(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117234
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】構造物及び構造物の建造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20230816BHJP
E02B 3/12 20060101ALI20230816BHJP
E02D 23/00 20060101ALI20230816BHJP
E02D 23/02 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
E02B3/06 301
E02B3/12
E02D23/00 D
E02D23/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019836
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594067368
【氏名又は名称】ワールドエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 一禎
(72)【発明者】
【氏名】井上 まどか
(72)【発明者】
【氏名】和木 多克
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118BA01
2D118BA03
2D118BA05
2D118BA06
2D118FA06
2D118FB12
2D118GA01
(57)【要約】
【課題】底部にアスファルトマットを適切に取り付け可能な構造物及び構造物の建造方法を提供する。
【解決手段】構造物は、平面に沿った底板を有する構造物本体と、構造物本体の底板の下面に設けられ、高さ方向に貫通する貫通穴を有するアスファルトマットと、貫通穴の内周面及び底板の下面に接するように貫通穴に充填され、底板とアスファルトマットとを固定するアスファルト混合物とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面に沿った底板を有する構造物本体と、
前記構造物本体の前記底板の下面に設けられ、高さ方向に貫通する貫通穴を有するアスファルトマットと、
前記貫通穴の内周面及び前記底板の下面に接するように前記貫通穴に充填され、前記底板と前記アスファルトマットとを固定するアスファルト混合物と
を備える構造物。
【請求項2】
前記底板は、鋼製である
請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記アスファルトマットは、内部に前記貫通穴の内外に亘って補強層を有し、
前記アスファルト混合物は、前記補強層を介して前記底板と前記アスファルトマットとを固定する
請求項1又は請求項2に記載の構造物。
【請求項4】
前記アスファルトマットは、前記貫通穴の内部に前記補強層と前記底板とを連結する連結部材を有し、
前記アスファルト混合物は、前記補強層及び前記連結部材を介して前記底板と前記アスファルトマットとを固定する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項5】
前記アスファルトマットは、四角形状であり、
前記貫通穴及び前記アスファルト混合物は、前記アスファルトマットの角部に設けられる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項6】
平面に沿った底板を有する構造物本体と、
前記構造物本体の前記底板の下面に設けられるアスファルトマットと、
前記底板及び前記アスファルトマットの側部に沿って枠状に配置され、前記底板と前記アスファルトマットとの間に挿入されて固定される固定部と、前記固定部から下方に延びて前記アスファルトマットの側部を覆う被覆部とを有する側部保護部材と
を備える構造物。
【請求項7】
前記底板及び前記側部保護部材は、鋼製である
請求項6に記載の構造物。
【請求項8】
前記アスファルトマットは、捨石マウンド上に配置され、
前記側部保護部材は、前記捨石マウンド上における前記アスファルトマットの残存厚さに対応するように高さ方向の寸法が設定される
請求項6又は請求項7に記載の構造物。
【請求項9】
前記側部保護部材は、前記アスファルトマットの側部のうち前記捨石マウンド側の部分に対応して配置される補助被覆部材を有する
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項10】
前記アスファルトマットは、
底部に配置される下層と、
前記下層上に配置される補強層と、
前記補強層上に配置されるガラスクロス層と、
前記補強層及び前記ガラスクロス層を覆うように前記下層上に配置される上層と
を有する
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項11】
前記アスファルトマットは、水平面に沿って複数配置され、
複数の前記アスファルトマットの間に配置され、隣り合う前記アスファルトマット同士を連結し、上面に前記底板に接するフランジ部を有する連結部材を更に備え、
