(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117320
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料改質装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/50 20160101AFI20230816BHJP
F02M 26/27 20160101ALI20230816BHJP
F02M 26/36 20160101ALI20230816BHJP
F02M 27/02 20060101ALI20230816BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F02M26/50 311
F02M26/27
F02M26/50 321
F02M26/36
F02M27/02 J
F02D19/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019959
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 真輔
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 岳大
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062AA05
3G062ED08
3G062ED09
3G062ED10
3G062GA20
3G092AA01
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB02
3G092AB15
3G092DB03
3G092DC01
3G092DE17S
3G092FA36
3G092HD07Z
(57)【要約】
【課題】 内燃機関で発生する凝縮水による改質触媒の破損を効果的に抑制する内燃機関の燃料改質装置を提供する。
【解決手段】 内燃機関の燃料改質装置は、燃焼室11から排出された排気に改質用燃料を添加する燃料添加装置31と、改質用燃料を添加した炭化水素系燃料を、水素と一酸化炭素を含む改質ガスに分解する触媒を有する燃料改質器35とを備える。燃料改質器35から排出した排気を吸気に戻す排気還流通路23には冷却装置45を備える。排気還流通路23で発生した凝縮水を触媒に接触しないように、燃料改質器35の触媒の触媒下面水準100よりも重力下方向の低位置に凝縮水保持手段に相当する排気還流通路231、232、233が配設される。これにより、凝縮水が吸気通路のコンプレッサの羽根を破損したりするのを防止し、凝縮水の改質触媒との接触を回避して触媒の破損を防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室において外気から吸入した空気と燃料との混合気を燃焼させることにより外部仕事を取り出す内燃機関にあって、
燃焼室(11)から排出された排気に改質用燃料を添加する燃料添加装置(31)と、
改質用燃料を添加した炭化水素系燃料を、水素と一酸化炭素を含む改質ガスに分解する触媒を有する燃料改質器(35)と、
前記燃料改質器から排出した排気を吸気に戻す排気還流通路(23)と、
前記排気還流通路の配管に設置された冷却装置(45)と、
前記排気還流通路で発生した凝縮水を前記触媒に接触しないように保持する凝縮水保持手段(33、231、232、233、234、2341、235、236、43、39)とを備える内燃機関の燃料改質装置。
【請求項2】
前記凝縮水保持手段は、前記燃料改質器と前記冷却装置の間の配管(23、231、232、233)であって、前記燃料改質器の触媒下面水準(100)より重力下方向に位置する請求項1記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項3】
前記凝縮水保持手段は、前記配管(23、231、232、233)の配管内空間の容積Vが前記冷却装置で発生する凝縮水容積Wより大きい請求項2記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項4】
前記凝縮水容積Wは、前記冷却装置内の最大温度Tを用いて飽和蒸気圧ew、飽和蒸気量D、及び積算凝縮水量Mを用いて算出される請求項3記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項5】
前記冷却装置は、前記燃料改質器の前記触媒下面水準より重力下方向に位置する請求項1記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項6】
