(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117250
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】SCR装置付き舶用内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20230816BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F01N3/24
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019860
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA10
3G091AA28
3G091AB04
3G091BA01
3G091BA14
3G091CA17
3G091HB01
3G091HB06
(57)【要約】
【課題】SCR装置付き舶用内燃機関において、排ガスと還元剤を均一に混合させる。
【解決手段】エンジン1は、所定の推進方向へ船舶を前進させる主機関10と、主機関10からの排ガスを脱硝するSCR装置90と、を備える。SCR装置90は、排ガスに還元剤を噴射する噴射ノズル92bが収容された混合器92と、混合器92の下流側に配置され、排ガスおよび還元剤を触媒94bに接触させる反応器94と、を有する。混合器92は、主機関10の前面10aに沿って配置されるとともに、該主機関10における高さ方向の上側から下側に向かって延びるように構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の推進方向へ船舶を前進させる主機関と、
前記主機関からの排ガスを脱硝するSCR装置と、を備え、
前記SCR装置は、
前記排ガスに還元剤を噴射する噴射ノズルが収容された混合器と、
前記混合器の下流側に配置され、前記排ガスおよび還元剤を触媒に接触させる反応器と、を有し、
前記混合器は、前記推進方向に面する前記主機関の外面に沿って配置されるとともに、該主機関における高さ方向の上側から下側に向かって延びるように構成される
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載されたSCR装置付き舶用内燃機関において、
前記噴射ノズルは、前記高さ方向に垂直な横断面で見た前記混合器の中央位置から、該高さ方向の下方に向かって還元剤を噴射する
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【請求項3】
請求項2に記載されたSCR装置付き舶用内燃機関において、
前記混合器は、前記噴射ノズルを収容する混合管を有し、
前記混合管は、前記高さ方向に沿って延びる中心軸を有する円筒状に形成され、
前記噴射ノズルの噴口は、前記横断面上で前記中心軸と重なり合うように配置されている
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載されたSCR装置付き舶用内燃機関において、
前記主機関は、
前記推進方向に並んだ複数のシリンダと、
前記複数のシリンダに接続されかつ前記推進方向に延びる排気マニホールドと、を有し、
前記混合器は、前記推進方向に向かって前記排気マニホールドと並ぶように配置される
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【請求項5】
請求項4に記載されたSCR装置付き舶用内燃機関において、
前記混合器の上端部は、前記高さ方向において、前記排気マニホールドよりも下方に配置される
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載されたSCR装置付き舶用内燃機関において、
前記反応器は、前記外面に沿って前記混合器と隣接するように配置されるとともに、前記高さ方向の下側から上側に向かって延びるように構成される
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【請求項7】
請求項6に記載されたSCR装置付き舶用内燃機関において、
前記主機関の上面に配置され、前記反応器で浄化されたガスが流入する過給機を備え、
前記反応器の上端部は、前記高さ方向において、前記過給機よりも下方に配置される
ことを特徴とするSCR装置付き舶用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、SCR装置付き舶用内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、排ガス後処理システムを有する内燃機関が開示されている。この排ガス後処理システムは、いわゆる選択触媒還元(Selective Catalytic Reduction:SCR)排ガス後処理システムであって、上流側から順に、排ガスに還元剤を導入する導入装置と、この導入装置から導入された還元剤を排ガスと混合するための導入区間と、SCR触媒コンバータが配置された反応チャンバと、を備えている。
【0003】
ここで、前記特許文献1に係る導入区間は、内燃機関の上方に配置されており、その内燃機関の排ガスマニホールドと同軸になるよう、前後方向に沿って延びるように形成されている。そして、同文献に係る導入装置は、前後方向の後方に向かって還元剤を噴射するように構成されている。
【0004】
