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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117258
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】熱分解処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/027 20060101AFI20230816BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20230816BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230816BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20230816BHJP
   C02F 1/02 20230101ALI20230816BHJP
【FI】
F23G5/027 Z
C02F11/10 Z ZAB
B01J20/34 B
B09B3/40
C02F1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019876
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
3K161
4D004
4D034
4D059
4G066
【Fターム(参考)】
3K161AA24
3K161BA06
3K161CA03
3K161DA53
3K161EA33
3K161EA44
3K161GA02
3K161GA13
4D004AA01
4D004AA48
4D004CA24
4D004CB36
4D004CC01
4D034AA26
4D034CA04
4D059AA03
4D059AA07
4D059AA08
4D059AA30
4D059BB03
4D059BB13
4D059CA14
4D059CC03
4G066AA05B
4G066CA43
4G066CA51
4G066DA02
4G066GA06
(57)【要約】
【課題】耐久性がいい熱分解処理装置を提供を提供しようとするもの。
【解決手段】被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構1と、前記熱分解機構1に熱風を供給する熱風供給機構2とを有し、前記熱風供給機構2では熱風の風速調整手段3を設けるようにした。前記熱分解機構1を昇温するための上方に向かう熱風通路4を設けるようにようにしてもよい。前記熱風通路4を略L字状とするようにしてもよい。前記熱風通路4の熱風の外部の循環ラインCLを形成するようにしてもよい。前記熱風通路4の熱風の内部の循環ラインCLを形成するようにしてもよい。前記熱分解機構1の内周側に被処理物の供給ラインLを配置するようにしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構(1)と、前記熱分解機構(1)に熱風を供給する熱風供給機構(2)とを有し、前記熱風供給機構(2)では熱風の風速調整手段(3)を設けるようにしたことを特徴とする熱分解処理装置。
【請求項2】
前記熱分解機構(1)を昇温するための上方に向かう熱風通路(4)を設けるようにした請求項1記載の熱分解処理装置。
【請求項3】
前記熱風通路(4)を略L字状とするようにした請求項2記載の熱分解処理装置。
【請求項4】
前記熱風通路(4)の熱風の外部の循環ライン(CL)を形成するようにした請求項2又は3記載の熱分解処理装置。
【請求項5】
前記熱風通路(4)の熱風の内部の循環ラインを形成するようにした請求項2乃至4のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項6】
前記熱分解機構(1)の内周側に被処理物の供給ライン(L)を配置するようにした請求項1乃至5のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項7】
前記熱分解機構(1)で発生した気化成分を供給する浄化槽(5)を有するようにした請求項1乃至6のいずれかに熱分解処理装置。
【請求項8】
前記熱分解機構(1)の外周側に浄化槽(5)を配置するようにした請求項7記載の熱分解処理装置。
【請求項9】
前記熱分解機構(1)と被処理物の供給ライン(L)と浄化槽(5)とを同心円状に配置するようにした請求項7又は8記載の熱分解処理装置。
【請求項10】
