14】他の実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図である。
図15】露光の手順の一例を示すフロー図である。
図16】被露光物と円錐ミラーのアライメント(光軸調整)誤差のパターンへの影響について説明するための図であり、(a)は同心円の間欠パターンが2つの場合の調整用の露光マスクを示す図であり、(b)は光軸が下方向(-z方向)に円錐ミラーの頂点がずれている場合を示す図であり、(c)は光の進行方向から見て被露光物の内面に投影された光強度パターンのうち、調整用の露光マスクのマスクパターンの上下に配置する部分パターンMP、MPdのぞれぞれに対応する部分光強度パターンIP、IPdを示す図であり、(d)は円錐ミラーが光軸に対して傾斜した設置誤差を持っていた場合を示す図である。
図17】露光の手順の他の例を示すフロー図である。
図18】(a)は実施例2で用いた露光用マスクを示す図であり、(b)は転写されたパターンの写真である。
図19】露光、現像後のSUS304製円筒試料の内面を斜めから見た写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
以下、特に説明しない場合でも、一つの実施形態で説明した構成を、他の実施形態に適用してもよい。
【0026】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図を示す。
図1に示す内面露光装置100は、中空Maを有する被露光物Mの中空Maの内面Mbを露光する内面露光装置であって、光源10と、光源10と被露光物Mとの間に配置する露光用マスク20と、被露光物Mの中空Ma内に配置され、光源10から出て露光用マスク20を透過した光を中空Maの内面Mbへ反射可能な反射面30aを有する反射ミラー30と、反射ミラー30を保持する反射ミラー保持部40と、被露光物Mを支持する被露光物ステージ50と、を備える。
【0027】
<被露光物>
本実施形態に係る内面露光装置が露光する部分は、中空を有する被露光物の、その中空の内面であるが、ここで「中空」とは、図1に示す被露光物Mのように、被露光物Mを貫通するものだけでなく、一方のみ開放され、他方が有底である「穴」や、少なくとも一方もしくは一面において光を透過させる密封容器のような物も含むものとする。
露光対象としての被露光物は、中空を有する立体構造物であればよい。例えば、ステンレスや真鍮などの金属製の立体構造物を例示できる。露光の際には、被露光物は、その中空内面に感光性物質(レジスト)が所定の厚みで付いている状態である。
例えば、図には記載のないバイス等の保持機構により着脱可能な状態で保持される。
【0028】
<光源>
光源には、ハロゲンランプやキセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、X線源、電子ビーム、イオンビームなど被露光物に付着した感光性物質が感光する波長を持つ光源を用いることができる。
図1に示す内面露光装置100は、指向性の高い光源を用いる場合である。指向性が高い光源として、レーザーやX線源を例示できる。
【0029】
<露光用マスク>
露光用マスク20は、任意のパターンが描かれたもので光の透過不透過を制御するものである。図中の符号20a(符号20a1~符号20a4)は透過部分を示すものであり、符号20bは不透過部分を示すものである。例えば、遮光部分にクロムが用いられた板状のガラスやフィルムを例示できる。
【0030】
図2に、中心部分と外周部分のパターンでマスクパターンの露光量が変化することを説明するための図を示す。
反射ミラーを用いた本構成は、光軸の中心付近のマスクパターンと外周付近のマスクパターンとでは、幅が一緒のパターンの場合、円周方向に透過部の面積が異なる。このために投影されるパターンに光量差が生じてしまう。そこで、光軸中心付近のマスクパターンまでの距離をR1と外周付近のマスクパターンまでの距離をR2とすると、同時に露光する場合は、マスクにコントラスト比(透過率比)をつける必要がある。このコントラスト比は、光軸からの距離で決まる面積比でR1/R2のように単純に計算され、光軸から離れるほどマスクパターンの透過部を面積比分グレー(透過率=入射光×R1/R2)にして透過率を調整することで解消できる。
【0031】
<反射ミラー>
反射ミラー30は、光源10から出て露光用マスク20を透過した光を中空Maの内面Mbへ反射可能な反射面30aを有する。
反射ミラーの反射面の材質は、アルミニウム、金、銀、プラチナ、多層膜コートなど露光光源の波長の反射率が高いものが用いられる。
