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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117309
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】天井吊り具及び天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
E04B9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019946
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181733
【弁理士】
【氏名又は名称】淺田 信二
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝文
(72)【発明者】
【氏名】下村 亮太
(57)【要約】
【課題】床構造における衝撃緩和材の耐久性を向上させる
【解決手段】天井吊り具100は、梁2に固定される躯体側部材10と、野縁受3bを支持する支持部材20と、躯体側部材10と支持部材20とを連結する連結部材30と、を備え、躯体側部材10は、雌ねじ穴13を有し、連結部材30は、雌ねじ穴13に螺合し、躯体側部材10に対する回転によって躯体側部材10に対して変位する軸部31と、軸部31に設けられ、支持部材20を軸部31の変位方向に沿う軸周りに回転可能に挟持する一対の挟持部32,33と、を有し、一対の挟持部32,33は、軸部31に対して軸部31の変位方向に変位不能である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井下地材を吊るための天井吊り具であって、
建物躯体に固定される躯体側部材と、
前記天井下地材を支持する支持部材と、
前記躯体側部材と前記支持部材とを連結する連結部材と、を備え、
前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの一方の部材は、雌ねじ穴を有し、
前記連結部材は、
前記雌ねじ穴に螺合し、前記一方の部材に対する回転によって前記一方の部材に対して変位する軸部と、
前記軸部に設けられ、前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの他方の部材を前記軸部の変位方向に沿う軸周りに回転可能に挟持する一対の挟持部と、を有し、
前記一対の挟持部は、前記軸部に対して前記変位方向に変位不能である、
天井吊り具。
【請求項2】
前記一対の挟持部のうちの少なくとも一方は、前記軸部に螺合した状態で前記軸部に回転不能に固定されたナットである、
請求項1に記載の天井吊り具。
【請求項3】
前記連結部材は、前記一対の挟持部のうちの一方の挟持部と前記他方の部材との間に設けられ、前記一対の挟持部よりも前記変位方向における弾性変形が容易である弾性部を更に有する、
請求項1又は2に記載の天井吊り具。
【請求項4】
前記一方の挟持部は、前記支持部材から前記躯体側部材までの前記天井下地材の荷重伝達経路から外れて設けられており、
前記一対の挟持部のうちの他方の挟持部は、前記荷重伝達経路に設けられており、
前記弾性部は、前記一方の挟持部と前記他方の部材との間と、前記他方の挟持部と前記他方の部材との間と、のうちの前記一方の挟持部と前記他方の部材との間にのみ設けられている、
請求項3に記載の天井吊り具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記変位方向に見て、前記軸部から離れた位置で前記天井下地材を支持する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の天井吊り具。
【請求項6】
建物における天井構造であって、
建物躯体と、
前記建物躯体の下方に設けられる天井下地材と、
前記天井下地材を吊る天井吊り具と、を備え、
前記天井吊り具は、
前記建物躯体に固定された躯体側部材と、
前記天井下地材を支持する支持部材と、
前記躯体側部材と前記支持部材とを連結する連結部材と、を備え、
前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの一方の部材は、雌ねじ穴を有し、
前記連結部材は、
前記雌ねじ穴に螺合し、前記一方の部材に対する回転によって前記一方の部材に対して変位する軸部と、
前記軸部に設けられ、前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの他方の部材を前記軸部の変位方向に沿う軸周りに回転可能に挟持する一対の挟持部と、を有し、
前記一対の挟持部は、前記軸部に対して前記変位方向に変位不能である、
