(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011717
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】生分解性ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 167/04 20060101AFI20230117BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J167/04 ZBP
C08L101/16
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022170574
(22)【出願日】2022-10-25
(62)【分割の表示】P 2019539172の分割
【原出願日】2018-01-19
(31)【優先権主張番号】62/448,483
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521514831
【氏名又は名称】メレディアン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャラウェイ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ワン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,ラシェル
(72)【発明者】
【氏名】グラブス・サード,ジョー・ビー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された熱安定性、ならびに高含量の生物由来および/または生分解性成分を有するホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】(1)約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントから約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;(2)約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;(3)1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および(4)酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー、を含むホットメルト接着剤。すべての前記重量パーセントはホットメルト接着剤の総重量に基づく。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントから約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;
約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;
1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および
酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー;
を含んでなり、すべての重量パーセントはホットメルト接着剤の総重量に基づく、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
ホットメルト接着剤が、約143℃の温度で約1000センチポイズから約6000センチポイズの粘度を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
乳酸オリゴマーまたはポリマーが、約280℃の温度で約350センチポイズから約450センチポイズの粘度を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
ポリ乳酸が、約143℃の温度で約1800センチポイズから約2200センチポイズの粘度を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
ポリ乳酸が、ポリ乳酸とカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基をさらに含んでなる、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
ポリエステルが、約216℃の温度で約15,000センチポイズから約35,000センチポイズの粘度を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
ポリエステルが、約55,000から約72,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】
ポリエステルが、ポリ乳酸とカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基をさらに含んでなる、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】
ポリエステルが、ポリブチレン(サクシネート-コ-アジペート)(“PBSA”)である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項10】
モノ不飽和短鎖脂肪酸がクロトン酸である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項11】
少なくとも第1面を有する基材;および
基材の第1面の少なくとも一部に適用されたホットメルト接着剤コーティング
を含んでなる接着剤被覆基材であって、
ホットメルト接着剤コーティングが:
約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントから約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;
約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;
1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および
酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー;
を含んでなり、すべての重量パーセントはホットメルト接着剤の総重量に基づく、前記基材。
【請求項12】
ホットメルト接着剤が、約143℃の温度で約1000センチポイズから約6000センチポイズの粘度を有する、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項13】
乳酸オリゴマーまたはポリマーが、約280℃の温度で約350センチポイズから約450センチポイズの粘度を有する、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項14】
ポリ乳酸が、約143℃の温度で約1800センチポイズから約2200センチポイズの粘度を有する、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項15】
ポリ乳酸が、ポリ乳酸とカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基をさらに含んでなる、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項16】
ポリエステルが、約216℃の温度で約15,000センチポイズから約35,000センチポイズの粘度を有する、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項17】
ポリエステルが、約55,000から約72,000の重量平均分子量を有する、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項18】
ポリエステルが、ポリ乳酸とカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基をさらに含んでなる、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項19】
ポリエステルが、ポリブチレン(サクシネート-コ-アジペート)(“PBSA”)である、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項20】
モノ不飽和短鎖脂肪酸がクロトン酸である、請求項11に記載の接着剤被覆基材。
【請求項21】
ホットメルト接着剤の作成法であって:
約140℃から約175℃の温度で
約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントか
ら約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;
約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセ
ントから約75重量パーセントのポリ乳酸;
1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形
成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;
および
酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸
との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー;
を含んでなる混合物をメルトブレンドし、そして
さらに該混合物を、約1重量パーセントから約5重量パーセントのカルボン酸またはカルボン酸誘導体と約140℃から約175℃の温度でブレンドして、安定化されたホットメルト接着剤を提供する工程を含んでなり、すべての重量パーセントがホットメルト接着剤の総重量に基づく、前記作成法。
【請求項22】
カルボン酸またはカルボン酸誘導体が、酸無水物を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ポリエステルが、約55,000から約72,000の重量平均分子量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
ポリエステルが、ポリブチレン(サクシネート-コ-アジペート)(“PBSA”)である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
モノ不飽和短鎖脂肪酸がクロトン酸である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本出願は、2017年1月20日に出願されたより早い出願日の同時係属である米国特許仮出願第62/448,483号明細書の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は一般にホットメルト接着剤に関し、そして特に改善された熱安定性、ならびに高含量の生物由来(bio-sourced)および/または生分解性成分を有するホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0003】
ホットメルト接着剤は、広い様々な基材を結合するために工業的に使用される。ホットメルト接着剤の主な利点は、それらが接着組成物中に液体担体を含まない点である。液体担体無しでは適用後に乾燥期間の必要が無いので、生産ラインの速度を上げることができる。液体担体として有機溶剤が使用される状況では、それらの排除が使用に伴う環境的および人的リスクを下げる。また液体担体の排除は、輸送および貯蔵するために接着剤の重量および嵩を下げる。
【0004】
ホットメルト接着剤は一般に融解され、そして次いで接着剤の適用温度に近い温度で加熱容器中にてある期間、融解が保たれている。接着剤が融解状態に保たれている期間は、たった数時間から数日の長さの範囲となり得る。石油系成分に由来するホットメルト接着剤について、この長期化した加熱時間が接着剤の完全性に幾つかの問題を生じる。
【0005】
