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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117227
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】温度計測装置および温度計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20210101AFI20230816BHJP
   G01K 13/10 20060101ALI20230816BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20230816BHJP
【FI】
G01K1/14 E
G01K13/10
G01K7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019824
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高畑 陽
(72)【発明者】
【氏名】須網 功二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 光太
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CB01
2F056CE01
2F056CL00
2F056KC06
(57)【要約】
【課題】土壌を加熱する浄化方法において地盤の温度管理に関する作業量やコストを軽減できる温度計測装置および温度計測方法を提供する。
【解決手段】地中の温度を計測する温度計測装置1であって、地下水を監視するための水質観測井戸9の内部に挿入される内挿具2と、一つ以上のセンサ部3aを有する温度計3とを備え、内挿具2は、中空の管状部4と、管状部4内に地下水が浸入しないように閉塞する閉塞部5とを有し、管状部4は絶縁体であり、センサ部3aは、管状部4の内部に配置されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の温度を計測する温度計測装置であって、
地下水を監視するための水質観測井戸の内部に挿入される内挿具と、
一つ以上のセンサ部を有する温度計と、を備え、
前記内挿具は、中空の管状部と、前記管状部内に前記地下水が浸入しないように閉塞する閉塞部とを有し、前記管状部は絶縁体であり、
前記センサ部は、前記管状部の内部に配置される、
ことを特徴とする温度計測装置。
【請求項2】
前記温度計は、複数のセンサ部を有しており、
各々の前記センサ部は、異なる深度に設置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度計測装置。
【請求項3】
断熱性を有する材料で作成され、前記水質観測井戸内の地下水面に接して配置される保温部をさらに備え、
前記保温部は、環状を呈しており、孔部に前記内挿具が挿通される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度計測装置。
【請求項4】
前記保温部は、水よりも比重が小さい材質で構成されることで、前記地下水面で浮いた状態となっており、
前記保温部を回収するための回収部が前記管状部の外周面に設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の温度計測装置。
【請求項5】
前記内挿具は、前記水質観測井戸内の地下水に浮いた状態、吊持手段によって上方から吊られた状態、または固定手段によって前記水質観測井戸に固定されることで、下端部が前記水質観測井戸の底部に接触していない、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の温度計測装置。
【請求項6】
前記センサ部は、熱電対センサである、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の温度計測装置。
【請求項7】
地中の温度を計測する温度計測方法であって、
地下水を監視するための水質観測井戸を設置する井戸設置工程と、
前記水質観測井戸内に内挿具を挿入すると共に温度計を配置する温度計配置工程と、
前記温度計を用いて地中の温度を計測する温度計測工程と、を有し、
前記内挿具は、中空の管状部と、前記管状部内に前記地下水が浸入しないように閉塞する閉塞部とを有し、前記管状部は絶縁体であり、
前記温度計のセンサ部は、前記管状部の内部に配置される、
ことを特徴とする温度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計測装置および温度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有害物質で汚染された地中の土壌・地下水の浄化対策として、コストや環境負荷の小さい原位置浄化(非掘削)技術を適用する事例が増えている。原位置浄化技術の一つとして、地盤の温度を上げて汚染物質を浄化する「加熱脱着」があり、本技術を実施する際には浄化対象とする地盤の深度別温度を管理することが重要である。地盤の加熱方法には、例えば、(A)ヒーター等を用いる熱伝導加熱法、(B)土壌自体を抵抗体として電流を流して地盤を加熱する電気発熱法等の電気抵抗加熱法、(C)蒸気(スチーム)を地盤に注入する方法がある。
