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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117192
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ネズミ調査システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20230816BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20230816BHJP
【FI】
A01K29/00 Z
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019770
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】591262827
【氏名又は名称】株式会社シー・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 英武
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】ネズミの実態を適切に把握することを可能にしたネズミ調査システムを提供することである。
【解決手段】ネズミ調査システム10は、少なくとも1つの検出部20と、制御箱19とを備える。検出部20は、検出領域におけるネズミの存在検出に係る電気信号を出力する。制御箱19は、検出部20から電気信号を受信したときは、受信のつど、受信日時を検出部20の配置位置に対応付けたログ情報を記憶部67に記憶するとともに、近距離無線通信により情報端末18に対し記憶部67のログ情報を送信可能になっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域におけるネズミの存在検出に係る電気信号を出力し、ネズミの出現位置を特定できる状態でネズミ出現管理範囲に配置された少なくとも1つの検出部と、
前記検出部に有線接続され前記検出部から前記電気信号を受信したときは、受信のつど、受信の日時を当該検出部の配置位置に対応付けたログ情報を記憶部に記憶するとともに、近距離無線通信により外部の無線通信機に対し前記記憶部の前記ログ情報を送信可能になっているデータ保持部と、
を備え、
前記検出部にはネズミ捕獲手段が設けられていないことを特徴とするネズミ調査システム。
【請求項2】
前記無線通信機は、前記データ保持部から入手したログ情報に基づく解析によりネズミが出現した位置、移動方向及び出現頻度を含むネズミ実態情報を出力する解析部を有することを特徴とする請求項1記載のネズミ調査システム。
【請求項3】
検出領域におけるネズミの存在検出に係る電気信号を出力し、ネズミの出現位置を特定できる状態でネズミ出現管理範囲に配置された少なくとも1つの検出部と、
前記検出部に有線接続され前記検出部から前記電気信号を受信したときは、受信のつど、受信の日時を当該検出部の配置位置に対応付けたログ情報を記憶部に記憶するとともに、近距離無線通信により外部の無線通信機に対し前記記憶部の前記ログ情報を送信可能になっているデータ保持部と、
前記データ保持部とインターネットとの間に介在するゲートウェイと、
前記インターネットに接続され、前記ゲートウェイを介して前記データ保持部と交信して前記データ保持部が前記記憶部に保持する前記ログ情報を前記データ保持部から入手し、入手したログ情報に基づく解析によりネズミが出現した位置、移動方向及び出現頻度を含むネズミ実態情報を出力するサーバと、
を備え、
前記検出部にはネズミ捕獲手段が設けられていないことを特徴とするネズミ調査システム。
【請求項4】
複数の前記検出部が共通の前記データ保持部に接続され、
前記データ保持部は、前記ログ情報に、前記電気信号の受信の日時と前記電気信号の出力元の検出部に割り当てたIDとを含ませることにより、前記受信の日時を前記出力元の検出部の配置位置に対応付けることを特徴とする請求項3記載のネズミ調査システム。
【請求項5】
複数のデータ保持部が共通の前記ゲートウェイに接続され、
各データ保持部が前記サーバに送信する前記ログ情報には、各ゲートウェイに共通に接続された複数の前記データ保持部間で各データ保持部を相互に識別可能にするデータ保持部IDを含めることを特徴とする請求項4記載のネズミ調査システム。
【請求項6】
前記サーバは、複数の前記ゲートウェイを介して各ゲートウェイに接続されている複数の前記データ保持部から前記ログ情報を入手可能になっており、
