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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117182
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】CNT製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/16 20170101AFI20230816BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20230816BHJP
   C01B 32/162 20170101ALI20230816BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20230816BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20230816BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230816BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C01B32/16
C01B32/168
C01B32/162
C23C16/26
C23C16/56
C08K3/04
C08L101/00
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019754
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000168632
【氏名又は名称】高圧ガス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】勝見 涼一
(72)【発明者】
【氏名】榊原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】福地 真也
(72)【発明者】
【氏名】井上 翼
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
4K030
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB01
4G146AB06
4G146AB07
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC03B
4G146AC15B
4G146AC16B
4G146AC26B
4G146AC27B
4G146AD17
4G146AD19
4G146AD21
4G146AD28
4G146BA12
4G146BA48
4G146BB23
4G146BC07
4G146BC09
4G146BC13
4G146BC24
4G146BC25
4G146BC28
4G146BC32B
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC34A
4G146BC35A
4G146BC36A
4G146BC37B
4G146BC38A
4G146BC38B
4G146BC44
4G146CA20
4G146CB02
4G146CB10
4G146CB19
4G146CB26
4G146CB35
4G146CB40
4G146DA07
4G146DA27
4G146DA29
4J002AA001
4J002AA011
4J002AA021
4J002BC021
4J002BC061
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4J002CC181
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4J002CF211
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4J002CG011
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4J002FD116
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA27
4K030CA02
4K030CA04
4K030CA05
4K030CA06
4K030DA08
4K030FA10
4K030JA09
4K030JA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板上に成長したCNTを基板から剥離又は引き出す際における基板上へのCNTの不均一な残存の抑制。
【解決手段】基板を含む反応室に原料ガスを供給し、成長温度及び成長圧力の下、前記基板上にCNTを成長させる成長工程と、前記原料ガスを排出して前記原料ガス圧を前記成長圧力の5%以上95%以下である低減圧力にまで低減させる排出工程と、所定時間、前記原料ガス圧を前記低減圧力の範囲で保持する保持工程と、を含む、化学気相成長法を用いるCNT合成プロセスを含む、CNT製品の製造方法。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を含む反応室に原料ガスを供給し、成長温度及び成長圧力の下、前記基板上にCNTを成長させる成長工程と、
前記原料ガスを排出して前記原料ガス圧を前記成長圧力の5%以上95%以下である低減圧力にまで低減させる排出工程と、
所定時間、前記原料ガス圧を前記低減圧力の範囲で保持する保持工程と、
を含む、化学気相成長法を用いるCNT合成プロセスを含む、CNT製品の製造方法。
【請求項2】
前記保持工程において成長温度を保持する、請求項1に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項3】
反応触媒として遷移金属元素のハロゲン化物を用いる、請求項1又は2に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスの供給と同時に酸素原子を有する炭化水素及び水素からなる群から選択される少なくとも一の第二ガスを供給する、1~3のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項5】
前記成長工程における、前記成長温度が500℃以上、前記原料ガス圧が1Torr以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項6】
前記低減圧力が前記成長圧力の30%以上80%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項7】
前記保持工程後、反応室雰囲気温度を降下させる降温工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項8】
前記保持工程後、前記原料ガスを排出して原料ガス圧を0.1Torr以下とする第二排出工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項9】
前記第二排出工程は前記降温工程と同時に行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項10】
前記基板上に成長したCNTを前記基板から剥離する剥離工程を含むCNTアレイ製造プロセスを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項11】
前記基板上に成長したCNTをCNTウェブとして前記基板から引き出す引き出し工程を含むCNT繊維製品製造プロセスを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項12】
前記基板の両面にCNTを成長させる、請求項1~11のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項13】