天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井吊り具及び天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の天井構造として、吊り天井が広く採用されている。吊り天井を構築するには、まず、建物躯体に下方に延びるように天井吊り具を固定すると共に天井吊り具に天井下地材を固定する。その後、天井下地材に天井板を固定することにより、吊り天井が完成する。
【0003】
建物躯体は反っていたり捩じれていたりすることがある。天井板を所望の高さで設置するために、天井下地材と建物躯体との間隔を変化させて天井下地材の高さを調整することが求められている。特許文献1には、天井下地材と建物躯体との間隔を調整可能な天井吊り具が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された天井吊り具は、建物躯体であるC型フレームに取り付け可能な吊り金具と、天井下地材の野縁受を支持可能な断面略鉤状の受け金具と、吊り金具の小孔及び受け金具の小孔を挿通する連結ボルトと、を備えている。吊り金具は、連結ボルトに螺合された一対のナットで上下から挟み込まれて連結ボルトに連結される。受け金具は、連結ボルトに螺合された別の一対のナットで上下から挟み込まれて連結ボルトに連結される。一対のナットの挟み込み位置を変えることにより、吊り金具と受け金具との間隔が変化し、天井下地材の高さが調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-102670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された天井吊り具では、天井下地材の高さを調整するためには、吊り金具又は受け金具を挟み込む一対のナットの一方を緩め、その後、一対のナットの他方を締める必要があり、作業が煩雑である。特に、天井下地材の高さ調整は、正確性を高めるために天井下地材を建物躯体に吊り下げた状態で行われており、作業者が脚立等の上で作業をすることが多く、煩雑な作業には危険が伴うおそれがある。このような理由から、天井下地材の高さを容易に調整可能な天井吊り具が求められている。
【0007】
本発明は、天井下地材の高さを容易に調整可能な天井吊り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天井下地材を吊るための天井吊り具であって、建物躯体に固定される躯体側部材と、前記天井下地材を支持する支持部材と、前記躯体側部材と前記支持部材とを連結する連結部材と、を備え、前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの一方の部材は、雌ねじ穴を有し、前記連結部材は、前記雌ねじ穴に螺合し、前記一方の部材に対する回転によって前記一方の部材に対して変位する軸部と、前記軸部に設けられ、前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの他方の部材を前記軸部の変位方向に沿う軸周りに回転可能に挟持する一対の挟持部と、を有し、前記一対の挟持部は、前記軸部に対して前記変位方向に変位不能である。
【0009】
また、本発明は、建物における天井構造であって、建物躯体と、前記建物躯体の下方に設けられる天井下地材と、前記天井下地材を吊る天井吊り具と、を備え、前記天井吊り具は、前記建物躯体に固定された躯体側部材と、前記天井下地材を支持する支持部材と、前記躯体側部材と前記支持部材とを連結する連結部材と、を備え、前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの一方の部材は、雌ねじ穴を有し、前記連結部材は、前記雌ねじ穴に螺合し、前記一方の部材に対する回転によって前記一方の部材に対して変位する軸部と、前記軸部に設けられ、前記躯体側部材及び前記支持部材のうちの他方の部材を前記軸部の変位方向に沿う軸周りに回転可能に挟持する一対の挟持部と、を有し、前記一対の挟持部は、前記軸部に対して前記変位方向に変位不能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天井下地材の高さを容易に調整可能な天井吊り具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る天井構造の一部断面斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る天井吊り具の側面図であり、天井下地材を吊下げた状態を示す。
図3図2に示すIII-III線に沿う断面図である。
図4図3に示すIV部の拡大断面図である。
図5図4に示す弾性部の平面図である。
図6】本発明の実施形態における第1変形例に係る天井吊り具の断面図であり、図3に対応して示す。
図7】本発明の実施形態における第2変形例に係る天井吊り具の断面図であり、図4に対応して示す。