図1に示す反射ミラー30は、反射面30aが円錐形状を有するものであるが、反射面30aを多角錐形状、又は、凸球面形状としてもよい(それぞれ、「多角錐ミラー」、「凸球面ミラー」ということがある。)。
被露光物の中空の内面が円筒の場合は、円錐形状を利用し、四角筒の場合は四角錐形状を用い、多角形筒の場合は多角錐形状を用いると、反射ミラーで反射した光が歪みなく感光性樹脂に投影されるため、精度の良いパターンを投影できる。
さらに、円錐形状の反射ミラーは、特に傾斜面を精度良く加工することが難しく、反射面が波を打ったり、切削傷が入ったりする場合が多く、加工コストも高い。そこで、円錐形状の代わりに凸球面形状を用いても良い。球面の加工は光学レンズの加工と同じように、研磨で精度よくそして低コストで反射ミラーの反射面を製作することが可能である。
【0032】
反射ミラーは、反射面がその面の中で光源に最も近い頂点(反射ミラー30の場合、符号30aa)と、その頂点から、光源から遠ざかるにつれて内面に近づくように形成されてなる斜面(反射ミラー30の場合、符号30ab)とを有するものとすることができる。
【0033】
反射ミラー30の反射面30aの頂点30aaは、光軸AX方向から見て光軸AXに一致する位置に配置される。
本明細書において「光軸」とは、光源の出射面の中心Oと、その光源の出射面の中心Oから反射ミラーを見て反射ミラーの幾何中心とを結ぶ仮想的な光線をいう。ここで、「反射ミラーの幾何中心」とは反射ミラーを「光軸」に直交する面に投影した形状の幾何中心である。
反射ミラーの反射面が光軸に対して回転対称やn回対称(nは整数)である場合には、反射面の頂点は「光軸」上に配置する。本発明に係る内面露光装置が投影光学系を備える場合には、投影光学系の光軸がその「光軸」に一致するように調整される。
【0034】
図3に、被露光物として、円筒の外側からパターンの観察が可能な透明で腐食しない石英ガラスからなる円筒試料を用いて露光を行っている写真を示す。図3(a)は、円筒試料近傍を斜めから見た写真であり、図3(b)は、円筒試料近傍を横から見た写真である。反射ミラーは円錐ミラー(コーンミラー、頂角90度)を用い、露光用マスクとしては、直径が異なる2本の線幅1mmの円状ラインが同心で配置するパターン(すなわち、2本の円状ラインが1本のスペースを挟んで配置するパターン)のものを用いた。用いた内面露光装置は、後述する図9で示した構成と概略同様なものである。
【0035】
図3(a)及び(b)の写真から、円筒試料内面に2本の円状ライン((b)中のライン1、2)と1本のスペースとが明瞭に露光されていることがわかる。
その後、現像を行い、円筒試料内面へのパターン転写が確認できた。
【0036】
図4(a)に後述する実施例1で用いた露光用マスクのパターンを示す図を示す。図4(b)は、図4(a)で示した露光用マスクを用いて、図3と同じ石英ガラスからなる円筒試料の内面に、図3よりも微細なパターンの露光を行っている写真を示す。用いた露光用マスクのパターン以外は図3と同様な条件で露光を行った。
図4(a)に示した露光用マスクのパターンは、線幅0.3mmの7本の円状ラインと各ライン間のスペースからなるものであり、最外周の円状ラインの直径は10mmであり、最内周の円状ラインと最外周の円状ラインとの径方向の距離は3.9mmである。
【0037】
図4(b)の写真から、円筒試料内面に7本の円状ラインがスペースを挟んで離間して配置するパターンが明瞭に露光されていることがわかる。
【0038】
その後、現像を行い、円筒試料内面に形成されたパターンの写真を図5(b)に示す。図5(b)に示すのは、円筒試料内面の円周方向に形成されたパターンの一部を撮った写真である。図5(a)は、図4(a)に示した露光用マスクである。露光用マスクのライン&スペースのパターンに対応して、円筒試料内面にライン&スペースのパターンが形成されているのがわかる。
【0039】
図6に、反射ミラーの反射面の頂点が光軸方向から見て光軸からずれた位置に配置された反射ミラーを備えた、第1実施形態の内面露光装置の概略構成を示す断面模式図を示す。なお、この場合の、反射面の頂点が光軸方向から見て光軸からずれた位置に配置された反射ミラーとは、位置調整前に反射面の頂点が光軸からずれた位置であったものを、実際の露光の際に反射面の頂点を光軸に一致させる場合は含まず、あくまでも実際の露光時に反射面の頂点が光軸からずれた位置に配置されている構成の反射ミラーを意味する。
かかる反射ミラーには、図7(a)に示すように、単に反射面の頂点が光軸方向から見て光軸からずれた位置に配置されている反射ミラーである場合や、図7(b)、(c)に示すように、反射面の頂点が光軸方向から見て光軸からずれているだけでなく、かつ、円錐ミラーの円錐部分の高さも異なっている場合などが含まれる。図7(a)~(c)においては、わかりやすく示すために図1に示した構成と併せて図示した。図中の符号Lx、Lx、Lxはそれぞれ、円錐部分の高さを示す。
