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特開2023-117402結合負荷とより少ない歪みゲージを用いたトルクセンサ
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  • 特開-結合負荷とより少ない歪みゲージを用いたトルクセンサ 図1
  • 特開-結合負荷とより少ない歪みゲージを用いたトルクセンサ 図2A
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  • 特開-結合負荷とより少ない歪みゲージを用いたトルクセンサ 図8C
  • 特開-結合負荷とより少ない歪みゲージを用いたトルクセンサ 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117402
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】結合負荷とより少ない歪みゲージを用いたトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023018486
(22)【出願日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】17/668,625
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508274529
【氏名又は名称】エーティーアイ インダストリアル オートメーション, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ATI INDUSTRIAL AUTOMATION, INC.
【住所又は居所原語表記】Pinnacle Park, 1031 Goodworth Drive, Apex, North Carolina 27539, USA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サーマン, トラバース
(72)【発明者】
【氏名】グルジエック, アンドリュー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸方向トルクを検知するために最適化されたセンサであって、軸方向トルクを分解するために必要とされる歪みゲージの最小数を低減するために、結合された軸外負荷を利用するセンサを提供する。
【解決手段】トルクセンサは、複数のスポークおよび計装ビームによって接続された中心領域および周辺部を備えるトランスデューサプレートを備える。前記トランスデューサプレートは、軸方向トルクの下では機械的コンプライアンスを示すが、軸外負荷の下では剛性を示す。計装ビームに取り付けられた歪みゲージは、軸方向トルクによって生じる変形を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物体と第2の物体との間の軸方向トルクを測定するように構成されたトルクセンサであって、
垂直な中心軸zを有する中心領域および周辺部を有する、略円形の、略平面のトランスデューサプレートと、
前記中心領域に近接し、前記第1の物体に取り付けられるように構成された1つ以上の第1の取付孔と、
前記周辺部に近接し、前記第2の物体に取り付けられるように構成された1つ以上の第2の取付孔と、
前記中心領域と周辺部との間の前記トランスデューサプレートを貫通する複数の空隙であって、隣接する空隙が、前記中心領域と周辺部とを接続するスポークを画定する、複数の空隙と、
前記中心領域と周辺部との間の前記トランスデューサプレートを貫通する1つ以上の放射状スロットであって、各々が少なくとも1つの空隙に隣接し、放射状スロットと空隙との間の前記トランスデューサプレートが、前記中心領域と周辺部とを接続する計装ビームを画定する、1つ以上の放射状スロットと、
計装ビームに取り付けられた歪みゲージと、
前記歪みゲージに接続され、前記歪みゲージの歪み依存抵抗値に依存する電圧を出力するように構成された歪みゲージ回路と、
を備える、トルクセンサ。
【請求項2】
少なくとも1つの空隙は、貫通孔である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
少なくとも1つの空隙は、アークスロットである、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