(B)電気発熱法では、地盤に電極を設置し、地下水が存在する汚染地盤(汚染帯水層)に通電することにより土壌を抵抗体として発熱させる(例えば、非特許文献1を参照)。この電気発熱法を実施して浄化状況を管理するためには、例えば(1)帯水層の浄化状況を確認するための水質観測井戸の設置、(2)通電による地盤の温度上昇を確認するための計測器の設置が必要である。
また、地中の温度を計測する技術として、異なる深さの地中温度を計測する装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、熱伝導の良好でない材料からなるパイプと、パイプの長手方向に間隔をあけて配設された複数の測温素子とを有し、各測温素子の表面を機械的強度が大でかつ熱伝導の良好な保護膜によって被覆したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-210730号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】佐藤徹朗、他、「VOC 汚染サイトにおける電気発熱による原位置浄化対策への影響について(その5)」、第23回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集、公益社団法人 日本地下水学会、2017年、S5-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地盤中の温度を計測して管理を行う場合、電気発熱法では地盤に流した電流によって温度計が影響を受けないように対処する必要がある。従来では、例えば水質観測井戸内には電流が流れていて温度計(例えば熱電対センサ)を直接設置すると影響を受ける可能性があったため、絶縁性に優れた塩化ビニル製の管等を地盤内に設置して完全に隔離された管内に熱電対センサを設置していた。また、測温抵抗体センサの温度計を使用すれば、完全に絶縁しなくても印加時に温度を比較的精度良く測定することが可能と考えられる。
しかしながら、前者であれば、水質観測井戸とは別の場所に温度計を設置する必要があるのでその分だけ作業量やコストがかかり、また後者であれば、測温抵抗体センサは熱電対センサに比べてコストが高く、構造が単純ではないので耐久性の面で劣るという問題があった。
このような観点から、本発明は、土壌を加熱する浄化方法において地盤の温度管理に関する作業量やコストを軽減できる温度計測装置および温度計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る温度計測装置は、地中の温度を計測する温度計測装置である。この温度計測装置は、地下水を監視するための水質観測井戸の内部に挿入される内挿具と、一つ以上のセンサ部を有する温度計とを備える。前記内挿具は、中空の管状部と、前記管状部内に前記地下水が浸入しないように閉塞する閉塞部とを有し、前記管状部は絶縁体である。前記センサ部は、前記管状部の内部に配置される。前記センサ部は、例えば熱電対センサであってよい。
本発明に係る温度計測装置は、絶縁体からなる管状部の内部に温度計が配置されているので、土壌を加熱する浄化方法において地盤に電流を流しても、センサ部の種類に関わらず電流の影響を温度計が受け難い。その為、測温抵抗体センサよりも電流の影響を受けやすい熱電対センサを用いることができ、また、水質観測井戸とは別に温度計用の削孔を設ける必要がないので、従来よりも削孔数を減らすことができる。その結果、地盤の温度管理に関する作業量やコストを軽減できる。また、地盤に流した電流の影響を温度計が受け難いので、正確な測定が可能となる。
【0007】
前記温度計が複数のセンサ部を有しており、各々の前記センサ部が異なる深度に設置される場合には、地盤の深度別温度を計測することができる。
断熱性を有する材料で作成され、前記水質観測井戸内の地下水面に接して配置される保温部をさらに備えてもよい。前記保温部を環状とし、孔部に前記内挿具を挿通することが好ましい。このようにすると、地下水の熱が大気に逃げる(または大気の熱を吸収する)のを抑制することができるので、地盤の温度をより高い精度で測定することができる。
前記保温部は、水よりも比重が小さい材質で構成し、前記地下水面に浮いた状態とするとよい。その場合、前記保温部を回収するための回収部が前記管状部の外周面に設けられているのがよい。このようにすると、保温部を簡単に回収することができる。
前記内挿具は、前記水質観測井戸内の地下水に浮いた状態、吊持手段によって上方から吊られた状態、または固定手段によって前記水質観測井戸に固定されることで、前記下端部が前記水質観測井戸の底部に接触していないことが好ましい。このようにすると、内挿具を引き抜く際に水質観測井戸の底部に溜まった泥をまき上げ難くなるので、泥が地下水の水質に与える影響を防ぐことができる。
【0008】