それでもなお、環境的および健康上の関心から生分解性、リサイクル可能および/または生物由来の成分をホットメルト接着剤組成物に包含することが望まれている。しかし生物由来および/または生分解性の成分に由来する接着剤については、接着剤に強度を与え、そして分解反応を起こし易いことが判明したポリマー成分が、上記適用期間中および結合が形成された後の両方で認識された。結果として、生物由来成分に由来するホットメルト接着剤は、加熱された融解状態で長期間維持された場合に、一般にかなり低い熱安定性を表す。このために、そのようなホットメルト接着剤の工業的に成功裏の応用は、今日までにあったとしてもわずかである。
【0006】
したがって、従来のホットメルト接着剤組成物に比べて熱安定性をも示す、高含量の生物由来および/または生分解性成分を包含したホットメルト接着剤組成物を提供することが有利となり得る。
【発明の概要】
【0007】
第1の観点では、本開示はホットメルト接着剤組成物を提供する。1つの態様によれば、ホットメルト接着剤は少なくとも以下の成分を含む:(1)約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントから約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;(2)約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;(3)1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および(4)酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー。すべての前記重量パーセントはホットメルト接着剤組成物の総重量に基づく。
【0008】
本開示の特定の態様では、ホットメルト接着剤が、約143℃の温度で約1000センチポイズから約6000センチポイズの粘度を有することが好ましい。より好ましくはホットメルト接着剤は、約143℃の温度で約2000センチポイズから約4000センチポイズの粘度を有し、そして最も好ましくは約143℃の温度で約2000センチポイズから約3000センチポイズの粘度を有する。
【0009】
本開示の特定の態様では、乳酸オリゴマーまたはポリマーは約280℃の温度で約350センチポイズから約450センチポイズの粘度を有することが好ましい。
【0010】
本開示の特定の態様では、ポリ乳酸が約143℃の温度で約1800センチポイズから約2200センチポイズの粘度を有することが好ましい。
【0011】
本開示の幾つかの態様では、ポリ乳酸が、ポリ乳酸とカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基(polymer capping
group)も含む。より好ましくは、ポリマーキャッピング基がポリ乳酸と酸無水物との反応により形成される。最も好ましくは、酸無水物がプロピオン酸無水物である。
【0012】
本開示の1つの態様では、ポリエステルが約216℃の温度で約15,000センチポイズから約35,000センチポイズの粘度を有することが好ましい。また本開示の特定の態様では、ポリエステルが約55,000から約72,000の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0013】
本開示の幾つかの態様では、ポリエステルはまた、ポリエステルとカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基も含む。より好ましくは、ポリマーキャッピング基はポリエステルと酸無水物との反応により形成される。最も好ましくは酸無水物がプロピオン酸無水物である。
【0014】
本開示の幾つかの態様では、ポリエステルがポリブチレン(サクシネート-コ-アジペート)(“PBSA”)である。本開示の特定の態様では、PBSAの1もしくは複数のジカルボン酸が約10モルパーセントから約30モルパーセントのアジピン酸、および約70モルパーセントから約90モルパーセントのコハク酸を含むことが好ましい。
【0015】
本開示の幾つかの態様では、モノ不飽和短鎖脂肪酸がクロトン酸であることが好ましい。
【0016】
第2の観点では、本開示は接着剤被覆基材を提供する。1つの態様によれば、接着剤被覆基材は少なくとも第1面を有する基材;および基材の第1面の少なくとも一部に適用されたホットメルト接着剤コーティングを含む。ホットメルト接着剤は少なくとも以下の成分を含む:(1)約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントから約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;(2)約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;(3)1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および(4)酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー。すべての前記重量パーセントはホットメルト接着剤組成物の総重量に基づく。
【0017】
別の観点では、本開示はホットメルト接着剤の作成法を提供する。1つの態様によればこの方法は、約140℃から約175℃の温度で少なくとも以下の成分:(1)約1500から約3000の重量平均分子量を有する約10重量パーセントから約20重量パーセ
ントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;(2)約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;(3)1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および(4)酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー;を含む混合物をメルトブレンドする第1工程を含む。
【0018】