少なくとも1つの放射状スロットの2つの側面は、前記放射方向に平行である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
少なくとも1つの放射状スロットの2つの側面は、前記放射方向に非平行である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
少なくとも1つの放射状スロットは、貫通孔である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記トランスデューサプレートは、他の力Fx、Fy、Fz、またはトルクTx、Tyよりも、前記軸Tzの周りのトルクの下で、より大きな機械的コンプライアンスを示す、請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
前記センサは、少なくとも4つの歪みゲージを備え、各々が別個の計装ビームに取り付けられる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項9】
前記歪みゲージは全て、それぞれの計装ビームの同じ側面に取り付けられる、請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
各歪みゲージは、放射状スロットの内側であるそれぞれの計装ビームの側面に取り付けられる、請求項8に記載のセンサ。
【請求項11】
各歪みゲージは、放射状スロットの前記内側の中立軸に沿ってそれぞれの計装ビームに取り付けられる、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
各歪みゲージは、放射状スロットの前記内側の中立軸からオフセットされたそれぞれの計装ビームに取り付けられる、請求項10に記載のセンサ。
【請求項13】
第1の2つの力またはトルクは、前記第1の2つの力またはトルクのうちの一方の歪みゲージ応答が、前記第1の2つの力またはトルクのうちの他方の下での前記歪みゲージ応答の倍数であるように、結合される、請求項8に記載のセンサ。
【請求項14】
異なる、第2の2つの力またはトルクは、前記第2の2つの力またはトルクのうちの一方の下での前記歪みゲージ応答が前記第2の2つの力またはトルクのうちの他方の下での前記歪みゲージ応答の倍数であるように、結合される、請求項13に記載のセンサ。
【請求項15】
前記4つの歪みゲージ応答及び個々の及び結合された負荷は、4×4の線形システムを含み、前記軸Tzの周りのトルクは、前記4つの歪みゲージ応答及びデカップリング行列から直接決定される、請求項14に記載のセンサ。
【請求項16】
前記軸Fzと平行な力も、前記4つの歪みゲージ応答および前記デカップリング行列から直接決定される、請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
前記トルクセンサは、ロボット関節トルクセンサであり、前記第1の物体は、ロボットアームの2つのセグメント間の関節のアクチュエータであり、前記第2の物体は、前記セグメントのうちの1つに堅固に取り付けられる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項18】
トルクセンサであって、
軸を有し、第1の物体と第2の物体との間に取り付けられるように構成されたトランスデューサプレートと、
前記トランスデューサプレートに取り付けられた4つの歪みゲージであって、各々が歪みゲージ回路に接続される、4つの歪みゲージと、
前記トランスデューサプレート構成、歪みゲージ配置、および歪みゲージ回路は、2つの異なる対の力およびトルクに対する歪みゲージ応答が、それぞれ線形に依存し、それによって、各対の力の下での前記歪みゲージ応答は、当該対の前記トルクの下での歪みゲージ応答と倍数で異なり、前記4つの歪みゲージ応答は4×4の線形システムを備え、それから、前記軸の周りの少なくともトルクが、前記歪みゲージ応答およびデカップリング行列から直接決定されるようになっている、トルクセンサ。
【請求項19】
歪みゲージ応答は、無負荷状態と負荷状態との間の対応する歪みゲージ回路の出力電圧の差である、請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
前記トランスデューサプレートは、軸方向トルクの下ではコンプライアンスを示すが、軸外負荷の下では剛性を示す、請求項18に記載のセンサ。
【請求項21】
各歪みゲージは、中心領域を前記トランスデューサプレートの周辺部に接続する非対称の計装ビームの同じ側面に取り付けられる、請求項18に記載のセンサ。