本発明に係る温度計測方法は、地中の温度を計測する温度計測方法である。この温度計測方法は、地下水を監視するための水質観測井戸を設置する井戸設置工程と、前記水質観測井戸内に内挿具を挿入すると共に温度計を配置する温度計配置工程と、前記温度計を用いて地中の温度を計測する温度計測工程とを有する。前記内挿具は、中空の管状部と、前記管状部内に前記地下水が浸入しないように閉塞する閉塞部とを有し、前記管状部は絶縁体である。前記温度計のセンサ部は、前記管状部の内部に配置される。前記センサ部は、例えば熱電対センサであってよい。
本発明に係る温度計測方法によれば、絶縁体からなる管状部の内部に温度計が配置されているので、土壌を加熱する浄化方法において地盤に電流を流しても、センサ部の種類に関わらず電流の影響を温度計が受け難い。その為、測温抵抗体センサよりも電流の影響を受けやすい熱電対センサを用いることができ、また、水質観測井戸とは別に温度計用の削孔を設ける必要がないので、従来よりも削孔数を減らすことができる。その結果、地盤の温度管理に関する作業量やコストを軽減できる。また、地盤に流した電流の影響を温度計が受けないので、正確な測定が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、土壌を加熱する浄化方法において地盤の温度管理に関する作業量やコストを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る温度計測装置の構成図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図、(c)は(a)の地上付近の拡大図である。
図2】塩化ビニル製の管(VP管)の規格を示す表である。
図3】本発明の実施形態に係る温度計測装置の性能を検証するための実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
<実施形態に係る温度計測装置について>
図1を参照して、実施形態に係る温度計測装置1の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る温度計測装置1の構成図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図、(c)は(a)の地上付近の拡大図である。
図1に示す温度計測装置1は、地盤の温度を計測する装置である。温度計測装置1は、原位置浄化(非掘削)技術を用いて土壌・地下水の浄化を行う場合において、浄化対象とする地盤の深度別温度の管理に利用される。地盤の加熱方法には(A)ヒーター等を用いる熱伝導加熱法、(B)土壌自体を抵抗体として電流を流して地盤を加熱する電気発熱法等の電気抵抗加熱法、(C)蒸気(スチーム)を地盤に注入する方法などがあり、本実施形態では(B)電気発熱法を適用する場合を想定して説明する。温度計測装置1は、地盤の深度別温度を計測することができる。
温度計測装置1は、水質観測井戸9に設置される(図1(a)参照)。水質観測井戸9は、帯水層の浄化状況を確認するためのものであり、内部に地下水10を集めることによって地下水10の監視を可能にする。水質観測井戸9の構造は限定されず、例えばスクリーン(開口部)が形成された管状の部材(井戸管)を、ボーリング孔に埋め込んだものであってよい。図1に示すように、水質観測井戸9の底部には、例えば泥溜め部9aが設けられており、泥9bが堆積している。
【0012】
図1(a)に示す温度計測装置1は、水質観測井戸9内に挿入される内挿具2と、内挿具2内に配置される温度計3と、を主に備える。内挿具2は、中空の管状部4と、管状部4の内部(特に、温度計3が配置される空間)に地下水10が浸入しないように管状部4を閉塞する閉塞部5とを備える。本実施形態では、閉塞部5によって管状部4の一端(内挿具2を水質観測井戸9に配置した状態で水質観測井戸9の底部に対向する側)を閉塞する。内挿具2を水質観測井戸9に配置した状態で水質観測井戸9の底部に対向する側を「下端」と称し、下端の反対側(地上に対応する側)を「上端」と称する。閉塞部5は、例えば管状部4のサイズに合ったキャップ等であり、管状部4に取り付けることで地下水10が管状部4内に入らないように閉じられる。なお、閉塞部5は、管状部4と一体となっていてもよく、また、形状は特に限定されない。閉塞部5は、例えば丸みを有する形状や先端が先細りになった形状であってもよい。このように、管状部4を閉塞する構造にすることで、内挿具2内(特に、温度計3のセンサ部3aが配置される空間)に地下水が入らず、電気発熱法によって地盤に流した電流が内挿具2内に流れるのを防いでいる。なお、閉塞部5の位置は、管状部4の下端部に限定されない。
管状部4は、図1(b)に示すように筒状を呈しており(本実施形態では円筒を想定)、水質観測井戸9の深さ(井戸管の長さ)と同程度の長さである。管状部4の材質は、絶縁体(電流を通しにくい、あるいは通さない物質)である。管状部4の材質は、例えば、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)製であることが望ましい。井戸管として使用できる材質については、例えば「土壌汚染対策法ガイドライン第1編:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3版)の付録(Appendix-7. 地下水試料採取方法)」に記載がある。なお、加熱温度に応じて、耐熱性のある材料を選択するのがよい(例えば、耐熱性塩ビ管)。