前記底板は、前記フランジ部に接する部分に貫通穴を有し、
前記底板と前記連結部材とが前記貫通穴を埋めるように配置される溶接部により接合される
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項12】
前記アスファルトマットは、捨石マウンド上に配置され、
前記側部保護部材は、前記捨石マウンドに含まれる捨石の貫入に対して変形可能である
請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項13】
底板を有する構造物本体を前記底板が上方に配置された作業用姿勢とする工程と、
前記作業用姿勢における前記底板の上面に、高さ方向に貫通する貫通穴を有するアスファルトマットを配置する工程と、
前記作業用姿勢における前記アスファルトマットの前記貫通穴に、前記貫通穴の内周面及び前記底板の下面に接するようにアスファルト混合物を充填して前記底板と前記アスファルトマットとを固定する工程と、
前記構造物本体を、前記底板及び前記アスファルトマットが下方に配置された設置用姿勢として構造物を形成する工程と
を含む構造物の建造方法。
【請求項14】
所定の平面上にアスファルトマットを配置する工程と、
前記アスファルトマットの上部に、底板を有する構造物本体を載置する工程と、
前記アスファルトマットと前記底板との間に前記底板の周縁部に沿うように側部保護部材の固定部を配置し、前記固定部からから下方に延びる被覆部により前記アスファルトマットの側部を覆う工程と、
前記固定部を前記底板に固定する工程と
を含む構造物の建造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物及び構造物の建造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沿岸部に埋め立て地や防波堤等を造成する場合、対象区域の海底地盤上に構造物を構築することが行われる。この構造物は、対象区域を囲うように配置された複数の構造物(ケーソン、L型ブロック等)によって構成される。このような構造物は、波圧・土圧・地震力などの作用外力に対応するため、構造物の底部にアスファルトマットを取り付ける場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
底部が鋼製の構造物の場合、アンカーボルトなどによりアスファルトマットを底部に取り付けることが困難である。鋼製の底部を有する構造物において、アスファルトマットを底部に適切に取り付け一体化することが求められる。また、同様に、コンクリート等の鋼製以外の底部を有する構造物においても、アスファルトマットを底部に適切に取り付け可能な構造が求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、底部にアスファルトマットを適切に取り付け可能な構造物及び構造物の建造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る構造物は、平面に沿った底板を有する構造物本体と、前記構造物本体の前記底板の下面に設けられ、高さ方向に貫通する貫通穴を有するアスファルトマットと、前記貫通穴の内周面及び前記底板の下面に接するように前記貫通穴に充填され、前記底板と前記アスファルトマットとを固定するアスファルト混合物とを備える。
【0007】
本開示に係る構造物は、平面に沿った底板を有する構造物本体と、前記構造物本体の前記底板の下面に設けられるアスファルトマットと、前記底板及び前記アスファルトマットの側部に沿って枠状に配置され、前記底板と前記アスファルトマットとの間に挿入されて固定される固定部と、前記固定部から下方に延びて前記アスファルトマットの側部を覆う被覆部とを有する側部保護部材とを備える。
【0008】
本開示に係る構造物の製造方法は、底板を有する構造物本体を前記底板が上方に配置された作業用姿勢とする工程と、前記作業用姿勢における前記底板の上面に、高さ方向に貫通する貫通穴を有するアスファルトマットを配置する工程と、前記作業用姿勢における前記アスファルトマットの前記貫通穴に、前記貫通穴の内周面及び前記底板の下面に接するようにアスファルト混合物を充填して前記底板と前記アスファルトマットとを固定する工程と、前記構造物本体を、前記底板及び前記アスファルトマットが下方に配置された設置用姿勢として構造物を形成する工程とを含む。
【0009】
本開示に係る構造物の製造方法は、所定の平面上にアスファルトマットを配置する工程と、前記アスファルトマットの上部に、底板を有する構造物本体を載置する工程と、前記アスファルトマットと前記底板との間に前記底板の周縁部に沿うように側部保護部材の固定部を配置し、前記固定部からから下方に延びる被覆部により前記アスファルトマットの側部を覆う工程と、前記固定部を前記底板に固定する工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、底部にアスファルトマットを適切に取り付け可能な構造物及び構造物の建造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る構造物の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、構造物を底面側から見た場合の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、アスファルトマットを底面側から見た場合の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、アスファルトマットを底面側から見た場合の他の例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