【請求項22】
歪みゲージが取り付けられる各計装ビームの表面は、一方の側面に直線状エッジを備え、反対の側面に凹状の円弧状エッジを備える、請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
歪みゲージは、加えられた軸方向トルクからの歪みを受けるが、加えられた軸外負荷からの歪みをほとんど又は全く受けない位置で計装ビームに取り付けられる、請求項21に記載のセンサ。
【請求項24】
前記線形に依存する対の力およびトルクは、FxとTy、およびFyとTxである、請求項18に記載のセンサ。
【請求項25】
トルクセンサを製造する方法であって、
垂直な中心軸zを有する中心領域および周辺部を有する、略円形の、略平面のトランスデューサプレートを提供することと、
前記中心領域に近接して1つ以上の第1の取付孔を形成することであって、前記第1の取付孔は、第1の物体に取り付けられるように構成される、ことと、
前記周辺部に近接して1つ以上の第2の取付孔を形成することであって、前記第2の取付孔は、第2の物体に取り付けられるように構成される、ことと、
前記中心領域と周辺部との間の前記トランスデューサプレートを貫通する複数の空隙を形成することであって、隣接する空隙は、前記中心領域と周辺部とを接続するスポークを画定する、ことと、
前記中心領域と周辺部との間の前記トランスデューサプレートを貫通する1つ以上の放射状スロットを形成することであって、各々が少なくとも1つの空隙に隣接し、放射状スロットと空隙との間の前記トランスデューサプレートが、前記中心領域と周辺部を接続する計装ビームを画定する、ことと、
歪みゲージを計装ビームに取り付けることと、
前記歪みゲージを、前記歪みゲージの歪み依存抵抗値に依存する電圧を出力する歪みゲージ回路に接続することと、
を含む、方法。
【請求項26】
前記トランスデューサプレートを貫通する第1の複数の空隙を形成することは、第1の複数の貫通孔を穿孔することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
歪みゲージを計装ビームに取り付けることは、4つの歪みゲージを、各々、異なる計装ビームの同じ表面に取り付けることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記空隙および放射状スロットの前記位置、前記歪みゲージの配置、および前記歪みゲージ回路の構成は、2つの異なる対の力およびトルクに対する歪みゲージ応答が線形に依存し、それによって、各対の前記力の下での前記歪みゲージ応答は、当該対の前記トルクの下での歪みゲージ応答と倍数で異なり、前記4つの歪みゲージ応答は、4×4の線形システムを備え、それから、前記軸の周りの少なくともトルクが、前記歪みゲージ応答およびデカップリング行列から直接決定されるようになっている、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、力及びトルクセンサに関し、特に、軸方向トルクを検知するために最適化されたセンサであって、軸方向トルクを分解するために必要とされる歪みゲージの最小数を低減するために、結合された軸外負荷を利用するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、製品の製造、試験、組み立て、および梱包、補助的手術および遠隔手術、宇宙探査、危険な環境での動作、ならびに多くの他の用途に不可欠な存在である。多くのロボットおよびロボット用途は、材料除去(研削、研磨など)、部品組立、遠隔掘削、または環境の他の操作など、加えられるまたは受ける力の定量化を必要とする。
【0003】
産業用ロボットは、典型的には様々な軸および平面で移動および回転し、多数の自由度を提供する電気機械関節によって接続された多数のセグメントを備える汎用アクチュエータ、すなわち「アーム」を備える。6自由度(6-DOF)ロボットアームは、溶接、材料取扱い、材料除去、塗装などの作業を含む工業製造において一般に使用される。6-DOF設計は、x、y、およびz平面における動き、ならびに多くのタスクのための柔軟性、強度、および到達範囲を提供する。これは、ワークピースと相互作用するロボットツール、すなわち「エンドエフェクタ」のロール、ピッチ、およびヨーの移動を実行することができる。
【0004】