またこの方法は、さらに混合物を、約1重量パーセントから約5重量パーセントのカルボン酸またはカルボン酸誘導体と、約140℃から約175℃の温度でブレンドして安定化されたホットメルト接着剤を提供する第2工程を含む。すべての前記重量パーセントはホットメルト接着剤の総重量に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示はホットメルト接着剤組成物を提供する。1つの態様によれば、ホットメルト接着剤は一般に少なくとも以下の成分を含む:(1)約10重量パーセントから約20重量パーセントの乳酸オリゴマーまたはポリマー;(2)約40重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸;(3)1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成された約20重量パーセントから約35重量パーセントのポリエステル;および(4)酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸との約0.5重量パーセントから約5重量パーセントのコポリマー。すべての前記重量パーセントはホットメルト接着剤組成物の総重量に基づく。
【0020】
ホットメルト接着剤組成物の第1成分は、低分子量乳酸オリゴマーまたはポリマーである。一般に乳酸オリゴマーまたはポリマーは、約1500から約3000の重量平均分子量を有する。乳酸オリゴマーまたはポリマーは一般に、D-型エナンチオマーに比べてL-型エナンチオマーの濃度が高い乳酸出発材料から形成される。好ましくは、乳酸出発材料は少なくとも97%がL-型乳酸である。
【0021】
乳酸オリゴマーまたはポリマーは一般に、ホットメルト接着剤組成物の10重量パーセントから約20重量パーセントを構成する。好ましくはそれ自体を測定するならば、乳酸オリゴマーまたはポリマーは約280℃の温度で約350センチポイズから約450センチポイズの粘度を現す。機能的には、ホットメルト接着剤中で乳酸オリゴマーまたはポリマーは増粘剤として作用し、基材の粘着性および湿潤性を改善する。
【0022】
ホットメルト接着剤組成物の第2成分は、ポリ乳酸である。一般にポリ乳酸は約10,000から約18,000の重量平均分子量を有する。ポリ乳酸は一般にホットメルト接着剤組成物の40重量パーセントから約75重量パーセントを構成する。好ましくはそれ自体を測定するならば、ポリ乳酸は約143℃の温度で約1800センチポイズから約2200センチポイズの粘度を現わす。
【0023】
本開示の幾つかの態様では、ポリ乳酸はまたポリ乳酸とカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基も含む。より好ましくは、ポリマーキャッピング基はポリ乳酸と酸無水物との反応により形成される。最も好ましくは、酸無水物がプロピオン酸無水物である。
【0024】
ポリ乳酸はホットメルト接着剤中で基本材料として機能する。他の成分より高い分子量を有し、そして大きな重量パーセントで存在するので、ポリ乳酸は組成物の骨格として作用し、そして接着剤の主要な特性を提供する。
【0025】
ホットメルト接着剤組成物の第3成分は、1もしくは複数のジオールと1もしくは複数のジカルボン酸との共重合から形成されたポリエステルである。一般にポリエステルは、約55,000から約72,000の重量平均分子量を有する。ポリエステルは一般にホットメルト接着剤組成物の20重量パーセントから約35重量パーセントを構成する。好ましくはそれ自体を測定した場合、ポリエステルは約216℃の温度で約15,000センチポイズから約35,000センチポイズの粘度を現わす。機能的にはホットメルト接着剤中で、ジオール/二酸ポリマーは、組成物の改善された可塑性、引張強度、および熱耐性を提供する。
【0026】
ポリエステルのジオール部分に使用され得る適切なジオールには、エチレン、プロピレン、ブチレン、およびヘキシレンを含む。多数のジオールの組み合わせもポリエステルに包含することができる。ポリエステルの二酸部分に使用され得る適切な二酸には、2から12個の炭素原子を有するジカルボン酸を含む。
【0027】
本開示による好適な態様では、ポリエステルがブチレン、コハク酸およびアジピン酸から形成された部分を含むことができる。すなわちポリエステルは、ポリブチレン(サクシネート-コ-アジペート)または“PBSA”でよい。これらの態様では、PBSA中の1もしくは複数のジカルボン酸が、約10モルパーセントから約30モルパーセントのアジピン酸、および約70モルパーセントから約90モルパーセントのコハク酸を含むことが好ましい。
【0028】
ポリ乳酸のように、幾つかの場合ではポリエステルがポリエステルとカルボン酸またはカルボン酸誘導体との反応により形成されるポリマーキャッピング基も含むことができる。より好ましくは、ポリマーキャッピング基がポリエステルと酸無水物との反応により形成される。最も好ましくは、酸無水物がプロピオン酸無水物である。
【0029】
ホットメルト接着剤組成物の第4成分は、酢酸ビニルと脂肪酸が4から12個の炭素原子を有するモノ不飽和短鎖脂肪酸とのコポリマーである。一般にこのコポリマーは、ホットメルト接着剤組成物の約0.5重量パーセントから約5重量パーセントを構成する。好適な態様では、モノ不飽和短鎖脂肪酸はクロトン酸であることが好ましい。すなわちコポリマーは酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマーであることが好ましい。適切なコポリマーはWACKET VINNAPAS C305という登録商標で販売されている。
【0030】
酢酸ビニル/脂肪酸コポリマーは、特に接着剤が高湿状態に暴露された時に、ホットメルト接着剤中で配合物の凝集及び接着強度を改善するように機能する。
【0031】
幾つかの事例では、ポリマー組成物は1もしくは複数のさらなる添加剤を含んでもよい。例えば、ポリマー組成物は、フィラー、顔料、凝結防止剤、脱泡剤、剥離剤、酸化防止剤、安定化剤、ワックス、可塑剤、殺生物剤および帯電防止剤からなる群から選択される1もしくは複数の添加剤を含むことができる。
【0032】
ホットメルト接着剤のできる限り多くの成分が再生可能資源に由来することが好ましい。そのような成分は生物由来であると言うことができる。またホットメルト接着剤のできる限り多くの成分が生分解性および/または再利用可能であるとことが好ましい。しかし適切なホットメルト接着剤をこれらの材料のみを使用して調製することは難しい。それにもかかわらず、本開示の特定の態様によれば、ホットメルト接着剤の成分の少なくとも50重量パーセントが生物由来である。より好ましくは、ホットメルト接着剤の成分の少なくとも75重量パーセントが生物由来である。特に少なくとも乳酸オリゴマーまたはポリマー、およびポリ乳酸は一般に再生可能な資源に由来する。幾つかの事例ではポリエステルも再生可能な資源に由来することができる。例えば、PBSAは再生可能な資源に由来