【
図6】
図6は、構造物の建造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、構造物の製造過程の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、構造物の製造過程の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、構造物の製造過程の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る構造物の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、構造物の一部を拡大して示す断面図である。
【
図13】
図13は、構造物の建造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、構造物を底面側から見た場合の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、構造物の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る構造物及び構造物の建造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る構造物100の一例を示す図である。
図1に示す構造物100は、海底地盤上に1つ以上配置されて護岸を構築する護岸構造物である。なお、構造物100は、護岸構造物に限定されず、他の重力式構造物であってもよい。本実施形態において、構造物100は、例えばハイブリッドケーソンである。構造物本体10と、アスファルトマット20と、アスファルト混合物30とを備える。
【0014】
構造物本体10は、例えば鋼材及び打設材料を用いて形成される。構造物本体10は、例えば鋼製であり、壁部材11及び底板12により函状に形成される。構造物本体10の内部に打設材料が充填されてもよい。底板12は、例えば四角形状であり、下面12aが平面状である。
【0015】
アスファルトマット20は、構造物本体10の底板12の下面12aに設けられる。アスファルトマット20は、アスファルト混合物を用いて板状に形成される。
図2は、構造物100を底面側から見た場合の一例を示す図である。
図2に示すように、アスファルトマット20は、例えば複数設けられ、下面12aを覆うように敷き詰められた状態で設けられる。
【0016】
図3は、アスファルトマットを底面側から見た場合の一例を示す図である。
図3に示すように、各アスファルトマット20は、当該アスファルトマット20を厚さ方向に貫通する貫通穴21を有する。貫通穴21は、四角形状に形成されるアスファルトマット20の4つの角部のそれぞれに設けられる。貫通穴21の配置は、4つの角部に限定されず、アスファルトマット20の中央部等の他の部位に設けられてもよい。また、貫通穴21の個数は、少なくとも1箇所以上であればよい。貫通穴21は、例えば円形状であるが、この形状に限定されず、多角形状、楕円形状等の他の形状であってもよい。
【0017】
アスファルト混合物30は、貫通穴21の内周面21a及び底板12の下面12aに接するように貫通穴21に充填される。この構成により、アスファルト混合物30は、貫通穴21に充填された状態において、貫通穴21の内周面21aと、底板12の底面12aとにそれぞれ接着される。このため、アスファルト混合物30を介して、アスファルトマット20と構造物本体10の底板12とが接合される。
【0018】
本実施形態では、貫通穴21及びアスファルト混合物30がアスファルトマット20の4つの角部に設けられるため、アスファルトマット20は4つの角部のそれぞれにおいて底板12に接合された状態となる。したがって、アスファルトマット20が底板12により強固に接合されるため、アスファルトマット20が底板12から剥がれ落ちることを抑制できる。
【0019】
図4は、アスファルトマットを底面側から見た場合の他の例を示す図である。
図5は、
図4におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図4及び
図5に示すように、アスファルトマット20Aは、内部に補強層22を有する。補強層22は、補強部材22aが例えば格子状に形成される。補強層22は、貫通穴21の内外に亘って設けられる。アスファルトマット20Aは、貫通穴21の内部に連結部材23を有する。連結部材23は、補強層22と底板12とを連結する。連結部材23は、例えば円柱状とすることができるが、この構成に限定されず、他の形状であってもよい。