また特許文献2には、内燃機関の別例として、SCR装置(SCR触媒システム)を備えた内燃機関が開示されている。このSCR装置は、上流側から順に、排ガス内に尿素を混入させて気化させる混合管路と、その尿素が混入した排ガスを還元させるSCRリアクタと、を備えている。
【0005】
ここで、前記特許文献2に係る混合管路は、内燃機関の上方に配置されており、前記特許文献1に係る導入区間と同様に、内燃機関の前後方向に沿って延びるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6803790号
【特許文献2】特許第6713745号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記特許文献1および2のように、尿素等の還元剤を混合するための管路(混合区間、混合管路)を前後方向に沿って延ばした場合、その管路内に供給された還元剤は、重力にしたがって落下することになる。
【0008】
そのため、管路内に供給された還元剤が、重力方向の上側よりも下側に片寄って分布してしまい、排ガスと還元剤との混合にムラを招く可能性がある。SCR装置を良好に機能させるためには、排ガスと還元剤とをムラなく混合させなくては不都合である。
【0009】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、SCR装置付き舶用内燃機関において、排ガスと還元剤を均一に混合させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様は、SCR装置付き舶用内燃機関に係る。このSCR装置付き舶用内燃機関は、所定の推進方向へ船舶を前進させる主機関と、前記主機関からの排ガスを脱硝するSCR装置と、を備え、前記SCR装置は、前記排ガスに還元剤を噴射する噴射ノズルが収容された混合器と、前記混合器の下流側に配置され、前記排ガスおよび還元剤を触媒に接触させる反応器と、を有する。
【0011】
そして、前記第1の態様によれば、前記混合器は、前記推進方向に面する前記主機関の外面に沿って配置されるとともに、該主機関における高さ方向の上側から下側に向かって延びるように構成される。
【0012】
前記第1の態様によると、噴射ノズルから噴射された還元剤に作用する重力の方向と、混合器の延び方向と、が一致することになる。言い換えると、還元剤に作用する重力は、混合器の横断面に直交する方向となる。これにより、重力に起因したムラを招くことなく、排ガスと還元剤を均一に混合させることができる。
【0013】
さらに、前記第1の態様のように混合器を下側に延ばしたことは、これを上側に延ばすような構成と比較して、主機関およびSCR装置全体のコンパクト化に資する。これにより、SCR装置を種々の船型へと搭載できるようになり、ひいては、各船型に対するSCR装置の最適化を図る上で有利になる。
【0014】
また、本開示の第2の態様によれば、前記噴射ノズルは、前記高さ方向に垂直な横断面で見た前記混合器の中央位置から、該高さ方向の下方に向かって還元剤を噴射してもよい。
【0015】
還元剤に作用する重力は、前記横断面に直交する方向となる。このことと、前記第2の態様のように前記中央位置から還元剤を噴射させたこととが相まって、重力に起因したムラを招くことなく、排ガスと還元剤を均一に混合させることができる。
【0016】
また、本開示の第3の態様によれば、前記混合器は、前記噴射ノズルを収容する混合管を有し、前記混合管は、前記高さ方向に沿って延びる中心軸を有する円筒状に形成され、前記噴射ノズルの噴口は、前記横断面上で前記中心軸と重なり合うように配置されていてもよい。
【0017】
前記第3の態様によると、噴射ノズルの噴射口と、混合管の中心軸とを重ね合わせるように配置することで、還元剤をより等方的に噴射することができるようになる。このことは、排ガスと還元剤を均一に混合させる上で有効である。
【0018】
また、本開示の第4の態様によれば、前記主機関は、前記推進方向に並んだ複数のシリンダと、前記複数のシリンダに接続されかつ前記推進方向に延びる排気マニホールドと、を有し、前記混合器は、前記推進方向に向かって前記排気マニホールドと並ぶように配置されてもよい。
【0019】
前記第4の態様によると、混合器と排気マニホールドを推進方向に並べて配置することで、それらを船幅方向等にずらしたような配置と比較して、混合器と排気マニホールドを接続する配管を、よりシンプルな形状とすることができる。これにより、SCR装置のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0020】
また、本開示の第5の態様によれば、前記混合器の上端部は、前記高さ方向において、前記排気マニホールドよりも下方に配置されてもよい。
【0021】
前記第5の態様によると、混合器と排気マニホールドを接続する配管は、高さ方向の上側に折り曲げることなく構成可能となる。上側に折り曲げる必要が無くなるため、前記配管の形状を、混合器の延び方向(下方)に沿ってより短く構成することができるようになる。これにより、SCR装置のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0022】
また、本開示の第6の態様によれば、前記反応器は、前記外面に沿って前記混合器と隣接するように配置されるとともに、前記高さ方向の下側から上側に向かって延びるように構成されてもよい。
【0023】