することができる。
【0033】
さらに本開示の特定の態様によれば、ホットメルト接着剤の成分の少なくとも50重量パーセントが生分解性である。より好ましくは、ホットメルト接着剤の成分の少なくとも75重量パーセントが生分解性である。特に少なくとも乳酸オリゴマーまたはポリマー、およびポリ乳酸は一般に生分解性である。幾つかの事例では、ポリエステルもPBSAのような生分解性ポリマーであることができる。
【0034】
一般にホットメルト接着剤組成物は、典型的にはその成分を合わせ、そしてメルトブレンドすることにより調製される。例えば第1(そして幾つかの例では単独)工程で、乳酸オリゴマーまたはポリマー、ポリ乳酸、ジオール/二酸ポリエステル、および酢酸ビニルとモノ不飽和短鎖脂肪酸のコポリマーは合わされ、そして一緒にメルトブレンドされることができる。メルトブレンドは一般に、全ての成分を融解するために十分な温度、典型的には約140から175℃で行われる。
【0035】
一般に、混合する時の成分の添加順序は接着剤組成物の最終的特性に影響を及ぼさないと考えられる。また方法には混合物を約1重量パーセントから約5重量パーセントのカルボン酸またはカルボン酸誘導体と、約140から約175℃の温度でさらにブレンドして安定化されたホットメルト接着剤を提供する第2工程を含む。全ての前記重量パーセントは、ホットメルト接着剤の総重量に基づく。
【0036】
場合により幾つかの事例では、ホットメルト接着剤を調製する方法は、前記混合物を約1重量パーセントから約5重量パーセントのカルボン酸またはカルボン酸誘導体と、約140から約175℃の温度でさらにブレンドする第2工程を含むこともできる。酸無水物はこの目的に好適なカルボン酸誘導体であり、そしてプロピオン酸無水物が特に好適である。これらの温度でのカルボン酸またはカルボン酸誘導体の添加は、
ポリ乳酸および/またはジオール/二酸ポリエステルとの反応、およびポリ乳酸および/またはジオール/二酸ポリエステル分子の末端に前記ポリマーキャッピング基の形成を導くと考えられる。これらポリマーキャッピング基の形成は、以下にさらに記載するようにホットメルト接着剤組成物の熱安定性を改善すると考えられる。
【0037】
幾つかの態様では、混合工程のいずれか、または両方が例えば高剪断ミキサーのような適切な撹拌機を備えた加熱タンクを使用して行われることができる。しかし別法では、ホットメルト接着剤組成物の成分は押出し機に加えられ、そして押出し機内で加熱そして混合された後、ダイを通して押し出されることができる。所望により、ホットメルト接着剤組成物は適切な基材上に直接押出すことができる。しかしさらに一般的には、ホットメルト接着剤組成物は最初にペレットまたは他の任意の所望の形に押し出され、そして次に冷却されて固化する。一旦ペレットになり、または他の固体形になれば、ホットメルト接着剤は保存および/または輸送のために包装することができる。ペレットは最終的には再加熱され、そして融解され、そして第二の押出し工程中に適切な基材に適用される。
【0038】
一旦上記のように調製すれば、本開示のホットメルト接着剤は一般に約143℃の温度で約1000センチポイズから約6000センチポイズの粘度を有する。より好ましくは、ホットメルト接着剤は約143℃の温度で約2000センチポイズから約4000センチポイズの粘度を有し、そして最も好ましくは約143℃の温度で約2000センチポイズから約3000センチポイズの粘度を有する。
【0039】
有利なことに、ホットメルト接着剤組成物は高温に暴露された時に改善された安定性を現わすことが分かった。例えば、ホットメルト接着剤組成物は、接着剤組成物の有意な分解が組成物を不安定にする前に少なくとも4から12時間、粘度を安定に維持することが
分かった。好ましくは、ホットメルト接着剤組成物は約8時間から約16時間の間、約135℃から約145℃の温度で保持された後、約4000から約5000センチポイズの粘度を保つ。より好ましくは、ホットメルト接着剤組成物は少なくとも48時間の間、約135℃から約145℃の温度で保持された後、約4000から約5000センチポイズの粘度を保つ。
【0040】
一旦調製されれば、ホットメルト接着剤組成物は良好な流動性を確実にするために少なくとも140℃の温度に加熱される。次いでホットメルト接着剤組成物を、任意の適切な基材面に適用することができる。例えばホットメルト接着剤は紙またはボール紙に適用することができる。ホットメルト接着剤が適用される基材は、温かい、または冷たい両方の食品を提供するための物品(例えば皿、コップおよびボウル)、ボール紙の包装、および冷凍食品に使用されるものを含むカートンまたはケースシール(case seal)に使用することができる。
【0041】
ホットメルト接着剤を基材に適用するための適切な方法には、押出ノズルによる適用、ハンドガン(hand gun)による適用、ロール塗布による適用およびプロファイルラッピング(profile wrapping)による適用を含む。
【0042】
一旦ホットメルト接着剤が基材に適用され、そして冷却されたら、接着剤は良好な初期結合強度を現わすことが好ましい。
【実施例0043】
以下の非限定的例は、本発明の様々な追加の観点を具体的に説明する。特に示さない限り、温度は摂氏であり百分率は重量による。
【0044】
実施例1&2
エンドキャップを含むホットメルト接着剤組成物の調製
ポリ乳酸は、約14,879の重量平均分子量を有した。乳酸オリゴマーは、約1645の重量平均分子量を有した。Vinnapas C305は、酢酸ビニルとクロトン酸
とのコポリマーである。
反応槽の圧は1トルまで下げ、そして一晩静置していかなる表面水も除去した。次いで窒素下で、全ての材料が融解し、そして均一にブレンドされるまで反応槽を150℃で3時間、加熱した。プロピオン酸無水物(55.9グラム)を反応槽に加え、そして2時間撹拌し、その後、圧をゆっくりと2-5トルまで下げていかなる余分なプロピオン酸無水物も除去した。接着剤生成物は、褐色固体として集めた。最終的な接着剤の重量平均分子量(Mw)は36447と測定され、そして多分散性は4.02になると測定された。