(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117226
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】多指エンドエフェクタ及び多指エンドエフェクタの教示装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/10 20060101AFI20230816BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20230816BHJP
B25J 9/22 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
B25J15/10
G05B19/42 H
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019822
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成孝
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB03
3C269BB09
3C269JJ09
3C269JJ20
3C269MN09
3C269MN14
3C269MN16
3C269MN17
3C269MN26
3C269SA04
3C269SA14
3C269SA33
3C707DS02
3C707ES04
3C707ES08
3C707EV11
3C707HS27
3C707JT10
3C707KS11
3C707KS21
3C707KS33
3C707KT01
3C707KT06
3C707KV08
3C707KW03
3C707KX08
3C707LS05
3C707LV06
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】対象物の大小に関わらず対象物を人が行う把持動作のように安定して把持し、精密な作業を実現し得る多指エンドエフェクタ及びその教示装置を提供する。
【解決手段】対象物を把持する第1指1a、第2指1b、第3指1cを備え、各指は1自由度の回転軸と駆動部とを有する二つ以上の関節を備え、対象物と接触する各指先端の把持部3は、掌側に面する第一の接触面32aと、それと接する第二の接触面32bと、第一及び第二の接触面を挟むように接する第三の接触面32c及び第四の接触面32dと、第一の接触面に垂直な第五の接触面32eを備え、各接触面は曲面34a~34dで接続され、第1指のフランジに最も近い回転軸は第1指の指先端に最も近い関節を伸ばした状態で第1指全体を対象物との第一の接触面を掌側に向けた姿勢で円錐状に回転させる回転軸を構成し、第2指のフランジに最も近い回転軸を回転中心として、第2指を第3指に対してV字状に角度を変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持して所定の位置へ移動させるロボットアームの先端に取付けられる多指エンドエフェクタであって、
前記多指エンドエフェクタは前記ロボットアームの先端のフランジ面に固定されており、
前記多指エンドエフェクタは、前記対象物を把持するための第1指と、第2指と、第3指とを備え、
前記各指は、前記対象物と接触する各指先端の把持部を所定の位置に移動させるための二つ以上の関節を備え、
前記各関節は、それぞれ、1自由度の回転軸であるとともに、前記回転軸を正逆回転駆動しかつそれぞれに独立した駆動部を備え、
前記対象物と接触する各指先端の前記把持部は、各指先端に最も近い関節の回転軸を含む平面に平行かつ前記多指エンドエフェクタの掌側に面する第一の接触面と、前記指先端に向かい前記指先端の厚みが減少する角度に傾斜して前記第一の接触面と接する第二の接触面と、前記第一の接触面及び前記第二の接触面を挟むように鈍角に傾斜して接する第三の接触面及び第四の接触面と、各指先端に最も近い関節の回転軸を含む平面に平行かつ前記第一の接触面に垂直な第五の接触面とを備えるとともに、互いに隣接する前記接触面の境界部分は、エッジが存在しないように曲面で接続されており、
前記各関節のそれぞれの1自由度の前記回転軸のうち前記第1指の前記フランジ面に最も近い回転軸は、前記第1指の前記指先端に最も近い関節を伸ばした状態で前記第1指の全体を前記第1指の前記対象物との前記第一の接触面を前記掌側に向けた姿勢で円錐状に回転させる回転軸を構成し、
前記各関節のそれぞれの1自由度の前記回転軸のうち前記第2指の前記フランジ面に最も近い回転軸を回転中心として、前記第2指を前記第3指に対して、V字状に角度を変化させる多指エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記第1指は、先端側からフランジ面側に向けて、前記関節として第1関節と第2関節と第3関節とを有し、
前記第1関節は前記把持部を有し、
前記回転軸として、前記第1関節の回転軸と前記第2関節の回転軸とは平行であり、前記第3関節の回転軸は、前記第1指の全体を円錐状に回転させる前記回転軸であって、前記第1関節の回転軸と前記第2関節の回転軸とに対して直交し、
前記第2指は、先端側からフランジ面側に向けて、前記関節として第4関節と第5関節と第6関節とを有し、
前記第4関節は前記把持部を有し、
前記回転軸として、前記第4関節の回転軸と前記第5関節の回転軸とは平行であり、前記第6関節の回転軸は、前記第2指を前記第3指に対してV字状に角度を変化させるときの前記回転中心となる前記回転軸であって、前記第4関節の回転軸と前記第5関節の回転軸とに対して傾斜して配置され、
前記第3指は、先端側からフランジ面側に向けて、前記関節として第7関節と第8関節とを有し、
前記第7関節は前記把持部を有し、
前記回転軸として、前記第7関節の回転軸と前記第8関節の回転軸とは平行であり、
前記第8関節の前記回転軸を駆動する駆動部と前記第6関節の前記回転軸を駆動する駆動部とは連結されている、請求項1に記載の多指エンドエフェクタ。
【請求項3】
少なくとも1つの指に前記対象物に接触する先端部と先端側の前記駆動部との間に、前記第一の接触面から前記第五の接触面に加わる外力を計測する力覚センサを備える、請求項1又は2に記載の多指エンドエフェクタ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の多指エンドエフェクタに動作を教示する多指エンドエフェクタの教示装置であって、