前記熱分解機構(1)で発生した気化成分中の炭化水素ガスを熱分解機構(1)の加熱に供するようにした請求項1乃至9のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項11】
前記浄化槽(5)は気化成分を活性炭流動床(51)と活性炭固定床(52)とで処理するようにした請求項7乃至10のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項12】
前記熱分解機構(1)で活性炭の再生をするようにした請求項11記載の熱分解処理装置。
【請求項13】
前記浄化槽(5)に対して液体中にオゾンを圧入して電気分解する電解機構(E)を有し、液体中に前記オゾンから酸素ラジカルを生成させるようにした請求項7乃至12のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項14】
前記浄化槽(5)の下方にタンク(T)を形成するようにした請求項7乃至13のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐久性がいい熱分解処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、会社、工場、ホテル、旅館、飲食店、一般家庭等から排出された生ごみその他の廃棄物を、公害が生ずることなく、無害、無臭で炭化処理するための装置に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、会社、工場、ホテル、旅館、飲食店、一般家庭等から排出された生ごみその他の廃棄物の量は極めて多量であり、これらの廃棄物を公害が生ずることなく、無害、無臭で処理することが大きな社会問題になっている。
廃棄物の処理は、一般に、焼却処理、発酵処理、埋立て投棄処理等によって行われている。このような従来の廃棄物処理手段特に焼却処理の場合に、次のような問題が生ずる。即ち、廃棄物の焼却処理時に、排ガス中に存在するダストおよび有害物質が飛散するため、公害を引き起こさずに無煙、無臭で処理することができず、また、処理に際し廃棄物を分別しなければならず、これらの処理のために多額の設備費を要し、処理コストが高騰する上、処理作業が複雑になること等である、というものである。
このような状況に対し、耐久性がいい熱分解処理装置に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-51339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、耐久性がいい熱分解処理装置を提供を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の熱分解処理装置は、被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構と、前記熱分解機構に熱風を供給する熱風供給機構とを有し、前記熱風供給機構では熱風の風速調整手段を設けるようにしたことを特徴とする。
この熱分解処理装置では、被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構(例えば流動性加熱媒体を約600~950℃に昇温)を有するので、熱分解機構の流動性加熱媒体の熱で被処理物を熱分解させることが出来る。
【0006】
例えば、被処理物(液体系の排水等の場合)の水分を蒸発させると共に含有有機物等をメタンなどの低級炭化水素やその他気化成分に変化させ、また被処理物(固体系の廃プラスチック片等の場合)の炭素樹脂骨格等を分断してメタンなどの低級炭化水素やその他気化成分に変化させることが出来る。
そして、前記熱分解機構に熱風を供給する熱風供給機構とを有し、前記熱風供給機構では熱風の風速調整手段を設けるようにしたので、熱風の風量を維持しつつ適切な風速に調整して熱分解機構を加熱することが出来る。
【0007】
例えば、風速調整手段として熱風に対する邪魔板を設け、熱風の進行方向に対して垂直や斜めなどの互い違いに配設して、熱分解機構に火炎(例えば火炎長1,200mm)は届かず風速を落とした熱風が到達するようにすることができ、また熱分解機構自体への直火による劣化や脆化を抑制することが出来る。また、風速調整手段は口径を次第に絞っていくジョウゴ状のものとすることが出来る。
【0008】