前記基板として両面研磨した基板を用いる、請求項1~12のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項14】
前記反応室が複数の前記基板を含み、複数の前記基板間の距離は各基板から成長した前記CNTが接触しない範囲で最小である、請求項1~13のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
【請求項15】
CNTの集合体であるCNT製品であって、前記CNTのうち複数のCNT端が端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である先細り構造を形成している、CNT製品。
【請求項16】
前記CNT製品がCNTの配向集合体であるCNTアレイであって、一面において複数のCNT端が、各端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である先細り構造を形成している、請求項15に記載のCNT製品。
【請求項17】
前記CNT製品がCNTを繊維として含むCNT繊維製品であって、複数のCNT端が、各端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である先細り構造を形成している、請求項15又は16に記載のCNT製品。
【請求項18】
CNTウェブ、CNT糸、CNTシート、CNTシート、CNT織編物、又はCNT不織布である、請求項17に記載のCNT製品。
【請求項19】
前記CNTのうち複数のCNT端が、CNTの長さ方向に繰り返し凹凸表面を形成している、請求項15~18のいずれか一項に記載のCNT製品。
【請求項20】
複数のCNT端が、捲縮形状を有する、請求項15~19のいずれか一項に記載のCNT製品。
【請求項21】
複数のCNT端が、近傍のCNT端とともにからみあい構造を形成している、請求項15~20のいずれか一項に記載のCNT製品。
【請求項22】
請求項15~21のいずれか一項に記載のCNT製品に樹脂を含浸させてなる、CNT樹脂複合体。
【請求項23】
請求項15~21のいずれか一項に記載のCNT製品又は請求項22に記載のCNT樹脂複合体を含む物品。
【請求項24】
放熱材、ヒーター、及び電磁波吸収シートからなる群から選択される請求項23に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CNT製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということもある)は、熱伝導性、導電性、機械的強度等に優れることから、広範囲にわたる分野における様々な用途での利用が期待されている。
【0003】
CNTの合成プロセスとしては、アーク放電法、レーザ蒸発法、及び化学気相成長法(以下、「CVD法」ということもある)等が挙げられる。これらのうち、CVD法が大量生産に向いていることから、工業的には主にCVD法が用いられる。CVD法によるCNTの製造は、触媒の存在下で、原料である炭素原子を含むガスを反応させて、CNTを成長させる。特許文献1においては、CVD法において、第一温度で原料ガスを供給し、第一温度よりも50~200℃高い第二温度原料ガスを供給することにより、十分な厚みのアモルファス層を有し、凝集を抑制することができるCNTの合成プロセスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-231446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CVD法によるCNTの合成プロセスを用いた場合、基板と基板上に成長したCNTとの接着性によっては、基板上に成長したCNTを基板から剥離又は(CNTウェブとして)引き出した後において、基板上にCNTが不均一に残存することを本願発明者は見出した。このようなCNTの不均一な残存はCNTの生産性の観点から問題である。また、CNTの不均一な残存は剥離又は引き出して得られるCNTの均一性や連続性、CNTの剥離面の密集性を損ない得るため、CNTの特性(例えば、信頼性、熱伝導性、電気伝導性等)の観点からも問題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示はかかる事情に鑑みて為されたものである。従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記目的の達成を試み、上記の主目的を達成できることを見出し、本開示に至った。本開示における好ましい一実施形態は次のとおりである:
[項1]
基板を含む反応室に原料ガスを供給し、成長温度及び成長圧力の下、前記基板上にCNTを成長させる成長工程と、
前記原料ガスを排出して前記原料ガス圧を前記成長圧力の5%以上95%以下である低減圧力にまで低減させる排出工程と、
所定時間、前記原料ガス圧を前記低減圧力の範囲で保持する保持工程と、
を含む、化学気相成長法を用いるCNT合成プロセスを含む、CNT製品の製造方法。
[項2]
前記保持工程において成長温度を保持する、項1に記載のCNT製品の製造方法。
[項3]
反応触媒として遷移金属元素のハロゲン化物を用いる、項1又は2に記載のCNT製品の製造方法。
[項4]
前記原料ガスの供給と同時に酸素原子を有する炭化水素及び水素からなる群から選択される少なくとも一の第二ガスを供給する、1~3のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項5]
前記成長工程における、前記成長温度が500℃以上、前記原料ガス圧が1Torr以上である、項1~4のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項6]
前記低減圧力が前記成長圧力の30%以上80%以下である、項1~5のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項7]
前記保持工程後、反応室雰囲気温度を降下させる降温工程を含む、項1~6のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項8]
前記保持工程後、前記原料ガスを排出して原料ガス圧を0.1Torr以下とする第二排出工程を含む、項1~7のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項9]
前記第二排出工程は前記降温工程と同時に行われる、項1~8のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項10]
前記基板上に成長したCNTを前記基板から剥離する剥離工程を含むCNTアレイ製造プロセスを含む、項1~9のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項11]
前記基板上に成長したCNTをCNTウェブとして前記基板から引き出す引き出し工程を含むCNT繊維製品製造プロセスを含む、項1~9のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項12]
前記基板の両面にCNTを成長させる、項1~11のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項13]
前記基板として両面研磨した基板を用いる、項1~12のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項14]
前記反応室が複数の前記基板を含み、複数の前記基板間の距離は各基板から成長した前記CNTが接触しない範囲で最小である、項1~13のいずれか一項に記載のCNT製品の製造方法。
[項15]
CNTの集合体であるCNT製品であって、前記CNTのうち複数のCNT端が端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である先細り構造を形成している、CNT製品。