内燃機関の停止を検知する手段(50)と、前記凝縮水保持手段の凝縮水を排気管(22)に排出する凝縮水排出配管(38)と、排出された凝縮水を保持する構造(39)をもつ前記排気管と、前記凝縮水排出配管の管内通路を開閉する制御弁(40)と、前記凝縮水保持手段の水の有無を検知する水センサ(42)と、前記構造の排気の出口側に設けられる排気浄化触媒(37)と、前記排気浄化触媒の温度を検知する触媒温度検知手段(36)と、前記水センサの検知信号及び前記排気浄化触媒の触媒温度信号に基づいて前記制御弁の開閉を制御する制御手段(50)とを備える請求項1から5のいずれか一項記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項7】
前記凝縮水保持手段に溜める凝縮水を霧化する霧化手段(47)を設ける請求項1から5のいずれか一項記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項8】
前記凝縮水保持手段(2341)の水の有無を検知する水センサ(51)と、前記水センサの検知信号に基づいて水を判別する判別手段(50)と、判別手段の結果水の有りを判別したとき前記霧化手段を運転する制御手段(50)とを備える請求項7記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項9】
前記凝縮水保持手段の凝縮水及び前記排気環流通路内の凝縮水と接触する配管内壁は、耐腐食手段(53)が施されている請求項1記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項10】
前記耐腐食手段は、遷移金属のクロム、ニッケル、銅、亜鉛、銀、プラチナ、金、ロジウムから選ばれる一種以上を、金属表面に付着させる手段である請求項9記載の内燃機関の燃料改質装置。
【請求項11】
前記燃料改質器は、燃料を分解する改質触媒と、前記改質触媒を担持する基材とを備え、前記基材にSi系セラミックが用いられる請求項1記載の内燃機関の燃料改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸気通路から供給される空気と燃料との混合気を燃焼室で燃焼することにより内燃機関を駆動するもので、燃焼室から排出される排気中に燃料を添加し、排気と燃料の混合気を改質触媒で改質した改質ガスを吸気通路に供給する技術が知られている。
【0003】
この特許文献1の内燃機関では、改質触媒により排気と燃料との混合気を改質して、水素を含む改質ガスを生成する改質手段と、吸気通路に設けられるとともに、内燃機関に供給する空気を加圧する過給手段と、吸気通路に設けられるとともに、過給手段から吐出される空気を冷却する吸気冷却手段と、吸気通路であって、過給手段と吸気冷却手段との間に改質ガスを還流させるガス還流通路とを備え、排気と燃料との混合気を改質して得られた改質ガスを、過給手段と吸気冷却手段との間の吸気通路に還流する。
【0004】
また、特許文献2のものでは、内燃機関の吸気を過給する過給機よりも下流側の吸気通路のインタークーラによって生成された凝縮水を含む空気を吸気通路に排出する凝縮水除去通路を備えた水抜き装置を開示している。この凝縮水除去通路は、吸気通路の吸気方向と直交する吸気通路断面積に対して凝縮水を含む空気の排出方向と直交する排出通路断面積を狭くするとともに、通路終端部に排出通路断面積よりもさらに狭いオリフィスを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-37745号公報
【特許文献2】特開2019-35333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す燃料改質システムでは、冷却装置で発生する凝縮水が改質触媒に接触すると、熱衝撃等により触媒が破損する怖れがあるが、しかし、触媒の破損を防止する構成は開示されていない。
【0007】
特許文献2の内燃機関では、排気に燃料を添加する燃料改質器を備えたものの開示はなく、過給機の下流側の吸気を冷却するインタークーラで発生する凝縮水を吸気通路に排出する水抜き装置であって、燃料改質器の触媒の破損を防止する構成についての開示はない。
【0008】