前記サーバがデータベースに保存するログ情報には、どのゲートウェイを介して入手したかを識別するゲートウェイIDが含まれていることを特徴とする請求項5記載のネズミ調査システム。
【請求項7】
前記サーバは、前記データ保持部から入手したログ情報に基づく解析によりネズミが出現した位置、移動方向及び出現頻度を含むネズミ実態情報を出力する解析部を有することを特徴とする請求項6記載のネズミ調査システム。
【請求項8】
複数の前記検出部は、格子状に配設されていることを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載のネズミ調査システム。
【請求項9】
複数の前記検出部は、ネズミの進路に沿って間隔を開けて一列に配列されていることを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載のネズミ調査システム。
【請求項10】
前記検出部がネズミを検知した時刻から所定時間、作動して前記検出部の位置を含む範囲を撮影する暗視カメラを備え、
前記データ保持部は、各ログ情報に前記暗視カメラの画像情報を含めることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のネズミ調査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネズミの実態を調査するネズミ調査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2は、ネズミの捕獲装置を開示する。この捕獲装置は、ネズミを捕獲する捕獲空間を有する捕獲箱と、ネズミが捕獲空間に進入したことを検出する検出部と、検出部の出力に応じて捕獲空間を閉鎖する閉鎖機構とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-100696号公報
【特許文献2】特許第6779399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ネズミの駆除を効率的に行うために、捕獲や、捕獲計画の立案に先立ち、あらかじめネズミの実態調査を行うことが望ましい。
【0005】
ネズミの実態調査には、ネズミの出現を検出する検出部が必要である。特許文献1,2の検出部は、ネズミの実態調査に用いる場合、次の問題点がある。
【0006】
(a)検出部がネズミを検出して、閉鎖機構が作動し、ネズミが捕獲されると、作業員が現場に赴き、ネズミを処理するまでは、検出部をリセットできないことになる。たとえ自動リセットしても、捕獲箱内のネズミのために、セット状態(検出状態)に戻ってしまう。このため、ネズミの捕獲時から作業員が捕獲箱内のネズミを処理する時までの期間は、捕獲箱の近傍に別のネズミが出現しても、検出ができない検出不能期間になってしまう。
【0007】
(b)ネズミは知能が高いので、捕獲装置内の捕獲されたネズミを知ると、他のネズミは、当該捕獲装置の場所には近寄らなくなり、ネズミの実態が有効に把握できなくなってしまう。
【0008】
(c)捕獲の正確な日時は、不明確である。特許文献2の捕獲装置では、サーバが各捕獲装置に対しネズミの捕獲の有無の回答を求める問い合わせを定期的又は不定期的に実施している。そして、サーバが捕獲装置から捕獲有りの回答を受信しても、捕獲日時は回答には含まれていないため、サーバは、捕獲日時を回答の受信日時にするしかなく、実際の検出日時から大きくずれることがある。
【0009】
(d)捕獲装置は、比較的大型であるため、狭小空間における配備に支障がある。このため、ネズミの検出も、狭小空間の検出は困難になってしまう。
【0010】
(e)捕獲装置に組み込まれる検出部は、通常1個であり、かつ寸法制限のために、広さの確保が困難である。したがって、一点検出となり、すなわち多点検出が困難で、ネズミの移動方向、移動速度、進路(直進か、曲がったか)の検出が困難である。
【0011】
本発明は、かかる問題に鑑み、ネズミの実態を適切に把握することを可能にしたネズミ調査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のネズミ調査システムは、
検出領域におけるネズミの存在検出に係る電気信号を出力し、ネズミの出現位置を特定できる状態でネズミ出現管理範囲に配置された少なくとも1つの検出部と、