多くの用途では、エンドエフェクタとワークピースとの間の力を監視することが必要または望ましい。例えば、「力制御」タスクでは、エンドエフェクタが所定の力(または所定の範囲内の力)を加えるように制御され、接触力および/またはトルクが測定され、ロボット制御システムにフィードバックされることを必要とする。6-DOFロボットの端部における力およびトルクを測定するためには、ロボットとエンドエフェクタとの間に6軸力/トルクセンサを配置すること、および、ロボットの多数の関節の各々におけるトルクを測定し、端部における結果として生じる力およびトルクを計算することの2つの従来のアプローチがある。
【0005】
本出願の譲受人に譲渡され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,422,707号明細書は、小型の6軸力/トルクセンサを記載している。センサは、複数の変形可能なビーム(梁)によって環状リング(ロボットに接続される)に接続されるハブ(ツールに接続される)を備える従来の設計に基づいており、複数の変形可能なビームは、負荷下でビームの変形を増加させるための屈曲部を含む。変形可能なビームに取り付けられた歪みゲージは加えられた負荷下で変形するときにビームの表面における張力および圧縮を測定し、歪みゲージ回路の出力は、較正手順中に展開されたデカップリング行列を介して6つの力(Fx、Fy、Fz)および6つのトルク(Tx、Ty、Tz)にデコードされてマッピングされる。一般に、最低6つの歪みゲージが必要であり、多くの設計ではより多くの歪みゲージを利用する(例えば、それらを、各変形可能なビームの対向する側面に、または4つの側面すべてに取り付ける)。また、'707特許に記載されているように、1つ以上の非応力歪みゲージを使用して、温度補償のためのベースラインを提供し、熱ドリフトによってもたらされる誤差を低減することもできる。多数の歪みゲージおよび他の計装電子機器のために、従来の6軸力/トルクセンサは高価である。
【0006】
ロボット関節トルクは、モータ電流から推定することができる。しかしながら、これらの結果は、ノイズが多い傾向がある。あるいは、いくつかの関節の各々に関節トルクセンサを設置することができる。関節トルクセンサは、より高い精度およびより高い信号対雑音比を有する傾向がある。従来の関節トルクセンサは、1つのトルク(Tz)のみを測定しなければならないという要件に基づいて、センサの幾何学的形状および/または歪みゲージの配置を調整して、上述の6軸力/トルクセンサ設計に従うことができる。
【0007】
既知の関節トルクセンサは、多数の欠陥を有する。それらは、通常、軸外負荷に敏感である。すなわち、所望のTz以外の力およびトルクはビームの変形を引き起こし、歪みゲージ出力を生成し、これは、軸方向トルクTz測定における誤差として現れ得る。既知の関節トルクセンサ設計はまた、トルクリップルに敏感であり、これは、高調波駆動としても知られる、歪み波ギアボックスに近いトルクを測定するときにしばしば見られる。トルクリップルは、トルク測定における周期的な変動であり、補償することが困難である。軸方向トルクTzのみを測定するように6軸力/トルクセンサ設計を修正した後でさえ、正確に機械加工された薄い特徴(例えば、屈曲部)および多数の歪みゲージを有するセンサは、製造するのに依然として高価である。それらのうちのいくつかは、6自由度ロボットアームを計装するために必要とされるので、このアプローチは多くの用途において、依然としてコスト高である。
【0008】
本明細書の背景技術は、本発明の実施形態を技術的および動作的な文脈に置き、当業者がそれらの範囲および有用性を理解するのを助けるために提供される。背景技術に記載されているアプローチは、追求することができるが、必ずしも以前に着想または追求されているアプローチではない。そのように明示的に特定されない限り、本明細書における記述は、単に背景技術に含まれることによって、従来技術であると認められるものではない。
【発明の概要】
【0009】
以下は、当業者に基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された発明の概要を提示する。この概要は、本開示の広範な概略ではなく、本発明の実施形態の主要/重要な要素を特定すること、または本発明の範囲を画定することを意図するものではない。この概要の唯一の目的は、本明細書で開示されるいくつかの概念を、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、簡略化された形で提示することである。
【0010】