本発明は、内燃機関で発生する凝縮水による改質触媒の破損を効果的に抑制する内燃機関の燃料改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内燃機関の燃料改質装置は、燃焼室において外気から吸入した空気と燃料との混合気を燃焼させることにより外部仕事を取り出す内燃機関にあって、燃焼室(11)から排出された排気に改質用燃料を添加する燃料添加装置(31)と、改質用燃料を添加した炭化水素系燃料を、水素と一酸化炭素を含む改質ガスに分解する触媒を有する燃料改質器(35)と、前記燃料改質器から排出した排気を吸気に戻す排気還流通路(23)と、前記排気還流通路の配管に設置された冷却装置(45)と、前記排気還流通路で発生した凝縮水を前記触媒に接触しないように保持する凝縮水保持手段(33、231、232、233、234、2341、235、236、43、39)とを備える構成を採用する。
【0010】
本発明の内燃機関の燃料改質装置によると、凝縮水保持手段に溜められる凝縮水は、触媒出口に接続する排気還流通路の部分で触媒と接触し難い。したがって、触媒の破損を効果的に抑制することができる。
【0011】
この凝縮水保持手段を備えれば、燃料改質器の触媒形状に依らず、例えば排気と排気還流装置を流れるガスが熱交換をするような改質触媒(セラミック材料製)においても、触媒の破損を効果的に抑制することができる。
また、排気管の形状が要件を満たしていれば、燃料改質器の触媒下面水準より重力下方向に冷却装置を位置することも可能である。
【0012】
本発明は、内燃機関の排気還流通路に炭化水素系燃料を改質する触媒を有する内燃機関用燃料改質システムにおいて、触媒の信頼性を向上させることができる。
本発明の内燃機関の燃料改質装置によると、内燃機関の排気を還流する装置を備えた燃料改質システムにおいて、触媒と凝縮水の接触を抑制する構成を有するため、触媒の破損を抑制することができる。
【0013】
燃料改質器の改質触媒の触媒下面水準よりも重力上方向にEGRクーラ等の冷却装置が設置される場合、冷却装置で発生する凝縮水は、凝縮水保持手段に溜められるから、凝縮水による触媒の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態による燃料改質システムの構成を示す概略構成図である。
【
図2】第2実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図3】EGRクーラに発生する凝縮水を説明する説明図である。
【
図4】第3実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図5】第4実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図6】第5実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図7】第6実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図8】第7実施形態による燃料改質システムの構成を示す概略構成図である。
【
図9】第7実施形態による凝縮水排出処理を説明するフローチャートである。
【
図10】第8実施形態による燃料改質システムの構成を示す概略構成図である。
【
図11】第9実施形態による燃料改質システムの構成を示す概略構成図である。
【
図12】第10実施形態による燃料改質システムの構成を示す概略構成図である。
【
図13】第11実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図14】第11実施形態による凝縮水排出処理を説明するフローチャートである。
【
図15】第12実施形態による燃料改質システムの部分構成を示す概略構成図である。
【
図17】触媒前と触媒後のNOxとSOxの含有量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による内燃機関の燃料改質装置を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1に基づいて説明する。
第1実施形態を
図1に示す。
図1に示すように、燃料改質システム1は、図示しない車両の内燃機関(以下、「エンジン」という)10から排出される排気に燃料を添加し、改質触媒により改質した改質燃料をエンジン10に供給する。
【0017】
車両は、エンジン10、吸気通路21、排気通路22、排気還流通路23、過給器25、インタークーラ28、燃料改質器35、EGRバルブ41、冷却装置に相当するEGRクーラ45等を備える。
【0018】
エンジン10は、例えば4気筒の多気筒エンジンである。