前記被処理物として、有機成分を含有する排水や固体有機物を例示することが出来る。被処理物(液体系)として、各種排水や廃液(例えばCOD 約20,000~60,000ppmの高濃度廃液)などを例示することが出来る。被処理物が液体系の各種排水や廃液の場合、気化成分として、水蒸気や、有機物の熱分解成分である低級炭化水素(メタンガス、エタンガス等)などを例示することが出来る。熱分解機構で気化しなかった炭化物や無機成分は、流動性加熱媒体に残留することになる。
【0009】
被処理物(固体系)として、廃プラスチック類の粉砕片、生物処理後の有機汚泥(湿潤体)、食品加工残渣、廃食品類、生ごみ(魚の頭、骨など)、病院などの使用済みの紙おしめ・脱脂綿などの医療廃棄物などを例示することが出来る。被処理物が固体系の場合、気化成分として、有機物の熱分解成分である炭化水素(メタンガス、エタンガス等)などを例示することが出来る。熱分解機構で気化しなかった炭化物や無機成分は、流動性加熱媒体に残留することになる。
【0010】
前記流動性加熱媒体として、金属製やSi-C(熱伝導率 200W/mK)製などの粒体(略球状体、ビーズ状体等)、低融点合金・金属(溶融した金属液体)、溶融食塩(ソルトバス)などを例示することが出来る。低融点金属として、錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)、鉛(熱伝導率 31W/mK、融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(熱伝導率 82W/mK、融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(熱伝導率 88W/mK、融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)などを例示することが出来る。
【0011】
前記流動性加熱媒体の熱源として、都市ガス(LNG)、プロパンガス、炭化水素ガス(メタンガス)などを例示することが出来る。
熱分解の態様として、炭化物にすることや炭化水素ガス(メタンガス、エタンガスなどの有機物の熱分解ガス)などの可燃物にすることを例示することが出来る。
【0012】
(2)前記熱分解機構を昇温するための上方に向かう熱風通路を設けるようにしてもよい。
このように、熱分解機構を昇温するための上方に向かう熱風通路を設けるようにすると、より熱風発生器などの炎の先端が熱分解機構の下方に当たりにくく熱的衝撃を緩和することが出来る。
【0013】
ここで、前記熱風通路の外周をタンクにして水(クーラントになる)を満たすことにより熱風の流路を外部空間から熱的に遮断(水中埋込みインナータイプ)して不測の事態(装置外部への温度の流出)からの安全性を担保することが出来る。
【0014】
(3)前記熱風通路を略L字状とするようにしてもよい。
このように、熱風通路を略L字状とするようにすると、熱風供給機構の熱風を略L字状の部分(例えば耐熱・耐火レンガを配する)に当てて風速を一旦減衰させて上向流とすることができ熱分解機構の下方への熱的衝撃を緩和することが出来る。
【0015】
(4)前記熱風通路の熱風の外部の循環ラインを形成するようにしてもよい。
このようにし、熱風通路の熱風の外部の循環ラインを形成するようにすると、耐熱性(Si-C製の羽根など)の送風機(シロッコファン、送風ファン、スクリュー状ファン等)を用いて装置外で熱風を循環・再利用することにより省エネを図ることが出来る。
【0016】
(5)前記熱風通路の熱風の内部の循環ラインを形成するようにしてもよい。
このようにし、熱風通路の内部の循環ラインを形成するようにすると、外部の循環ラインの場合のような放熱を回避して装置内で熱風を循環・再利用することによってより省エネを図ることが出来る。
【0017】
(6)前記熱分解機構の内周側に被処理物の供給ラインを配置するようにしてもよい。
このように、熱分解機構の内周側に被処理物の供給ラインを配置するようにすると、被処理物を熱分解機構の下方側に供給し上昇していく過程で加熱作用を及ぼして熱分解していくことが出来る。熱分解機構中には酸素は含まれず、有機物は炭化されることとなる。
【0018】
前記被処理物の供給ラインとして、高濃度廃液の注入管(ポンプで先端のノズルから熱分解機構に圧入する)や粉砕有機固体の供給ライン(スパイラルコンベア等で熱分解機構に圧入する)を例示することが出来る。
【0019】
(7)前記熱分解機構で発生した気化成分を供給する浄化槽を有するようにしてもよい。
前記熱分解機構で発生した気化成分を供給する浄化槽を有するようにしてもよい。このようにすると、気化した水蒸気やメタンなどの低級炭化水素その他気化成分を槽内に取り込むことが出来る(浄化槽は排ガススクラバー槽として機能する)。
【0020】
(8)前記熱分解機構の外周側に浄化槽を配置するようにしてもよい。