前記検出部に有線接続され前記検出部から前記電気信号を受信したときは、受信のつど、受信の日時を当該検出部の配置位置に対応付けたログ情報を記憶部に記憶するとともに、近距離無線通信により外部の無線通信機に対し前記記憶部の前記ログ情報を送信可能になっているデータ保持部と、
を備え、
前記検出部にはネズミ捕獲手段が設けられていない。
【0013】
本発明の別のネズミ調査システムは、
検出領域におけるネズミの存在検出に係る電気信号を出力し、ネズミの出現位置を特定できる状態でネズミ出現管理範囲に配置された少なくとも1つの検出部と、
前記検出部に有線接続され前記検出部から前記電気信号を受信したときは、受信のつど、受信の日時を当該検出部の配置位置に対応付けたログ情報を記憶部に記憶するとともに、近距離無線通信により外部の無線通信機に対し前記記憶部の前記ログ情報を送信可能になっているデータ保持部と、
前記データ保持部とインターネットとの間に介在するゲートウェイと、
前記インターネットに接続され、前記ゲートウェイを介して前記データ保持部と交信して前記データ保持部が前記記憶部に保持する前記ログ情報を前記データ保持部から入手し、入手したログ情報に基づく解析によりネズミが出現した位置、移動方向及び出現頻度を含むネズミ実態情報を出力するサーバと、
を備え、
前記検出部にはネズミ捕獲手段が設けられていない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、データ保持部は、有線接続された検出部からの電気信号を受信すると、当該検出部の配置位置に対応付けられた受信日時をログ情報として記憶部に記憶する。これにより、各検出部におけるネズミの出現日時を時系列に解析することが可能となり、ネズミの出現について有意義な実態調査を行うことができる。
【0015】
本発明によれば、ネズミ調査システムは、ネズミの捕獲は行わないので、ネズミに対して警戒心を抱かせることはない。この結果、ネズミは、検出部の存在にもかかわらず、普段の挙動を維持する。これにより、ネズミの正確な実態を調査することができる。
【0016】
本発明によれば、ネズミ出現管理範囲に配置される検出部は、捕獲箱内への収容を必要としない。これにより、ネズミが出現しそうな狭小な空間における実態調査を支障なく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ログ情報の収集を訪問で行うネズミ調査システムの模式的な構成図である。
図2】データ保持箱の構成図である。
図3】訪問収集方式のネズミ調査システムにおけるログ情報をデータベースにストアするストア処理システムの模式図である。
図4】ネット収集方式のネズミ調査システムの模式的な構成図である。
図5】検出装置の構成図である。
図6】別の検出装置の構成図である。
図7】制御箱による制御方法のフローチャートである。
図8図4のネズミ調査システムにおけるログ情報の収集をサーバによるポーリング方式で行う収集方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、全図を通して同一の符号を使用する。
【0019】
(訪問収集方式のネズミ調査システム)
図1は、ログ情報の収集を訪問で行うネズミ調査システム10の模式的な構成図である。ネズミ調査システム10では、調査場所(ネズミ出現管理範囲の一例)12a,12b,12cが設定されている。調査場所12(調査場所12a,12b,12cの総称)は、各顧客からネズミ11の実態調査(生息情報の調査を含む)を依頼された調査会社26(図3)が、各顧客の所有又は管理する建築物の屋内、場合によっては屋外に、ネズミ11の出現が予想されるネズミ出現管理範囲として設定する。ネズミ調査システム10における調査場所12は、比較的規模の小さい個人営業の飲食店や食品店を想定している。
【0020】
調査場所12は、具体的には、例えば天井裏、床下、壁裏、ゴミ置き場近辺等のネズミ11の出現確率が高いと予測される場所に設定されている。図1では、簡略化のため、調査場所12は3個となっているが、実際のネズミ調査システム10では、多数の調査場所12が設定される。また、単一の顧客に複数の調査場所12が設定されることもある。
【0021】
各調査場所12には、少なくとも1つの検出装置22が配備される。各検出装置22は、1つの制御箱19と、少なくとも1つの検出部20とが配備されている。
【0022】
検出部20は、配置後、移動しないように、また、作業者が適宜、変更できるようにするために、接着剤や接着テープを用いて壁面や床面等に留められる。すなわち、作業員等は、壁面等に一度留めた検出部20を、後から適宜、剥がして、留める場所を変更することができる。
【0023】