[項16]
前記CNT製品がCNTの配向集合体であるCNTアレイであって、一面において複数のCNT端が、各端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である先細り構造を形成している、項15に記載のCNT製品。
[項17]
前記CNT製品がCNTを繊維として含むCNT繊維製品であって、複数のCNT端が、
各端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である先細り構造を形成している、項15又は16に記載のCNT製品。
[項18]
CNTウェブ、CNT糸、CNTシート、CNTシート、CNT織編物、又はCNT不織布である、項17に記載のCNT製品。
[項19]
前記CNTのうち複数のCNT端が、CNTの長さ方向に繰り返し凹凸表面を形成している、項15~18のいずれか一項に記載のCNT製品。
[項20]
複数のCNT端が、捲縮形状を有する、項15~19のいずれか一項に記載のCNT製品。
[項21]
複数のCNT端が、近傍のCNT端とともにからみあい構造を形成している、項15~20のいずれか一項に記載のCNT製品。
[項22]
項15~21のいずれか一項に記載のCNT製品に樹脂を含浸させてなる、CNT樹脂複合体。
[項23]
項15~21のいずれか一項に記載のCNT製品又は項22に記載のCNT樹脂複合体を含む物品。
[項24]
放熱材、ヒーター、及び電磁波吸収シートからなる群から選択される項23に記載の物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板上に成長したCNTの基板からの剥離性や引き出し性を向上させ、CNTを基板から剥離又は引き出した後の基板上へのCNTの不均一な残存を抑制できる。これによりCNT製品の生産性を向上し得る。また、これにより、CNTの特性(例えば、信頼性、熱伝導性、電気伝導性等)を改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】CNTアレイの製造プロセスの模式図を示す。
図2】CNTシートの製造プロセスの模式図を示す。
図3A】CNTアレイ製造例1で得られたCNTの端部のSEM写真を示す。
図3B】比較CNTアレイ製造例1で得られたCNTの端部のSEM写真を示す。
図4A】CNTアレイ製造例1で得られたCNT剥離後の基板表面のSEM写真を示す。
図4B】比較CNTアレイ製造例1で得られたCNT剥離後の基板表面のSEM写真を示す。
図5】CNT樹脂複合体製造例1~4で得られたCNT樹脂複合体の特性等を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<CNT製品の製造方法>
本開示におけるCNT製品の製造方法は下記にて詳述するCNTの合成プロセスを含むものである。「CNT製品」とはCNTから構成される製品であって、例えば、CNT、CNT集合体、基板に結合したCNT、CNTアレイ及びCNT繊維製品が挙げられる。CNT製品はCNT配向集合体であってよい。「CNT配向集合体」とは、CNT配向集合体を構成する各CNTが一定の方向に配向しているCNTの集合体である。CNT配向集合体の例としてはCNTアレイ及びCNTシートが挙げられる。CNT配向集合体は異方的な熱伝導特性を有する。つまり、CNTの長さ方向においては高い熱伝導率を示し、CNTの長さ方向と垂直方向(CNTの直径方向)には相対的に低い熱伝導率を示す(図1及び図2参照)。この異方的な熱伝導特性は、例えば放熱材としての応用に有用である。
【0010】
[CVD法]
本開示におけるCNTの合成プロセスにおいてはCVD法を用いる。CVD法とは堆積物形成法の一種であり、堆積物形成の過程で化学反応を用いるのでこのように呼ばれる。CVD法には、温度を上げて熱により原料を分解させる熱CVD法、化学反応を促進させるために光を照射する光CVD法、ガスをプラズマ状態に励起するプラズマCVD法等が含まれるが、通常、本開示におけるCNTの合成プロセスにおいては、熱CVD法が好ましい。熱CVD法の例としては、DIPS法、CoMoCAT法、HiPCO法、スーパーグロースCVD法、固相触媒法、気相触媒法等が挙げられる。
【0011】
[CVD装置]
本開示におけるCNTの合成プロセスにおいてはCVD装置を用いる。本開示におけるCVD装置は、特に限定されないが、反応室全体を加熱する(ホットウォール型)又は基板台のみを加熱して反応室は冷却する(コールドウォール型)であってよく、横型又は縦型(温度分布、応答速度、ガスの流量制御などに優れる)であってよく、バッチ処理(複数枚を同時に処理)、枚葉式(一枚ずつ処理)又は連続処理式(コンベア式)であってよい。大量生産に向いているという観点からは連続処理式であることが好ましい。
【0012】
CVD装置は、基板を含む反応室、反応室にガス(原料ガス、又はキャリアガス)を導入するためのガス導入手段、反応室内からガス(未反応原料ガス、原料分解物ガス、又はキャリアガス)を排出するための排出手段及びヒーターを有してよい。
【0013】
[基板及び触媒]
基板は、CNTを成長するための土台となる。基板は成長温度以上の融点を有する。基板の種類としては、シリコン基板などの半導体基板、アルミナ(サファイア)基板、MgO基板、ガラス基板などの絶縁性基板、金属基板などを用いることができる。また、これら基板上に薄膜が形成されたものでもよい。例えば、シリコン基板上に膜厚10nm~1000nm(例えば100nm~500nm)程度の酸化膜(例えばシリコン酸化膜)が形成されたものを用いることができる。
【0014】
基板は複数枚が反応室に含まれていてもよい。反応室に含まれる基板の枚数は、5枚以上、10枚以上、又は30枚以上であってよい。反応室に含まれる基板の枚数は、500枚以下、250枚以下、又は50枚以下であってよい。基板が複数枚反応室に含まれている場合、複数の基板間の距離は各基板から成長した前記CNTが接触しない範囲で最小であることが好ましい。これにより、反応室内における余分なスペースが生じないため、反応室内に最大枚数の基板を配置することが可能となり、CNTの生産性を向上し得る。
【0015】
基板の片面からCNTを成長させてもよいが、基板の両面からCNTを成長させることがCNTの生産性向上の観点から好ましい。
【0016】
基板として研磨された基板を用いてもよい。研磨された基板を用いることにより、CNTの成長性を高めることができる。基板の片面のみ研磨されていてもよいが、基板の両面が研磨されていることがCNTの生産性向上の観点から好ましい。
【0017】
基板は触媒の支持体として、Mo、Ti、Hf、Zr、Nb、V、TaN、TiSi(例えばx=1~2)、Al、Al、TiO(例えばx=1~2)、Ta、W、Cu、Au、Pt、Pd、TiN又はこれらのうち少なくとも一を含む支持体を有してもよい。支持体はその厚みが0.1nm以上、0.5nm以上、又は1nm以上であってよく、10nm以下、7.5nm以下、又は5nm以下であってよい。支持体層と触媒層で積層構造を形成していてもよいし、支持体に触媒が分散されて存在していてもよい。
【0018】
基板は触媒機能を有する触媒層をその表面に有していることが好ましい。触媒層は例えばスパッタ法により触媒粒子を付着させることで、形成させることができる。この時、CNTの成長性の観点から触媒粒子を付着させる部分と付着させない部分を交互に形成しておくことが好ましい。このような島状の触媒層は、例えば、メッシュを基板上に設置しこの上からスパッタリング法で触媒粒子を一定のパターンで付着させたり、微分型静電分級器を用いてあらかじめ触媒粒子のサイズを制御したりすることにより作製することができる。触媒層はその厚みが0.1nm以上、0.5nm以上、又は1nm以上であってよく、10nm以下、7.5nm以下、又は5nm以下であってよい。島状の触媒層はその直径が0.1nm以上、0.5nm以上、1nm以上、又は3nm以上であってよく、15nm以下、10nm以下、7.5nm以下、又は5nm以下であってよい。