このように、熱分解機構の外周側に浄化槽を配置するようにすると、昇温された(高温の)熱分解機構の外周側の浄化槽(冷却槽)により周囲の作業者の安全性を担保することが出来る。また、火災のガードになる。
【0021】
(9)前記熱分解機構と被処理物の供給ラインと浄化槽とを同心円状に配置するようにしてもよい。
このように、熱分解機構と被処理物の供給ラインと浄化槽とを同心円状(同軸状)に配置するようにすると、相互間が一体型となり配管の取り回しやバルブ数やポンプ数の削減をすることができビルトインタイプとして工事を簡略化することが出来る。
【0022】
(10)前記熱分解機構で発生した気化成分中の炭化水素ガスを熱分解機構の加熱に供するようにしてもよい。
このように、熱分解機構で発生した気化成分中の炭化水素ガスを熱分解機構の加熱に供するようにすると、自己(被処理物)から発生した炭化水素ガス(例えばメタンガス)のエネルギーを利用して省エネを図ることが出来る。
【0023】
具体的には、熱分解機構により被処理物を流動性加熱媒体で熱分解して可燃物に変化させ、流動性加熱媒体(Si-C粒体等)により高濃度廃液や粉砕有機固体(廃プラスチックの粉砕片)等の被処理物を熱分解して炭化物や炭化水素(メタン)等の可燃物に変化させることが出来る。
また、得られた炭化水素ガス(例えば廃ウレタンボードを約650℃で熱分解して得たメタンガス)により発電して流動性加熱媒体の昇温に供するようにすると被処理物の内在エネルギーを有効利用することが出来る。
【0024】
炭化水素ガスを熱分解機構の加熱に供する態様として、熱分解機構のガスバーナーのLNGにメタンガスを混合して燃焼させることや、メタンガスにより発電して電力を得て熱分解機構を電熱加熱に供することなどを例示することが出来る。また、メタンガスを水蒸気改質して得た水素ガスから電力を得ることも例示することが出来る。
そして、被処理物を産廃処分する不要物ではなく自身をエネルギーを産み出す有用物すなわち熱量発生原料に変換して地球環境の保全に資することが出来る。
【0025】
(11)前記浄化槽は気化成分を活性炭流動床と活性炭固定床とで処理するようにしてもよい。
前記浄化槽は気化成分を活性炭流動床と活性炭固定床とで処理するようにしてもよい。このようにすると、気化成分中に例えば熱分解しそこなった残留有機成分や硫化水素などの異物成分が含まれる場合、これらを活性炭流動床や活性炭固定床の活性炭で吸着濾過して浄化することが出来る。
【0026】
また、活性炭流動床と活性炭固定床とを有するので、気化成分中の残留有機成分や異物成分を活性炭流動床で大きく吸着処理し、活性炭固定床で細かく吸着濾過して浄化槽の処理水を高度に清浄化することが出来る。
一般的に、排水処理(水処理)は吸着活性炭量で全体的な処理量が規制されるが、この熱分解処理装置は、被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構と前記熱分解機構で発生した気化成分を供給する浄化槽とを有しており、液体系の被処理物(排水、廃液)を処理する場合、熱分解機構の熱源(バーナー等)の熱量の容量アップにより排水等の処理量のアップが比較的容易に可能なものであり(排水量20m3/日で60万kcal/hrバーナー に対し、排水量40m3/日で120万kcal/hrバーナー)、また生物処理のような有機汚泥は出ないものである。
浄化槽の活性炭流動床や活性炭固定床は、2段階処理として2槽以上を設けてもよい。
【0027】
(12)前記熱分解機構で活性炭の再生をするようにしてもよい。
このように、熱分解機構で活性炭の再生をするようにすると、例えば活性炭流動床や活性炭固定床の活性炭を抜き出し、吸着した汚れ成分(有機物等)を熱分解すると共に賦活・再生(例えば約600~950℃に昇温)して浄化槽で再利用することが出来る。
【0028】
(13)前記浄化槽に対して液体中にオゾンを圧入して電気分解する電解機構を有し、液体中に前記オゾンから酸素ラジカルを生成させるようにしてもよい。
前記浄化槽は、仮に排気ガス中に有機成分が残留していた場合、電解機構から電解水を循環させて、液中に移行した有機成分を酸化分解していくことが出来る。
【0029】
このように、前記浄化槽に対して液体中にオゾンを圧入して電気分解する電解機構を有し、液体中に前記オゾン(O3)から酸素ラジカル(・O)を生成させるようにすると、オゾン(常温で気体であり液面から離脱し易い)を、より活性な酸素ラジカル(・O)として液体中に共存させ、この酸素ラジカル(・O)により浄化槽中に酸化分解作用を及ぼすことが出来る。
