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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117255
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/19 20060101AFI20230816BHJP
   B60R 21/38 20110101ALI20230816BHJP
【FI】
F15B15/19
B60R21/38 323
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019871
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】青山 譲二
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB06
3H081CC22
3H081DD13
3H081DD24
3H081FF10
3H081HH08
(57)【要約】
【課題】作動時のピストンロッドの押圧力を、容易に調整可能なアクチュエータを提供すること。
【解決手段】シリンダ22の底部36に配置されたガス発生器38の作動時に発生する燃焼ガスからなる作動用ガスGにより、ピストンロッド40のピストン部41が、シリンダの天井部を貫通して延びるロッド部52を、前進移動させて、ロッド部の先端部が当接する被押圧部を移動させるアクチュエータ。シリンダは、作動前のピストン部とガス発生器との間に、ピストン部の摺動する内周面26aの開口径d2より小さな開口径d1として作動用ガスを通過させるガス挿通孔29を設けた絞り部28、を備える。ピストン部は、作動時にシリンダの内周面を摺動する本体部42と、本体部から突出して、ガス発生器の作動用ガスの吐出時に、ガス挿通孔から離脱可能に、ガス挿通孔に嵌挿される嵌挿部46と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの底部に配置されたガス発生器の作動時に発生する燃焼ガスからなる作動用ガスにより、ピストンロッドの前記シリンダ内のピストン部が、前記シリンダの天井部側に移動し、前記天井部を貫通するように延びるピストンロッドのロッド部を、前進移動させて、前記ロッド部の先端部が当接する被押圧部を移動させる構成のアクチュエータであって、
前記シリンダが、作動前の前記ピストン部と前記ガス発生器との間に、前記ピストン部の摺動する内周面の開口径より小さな開口径として前記作動用ガスを通過させるガス挿通孔を設けた絞り部、を備え、
前記ピストン部が、
作動時に前記シリンダの前記内周面を摺動する本体部と、
該本体部から前記シリンダの底部側に突出して、前記ガス発生器の前記作動用ガスの吐出時に、前記絞り部の前記ガス挿通孔から離脱可能に、前記ガス挿通孔に嵌挿される嵌挿部と、
を備えて構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記絞り部の前記ガス挿通孔が、前記ガス挿通孔の軸方向に沿う筒状の内周面を備え、
前記嵌挿部が、前記ガス挿通孔の内周面に摺動可能な摺動部を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記嵌挿部が、前記ガス挿通孔における前記シリンダの前記天井部側の周縁の全周に当接する外周縁部と、前記外周縁部から、外径寸法を漸次狭めて、前記ガス挿通孔内に挿入される挿入部と、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ロッド部の先端部が、被押圧部としての車両のフードパネルの裏面側部位に当接して、前記フードパネルを跳ね上げる構成としたフード跳ね上げ装置に使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動時に燃焼ガスによる作動用ガスを発生させて作動させるアクチュエータに関し、例えば、歩行者を受け止める際の車両のフードパネルを持ち上げるフード跳ね上げ装置等の、車両に搭載される自動車用安全装置に好適に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のアクチュエータでは、フードパネルを持ち上げるフード跳ね上げ装置に使用されるものがあり、ガス発生器の作動時に点火させて発生する燃焼ガスを作動用ガスとして利用するピストンシリンダタイプとして構成されていた(例えば、特許文献1参照)。