【0019】
CNTの成長反応に用いる触媒の種類は限定されないが、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Ag、Au、Pt等の第3族~第12族の遷移金属元素を含有することが好ましい。触媒はこれらの元素のハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、又は酸化物などであってもよい。成長速度の観点から、触媒はハロゲン化物であってよく、特にハロゲン化鉄を用いることが好ましい。ハロゲン化物をさらに具体的に例示すれば、フッ化鉄、フッ化コバルト、フッ化ニッケル、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、臭化鉄、臭化コバルト、臭化ニッケル、ヨウ化鉄、ヨウ化コバルト、ヨウ化ニッケルなどが挙げられる。ここで、ハロゲン化物は、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)のように、2価、3価又は多価であってよい。
【0020】
昇華性の触媒(例えば塩化鉄)を気相触媒として反応室中に存在させてもよい。気相触媒の反応室中への導入方法は限定されない。反応室に気相触媒供給部を設けてそこから供給してもよいし、反応室の内部に気相触媒を与える気相以外の物理状態(典型的には固相状態)にある材料(触媒源)を設置し、反応室の内部を加熱することおよび/または負圧することにより触媒源から気相触媒を生成して、気相触媒を反応室の内部に存在させてもよい。あるいは、反応室内で触媒生成反応を生じさせてもよい。例えば、塩化鉄の場合、塊、平板、スチールウールまたは粉状の鉄等の鉄族元素含有材料を反応室内で所定の温度とし、反応室内の鉄族元素含有材料と反応させるハロゲン含有物質を供給することにより、気相触媒を生成してもよい。触媒源を用いて気相触媒を生成する場合の具体例を示せば、反応室の内部に触媒源として塩化鉄(II)の無水物を配置し、反応室の内部を加熱するとともに負圧して塩化鉄(II)の無水物を昇華させると、塩化鉄(II)の蒸気からなる気相触媒を反応室内に存在させることができる。
【0021】
[CNTの合成プロセスの各工程]
本開示におけるCNT製品の製造方法は、CNTの合成プロセスを含む。CNTの合成プロセスは成長工程、排出工程、及び保持工程を含む。本開示におけるCNTの合成プロセスは、さらに、降温工程、第二排出工程、さらにその他工程を含んでもよい。
【0022】
(成長工程)
本開示における合成プロセスは成長工程を含む。成長工程は、基板を含む反応室に原料ガスを供給し、成長温度及び成長圧力の下、前記基板上にCNTを成長させることを含む。基板を成長温度まで加熱する前に、反応室内雰囲気は真空とされていてよいし、キャリアガスで置換されていてもよい。反応室内に原料ガスを供給する際には、反応室内雰囲気は所定の温度(成長温度)まで加熱されていてよい。ここで、「成長温度」とはCNTの成長反応が進行可能な反応室雰囲気温度であり、「成長圧力」とはCNTの成長反応が進行可能な原料ガスの反応室内圧力である。
【0023】
原料ガスはCNTの炭素原料となるガス状化合物である。原料ガスの炭素数は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1以下であってよく、好ましくは3以下である。原料ガスは炭化水素であってよい。原料ガスの例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン及びヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテン及びイソブテン及びアセチレン等の脂肪族不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン及びナフタレン等の芳香族炭化水素、メタノール及びエタノール等のアルコール、これらの混合物等が挙げられ、代表的にはアセチレンである。
【0024】
原料ガスと同時に第二ガスを反応室内に供給してもよい。第二ガスは、原料ガスとは異なるガスであって、酸素原子を有する炭化水素及び水素からなる群から選択される少なくとも一のガスである。第二ガスは、触媒のエッチング作用を有し得る。また、第二ガスは還元性物質であってもよい。
【0025】
酸素原子を有する炭化水素は、アルコール酸素を有する炭化水素、カルボニル酸素を有する炭化水素、又はエーテル酸素を有する炭化水素であってよく、好ましくは、アルコール酸素を有する炭化水素又はカルボニル酸素を有する炭化水素であってよく、特にカルボニル酸素を有する炭化水素である。酸素原子を有する炭化水素の炭素数は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1以下であってよく、好ましくは3以下である。
【0026】
第二ガスの具体例としては、一酸化炭素、アセトン、エタノール、メタノール、及び、水素等が挙げられ、好ましい具体例としては一酸化炭素、アセトン、及び水素が挙げられ、特に一酸化炭素及びアセトンである。
【0027】
第二ガスが原料ガスと同時に供給されることにより、CNTの成長性を高める効果や、さらに製造されたCNTの紡績性を向上させる効果を有し得る。また、CNTアレイの成長に係る反応の活性化エネルギーの低下、CNTアレイの成長速度の向上、CNTアレイの成長安定性の向上、失活原因であるアモルファスカーボン除去により気相触媒の長寿命化、成長長さの均一性の向上、等といった効果を発現し得る。
【0028】
第二ガスを供給するために、第二ガスそのものを供給することに加えて又は供給することに代えて、第二ガスを形成可能な原料を供給することもできる。例えば、第二ガスとしての一酸化炭素を供給するために、上述した一酸化炭素そのものを供給することに加えて又は供給することに代えて、一酸化炭素を形成可能な原料を供給することもできる。一酸化炭素を形成可能な原料としては、例えば、二酸化炭素やカルボニル錯体等が挙げられる。これら原料は、反応室内において一酸化炭素を形成(生成)して、一酸化炭素を供給した場合と同様の効果を奏することができる。
【0029】
成長工程における原料ガス圧は、1Torr以上、3Torr以上、5Torr以上、10Torr以上、25Torr以上、又は50Torr以上、であってよく、好ましくは1Torr以上である。成長工程における原料ガス圧は、300Torr以下、200Torr以下、150Torr以下、100Torr以下、50Torr以下、25Torr以下、又は12.5Torr以下であってよく、好ましくは100Torr以下である。
【0030】
成長工程における原料ガス圧に対する第二ガス圧比(第二ガス圧/原料ガス圧)は、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、10%以上、又は20%以上であってよく、好ましくは1%以上である。成長工程における第二ガス圧に対する原料ガス圧(第二ガス圧/原料ガス圧)は、500%以下、300%以下、100%以下、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、又は5%以下であってよく、好ましくは30%以下である。
【0031】
原料ガスと同時にキャリアガスを反応室内に供給してもよい。キャリアガスの例としては、アルゴン、ヘリウム、又はネオン等の希ガス、窒素等が挙げられる。キャリアガスの量は適宜決定されてよいが、例えば、原料ガス圧の100%以上10000%以下であってよい。その他、必要に応じて、水素、水蒸気等のその他ガスを、本願発明の効果を損なわない範囲で、反応室内に供給してもよい。
【0032】