すなわち、液面から離脱しようとする性質を有するオゾン(O3)を電気分解して、酸素ラジカル(・O)に変化させることにより、活性度が高い酸素ラジカル(・O)に変換することが出来る。
【0030】
液体中にオゾンを圧入して電気分解すると、オゾン(O3)に及ぼされる電気エネルギーによって酸素ラジカル(・O)になる。O3→O2+・O、O2→・O+・O
オゾン(O3)の酸化電位は 2.07Vであるのに対し、酸素ラジカル(・O)の酸化電位は 2.42Vであり、酸素ラジカル3つが生成すると2.42V×3=7.26Vになる。すなわち、オゾン(O3)の酸化電位2.07Vは、3つの酸素ラジカル(・O)に変化すると酸化電位は2.42V×3=7.26Vと大きなものになる。
【0031】
そして、オゾンの電気分解により生成した活性ラジカル種(・O)は、強い酸化性を有しており、浄化槽中の液体中の有機物(汚れ成分)に対して分解作用を及ぼして浄化していく。
つまり、この酸素ラジカル(・O)により、浄化槽の脱臭、脱色、殺菌をしたり、有機物やアンモニアその他の汚れ成分の分解をすることが出来る。酸素ラジカル(・O)は、浄化槽中の汚れ成分などを最終的に二酸化炭素(CO2)や窒素(N2)などの無害な物質に変化させる。
【0032】
浄化槽中の液体は一部を排出しつつ、一部はオゾンを供給する電解機構に通水・通液しながら循環するようにすることが出来る。これにより、浄化槽中の清浄処理水を外部に排出しつつ、浄化槽中でオゾンと酸素ラジカルの酸化作用を繰り返し発揮させることが出来る。
また、オゾンの電気分解により生成した活性ラジカル種(・O)の強い酸化性により、浄化槽中の使用済み活性炭の吸着汚れ成分に対して分解作用を及ぼして浄化していく。
オゾン(O3)は、空気中の酸素(O2)を原料としてオゾナイザーにより発生させることが出来る。
【0033】
(14)前記浄化槽の下方にタンクを形成するようにしてもよい。
このように、浄化槽の下方にタンクを形成するようにすると、活性炭流動床や活性炭固定床からの処理水を配管やポンプなしでタンクに移動させることが出来る。これにより、現場での工事が非常に楽になるものである。
【発明の効果】
【0034】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
熱風の風量を維持しつつ適切な風速に調整して熱分解機構を加熱することができるので、耐久性がいい熱分解処理装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】この発明の熱分解処理装置の実施形態1を説明する断面図。
図2】この熱分解処理装置の参考説明図。
図3】この発明の熱分解処理装置の実施形態2を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、この実施形態の熱分解処理装置は、被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構1(流動性加熱媒体を約600~950℃に昇温した)と、前記熱分解機構1に熱風を供給する熱風供給機構2とを有し、前記熱風供給機構2では熱風の風速調整手段3を設けるようにした。
【0037】
前記流動性加熱媒体の熱源として、都市ガス(LNG)のガスバーナーBを用いた。前記流動性加熱媒体として、低融点金属(溶融した金属液体)である錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)を用いた。
【0038】
前記風速調整手段3として熱風に対する邪魔板を設け、熱風の進行方向に対して垂直の互い違いに配設して、熱分解機構1に火炎は届かず風速を落とした熱風が到達するようにすることができ、また熱分解機構1自体への直火による劣化や脆化を抑制することが出来た。
【0039】
前記熱分解機構1を昇温するための上方に向かう熱風通路4を設けた。従って、より熱風発生器などの炎の先端が熱分解機構1の下方に当たりにくく熱的衝撃を緩和することが出来た。
また、前記熱風通路4の外周をタンクにして水(クーラントになる)を満たすことにより熱風の流路を外部空間から熱的に遮断(水中埋込みインナータイプ)して不測の事態からの安全性を担保することが出来るものであった。
【0040】
前記熱風通路4を略L字状とするようにした。したがって、熱風供給機構2の熱風を略L字状の部分(耐熱・耐火レンガを配した)に当てて風速を一旦減衰させて上向流とすることができ熱分解機構1の下方への熱的衝撃を緩和することが出来た。
前記熱風通路4の熱風の外部の循環ラインCLを形成した。そして、耐熱性(Si-C製の羽根)の送風機(シロッコファン)を用いて装置外で熱風を循環・再利用することにより省エネを図ることが出来た。