前記教示装置は前記多指エンドエフェクタと同数の指を備え、
前記指の各関節の数は前記多指エンドエフェクタの各関節と同じ数であり、
前記指の各関節間の長さが前記多指エンドエフェクタと同じ長さである多指エンドエフェクタの教示装置。
【請求項5】
各指部先端に、指先を載置する載置部及び着脱可能に指先を拘束する拘束部を備える、請求項4に記載の多指エンドエフェクタの教示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つの把持指を備え、各把持指の把持面を介して対象物を把持し、対象物を操作する多指エンドエフェクタ及び多指エンドエフェクタの教示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
協働ロボットを含む産業用ロボットの把持手段を構成するエンドエフェクタとして、様々な形状のロボットハンド(以下単に「ハンド」という場合がある)が用いられている。この種のロボットハンドには、一般に、掌部に設けられた複数の把持指を備えた多指ハンドがある。この種の多指ハンドは、少なくとも1本の変位可能な把持指を動作させる駆動部を有し、制御装置によって駆動部を制御し、把持指を開閉させ、対象物を把持、ないし開放する構成である。
【0003】
ハンド構造としては、特許文献1に示す2つの多関節指と1つの単関節指とを有するハンドがある。そのハンドにおいて、一つの駆動アクチュエータからの駆動力により把持動作に関する異なるモードを実現することで、多様な把持動作の要求と簡素な構造との両立を図っている。
【0004】
図19では、第1多関節指500a及び第2多関節指500bと、第1多関節指500a及び第2多関節指500bとともに接続部501を中心に回転する単関節指500cとを備えるハンドであって、駆動アクチュエータ502から駆動力が付与されると、第1多関節指500a及び第2多関節指500bが取付部材503との接続部501を介して各指全体が同じ方向に回転する第1モードと、第1多関節指500aに含まれる第1所定指部504及び第2多関節指500bに含まれる第2所定指部505の第1モードでの回転が阻止された場合に、第1多関節指500aに含まれる第1所定指部504以外の指部が第1所定指部504に対して回転し、且つ、第2多関節指500bに含まれる第2所定指部505以外の指部が第2所定指部505に対して回転する第2モードが実行される。すなわち、第1モードでは指の先端部同士によって把持対象物をつまむ動作を行い、第2モードでは指部が、把持対象物を巻き込むように回転していき、巻き込み把持動作を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、必ず3点で把持対象物に接触しなければ安定した把持ができない。つまり、指先同士が合わさる構造になっていないため、指の幅より小さい対象物の把持ができない。また、把持対象物を巻き込み、握り込むような把持動作では、位置合わせが必要な緻密な把持動作を実現することは困難である。つまり、簡素化しすぎたハンドは、電子機器組立作業のように小さい対象物をつまみ動作を用いて把持を行い、ロボットにハンドリングさせるような用途には適用できないという課題を有している。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、対象物の大小に関わらず対象物を安定して把持し、人が行うような精密な作業を実現し得る、多指エンドエフェクタ及び多指エンドエフェクタの教示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる多指エンドエフェクタは、対象物を把持して所定の位置へ移動させるロボットアームの先端に取付けられる多指エンドエフェクタであって、
前記多指エンドエフェクタは前記ロボットアームの先端のフランジ面に固定されており、
前記多指エンドエフェクタは、前記対象物を把持するための第1指と、第2指と、第3指とを備え、
前記各指は、前記対象物と接触する各指先端の把持部を所定の位置に移動させるための二つ以上の関節を備え、
前記各関節は、それぞれ、1自由度の回転軸であるとともに、前記回転軸を正逆回転駆動しかつそれぞれに独立した駆動部を備え、
前記対象物と接触する各指先端の前記把持部は、各指先端に最も近い関節の回転軸を含む平面に平行かつ前記多指エンドエフェクタの掌側に面する第一の接触面と、前記指先端に向かい前記指先端の厚みが減少する角度に傾斜して前記第一の接触面と接する第二の接触面と、前記第一の接触面及び前記第二の接触面を挟むように鈍角に傾斜して接する第三の接触面及び第四の接触面と、各指先端に最も近い関節の回転軸を含む平面に平行かつ前記第一の接触面に垂直な第五の接触面とを備えるとともに、互いに隣接する前記接触面の境界部分は、エッジが存在しないように曲面で接続されており、
前記各関節のそれぞれの1自由度の前記回転軸のうち前記第1指の前記フランジ面に最も近い回転軸は、前記第1指の前記指先端に最も近い関節を伸ばした状態で前記第1指の全体を前記第1指の前記対象物との前記第一の接触面を前記掌側に向けた姿勢で円錐状に回転させる回転軸を構成し、
前記各関節のそれぞれの1自由度の前記回転軸のうち前記第2指の前記フランジ面に最も近い回転軸を回転中心として、前記第2指を前記第3指に対して、V字状に角度を変化させる。
【0009】
また、本発明の別の態様にかかる多指エンドエフェクタの教示装置は、前記多指エンドエフェクタに動作を教示する多指エンドエフェクタの教示装置であって、
前記教示装置は前記多指エンドエフェクタと同数の指を備え、
前記指の各関節の数は前記多指エンドエフェクタの各関節と同じ数であり、
前記指の各関節間の長さが前記多指エンドエフェクタと同じ長さである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の前記態様によれば、対象物の大小に関わらず、対象物を人が指で行う把持動作のように安定して把持し、精密な作業を実現し得る多指エンドエフェクタ及び多指エンドエフェクタの教示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】
図2における第3指の把持部のA-A線の拡大断面図
【
図5A】把持部形状及び6軸力覚センサの取付状態を表す図
【
図6A】本発明の実施の形態におけるハンドの動作状態を表す図
【
図6B】本発明の実施の形態におけるハンドの動作状態を表す図
【