前記第6の態様によると、反応器と混合器とが、前記外面に沿って隣接するよう配置される。これにより、主機関の外面付近のスペースを有効活用することができ、ひいては、SCR装置のコンパクト化に資する。
【0024】
また、本開示の第7の態様によれば、SCR装置付き舶用内燃機関は、前記主機関の上面に配置され、前記反応器で浄化されたガスが流入する過給機を備え、前記反応器の上端部は、前記高さ方向において、前記過給機よりも下方に配置されてもよい。
【0025】
前記第7の態様によると、反応器と過給機を接続する配管は、高さ方向の下側に折り曲げることなく実現可能となる。下側に折り曲げる必要が無くなるため、前記配管の形状を、反応器の延び方向(上方)に沿ってより短く構成することができるようになる。これにより、SCR装置のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0026】
さらに、前記第7の態様のように、過給機よりも下方に反応器を配置することで、反応器内の触媒に堆積したスートが、重力の作用によって過給機に到達し難くなる。このことは、反応器、ひいてはSCR装置の性能を維持する上で有効である。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本開示によれば、SCR装置付き舶用内燃機関において、排ガスと還元剤とをムラなく混合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、舶用内燃機関の概略構成を例示するシステム図である。
【
図2】
図2は、舶用内燃機関の具体例を示す正面図である。
【
図3】
図3は、舶用内燃機関の具体例を示す左側面図である。
【
図4】
図4は、舶用内燃機関の具体例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、SCR装置のレイアウトを例示する斜視図である。
【
図6】
図6は、混合器の構成を例示する縦断面図である。
【
図7】
図7は、混合器の構成を例示する横断面図である。
【
図8】
図8は、ミキシング機構の具体例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、反応器の構成を例示する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
図1は、舶用内燃機関(以下、単に「エンジン」という)1の概略構成を例示するシステム図である。また、
図2、
図3および
図4は、それぞれ、エンジン1の具体例を示す正面図、左側面図および平面図である。
【0030】
なお、以下の説明では、船舶を基準とした前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上および下という。ここで、前後方向は、船舶の推進方向を前といい、その反対方向を後という。前後方向は、エンジン1の出力軸(後述のクランクシャフト16)の長さ方向でもある。左右方向は、船舶を正面から見たときの左側を左といい、右側を右という。左右方向は、船幅方向でもある。上下方向は、船舶、エンジン1、および後述の主機関10の上下方向でもあり、これを「高さ方向」ともいう。
【0031】
エンジン1は、複数のシリンダ15を備えた直列多気筒式の舶用ディーゼル機関である。このエンジン1は、ユニフロー掃気式の2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等、大型の船舶に搭載される。エンジン1の出力軸であるクランクシャフト16は、プロペラ軸(不図示)等を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。エンジン1が運転することより、その出力がプロペラに伝達されて船舶が推進するようになっている。
【0032】
特に、本開示に係るエンジン1は、そのロングストローク化を実現するべく、いわゆるクロスヘッド式の内燃機関として構成されている。詳細な図示は省略するが、このエンジン1は、下方からピストンを支持するピストン棒と、クランクシャフトに連接される連接棒と、を備えており、ピストン棒と連接棒とがクロスヘッドにより連結されている。
【0033】
エンジン1はまた、いわゆる過給機付きエンジンとして構成されている。すなわち、
図1に示すように、エンジン1は、排気通路40を流れる排ガスによって作動する排気タービン過給機(以下、単に「過給機」という)を備えた構成とされている。
【0034】
エンジン1はまた、いわゆるSCR装置付き舶用内燃機関として構成されている。すなわち、本実施形態に係るエンジン1は、
図1に示すように、所定の推進方向(前方)へ船舶を前進させる主機関10に加えて、その主機関10からの排ガスを脱硝するSCR装置90を備えた構成とされている。
【0035】
(1)全体構成
以下、エンジン1の要部について説明する。以下の記載では、エンジン1の概略を説明する際には
図1を参照し、エンジン1の具体的なレイアウトを説明する際には
図2~
図4を参照することにする。
【0036】
主機関10は、複数(
図1に示す例では6つ)のシリンダ15を有している。各シリンダ15内には、不図示のピストンが往復動可能に挿入されている。これらのシリンダ15は、船舶の推進方向に並んでいる。すなわち、この主機関10におけるシリンダ列方向は、前述の前後方向に一致するようになっている。
【0037】
具体的に、本実施形態に係る主機関10は、
図2~