図1では、1気筒の断面を模式的に示している。インジェクタ12は、燃料としてのガソリンをエンジン10の燃焼室11に噴射供給する。すなわち本実施形態のエンジン10は、ガソリンエンジンである。エンジン10は、吸気通路21から供給される吸気とインジェクタ12から噴射される燃料との混合気を燃焼室11内で燃焼させ、燃焼時のエネルギによりピストン13を往復運動させる。ピストン13の往復運動は、図示しないクランクシャフトの回転運動に変換される。本実施形態のエンジン10は、火花点火式であって、点火プラグ15の電極間に放電を発生させることで、混合気に点火される。
【0019】
燃焼室11と吸気通路21との接続部には吸気弁17が設けられ、燃焼室11と排気通路22との接続部には排気弁18が設けられる。吸気弁17および排気弁18は、図示しないバルブ駆動機構により開閉駆動される。
【0020】
吸気通路21は、一端が大気に開放され、他端がエンジン10に接続するように設けられている。吸気通路21は、エアクリーナ19を経由して流入した吸気を、エンジン10に導く。排気通路22は、一端がエンジン10に接続し、他端が大気に開放されている。排気通路22は、エンジン10の燃焼室で燃料が燃焼することで生じた排気を、エンジン10から大気側へ導く。排気還流通路23は、一端が排気通路22に接続し、他端が吸気通路21に接続するように設けられている。排気還流通路23は、排気通路22に流れる排気を吸気通路21に還流させる。
【0021】
以下、吸気通路21において、大気に開放されている側を上流側、エンジン10側を下流側とする。排気通路22において、エンジン10側を上流側、大気に開放されている側を下流側とする。排気還流通路23において、排気通路22側を上流側、吸気通路21側を下流側とする。
【0022】
過給器25は、コンプレッサ251およびタービン252を有し、シャフト253で接続され一体に回転する。コンプレッサ251は吸気通路21に設けられ、タービン252は排気通路22に設けられる。タービン252が排気通路22を流れる排気の運動エネルギにより回転することで、コンプレッサ251が回転し、吸気通路21の吸気を圧縮してエンジン10に供給する。これにより、過給可能である。
【0023】
インタークーラ28は、吸気通路21において、コンプレッサ251の下流側に設けられ、コンプレッサ251により圧縮されることで温度が上昇した吸気を冷却する。これにより、エンジン10の燃費効率および出力が向上する。吸気通路21のインタークーラ28の下流側には、スロットルバルブ29が設けられる。スロットルバルブ29の開度を調整することで、吸気通路21を流れる吸気の量である吸気量を制御可能である。
【0024】
排気通路22には、タービン252の上流側と下流側とを連通するバイパス通路271が設けられる。バイパス通路271には、ウェイストゲートバルブ272が設けられている。ウェイストゲートバルブ272の開度を調整することで、タービン252側へ流入する排気の量を調整可能である。
【0025】
排気通路22において、タービン252の下流側には、燃料改質器35が設けられる。また、燃料改質器35の入口側には、排気通路22から分岐する燃料添加通路225が接続し、出口側には、排気還流通路23の上流側の一端が接続される。燃料添加通路225には、燃料添加装置31が設けられる。燃料添加装置31は、改質用の燃料を燃料添加通路225に添加する。改質用の燃料は、エンジン10に供給されるものと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
燃料改質器35は、改質触媒を有しており、流入した燃料を改質し、水素および一酸化炭素を主成分とする改質ガスを生成する。改質ガスを含む還流ガスは、排気還流通路23を経由し、エンジン10に供給される。
【0027】
EGRバルブ41は、排気還流通路23に設けられる。EGRバルブ41の開度を調整することで、排気還流通路23を流れる還流ガスの流量を調整可能である。EGRバルブ41の下流側には、還流ガスの流量を検出する流量センサ78が設けられる。EGRクーラ45は、排気還流通路23において、EGRバルブ41の上流側に設けられ、還流ガスを冷却する。図中適宜、還流ガスを「EGR」と記載する。
【0028】
第1実施形態では、エンジンの燃料改質システム1に凝縮水除去装置が設けられている。排気還流通路23については、燃料改質器35の触媒の位置する触媒下面水準100よりも重力下方向に排気還流通路231が延び、排気還流通路231の延長上で触媒下面水準100よりも重力下方向の位置に冷却装置に相当するEGRクーラ45の入口451、出口452が設けられている。EGRクーラ45の入口451に繋がる排気還流通路232、出口452に繋がる排気還流通路233が触媒下面水準100より重力下方向の低位置に位置する。これにより、燃料改質器35の触媒の触媒下面水準100よりも重力下方向の低位置に凝縮水保持手段に相当する排気還流通路231、232、233が配設される。