図6C】本発明の実施の形態におけるハンドの動作状態を表す図
【
図7】本発明の実施の形態における教示装置の斜視図
【
図8】本発明の実施の形態における教示装置の平面図
【
図9】本発明の実施の形態における教示装置の側面図
【
図10】
図8における回転部のB-B線の拡大断面図
【
図11】
図8における把持部のC-C線の拡大断面図
【
図12】本発明の実施の形態におけるシステム構成を示す図
【
図13】本発明の実施の形態における教示装置による小型の把持対象物の把持状態を示す図
【
図14】本発明の実施の形態における教示装置による小型の把持対象物の把持状態の測定値を示す図
【
図15】本発明の実施の形態におけるハンドによる小型の把持対象物の把持状態を示す図
【
図16】本発明の実施の形態における教示装置による大型の把持対象物の把持状態を示す図
【
図17】本発明の実施の形態における教示装置による大型の把持対象物の把持状態の測定値を示す図
【
図18】本発明の実施の形態におけるハンドによる大型の把持対象物の把持状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、及び、それらの相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
<ハンドの構成>
図1は、本発明の実施の形態におけるロボット、例えば協働ロボットを含む産業用ロボットの把持手段を構成するエンドエフェクタの一例としてのハンドの斜視図である。そして、
図2はハンドの平面図、
図3はハンドの側面図である。各指の詳細な構造は、後述する。なお、以下の説明において、第1指1a、第2指1b、第3指1cが把持部3a~3cを把持対象物を把持する方向すなわちハンドの掌側の方向を内側、その反対となるハンドの手の甲の方向を外側ということとする。把持対象物としては、例えば、電子機機器組立工程においては、電子基板又はカバーなどの部品、又は、コネクタを備えた配線等が挙げられる。
【0014】
ハンドは、ロボットアームとの接続部から延在し、かつ、それぞれ二つ以上の関節とそれぞれ独立した駆動部とを有する、第1指1a、第2指1b、第3指1cとを備え、第1指1a、第2指1b、第3指1cとの先端に、対象物を把持する把持部3a~3cを備えている。
【0015】
図1及び
図2において、平板状の第1取付部材10は、第1指1aの平板状の第2取付部材11及び第2指1b及び第3指1cの平板状の第3取付部材12と、互いに直交するように組み合わせて、ロボットアームとの接続部を構成している。第1取付部材10に設けた複数のザグリ穴10aを介して図示しないロボットアーム先端のフランジ面に固定されている。第1指1a及び第2指1b及び第3指1cは、第1取付部材10の平面に対して傾斜した方向に延びるように配置されている。
【0016】
ハンドの各指は、対象物と接触する各指先端の把持部3a~3cを所定の位置に移動させるための二つ以上の関節を備えている。また、各関節は、それぞれ、1自由度の回転軸であるとともに、それぞれに独立した駆動部2a~2hを備えている。これについて、以下、各指について詳しく説明する。
【0017】
ハンドの第1指1aは、3つの関節となる第1~第3回転軸72a,72b,72cを有する第1~第3駆動部2a,2b,2cをL字状に連結して備えている。
【0018】
第1駆動部2aは、第1指1aの先端の第1把持部3aに最も近い位置に配置されたモータなどの駆動部である。C字状の第1連結部4aの両端を第1駆動部2aの第1回転軸72aに固定するとともに、第1連結部4aの先端面に第1把持部3aを固定している。第1回転軸72aは第1指1aの第1関節の回転軸である。よって、第1駆動部2aを駆動して第1回転軸72aを正逆回転することにより、第1連結部4aを介して第1把持部3aを内側及び外側に移動させる。
【0019】
第2駆動部2bは、第1駆動部2aよりも第1取付部材10側に配置されたモータなどの駆動部である。一対の屈曲板状の第2連結部4bの先端部間に第1回転軸72aを除く第1駆動部2aを挟み込んで固定するとともに、一対の屈曲板状の第2連結部4bの基端部を第2駆動部2bの第2回転軸72bに固定している。第1回転軸72aと第2回転軸72bとは平行である。第2回転軸72bは第1指1aの第2関節の回転軸である。よって、第2駆動部2bを駆動して第2回転軸72bを正逆回転することにより、第2連結部4bを介して第1駆動部2a及び第1把持部3aを一体的に内側及び外側に移動させる。
【0020】
第3駆動部2cは、第2駆動部2bよりも第1取付部材10側にあり、第2取付部材11に固定されているモータなどの駆動部である。一対の細長い板状の第3補助連結部84c1の先端部間に第2回転軸72bを除く第2駆動部2bを挟んで固定するとともに、一対の第3補助連結部84c1の基端部間にT字状の補助連結部84c2の頭部を固定し、T字状の補助連結部84c2の脚部の基端部をC字状の補助連結部84c3の先端面に面沿いに固定している。C字状の補助連結部84c3の両端は第3駆動部2cの第3回転軸72cに固定している。一対の細長い板状の第3補助連結部84c1とT字状の補助連結部84c2とC字状の補助連結部84c3とにより第3連結部4cを構成している。第3回転軸72cは第1回転軸72aと第2回転軸72bとに対して直交して配置されている。第3回転軸72cは第1指1aの第3関節の回転軸である。よって、第3駆動部2cを駆動して第3回転軸72cを正逆回転することにより、第3連結部4cを介して第2駆動部2b及び第2把持部3bを内側及び外側に移動させる。
【0021】
ハンドの第2指1bは、3つの関節となる第4~第6回転軸72d,72e,72fを有する第4~第6駆動部2d,2e,2fを直列的に連結して備えている。
【0022】
第4駆動部2dは、第2把持部3bに最も近い位置に配置されたモータなどの駆動部である。C字状の第4連結部4dの両端を第4駆動部2dの第4回転軸72dに固定するとともに、第4連結部4dの先端面に第2把持部3bを固定している。第4回転軸72dは第2指1bの第4関節の回転軸である。よって、第4駆動部2dを駆動して第4回転軸72dを正逆回転することにより、第4連結部4dを介して第2把持部3bを内側及び外側に移動させる。
【0023】