【0040】
図6に示す内面露光装置101は、反射面31aの頂点31aaが光軸AXからずれている反射ミラー31を備える。
反射ミラー31が、頂点(符号31aa)と、その頂点から、光源から遠ざかるにつれて円筒内面に近づくように形成されてなる斜面(符号31ab)とを有する点と、円錐部分の高さは反射ミラー30と同様であるが、反射面の頂点が光軸AXからずれている点が反射ミラー30と異なる。なお、図6中の符号31aba及び符号31abbは、斜面31abの別の部位を指し示す符号である。
【0041】
図6に示す反射面の頂点が光軸AXからずれた円錐ミラーを用いた場合に、反射面の頂点が光軸AXに一致する円錐ミラーを用いた場合と比べて、露光されるパターンにどのような違いが出てくるか説明する。
露光用マスクのパターンとしては、図2に示したような2本の円状ラインが1本のスペースを挟んで配置するパターンであったものとする。露光用マスクのパターンが、このような複数の円状ラインとその間のスペースからなるパターン(ライン&スペースパターン)の場合、図5(b)に示したように、円筒試料内面のレジストはライン&スペースパターンで露光され、現像後、円筒試料内面にライン&スペースパターンが形成される。
【0042】
図8(a)(b)はそれぞれ、(a)図1の反射ミラー30を使った場合、(b)図2の反射ミラー31を使った場合で、露光用マスクのライン&スペースパターンに対応して、円筒試料内面のレジストはライン&スペースパターンで露光され、現像後、円筒試料内面にライン&スペースパターンが形成される様子を模式的に示す図である。
図8中に記載の「上側」「下側」は、図中の上側(図6で符号Mbaで指示したあたり)、下側(図6で符号Mbbで指示したあたり)の部位のパターンであることを示している。
【0043】
図8(a)に示した反射ミラー30を使った場合では、露光用マスク20における透過部分20a1と透過部分20a2との間隔と、透過部分20a3と透過部分20a4との間隔が等しいことを受けて、上側でも下側でも、露光された線状パターンの間隔(スペース)はdで同じである。
これに対して、図8(b)に示した反射ミラー31を使った場合では、露光用マスク20における透過部分20a1と透過部分20a2との間隔と、透過部分20a3と透過部分20a4との間隔が等しいにもかかわらず、上側と下側では露光された線状パターンの間隔や線の幅が反射ミラーの角度の違いだけ変化する。
円錐ミラーの変形を用いた場合の露光パターンの変化は、線状パターンの間隔(スペース)の変化以外にも、光線の距離が変わることで光強度パターンの大きさに変化が出るなどの変化もある。
このように変形前のベース形状として、円錐ミラー以外に、多角錐ミラー、凸球面ミラー(後述)などの対称性の高い形状を用い、それから変形した反射ミラーを用いる場合には、変形後の露光パターン、加工パターンがイメージしやすい。変形の程度で小さい場合には変形後の露光パターン、加工パターンがよりイメージしやすい。
このように、反射面の頂点が光軸に一致しない反射ミラーを用いることによって、反射面の頂点が光軸に一致する反射ミラーを用いた場合に対して、露光パターンを変えることができる。
【0044】
図6に示した変形例は、反射面30aが円錐形状を有する反射ミラー(以下、「円錐ミラー」ということがある。)を基準にして、反射面の頂点を光軸からずらした変形したものである。このように反射面の基準形状が光軸に対して回転対称やn回対称(nは整数)である場合、例えば、円錐形状以外に、多角錐形状、又は、凸球面形状である場合(それぞれ、「多角錐ミラー」、「凸球面ミラー」ということがある。)には、それらの形状を基準にして反射面の頂点を光軸からずらした反射ミラーの変形の場合には、露光パターンの変化を予測しやすい。
そこで、以下では、このような光軸対称な反射面を基準にして反射面の頂点を光軸からずらす変形が施された反射ミラーを「光軸ずらし反射ミラー」ということがある。
特に、反射面の頂点の光軸からのずれの大きさが、反射ミラーを光軸に直交する面に投影した形状の最長径に対して5%以下の変形が施された反射ミラーを「微小光軸ずらし反射ミラー」、5%より大きく10%以下の変形が施された反射ミラーを「小光軸ずらし反射ミラー」、10%より大きく20%以下の変形が施された反射ミラーを「中光軸ずらし反射ミラー」、20%より大きい変形が施された反射ミラーを「大光軸ずらし反射ミラー」という。
【0045】
<被露光物ステージ>
被露光物ステージは被露光物を支持する。
被露光物ステージは被露光物の位置や向きを動かす移動機構(被露光物移動機構)を別体で又は一体で備えることが好ましい。