成長温度は、原料ガスが反応して基板にCNTを成長させる温度であればよく、例えば500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、800℃以上、又は850℃以上であってよく、好ましくは600℃以上である。成長温度は、1100℃以下、1050℃以下、1000℃以下、950℃以下、900℃以下又は850℃以下であってよく、好ましくは1000℃以下である。
【0033】
成長工程の時間は、所望のCNTの長さによって決定されればよく、短いCNTを必要とする場合は、成長工程の時間を短くし、長いCNTを必要とする場合は、成長工程の時間を長くすればよい。
【0034】
(排出工程)
本開示における合成プロセスはさらに排出工程を含む。排出工程は、原料ガスの供給を停止し、原料ガスを排出して原料ガス圧を成長圧力の5%以上95%以下である低減圧力にまで低減させることを含む。
【0035】
低減圧力は、成長工程における原料ガス圧の5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上又は60%以上であってよく、好ましくは30%以上又は50%以上である。低減圧力は、成長工程における原料ガス圧の95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下又は40%以下であってよく、好ましくは80%以下である。
【0036】
排出工程の時間は0.01秒以上、0.1秒以上、1秒以上、又は10秒以上であってよい。排出工程の時間は、300秒以下、200秒以下、100秒以下、60秒以下、又は30秒以下であってよく、例えば25秒以下、20秒以内、15秒以内、10秒以内、又は5秒以内であってよい。
【0037】
(保持工程)
本開示における合成プロセスはさらに保持工程を含む。保持工程は、所定時間、前記原料ガス圧を前記低減圧力の範囲で保持する。保持工程の間、原料ガス圧は一定に保持されることが好ましい。保持工程の間、圧力を保持するために、反応室内へのガスの供給及び反応室内からのガスの排出を遮断してもよい。
【0038】
保持工程の時間は、所定時間であってよく、例えば5秒以上、10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、又は60秒以上であってよい。保持工程の時間は、300秒以下、250秒以下、200秒以下、150秒以下、100秒以下、又は50秒以下であってよい。
【0039】
保持工程においては、反応室雰囲気温度を一定の範囲に保持しておいてよく、好ましくは反応室雰囲気温度を成長温度に保持しておく。保持工程の間、反応室雰囲気温度は一定に保持されていてよい。
【0040】
(降温工程)
本開示における合成プロセスはさらに降温工程を含んでよい。降温工程は保持工程後に行われ、反応室雰囲気温度を降下させることを含む。
【0041】
反応室雰囲気温度の降温速度は3℃/分以上、5℃/分以上、7℃/分以上、9℃/分以上、又は12℃/分以上であってよい。反応室雰囲気温度の降温速度は50℃/分以下、40℃/分以下、30℃/分以下、又は20℃/分以下であってよい。
【0042】
降温工程は、反応室雰囲気温度が、CNTが空気中の酸素で酸化されない温度に達するまで行われてもよく、例えば500℃未満、400℃以下、又は300℃以下である。反応室雰囲気温度が、CNTが空気中の酸素で酸化されない温度に達せば、基板を大気圧下に解放してもよい。
【0043】
(第二排出工程)
本開示における合成プロセスはさらに第二排出工程を含んでよい。第二排出工程は保持工程後に行われ、原料ガスを排出して原料ガス圧を上記低減圧力からさらに低減させる。
【0044】
第二排出工程後の原料ガス圧は特に限定されないが、0Torr以上、0.0001Torr以上、低減圧力の0.001%以上、又は低減圧力の0.01%以上であってもよい。第二排出工程後の原料ガス圧は、0.1Torr以下、0.08Torr以下、0.05Torr以下、0.03Torr以下、又は0.01Torr以下であってよく、好ましくは0.05Torr以下である。第二排出工程後の原料ガス圧は、低減圧力の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下又は1%以下であってよく、好ましくは10%以下である。
【0045】
第二排出工程の時間の下限は特に限定されないが、0.01秒以上、0.1秒以上、1秒以上、又は10秒以上であってよい。第二排出工程の時間は、300秒以下、200秒以下、100秒以下、60秒以下、又は30秒以下であってよく、例えば25秒以下、20秒以内、15秒以内、10秒以内、又は5秒以内であってよい。
【0046】
第二排出工程は前記降温工程と同時に行われてよい。なお、所望の原料ガス圧に達しているが所望の反応室雰囲気温度に達していない場合、第二排出工程を終えた後も降温工程を継続してもよい。
【0047】
[CNTの構造]
本開示の合成プロセスにより得られるCNTは単層又は多層であってもよいが、多層であることが好ましい。CNTの直径は0.5nm以上、3nm以上、5nm以上、10nm以上、30nm以上、50nm以上、又は100nm以上であってよく、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。CNTの直径は500nm以下、300nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下、40nm以下、又は20nm以下であってよく、好ましくは100nm以下である。CNTの層数は1以上、2以上、3以上、5以上、7以上、10以上、又は20以上であってよく、好ましくは2以上である。CNTの層数は55以下、45以下、35以下、25以下、15以下、又は5以下であってよい。CNTの直径及び層数は、触媒の種類、触媒粒子の大きさ等によって決定され得るものである。
【0048】
本開示の合成プロセスにより得られるCNTの長さは比較的長尺であるものが好ましい。CNTの平均長さは0.05mm以上、0.1mm以上、0.2mm以上、0.4mm以上、0.6mm以上、1.0mm以上、3.0mm以上、5mm以上、10mm以上であってよく、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。CNTの平均長さは200mm以下、150mm以下、100mm以下、50mm以下、25mm以下、10mm以下、5.0mm以下であってよく、好ましくは25mm以下である。CNTの長さは、成長工程の時間によって決定されるものであり、短いCNTを必要とする場合は、成長工程の時間を短くし、長いCNTを必要とする場合は、成長工程の時間を長くすればよい。CNTの平均長さは例えばSEM写真から決定できる。
【0049】
本開示の合成プロセスにより得られるCNTのG/D比は、1以上、1.5以上、2以上、2.5以上であってよく、好ましくは2以上である。本開示の合成プロセスにより得られるCNTのG/D比は、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってよい。G/D比はラマン分光法により求められるカーボンナノチューブの結晶度の指標である。
【0050】
本開示の合成プロセスにより得られるCNTの純度は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は99%以上であってよく、好ましくは95%以上である。CNTの純度は例えば蛍光X線を用いた元素分析により求めることができる。
【0051】
本開示の合成プロセスにより得られるCNTは、その一面(基板側面)におけるCNT端において、特異的な構造を有する。
【0052】
本明細書において、「CNT端」とは、CNTの末端点(最末端点)から10000nm以下、9000nm以下、8000nm以下、7000nm以下、6000nm以下、5000nm以下、4000nm以下、3000nm以下、2000nm以下、1000nm以下、又は750nm以下のことを指してもよい。
【0053】
[CNTアレイの製造プロセス]