第5駆動部2eは、第4駆動部2dよりも第1取付部材10側に配置されたモータなどの駆動部である。一対の屈曲板状の第5連結部4eの先端部間に第4回転軸72dを除く第4駆動部2dを挟み込んで固定するとともに、一対の屈曲板状の第5連結部4eの基端部を第5駆動部2eの第5回転軸72eに固定している。第4回転軸72dと第5回転軸72eとは平行である。第5回転軸72eは第2指1bの第5関節の回転軸である。よって、第5駆動部2eを駆動して第5回転軸72eを正逆回転することにより、第5連結部4eを介して第4駆動部2d及び第2把持部3bを一体的に内側及び外側に移動させる。
【0024】
第6駆動部2fは、第5駆動部2eよりも第1取付部材10側にあり、第3取付部材12に固定されたモータなどの駆動部である。第5回転軸72eを除く第5駆動部2eの周囲を囲んで固定された枠状の第6補助連結部74f1には、第1取付部材10側に向けて延びるように固定された細長い板状の第6補助連結部74f2の先端が固定されている。第6補助連結部74f2の基端はC字状の第6補助連結部74f3の先端面に面沿いに固定されている。C字状の第6補助連結部74f3の基端部を第6駆動部2fの第6回転軸72fに固定している。第6補助連結部74f1と第6補助連結部74f2と第6補助連結部74f3とで第6連結部4fを構成している。第6回転軸72fは第4回転軸72dと第5回転軸72eとは直交している。第6回転軸72fは第2指1bの第6関節の回転軸である。よって、第6駆動部2fを駆動して第6回転軸72fを正逆回転することにより、第6連結部4fを介して第5駆動部2e及び第3把持部3cを一体的に第1指1aと第3指1cとの間で左右に移動させる。なお、第6回転軸72fは、第7回転軸72gと第8回転軸72hとも直交しているとともに、第3回転軸72cに対して傾斜して配置されている。
【0025】
ハンドの第3指1cは、2つの関節となる第7~第8回転軸72g,72hを有する第7~第8駆動部2g,2hを直列的に連結して備えている。
【0026】
第7駆動部2gは、第3把持部3cに最も近い位置に配置されたモータなどの駆動部である。C字状の第7連結部4gの両端を第7駆動部2gの第7回転軸72gに固定するとともに、第7連結部4gの先端面に第3把持部3cを固定している。第7回転軸72gは第3指1cの第7関節の回転軸である。よって、第7駆動部2gを駆動して第7回転軸72gを正逆回転することにより、第7連結部4gを介して第3把持部3cを内側及び外側に移動させる。
【0027】
第8駆動部2hは、第7駆動部2gよりも第1取付部材10側に配置されたモータなどの駆動部である。一対の屈曲板状の第8連結部4hの先端部間に第7回転軸72gを除く第7駆動部2gを挟み込んで固定するとともに、一対の屈曲板状の第8連結部4hの基端部を第8駆動部2hの第8回転軸72hに固定している。第7回転軸72gと第8回転軸72hとは平行である。第7回転軸72gと第8回転軸72hとは第6回転軸72fに直交している。第8回転軸72hは第3指1cの第8関節の回転軸である。よって、第8駆動部2hを駆動して第8回転軸72hを正逆回転することにより、第8連結部4hを介して第7駆動部2g及び第3把持部3cを一体的に内側及び外側に移動させる。
【0028】
一対の板状の第9補助連結部74i1の先端部間に第8回転軸72hを除く第8駆動部2hを挟み込んで固定するとともに、一対の板状の第9補助連結部74i1の基端部をC字状の第9補助連結部74i2の先端部に固定し、第9補助連結部74i2の基端部を第6回転軸72fを除く第6駆動部2fに固定している。第9補助連結部74i1と第9補助連結部74i2とで第9連結部4i構成している。
【0029】
次に、
図4を用いて、第1把持部3a~第3把持部3cの代表例として第3把持部3cについて詳細を述べる。
図4は、
図2における第3指1cの第3把持部3c近傍のA-A断面図である。
【0030】
少なくとも1つの指、例えば第3指1cの第3把持部3cには、対象物に接触する先端部と先端側の第7駆動部2gとの間に、第1把持部平面32aから第5把持部平面32eに加わる外力を計測する力覚センサ51を備えている。この実施形態では、第1把持部3a~第3f把持部3cにそれぞれ力覚センサ51を備えている。
【0031】
第3把持部3cは、一例として、金属素材からなる把持部基材31と把持部ゴム材32とからなる。
【0032】
第3把持部3cの把持部基材31は、6軸力覚センサ51の下端に、図示しないボルトで締結されている。6軸力覚センサ51は、その上端が、金属素材からなる把持部支持部材6に、ボルト6aにより締結されている。なお、把持部基材31及び把持部支持部材6は、それぞれ、6軸力覚センサ51の感度の観点より、縦弾性係数が高い鉄もしくはステンレスなどの金属を使用することが望ましい。6軸力覚センサ51は、フレキ配線52を介してセンサ基板53に接続されている。カバー7は、フレキ配線52とセンサ基板53とを保護するカバーである。また、把持部支持部材6は第7連結部4gの先端部に接続されている。
【0033】
さらに、
図5A及び
図5Bを用いて6軸力覚センサ51の取付状態について説明する。
図5A及び
図5Bは第3把持部3cの形状及び6軸力覚センサ51の取付状態を表す図である。6軸力覚センサ51は、第3把持部3cの把持部基材31を掘り込むように凹部31fを形成した凹部底面の取付面31aに固定されている。把持部ゴム材32は、把持部基材31の表面に形成されたゴム層である。すなわち、把持部ゴム材32は、6軸力覚センサ51を取り囲むように把持対象物との接触面を構成している。
【0034】
この構成により、把持部ゴム材32を介在するだけで、6軸力覚センサ51と把持対象物との距離を極力短くすることが可能となり、第3把持部3c周辺に発生する外力を精度良く計測することができる。
【0035】
6軸力覚センサ51の力の検出方向のベクトルを
図5Aに示す。第3把持部3cの先端に向かってY方向とし、Y方向と直交し取付面31aと平行な方向をX方向とし、取付面31aに垂直な方向をZ方向としている。また、6軸力覚センサ51は、XYZ各軸の回転モーメントを検出することができる。
【0036】
対象物と接触する各指先端の第1~第3把持部3a~3cは、各指先端に最も近い第1、第4、第7関節の第1、第4、第7回転軸72a,72d,72gの回転中心軸を含む平面に平行かつハンドの掌側に面する第一の接触面、例えば下記の第1把持部平面32aと、指先端に向かい指先端の厚みが減少する角度に傾斜して第一の接触面と接する第二の接触面、例えば下記の第2把持部平面32bと、第一の接触面及び第二の接触面を挟むように鈍角に傾斜して接する第三の接触面、例えば下記の第3把持部平面32c及び第四の接触面、例えば下記の第4把持部平面32dと、各指先端に最も近い関節の回転軸を含む平面に平行かつ第一の接触面に垂直な第五の接触面、例えば下記の第5把持部平面32eとを備えている。また、互いに隣接する接触面の境界部分は、エッジが存在しないように曲面、例えば下記の第1~第4曲面34a~34dで接続されている。以下、これについて、具体例を基に説明する。