被露光物移動機構は少なくとも、光線方向に移動自在な移動機構を有する。
【0046】
図1に示す被露光物ステージ50は載置台1に載置され、z方向(xy面に対して垂直な方向)に移動可能なzステージ50bと、y軸に対して回転移動可能なアルファ回転ステージ50aと、z軸に対して回転移動可能なシータ回転ステージ50cとを備えている。
被露光物ステージ50はさらに、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージや、y方向(水平面内で、x方向に直交する方向)に移動可能なyステージ(図示せず)や、x軸に対して回転移動可能なベータ回転ステージを備えてもよい。
【0047】
<反射ミラー保持部>
反射ミラー保持部は反射ミラーを保持する。
反射ミラー保持部は、反射ミラーの位置や向きを動かす移動機構(反射ミラー移動機構)別体で又は一体で備えることが好ましい。
反射ミラー移動機構は少なくとも、光が進行する方向に移動する移動機構を有する。
【0048】
反射ミラー保持部40は載置台1に載置され、反射ミラー保持部材35を介して反射ミラー30を保持する。反射ミラー保持部40は、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージ40dと、z方向(xy面に対して垂直な方向)に移動可能なzステージ40bと、y軸に対して回転移動可能なアルファ回転ステージ40aと、z軸に対して回転移動可能なシータ回転ステージ40cとを備えている。ここでxステージ40dは、被露光物の露光範囲を決めるためのものである。
反射ミラー保持部40はさらに、y方向(水平面内で、x方向に直交する方向)に移動可能なyステージ(図示せず)や、x軸に対して回転移動可能なベータ回転ステージを備えてもよい。
【0049】
(第2実施形態)
図9に、第2実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図を示す。
第2実施形態に係る内面露光装置は、複数の光学部品から構成され、光源から出た光を適宜、拡大縮小し、平行な光束に整形して露光用マスクを照明する照明光学系と、露光用マスクを透過した光を被露光物表面に等倍、または拡大縮小して投影する投影光学系とを備える点が、第1実施形態に係る内面露光装置との主な差異である。
以下、第1実施形態に係る内面露光装置と共通する構成要素については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図9に示す内面露光装置200は、光源10ほど指向性が高くない光源10Aと、光源10Aと露光用マスク20との間に配置する照明光学系60と、露光用マスク20と、露光用マスク20と反射ミラー30との間に配置する投影光学系70と、反射ミラー30と、反射ミラー保持部42と、被露光物ステージ52と、を備える。
【0051】
<光源>
指向性が高くない光源10Aとしては、ハロゲンランプやキセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどを例示できる。
【0052】
<照明光学系>
図9に示す照明光学系60は、複数の光学部品(図9に示す例では、60a、60b、60c)から構成され、光源から出た光線を拡大、縮小を行い、所定の大きさで露光用マスクを照明する。この際、フライアイレンズやケーラー照明、ロッドレンズ等を用いてなるべく光強度を均一化して露光用マスクを照射することが好ましい。
【0053】
<投影光学系>
投影レンズは、露光用マスクの任意のパターンを被露光物表面に等倍、または拡大縮小して投影するためのものであり倍率を変更できるだけでなく、露光用マスクと被露光物表面との距離を確保することができる。さらに、焦点深度を大きく取ることができる。
図9に示す投影光学系70は、1つの投影レンズで図示しているが、複数のレンズで構成してもよい。
【0054】
<投影光学ユニット>
図9に示す内面露光装置200では、光源10Aと照明光学系60と露光用マスク20と投影光学系とが光軸を一致するように固定台2に設置された投影光学ユニット200aを備える。
固定台2としては例えば、アルミニウム合金、ステンレスや鉄などの金属や場合によってプラスチックからなるものを用いることができる。
投影光学ユニット200aは、ユニット支持部80によって支持されている。
図9に示すユニット支持部80は、投影光学ユニット200aの位置や向きを動かす移動機構(投影光学ユニット移動機構)を一体で備える。
ユニット支持部80は固定台1に載置され、z方向(xy面に対して垂直な方向)に移動可能なzステージ80bと、y軸に対して回転移動可能なアルファ回転ステージ80aと、z軸に対して回転移動可能なシータ回転ステージ80cと、固定台1に固定する固定部80dとを備えている。