本願明細書において「CNTアレイ」とは基板から成長したCNTの配向集合体(CNTフォレストとも称される)であって基板から分離されたものをいう。上記合成プロセス経ているため、本開示におけるCNTアレイは、その一面(基板側面(基板からCNTを剥離する前において基板に結合していた面))における複数のCNT端において、特異的な構造を有する。
【0054】
本開示におけるCNTアレイの製造プロセスはさらに上記のCNTの合成プロセスの後における剥離工程を含む。剥離工程では、基板上に成長したCNTを前記基板から剥離してCNTアレイを得る。ここでいう基板上に成長したCNTは基板上に垂直配向したCNT集合体(いわゆるCNTフォレスト)である。本明細書において、剥離して単離された垂直配向性CNT集合体のことを本願明細書においてCNTアレイと称する。図1はCNTアレイの製造プロセスの模式図を示す。
【0055】
剥離工程においてCNTを基材から剥離する方法は、物理的、化学的あるいは機械的な剥離方法であってよい。具体的には、例えば、電場、磁場、遠心力、表面張力等を用いて剥離する方法、機械的に基材から剥離する方法、並びに、圧力又は熱を用いて基材から剥離する方法等が例示できる。また、真空ポンプを用いてCNTを吸引し、基材から剥ぎ取ることも可能である。機械的に基材から剥離する方法としては、CNTをピンセットで直接つまんで基材から剥がす方法や、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラ又はカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを基材から剥ぎ取る方法が挙げられる。
【0056】
(CNTアレイにおけるCNT端の構造)
CNTアレイにおいて、複数のCNT端が、各端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である構造を有していることが好ましい。
【0057】
CNTアレイにおいて、D1/D2が0.75以下である構造を有しているCNT端は、一面におけるCNT端のうち25%以上であってよく、例えば、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、又は50%以上であってよい。CNTアレイにおいて、D1/D2が0.75以下である構造を有しているCNT端は、一面におけるCNT端のうち75%以下、50%以下、又は25%以下であってよい。
【0058】
CNTアレイにおいて、D1/D2は0.75以下、0.6以下、0.45以下、又は0.30以下であってもよい。CNTアレイにおいて、D1/D2は0.10以上、0.20以下、0.30以上、0.35以上、又は0.40以上であってよい。
【0059】
CNTアレイにおける複数のCNT端が、CNTの長さ方向に繰り返し凹凸表面を形成していることが好ましい。繰り返し凹凸表面は、波状表面、うねり表面、又はジグザグ表面とも称される。繰り返し凹凸表面は、CNTアレイが、団子状構造、節状構造、蛇腹構造、又はツイスト構造と称される構造を形成しているために生じるものである。
【0060】
CNTアレイにおける繰り返し凹凸表面を形成しているCNT端は、一面におけるCNT端のうち25%以上であってよく、例えば、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、又は50%以上であってよい。CNTアレイにおける繰り返し凹凸表面を形成しているCNTは、一面におけるCNT端のうち75%以下、50%以下、又は25%以下であってよい。ここで、CNT端とは、CNTの末端点から1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、又は300nm以下のことを指してもよい。
【0061】
CNTアレイにおけるCNT端の繰り返し凹凸表面における凹凸の数は、CNTの長さ方向に対して5個/μm以上、10個/μm以上、20個/μm以上、30個/μm以上、40個/μm以上、50個/μm以上、又は60個/μm以上であってよい。CNTアレイにおける繰り返し凹凸表面における凹凸の数は、CNTの長さ方向に対して100個/μm以下、80個/μm以下、60個/μm以下、40個/μm以下、30個以下、又は20個/μm以下であってよい。
【0062】
CNTアレイにおける複数のCNT端が、捲縮(クリンプ)形状を有していることが好ましい。捲縮(クリンプ)とは縮れ(カール)ともいう。捲縮の種類は特に限定されないが、例えば、ジグザグ型、波形/オメガ型、又はスパイラル型であってもよい。捲縮することにより、これらのCNTは近傍のCNT端とともにからみあい構造を形成していてもよい。ここで、CNT端とは、CNTの末端点から1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、又は300nm以下のことを指してもよい。
【0063】
CNTアレイにおける捲縮形状を有しているCNT端は、一面におけるCNT端のうち25%以上であってよく、例えば、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、又は50%以上であってよい。CNTアレイにおける捲縮形状を有しているCNTは、一面におけるCNT端のうち75%以下、50%以下、又は25%以下であってよい。
【0064】
CNTアレイにおいて、CNT端における捲縮数(単位長さ当たりの山の数)は1山/μm以上、2山/μm以上、3山/μm以上、4山/μm以上、5山/μm以上、又は6山/μm以上であってよい。CNTアレイにおいて、捲縮数(単位長さ当たりの山の数)は、20山/μm以下、15山/μm以下、10山/μm以下、7山/μm以下、又は5山/μm以下であってよい。
【0065】
[CNT繊維製品の製造プロセス]
本開示において「CNT繊維製品」とは、CNTを繊維として含む繊維製品である。本開示におけるCNT繊維製品は、上述した合成プロセスにより得られたCNTを含む。CNT繊維製品としては具体的には、CNTウェブ、CNT糸、CNTシート、CNT織編物、CNT不織布等が挙げられる。上記合成プロセス経ているため、本開示におけるCNT繊維製品に繊維として含まれるCNTのCNT端が特異的な構造を有する。
【0066】
CNT繊維製品の製造プロセスにおいて、上記した基板上に成長したCNTをCNTウェブとして基板から引き出してCNT繊維製品を得る引き出し工程を含むことが好ましい。引き出し工程はCNTの乾式紡績現象を利用するものであってよい。「CNTの乾式紡績現象」とは、基板上に垂直配向したCNT集合体(いわゆるCNTフォレスト)の端部をつまみ基板表面に沿って引き出すとCNT同士がファンデルワールス力で自発的に結合したCNT連結体であるCNTウェブが形成される現象である。このCNTの乾式紡績現象により、基板上の三次元的に成長しているCNT集合体が二次元ネットワークを形成した集合体へ変化させることができる。この形態変化は蚕の繭から糸を紡ぎだす動作と似ているが、CNT向士は強いファンデルワールスカで結合されるため、従来の紡績とは異なりCNTウェブに撚りを加えなくても紡績可能である。CNTウェブを撚り合せればCNT糸を形成することができ、CNTウェブを積層させることでCNTシートを形成することができる。乾式紡績現象を利用するCNT繊維製品の製造プロセスは公知であり、例えば、Y. Inoue, K. Kakihata, Y. Hirono, T. Horie, A. Ishida & H. Mimura : Appl. Phys. Lett., 92, 21 (2008), 213113.;Y. Inoue, Y. Suzuki, Y. Minami, J. Muramatsu, Y. Shimamura, K. Suzuki, A. Ghemes, M. Okada, S. Sakakibara, H. Mimura & K. Naito : Carbon, 49, 7 (2011),2437-2443.等を参考にできる。CNT織物及びCNT編物はCNT又はCNT糸を繊維として織ったり編んだりすることで得られる。CNT不織布は例えばCNTを乾式又は湿式でCNTを分散させた後結合させることにより得られる。