このアクチュエータでは、ピストンロッドが、シリンダ内を摺動可能なピストン部と、ピストン部から延びてシリンダ外へ突出し、歩行者を受け止める受止材としての車両のフードパネルを、歩行者の受止位置まで上昇移動させるロッド部と、を備えて構成されていた。このアクチュエータでは、作動時、ピストンロッドが、ピストン部を前進完了位置までシリンダ内を前進移動させつつ、ロッド部の先端部が、フードパネルに当接し、そして、フードパネルを持ち上げていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-133535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアクチュエータでは、ピストンロッドのロッド部の先端部が当接するフードパネルの部位が、フードパネルの跳ね上げ力、換言すれば、ピストンロッドの前進移動する押圧力、が大きければ、破損等を生じさせてしまうことから、ロッド部の先端部の当接する部位に補強材を設ける等の調整が必要となって、フードパネルの重量増加を招き、簡便に対処し難かった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動時のピストンロッドの押圧力を、容易に調整可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアクチュエータは、シリンダの底部に配置されたガス発生器の作動時に発生する燃焼ガスからなる作動用ガスにより、ピストンロッドの前記シリンダ内のピストン部が、前記シリンダの天井部側に移動し、前記天井部を貫通するように延びるピストンロッドのロッド部を、前進移動させて、前記ロッド部の先端部が当接する被押圧部を移動させる構成のアクチュエータであって、
前記シリンダが、作動前の前記ピストン部と前記ガス発生器との間に、前記ピストン部の摺動する内周面の開口径より小さな開口径として前記作動用ガスを通過させるガス挿通孔を設けた絞り部、を備え、
前記ピストン部が、
作動時に前記シリンダの前記内周面を摺動する本体部と、
該本体部から前記シリンダの底部側に突出して、前記ガス発生器の前記作動用ガスの吐出時に、前記絞り部の前記ガス挿通孔から離脱可能に、前記ガス挿通孔に嵌挿される嵌挿部と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時、ガス発生器が作動用ガスを吐出させると、作動用ガスは、絞り部のガス挿通孔を通過しようとして、嵌挿部を押圧し、嵌挿部をガス挿通孔から離脱させ、そして、ガス挿通孔を通過した作動用ガスが、嵌挿部と本体部とを含めたピストン部を押圧する。その際、作動当初の作動用ガスが押圧する嵌挿部は、嵌挿されるガス挿通孔の開口面積に応じた作動用ガスの圧力により、押圧され、そして、嵌挿部がガス挿通孔を離脱した後では、嵌挿部と本体部とを併せたピストン部が、本体部の摺動するシリンダの内周面側の開口面積に応じた作動用ガスの圧力により、押圧されて、ピストンロッドが前進移動する。すなわち、作動当初のピストンロッドの押圧力(押圧荷重)は、ガス挿通孔の開口面積に、作動用ガスの圧力を乗じた値であって、ピストン部全体の摺動するシリンダ内周面の開口面積に対して作動用ガスの圧力を乗じた値より小さい。そのため、作動当初のピストンロッドの押圧荷重が小さいことから、嵌挿部がガス挿通孔を離脱した後において、ピストンロッドがロッド部の先端部を被押圧部に当接させる際の押圧荷重も、作動当初からピストン部全体の摺動するシリンダ内周面の開口面積に対して作動用ガスの圧力が作用した場合より、小さく抑制可能となる。また、ガス挿通孔の長さを長くしても、ガス挿通孔を短い長さとする場合に比べて、作動当初の小さい押圧荷重の状態を、嵌挿部がガス挿通孔を大きく離脱するまで、維持できることが可能であり、その後のピストンロッドがロッド部の先端部を被押圧部に当接させる際の押圧荷重も、小さく抑制可能となる。
【0008】
したがって、本発明に係るアクチュエータでは、嵌挿部の嵌挿されるガス挿通孔の開口面積や長さを調整するだけで、作動時のピストンロッドの押圧力を、容易に調整することができる。
【0009】
そして、本発明に係るアクチュエータでは、前記絞り部の前記ガス挿通孔が、前記ガス挿通孔の軸方向に沿う筒状の内周面を備え、