ユニット支持部80はさらに、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージや、y方向(水平面内で、x方向に直交する方向)に移動可能なyステージ(図示せず)や、x軸に対して回転移動可能なベータ回転ステージを備えてもよい。
【0055】
図9に示す被露光物ステージ52は固定台1に載置され、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージ52dと、z方向(xy面に対して垂直な方向)に移動可能なzステージ52bと、y軸に対して回転移動可能なアルファ回転ステージ52aと、z軸に対して回転移動可能なシータ回転ステージ52cとを備えている。
被露光物ステージ52はさらに、y方向(水平面内で、x方向に直交する方向)に移動可能なyステージ(図示せず)や、x軸に対して回転移動可能なベータ回転ステージを備えてもよい。
【0056】
図9に示す反射ミラー保持42は固定台1に載置され、反射ミラー保持部材35を介して反射ミラー30を保持する。z方向(xy面に対して垂直な方向)に移動可能なzステージ42bと、y軸に対して回転移動可能なアルファ回転ステージ42aと、z軸に対して回転移動可能なシータ回転ステージ42cと、固定台1に固定する固定部42dとを備えている。
反射ミラー保持42はさらに、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージや、y方向(水平面内で、x方向に直交する方向)に移動可能なyステージ(図示せず)や、x軸に対して回転移動可能なベータ回転ステージを備えてもよい。
【0057】
図1に示す内面露光装置100においては、被露光物Mと反射ミラー30との間の相対移動は、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージ40dを備えた反射ミラー保持部40が担っていた。
これに対して、図9に示す内面露光装置200においては、被露光物Mと反射ミラー30との間の相対移動は、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージ52dを備えた被露光物ステージ52が担う構成である。内面露光装置200においては、xステージ52が被露光物の露光範囲を決めるためのものである。
被露光物Mと反射ミラー30との間の相対移動は、反射ミラー保持部が担う構成でも被露光物ステージでもよいし、反射ミラー保持部及び被露光物ステージの双方が相対移動する構成でもよい。
【0058】
(第3実施形態)
図10に、第3実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図を示す。
第3実施形態に係る内面露光装置は、光源と、照明光学系と、露光用マスクと、投影光学系と、反射ミラーとが光軸を一致するように透明な容器に設置された露光ユニットとして備える点が、第2実施形態に係る内面露光装置との主な差異である。
以下、第1実施形態や第2実施形態に係る内面露光装置と共通する構成要素については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図10に示す内面露光装置300は、光源10Cと、照明光学系60と、露光用マスク20と、投影光学系70と、反射ミラー30とが光軸を一致するように透明な容器3に設置された露光ユニット300aとして備える。
【0060】
透明な容器3としては例えば、ガラスやアクリル等のプラスチック、透明樹脂などからなるものを用いることができる。中空の内面に当たる光線が通る箇所だけ透明として、あとは不透明であっても良く、異なる材料や塗装などで不要な光が漏れないように施されてあってもよい。
【0061】
露光ユニット300aは、露光ユニット支持部81によって支持されている。
露光ユニット支持部81は、露光ユニット300aの位置や向きを動かす移動機構(投影光学ユニット移動機構)を一体で備える。
露光ユニット支持部81は固定台1に載置され、z方向(xy面に対して垂直な方向)に移動可能なzステージ81bと、y軸に対して回転移動可能なアルファ回転ステージ81aと、z軸に対して回転移動可能なシータ回転ステージ10cと、固定台1に固定する固定部81dとを備えている。
露光ユニット支持部81はさらに、x方向(光の進行方向、光軸方向)に移動可能なxステージや、y方向(水平面内で、x方向に直交する方向)に移動可能なyステージ(図示せず)や、x軸に対して回転移動可能なベータ回転ステージを備えてもよい。
【0062】
被露光物ステージ53は被露光物Mを支持する。
【0063】