図4に示すように、船室の床面等に設置される台板11と、その台板11上に配置される架構12と、架構12上に配置されるシリンダジャケット13と、シリンダジャケット13の上部に固定されたシリンダカバー14と、を備えている。台板11、架構12およびシリンダジャケット13は、高さ方向に伸びる複数のタイボルトおよびナットにより締結されている。
【0038】
ここで、台板11は、エンジン1のクランクケースを構成するものであり、クランクシャフト16を回転自在に支持している。架構12は、前記連接棒およびクロスヘッドを収容している。シリンダジャケット13は、内筒としてのシリンダライナを支持している。シリンダカバー14は、シリンダジャケット13に挿入されたシリンダライナとともに、シリンダ15を構成している。
【0039】
図1に示すように、主機関10には、各シリンダ15に空気を送り込むための吸気通路30と、各シリンダ15からの排ガスを流通させるための排気通路40と、が接続されている。
【0040】
詳しくは、吸気通路30には、空気の流れ方向上流側から順に、コンプレッサ5aと、空気冷却器(不図示)および掃気トランク31と、掃気トランク31およびシリンダ15を接続する吸気管32と、が設けられている。コンプレッサ5aは、タービン5bと一体的に駆動することによって空気を過給し、過給された空気を掃気トランク31および吸気管32を介してシリンダ15へ送り込む。
【0041】
一方、排気通路40には、上流側から順に、第1排気管41と、排気マニホールド42と、SCR装置90と、コンプレッサ5aに対して駆動連結されたタービン5bと、第2排気管43と、排ガスを焼却するボイラー44と、が設けられている(第1排気管41については、
図2および
図4を参照)。
【0042】
第1排気管41は、
図4に示すように、シリンダ15毎に設けられており、それぞれ排気マニホールド42に接続されている。排気マニホールド42は、各シリンダ15からの排ガスを集合させるように構成されており、
図1および
図4に示すように前後方向に沿って延びている。また、排気マニホールド42の一側面(図例では、左側面)には、第1バイパス管45が接続されている。
【0043】
SCR装置90は、
図1に示すように、上流側から順に、排気マニホールド42に接続された第3排気管91と、排ガスに還元剤を噴射する噴射ノズル92bが収容された混合器92と、混合器92に接続された第4排気管93と、混合器92の下流側に配置されかつ排ガスおよび還元剤を触媒94bに接触させる反応器94と、反応器94に接続された第5排気管95と、を有している。SCR装置90はさらに、混合器92に還元剤および圧縮空気を供給するドージングユニット96と、ドージングユニット96に還元剤を供給するポンプユニット97と、を有している。また、第3排気管91には、該第3排気管91を開閉する第1シール弁64が設けられている。同様に、第5排気管95には、該第5排気管95を開閉する第2シール弁65が設けられている。
【0044】
なお、以下の記載では、還元剤として尿素(より詳細には、尿素水)を用いた構成について説明するが、尿素以外のアンモニア前駆物質を用いてもよい。SCR装置90の詳細は後述する。
【0045】
タービン5bは、吸気通路30に設けられたコンプレッサ5aとともに、本実施形態における過給機5を構成する。この過給機5において、コンプレッサ5aとタービン5bは連結されており、互いに同期して回転する。タービン5bを通過する排ガスによってコンプレッサ5aが回転駆動されると、このコンプレッサ5aによって空気を過給することができる。
【0046】
タービン5bの下流端(排ガスの流出口)には、第2排気管43が接続されている。この第2排気管43は、タービン5bとボイラー44を接続し、タービン5bから流出した排ガスをボイラー44まで導くことができる。なお、
図1に示すようにタービン5bとボイラー44を直に接続する代わりに、排ガスエコノマイザ等、ボイラー44以外の部材にタービン44を接続してもよい。
【0047】
この他、排気通路40には、SCR装置90を迂回して排気マニホールド42およびタービン5bを直に接続する第1バイパス管45、排ガスにタービン5bを迂回させる第2バイパス管46、リリーフ管47等が設けられている。第1バイパス管45には、該第1バイパス管45を開閉するSCRバイパス弁61が設けられている。第2バイパス管46には、該第2バイパス管46を開閉するタービンバイパス弁62が設けられている。リリーフ管47には、該リリーフ管47を開閉するリリーフ制御弁63が設けられている。
【0048】
図1に示すように、第1バイパス管45は、その中途の部位で第5排気管95と合流している。第2バイパス管46は、第1バイパス管45および第5排気管95の合流部の下流側から分岐して、タービン5bを迂回して第2排気管43に接続されている。リリーフ管47は、第2シール弁65よりも上流側の第5排気管95に接続されていて、タービン5bを迂回して第2排気管43に接続されている。
【0049】
(2)SCR装置の詳細
図5は、SCR装置90のレイアウトを例示する斜視図である。また、
図6および
図7は、それぞれ、混合器92の構成を例示する縦断面図および横断面図である。なお、
図7は、
図6のA-A断面に相当する。また、
図8は、ミキシング機構92cの具体例を示す斜視図であり、
図9は、反応器94の構成を例示する縦断面図である。以下、SCR装置90の具体的なレイアウト・構成を、
図1~
図9を参照して詳細に説明する。
【0050】