【0013】
管状部4の材質は、地下水10に浮く材料であるのがよく、内挿具2を水質観測井戸9に挿入した際に浮力が生じる塩化ビニル、ポリ塩化ビニル製などが適している。つまり、内挿具2を水質観測井戸9に挿入した状態で、内挿具2の下端部が水質観測井戸9の底部に接触しないようにするのがよい。内挿具2を水質観測井戸9の底部に接触させない理由は、内挿具2を引き抜く際に泥をまき上げないようにするためである。泥がまき上がると、その後に実施する地下水10の採水に影響を与えてしまうが、内挿具2を水質観測井戸9の底部に接触させない構成とすれば、底部に溜まった泥をまき上げ難くなる。例えば、「管状部4の長さ=井戸管全長-泥溜め部9aの高さ」となるように管状部4の長さを調製し、管状部4が水質観測井戸9の底部に到達しないように、帯水層11において内挿具2が常に浮力を受ける状態にするのがよい。その為には、内挿具2の内部であって温度計3のセンサ部3aが配置されない空間についても、地下水10が浸入しない構造とするのがよい。本実施形態では管状部4の下端部を閉塞部5で閉塞することで、浮力を最大限に得られるようになっている。また、内挿具2の下端部を水質観測井戸9の底部に接触させない為に、図示しない吊持手段によって内挿具2を上方から吊り下げたり、図示しない固定手段によって水質観測井戸9に内挿具2を固定してもよい。
【0014】
図1(b)に示すように、管状部4の外径は、水質観測井戸9の内径(井戸管の内径)より小さく、水質観測井戸9内に無理なく挿入できるように管状部4と水質観測井戸9との間には一定の隙間が存在するのがよい。例えば「VP50」の塩化ビニル製の管(省略して「塩ビ管」と称する場合がある)を井戸管として用いる場合、「VP30」の塩ビ管を管状部4として用いるのがよい。図2に、塩化ビニル製の管(VP管)の規格を示す。「VP25~VP50」が一般的に水質観測井戸に用いられる範囲である。「VP40」の井戸管でも「VP30」の塩ビ管を管状部4として用いることは可能であるが、井戸長が大きくなると水質観測井戸9内で内挿具2の出し入れがスムーズに行えない虞がある。
管状部4は、長尺な一つの管状部材(例えば、塩ビ管)で構成されたものでもよいし、複数の管状部材を連結して構成されたものでもよい。例えば、水質観測井戸9が深く、管状部4の軸心方向の寸法が長くなる場合、複数の管状部材を連結させる必要がある。管状部材の連結箇所は下端部分と同様に地下水10が浸入しないように接着等を行うのがよい。この場合、ソケットを用いても良いし、接着受口付片受直管を用いても良い。また、管状部材の両端部をネジ加工して個々の管状部材をネジ接合で連結してもよい。管状部材の両端部をネジ加工した場合、必要に応じて連結を解除することができるので、例えば内挿具2の挿入や引き抜きに支障が生じた場合に連結を解除した状態で作業を行うことが可能になる。
なお、内挿具2が浮力により浮き上がり過ぎない工夫をしてもよい。例えば、内挿具2の挿入後に井戸管の管頭部(水質観測井戸9の入口)に蓋部を設け、内挿具2の上端部が水質観測井戸9の入口より上方に出ないようにする。そうすることにより、浮力で上方に移動しようとする内挿具2が蓋部の存在により移動が規制され、内挿具2は適切な位置に保たれる。
【0015】
図1(a)に示す温度計3は、地盤の深度別温度を計測することが可能である。温度計3は、複数のセンサ部3aを備える。センサ部3aは、管状部4の内側に設置され、地下水10および管状部4を介して地盤の温度を測定する。その為には、水質観測井戸9内に溜まっている地下水10が周辺の地盤と同様の温度である必要があり、後述する試験の結果から分かるように水質観測井戸9内の地下水10と周辺の地盤との温度が同様であることを確認した。温度が同様となる理由として、内挿具2を設置することで水質観測井戸9と内挿具2の間の地下水量が減少することで対流の影響も受けにくくなっているためである。各々のセンサ部3aは、それぞれが異なる深度に配置されている(つまり、管状部4の軸心方向において互いを離した状態で配置している)。
前述した通り、センサ部3aは、管状部4(例えば塩ビ管)および地下水10を介して地盤(ここでは、帯水層11)の温度を測定することになるが、管状部4の外側にある地下水10の表面が大気と接していることから、ここから水質観測井戸9内の温度が少しずつ変化して地盤の温度と誤差が生じる可能性がある。したがって、温度計測装置1は、地下水10の温度の変化を抑制する保温部6を備えるのがよい。保温部6は、断熱性を有する材料(断熱材)で作成されている。図1(c)に示すように、保温部6は、地下水10の表面(大気と地下水10との境界部分)、すなわち地下水面に配置され、地下水10の熱が大気に逃げる(または大気の熱を吸収する)のを抑制する役割を担う。つまり、保温部6は、地盤の温度と地下水10の温度との間に誤差が生じるのを抑制する。
【0016】