本明細書に記載され、特許請求される1つ以上の実施形態によれば、トルクセンサは、複数のスポークおよび計装ビームによって接続された、中心領域および周辺部を備えるトランスデューサプレートを備える。前記トランスデューサプレートの前記スポークおよび計装ビームは、軸方向トルクが加えられたときにのみ、著しい機械的コンプライアンスを可能にするように設計される。一実施形態は、軸方向トルクによって引き起こされる変形を検出するために、計装ビーム上の単一表面歪みゲージ配置を採用するが、他の実施形態は、サイドビーム歪みゲージ配置を採用する。前記スポークおよび計装ビームは、介在する屈曲部を伴わずに、中心領域および周辺部を直接接続する。前記計装ビームは、非対称であってもよく、中立軸上に前記歪みゲージを配置することなく、軸方向トルクに対して高い感度および軸外負荷に対して低い感度の領域にゲージを配置することを可能にする。いくつかの軸外負荷からの前記歪みゲージ応答は、他の軸外負荷の歪みゲージ応答に結合されるか、または線形に依存するように設計される。これは、全ての負荷を少なくとも部分的に分解する必要がある歪みゲージの個数を減らす。前記スポークは、貫通孔および/またはアークスロットなどの単純な形状で隣接するトランスデューサプレート材料を除去することによって、費用効果的に形成される。前記計装ビームは、放射状スロット内のトランスデューサプレート材料を除去することによって同様に形成される。孔またはアークスロットの凸状の円弧状エッジに隣接する放射状スロットの直線状エッジは、非対称ビーム形状をもたらす。前記歪みゲージは、ホイートストンクォーター、ハーフ、またはフルブリッジトポロジなどの様々な構成で接続することができる。
【0011】
一実施形態は、第1の物体と第2の物体との間の軸方向トルクを測定するように構成されたトルクセンサに関する。前記センサは、垂直中心軸zを有する中心領域と、周辺部とを有する、略円形の、略平面のトランスデューサプレートを含む。1つ以上の第1の取付孔は、前記中心領域に近接し、前記第1の物体に取り付けられるように構成される。1つ以上の第2の取付孔は、前記周辺部に近接し、前記第2の物体に取り付けられるように構成される。複数の空隙は、前記中心領域と周辺部との間に前記トランスデューサプレートを通って形成され、隣接する空隙は、前記中心領域と周辺部とを接続するスポークを画定する。1つ以上の放射状スロットは前記中心領域と周辺部との間に前記トランスデューサプレートを通って形成され、各々が、少なくとも1つの空隙に隣接する。放射状スロットと空隙との間の前記トランスデューサプレートは、前記中心領域と周辺部とを接続する計装ビームを画定する。歪みゲージは、計装ビームに取り付けられる。歪みゲージ回路は、前記歪みゲージに接続され、前記歪みゲージの歪み依存抵抗値に依存する電圧を出力するように構成される。
【0012】
別の実施形態は、トルクセンサに関する。前記センサは、軸を有し、第1の物体と第2の物体との間に取り付けられるように構成されたトランスデューサプレートと、前記トランスデューサプレートに取り付けられた4つの歪みゲージとを備え、各歪みゲージは、歪みゲージ回路に接続される。前記トランスデューサプレート構成、歪みゲージ配置、および歪みゲージ回路は、2つの異なる対の力およびトルクに対する歪みゲージ応答がそれぞれ線形依存であり、それによって、各対の力の下での前記歪みゲージ応答は、当該対のトルクの下での歪みゲージ応答とは倍数で異なり、前記4つの歪みゲージ回路出力は4×4の線形システムを備え、それから、前記軸の周りの少なくともトルクが、前記歪みゲージ応答およびデカップリング行列から直接決定されるようになっている。
【0013】
さらに別の実施形態は、トルクセンサを製造する方法に関する。垂直な中心軸zを有する中心領域と、周辺部とを有する、略円形の略平面のトランスデューサプレートが提供される。1つ以上の第1の取付孔が、前記中心領域に近接して形成され、前記第1の取付孔は、第1の物体に取り付けられるように構成される。1つ以上の第2の取付孔が、前記周辺部に近接して形成され、前記第2の取付孔は、第2の物体に取り付けられるように構成される。第1の複数の空隙が、前記中心領域と周辺部との間の前記トランスデューサプレートを貫通して形成され、隣接する空隙は、前記中心領域と周辺部とを接続するスポークを画定する。1つ以上の放射状スロットが、前記中心領域と周辺部との間の前記トランスデューサプレートを貫通して形成され、各放射状スロットは、少なくとも1つの空隙に隣接し、放射状スロットと空隙との間の前記トランスデューサプレートは、前記中心領域と周辺部とを接続する計装ビームを画定する。歪みゲージは、計装ビームに取り付けられる。前記歪みゲージは、前記歪みゲージの歪み依存抵抗値に依存する電圧を出力する歪みゲージ回路に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、本発明の実施形態を示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全になるように提供され、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるのであろう。同じ参照符号は全体を通して同じ要素を指す。