【0029】
したがって、エンジン始動時に発生する凝縮水が燃料改質器35の触媒に接触しないように凝縮水を排気還流通路231、232、233に保持するから、凝縮水が吸気通路のコンプレッサの羽根を破損したりするのを防止し、凝縮水の改質触媒との接触を回避して触媒の破損を防止し、毒性ガス、可燃性ガスを排気中や大気中への放出を抑制することができる。
(第2実施形態)
【0030】
第2実施形態では、
図2に示すように、凝縮水除去装置は、凝縮水が燃料改質器35の触媒に接触しないように、冷却装置に相当するEGRクーラ45と熱交換器付き燃料改質器35との間の排気還流通路について、燃料改質器35の触媒の触媒下面水準100より重力下方向の破線90で囲む凝縮水保持手段に相当する排気還流通路234の容積Vは、燃料改質器35の触媒最下面から重力下方向の排気還流通路の配管容積であり、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ配管構造になっている。
第2実施形態の他の構成については、
図1に示す構成と同様である。
【0031】
図3は、EGRクーラで毎秒発生する凝縮水量とEGRクーラの最も温度が高い箇所の温度Tとについての時間的推移を示している。EGRクーラで毎秒発生する凝縮水dm/dcは、EGR中の水蒸気量S(g/sec)から飽和蒸気量D(g/sec)を差し引いた値で表される。
図3に示すグラフによると、エンジン始動後に運転を継続すると、エンジン始動後にEGRクーラの温度Tは次第に上昇する。ある時間経過した時点において、凝縮水の溜り量の増加は停止することが判る。
【0032】
本実施形態によると、排気還流通路234の容積Vは、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積Vをもつ。
図3は一例を示し、V>M(=積算凝縮水量M)となっている。
燃料改質器35の触媒の最下面から重力下方向に位置する排気還流通路内の配管容積Vは、EGRクーラで発生する凝縮水容積Wよりも大きい容積の配管構造になっている。
(第3実施形態)
【0033】
第3実施形態では、
図4に示すように、熱交換器無しの燃料改質器36が横置きになっている。EGRクーラ45と熱交換器無しの燃料改質器36との間の排気還流通路234について、燃料改質器36の触媒下面水準100より重力上方向にEGRクーラ45と横置きの燃料改質器36とが位置している。触媒下面水準100より重力下方向の破線90で囲む凝縮水保持手段に相当する排気還流通路234の容積Vは、触媒最下面から重力下方向の排気還流通路234の配管容積であり、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ。
第3実施形態の他の構成については、
図1に示す構成と同様である。
(第4実施形態)
【0034】
第4実施形態では、
図5に示すように、EGRクーラ45と熱交換器付きの燃料改質器35とを接続する排気還流通路234について、燃料改質器35の触媒下面水準100より重力上方向にEGRクーラ45と燃料改質器35とが位置している。
EGRクーラ45と熱交換器付きの燃料改質器35とを接続する排気還流通路234について、触媒下面水準100より重力下方向の排気還流通路234に凝縮水4を保持する拡大容積部2341を形成している。触媒下面水準100より重力下方向の破線90で囲む排気還流通路234の容積Vは、触媒最下面から重力下方向の排気還流通路の配管容積であり、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ。
(第5実施形態)
【0035】
第5実施形態では、
図6に示すように、EGRクーラ45と熱交換器付きの燃料改質器35とを排気還流通路235が接続する。EGRクーラ45と凝縮水保持手段に相当する排気還流通路235は、燃料改質器36の触媒下面水準100よりも重力下方向に位置している。燃料改質器35の触媒下面水準100よりも重力下方向の破線90で囲む排気還流通路235の配管容積Vは、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ。
(第6実施形態)
【0036】
第6実施形態では、
図7に示すように、EGRクーラ45と熱交換器無しの燃料改質器36とを凝縮水保持手段に相当する排気還流通路235が接続する。横置きになっている熱交換器無しの燃料改質器36の触媒下面水準100よりも重力下方向にEGRクーラ45と排気還流通路235とが位置している。燃料改質器36の触媒下面水準100よりも重力下方向の破線90で囲む排気還流通路235の配管容積Vは、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ。