図8】本発明の実施形態における第3変形例に係る天井吊り具の断面図であり、図4に対応して示す。
図9】本発明の実施形態における第4変形例に係る天井吊り具の断面図であり、図3に対応して示す。
図10】本発明の実施形態における第5変形例に係る天井吊り具の断面図であり、図3に対応して示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る天井吊り具100について、図面を参照して説明する。天井吊り具100は、建物における天井構造1に用いられる。
【0013】
図1は、天井構造1の一部断面斜視図である。図1に示すように、天井構造1は、建物躯体である複数の梁2と、梁2の下方に設けられる天井下地材3と、天井下地材3を梁2に吊る複数の天井吊り具100と、を備えている。梁2は、木製であってもよいし、金属製であってもよい。
【0014】
天井下地材3は、水平方向に間隔を空けて配置された複数の野縁3aと、複数の野縁3aに渡って設けられる複数の野縁受3bと、を含む。野縁3aは、不図示の金具を用いて野縁受3bに固定されており、野縁受3bによって野縁3aどうしが連結されている。野縁3aに天井板4が例えば釘によって固定される。野縁3a及び野縁受3bは、金属製であってもよいし、木製であってもよい。
【0015】
図2は、天井吊り具100の側面図であり、天井下地材3を吊下げた状態を示す。図3は、図2に示すIII-III線に沿う断面図である。図2及び図3において、野縁3a及び天井板4の図示を省略している。
【0016】
図2及び図3に示すように、天井吊り具100は、梁2に固定される躯体側部材10と、野縁受3bを支持する支持部材20と、躯体側部材10と支持部材20とを連結する連結部材30と、を備えている。
【0017】
躯体側部材10は、断面L字形に形成されている。具体的には、躯体側部材10は、第1板状部11と、第1板状部11から略直角に延びる第2板状部12と、を有している。第2板状部12には、雌ねじ穴13が形成されている。躯体側部材10は、例えば金属製であり、金属板に折り曲げ加工を施すことにより形成される。雌ねじ穴13は、例えば、バーリングタップ加工により形成される。
【0018】
躯体側部材10は、梁2が木製である場合には、第1板状部11に形成される不図示の孔を挿通する釘を用いて固定される。梁2が金属製である場合には、躯体側部材10は、梁2に掛けるように固定される。
【0019】
支持部材20は、躯体側部材10の第2板状部12と略水平に設けられた板状部21と、板状部21から延びる受入部22と、を有している。支持部材20の板状部21には、貫通孔23が形成されている。受入部22は、断面略コ字状に形成されており、野縁受3bが受入部22に挿入される。受入部22には、野縁受3bが抜けるのを防止する返し24が形成されている。支持部材20は、例えば金属製であり、金属板に折り曲げ加工を施すことにより形成される。
【0020】
支持部材20は、受入部22に天井下地材3の野縁受3bが挿入される形態に限られない。例えば、野縁受3bが不図示の締結部材を用いて支持部材20に取り付けられていてもよい。野縁受3bが木製である場合には、野縁受3bは釘を用いて支持部材20に取り付けられていてもよい。また、天井下地材3の野縁3aが支持部材20に取り付けられていてもよい。つまり、支持部材20は、天井下地材3を支持できるように構成されていればよい。
【0021】
連結部材30は、躯体側部材10の雌ねじ穴13に螺合する軸部31と、軸部31に設けられた一対の挟持部32,33と、を有している。軸部31は、躯体側部材10に対する回転によって躯体側部材10に対して変位する。軸部31は、全長に渡って外周に雄ねじが形成された棒ねじである。
【0022】
図2及び図3に示す例では、躯体側部材10は、雌ねじ穴13が鉛直に延びるように梁2に固定されている。軸部31は、鉛直に延びており、躯体側部材10に対する回転によって鉛直に変位する。
【0023】
躯体側部材10は、雌ねじ穴13が鉛直に対して傾いて延びるように梁2に固定されていてもよい。この場合には、軸部31は、鉛直に対して傾いて延び、躯体側部材10に対する回転によって鉛直に対して傾いた方向に変位する。
【0024】
軸部31は、支持部材20の貫通孔23を挿通している。一対の挟持部32,33は、軸部31の変位方向に延びる軸Aの周りに支持部材20を回転可能に挟持する。そのため、躯体側部材10に対する支持部材20の回転を拘束した状態での躯体側部材10に対する軸部31の回転が可能となる。したがって、天井吊り具100を用いて野縁受3bを梁2に吊下げた状態において、軸部31を躯体側部材10に対して回転させることができる。
【0025】
一対の挟持部32,33は、支持部材20が軸部31に対してがたつかず、かつ人手で支持部材20を軸部31に対して回転させることができる強さで支持部材20を挟持することが好ましい。
【0026】