【0067】
(CNTシート)
CNT繊維製品はCNTウェブの積層体であるCNTシートであってよい。CNシートは異方的な熱伝導性を有するため、放熱材として好適である。CNTシートは乾式紡績現象を利用して基板上に合成されたCNTからCNTウェブを積層させることにより得ることができる。CNTウェブの積層は巻き取りロールを用いることにより行えばよい。図2はCNTシートの製造プロセスの模式図を示す。
【0068】
CNTシートにおける積層数は5層以上、10層以上、20層以上、30層以上、50層以上、70層以上、又は100層以上であってよく、積層数が多いほど熱伝導性に優れ得る。CNTシートにおける積層数は、10000層以下、1000層以下、又は100層以下であってよい。引き出し時において、CNTが基板から脱離(一種の剥離)されていくが、本開示の合成プロセスにより得られたCNTは基板からの脱離性が優れるため、本開示によればCNTの基板への残存を抑制することができる。
【0069】
(CNT繊維製品におけるCNT端の構造)
CNT繊維製品において、複数のCNT端が、各端点から10nm~100nmにおる平均直径D1と各端点から1000nm~2000nmにおける平均直径D2との比(D1/D2)が0.75以下である構造を有していることが好ましい。
【0070】
CNT繊維製品において、D1/D2が0.75以下である構造を有しているCNT端は、CNT端のうち12.5%以上であってよく、例えば、15%以上、17.5%以上、20%以上、22.5%以上、又は25%以上であってよい。CNT繊維製品において、D1/D2が0.75以下である構造を有しているCNT端は、CNT端のうち40%以下、30%以下、又は15%以下であってよい。
【0071】
CNT繊維製品において、D1/D2は0.75以下、0.6以下、0.45以下、又は0.30以下であってもよい。CNT繊維製品において、D1/D2は0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.35以上、又は0.40以上であってよい。
【0072】
CNT繊維製品における複数のCNT端が、CNTの長さ方向に繰り返し凹凸表面を形成していることが好ましい。繰り返し凹凸表面は、波状表面、うねり表面、又はジグザグ表面とも称される。繰り返し凹凸表面は、CNT繊維製品が、団子状構造、節状構造、蛇腹構造、又はツイスト構造と称される構造を形成しているために生じるものである。
【0073】
CNT繊維製品における繰り返し凹凸表面を形成しているCNT端は、CNT端のうち12.5%以上であってよく、例えば、15%以上、17.5%以上、20%以上、22.5%以上、又は25%以上であってよい。CNT繊維製品における繰り返し凹凸表面を形成しているCNTは、CNT端のうち40%以下、30%以下、又は15%以下であってよい。ここで、CNT端とは、CNTの末端点から1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、又は300nm以下のことを指してもよい。
【0074】
CNT繊維製品におけるCNT端の繰り返し凹凸表面における凹凸の数は、CNTの長さ方向に対して5個/μm以上、10個/μm以上、20個/μm以上、30個/μm以上、40個/μm以上、50個/μm以上、又は60個/μm以上であってよい。CNT繊維製品における繰り返し凹凸表面における凹凸の数は、CNTの長さ方向に対して100個/μm以下、80個/μm以下、60個/μm以下、40個/μm以下、30個以下、又は20個/μm以下であってよい。
【0075】
CNT繊維製品における複数のCNT端が、捲縮(クリンプ)形状を有していることが好ましい。捲縮(クリンプ)とは縮れ(カール)ともいう。捲縮の種類は特に限定されないが、例えば、ジグザグ型、波形/オメガ型、又はスパイラル型であってもよい。捲縮することにより、これらのCNTは近傍のCNT端とともにからみあい構造を形成していてもよい。ここで、CNT端とは、CNTの末端点から1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、又は300nm以下のことを指してもよい。
【0076】
CNT繊維製品における捲縮形状を有しているCNT端は、CNT端のうち12.5%以上であってよく、例えば、15%以上、17.5%以上、20%以上、22.5%以上、又は25%以上であってよい。CNT繊維製品における捲縮形状を有しているCNTは、CNT端のうち40%以下、30%以下、又は15%以下であってよい。
【0077】
CNT繊維製品において、CNT端における捲縮数(単位長さ当たりの山の数)は1山/μm以上、2山/μm以上、3山/μm以上、4山/μm以上、5山/μm以上、又は6山/μm以上であってよい。CNT繊維製品において、捲縮数(単位長さ当たりの山の数)は、20山/μm以下、15山/μm以下、10山/μm以下、7山/μm以下、又は5山/μm以下であってよい。
【0078】
<CNT樹脂複合体>
本開示におけるCNT樹脂複合体は、上述したCNT製品に樹脂を含浸させてなるものである。CNT樹脂複合体は、CNT配向集合体に樹脂を含浸後、樹脂を硬化させたものであってもよい。従来、樹脂に金属やカーボンフィラーを複合させた放熱材が知られているがその熱伝導性は十分ではなかった。また、金属を放熱材として用いれば熱伝導性が上がり放熱は容易になるが、成型が困難であり、絶縁性が求められる用途への利用が難しい。本開示におけるCNT樹脂複合体を用いればそのような課題を解決し得る。
【0079】
本開示におけるCNT樹脂複合体の製造方法としては、例えば、CNT製品に加熱融解した樹脂を含浸させて冷却硬化させる方法や、CNTに液状樹脂(例えば、単量体、プレポリマー)を含浸させて硬化(加熱硬化、光硬化等)させる方法等を用いることができる。図1及び図2はそれぞれ、CNTアレイと樹脂とを複合させてCNT樹脂複合体を得る工程の模式図と、CNTシートと樹脂とを複合させてCNT樹脂複合体を得る工程の模式図を示している。CNT樹脂複合体に含まれるCNT製品はCNT配向集合体であってよい。CNT配向集合体を含むことにより、CNT樹脂複合体が異方的な熱伝導性を有し、CNTの長さ方向(成長方向)においてCNTの直径方向(成長方向とは垂直方向)と比較して大きな熱伝導性を有し得る。そして、CNT樹脂複合体の熱伝導率は樹脂単体の熱伝導率(1W/mK以下)と比較しても顕著に大きい。このようなCNT樹脂複合体の特異な熱伝導性は放熱材として好適である。また、樹脂を用いることで成型性が向上し、絶縁性が求められる用途への利用も容易となる。
【0080】
[CNT樹脂複合体の成分]
(CNT成分)
CNT樹脂複合体は上述したCNT製品(例えば、CNT配向集合体、例えばCNTアレイ又はCNTシート)を含む。
【0081】
(樹脂成分)
CNT樹脂複合体は樹脂を含む。樹脂は熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であってよい。熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド、及び熱硬化性アクリル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリオレフィン、ポリハロゲン化オレフィン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステル、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、非硬化性アクリル樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0082】