(第7実施形態)
【0037】
第7実施形態では、
図8に示すように、排気通路22に排気温度センサ46が設けられ、排気温度センサ46の排気排出側に排気浄化触媒37が設けられる。
排気のEGRクーラ45と熱交換器付きの燃料改質器35とを凝縮水保持手段に相当する排気還流通路236が接続する。排気還流通路236は、燃料改質器35の触媒下面水準100よりも重力下方向に位置している。
【0038】
排気還流通路236の途中でEGRクーラ45の重力下方向に形成される凝縮水保持手段に相当する凝縮水溜室33が形成される。
排気還流通路236の触媒下面水準100よりも重力下方向の配管容積Vは、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ。
【0039】
排気通路22の排気温度センサ46と排気浄化触媒37との間には、一端381が凝縮水溜室33と接続される凝縮水排出配管38の他端382が接続している。凝縮水排出配管38の他端382の排気排出側の排気管22の内部に凝縮水を保持する凝縮水保持手段に相当する凝縮水保持堰39が形成されている。凝縮水保持堰39は、排出された凝縮水が排気浄化触媒37内に入り込むことを防ぐ遮断構造体になっている。これにより排気浄化触媒の破損を防止する。
【0040】
凝縮水排出配管38には、凝縮水を排出する凝縮水排出バルブ40が設けられている。
ECU50には、排気温度センサ46が検出する排気温度信号に相当する触媒温度信号及び凝縮水溜室33の凝縮水の有無を検知する水検知センサ42の信号を入力する。ECU50は、排気温度信号(触媒温度信号)及び水検知信号の有無を判別し、判別信号に応じて凝縮水排出バルブ40の開閉を制御する。
【0041】
図9に凝縮水排出バルブ40の制御例を示す。
エンジンの停止状態にあるか否かを判別し(ステップS101)、エンジン停止状態を検出したとき排気温度センサ46の検出信号から燃料改質器35の触媒温度を算出する(ステップS102)。触媒温度が触媒活性温度よりも高いと判別したとき(ステップS103)、凝縮水排出バルブ40を開弁し(ステップS104)、凝縮水の有無を検知し(ステップS105)、凝縮水が存在すると判別したとき(ステップS106)、触媒温度が触媒活性温度よりも高いのであれば凝縮水排出バルブ40を開弁する(ステップS104)。
凝縮水が存在しなければ凝縮水排出バルブ40を閉弁する(ステップS107)。
【0042】
エンジン停止後に排気還流装置内で発生した凝縮水を排気浄化触媒37前の排気管22に排出する。
排気浄化触媒37の前に排出することにより、凝縮水(燃料、酸性物質含む)の蒸気および同時に排出されるEGRガス(H2、CO)は停止後の活性した状態の排気浄化触媒37により無害化されて大気へ放出される。
(第8実施形態)
【0043】
第8実施形態では、
図10に示すように、排気通路22に排気温度センサ46が設けられ、排気温度センサ46の排気排出側に排気浄化触媒37が設けられる。
排気のEGRクーラ45と熱交換器付きの燃料改質器35とを凝縮水保持手段に相当する排気還流通路236が接続する。排気還流通路236は、燃料改質器35の触媒下面水準100よりも重力下方向に位置している。
【0044】
排気還流通路236の途中でEGRクーラ45の重力下方向には、凝縮水保持手段に相当する凝縮水溜室33が形成される。
排気還流通路236の触媒下面水準100よりも重力下方向の配管容積Vは、EGRクーラ45で発生する凝縮水の容積Wよりも大きな容積をもつ。
排気通路22の排気温度センサ46と排気浄化触媒37との間には、一端381が凝縮水溜室33と接続される凝縮水排出配管38の他端382が接続している。
【0045】
凝縮水排出配管38の他端382の排気排出側の排気管22の内部に凝縮水を保持する凝縮水保持手段に相当する凝縮水保持窪み43が形成されている。凝縮水排出配管38には、凝縮水を排出する凝縮水排出バルブ40が設けられている。
(第9実施形態)
【0046】
第9実施形態では、
図11に示すように、基本形態は、
図8に示す第7実施形態と同様である。
凝縮水排出配管38の他端383は、排気通路22に合流し、合流部は凝縮水排出配管38を流れるガスは凝縮水保持手段に相当する凝縮水保持堰39の反対方向に向けて排気通路22に開口している。
(第10実施形態)
【0047】
第10実施形態では、