図1(b)に示すように、保温部6は、地下水10の表面を覆う形状を呈している。例えば、本実施形態の保温部6は、地下水10の表面の形状に対応した環状(リング状)の部材である。保温部6は、例えば内挿具2とは別部材であり、地下水10に浮く材質(水よりも比重が小さい材質)でできている。図1(c)に示すように、保温部6の中心に形成された孔部には、内挿具2の管状部4が挿通される。これにより、保温部6は、内挿具2の位置に関わらず常に地下水10の表面に浮いた状態となる。内挿具2は、保温部6を回収するための回収部7を有するのがよい。回収部7は、内挿具2を水質観測井戸9から引き抜く際に保温部6に引っ掛かる形状であればよい。これにより、内挿具2を引き抜くことで保温部6が回収部7に引っ掛かり、内挿具2と保温部6とが一体となって移動するので、保温部6を直接触れることなく水質観測井戸9から保温部6を取り除くことができる。回収部7は、例えば環状(リング状)の留め具であってよく、内挿具2の管状部4に装着されている。また、回収部7は、管状部4の外周面から径方向外側に突出した部分(例えば環状に突出した環状凸部)であってもよい。保温部6および回収部7は、地下水10の水質に影響を与えない材質であるのが望ましい。
【0017】
<実施形態に係る温度計測装置を用いた温度計測方法について>
図1を参照して、実施形態に係る温度計測装置1を用いた温度計測方法について説明する。ここでは、原位置浄化(非掘削)技術を用いて土壌・地下水の浄化を行うことを想定し、浄化対象とする地盤の深度別温度の管理に温度計測装置1を使用する場合を例示する。
最初に、浄化対象とする地盤に水質観測井戸9を設置する(井戸設置工程)。次に、水質観測井戸9の深さに合わせて管状部材(例えば、塩ビ管)を連結するなどして内挿具2を作製し、作成した内挿具2を水質観測井戸9に挿入して設置する。内挿具2の材質は地下水10に浮く材料であるので、水質観測井戸9に挿入された内挿具2は水質観測井戸9の底部に接触せずに浮いた状態となる。そして、水質観測井戸9に設置された内挿具2内に温度計3のセンサ部3aを挿入し、内挿具2内の所定の位置にセンサ部3aを設置する(温度計配置工程)。なお、センサ部3aを内挿具2内に設置した後で、センサ部3aが設置された内挿具2を水質観測井戸9に挿入して設置してもよい。この状態で暫く静置すると、内挿具2内の気温が地下水10の温度と同様になる。その後、内挿具2内のセンサ部3aを用いて、地盤の温度を測定する(温度計測工程)。センサ部3aは、水質観測井戸9内の地下水10および内挿具2を介して帯水層11の温度を測定する。
ここで、電気発熱法では、地盤に電極を設置して汚染地盤(汚染帯水層)に電流を流すことにより土壌を抵抗体として発熱させる。センサ部3aは、絶縁体でできた内挿具2内に収納されているので、電気発熱法による電流の影響を防ぐことができる。温度計測装置1を水質観測井戸9から取り外す場合には、例えば設置の手順とは逆の手順で行えばよい。例えば、水質観測井戸9に設置された内挿具2からセンサ部3aを引き抜き、その後で内挿具2を水質観測井戸9から引き抜く。内挿具2を引き抜く工程では、管状部材を分解(管状部材の接続を解除)しながら順番に取り外してもよい。地下水10の採水を行う場合には、温度計測装置1を水質観測井戸9から取り外すと作業がしやすいのでよい。なお、温度計測装置1を設置したままで採水も可能である。例えば、水質観測井戸9の内径と内挿具2の外径に差を付ければ、水質観測井戸9と内挿具2との間の隙間にチューブ等を挿入することができポンプ等を用いて地下水を採水できる。
【0018】
以上のように、実施形態に係る温度計測装置1および温度計測装置1を用いた温度計測方法は、絶縁体からなる管状部4の内部に温度計3が配置されているので、土壌を加熱する浄化方法において地盤に電流を流しても、センサ部の種類に関わらず電流の影響を温度計3が受け難い。その為、測温抵抗体センサよりも電流の影響を受けやすい熱電対センサを用いることができ、また、水質観測井戸9とは別に温度計用の削孔を設ける必要がないので、従来よりも削孔数を減らすことができる。その結果、地盤の温度管理に関する作業量やコストを軽減できる。また、地盤に流した電流の影響を温度計3が受け難いので、正確な測定が可能となる。
<検証実験>
実施形態に係る温度計測装置1の性能を検証するための実験を行った。まず、水質観測井戸9内に溜まっている地下水10が周辺の地盤と同様の温度になることを確認した。具体的には、地盤に直接設置した塩ビ管内の深度別の温度と隣接する水質観測井戸内における深度別の温度の比較を行った(図3参照)。図3は、実施形態に係る温度計測装置1の性能を検証するための実験結果を示す表である。その結果、従来の温度計測方法(塩ビ管を地盤に設置して、センサ部を挿入)と水質観測井戸における温度には大きな誤差は無かったため、水質観測井戸内において地盤の温度計測が可能であることが実証された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 温度計測装置
2 内挿具
3 温度計
4 管状部
5 閉塞部
6 保温部
7 回収部
9 水質観測井戸
10 地下水
11 帯水層
図1
図2
図3