【0037】
図5Bに把持部ゴム材32の形状の一例を示す。本実施の形態において、把持部ゴム材32の中央部の基端側の第1把持部平面32aは、第1回転軸72aの回転中心軸を含む平面、例えば取付面31aと平行な平面である。把持部ゴム材32の中央部の第1把持部平面32aよりも先端側の第2把持部平面32bは、第1把持部平面32aに対して指先端に向かい指先端の厚みが減少する角度、例えば30度に傾斜して第一の接触面32aと接している。把持部ゴム材32の中央部の両側の第3把持部平面32c及び第4把持部平面32dは、それぞれ、第1把持部平面32a及び第2把持部平面32bに接するように第1把持部平面32a及び第2把持部平面32bの両側に形成されており、第1把持部平面32aに対してそれぞれ45度傾斜している。把持部ゴム材32の中央部の先端の第5把持部平面32eは、第3把持部3cの先端にあり、第1把持部平面32aに対して垂直である。また、
図4に示すように、第1把持部平面32aと第2把持部平面32bとの境界部分は、第1曲面34aによりエッジがないように滑らかにつながっているとともに、第2把持部平面32bと第5把持部平面32eとの境界部分は、第2曲面34bによりエッジがないように滑らかにつながっている。第3及び第4把持部平面32c,32dと第1及び第2把持部平面32a、32bとのそれぞれの境界部分についても、第3曲面34cと第4曲面34dで滑らかにつながっている。つまり、把持部ゴム材32は、人の指先を模した複数の平面を有する形状に構成されている。また、第2~第5把持部平面32b~32eには、それぞれ、摩擦力を向上する目的で凹部33が複数形成されている。把持対象物の把持を行う際には、主に第1~第4把持部平面32a~32dのいずれかの把持部平面が把持対象物に接触することにより、6軸力覚センサ51に、把持において発生する力を伝える。また、第5把持部平面32eが接触する場合には、6軸力覚センサ51に、Y方向の力成分が多く検出されることになり、第3把持部3cの先端が突き当たっている状態であることを検知することができる。なお、第3把持部3cの構成は、ハンドの第1指1a~第3指1cの各把持部3a~3c及び後述する教示装置の第1指100a~教示装置の第3指100cの各把持部300a~300cにおいて共通である。
【0038】
続いて、
図6A~
図6Cを用いて、第1指1aの第3駆動部2c及び第2指1bの第6駆動部2fの動作について説明する。
【0039】
第3駆動部2cの第3回転軸72cの中心軸CAcは、
図3及び
図6Aに示すように、第1把持部3aの第1把持部平面32aを掌側に向けて円錐の表面に沿って移動するように円錐の中心軸CA1に平行な位置関係となるように構成している。言い換えれば、第1指1aのロボットアーム側のフランジ面に最も近い第3回転軸72cは、第1指1aの指先端に最も近い第1関節を伸ばした状態で第1指全体を第1指1aの対象物との第1把持部平面32aを掌側に向けた姿勢で円錐状に回転させる回転軸として中心軸CA1を構成している。これにより、第3駆動部2cを駆動することにより、第3連結部4cを介して第2駆動部2bを回転するとともに、第1駆動部2a及び第1把持部3aを、第1把持部3aの第1把持部平面32aを内側に向けた姿勢のまま円錐面80の表面を移動させることができる。
図6Bに第3駆動部2cが動作した状態を示す。ここでは、人の親指と人差し指とで行う把持動作のような動作が可能となる。
【0040】
また、第6駆動部2fの第6回転軸72fの中心軸CA2は、
図2及び
図6Aに示すように第2指1bを第3指1cに対してV字状に回転する支点となっている。すなわち、第2指1bのロボットアーム側のフランジ面に最も近い第6回転軸72fを回転中心として、第2指1bを第3指1cに対して、V字状に角度を変化させるように構成している。これにより、第6駆動部2fを駆動することにより、第6連結部4fを介して第5駆動部2e、第4駆動部2d、及び第2把持部3bを第3指1cに対してV字状に移動させることができる。
図6Cに第6駆動部2fが動作した状態を示す。ここでは、人の人差し指と中指とで行う把持動作のような動作が可能となる。
【0041】
以上のように、前記ハンドによれば、対象物の大小に関わらず、対象物を人の親指と人差し指とで行う把持動作又は人差し指と中指とで行う把持動作のように安定して把持し、精密な作業を実現し得る多指エンドエフェクタの例としてのハンドを提供することができる。
【0042】
<教示装置の構成>
続いて、前記ハンドの教示動作を行う教示装置について
図7を用いて説明する。
図7は、本発明の実施の形態における教示装置の斜視図である。そして、
図8は本発明の実施の形態における教示装置の平面図、
図9は本発明の実施の形態における教示装置の側面図である。
【0043】
教示装置は、前記ハンドに動作を教示するハンドの教示装置であって、ハンドと同数の指を備え、指の各関節の数はハンドと同じ数であり、指の各関節間の長さがハンドと同じ長さとなっている。
【0044】
具体的には、教示装置は、ハンドの第1指1aと第2指1bと第3指1cとにそれぞれ対応する第1指100aと第2指100bと第3指100cとを備えている。
【0045】
図7においては、平板状の第4取付部材20は、教示装置の第1指100aの平板状の第5取付部材21及び教示装置の第2指100b及び教示装置の第3指100cの平板状の第6取付部材22と組み合わせて、教示装置の骨格を構成している。第4取付部材20は第6取付部材22と直交し、第5取付部材21は第4取付部材20と第6取付部材22とに対して傾斜して配置されている。
【0046】
第4取付部材20は、その板面の上方にARマーカー16を備えている。ARマーカー16を、図示しないカメラで撮像することにより、教示装置の位置と姿勢との計測を行う。
【0047】
続いて、教示装置の詳細を説明する。
【0048】