一対の挟持部32,33は、軸部31の変位方向に軸部31に対して変位不能である。そのため、一対の挟持部32,33は、軸部31を躯体側部材10に対して回転させるだけで、軸部31とともに変位する。したがって、野縁受3bの高さを容易に調整することができる。これにより、天井の高さ調整作業における安全性が向上する。
【0027】
野縁受3bの高さは、水平になるように調整されてもよいし、傾斜するように調整されてもよい。また、野縁受3bの高さは、水平方向における中央部が上方に凸となるように調整されてもよいし、下方に凸となるように調整されてもよい。
【0028】
図4は、図3に示すIV部の拡大断面図である。図4に示すように、一対の挟持部32,33は、軸部31に螺合した状態で軸部31にカシメにより固定されたナットである。具体的には、一対の挟持部32,33であるナットは、外周面に加えられた打撃により軸部31に食い込んで軸部31の雄ねじを潰している。そのため、一対の挟持部32,33であるナットは、軸部31に対して回転不能であり、軸部31に対して変位不能である。
【0029】
一対の挟持部32,33であるナットは、カシメにより軸部31に固定される前では、軸部31に対して回転することにより軸部31に対して変位する。そのため、一対の挟持部32,33の位置の微調整が容易である。したがって、天井吊り具100の組立時において、一対の挟持部32,33による支持部材20の挟持の強さを容易に調整することができ、天井吊り具100を容易に組み立てることができる。
【0030】
一対の挟持部32,33であるナットは、カシメに代えて、例えば接着剤により軸部31に固定されていてもよいし、溶接により軸部31に固定されていてもよい。つまり、一対の挟持部32,33であるナットは、何らかの手段により軸部31に回転不能に固定されていればよい。
【0031】
連結部材30は、挟持部32と支持部材20との間に設けられる弾性部34を更に備えている。弾性部34は、一対の挟持部32,33よりも軸部31の変位方向における弾性変形が容易である。そのため、支持部材20は、一対の挟持部32,33の間隔に応じて生じる弾性部34の復元力により、挟持部33に押付けられる。したがって、天井吊り具100の組立時において、一対の挟持部32,33による支持部材20の挟持の強さをより容易に調整することができ、天井吊り具100をより容易に組み立てることができる。
【0032】
弾性部34は、皿ばね座金である。弾性部34は、高炭素鋼、合金鋼及びステンレス鋼といったばね鋼で形成される。弾性部34の板厚は、実際には、一対の挟持部32,33の厚さ(軸部31の変位方向における寸法)の1/10以下であるが、図4では、弾性部34の板厚を誇張して描いている。
【0033】
図5は、図4に示す弾性部34の平面図(挟持部32から挟持部33に向かって弾性部34を見た図)である。図4及び図5に示すように、弾性部34は、軸部31が挿通する孔34aを有しており、内周側が隆起するように形成されている。弾性部34の外周には複数の切欠き34bが形成されている。弾性部34の材質、切欠き34bの数及び大きさにより、弾性部34の弾性変形のしやすさ、すなわち弾性部34の弾力性を調整することができる。
【0034】
弾性部34は、皿ばね座金に限られず、ばね座金、波座金、波型座金であってもよい。また、弾性部34には、ゴムといったエラストマー材料からなる部材を用いることができる。ただし、弾性部34がエラストマー材料からなる場合には、経年劣化により弾性部34の復元力が低下して支持部材20が軸部31に対してがたつくおそれがある。このような理由から、弾性部34は、金属製であることが好ましい。
【0035】
図示を省略するが、弾性部34と同等の弾性部が挟持部33と支持部材20との間に設けられてもよい。この場合においても、天井吊り具100の組立時に、一対の挟持部32,33による支持部材20の挟持の強さをより容易に調整することができ、天井吊り具100をより容易に組み立てることができる。
【0036】
ただし、弾性部34と同等の弾性部を挟持部33と支持部材20との間に設ける場合には、野縁受3bの高さ調整後に野縁3aに天井板4(図1参照)を固定したときに、天井板4の荷重により当該弾性部が変形し天井板4が所望の位置よりも低くなるおそれがある。
【0037】
具体的に説明すると、天井下地材3及び天井板4により支持部材20に作用する荷重は、挟持部33、軸部31及び躯体側部材10をこの順に経て梁2に伝達される。つまり、挟持部33は、支持部材20から躯体側部材10までの天井下地材3及び天井板4の荷重伝達経路に設けられている。挟持部33と支持部材20との間に弾性部34と同等の弾性部を設けると、当該弾性部も荷重伝達経路に設けられることになる。そのため、野縁受3bの高さ調整後に野縁3aに天井板4を固定したときには、弾性部が天井板4の荷重を受けて変形し、支持部材20が下方に変位して天井板4が所望の位置よりも低くなるおそれがある。