【0020】
図4及び
図5に示すように、貫通穴21にアスファルト混合物30が充填された状態では、補強層22及び連結部材23がアスファルト混合物30に係止される。このため、アスファルト混合物30が補強層22及び連結部材23を介して底板12とアスファルトマット20とを固定する。
【0021】
なお、連結部材23は、設けられなくてもよい。この場合、貫通穴21にアスファルト混合物30が充填された状態では、補強層22がアスファルト混合物30に係止される。このため、アスファルト混合物30が補強層22を介して底板12とアスファルトマット20を固定する。
【0022】
次に、上記のように構成された構造物の建造方法を説明する。
図6は、構造物の建造方法の一例を示すフローチャートである。
図7から
図10は、構造物100の製造過程の一例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る構造物の建造方法は、姿勢調整工程S10と、アスファルトマット配置工程S20と、アスファルトマット固定工程S30と、姿勢復元工程S40とを含む。
【0023】
姿勢調整(アスファルトマットの取り付け状態)工程S10は、
図7に示すように、底板12を有する構造物本体10を、底板12が上方に配置された作業用姿勢ST1とする。つまり、構造物本体10を天地逆転させた状態とする。
【0024】
アスファルトマット配置工程S20は、
図8に示すように、作業用姿勢ST1における底板12の上面、つまり底板12の下面12aに対応する面に、貫通穴21を有するアスファルトマット20を配置する。アスファルトマット配置工程S20では、底板12の上面を覆うように1つ以上のアスファルトマット20を敷き詰めるように配置する。
【0025】
アスファルトマット固定工程S30は、
図9に示すように、作業用姿勢ST1におけるアスファルトマット20の貫通穴21に、貫通穴21の内周面21a及び底板12の下面12aに接するようにアスファルト混合物30を充填して底板12とアスファルトマット20とを固定する。貫通穴21が複数設けられる場合、貫通穴21ごとにアスファルト混合物30を充填する。
【0026】
姿勢復元工程S40は、
図10に示すように、構造物本体10を、底板12及びアスファルトマット20が下方に配置された設置用姿勢ST2する。つまり、構造物本体10の天地を元に戻した状態とする。これにより、底板12の下面12aにアスファルトマット20が固定された構造物100が完成する。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る構造物100は、平面に沿った底板12を有する構造物本体10と、構造物本体10の底板12の下面12aに設けられ、高さ方向に貫通する貫通穴21を有するアスファルトマット20と、貫通穴21の内周面21a及び底板12の下面12aに接するように貫通穴21に充填され、底板12とアスファルトマット20とを固定するアスファルト混合物30とを備える。
【0028】
従って、貫通穴21に充填された状態において、貫通穴21の内周面21aと、底板12の底面12aとにそれぞれ接着されるため、アスファルト混合物30を介して、アスファルトマット20と構造物本体10の底板12とが強固に接合される。これにより、底板12にアスファルトマット20を適切に取り付け可能な構造物100を提供することができる。
【0029】
本実施形態に係る構造物100において、底板12は、鋼製である。底板12が鋼製である場合、アンカーボルトによりアスファルトマット20を底板12に取り付けることが困難である。これに対して、本実施形態によれば、鋼製の底板12に対してアスファルトマット20を適切に取り付け可能となる。
【0030】
本実施形態に係る構造物100において、アスファルトマット20は、内部に貫通穴21の内外に亘って補強層22を有し、アスファルト混合物30は、補強層22を介して底板12とアスファルトマット20とを固定する。従って、底板12とアスファルトマット20とが補強層22を介してアスファルト混合物30により強固に固定される。
【0031】
本実施形態に係る構造物100において、アスファルトマット20は、貫通穴21の内部に補強層22と底板12とを連結する連結部材23を有し、アスファルト混合物30は、補強層22及び連結部材23を介して底板12とアスファルトマット20とを固定する。従って、底板12とアスファルトマット20とが補強層22及び連結部材23を介してアスファルト混合物30により強固に固定される。
【0032】
本実施形態に係る構造物100において、アスファルトマット20は、四角形状であり、貫通穴21及びアスファルト混合物30は、アスファルトマット20の角部に設けられる。従って、四角形状のアスファルトマット20において、角部をより強固に底板に接合することができる。
【0033】