(第4実施形態)
図11に、第4実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図を示す。
第4実施形態に係る内面露光装置は、観察光学系付きの内面露光装置であり、非感光波長領域の観察用光源と、非感光波長の光と露光光線とを合成する合成光学系と、観察するための画像取得装置とを有する。
【0064】
図11に示す内面露光装置400は、図9に示した内面露光装置200を観察光学系付きの内面露光装置に変形した場合を例示するものであり、内面露光装置200と異なる点を挙げると、非感光波長領域の観察用光源と露光用光源とを有する光源10Dと、非感光波長の光と露光光線とを合成する合成光学系としての光学フィルタ61と、観察するための画像取得装置としてはビームスプリッターまたはハーフミラー71、レンズ72及びCCD73とを有する。
観察用光源から出た光は、マスクを透過し、投影レンズと反射ミラーを介して被露光物の中空の内面にマスク像を投影する。
中空の内面に投影された像の反射光は、反射ミラーと投影レンズを介して、さらにビームスプリッターまたはハーフミラーとレンズを介してCCDに結像する。
結像した像を観察することで、被露光物の中空の内面にどのようにマスクのパターンが投影されているか観察可能である。つまり、露光前に像を確認して円錐ミラーや固定台の光軸の調整を実施することが可能となる。
調整後に、露光用光源から光を用いて、被露光物の中空の内面を露光することで、精度の良いマスクパターンを投影することが可能となる。
【0065】
(第5実施形態)
図12に、第5実施形態に係る内面露光装置の概略構成を示す断面模式図を示す。
第5実施形態に係る内面露光装置は、被露光物Mを光軸AXに対して回転する回転機構を備えたものである。
【0066】
図12に示す内面露光装置500は、図4に示した内面露光装置200に被露光物Mを光軸AXに対して回転する回転機構(不図示)を備えた構成に変形した場合を例示するものである。
被露光物Mを光軸AXに対して回転する回転機構としては公知の立体構造物を回転する回転機構を採用できる。
【0067】
(他の実施形態)
上記の実施形態において、露光用マスクの代わりに、液晶表示素子(LCD)(図13参照)やDMD(Digital Mirror Device)表示素子(図14参照)を備えてもよい。
反射ミラーを用いた本構成は、光軸の中心付近のマスクパターンと周辺付近のマスクパターンとでは、円周方向に透過部の面積が異なっている。このために投影されるパターンに光量差が生じてしまう。そこで、光軸中心のマスクパターンと周辺のマスクパターンを同時に露光する場合は、マスクにコントラスト差(透過率差)をつける必要がある。このコントラスト差は、光軸からの距離で決まる面積比で単純に計算され、マスクパターンの透過部を液晶表示素子やDMD表示素子を用いて任意のコントラストに設定し透過率を調整することで均一な投影パターンを得ることができる。
【0068】
(その他の構成)
上記実施形態において、不図示のPCにより光源のON、OFFおよび各ステージの移動を制御することができる。各ステージの移動は手動でも可能であるが、後述するスキャン露光をする場合は被露光物に取り付いているxステージを電動ステージとする必要があるため、PCやコントローラで制御する必要がある。
【0069】
(作用効果)
本発明に係る内面露光装置では、円筒状や角筒状などの中空の被露光物の内側表面にリソグラフィを施して感光性物質のパターンを形成することができる。これらの感光性物質をマスキング材として被露光物の内側表面にエッチングを施したり、感光性物質のパターンを雄型としてめっきを施すことによって、ナット状の部品やスプライン筒状の部品等のマイクロ部品を製造することができる。
【0070】
さらに、本発明に係る内面露光装置では従来技術に対して以下のメリットがある。
中空の被露光物の内側表面の円周方向へパターンを一括で露光することができる。このため、早くに加工ができる。
被露光物および/または投影光学系を間欠的に相対移動させることで、ステップアンドリピート露光を実施することが可能であり、また、走査移動することでスキャン露光をすることが可能になる。このため、中空の被露光物の長手方向の内側表面へ連続して露光ができる。
スキャン露光の場合、露光用マスクは同期して動く必要があるため、ガラスやフィルム状のマスクではなく、液晶表示素子やDMD(Digital Mirror Device)等をマスクの代わりに用いて、露光箇所に合わせてマスクの表示が変わるようにすることで、中空の被露光物の長手方向の内側表面へ連続した露光ができる。
投影光学系内に観察光学系を設置することで、被露光物と投影光学系の位置決めや、転写するパターンの確認を行うことが可能となり、精度の高いパターンを転写することができる。