-第3排気管91-
第3排気管91は、排気マニホールド42と混合器92を接続する配管として構成されている。具体的に、本実施形態に係る第3排気管91は、
図2に示すように、排気マニホールド42の前面から前方に延びる上流側部分91aと、該上流側部分91aと連続しかつ下方に向かって延びる下流側部分91bと、を有している。
【0051】
このうち、第3排気管91の上流側部分91aは、前後方向に沿って排気マニホールド42と同軸に延びた後、側面視で中心角90°の円弧を描くように下方に折れ曲がっている。SCRバイパス弁61は、この上流側部分91aに設けられている。
【0052】
一方、第3排気管91の下流側部分91bは、前記上流側部分91aの下端部から下方に向かって延びている。この下流側部分91bは、混合器92の上端部に接続されるようになっている。
【0053】
排気マニホールド42から第3排気管91に送り出された排ガスは、前後方向に沿って前方(船舶の推進方向)に向かって流れた後、下方に向かって方向転換し、混合器92に至る。
【0054】
-混合器92-
混合器92は、排ガス中に尿素を噴射してそれらを混合させるとともに、排ガス中の還元剤を気化させる排気管として構成されている。特に、本実施形態に係る混合器92は、
図2および
図5に示すように、船舶の推進方向(前方)に面する主機関10の外面10aに沿って配置されている。この混合器92はまた、該主機関10における高さ方向の上側から下側に向かって延びるように構成されている。以下、この外面10aを「前面」ともいう。
【0055】
図4に示すように、混合器92は、前面10aの前側に位置しており、該前面10aに対して前後方向に間隔を空けて配置されている。混合器92は、この前面10aに連結してもよい。
【0056】
図2に示すように、混合器92の上端部は、高さ方向において排気マニホールド42および過給機5よりも下方に配置されている。具体的に、本実施形態に係る混合器92の上端部は、高さ方向において、シリンダジャケット13の上端部(具体的には、シリンダジャケット13とシリンダカバー14の境界部)と略同じ高さに位置している。一方、混合器92の下端部は、架構12の下半部と略同じ高さに位置している。
【0057】
また、左右方向において、混合器92は、主機関10の左右中央部に対して若干片寄って配置されている。例えば本実施形態では、混合器92は、左右方向においてクランクシャフト16と反応器94との間に位置している(
図2参照)。
【0058】
その左右方向において、混合器92は、排気マニホールド42および第3排気管91と同じ位置に配置されている。すなわち、
図4に示すように、排気マニホールド42、第3排気管91および混合器92は、前後方向に沿って整列するように配置されており、推進方向としての前方向に向かって順番に並んでいる。この並び方向は、排気マニホールド42の軸方向、すなわち主機関10のシリンダ列方向と一致することになる。
【0059】
さらに詳細には、本実施形態に係る混合器92は、
図6に示すように、排ガスを流通させる混合管92aと、混合器92の内部に配置されかつ排ガス中に還元剤としての尿素水を噴射する噴射ノズル92bと、排ガスに還元剤を混合するためのミキシング機構92cと、を有している(混合管92aについては、
図2も参照)。
【0060】
このうち、混合管92aは、円筒状の配管である。詳しくは、この混合管92aは、高さ方向に沿って延びる中心軸Pcを有する円筒状に形成されており、噴射ノズル92bを収容している。混合管92aは、円筒の上端部から流入した排ガス(
図6の矢印f1を参照)を、噴射ノズル92bから噴射された還元剤と混合させた状態で下端部から流出させる。混合管92aの寸法は、尿素が十分に気化した状態で該混合管92aから排出されるように設定されている。
【0061】
噴射ノズル92bは、その噴射口を下側に向けた姿勢で配置されており、ドージングユニット96から供給された還元剤を、同ユニット96から供給された圧縮空気とともに、下方に向けて噴射するように構成されている。
【0062】
図7に示すように、本実施形態に係る噴射ノズル92bは、高さ方向に垂直な横断面で見た混合器92の中央位置から、高さ方向の下方に向かって還元剤を噴射するように配置されている。具体的に、この噴射ノズル92bの噴口921は、高さ方向に垂直な横断面上で、混合管92aの中心軸Pcと重なり合うように配置されている。このように配置することで、噴射ノズル92bから噴射される還元剤は、径方向に均一に分布することになる(矢印f2を参照)。
【0063】
また、
図6に示すように、噴射ノズル92bは、混合管92aの高さ方向中央部と比べて上側に配置されている。このように配置することで、噴射ノズル92bから混合管92aの下端部までの区間長を、より長く確保することができる。
【0064】
ミキシング機構92cは、高さ方向において、噴射ノズル92bの上流側(言い換えると、高さ方向において、混合管92aの上流端部と、噴射ノズル92bとの間)に配置されている。ミキシング機構92cは、高さ方向に直交する方向に並んだ複数の板状部材100からなり、還元剤と均一に混合するように排ガスの流れを整えることができる。
【0065】
詳しくは、本実施形態に係る複数の板状部材100は、
図8に示すように、それぞれ、高さ方向を短手方向とし、該高さ方向に直交する一の方向(図例では左右方向)を長手方向とし、該高さ方向に直交する別の方向(図例では前後方向)を厚み方向とした矩形板状に形成されている。