教示装置の第1指100aは、ハンドの第1指1aの第1、第2、第3連結部4a,4b,4cに対応する第1、第2、第3アーム400a,400b,400cの連結部分に、3つの関節となる第1、第2、第3回転部200a,200b,200cを備えている。第1、第2アーム400a,400bはそれぞれ平板状のアームであり、第3アーム400cはL字状に屈曲したアームである。第1回転部200aは、教示装置の第1把持部300aに最も近い第1関節であり、人の手において親指の第2関節付近に位置する。第3回転部200cは、人の手における親指の付け根付近に位置する。第1、第2、第3回転部200a,200b,200cの回転中心軸は、ハンドの第1指1aの第1、第2、第3回転軸72a,72b,72cの回転中心軸に対応する。
【0049】
教示装置の第2指100bは、ハンドの第2指1bの第4、第5、第6連結部4d,4e,4fに対応する第4、第5、第6アーム400d,400e,400fの連結部分に、3つの関節となる第4、第5、第6回転部200d,200e,200fを備えている。第4、第5アーム400d,400eはそれぞれ平板状のアームであり、第6アーム400fはL字状に屈曲したアームである。第4回転部200dは、教示装置の第2把持部300bに最も近い第4関節であり、人の手において人差指の第2関節付近に位置する。第5回転部200eは、人の手における人差指の第3関節付近に位置する。第4、第5、第6回転部200d,200e,200fの回転中心軸は、ハンドの第2指1bの第4、第5、第6回転軸72d,72e,72fの回転中心軸に対応する。
【0050】
教示装置の第3指100cは、ハンドの第3指1cの第7と第8連結部4g,4hに対応する第7と第8アーム400g,400hの連結部分に、2つの関節となる第7と第8回転部200g,200hを備えている。第7アーム400gは平板状のアームであり、第8アーム400hはとS字状に屈曲したアームである。第7回転部200gは、教示装置の第3把持部300cに最も近い第7関節であり、人の手において中指の第2関節付近に位置する。第8回転部200hは、人の手における中指の第3関節付近に位置する。第7と第8回転部200g,200hの回転中心軸は、ハンドの第3指1cの第7と第8回転軸72g,72hの回転中心軸に対応する。
【0051】
図10は
図8における第7回転部200gのB-B断面図である。各回転部200a~200hは同一の構造であり、第7回転部200gを代表例として、
図10を用いて詳細を説明する。
【0052】
第7回転部200gの回転軸となるシャフト8は、セットビス18によって第7アーム400gに固定されている。シャフト8の外側端部の端面にマグネット9を内蔵しており、シャフト8が回転するとマグネット9も一体となって回転する。第8アーム400hはマグネット9と対向する位置にエンコーダ13を備えており、シャフト8とマグネット9の回転に伴う磁束の変化を利用してシャフト8の回転量の計測を行っている。
【0053】
続いて、
図11を用いて教示装置の第1~第3把持部300a~300cの構成を説明する。
図11は
図8における教示装置の第3把持部300cのC-C断面図である。教示装置の第1~第3把持部300a~300cは、それぞれハンドの構成において説明した6軸力覚センサ51を内蔵している。
【0054】
なお、前述の通り、教示装置の第1~第3把持部300a~300cの構造は、ハンドの第1~第3把持部3a~3cと同一である。6軸力覚センサ51の上端を固定する教示装置の把持部支持部材14には、人の指を挿入する空間部14aを設けている。教示装置を手に装着し、各指先を空間部14aまで挿し入れた状態で、バンド15を用いて指の腹を教示装置の把持部支持部材14の内側下面14bに押し付けた状態で拘束する。空間部14aと内側下面14bとで指先を載置する載置部を構成する。指の拘束は、教示装置の第1指100a~教示装置の第3指100cにおいて同様に行う。また、U字状のバンド17により手の甲と教示装置の第1取付部材20とを密着させる。すなわち、本実施の形態の教示装置は、人の手に装着可能であるとともに、教示装置の3つの把持部300a,300b,300cのそれぞれの把持部支持部材14の内側下面14bに親指、人差指、中指の各指先をそれぞれのバンド15により拘束可能することにより、教示装置の第1指100a~教示装置の第3指100cは人の手による操作が可能になっている。バンド15は、着脱可能に指先を拘束する拘束部を構成している。
【0055】
教示装置を手に装着した状態で、手を開いた状態から親指を伸ばした状態で親指を掌側に回転させると、親指の腹は親指の付け根を中心軸とした円錐の表面をなぞるように回転する。このとき、教示装置においては、教示装置の第1指100aの第1把持部300aの第1把持部平面32aが掌側を向いたまま移動し、第1、第2、第3アーム400a、400b、400cを介して第3回転部200cのエンコーダ13で回転角度すなわち回転量を計測する。
【0056】
同様に、手の親指を内側及び外側に動かすと、第1回転部200a及び第2回転部200bのエンコーダ13で回転角度すなわち回転量を計測する。
【0057】
また、手の人差指を中指に対してV字状に開くと、教示装置の第2指100bの第4、第5、第6アーム400d、400e、400fを介して第6回転部200fのエンコーダ13で回転角度すなわち回転量を計測する。
【0058】
さらに、人差指を内側及び外側に動かすと、第4回転部200d及び第5回転部200eのエンコーダ13で回転角度すなわち回転量を計測する。
【0059】
中指を内側及び外側に動かすと、第7と第8アーム400g,400hを介して第7回転部200g及び第8回転部200fのエンコーダ13で回転角度すなわち回転量を計測する。
【0060】
また、教示装置の位置と姿勢とをARマーカー16により、教示装置の第1~第3把持部300a~300cに加わる力を6軸力覚センサ51により取得可能な構成になっている。つまり、教示装置は、人の手に装着した状態で、ハンド及びロボットアームを動作させるための教示データ作成手段として有効である。
【0061】
図12は本発明の実施の形態におけるシステム構成を示している。統括制御部40は、教示装置での教示情報を基にハンドを制御し、カメラ41と、ハンド制御部42と、ロボットコントローラ43と、教示装置通信基板44と、安全装置45と接続している。統括制御部40の内部には、画像処理部40aと、データ記録部40bと、演算部40cと、ハンド通信部40dと、ロボットコントローラ通信部40eと、安全装置通信部40fとを備えている。
【0062】