【0071】
(露光の手順)
図15のフロー図を用いて、一例としてステップ露光の手順を説明する。
まず準備工程として、ステップS1では、被露光物に感光性物質を付着させる。感光性物質はレジストと呼ばれ、特定の波長帯域の光が当たると反応する樹脂である。例えばSU-8等のネガ型のレジストを用いると光が当たったところだけが感光して、現像処理により光が当たったところのレジストパターンが残る。THMR-iP3300等のポジ型のレジストを用いると光が当たったところだけが感光して、現状処理により光が当たったところのレジストパターンが除去される。付着方法は、感光性物質を噴霧または感光性物質に漬けてから引き抜く方法(ディップコート法)により被露光物の内面に均一に付着することができる。膜の厚みは1μmから数10μmと任意に調整可能である。
【0072】
ステップS2では、あらかじめ被露光物と同等の形状のものを露光装置に設置して、投影光学系ユニット、被露光物、反射ミラーの位置関係を調整する。調整方法は、露光用マスクを設置して、被露光物と同等形状のものに投影された光強度パターンを観察して実施する。被露光物の内面が観察しにくい場合は、被露光物と同等形状で透明な材料のものを代替として用いて、外部から光強度パターンを確認して調整を行う。
透明な材料として、ガラス管やアクリルなどのプラスチック管などが挙げられる。
【0073】
図16を用いて、円錐ミラーの場合を例に、被露光物と円錐ミラーのアライメント(光軸調整)誤差のパターンへの影響について説明する。
光軸調整は、同心円の間欠パターンが複数描かれた調整用の露光マスクを設置して、被露光物と同等形状のものに投影された光強度パターンを観察して実施する。図16(a)に、同心円の間欠パターンが2つの場合の調整用の露光マスクを示す。
【0074】
調整用の露光マスクの中心部分のパターンは、円錐ミラーと被露光物との光軸調整に対して感度が良い。このため、光軸が上下左右にずれていると、被露光物の内面に投影される光強度パターンが円周方向に大きさ(長さ)が伸びて、さらに光線の距離が変わることで光強度パターンの大きさ(太さ)に変化が出る。図16(b)は、光軸が下方向(-z方向)に円錐ミラーの頂点がずれている場合を図示したものである。図16(c)は、光の進行方向から見て被露光物の内面に投影された光強度パターンのうち、調整用の露光マスクのマスクパターンの上下に配置する部分パターンMP、MPdのぞれぞれに対応する部分光強度パターンIP、IPdを示すものである。部分パターンMP対応する部分光強度パターンIPは円周方向に大きさが縮み、部分パターンMPdに対応する部分光強度パターンIPdは円周方向に大きさが伸びている。また、被露光物の内面における位置もずれる。
【0075】
図16(d)は、円錐ミラーが光軸に対して傾斜した設置誤差を持っていた場合を図示したものである。この場合、被露光物の内面に投影される光強度パターンの位置が上下左右で変化が出る。この変化を観察して、誤差が小さく追い込むように光軸調整を行う。
【0076】
ステップS3では、被露光物を固定するためのチャック(不図示)に取り付ける。
ステップS4では、所定の露光用マスクを設置する。
ステップS5では、光源の電源をONして露光用マスクに所定の時間だけ光を照射する。
【0077】
ステップS6では、被露光物の他の箇所へ光を投影するか判断する。
ステップS7で示すように、他の箇所へ光を投影する場合は、被露光物を取り付けた状態で、被露光物に設置してあるステージを用いて、被露光物の軸方向および/または軸に対して回転する方向に移動させて、他の箇所へ露光を繰り返し行う。必要に応じて露光用マスクマスクパターンを変更する。
【0078】
ステップS8では、被露光物を着脱して現像処理を行う。現像処理により、所定の感光性物質のパターンが形成される。
ステップS9では、必要に応じて、エッチング処理やめっきを施す。感光性物質のパターンはエッチングのマスキング材として利用できるために被露光物から所定のパターンを除去することができる。また、めっきをすることで感光性物質のパターンで覆われているところにはめっきが直接付着せず、綺麗な所定の雄パターンを作ることができる。
【0079】
以上のステップでは、ベークやポストエクスポージャーベイクなどの一般的に露光で行われる詳細は省略している。
【0080】
感光性樹脂パターンを連続的に転写したい場合は、Sステップ6において、光源の光を照射したまま連続的に被露光物を動かすスキャン露光を実施する。間欠したマスクを用いて被露光物を光軸方向に水平移動させることで直線的なパターンを露光できる。また、加えて光軸方向に対して回転させることでスパイラル状や水平移動を往復運動にすることで網目状の複雑なパターンを円周状に露光することができる。