【0038】
このような理由から、挟持部33と支持部材20との間には弾性部34と同等の弾性部が設けられていないことが好ましい。
【0039】
本実施形態では、荷重伝達経路から外れて設けられた挟持部32と支持部材20との間に弾性部34が設けられており、荷重伝達経路に設けられた挟持部33と支持部材20との間には弾性部34が設けられていない。したがって、天井吊り具100をより容易に組み立てることができると共に天井板4を所望の位置により高い精度で設置することができる。
【0040】
挟持部32と弾性部34との間、弾性部34と支持部材20との間、及び支持部材20と挟持部33との間の少なくとも1つに、軸部31の変位方向における弾性変形の容易さが一対の挟持部32,33と比較して同等以上である部材が設けられていてもよい。
【0041】
図2に示すように、支持部材20の受入部22は、軸部31の変位方向に支持部材20を見て、軸部31から離れて位置している。野縁受3bは、軸部31の変位方向に支持部材20を見て、軸部31から離れた位置で支持部材20によって支持されている。そのため、作業員の手や軸部31を回すための治具を、野縁受3bと干渉することなく軸部31の下方から軸部31の下端または挟持部33まで移動させることができる。したがって、軸部31の下方から野縁受3bの高さを調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性がより向上する。
【0042】
次に、天井構造1の構築方法について、図1から図3を参照して説明する。天井構造1の構築は、建物躯体である複数の梁2が構築された後に行われる。
【0043】
まず、梁2に、天井吊り具100の躯体側部材10を固定する。次に、躯体側部材10の雌ねじ穴13に軸部31を螺合する。躯体側部材10は、雌ねじ穴13から軸部31を抜き出した状態で梁2に固定されてもよい。
【0044】
次に、天井吊り具100における支持部材20の受入部22に天井下地材3の野縁受3bを挿入し、天井下地材3を梁2に吊る。天井下地材3の野縁3aは、野縁受3bを受入部22に挿入する前に野縁受3bに固定されてもよいし、野縁受3bを受入部22に挿入した後に野縁受3bに固定されてもよい。
【0045】
次に、野縁受3bの高さを調整する。天井吊り具100では、野縁受3bの高さは、軸部31を躯体側部材10に対して回転させるだけで変化するため、野縁受3bの高さを容易に調整することができる。したがって、天井の高さ調整作業における安全性が向上する。
【0046】
その後、天井下地材3の野縁3aに天井板4を固定する。以上により、天井構造1の構築が完了する。
【0047】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0048】
天井吊り具100及び天井構造1では、一対の挟持部32,33は、軸部31の変位方向に軸部31に対して変位不能である。そのため、一対の挟持部32,33は、軸部31を躯体側部材10に対して回転させるだけで、軸部31とともに変位する。したがって、野縁受3bの高さを容易に調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性が向上する。
【0049】
また、天井吊り具100では、一対の挟持部32,33は、軸部31に螺合した状態で軸部31にカシメにより固定されたナットである。そのため、一対の挟持部32,33は、カシメにより軸部31に固定される前では、軸部31に対して回転することにより軸部31に対して変位する。したがって、天井吊り具100の組立時において、一対の挟持部32,33の位置の微調整が容易であり、一対の挟持部32,33による支持部材20の挟持の強さを容易に調整することができる。これにより、天井吊り具100を容易に組み立てることができる。
【0050】
また、天井吊り具100では、連結部材30は、挟持部32と支持部材20との間に設けられ、一対の挟持部32,33よりも軸部31の変位方向における弾性変形が容易である弾性部34を更に備える。そのため、支持部材20は、一対の挟持部32,33の間隔に応じて生じる弾性部34の復元力により、挟持部33に押付けられる。したがって、天井吊り具100の組立時において、一対の挟持部32,33による支持部材20の挟持の強さをより容易に調整することができ、天井吊り具100をより容易に組み立てることができる。
【0051】
また、天井吊り具100では、挟持部33と支持部材20との間には弾性部34と同等の弾性部が設けられておらず、支持部材20は、挟持部33に接している。そのため、野縁受3bの高さ調整後に野縁3aに天井板4を固定したときに、天井板4の重さにより支持部材20が下方に変位することを防止することができる。したがって、天井板4を所望の位置により高い精度で設けることができる。
【0052】