本実施形態に係る構造物100の建造方法は、底板12を有する構造物本体10を底板12が上方に配置された作業用姿勢ST1とする工程と、作業用姿勢ST1における底板12の上面に、高さ方向に貫通する貫通穴21を有するアスファルトマット20を配置する工程と、作業用姿勢ST1におけるアスファルトマット20の貫通穴21にアスファルト混合物30を充填して底板12とアスファルトマット20とを固定する工程と、構造物本体10を、底板12及びアスファルトマット20が下方に配置された設置用姿勢ST2として構造物100を形成する工程とを含む。従って、底板12にアスファルトマット20を適切に取り付けた構造物100を効率的に建造することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、底板12が鋼製である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、底板12がコンクリート等の構成以外の材料で形成される場合にも同様の説明が可能である。
【0035】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態に係る構造物200の一例を示す図である。
図11に示す構造物200は、例えば捨石マウンド等の海底地盤上に1つ以上配置されて護岸を構築する。本実施形態において、構造物200は、例えばハイブリッドケーソンである。構造物本体40と、アスファルトマット50と、側部保護部材60とを備える。
【0036】
構造物本体40は、例えば鋼材及び打設材料を用いて形成される。構造物本体40は、例えば鋼製であり、壁部材41及び底板42により函状に形成される。構造物本体40の内部に打設材料が充填されてもよい。底板42は、例えば四角形状であり、下面42aが平面状である。
【0037】
アスファルトマット50は、構造物本体40の底板42の下面42aに設けられる。アスファルトマット50は、アスファルト混合物を用いて板状に形成される。アスファルトマット50は、例えば複数設けられ、底板42の下面42aを覆うように敷き詰められた状態で設けられる。アスファルトマット50は、例えば接着剤を用いて底板42に接合されてもよいし、上記した第1実施形態に記載のようにアスファルト混合物により底板42に接合されてもよい。
【0038】
図12は、構造物200の一部を拡大して示す断面図の例である。
図12に示すように、アスファルトマット50は、下層51と、補強層52と、ガラスクロス層53と、上層54とを有する。下層51は、底部に配置される。補強層52は、例えば格子状に形成された補強部材52aが配置される。ガラスクロス層53は、補強層52上に配置される。上層54は、補強層52及びガラスクロス層53を覆うように下層51上に配置される。この構成により、アスファルトマット50の強度が高められる。
【0039】
側部保護部材60は、底板42及びアスファルトマット50の側部に沿って枠状に配置される。側部保護部材60は、例えば鋼製である。側部保護部材60は、固定部61及び被覆部62を有する。固定部61は、底板42とアスファルトマット50との間に挿入される。固定部61は、底板42に沿った板状部分であり、例えば溶接部64等により底板42に固定される。被覆部62は、固定部61の外側端部から下方に延びてアスファルトマット50の側部を覆う。
【0040】
被覆部62は、アスファルトマット50が海底地盤上に配置される際の残存厚さに対応するように高さ方向の寸法が設定される。アスファルトマット50が例えば海底地盤として捨石マウンド上に配置される場合、被覆部62は、捨石マウンドMD(
図12参照)上におけるアスファルトマット50の残存厚さに対応するように高さ方向の寸法が設定される。アスファルトマット50が捨石マウンド上に配置される場合、時間の経過に伴い構造物本体40側の重量を受けてクリープ変形して捨石を食い込ませた状態となり、捨石マウンド上に配置される部分の厚さ(残存厚さ)が小さくなる。例えば、アスファルトマット50の建造時の厚さが10cmの場合、捨石マウンド上におけるアスファルトマット50の残存厚さは5cmである。この場合、被覆部62の高さ方向の寸法は5cm程度に設定することができる。また、例えばアスファルトマット50の建造時の厚さが8cmの場合、捨石マウンド上におけるアスファルトマット50の残存厚さは3cmである。この場合、被覆部62の高さ方向の寸法は3cm程度に設定することができる。上記したアスファルトマット50の厚さは一例であり、上記とは異なる厚さにおいても適用可能である。なお、側部保護部材60は、被覆部61が捨石マウンドMDに含まれる捨石の貫入に対して変形可能であってもよい。この場合、被覆部61は、アスファルトマット50と同様にクリープ変形する構成であってもよいし、座屈変形する構成であってもよい。被覆部61は、アスファルトマット50を施工可能な強度であればよい。また、被覆部61は、変形することでアスファルトマット50と捨石マウンドMDとの間に摩擦力が十分に発現するように材質、寸法及び強度が設定される。例えば、被覆部61は、アスファルトマット50と捨石マウンドMDとの間に摩擦力が十分に発現するように変形する材質及び強度であれば、高さ方向の寸法をアスファルトマット50の厚さと同程度に設定してもよいし、上記の残存厚さよりも高くなるように設定してもよい。