【0015】
図1図1は、一実施形態に係るトルクセンサの平面図である。
【0016】
図2A】、
図2B】、
図2C】、
図2D図2A~2Dは、様々な実施形態によるトルクセンサの簡略化された平面図である。
【0017】
図3図3は、計装ビームの拡大図であり、軸方向トルクTzの下での張力歪みを示す。
【0018】
図4A図4Aは、2つの計装ビームの軸方向トルクTzの図及び拡大図であり、張力歪み及び圧縮歪みを示す。
【0019】
図4B図4Bは、2つの計装ビームの曲げトルクTyの図及び拡大図であり、張力歪み及び圧縮歪みを示す。
【0020】
図5図5は、片面歪みゲージの配置を示すトルクセンサの平面図である。
【0021】
図6図6は、放射状スロット内面上に配置された中立軸歪みゲージを示すトルクセンサの部分斜視図である。
【0022】
図7図7は、放射状スロット内面上に配置された非中立軸歪みゲージを示すトルクセンサの部分斜視図である。
【0023】
図8A図8Aは、4つのホイートストンクォーターブリッジ歪みゲージ回路の電気的概略図である。
【0024】
図8B図8Bは、2つのホイートストンハーフブリッジ歪みゲージ回路の電気的概略図である。
【0025】
図8C図8Cは、ホイートストンフルブリッジ歪みゲージ回路の電気的概略図である。
【0026】
図9図9は、トルクセンサを製造する方法におけるステップのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は簡単かつ例示的な目的のために、主にその例示的な実施形態を参照することによって説明される。これから述べる説明において、本発明を完全に理解するために、数多くの具体的な詳細が説明される。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細に限定されることなく実施され得ることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書では、本発明を不必要に不明瞭にしないように、周知の方法および構造については詳細に説明しない。
【0028】
本発明の実施形態は、ロボット関節トルクセンサとしての展開に特に適しているが、当業者であれば、その用途が関節トルクセンサの設計および計装とは大きく独立していることを容易に認識するのであろう。したがって、本明細書で説明する本発明の実施形態は、2つの物体間の軸方向トルクTzを測定するように構成された「トルクセンサ」を指す。ロボット関節トルクセンサ用途では、トルクセンサに接続される物体は、6DOFロボットアームの第1のセグメント(またはそれに堅固に取り付けられた任意の物体)と、ロボットアームの第2のセグメントを第1のセグメントに対して回転移動させるモータなどのアクチュエータとであってもよい。
【0029】
力およびトルクセンサにおける歪みゲージの使用は周知である。歪みゲージ、特にシリコン歪みゲージは、膨張または圧縮を受ける表面に取り付けられたときにその長さの変化に起因する歪み依存抵抗値を示す。歪みゲージ回路、例えばホイートストンブリッジ回路のいくつかの構成は、歪みゲージの抵抗を定量化するために使用できる電圧を出力する。本明細書で使用するとき、「歪みゲージ応答」は、無負荷状態と、機械的負荷が加えられた状態との間の歪みゲージ回路の出力電圧の差を指す。当技術分野で知られているように、センサ本体上の様々な位置および向きに配置された複数の歪みゲージの応答を比較することにより、センサに加えられた負荷に関する情報を得ることができる。そのような曖昧さを除去するために使用される数学的構成は、本明細書ではデカップリング行列(デカップリングマトリックス)と呼ばれる。デカップリング行列は、典型的には較正手順中に決定される。
【0030】
トルクセンサ設計の従来技術における既知の問題は、軸方向トルクに起因する歪みゲージ応答を、本明細書で「軸外負荷」と総称する他の力およびトルクに起因する歪みゲージ応答から分離(デカップリング)することである。このような分離は、従来技術において、主にゲージ配置、屈曲部の使用、回路設計、およびソフトウェアによって試みられてきた。