図2は、検出装置22の詳細図である。制御箱19は、各検出部20から適当に離れた場所に配置され、各検出部20とは配線21により個々に有線接続されている。
【0024】
制御箱19と検出部20との間に配線21が介在することにより、検出部20は、制御箱19の配設に支障のある狭小空間にも配設が可能になる。制御箱19は、各検出部20から配線21を介して電気信号を受信する。
【0025】
検出部20は、検出領域におけるネズミ11の存在検出に係る電気信号を出力し、ネズミ11の出現位置を特定できる状態で調査場所12に配置され、例えば、圧電シート、シート状のタッチセンサ、又は焦電型赤外線センサ(人感センサ)が採用される。
【0026】
圧電シートは、接触型のセンサであり、ネズミ12との接触面が検出領域となり、ネズミ12の存在位置とネズミ12の重量とを検出することができる。タッチセンサは、接触型と非接触型とがある。焦電型赤外線センサは、非接触型のセンサである。接触型のセンサでは、接触面がネズミ12の存在の検出領域となる。非接触型のセンサでは、センサから所定距離内がネズミ12の存在の検出領域となる。
【0027】
検出部20は、検出により生成した電気信号を制御箱19に出力する。検出部20の使用例として、検出部20を十分な広さとして、検出面における重量分布を検出することができる。また、検出面を複数の区画に分割し、区画ごとにネズミ12の存否を検出できるようにしてもよい。その場合、区画ごとにいIDが割り当てられ、制御箱19はIDに基づいてネズミ12がどの区画に存在するかを検出することができる。焦電型赤外線センサは、体温センサの一種である。
【0028】
制御箱19は、データ処理部65、記憶部67、無線通信部68及び乾電池69を備えている。データ処理部65は、クロックを内蔵する。記憶部67は、不揮発性メモリである。乾電池69は、制御箱19の電力を賄う。乾電池69は、電力が低下すると、新しい乾電池69に交換される。
【0029】
図2において、検出装置22は、検出部20に加えて、又は検出部20の代わりに暗視カメラ62を備えることもできる。暗視カメラ62は、複数の検出部20が配置されている領域の全部を含む撮影領域を有することが好ましい。暗視カメラ62は、例えば赤外線カメラであり、動画及び/又は静止画を生成することができる。
【0030】
データ処理部65は、各検出部20からのネズミ11の検知信号からネズミ11が撮影領域内に存在することを検知すると、検知時刻から所定期間、暗視カメラ62を作動させる。暗視カメラ62による撮影画像は、記憶部67に記憶される。暗視カメラ62が、動画カメラのときは、動画から撮影領域内のネズミ11の動きや移動方向を認識することができる。暗視カメラ62が、静止画カメラのときは、検知時刻から一定時間間隔で暗視カメラ62を作動させて、一定時間間隔の静止画の時系列からネズミ11の挙動の変化や移動方向を認識することができる。
【0031】
データ処理部65は、いずれかの検出部20からネズミ11の存在を検出すると、内蔵のクロックから現在の日時を検出して、検出日時と制御箱19のIDとを含むログ情報を記憶部67に記憶する。ログ情報には、さらに、制御箱19における検出部20のIDを含めることができる。制御箱19のID+制御箱19別の検出部20のIDとにより、ネズミ11の調査者は、ログ情報からどの場所に設置した制御箱19のどの検出部20でいつネズミ11が出現したのかを認識することができる。
【0032】
なお、データ処理部65が記憶部67に記憶するログ情報には、制御箱19のIDを省略することができる。その場合、データ処理部65は、外部の情報機器から記憶部67に記憶するログ情報の送信を要求されたときに、記憶部67に記憶している各ログ情報に自己のIDを紐付けして、外部の情報機器に送信する。
【0033】
データ処理部65は、無線通信部68を介して情報端末18と交信可能になっている。情報端末18と無線通信部68との通信方式は、例えば近距離無線通信(例:Bluetooth(登録商標))が使用される。情報端末18は、例えばタブレットやスマートホンである。
【0034】
図3は、図1のネズミ検知システム10において各調査場所12の制御箱19から情報端末18に収集したログ情報をデータベースにストアするストア処理システムの模式図である。図3は、調査会社26にストア処理システムが設けられている例を示している。
【0035】