【0066】
そして、各板状部材100は、第1の傾斜板部101と、第2の傾斜板部102とを有している。ここで、第1および第2の傾斜板部101,102は、それぞれ、高さ方向(つまり、排ガスの流れ方向)に対して傾斜する方向に延びている。
【0067】
具体的に、第1の傾斜板部101は、各板状部材100における長手側の周縁部から略下側に延びており、高さ方向に沿って上側から下側に向かうにしたがって、前後方向において板状部材100から離れる方向(図例では前側)に斜めに延びている。
【0068】
一方、第2の傾斜板部102は、各板状部材100の一部を舌片状に切り欠いて、その切り欠いた部分を折り曲げてなる舌辺部によって構成されている。この舌辺部は、
図8に例示するように、各板状部材100の長手方向に沿って複数(図例では3つ)にわたって設けてもよい。各舌辺部は、対応する板状部材100から略上側に向かって延びており、高さ方向に沿って下側から上側に向かうにしたがって、前後方向において板状部材100から離れる方向(図例では前側)に斜めに延びている。
【0069】
このように、ミキシング機構92cは、高さ方向に対して傾斜させた一または複数の部材によって構成することができるが、各部材の傾斜方向は、
図8に例示した第1および第2の傾斜板部101,102のように、特定の一方向とすることなく、多方向としてもよい。
【0070】
第3排気管91から混合器92に送り込まれた排ガスは、尿素と混合されかつ該尿素が気化した状態で混合管92aから排出され、第4排気管93に至る。
【0071】
-第4排気管93-
第4排気管93は、混合器92と反応器94を接続する配管として構成されている。具体的に、本実施形態に係る第4排気管93は、
図2に示すように正面視で略J字状に形成されており、混合器92の下端部から下方に流出した排ガスを、上方に向かって流れるように方向転換させることができる。
【0072】
混合器92から第4排気管93に送り出された排ガスは、該第4排気管93において方向転換し、反応器94に至る。
【0073】
-反応器94-
反応器94は、排ガスと還元剤とを触媒94bに接触させることで、排ガスを浄化可能な排気管として構成されている。特に、本実施形態に係る反応器94は、
図2~
図5に示すように、主機関10の前面10aに沿って混合器92と隣接するように配置されるとともに、高さ方向の下側から上側に向かって延びるように構成されている。
【0074】
図4に示すように、反応器94は、前面10aの前側に位置しており、該前面10aに対して前後方向に間隔を空けて配置されている。反応器94は、この前面10aに連結してもよい。
【0075】
反応器94の上端部は、高さ方向において排気マニホールド42および過給機5よりも下方に配置されている。具体的に、本実施形態に係る反応器94の上端部は、高さ方向において、シリンダジャケット13の上端部(具体的には、シリンダジャケット13とシリンダカバー14の境界部)と略同じ高さに位置している。一方、反応器94の下端部は、台板11の高さ方向中央部と略同じ高さに位置している。
【0076】
また、左右方向において、反応器94は、主機関10の左右中央部に対して片寄って配置されている。例えば本実施形態では、混合器92は、左右方向において反応器94の左側に位置している(
図2参照)。混合器92と反応器94は、左右方向に隣接するように配置されている。
【0077】
その左右方向において、反応器94は、過給機5および第5排気管95と同じ位置に配置されている。すなわち、
図4に示すように、過給機5、第5排気管95および反応器94は、前後方向に沿って整列するように配置されており、推進方向としての前方向に向かって順番に並んでいる。この並び方向は、第5排気管95の延び方向、すなわち主機関10のシリンダ列方向と一致するようになっている。
【0078】
さらに詳細には、本実施形態に係る反応器94は、
図9に示すように、排ガスを流通させる反応管94aと、排ガスの反応を促進する複数(図例では3つ)の触媒94bと、各触媒94bに圧縮空気を吹き付けるスートブロア94cと、点検用のマンホール94dと、反応器94全体を覆う断熱材94eと、を有している(反応管94aについては、
図2も参照)。
【0079】
このうち、反応管94aは、略円筒状の配管であり、その中心軸を高さ方向に沿わせた姿勢で配置されている。この反応管94aは、その下端部から流入した排ガス(
図9の矢印f3を参照)を、触媒94bによって浄化した状態で上端部から流出させる。反応管94aの寸法は、触媒94bの収容スペース等に応じて設定されている。
【0080】
複数の触媒94bは、例えば、SCR触媒、スリップ触媒等からなる。SCR触媒は、その活性時には、アンモニアを排ガス中のNOxと反応(還元)させて浄化することができる。スリップ触媒は、SCR触媒から排出された未反応のアンモニアを酸化させて浄化することができる。
【0081】
スートブロア94cは、触媒94b毎に分岐しており、外部から供給された圧縮空気(
図9の矢印f4)を各触媒94bに吹き付けることで、それらに堆積したスートを吹き飛ばすことができる。
【0082】
マンホール94dは、触媒94b毎に設けられおり、各触媒94bの状態をチェックしたり、各触媒94bをメンテナンスしたりする際に、必要に応じて開閉されるようになっている。
【0083】
第4排気管93から反応器94に送り込まれた排ガスは、触媒94bによって浄化された状態で反応管94aから排出され、第5排気管95に至る。その際、