【0041】
側部保護部材60は、アスファルトマット50の側部のうち捨石マウンド側の部分に対応して配置される補助被覆部材63を有してもよい。補助被覆部材63は、建造時における被覆部62の下端とアスファルトマット50の下面との間を覆う寸法に形成される。補助被覆部材63は、被覆部62に対して着脱可能に設けられる。補助被覆部材63は、例えば木材等により形成しても良い。
【0042】
次に、上記のように構成された構造物の建造方法を説明する。
図13は、構造物の建造方法の一例を示すフローチャートである。
図14から
図18は、構造物200の製造過程の一例を示す図である。
図13に示すように、本実施形態に係る構造物200の建造方法は、アスファルトマット配置工程S50と、構造物本体載置工程S60と、側部保護部材配置工程S70と、固定工程S80とを含む。
【0043】
アスファルトマット配置工程(
図13のS50)は、
図14に示すように、例えば陸上側(ケーソン製作用ヤードなど)における所定の平面上にアスファルトマット50を配置する。アスファルトマット50は、構造物本体40の底板42の寸法に応じて1つ以上配置することができる。
【0044】
構造物本体載置工程(
図13のS60)は、
図15に示すように、アスファルトマット50の上部に、底板42を有する構造物本体40を載置する。構造物本体載置工程S60では、構造物本体40をクレーン等で吊り上げた状態とし、アスファルトマット50の上方に配置した後、下降させることでアスファルトマット50の上部に配置することができる。
【0045】
側部保護部材配置工程(
図13のS70)は、
図16に示すように、アスファルトマット50と底板42との間に底板42の周縁部に沿うように側部保護部材60の固定部61を配置し、固定部61からから下方に延びる被覆部62によりアスファルトマット50の側部を覆う。その後、被覆部62の下端に補助被覆部材63を取り付けてもよい。
【0046】
固定工程(
図13のS80)は、側部保護部材60を配置した後、
図17に示すように、固定部61を構造物本体40の底板42に固定する。固定工程S80では、例えば固定部61と底板42との間を溶接により固定することができる。
【0047】
このように建造された構造物200は、例えば陸上(ケーソン製作ヤードなど)から所定の設置場所まで水に浮かせた状態で運搬される場合がある。この場合、構造物200は、
図18に示すように、構造物本体40の上部が水面上に突出し、構造物本体40の下部及びアスファルトマット50が水中に配置された状態で移動する。構造物200を移動させる際、構造物本体40の下部及びアスファルトマット50は移動方向の前方から水圧・波圧・曳行圧などの外力が作用する。本実施形態では、側部保護部材60が設けられるため、アスファルトマット50に対する水圧などの作用外力を低減することができる。このため、アスファルトマット50が底板42から剥離することを抑制できる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る構造物200は、平面に沿った底板42を有する構造物本体40と、構造物本体40の底板42の下面42aに設けられるアスファルトマット50と、底板42及びアスファルトマット50の側部に沿って枠状に配置され、底板42とアスファルトマット50との間に挿入されて固定される固定部61と、固定部61から下方に延びてアスファルトマット50の側部を覆う被覆部62とを有する側部保護部材60とを備える。
【0049】
構造物200を陸上側(ケーソン製作ヤード)から所定の海底地盤上に設置するために水に浮かべて移動する際、構造物本体40の下部及びアスファルトマット50が水中で移動方向の前方から水圧・波圧・曳行圧などが作用する。本実施形態では、側部保護部材60が設けられるため、アスファルトマット50に対する水圧・波圧などのが作用する外力を低減することができる。このため、アスファルトマット50が底板42から剥離することを抑制できる。これにより、アスファルトマット50を底板42に適切に取り付け可能な構造物200を提供することができる。
【0050】
本実施形態に係る構造物200において、底板42及び側部保護部材60は、鋼製である。鋼製の底板42及びに対してアスファルトマット50を適切に取り付け、側部保護部材60により適切に保護することが可能となる。
【0051】
本実施形態に係る構造物200において、アスファルトマット50は、捨石マウンド上に配置され、側部保護部材60は、捨石マウンド上におけるアスファルトマット50の残存厚さに対応するように高さ方向の寸法が設定される。アスファルトマット50が捨石マウンド上に配置される場合、時間の経過に伴い構造物本体40側の重量を受けてクリープ変形して捨石を食い込ませた状態となり、捨石マウンド上に配置される部分の厚さ(残存厚さ)が小さくなる。本実施形態では、捨石マウンド上におけるアスファルトマット50の残存厚さに対応するように側部保護部材60の高さ方向の寸法が設定されるため、側部保護部材60が捨石マウンドに干渉することを回避できる。
【0052】