調査会社26において、個人用PC30とログ情報解析用PC31とは、LAN27を介してデータを送受自在になっている。データ収集員16は、情報端末18を自分の個人用PC30に有線接続して、LAN27を介して又はWi-Fi(登録商標)等の無線接続を介してログ情報解析用PC31へ、収集したログ情報を送信する。ログ情報解析用PC31は、内蔵又は外付けのハードディスクを装備し、情報端末18からのログ情報をハードディスク内のデータベースに保存する。
【0036】
ログ情報解析用PC31の記憶装置には、ログ情報のデータベースの他に、コンピュータソフトウェアとしての実態調査装置33が実装されている。実態調査装置33は、ログ情報読出し部34、解析部35及び解析結果出力部36を備えている。実態調査装置33の具体的な処理内容については、後述する。
【0037】
(データ収集員の作業)
データ収集員16は、調査会社26から派遣され、情報端末18を携帯して、所定の訪問経路17に沿って定期的又は不定期に各調査場所12を訪問する。訪問経路17は、調査会社26の立案計画に基づき設定される。
【0038】
データ収集員16は、各調査場所12において、各制御箱19が記憶、保持しているログ情報を収集して、情報端末18の不揮発メモリに記憶する。各制御箱19が記憶、保持しているログ情報は、各調査場所12における前回のログ情報の収集日時から今回の収集日時までに生成されたログ情報を少なくとも含む。なお、典型的には、日時には、分まで含める。制御箱19が、クロックを内蔵したデータ処理部65を装備することにより、日時には、分及び秒まで含めることもできる。
【0039】
データ収集員16は、各調査場所12に訪れると、情報端末18を操作し、情報端末18から近距離無線通信で制御箱19にログ情報の送信要求を送信する。制御箱19は、情報端末18からの送信要求に対して、メモリ内のログ情報を情報端末18に送信する。制御箱19は、ログ情報の送信終了後、メモリをリセットする。
【0040】
一方、情報端末18のメモリには、各調査場所12で収集したログ情報が記憶される。情報端末18のメモリに記憶された各ログ情報には、前述したように、制御箱19のみのIDか、制御箱19のIDに加えて当該制御箱19に共通に接続されている検出部20のIDが含まれている。したがって、ログ情報からどの制御箱19(どの調査場所12でもある。)であるか、さらには、どの制御箱19のどの検出部20の検知に基づいたログ情報であるかを一意に識別可能である。
【0041】
なお、ログ情報解析用PC31のデータベースや後述のネズミ検知システム41(図4)のデータベース55には、制御箱19のIDと、当該制御箱19が配備されている住所との対応リストの情報が含まれている。したがって、この対応リストの情報に基づいてログ情報に含まれる制御箱19のIDから当該ログ情報がどの調査場所のログ情報であるかを判別することができる。
【0042】
データ収集員16は、自社の調査会社26(図3)に戻ると、調査会社26内の情報処理システムに含まれる個人用PC30を使って、ログ情報解析用PC31のハードディスク等に実装されているデータベースにデータ収集員16が情報端末18のメモリ内のログ情報をストアする。
【0043】
なお、図3の例では、データ収集員16が情報端末18のメモリ内のログ情報をデータベースにストアする場所と、データベースが配備されている場所とが同一である場合を想定している。しかしながら、データベースの配備場所は、データ収集員16が情報端末18のメモリ内のログ情報をデータベースにリモートアクセスしてストア可能であれば、データ収集員16が情報端末18内のログ情報をストア処理する場所から遠く離れていてもよい。
【0044】
(ネット収集方式)
図4は、ネットを介してログ情報の収集を行うネズミ調査システム41の模式的な構成図である。顧客ビル40a,40b,40cは、各顧客が所有又は管理している。各顧客ビル40(顧客ビル40a,40b,40cの総称)におけるネズミの実態調査を依頼する顧客として、比較的規模の大きいビル管理会社、食品会社及び飲食店チェーンを想定している。
【0045】
各顧客ビル40には、少なくとも1つの調査場所12が設定されている。顧客ビル40aには、例えばn個の調査場所12a1-12anが設定されている。複数の調査場所12a(調査場所12a1-12anの総称)は、相互に異なる場所として設定されおり、例えば、顧客ビル40a内の異なる階や、同一階の異なる区画(例:顧客ビル40が雑居ビル等であるときの各店舗や部屋)である。
【0046】
各顧客ビル40には、1つ以上のゲートウェイ44が配備される。各制御箱19は、無線通信部68(図2)を内蔵しており、対応するゲートウェイ44に無線通信可能になっている。ゲートウェイ44は、インターネット47とも無線通信可能になっており、無線通信を介して制御箱19とインターネット47との間の交信を中継する。