図5に示すように、反応器94における排ガスの流れ方向A2と、混合器92における排ガスの流れ方向A1と、は互いに対向することになる。
【0084】
-第5排気管95-
第5排気管95は、反応器94と過給機5を接続する配管として構成されている。具体的に、本実施形態に係る第5排気管95は、
図2に示すように、反応器94の上面から上方に延びる上流側部分95aと、該上流側部分95aと連続しかつ後方に向かって延びる下流側部分95bと、を有している。
【0085】
このうち、第5排気管95の上流側部分95aは、高さ方向に沿って反応管94aと同軸に延びた後、側面視で中心角90°の円弧を描くように後方に折れ曲がっている。
【0086】
一方、第5排気管95の下流側部分95bは、前記上流側部分95aの後端部から後方に向かって略ストレートに延びている。この下流側部分95bは、過給機5のタービン5bに接続されるようになっている。また、下流側部分95bの中途部位には、
図3および
図4に示すように第1バイパス管45が接続されている。
【0087】
反応器94から第5排気管95に送り込まれた排ガスは、高さ方向に沿って上方に向かって流れた後、後方へ向かって方向転換し、過給機5に至る。
【0088】
(3)制御系
エンジン1はまた、該エンジン1の運転を制御するコントロールユニット100を備えている。このコントロールユニット100は、中央演算ユニット(Central Processing Unit:CPU)、メモリおよび入出力バスを備えており、エンジン1の各部と電気的に接続されている。
【0089】
例えば、コントロールユニット100は、SCR装置90の非作動時には、SCRバイパス弁61を開きかつ第1シール弁64および第2シール弁65を閉じるように、各弁に制御信号を出力する。この場合、各シリンダ15から排気通路40に流入した排ガスは、SCR装置90を迂回することになる。SCR装置90を迂回した排ガスは、タービンバイパス弁62の開度に応じて過給機5を通過または迂回した後、第2排気管43およびボイラー44を順番に通過してボイラー44で焼却されることになる。
【0090】
対して、コントロールユニット100は、SCR装置90の作動時には、SCRバイパス弁61を閉じてかつ第1シール弁64および第2シール弁65を開くように、各弁に制御信号を出力する。この場合、各シリンダ15から排気通路40に流入した排ガスは、SCR装置90を通過することになる。SCR装置90を通過する排ガスは、混合器92で還元剤と混合されかつその還元剤を気化させた状態で、反応器94で触媒94bと接触して浄化される。SCR装置90で浄化された排ガスは、タービンバイパス弁62の開度に応じて過給機5を通過または迂回した後、第2排気管43およびボイラー44を順番に通過する。
【0091】
(4)SCR装置の性能について
以上説明したように、前記実施形態によれば、噴射ノズル92bから噴射された尿素に作用する重力の方向は、
図6に示したように混合器92の延び方向と一致することになる。言い換えると、還元剤に作用する重力は、
図7に示した横断面に直交する方向となる。このことと、混合管92a内の中央位置から還元剤を噴射させたこととが相まって、重力に起因したムラを招くことなく、排ガスと還元剤を均一に混合させることができる。
【0092】
さらに、
図5に示したように混合器92を下側に延ばしたことは、これを上側に延ばすような構成と比較して、主機関10およびSCR装置90全体のコンパクト化(特に、高さ方向のコンパクト化)に資する。これにより、SCR装置90を種々の船型へと搭載できるようになり、ひいては、各船型に対するSCR装置90の最適化を図る上で有利になる。
【0093】
また、
図7に示したように、噴射ノズル92bの噴射口921と、混合管92aの中心軸Pcとを重ね合わせるように配置することで、より等方的に還元剤を噴射することができるようになる。このことは、排ガスと還元剤を均一に混合させる上で有効である。
【0094】
また、
図4に示したように、混合器92と排気マニホールド42を推進方向(前方)に向かって並べて配置することで、それらを船幅方向(左右方向)にずらしたような配置と比較して、第3排気管91をよりシンプルな形状とすることができる。これにより、SCR装置90のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0095】
また、
図1および
図4等に示したように、排気マニホールド42と混合器92を接続する第3排気管91は、流れ方向から見て、高さ方向の上側に折り曲げることなく構成可能となる。上側に折り曲げる必要が無くなるため、第3排気管91の形状を、混合器92の延び方向(下方)に沿ってより短く構成することができるようになる。これにより、SCR装置90のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0096】
また、
図5に示したように、本実施形態に係る反応器94と混合器92は、主機関10の前面10aに沿って隣接するよう配置される。これにより、主機関10の前面10a付近のスペースを有効活用することができ、ひいては、SCR装置90のコンパクト化に資する。
【0097】
また、
図3および