前記嵌挿部が、前記ガス挿通孔の内周面に摺動可能な摺動部を備えて構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、アクチュエータの作動当初、嵌挿部の摺動部が、ガス挿通孔の内周面を、一定距離分、摺動することとなり、その摺動する距離分、作動当初の低いピストンロッドの押圧力(押圧荷重)の状態を長く維持できて、その後のピストンロッドがロッド部の先端部を被押圧部に当接させる際の押圧力も、小さく抑制可能となる。
【0011】
また、本発明に係るアクチュエータでは、前記嵌挿部が、前記ガス挿通孔における前記シリンダの前記天井部側の周縁の全周に当接する外周縁部と、前記外周縁部から、外径寸法を漸次狭めて、前記ガス挿通孔内に挿入される挿入部と、を備えて構成されていてもよい。
【0012】
このような構成では、アクチュエータの作動当初において、嵌挿部がガス挿通孔から離脱する際、嵌挿部の外周縁部が、素早く、ガス挿通孔の周縁から離れることができ、ガス挿通孔を経た作動用ガスを、ピストンロッドにおけるピストン部の本体部の底面側に流すことができる。すなわち、アクチュエータの作動当初の嵌挿部に作用する作動用ガスの圧力によるピストンロッドの低い押圧荷重の状態が、短時間となって、ピストンロッドにおけるロッド部の先端部を被押圧部に当接させる際の押圧力の抑制を、より小さく調整することができる。
【0013】
そして、本発明に係るアクチュエータでは、前記ロッド部の先端部が、被押圧部としての車両のフードパネルの裏面側部位に当接して、前記フードパネルを跳ね上げる構成としたフード跳ね上げ装置に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のアクチュエータが使用されるフード跳ね上げ装置の作動前の状態を示す説明図である。
図2】実施形態のアクチュエータが使用されるフード跳ね上げ装置の作動時の状態を示す説明図である。
図3】実施形態のアクチュエータの作動前後の概略断面図である。
図4】実施形態のアクチュエータの作動初期を説明する概略拡大断面図である。
図5】実施形態のアクチュエータの変形例の作動初期を説明する概略拡大断面図である。
図6】実施形態のアクチュエータの他の変形例の作動初期を説明する概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータ20は、図1~3に示すように、自動車用安全装置としてのフード跳ね上げ装置Uに使用されるものであり、車両Vにおけるフードパネル7の後端7c下方におけるヒンジ機構9の前側近傍に、配設されている。
【0016】
なお、実施形態の場合、車両Vの図示しないフロントバンパには、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサが、配設されており、センサからの信号を入力させている図示しない制御回路が、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、アクチュエータ20の後述するガス発生器38の図示しない火薬を着火させ、その燃焼ガスを作動用ガスGとして、アクチュエータ20を伸長させて跳ね上げ装置Uを作動させるように、構成されている。
【0017】
フードパネル7は、図1に示すように、車両VのエンジンルームERの上方を覆うもので、車両Vの左右方向の両縁側における後端7c近傍に配置されるヒンジ機構9により、車両Vの車体(ボディ)1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル7は、アルミニウム合金等からなる板金製として、上面側のアウタパネル7aと、下面側に位置してアウタパネル7aより強度を向上させたインナパネル7bと、から構成されている。フードパネル7は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ20が作動されて、図2に示すように、上昇したフードパネル7の後端7cとエンジンルームERとの間に、変形スペースDを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができ、フードパネル7は、歩行者の運動エネルギーを多く吸収することができる。
【0018】