【0041】
前記被処理物として、有機成分を含有する排水や固体有機物を処理した。被処理物(液体系)として、COD 約30,000ppmの高濃度廃液を処理した。被処理物(固体系)として、廃プラスチック類の粉砕片を処理した。
【0042】
前記熱分解槽1の内周側に被処理物の供給ラインLを配置した。前記被処理物の供給ラインLとして、高濃度廃液の注入管(ポンプでノズルの先端から熱分解槽1に圧入した)と、粉砕有機固体の供給ラインL(スパイラルコンベアS1→S2で熱分解槽1に圧入した)を設けた。高濃度廃液の注入管(断面 円環状)は、粉砕有機固体の供給ラインL(スパイラルコンベアS2)の外周側に形成した。
【0043】
図2に示すように、前記熱分解機構1で発生した気化成分を供給する浄化槽5を有するようにした。熱分解機構1で発生した気化成分は、外部流路Hを通じてコンプレッサー・エア CP Airにより浄化槽5に圧入するようにした。したがって、気化した水蒸気や熱分解ガス、メタンなどの低級炭化水素その他気化成分を槽内に取り込むことが出来た(浄化槽5は排ガススクラバー槽として機能した)。
なお、熱分解機構1の流動性加熱媒体上に堆積した熱分解物は、処理の終了後に取りだすようにした。
前記熱分解機構1の外周側に浄化槽5を配置している。したがって、昇温された高温の熱分解機構1の外周側の浄化槽5(冷却槽)により周囲の作業者の安全性を担保することができ火災のガードになった。
【0044】
前記熱分解機構1と被処理物の供給ラインLと浄化槽5とを同心円状(同軸状)に配置した。これにより、相互間が一体型となり配管の取り回しやバルブ数やポンプ数の削減をすることができビルトインタイプとして工事を簡略化することが出来る。
【0045】
前記浄化槽5は気化成分を活性炭流動床51と活性炭固定床52とで処理するようにした。したがって、気化成分中に熱分解しそこなった残留有機成分や硫化水素などの異物成分が含まれる場合、これらを活性炭流動床51や活性炭固定床52の活性炭で吸着濾過して浄化することが出来た。
また、活性炭流動床51と活性炭固定床52とを有するので、気化成分中の残留有機成分や異物成分を活性炭流動床51で大きく吸着処理し、活性炭固定床52で細かく吸着濾過して浄化槽5の処理水を高度に清浄化することが出来た。
【0046】
前記浄化槽5に対して液体中にオゾンを圧入して電気分解する電解機構Eを有し、液体中に前記オゾン(O3)から酸素ラジカル(・O)を生成させるようにした。オゾン(O3)は、空気中の酸素(O2)を原料としてオゾナイザーにより発生させた。これにより、オゾンを、より活性な酸素ラジカル(・O)として液体中に共存させ、この酸素ラジカル(・O)により浄化槽5中に酸化分解作用を及ぼすことが出来た。
前記浄化槽5の下方にタンクTを形成するようにした。したがって、活性炭流動床51や活性炭固定床52からの処理水を配管やポンプなしでタンクTに移動させることが出来た。
【0047】
次に、この実施形態の熱分解処理装置の使用状態を説明する。
この熱分解処理装置では、被処理物を流動性加熱媒体で熱分解する熱分解機構1を有するので、熱分解機構1の流動性加熱媒体の熱で被処理物を熱分解させることが出来た。
そして、前記熱分解機構1に熱風を供給する熱風供給機構2とを有し、前記熱風供給機構2では熱風の風速調整手段3を設けるようにしたので、熱風の風量を維持しつつ適切な風速に調整して熱分解機構1を加熱することができ、耐久性に優れるものであった
【0048】
(実施形態2)
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図3に示すように、風速調整手段3として熱風に対する邪魔板を設け、熱風の進行方向に対して斜めの互い違いに配設して、熱分解機構1に火炎は届かず風速を落とした熱風が到達するようにすることができ、また熱分解機構1自体への直火による劣化や脆化を抑制することが出来た。
そして、熱風の進行方向に対して斜めの互い違いに配設したので、熱風の風量を維持しつつ柔らかで適切な風速に調整・アジャストして熱分解機構1を加熱することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0049】
耐久性がいいということによって、種々の熱分解処理装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 熱分解機構
2 熱風供給機構
3 風速調整手段
4 熱風通路
5 浄化槽
51 活性炭流動床
52 活性炭固定床
E 電解機構
CL 循環ライン
L 供給ライン
T タンク
図1
図2
図3