安全装置45は、例えば、非常停止ボタン又はエリアセンサーより構成されている。安全装置通信部40fは、常に安全装置45の状態を監視している。すなわち、安全装置45が作動すると直ちに安全装置通信部40fは異常を検知し、その検知に基づき統括制御部40はロボットコントローラ43及びハンド制御部42に対して電源供給停止などの停止処理を実行する。
【0063】
教示装置の第1~第8回転部200a~200hの各エンコーダ13より出力される値及び教示装置の第1~第3把持部300a~300cの各6軸力覚センサ51の値は、教示装置通信基板44を経由してデータ記録部40bに保存される。
【0064】
カメラ41は、教示装置に設けたARマーカー16を撮像し、撮像情報を画像処理部40aに送り、画像処理部40aにて教示装置の位置及び姿勢を抽出する。
【0065】
演算部40cは、画像処理部40a及びデータ記録部40bに保存された情報を基に、ハンドの第1指1a~第3指1cに備える第1~第8駆動部2a~2h及び図示しないロボットアームに対する動作指令値の演算を行う。演算結果は、演算部40cから、ハンド通信部40d及びロボットコントローラ通信部40eより、ハンドを駆動させるためのハンド制御部42及びロボットアームを駆動するためのロボットコントローラ43に伝えられて、ハンド制御部42及びロボットコントローラ43の制御の下にハンド及びロボットアームを駆動して所定の位置へ移動させる。
【0066】
ハンド制御部42は、6軸力覚センサ51によりそれぞれ計測した第1~第3把持部3a~3cに発生する力を基に、データ記録部40bに保存された把持力と比較を行い、把持状態の判定を行う。
<動作事例1>
前述の教示装置を用いた教示データの作成手順及びハンドによる把持動作について詳細に説明する。本発明の実施の形態において、作業者は教示装置を右手に装着する。右手の手の甲を教示装置の第1取付部材20の下面にあてがい、バンド17を手のひらに回して固定し、教示装置と右手を密着させる。なお、作業者は指先まで覆う手袋を装着することが望ましい。
【0067】
続いて、親指を教示装置の第1指100aの教示装置の把持部支持部材14の空間部14aに、指の腹が教示装置の把持部支持部材14の内側下面14bに接触する向きにして挿入する。その状態で、バンド15でテンションをかけつつ教示装置の把持部支持部材14の周囲を周回させて固定する。つまり、作業者の親指は教示装置の第1指100aに対して指先を拘束された状態となる。
【0068】
続いて、人差指を教示装置の第2指100bの教示装置の把持部支持部材14の空間部14aに、指の腹が教示装置の把持部支持部材14の内側下面14bに接触する方向で挿入する。その状態で、バンド15でテンションをかけつつ教示装置の把持部支持部材14の周囲を周回させて固定する。つまり、作業者の人差指は教示装置の第2指100bに対して指先を拘束された状態となる。
【0069】
同様に、中指を教示装置の第3指100cの教示装置の把持部支持部材14の空間部14aに、指の腹が教示装置の把持部支持部材14の内側下面14bに接触する方向で挿入する。その状態で、バンド15でテンションをかけつつ教示装置の把持部支持部材14の周囲を周回させて固定する。つまり、作業者の中指は教示装置の第3指100cに対して指先を拘束された状態となる。
【0070】
このようにして、右手に教示装置を装着することにより、作業者は自らの指を使い教示装置を操作しながら把持対象物の把持を行うことが可能になる。教示装置の第1~第8回転部200a~200hにそれぞれ組み込まれたエンコーダ13より出力される値及び教示装置の第1~第3把持部300a~300cにそれぞれ接続された6軸力覚センサ51の値は、教示装置通信基板44を経由してデータ記録部40bに保存される。
【0071】
教示装置に設けたARマーカー16をカメラ41により撮像を行い、画像処理部40aにて教示装置の位置及び姿勢を抽出する。
【0072】
図13は教示装置を用いて小型の把持対象物60を把持した状態である。小型の把持対象物60の一例としては直径5mm程度の小球である。教示装置の第1把持部300aの第2指側の
図5Bに示す第4把持部平面32dと、教示装置の第2把持部300bの
図5Bに示す第2把持部平面32bとを用いて、小型の把持対象物60の把持を行っている。この把持方法は、人の親指と人差し指とにおいて小型の把持対象を自然な姿勢で把持を行う、つまみ動作に相当する把持姿勢になる。
【0073】
このときの第1~第8回転部200a~200hにそれぞれ組み込まれているエンコーダ13が計測した回転角度及び小型の把持対象物60を把持した状態で教示装置の第1~第3把持部300a~300cの各6軸力覚センサ51が検出する力の一例を
図14に記す。つまり、
図14の第1~第8回転部200a~200hの値は、小型の把持対象物60を把持するために必要なハンドの第1~第8駆動部2a~2hの第1~第8回転軸72a~72hの回転角度を表し、把持部300a~300cに発生する合成力の値は、ハンドが小型の把持対象物60を把持する際の力の基準となる教示データの一例となる。
【0074】
なお、本実施の形態においては、把持する際に6軸力覚センサ51が検出する力は、XYZ軸が受ける力の合成ベクトルを基に算出を行っている。
【0075】
図15はハンドを用いて小型の把持対象物60を把持した状態である。画像処理部40a及びデータ記録部40bに保存された情報を基に、演算部40cにて、ハンドの第1指1a~第3指1cに備える第1~第8駆動部2a~2h及び図示しないロボットアームに対する動作指令値の演算を行う。演算結果は、ハンド通信部40d及びロボットコントローラ通信部40eより、ハンドを駆動させるためのハンド制御部42及びロボットアームを駆動するためのロボットコントローラ43に伝えられて、ハンド及びロボットアームを駆動して所定の位置へ移動させる。ハンドでは第1~第3把持部3a~3cに発生する力を6軸力覚センサ51により計測を行い、計測データを基に、データ記録部40bに保存された把持力と比較をハンド制御部42で行い、把持状態の判定を行う。例えば、ハンド制御部42において、計測データが、データ記録部40bに保存された把持力以上ならば、把持動作は成功と判定し、把持力未満ならば、把持動作は失敗と判定する。
<動作事例2>
図16は教示装置を用いて大型の把持対象物61を把持した状態である。大型の把持対象物61の一例としては一辺が80mmの直方体である。教示装置の第1指100aの第1把持部300aの
図5Bに示す第4把持部平面32d、教示装置の第2指100bの把持部300bの