ヒンジ機構9は、フードパネル7の後端7cの下方におけるボディ1側の取付フランジ2aに固定されるヒンジベース10と、ヒンジベース10に支持軸11を利用して軸支されて、フードパネル7の後端7cの下面側に連結されるヒンジアーム12と、を備えて構成されている。なお、取付フランジ2aは、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結されている。そして、ヒンジ機構9は、フードパネル7の通常使用の開き時に、ヒンジアーム12の元部端12a側の支持軸11の部位を回転中心として開く構成としている(図1の二点鎖線参照)。
【0019】
ヒンジアーム12は、元部端12aから前方に延びた先端側の取付部12dをインナパネル7bに固着させている。取付部12dには、アクチュエータ20の作動時における後述する先端部53を下面で受け止める当接部12eが配設されている。さらに、ヒンジアーム12は、取付部12dの近傍に、塑性変形し易いように、切欠き12fを配設させており、作動時のアクチュエータ20の上昇する先端部53が当接部12eに当接した際、切欠き12fの近傍の塑性変形部12gを塑性変形させて、当接部12eや取付部12dとともに、フードパネル7の後端7cを、変形スペースDを設けるように、上昇させることとなる。
【0020】
アクチュエータ20は、図1~4に示すように、ピストンシリンダタイプとするもので、底部36にガス発生器38を設けたシリンダ22と、ピストンロッド40と、を備えて構成されている。アクチュエータ20は、車両Vのボディ1側に固定された取付ブラケット18に保持されて、フードパネル7の後端7cの下方、詳しくは、当接部12eの下方、に配設されている。
【0021】
ガス発生器38は、作動時に、図示しない所定の火薬を点火させ、火薬自体の燃焼により、あるいは、さらに火薬に着火されるガス発生剤の燃焼により、作動用ガスGとして使用する燃焼ガスを発生させるスクイブやマイクロガスジェネレータ等が使用されており、作動用ガスGを吐出する先端38aから離れて底部36から露出する元部側に、所定の制御回路からの点火電気信号を入力させる図示しないリード線を接続させるコネクタ38bが、配設されている。そして、ガス発生器38は、図示しない制御回路からの点火電気信号を入力すると、内蔵されている火薬に点火して燃焼させ、さらに適宜、ガス発生剤も燃焼させて、燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスを作動用ガスGとして、先端38aから吐出させてピストン部41側へ供給する。
【0022】
シリンダ22は、底部36側にガス発生器38を配設させ、底部36から離れた先端(上端)側の天井部23に、ピストンロッド40の後述するロッド部52を挿通させる挿通孔24を備え、底部36と天井部23との間に、ピストンロッド40のピストン部41を摺動させる内周面26aを有した周壁部26を備えて構成されている。シリンダ22は、鋼管等の金属パイプをプレス加工しつつ形成するとともに、天井部23側に挿通孔24を設けた鋼材等からなるブロック材25をカシメて固定し、底部36側に、ガス発生器38を配置させて、端縁36aをカシメて、ガス発生器38を固定している。
【0023】
そして、シリンダ22は、作動前のピストン部41の本体部42とガス発生器38との間におけるガス発生器38の直上近傍に、内径を狭めるように、テーパ状に絞られた絞り部28が、形成されている。絞り部28には、周壁部26の内周面26aの開口径d2より小さな開口径d1のガス挿通孔29が、形成されている。なお、周壁部26の内周面26aやガス挿通孔29の内周面29aは、円形の開口として、構成されている。
【0024】
ピストンロッド40は、鋼材等から形成されて、シリンダ22内に配設されるピストン部41と、ピストン部41から延びて、シリンダ22の天井部23の挿通孔24を経て突出するロッド部52と、を備えて構成されている。ロッド部52の先端部53は、鋼等からなるブロック材54を、ロッド部52の先端52a側に螺合させて形成されている。
【0025】
そして、ピストン部41は、作動時にシリンダ22の周壁部26の内周面26aを摺動する円柱状の本体部42と、本体部42からシリンダ22の底部36側に突出して、ガス発生器38の作動用ガスGの吐出時に、絞り部28のガス挿通孔29から離脱可能に、ガス挿通孔29に嵌合される嵌挿部46と、を備えて構成されている。
【0026】
実施形態の場合、絞り部28のガス挿通孔29は、ガス挿通孔29の軸方向XDに沿う筒状の内周面29aを備えて構成されており、嵌挿部46が、ガス挿通孔29の内周面29aに摺動可能な円柱状の摺動部47を備えて構成されている。
【0027】