図12に示すように、排気還流通路23については、燃料改質器35の触媒よりも重力下方向に排気還流通路231が延び、排気還流通路231の延長上で触媒下面水準100よりも重力下方向の位置に凝縮水を霧化する霧化手段に相当する超音波振動子47が設けられている。
超音波振動子47の稼働時、凝縮水に振動を付与し、排気還流通路に溜まる凝縮水4を霧化する。
【0048】
これにより、凝縮水を保持する配管部に相当する排気還流通路23から凝縮水4を霧化することで、EGRクーラ45で再凝縮すること無く、かつ、過給機等の吸気部品にストレスをかけること無く排気と共に吸気ポートに凝縮水を排出することが可能となる。
その他の構成については、
図1及び
図2に示す第1実施形態及び第2実施形態に相当する構成と同様である。
(第11実施形態)
【0049】
第11実施形態では、
図13に示すように、EGRクーラ45と熱交換器付きの燃料改質器35とを接続する排気還流通路234について、触媒下面水準100より重力下方向の排気還流通路234に凝縮水を保持する拡大容積部2341を形成している。
【0050】
拡大容積部2341には、凝縮水の有無を検知する水センサ51が設けられている。水センサ51の信号をECU50に取り込み、水を検知したときECU50の指令により超音波振動子47を稼働し、拡大容積部2341に振動を与え、凝縮水を霧化することで、EGRクーラ45で再凝縮すること無く、かつ、過給機等の吸気部品にストレスをかけること無く排気と共に吸気ポートに凝縮水を排出することが可能となる。
第11実施形態のその他の構成は、
図5に示す第4実施形態と同様である。
【0051】
図14に霧化手段に相当する超音波振動子の制御例を示す。
エンジンの停止状態にあるか否かを判別し(ステップS201)、エンジン停止状態を検出したとき排気温度センサ46の検出信号から燃料改質器35の触媒温度を算出し(ステップS202)、触媒温度が触媒活性温度よりも高いと判別したとき(ステップS203)、凝縮水の有無を判別する(ステップS204)。水センサ51の信号を受けたECU50が凝縮水があると判別したとき(ステップS205)、霧化手段に相当する超音波振動子47を作動する(ステップS206)。凝縮水がないと判別されたときを超音波振動子47の作動を停止する(ステップS207)。
(第12実施形態)
【0052】
第12実施形態では、
図15及び
図16に示すように、凝縮水の接触箇所に耐食手段を施した実施形態例である。
図16は、排気還流通路234の配管24の部分の模式図を示す。
図17は、燃料改質器35の触媒を通過する前後の排気ガス中に含まれるNOxとSOxの含有量をグラフ化した一例を示している。
【0053】
凝縮水を溜める排気還流通路234を構成する配管24の基材内壁に耐食手段に相当する表面処理層53を形成している。
表面処理層53は、燃料改質を想定した場合にNOx及びカルボン酸が触媒により分解される可能性が高いため、触媒にて浄化されない硫酸分(SOx)及び塩酸への耐食性が強いクロム又はニッケルによるめっき層が好適である。
本実施形態の他の構成は、
図2に示す第2実施形態の構成と同様である。さらにその他の実施形態の他の基本的構成は、第1実施形態と同様である。
【0054】
本発明では、エンジンの始動時等に冷却装置等で発生する凝縮水が燃料改質器の触媒に接触しないよう、また排気浄化触媒の触媒に接触しないよう、凝縮水を保持する配管構造を備える。エンジンの停止後に、排気還流装置内において発生する凝縮水を、排気管への通路を通し排気浄化触媒前の排気管に排出することができる。触媒前に排出することにより、燃料または酸性物質を含む凝縮水の蒸気および同時に発生されるH2、CO2のEGRガスは、停止後の活性状態の排気浄化触媒により無害化され大気へ放出される。
また、排出される凝縮水が排気浄化触媒内に入ることを抑制する遮蔽構造を設けることにより、排気浄化触媒の破損をも抑制することができる。
【0055】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、課題を解決する手段に記載の前記凝縮水保持手段は、燃料改質器と冷却装置の間の配管(23、231、232、233)であって、燃料改質器の触媒下面水準(100)より重力下方向に位置することができる。
触媒下面水準100よりも重力方向下側に凝縮水が溜められるから、燃料改質器の触媒への凝縮水の接触を抑制することができる。触媒出口に接続する排気還流通路の部分が燃料改質器の触媒下面より低い位置に設置され、凝縮水が触媒と接触し難い。