本実施形態に係る構造物200において、側部保護部材60は、被覆部62に対して離脱可能に取り付けられ、アスファルトマット50の側部のうち捨石マウンド側の部分に対応して配置される補助被覆部材63を有する。この構成では、アスファルトマット50の側部のうち捨石マウンド側の部分を確実に保護することができる。また、補助被覆部材63が被覆部62に対して離脱可能であるため、捨石マウンドに接触する場合には被覆部62から離脱することで捨石マウンドとの干渉が回避される。
【0053】
本実施形態に係る構造物200において、アスファルトマット50は、底部に配置される下層51と、下層51上に配置される補強層52と、補強層52上に配置されるガラスクロス層53と、補強層52及びガラスクロス層53を覆うように下層51上に配置される上層54とを有する。従って、アスファルトマット50の強度が高められるため、変形をより確実に抑制することができる。
【0054】
本実施形態に係る構造物200において、アスファルトマット50は、捨石マウンドMD上に配置され、側部保護部材60は、捨石マウンドMDに含まれる捨石の貫入に対して変形可能である。従って、アスファルトマット50が捨石マウンド上に配置され、時間の経過に伴い構造物本体40側の重量を受けてクリープ変形して捨石を食い込ませる場合、側部保護部材60が捨石の貫入に対して変形するため、アスファルトマット50による摩擦力の発現を確保できる。
【0055】
本実施形態に係る構造物200の建造方法は、所定の平面上にアスファルトマット50を配置する工程と、アスファルトマット50の上部に、底板42を有する構造物本体40を載置する工程と、アスファルトマット50と底板42との間に底板42の周縁部に沿うように側部保護部材60の固定部61を配置し、固定部61からから下方に延びる被覆部62によりアスファルトマット50の側部を覆う工程と、固定部61を底板42に固定する工程とを含む。従って、アスファルトマット50及び側部保護部材60を底板42に適切に取り付け可能な構造物200を効率的に製造することができる。
【0056】
図19は、構造物の他の例を示す図である。
図19に示す構造物200Aにおいて、アスファルトマット50は、水平面に沿って並ぶ複数配置される。構造物200Aは、連結部材70を備える。連結部材70は、複数のアスファルトマット50の間に配置され、隣り合うアスファルトマット50同士を連結する。連結部材70としては、例えばCT鋼等が用いられる。
【0057】
図20は、構造物200Aを底面側から見た一例を示す図である。
図21は、構造物200Aの一部を拡大して示す断面図である。連結部材70は、
図20の縦方向及び横方向のそれぞれの方向に対応して配置することができる。連結部材70は、上面に底板42に接するフランジ部71を有する。また、底板42は、フランジ部71に接する部分に貫通穴42bを有する。底板42と連結部材70との間は、貫通穴42bを埋めるように配置される溶接部72により接合される。フランジ部71は、アスファルトマット50に沿って一方向に延びた構成である。貫通穴42bは、フランジ部71が延びる方向に沿って複数形成される。
【0058】
このように、他の例に係る構造物200Aにおいて、アスファルトマット50は、水平面に沿って並ぶ複数配置され、複数のアスファルトマット50の間に配置され、隣り合うアスファルトマット50同士を連結し、上面に底板42に接するフランジ部71を有する連結部材70を更に備え、底板42は、フランジ部71に接する部分に貫通穴42bを有し、底板42と連結部材70とが貫通穴42bを埋めるように配置される溶接部72により接合される。従って、アスファルトマット50を底板42により強固に接合することができる。また、底板42の貫通穴42bを溶接部72により埋めるため、底板42からの水の侵入を防止できる。
【0059】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上記実施形態においては、構造物としてハイブリッドケーソンを例に挙げて説明したが、これに限定されず、鋼製ケーソンであってもよい。また、上記実施形態では、底板12、42が鋼製である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、底板12、42がコンクリート等の鋼製以外の材料で形成される場合にも同様の説明が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,40 構造物本体
11,41 壁部材
12,42 底板
12a,42a 下面
12a 底面
20,20A,50 アスファルトマット
21,42b 貫通穴
21a 内周面
22,52 補強層
22a,52a 補強部材
23,70 連結部材
30 アスファルト混合物
51 下層
53 ガラスクロス層
54 上層
60 側部保護部材
61 固定部
62 被覆部
63 補助被覆部材
71 フランジ部
72 溶接部
100,200,200A 構造物
S10 姿勢調整工程
S20,S50 アスファルトマット配置工程
S30 アスファルトマット固定工程
S40 姿勢復元工程
S60 構造物本体載置工程
S70 側部保護部材配置工程
S80 固定工程
ST1 作業用姿勢
ST2 設置用姿勢