【0047】
インターネット47には、調査会社50のPC51及びクラウド型プラットフォーム53のサーバ54が接続されている。サーバ54は、さらにデータベース55に接続されている。サーバ54は、定期的に又は不定期に各制御箱19に対して各制御箱19が前回の送信時から現在の日時までに新たに記憶したログ情報の送信を、各ゲートウェイ44を介して要求する。サーバ54は、各制御箱19から送信されて来たログ情報をデータベース55に保存する。
【0048】
解析オペレータは、調査会社50のPC51を介してサーバ54にアクセスして、サーバ54の実態調査ソフトウェア(ログ情報解析用PC31の実態調査装置33に相当する。)を作動させる。そして、その実態調査ソフトウェアでデータベース55内のログ情報に基づきネズミ11の実態情報に関する種々の解析を行うようになっている。
【0049】
なお、サーバ54は、制御箱19に対して、前回の送信要求時から今回の送信要求時までのログ情報の送信要求ではなく、入手しようとするログ情報の生成期間(ネズミ11の検知日時の期間)を指定することができる。この場合、制御箱19は、該当生成期間に含まれるログ情報を記憶部67から読み出して、サーバ54に送信する。
【0050】
(検出装置のその他の実施例)
図5は、検出装置74aの構成図である。検出部20a-20dは、2×2の格子配列で連結され、検出装置74aを構成している。検出装置74aは、水平支持面78(例:天井板の上面や床下の地面)に接着剤や画鋲等により取り外し自在に固定されている。検出部20a-20dは、個々に配線21を介して制御箱19の対応する接続端子60に接続されている。
【0051】
各検出部20(検出部20a-20dの総称)の広さは、ほぼネズミ11の大きさに設定されている。また、各検出部20の出力電圧は、個別に変化するので、すなわち、制御箱19は、ログ情報を検出部20ごとに対応のIDを含めて生成するので、同一の制御箱19に係るログ情報を時系列に並べることにより、1匹のネズミ11が検出装置74の検出部20をどの順番に移動したか(移動方向)を判別することができる。
【0052】
また、各検出部20の面積をネズミ11の大きさ程度にし、かつ検出装置74における検出部20の総数を適当に増大すれば、複数の検出部20が配置されているネズミ出現管理範囲としての調査場所12を同時に通過したネズミ11の頭数をログ情報から判別することができる。
【0053】
さらに、検出部20自体は、圧力分布を検出自在である。したがって、ネズミ11の大きさより十分に大きな広さ(少なくともネズミ11の寸法に対して縦横それぞれ2倍程度の広さ)の1枚の検出部20を敷設して、データ処理部65に電気信号を出力することもできる。このような広い感圧シートの使用態様として、次の2つがある。
【0054】
第1の使用態様では、検出部20を、縦横がそれぞれ1匹のネズミ11の大きさ程度の正方形の区画として、これら区画が縦横に格子状に並べた複数の区画に分割する。そして、各区画の検出重量から各区画におけるネズミ11の有無を判断する。この場合、各区画に検出部IDが付与される。
【0055】
第2の使用態様では、検出部20における重量分布(X-Y座標における各座標位置の重量の情報)をそのまま制御箱19に送る。制御箱19のデータ処理部65は、圧力分布の情報から検出部20におけるネズミ11の存在位置(X座標位置,Y座標位置)を検出する。この場合、(X座標位置,Y座標位置)が検出部IDとなる。
【0056】
データ処理部65は、検出部IDと検知日時とを含めたログ情報を生成し、記憶部67に記憶する。
【0057】
図6は、検出装置74bの構成図である。立設物81(例:床下の柱)は、水平支持面78(例:地面)から垂直に突出している。ネズミ11は、立設物81を両側から両手を挟みつつ、登っていく。検出部20a-20cは、立設物81に下から順番に所定の間隔を開けて貼り付けられていて、検出装置74bを構成する。各検出部20(検出部20a-20cの総称)は、個々に配線21を介して制御箱19の対応する接続端子60に接続されている。
【0058】
ネズミ11は、立設物81を登る時、両手で立設物81を強く挟圧しながら、登る。各検出部20は、ネズミ11の一方の手から大きな感圧を受けるので、この感圧が電気信号として制御箱19に配線21を介して制御箱19に送られる。これにより、データ処理部65が生成したログ情報から、ネズミ11が立設物81を昇り降りした日時、及び各日時で上下方向のどちらに移動したかが把握される。