また、天井吊り具100では、支持部材20は、軸部31の変位方向に支持部材20を見て、軸部31から離れた位置で野縁受3bを支持する。そのため、作業員の手や軸部31を回すための治具を、野縁受3bに干渉することなく軸部31の下方から軸部31の下端または挟持部33まで移動させることができる。したがって、軸部31の下方から野縁受3bの高さを調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性がより向上する。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0054】
<第1変形例>
図6は、本発明の実施形態における第1変形例に係る天井吊り具101の断面図であり、図3に対応して示す。
【0055】
図2図4に示す天井吊り具100では、躯体側部材10に雌ねじ穴13が設けられ、軸部31は、支持部材20の貫通孔23を挿通し、一対の挟持部32,33が支持部材20を挟持している。
【0056】
図6に示す天井吊り具101では、支持部材20の板状部21に雌ねじ穴25が形成され、軸部31は、躯体側部材10の第2板状部12に形成された貫通孔14を挿通し、一対の挟持部32,33が躯体側部材10を挟持している。一対の挟持部32,33が軸部31の変位方向に軸部31に対して変位不能である点は、図2図4に示す天井吊り具100と同じである。
【0057】
天井吊り具101では、軸部31を支持部材20に対して回転させると、支持部材20が軸部31に対して変位する。一対の挟持部32,33は、軸部31の変位方向に軸部31に対して変位不能であるため、軸部31に対する支持部材20の変位によって、支持部材20が躯体側部材10に対して変位する。したがって、野縁受3bの高さを容易に調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性が向上する。
【0058】
天井吊り具101においても、一対の挟持部32,33は、軸部31に螺合した状態で軸部31にカシメにより固定されたナットである。そのため、一対の挟持部32,33は、カシメにより軸部31に固定される前では、軸部31に対して回転することにより軸部31に対して変位する。したがって、天井吊り具101の組立時において、一対の挟持部32,33の位置の微調整が容易であり、一対の挟持部32,33による躯体側部材10の挟持の強さを容易に調整することができる。これにより、天井吊り具101を容易に組み立てることができる。
【0059】
また、天井吊り具101では、連結部材30は、挟持部32と躯体側部材10との間に設けられ、一対の挟持部32,33よりも軸部31の変位方向における弾性変形が容易である弾性部34を更に備える。そのため、躯体側部材10は、一対の挟持部32,33の間隔に応じて生じる弾性部34の復元力により、挟持部33に押付けられる。したがって、天井吊り具101の組立時において、一対の挟持部32,33による躯体側部材10の挟持の強さをより容易に調整することができ、天井吊り具101をより容易に組み立てることができる。
【0060】
また、天井吊り具101においても、荷重伝達経路から外れて設けられた挟持部32と支持部材20との間に弾性部34が設けられており、荷重伝達経路に設けられた挟持部33と支持部材20との間には弾性部34が設けられていない。したがって、天井吊り具101をより容易に組み立てることができると共に天井板4を所望の位置により高い精度で設置することができる。
【0061】
また、天井吊り具101においても、支持部材20は、軸部31の変位方向に支持部材20を見て、軸部31から離れた位置で野縁受3bを支持する。そのため、作業員の手や軸部31を回すための治具を、野縁受3bに干渉することなく軸部31の下方から軸部31の下端まで移動させることができる。したがって、軸部31の下方から野縁受3bの高さを調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性がより向上する。
【0062】
図6に示す天井吊り具101では、挟持部33が支持部材20の上方に位置しており、挟持部33を軸部31の下方から回すことが困難である。そのため、軸部31の下端に非円形の穴または溝を形成しておき穴または溝に治具を嵌めて軸部31を回転できるようにしておくことが好ましい。または、軸部31の下端近傍の外周を非円形形状とし、軸部31の下端を治具に嵌めて軸部31を回転できるようにしておくことが好ましい。
【0063】
<第2変形例>
図7は、本発明の実施形態における第2変形例に係る天井吊り具102の断面図であり、図4に対応して示す。図2図4に示す天井吊り具100では、一対の挟持部32,33は、軸部31に螺合した状態で軸部31にカシメにより固定されたナットである。図7に示す天井吊り具102では、挟持部32は、軸部31に螺合した状態で軸部31にカシメにより固定されたナットであり、挟持部33は、軸部31に予め一体的に設けられたヘッド部である。つまり、軸部31は、ヘッド部付ボルトのねじ部であり、挟持部33は、ヘッド部付ボルトのヘッド部である。