【0056】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、凝縮水保持手段は、前記配管(23、231、232、233)の配管内空間の容積Vが前記冷却装置で発生する凝縮水容積Wより大きく設定することができる。例えば配管内空間を形成する配管の形状をこの設定になるように製作する。これにより、冷却装置で発生する凝縮水容積Wが最大となっても凝縮水を保持し、触媒への接触を回避または抑制することができる。
【0057】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、記冷却装置で発生する凝縮水容積Wの算出については、前記冷却装置内の最大温度Tmaxを用いて飽和蒸気圧ew、飽和蒸気量D、及び積算凝縮水量Mを用いて算出することができる。
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、前記冷却装置は、前記燃料改質器の前記触媒下面水準より重力方向の下側に位置する構成にしてもよい。
【0058】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、エンジンの停止を検知する手段(50)と、前記凝縮水保持手段の凝縮水を排気管(22)に排出する凝縮水排出配管(38)と、排出された凝縮水を保持する構造(39)をもつ前記排気管と、前記凝縮水排出配管の管内通路を開閉する制御弁(40)と、前記凝縮水保持手段の水の有無を検知する水センサ(42)と、前記構造の排気の出口側に設けられる排気浄化触媒(37)と、前記排気浄化触媒の温度を検知する触媒温度検知手段(36)と、前記水センサの検知信号及び前記排気浄化触媒の触媒温度信号に基づいて前記制御弁の開閉を制御する制御手段(50)とを備えるようにしてもよい。
【0059】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、凝縮水保持手段に溜める凝縮水を霧化する霧化手段(47)を設ける構成にしてもよい。この場合、凝縮水を溜める箇所を備え、その箇所に霧化する装置が設置され、凝縮水を効率的に排出することができる。
この場合、凝縮水を保持する配管等に相当する凝縮水保持手段から凝縮水を霧化することにより、EGRクーラなどの排気の冷却装置において、再凝縮することなく、過給機等の吸気部品にストレスをかけることなく排気とともに吸気ポートに凝縮水を排出することができる。
【0060】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、凝縮水保持手段(2341)の水の有無を検知する水センサ(51)と、前記水センサの検知信号に基づいて水の有無を判別する判別手段(50)と、判別手段の結果水の有りを判別したとき前記霧化手段を運転する制御手段(50)とを備える構成にしてもよい。
【0061】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、凝縮水保持手段の凝縮水及び排気還流通路内の凝縮水と接触する配管内壁は、耐腐食手段(53)を施してもよい。
【0062】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、耐腐食手段は、遷移金属のクロム、ニッケル、銅、亜鉛、銀、プラチナ、金、ロジウムから選ばれる一種以上を、金属表面に付着させる手段を採用してもよい。
燃料改質器の場合、NOxおよびカルボン酸が触媒により分解される可能性が高いから、耐食性手段として、触媒に浄化されないSOxおよび塩酸に耐食性が強いクロム、ニッケル等の表面処理加工が好適である。
【0063】
本発明に係るエンジンの燃料改質装置では、燃料改質器は、燃料を分解する改質触媒と、触媒を担持する基材とを備え、前記基材にSi系セラミックが用いてもよい。
【0064】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 燃料改質システム、
10 エンジン、
21 吸気通路、
22 排気通路(排気管)、
23、231、232、233、234、235、236 排気還流通路(凝縮水保持手段)、
24 配管、
25 過給器、
28 インタークーラ、
31 燃料添加装置、
33 凝縮水溜室(凝縮水保持手段)、
35 燃料改質器、
36 燃料改質器、
37 排気浄化触媒、
38 凝縮水排出配管、
39 凝縮水保持堰(構造、凝縮水保持手段)、
40 凝縮水排出バルブ(制御弁)、
41 EGRバルブ、
42、51 水センサ(凝縮水の有無を検知する手段)、
43 凝縮水保持窪み、
45 EGRクーラ(冷却装置)、
46 排気温度センサ(触媒温度検知手段)、
47 超音波振動子(霧化手段)、
50 ECU(制御手段)、
53 表面処理層(耐腐食手段)、
100 触媒下面水準、
2341 容積拡大部(凝縮水保持手段)。