【0081】
以上のステップにより、被露光物の内面に円周状に一括でパターンを投影することができる。
【0082】
図16に、他の例のフロー図を示す。
図16に示すフローの場合には、反射ミラーと被露光物との相対位置が変わるようにステージを移動・回転しながら露光する例である。
【実施例0083】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
図9に概略を示した円筒内面露光装置を使用した。装置の長さは約500mm、奥行き約100mm、高さ約200mmである。光源にメタルハライドランプ(主波長440nm)を使用し、ファイバーライトガイドを用いて露光装置に光を導いている。さらに、光強度分布を均一にするためロッドレンズを介してマスクを照明している。反射ミラーには、全長10mm、外径10mm、頂角90°の円錐ミラーを用いた。投影用のレンズは、作動距離の長く解像度の高い対物レンズを使用した。対物レンズの倍率は1、開口数は0.03である。平面露光時の解像度Rは、レジスト膜厚が1μm程度の場合に以下の式で示される。
【数1】
である。また、焦点深度DOFは以下の式で示される。kは1と仮定している。
【数2】
作動距離が長いので焦点深度は深く、十分な値である。
【0085】
試料保持部にはあおりを調整できるようにLBE(Laser Beam Expander)を使用し、反射ミラー保持部には、X軸ステージとZ軸ステージを取り付けた。また、各保持部には高さの調整可能なロッドスタンドを採用した。
【0086】
用いた露光用マスクは、図5(a)に示した通りである。この露光用マスクは、遮光部分にクロムが用いられた板状のガラスに、幅0.3mmで同心円で異なる直径の6個の円の透過部を配置したパターン(0.3mmライン&スペースパターン)が描かれたものである。
【0087】
試料(被露光物)として、石英ガラス製の内径14mm、外径16.5mmの円筒試料を使用した。超音波洗浄を行い、試料表面の汚れを除去した後、ネガ型のレジストPMER N-CA3000を膜厚10μmで塗布した。
【0088】
準備した試料を円筒内面露光装置にて試料内面に露光を実施した。続いて現像を行ってパターンを形成した。現像には、現像液P-7g(東京応化工業)を使用した。
【0089】
現像後の試料を実体顕微鏡で観察した結果は、図5(b)に示した通りである。ラインパターンが転写できていることがわかる。
【0090】
図5(a)に示したような、同心円で異なる直径の円の透過部を配置したライン&スペースパターンの露光用マスクについて、さらにさらに微細な幅0.1mm(100μm)、幅0.05mm(50μm)のものについても、同じ石英ガラス製円筒試料で露光実験を行い、ライン&スペースパターンの転写が可能であることを確認した。
【0091】
[実施例2]
次に、露光用マスクとして、図17(a)に示すように、放射状に中心から離れるほど幅が広い矩形が間欠的に離間して配置するパターンのものを利用した。それ以外の条件は、実施例1と同じ条件で露光、現像を行った。線幅は実施例1と同様に0.3mmであった。
図17(b)に、その結果、得られた転写パターンを示す。
円周方向に間欠した矩形のパターンが転写されていることがわかる。
【0092】
[実施例3]
次に、露光用マスクとして、露光用マスクとしては、直径が異なる2本の線幅0.1mmの円状ラインが同心で配置するパターン(すなわち、2本の円状ラインが1本のスペースを挟んで配置するライン&スペースパターン)のものを用い、試料(被露光物)として、SUS304製の内径14mm、外径15mmの円筒試料を用いた以外は、実施例1と同じ条件で露光、現像を行った。
図18は、露光、現像後のSUS304製円筒試料の内面を斜めから見た写真である。中に円錐ミラー(コーンミラー)の頂点近傍も見えている。
ライン&スペースパターンが転写されていることがわかる。
【0093】
実施例1~3で示したように、本発明の内面露光装置を用いて、中空の被露光物の中空内面に露光用マスクのパターンに対応する転写パターンを形成できることがわかった。
【符号の説明】
【0094】
10、10A、10C、10D 光源
20 露光用マスク
30、31 反射ミラー
30a、31a 反射面
30aa、31aa 頂点
30ab、31ab 斜面
40 反射ミラー保持部
50 被露光物ステージ
60 照明光学系
70 投影光学系
100、101、200、300、400、500 内面露光装置
200a 投影光学ユニット
300a 露光ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19