図4等に示したように、反応器94と過給機5を接続する第5排気管95は、流れ方向から見て、高さ方向の下側に折り曲げることなく実現可能となる。下側に折り曲げる必要が無くなるため、第5排気管95の形状を、反応器94の延び方向(上方)に沿ってより短く構成することができるようになる。これにより、SCR装置90のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0098】
さらに、過給機5よりも下方に反応器94を配置することで、反応器94内の触媒94bに堆積したスートが、重力の作用によって過給機5に到達し難くなる。このことは、反応器94、ひいてはSCR装置90の性能を維持する上で有効である。
【0099】
また、主機関10の後面からは、前述のプロペラ軸が後方に向かって延びるようになっている。そのため、主機関10の前面10aに沿って混合器92と反応器94を配置したことは、プロペラ軸とSCR装置90との干渉を避ける上でも有効である。
【0100】
また従来のSCR装置90の場合、混合器92および反応器94は、船型に応じて様々な配置とされてきた。この場合、排気管内で生じる排ガスの圧力損失が許容範囲内となるように、船型に応じて第3排気管91、第4排気管93、第5排気管95等の設計を都度変更する必要があった。各排気管の支持構造の設計に要する手間も相まって、従来の構成は、多大な労力を伴うものであった。
【0101】
これに対し、前記実施形態のように、主機関10とSCR装置90をワンセットで構成することで、第3排気管91、第4排気管93、第5排気管95等の形状および寸法を固定することができる。これにより、各排気管で生じ得る圧力損失を船型によらず固定化することができ、設計に要する労力を低減し、エンジン1全体の最適化およびコンパクト化を図る上で有利になる。
【0102】
(5)他の実施形態
図10は、SCR装置の変形例を示す
図5対応図である。また、
図11Aは混合器92の第1変形例を示す
図7対応図であり、
図11Bは混合器92の第2変形例を示す
図7対応図であり、
図11Cは混合器92の第3変形例を示す
図7対応図である。
【0103】
前記実施形態では、混合器92と反応器94とが別体に構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。
図10に例示するSCR装置90’のように、混合器92’と反応器94’を一体に構成してもよい。
【0104】
このSCR装置90’の場合、そのハウジングの内部には仕切りが設けられていて、その仕切りよりも右側が混合器92’に相当し、左側が反応器94’に相当する。この変形例を採用した場合であっても、混合器92’中の排ガスの流れ方向と、反応器94’中の流れ方向とは、前記実施形態と同様に互いに対向することになる。
【0105】
また、前記実施形態に係る混合器92は、
図6に例示されたミキシング機構92cを備えたものとされていたが、ミキシング機構92cの構成は、
図6に例示したものには限定されない。
【0106】
例えば、第1変形例に係る蒸発器92’のように、高さ方向に対して垂直に延びる一枚の板によってミキシング機構92c’を構成してもよいし、第2変形例に係る蒸発器92”のように、噴射ノズル92bの下方に配置されたベンチュリ管によってミキシング機構92c”を構成してもよい(
図11Aおよび
図11Bを参照)。あるいは、
図11Cに示す第3変形例に係る蒸発器92
3のように、下方に向かってテーパ状に拡径した円錐型の部材によってミキシング機構92c
3を構成してもよい。
【0107】
また、前記実施形態に係る噴射ノズル92bは、高さ方向に垂直な横断面上で、噴口921と中心軸Pcとが重なり合うように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。
【0108】
例えば、噴口921を混合器92の中央位置に配置させながらも、その中央位置と中心軸Pcとを厳密に一致させることなく、噴口921と中心軸Pcとが重なり合わないように配置してもよい。その場合、中心軸Pc付近に噴口921を配置することが好ましい。つまり、本開示における「混合器92の中央位置」には、中心軸Pcと前記横断面とが交わる交点に加えて、該中心軸Pc付近の領域内に収まる任意の位置が含まれる。またそもそも、噴口921を混合器92の中央位置に配置する構成は必須ではない。
【0109】
なお、ここでいう「中心軸Pc付近の領域」とは、該中心軸Pcから放射状に延びる径方向において前記横断面を2つの領域に分割したときに、混合器92の内壁部(より詳細には、混合管92aの内壁部)と比べて中心軸Pcに近接した一方の領域を指す。
【0110】
また、「混合器92の中心軸Pc」なる語の意味するところについても、広義の定義を用いることができる。つまり、ここでいう「中心」とは、円形状の断面で見た中心点に限定されるものではなく、半円形状の断面における対称の中心(いわゆる、「回転対称の中心」)、同断面における幾何中心(いわゆる「重心」)、矩形状をはじめとする種々の断面形状における幾何中心等が含まれる。言い換えると、本開示に係る混合管92aは、円筒状の配管に限定されるものではなく、半円筒状の配管としてもよいし、矩形状の配管としてもよい。混合管92aの断面形状には、任意の形状が含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 エンジン(舶用内燃機関)
5 過給機
10 主機関
10a 前面(外面)
15 シリンダ
30 吸気通路
40 排気通路
42 排気マニホールド
90 SCR装置
92 混合器
92a 混合管
92b 噴射ノズル
921 噴口
94 反応器
94b 触媒
Pc 中心軸