【0059】
(訪問収集方式及びネット収集方式のネズミ調査システムにおける制御箱による制御方法)
図7は、ネズミ検知システム10及びネズミ検知システム41における制御箱19による制御方法のフローチャートである。制御箱19は、ネズミ検知システム10及びネズミ検知システム41のいずれにも装備されるが、交信する情報処理装置がネズミ検知システム10とネズミ検知システム41とで異なるので、制御箱19による制御方法は、ネズミ検知システム10の場合とネズミ検知システム41の場合とで若干相違している。
【0060】
STEP101では、データ処理部65が検出部20(検知部)からの検知信号を配線21を介して受信したか否かを判定する。データ処理部65は、判定結果が肯定的であれば、処理を次のSTEP102に進める。データ処理部65は、判定結果が否定的であれば、一定時間が経過してから、STEP101を再度、実行する。
【0061】
データ処理部65は、具体的には、データ処理部65は、検出部20からの電圧信号が所定の閾値以上になると、当該検出部20がネズミ11を検知したと判断する。
【0062】
STEP102では、検出部20のIDを取得する。検出部20のIDは、制御箱19において各接続端子60に割り当てられたIDとされる。
【0063】
STEP103では、データ処理部65は、クロック66の出力から現在日時を取得し、当該現在日時をネズミ11の検知日時とする。
【0064】
STEP104では、データ処理部65は、ネズミ11を検知した検出部20のID(検出部ID)と検知日時とを対応付けたログ情報を記憶部67に記憶する。さらに、データ処理部65は、自己の生成したログ情報を他の制御箱19のデータ処理部65が生成したログ情報から識別するために、自己のID(データ保持部ID)をログ情報に含ませることができる。
【0065】
ログ情報は、典型的には、配列構造になっている。データ処理部65が作成する1単位(1レコード)の最小のログ情報は、(検知日時,検出部ID,データ保持部ID)の3要素で表現される。なお、ネズミ調査システム41のサーバ54は、各ゲートウェイ44から各ログ情報を受信した時、受信したログ情報に送信元のゲートウェイIDをログ情報に含ませて、(検知日時,検出部ID,データ保持部ID,ゲートウェイID)の少なくとも4要素のログ情報に加工して、データベース55に記録する。
【0066】
制御箱19内に、温度センサや湿度センサを設け、各ログ情報に検知日時の温度や湿度の情報を含めてもよい。
【0067】
一方、ネズミ調査システム10におけるログ情報解析用PC31のデータベース及びネズミ調査システム41のデータベース55には、ログ情報と共に、IDと検知位置と対応付けるリスト情報が更新(追加、削除、変更を含む。)可能に記録されている。ログ情報解析用PC31のデータベースにおける最小のリスト情報の1単位は、(検出部ID,データ保持部ID,検出部20の設置場所)の少なくとも3要素で表現される。データベース55における最小のリスト情報の1単位は、(検出部ID、データ保持部ID、ゲートウェイID及び検出部20の設置場所)の少なくとも4要素で表現される。
【0068】
STEP105では、データ処理部65は、情報端末18(無線通信機)からログ情報の送信要求を近距離無線通信で受信したか否かを判定する。データ処理部65は、判定結果が肯定的であれば、処理をSTEP106に進める。データ処理部65は、判定結果が否定的であれば、処理をSTEP101に戻す。
【0069】
STEP106では、データ処理部65は、ログ情報の送信要求を出した要求元の情報端末18に、前回のログ情報送信時から今回の送信要求時までの期間に記憶部67に記憶したログ情報を近距離無線通信で送信する。データ処理部65は、STEP106の処理終了後、処理をSTEP101に戻す。
【0070】
(ネット収集方式のログ情報収集方法/その1)
図4のネズミ調査システム41におけるログ情報の収集は、基本的にはプッシュ通信により行われる。すなわち、制御箱19は、例えば、定刻になると、又は検出部20からネズミ11の検出の電気信号を受信すると、自動的にゲートウェイ44を介してサーバ54にログ情報を送信する。
【0071】
制御箱19は、通信環境や装置環境によりゲートウェイ44を介してサーバ54にログ情報をプッシュ送信できなかったときは、一定時間が経過してから、再度、プッシュ通信を実施する。
【0072】
(ネット収集方式のログ情報収集方法/その2)