【0064】
天井吊り具102においても、軸部31を支持部材20に対して回転させると、支持部材20が軸部31に対して変位する。一対の挟持部32,33は、軸部31の変位方向に軸部31に対して変位不能であるため、軸部31に対する支持部材20の変位によって、支持部材20が躯体側部材10に対して変位する。したがって、野縁受3bの高さを容易に調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性が向上する。
【0065】
挟持部33は、外周が六角形に形成されている。つまり、軸部31及び挟持部33によって六角ボルトが形成されている。挟持部33は、外周が六角形に形成されている形態に限られず、外周が円形の十字穴付なべ頭であってもよい。挟持部33の形態は、六角ボルトのヘッド部、十字穴なべ頭に限られず、治具によって回せるような形状であればよい。
【0066】
図示を省略するが、図6に示す天井吊り具101における挟持部33を、図7に示す挟持部33と同様にヘッド部としてもよい。
【0067】
<第3変形例>
図8は、本発明の実施形態における第3変形例に係る天井吊り具103の断面図であり、図4に対応して示す。
【0068】
図7に示す天井吊り具102を組み立てるには、挟持部32を軸部31における挟持部33とは反対側の端部(図3における上側の端部)から軸部31に螺合させて挟持部33の近傍まで移動させることになる。そのため、天井吊り具102の組み立てに時間がかかる。
【0069】
そこで、図8に示す天井吊り具103では、挟持部32を、軸部31に予め一体的に設けられたヘッド部とし、挟持部33をナットとしている。そのため、天井吊り具103を組み立てるには、挟持部33を軸部31の下端から軸部31に螺合させて挟持部32の近傍に移動させればよい。
【0070】
挟持部32から軸部31の上端までの長さは、軸部31が躯体側部材10に対する回転により変位できるようにできるだけ長いことが好ましいのに対して、挟持部32から軸部31の下端までの長さは、挟持部33を固定できるだけの長さがあれば十分であり、挟持部32から軸部31の上端までの長さと比較して短い。したがって、螺合により挟持部33を軸部31の下端から挟持部32の近傍まで移動させるのに要する時間を、図7に示す天井吊り具102と比較して短くすることができ、天井吊り具103を容易に組み立てることができる。
【0071】
図示を省略するが、図6に示す天井吊り具101における挟持部32を、図7に示す挟持部32と同様にヘッド部としてもよい。
【0072】
<第4変形例>
図9は、本発明の実施形態における第4変形例に係る天井吊り具104の断面図であり、図3に対応して示す。
【0073】
天井吊り具104では、軸部31は、小径部31aと、小径部31aよりも外径が大きい大径部31bと、を含む。小径部31aが躯体側部材10の雌ねじ穴13に螺合し、挟持部32は、大径部31bに螺合した状態でカシメにより固定されている。挟持部33は、軸部31の大径部31bに予め一体的に設けられたヘッド部である。
【0074】
天井吊り具104の組立時には、挟持部32となるナットを小径部31aに螺合させることなく大径部31bに設けることができる。したがって、天井吊り具104を容易に組み立てることができる。
【0075】
図7に示す天井吊り具102と同様に、天井吊り具104の挟持部33は、外周が六角形に形成されていてもよいし、十字穴付なべ頭であってもよい。つまり、挟持部33は、治具によって回せるような形状を有していればよい。
【0076】
図示を省略するが、図6に示す天井吊り具101における軸部31に、小径部31aと大径部31bを形成し、小径部31aを支持部材20の雌ねじ穴25に螺合し、大径部31bに挟持部32となるナットを螺合させてもよい。
【0077】
<第5変形例>
図10は、本発明の実施形態における第5変形例に係る天井吊り具105の断面図であり、図3に対応して示す。
【0078】
図2図4に示す天井吊り具100では、軸部31の全長に渡って軸部31の外周に雄ねじが形成されている。図10に示す天井吊り具105では、軸部31の中央部外周には、雄ねじが形成されていない。このような天井吊り具105においても、軸部31の雄ねじが形成された範囲で、野縁受3bの高さを容易に調整することができ、天井の高さ調整作業における安全性が向上する。
【符号の説明】
【0079】
1・・・天井構造
2・・・梁(建物躯体)
3・・・天井下地材
3a・・野縁
3b・・野縁受
4・・・天井板
10・・躯体側部材
13・・雌ねじ穴
20・・支持部材
25・・雌ねじ穴
30・・連結部材
31・・軸部
32・・挟持部
33・・挟持部
34・・弾性部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10