ピストン部41は、本体部42と嵌挿部46の摺動部47との外周面42a,46aに、ガスシール性を良好にするように、凹溝43,48を設けて、ゴム等からなるシール材44,49を配設させている。
【0028】
そして、実施形態のアクチュエータ20では、ガス発生器38のコネクタ38bに図示しない制御回路からのリード線を結線するとともに、シリンダ22を、取付ブラケット18を利用して、フードパネル7の後端7cの下方の車両Vの部位に、取付固定すれば、跳ね上げ装置Uをヒンジ機構9を取付済みの車両Vに搭載することができる。
【0029】
跳ね上げ装置Uの車両Vへの搭載後、アクチュエータ20が作動すれば、ガス発生器38が作動用ガスGを発生させ、その作動用ガスGの押圧力によって、図1から図2に示すように、アクチュエータ20のピストンロッド40のロッド部52がシリンダ22から突出し、ロッド部52の上端の先端部53を当接部12eに当てて、フードパネル7の後端7cとともに当接部12eを押し上げる。そのため、フードパネル7は、後端7c側を押し上げられて、変形スペースDを広く確保できて、変形量を多くした塑性変形により、衝撃を緩和させて歩行者を受け止めることができる。
【0030】
そして、実施形態のアクチュエータ20では、作動時、図4のA,Bに示すように、ガス発生器38が作動用ガスGを吐出させると、作動用ガスGは、絞り部28のガス挿通孔29を通過しようとして、嵌挿部46を押圧し、嵌挿部46をガス挿通孔29から離脱させ、そして、ガス挿通孔29を通過した作動用ガスGが、嵌挿部46と本体部42とを含めたピストン部41を押圧する。その際、作動当初の作動用ガスGが押圧する嵌挿部46は、嵌挿されるガス挿通孔29の開口面積S1に応じた作動用ガスGの圧力により、押圧され、そして、嵌挿部46がガス挿通孔29を離脱した後では、嵌挿部46と本体部42とを併せたピストン部41が、本体部42の摺動するシリンダ22の内周面26a側の開口面積S2に応じた作動用ガスGの圧力により、押圧されて、ピストンロッド40が前進移動する。
【0031】
すなわち、作動当初のピストンロッド40の押圧力(押圧荷重)F1は、ガス挿通孔29の開口面積S1に、作動用ガスGの圧力Pを乗じた値(F1=S1×P)であって、ピストン部41の全体の摺動するシリンダ22の内周面26aの開口面積S2に対して作動用ガスGの圧力を乗じた値(F2=S2×P)より小さい。換言すれば、
S2>S1であり、
作動当初の押圧荷重F1=S1×Pは、
F2=S2×Pの値より、小さい(F1<F2)。
【0032】
そのため、作動当初のピストンロッド40の押圧荷重F1が小さいことから、嵌挿部46がガス挿通孔29を離脱した後において、ピストンロッド40がロッド部52の先端部53を被押圧部としての当接部12eに当接させる際の押圧荷重FX(図2参照)も、作動当初からピストン部41の全体の摺動するシリンダ22の内周面26aの開口面積S2に対して作動用ガスGの圧力Pが作用した場合より、小さく抑制可能となる。また、ガス挿通孔29の長さ寸法L(図4参照)を長くしても、ガス挿通孔29を短い長さとする場合に比べて、作動当初の小さい押圧荷重F1の状態を、嵌挿部46がガス挿通孔29を離脱するまで、長く維持できることが可能であり、その後のピストンロッド40がロッド部52の先端部53を被押圧部としての当接部12eに当接させる際の押圧荷重FXも、小さく抑制可能となる。
【0033】
したがって、実施形態のアクチュエータ20では、嵌挿部46の嵌挿されるガス挿通孔29の開口面積S1や長さ寸法Lを調整するだけで、作動時のピストンロッド40の押圧力FXを、容易に調整することができる。
【0034】
そして、実施形態のアクチュエータ20では、絞り部28のガス挿通孔29が、ガス挿通孔29の軸方向XDに沿う筒状の内周面29aを備え、嵌挿部46が、ガス挿通孔29の内周面29aに摺動可能な摺動部47を備えて構成されている。
【0035】
そのため、実施形態では、アクチュエータ20の作動当初、嵌挿部46の摺動部47が、ガス挿通孔29の内周面29aを、一定距離分、摺動することとなり、その摺動する距離SL分(図4参照)、作動当初の低いピストンロッド40の押圧力(押圧荷重)F1の状態を長く維持できて、その後のピストンロッド40がロッド部52の先端部53を被押圧部としての当接部12eに当接させる際の押圧力FXも、小さく抑制可能となる。
【0036】
なお、嵌挿部としては、円柱状の他、図5に示すアクチュエータ20Aのように、きのこ状のパペット弁タイプの嵌挿部66としてもよい。