図8は、図4のネズミ調査システム41におけるログ情報の収集をサーバ54によるポーリング方式で行う収集方法のフローチャートである。
【0073】
ステップS121において、サーバ54は、現在時刻が制御箱19からのログ情報の収集時刻であるか否かを判定する。サーバ54は、判定結果が肯定的であれば、処理を次のステップS122に進める。
【0074】
ステップS122において、サーバ54は、今回、ログ情報を収集する制御箱19(収集対象の制御箱19)を確定するとともに、確定した制御箱19を所定の基準でソーティングする。
【0075】
ステップS123において、サーバ54は、ソーティングの順番に基づいて各制御箱19からログ情報を収集し、収集したログ情報をデータベース55に保存する。
【0076】
(実態調査)
実態調査装置33(図3)について詳説する。図4のサーバ54は、図示は省略しているが、実態調査装置33の規模(例:解析項目、解析対象のログ情報の総数及び期間、解析対象のログ情報の収集地域)を拡大したアプリを実装している。換言すると、サーバ54は、少なくともログ情報解析用PC31が実装している実態調査装置33による解析処理は含む解析処理は実行する。
【0077】
ログ情報読出し部34は、データベースから今回の解析に使用するログ情報を選択して、読み出す。読み出すログ情報を絞り込むのは、ログ情報読出し部34がログ情報のデータベースに基づいて行うネズミの実態調査の解析は、ログ情報の収集した調査場所12及び期間を限定した方が有効な調査を行うことができる場合があるからである。
【0078】
解析部35は、ログ情報読出し部34が読み出したログ情報に基づいて今回、指示された解析を行う。解析結果出力部36は、解析部35からの解析結果をディスプレイ、プリンタ又はファイルに出力する。
【0079】
ログ情報読出し部34が読み出したログ情報に基づく解析とは、ネズミ実態情報に関するものであり、具体的には、(a)調査場所12別の実績としての過去の日付、曜日、週及び/又は時間帯別のネズミ11の出現位置、移動方向及び出現頻度(単位時間当たりの出現頭数)、並びに(b)調査場所12別の予測としての将来(例:1週間後、1月後及び/又は数か月後)の日付、曜日、週及び/又は時間帯別のネズミ11の出現位置、移動方向及び出現頻度が含まれる。
【0080】
(b)の予測には、該当する調査場所12のログ情報のみで予測する場合だけでなく、該当する調査場所12と、該当する調査場所12から所定距離内の近辺の調査場所12との過去及び現在のログ情報に基づいて予測することもできる。解析結果は、グラフや表等で示される。
【0081】
なお、図4のサーバ54による解析には上記(a)及び(b)の調査場所12別以外に顧客ビル40別も含む。
【0082】
(変形例)
図1のネズミ調査システム10において、情報端末18に、ログ情報解析用PC31の実装する実態調査装置33を簡易化したものを実装させることができる。実態調査装置33による解析の上記(a)及び(b)では、調査場所12別に解析が行えるように説明した。これに対し、情報端末18に実装する簡易化した実態調査装置33では、例えば、データ収集員16が各調査場所12において、各調査場所12の制御箱19から収集したログ情報に基づいて当該調査場所12の前回の収集時から今回の収集時まで期間限定で当該調査場所12のみのネズミ11の出現位置、移動方向及び出現頻度(単位時間当たりの出現頭数)、並びに(b)予測としての将来(例:1週間後、1月後及び/又は数か月後)の日付、曜日、週及び/又は時間帯別のネズミ11の出現位置、移動方向及び出現頻度とされる。
【0083】
データ収集員16は、訪問先の顧客において、制御箱19から情報端末18へのログ情報の取り込み後、情報端末18に実装されている簡易化した実態調査装置33を起動させて、当該顧客の調査場所12におけるネズミ11の実態情報の解析結果を、情報端末18の表示部に表やグラフで示すことができる。
【符号の説明】
【0084】
10,41・・・ネズミ調査システム、11・・・ネズミ、12a-12d・・・調査場所、18・・・情報端末(無線通信機)、19・・・データ保持箱(データ保持部)、20・・・感圧シート(検出部)、21・・・配線、23・・・実態調査装置、34・・・ログ情報読出し部、35・・・解析部、36・・・解析結果出力部、44・・・ゲートウェイ、47・・・インターネット、54・・・サーバ、55・・・データベース、・62・・暗視カメラ、65・・・制御部、66・・・クロック、67・・・記憶部、68・・・通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8