図5Bに示す第1把持部平面32a及び教示装置の第3指100cの第3把持部300cの
図5Bに示す第1把持部平面32aを用いて、大型の把持対象物61の把持を行っている。この把持方法は、人の親指と人差し指と中指とにおいて大型の把持対象物61を自然な姿勢で把持を行う、つかみ動作に相当する把持姿勢になる。すなわち、親指を把持対象物61に正対する位置まで回動させるとともに、人差指を中指に対してV字型に拡げて、親指、人差指、中指の3指で把持対象物61を把持する持ち方になる。
【0076】
図17に大型の把持対象物61を把持した状態の第1~第8回転部200a~200hの角度及び教示装置の第1~第3把持部300a~300cに発生する力の一例を記す。つまり、
図17の各値は、大型の把持対象物61を把持するために必要なハンドの第1~第8駆動部2a~2hの第1~第8回転軸72a~72hの回転角度を表し、第1~第3把持部300a~300cに発生する合成力の値は、ハンドが大型の把持対象物61を把持する際の力の基準となる教示データの一例となる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、把持する際に6軸力覚センサ51が検出する力は、XYZ軸が受ける力の合成ベクトルを基に算出を行っている。
【0078】
図18はハンドを用いて大型の把持対象物61を把持した状態である。画像処理部40a及びデータ記録部40bに保存された情報を基に、演算部40cにて、ハンドの第1指1a~第3指1cに備える第1~第8駆動部2a~2h及び図示しないロボットアームに対する動作指令値の演算を行う。演算結果は、ハンド通信部40d及びロボットコントローラ通信部40eより、ハンドを駆動させるためのハンド制御部42及びロボットアームを駆動するためのロボットコントローラ43に伝えられて、ハンド及びロボットアームを駆動して所定の位置へ移動させる。ハンドでは第1~第3把持部3a~3cに発生する力を6軸力覚センサ51により計測を行い、計測データを基に、データ記録部40bに保存された把持力と比較をハンド制御部42で行い、把持状態の判定を行う。例えば、ハンド制御部42において、計測データが、データ記録部40bに保存された把持力以上ならば、把持動作は成功と判定し、把持力未満ならば、把持動作は失敗と判定する。
【0079】
本実施の形態においては、ハンドの第1指1a~第3指1cの各関節間の長さ及び各関節の位置を含む形状を、教示装置の第1指100a~教示装置の第3指100cの関節間の長さ及び各関節の位置を含む形状を同一構造にすることにより、教示装置によって取得した角度及び力の値をハンドの動作及び把持状態の判定に容易に使用できるようになっている。
【0080】
これらの動作事例が示すように、人の手に装着可能かつ人の手の構造に近い教示装置を用いることにより、対象物の大小に関わらず、対象物を安定して把持し、人が指で行う精密な動きを教示データとして使用できるとともに、人の手の構造に近い駆動部を備えるハンドにより、対象物の大小に関わらず、対象物を安定して把持し、精密な作業を実現できる。また、教示装置に備えるARマーカー16の位置を撮像することにより、教示装置の位置と姿勢とを認識してロボットアームに伝えることができる。つまり、本実施の形態における教示装置を用いることにより、従来複雑な設定が必要なロボット及びハンドの動作プログラムを数値入力あるいはロボットアームを直接触って動かすダイレクトティーチと比較して、容易に作成することを可能としている。
【0081】
なお、本実施の形態においては、教示装置の位置と姿勢との検出をARマーカー16を用いて行っているが、教示装置に赤外マーカーを取付けてモーションキャプチャシステムを用いても良い。
【0082】
また、教示装置の各関節の角度をエンコーダ13により計測しているが、カメラによる画像認識手段を用いて画像認識から導出しても良い。
【0083】
また、本実施の形態は、遠隔地からロボットアームを直接操作する遠隔操作にも適用してもよい。
【0084】
なお、把持部ゴム材32は導電性を有する素材が望ましい。
【0085】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の前記態様に関わる多指エンドエフェクタ及び多指エンドエフェクタの教示装置は、対象物を人が行う把持動作のように安定して把持し、精密な作業を実現しうる例えばロボットハンドのような多指エンドエフェクタ及び多指エンドエフェクタの教示装置を提供する能力を有するので、電子機器組立分野を始め様々な人代替が必要な産業分野あるいは店舗用ロボット、又は家庭用ロボット等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0087】
1a:第1指
1b:第2指
1c:第3指
2a~2h:第1~第8駆動部
3a~3c:第1~第3把持部
4a~4i:第1~第9連結部
6:把持部支持部材
7:カバー
8:シャフト
9:マグネット
10:第1取付部材
10a:ザグリ穴
11:第2取付部材
12:第3取付部材
13:エンコーダ
14:教示装置の把持部支持部材
14a:空間部
14b:内側下面
15:バンド
16:ARマーカー
17:バンド
18:セットビス
20:取付部材
21:取付部材
22:取付部材
31:把持部基材
31a:取付面
31f:凹部
32:把持部ゴム材
32a~32e:第1~第5把持部平面
33:凹部
34a~34d:第1~第4曲面
40:統括制御部
40a:画像処理部
40b:データ記録部
40c:演算部
40d:ハンド通信部
40e:ロボットコントローラ通信部
40f:安全装置通信部
41:カメラ
42:ハンド制御部
43:ロボットコントローラ
44:教示装置通信基板
45:安全装置
51:6軸力覚センサ
52:フレキ配線
53:センサ基板
60:小型の把持対象物
61:大型の把持対象物
72a~72h:第1~第8回転軸
74f1、74f2、74f3:第6補助連結部
74i1、74i2:第9補助連結部
80:円錐面
100a:教示装置の第1指
100b:教示装置の第2指
100c:教示装置の第3指
200a~200h:第1~第8回転部
300a~300c:教示装置の第1~第3把持部
400a~400h:第1~第8アーム
500a:第1多関節指
500b:第2多関節指
500c:単関節指
501:接続部
502:駆動アクチュエータ
503:取付部材
504:第1所定指部
505:第2所定指部
CA1:円錐の中心軸
CA2:第6回転軸の中心軸
CAc:第3回転軸の中心軸