【0037】
このアクチュエータ20Aでは、ピストンロッド40Aの嵌挿部66が、円錐形状として、絞り部28Aに設けられたガス挿通孔29Aにおけるシリンダ22Aの天井部側の周縁31の全周に当接する外周縁部67と、外周縁部67から、外径寸法を漸次狭めて、ガス挿通孔29A内に挿入される挿入部68と、を備えて構成されている。
【0038】
このような構成のアクチュエータ20Aでは、作動当初において、嵌挿部66がガス挿通孔29Aから離脱する際、嵌挿部66の外周縁部67が、素早く、ガス挿通孔29Aの周縁31から離れることができ、ガス挿通孔29Aを経た作動用ガスGを、ピストンロッド40Aにおけるピストン部41の本体部42の底面42b側に流すことができる。すなわち、アクチュエータ20Aの作動当初の嵌挿部66に作用する作動用ガスGの圧力Pによるピストンロッド40Aの低い押圧荷重F1(ガス挿通孔29Aの開口面積S1×作動用ガスGの圧力P)の状態が、短時間となって、ピストンロッド40Aにおけるロッド部52の先端部53を被押圧部としての当接部12eに当接させる際の押圧力FXの抑制を、より小さく調整することができる(図2参照)。
【0039】
なお、このアクチュエータ20Aは、嵌挿部66やガス挿通孔29A付近の構成が、アクチュエータ20と異なるものの、他のシリンダ22Aの天井部23側やピストンロッド40Aのピストン部41の本体部42等は、アクチュエータ20と同様の構成としている。
【0040】
また、嵌挿部としては、図6に示すアクチュエータ20Bのように、球状の嵌挿部66Bとしてもよい。
【0041】
このアクチュエータ20Bでは、ピストンロッド40Bの嵌挿部66Bが、球状として、絞り部28Bに設けられたガス挿通孔29Bにおけるシリンダ22Bの天井部側の周縁31Bの全周に当接する外周縁部67Bと、外周縁部67Bから、外径寸法を漸次狭めて、ガス挿通孔29B内に挿入される挿入部68Bと、を備えて構成されている。外周縁部67Bの当接する周縁31Bの部位には、外周縁部67Bが当接する面取りされた当接座33が形成されている。
【0042】
このような構成のアクチュエータ20Bでは、作動当初において、嵌挿部66Bがガス挿通孔29Bから離脱する際、嵌挿部66Bの外周縁部67Bが、素早く、ガス挿通孔29Bの周縁31Bから離れることができ、ガス挿通孔29Bを経た作動用ガスGを、ピストンロッド40Bにおけるピストン部41の本体部42の底面42b側に流すことができる。すなわち、アクチュエータ20Bの作動当初の嵌挿部66Bに作用する作動用ガスGの圧力Pによるピストンロッド40Bの低い押圧荷重F1(ガス挿通孔29Bの開口面積S1×作動用ガスGの圧力P)の状態が、短時間となって、ピストンロッド40Bにおけるロッド部52の先端部53を被押圧部としての当接部12eに当接させる際の押圧力FXの抑制を、より小さく調整することができる(図2参照)。
【0043】
なお、このアクチュエータ20Bでも、嵌挿部66Bやガス挿通孔29B付近の構成が、アクチュエータ20と異なるものの、他のシリンダ22Bの天井部23側やピストンロッド40Bのピストン部41の本体部42等は、アクチュエータ20と同様の構成としている。
【0044】
また、実施形態のアクチュエータ20,20A,20Bでは、フードパネル7を跳ね上げる跳ね上げ装置Uに使用する場合を例示したが、ガス発生器を作動させて所定時にピストンロッドを前進移動させる構成であれば、実施形態に限定されず、種々の自動車用安全装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
7…フードパネル、20,20A,20B…アクチュエータ、22,22A,22B…シリンダ、23…天井部、26…周壁部、26a…(摺動部位)内周面、28,28A,28B…絞り部、29,29A,29B…ガス挿通孔、29a…内周面、31,31B…(天井側)周縁、36…底部、38…ガス発生器、40,40A,40B…ピストンロッド、41…ピストン部、42…本体部、46…嵌挿部、47…摺動部、52…ロッド部、53…先端部、66,66B…嵌挿部、67,67B…外周縁部、68,68B…挿入部、
d0…(シリンダの)開口径、d1…(ガス挿通孔の)開口径、G…作動用ガス、U…(自動車用安全装置)フード跳ね上げ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6