CNT樹脂複合体中、CNT含有率(CNT製品が占める量)は、複合させるCNT製品の種類に依存するが、5重量%以上、20重量%以上、40重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は85重量%以上であってよく、好ましくは40重量%以上、60重量%以上、又は80重量%以上である。CNT樹脂複合体中、CNT含有率は、99重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。CNT含有率が高いほど、CNT樹脂複合体が熱伝導性に優れ得る。
【0083】
(その他成分)
CNT樹脂複合体は本願発明の効果を失わせない範囲でその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例は、有機染料及び有機顔料等の着色剤;有機粒子及び有機繊維等の有機充填材;老化防止剤/酸化防止剤;紫外線吸収剤・光安定剤等が挙げられる。
【0084】
[CNT樹脂複合体の構造]
CNT樹脂複合体はシート状、フィルム状、直方体状、又は円柱状等であってよい。
【0085】
CNT樹脂複合体のサイズは、複合させるCNT製品の種類に依存するが、複合させるCNT製品と同程度のサイズとなるよう樹脂成分の量を調整してもよいし、例えば、樹脂成分を少なめにしてCNT製品を表面から露出させたり、樹脂成分を多めにしてCNT製品が表面から露出しないように設計することも可能である。例えば一部(例えば1%以上、5%以上、10%以上、又は25%以上であって、75%以下、50%以下、25%以下、10%以下、又は5%以下)のCNTの端点が樹脂外表面から±1.0mm以内、±0.5mm以内、±0.3mm以内、±0.2mm以内、±0.1mm以内、又は±0.05mm以内の範囲にあってよい。
【0086】
複合させるCNT製品がCNT配向集合体である場合、CNT配向集合体の配向方向(CNTの成長方向)はCNT樹脂複合体の面方向に沿った方向であってよく、CNT樹脂複合体の面方向から傾斜した方向(例えば、傾斜角は1°以上、3°以上、10°以上、15°以上、又は30°以上であって、45°以下、30°以下、又は15°以下)であってもよい。
【0087】
[CNT樹脂複合体の物性]
CNT樹脂複合体のCNTの長さ方向に対する熱伝導率は1W/mK以上、3W/mK以上、5W/mK以上、10W/mK以上、又は15W/mK以上であってよい。CNT樹脂複合体のCNTの長さ方向に対する熱伝導率は、100000W/mK以下、10000W/mK以下、1000W/mK以下、又は1000W/mK以下であってよい。
【0088】
CNT樹脂複合体のCNTの直径方向に対する熱伝導率は0.3W/mK以上、1W/mK以上、2W/mK以上、3W/mK以上、又は5W/mK以上であってよい。CNT樹脂複合体の直径方向に対する熱伝導率に対する熱伝導率は、50000W/mK以下、5000W/mK以下、又は500以下であってよい。
【0089】
CNT樹脂複合体におけるCNTの長さ方向に対する熱伝導率はCNT樹脂複合体におけるCNTの直径方向に対する熱伝導率の1.2倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、3.5倍以上又は4.0倍以上であってよく、好ましくは2倍以上である。CNT樹脂複合体におけるCNTの長さ方向に対する熱伝導率はCNT樹脂複合体におけるCNTの直径方向に対する熱伝導率の、50倍以下、25倍以下、10倍以下であってよい。
【0090】
<物品>
本開示における物品は、上述したCNT製品又は上述したCNT樹脂複合体を含む。CNT製品及びCNT樹脂複合体はその熱伝導性、導電性、絶縁性、機械特性等を活かして種々の物品に応用することができる。CNT製品及びCNT樹脂複合体を含む物品としては多岐にわたるが、例えば、物品の例としては、放熱材、ヒーター、伸縮性シート状歪センサ、電極シート、電池部品、電子部品、自動車、航空機、建築材料、電磁波吸収シート、等が挙げられる。
【実施例0091】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0092】
[CNT合成例1]
基板を含む反応室(容積38L)、ガス導入部、及びガス排出部を含む熱CVD装置を用いた。基板として直径4インチの熱酸化膜付Si基板を用いた。触媒として塩化鉄(II)をその昇華温度以上に加熱し塩化鉄(II)の微粒子を基板上に蒸着させた。得られた基板をCVD装置の反応室内に設置した。温度(約800℃)、アセチレンガス流量(約10L/min)、一酸化炭素流量(1L/min以下)、反応室ガス圧力(約5Torr)の条件で、10~30分間基板上にCNTを成長させた。10~30分経過時点において、反応室ガス圧力を成長時の圧力から2Torr程度低減させ、成長温度を維持したまま約40秒間保持した。その後、約20秒間で反応室ガス圧力が略0Torrとなるまで低減し、15~20℃/分で300℃以下まで降温し、大気開放した。これにより、基板面にほぼ垂直に成長したCNT(多層、長さ約0.5から1.5mm、直径約40~60nm、G/D比約2.5~3、純度99%以上)を得た。長さ、及び直径はSEM写真から決定した。G/D比はラマン分析により決定した。純度は熱重量分析により決定した。
【0093】
[比較CNT合成例1]
CNT成長10~30分経過時点において、ガスを排出して反応室ガス圧力を一気に略0Torrとなるまで低減させて、15~20℃/分で300℃以下まで降温して大気開放した以外は、CNT合成例1と同様にしてCNTを合成した。これにより、基板面にほぼ垂直に成長したCNTを得た。
【0094】
[CNTアレイ製造例1]
CNT合成例1における合成後の基板から成長したCNTを、鋭利部を有した樹脂製のへらを用いて剥離して、CNTアレイを得た。得られたCNTアレイの基板側のCNT端のSEM写真を図3Aに示す。また、CNT剥離後の基板のSEM写真を図4Aに示す。剥離後比較的長いCNTが基板にCNTが残存していることは殆ど確認されず、均一であった。SEM写真から、基板側のCNT端において先細り構造が形成されていることがわかる。また、SEM写真から、基板側のCNT端において、CNTの長さ方向に対して繰り返し凹凸表面が形成されていること、捲縮形状が形成されていること、及び、からみあい構造が形成されていることがわかる。
【0095】
[比較CNTアレイ製造例1]
比較CNT合成例1における合成後の基板から成長したCNTをCNTアレイ製造例1と同様に剥離して、CNTアレイを得た。得られた比較CNTアレイの基板側のCNT端のSEM写真を図3Bに示す。また、CNT剥離後の基板のSEM写真を図4Bに示す。剥離後比較的長いCNTが基板に残存しており、不均一であった。SEM写真から基板側のCNT端は直線的であり特異的な構造を有していないことがわかる。
【0096】
[CNTシート製造例1~3]
合成後の基板から成長したCNTの端部をつまんで引き出して、巻き取りロールを用いて巻き取ることにより、積層数がそれぞれ10、40及び80のCNTシートを得た。
【0097】
[CNT樹脂複合体製造例1~4]
上記CNTアレイ製造例1及びCNTシート製造例1~3で得られたCNTアレイ及びCNTシートそれぞれにエポキシ樹脂(ADEKA製EP-4100)を含侵させた後、加熱硬化させてCNT樹脂複合体製造例1~4を得た。得られたCNT樹脂複合体について、各物性を測定した結果を図5に示す。各物性の測定は下記装置及び条件により行った。熱拡散率は熱伝導率及び比熱から求めることができる。
熱伝導率測定:ベテル製サーモウェーブアナライザTA(周期加熱放射測温法、室温下)
比熱測定:日立ハイテク製DSC7020(熱流速示唆走査熱量測定、室温下)
【0098】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示におけるCNT製品の製造方法はCNTを含む各種物品(例えば、放熱材)を製造するために利用することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5