【0031】
1つの既知のアプローチは、軸外負荷に対して鈍感であるか、または少なくとも感度が低い歪みゲージを配置することである。これは、一般に、変形可能なビームの中立軸上にゲージを配置することによって達成される。ほとんどの従来技術のトルクセンサでは、歪みゲージは、変形可能なビームの側面(側部)に配置され、ビームの表面張力および圧縮が、軸方向トルク負荷の下で最大化される。単一表面ゲージ(全ての歪みゲージがそれらのそれぞれの変形可能なビームの同じ表面上にある(上記で組み込まれた'707特許など))を使用するセンサでは、歪みゲージは一般に、センサに加えられる全ての力およびトルクからの歪みに敏感である。しかし、単一表面ゲージは、必要とされる歪みゲージの個数を減らすことができ、歪みゲージの配置および取り付けがはるかに容易であり、製造コストを劇的に下げるので、魅力的である。
【0032】
別のアプローチは、直列屈曲部を使用することである。屈曲部は、センサの残りの部分よりもはるかに剛性が低い構造部材であり、これは、特定の方向へのコンプライアンスを可能にし、したがって、ゲージにかかる望ましくない歪みを低減する。トルクセンサでは、通常、歪みゲージを担持する(搭載した)変形可能なビーム(それ自体が比較的剛性の高い屈曲部である)とセンサの外側ハブとの間に直列屈曲部が配置される。直列屈曲部の幅が薄く、正確な機械加工が必要とされるため、直列屈曲部を有するセンサは、製造するのに費用がかかる傾向がある。
【0033】
いくつかのトルクセンサでは、軸外負荷を独立して検出する歪みゲージは、ホイートストンハーフブリッジ回路トポロジまたはホイートストンフルブリッジ回路トポロジ内の他のゲージとペアリングすることによって、キャンセルされるか、または少なくとも軽減される。最後に、複数の力およびトルクを検知する歪みゲージの場合、軸外負荷の影響は、デカップリング行列を使用して、歪みゲージ信号を力およびトルク測定値にマッピングすることによって緩和または除去される。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態によるトルクセンサ10を示す。トルクセンサ10は、直列屈曲部のない独自の機械的設計、単一表面ゲージ、戦略的ゲージ配置、クォーターブリッジ回路トポロジ、およびデカップリング行列を利用して、軸外負荷の影響を軽減しながら軸方向トルクTzを測定する。トルクセンサ10は、略円形であり、略平面であるトランスデューサプレート12を備える。コンパクトさと費用対効果のために、一実施形態では、それは金属の単一のプレートとしてフライス加工されるか、または他の方法で形成される。
【0035】
トランスデューサプレート12は、図示の実施形態では、ロボットアームセグメント間の機械的、電気的、空気圧的等のユーティリティの通過を可能にする中央孔を含む中心領域14を含む。他の実施形態では、中心領域14は、中実であってもよく、または単一の取付孔のみを備えてもよい。トランスデューサプレート12の平面に垂直な中心軸zは中心を通る。トランスデューサプレート12はまた、周辺部16を含む。第1の取付孔18は、中心領域14内に、またはその近傍に形成され、トルクセンサ10を第1の物体に取り付けるように構成される。第2の取付孔20は、周辺部16に、またはそれに近接して形成され、トルクセンサ10を第2の物体に取り付けるように構成される。トルクセンサ10は、軸外負荷の悪影響を最小限に抑えながら、第1の物体と第2の物体との間の軸方向トルクTzを測定するように最適化される。
【0036】
複数のスポーク22は、中心領域14を周辺部16に接続する。図1に示される実施形態では、スポーク22は、隣接する空隙24間のトランスデューサプレート12の材料がスポーク22を形成するように、複数の空隙24を形成することによって形成される。図1に示す実施形態では、空隙24は、トランスデューサプレート12を貫通して穿孔された貫通孔であり、これは、製造中に非常に容易かつ安価に製造することができるが、一般に、空隙24は、貫通孔に限定されない。一実施形態では、各スポーク22は、2つの凹状の円形状側面を備える。
【0037】
2つの放射状スロット28も、中心領域14と周辺部16との間のトランスデューサプレート12を貫通して形成される。各放射状スロット28は、1つ以上の空隙24に隣接し、その結果、放射状スロット28と、隣接する空隙24との間のトランスデューサプレート12の材料は、計装ビーム26を形成する。空隙24が貫通孔である図1の実施形態では、各計装ビーム26は、一方の側に直線状エッジを備え、他方の側に凹状の円弧状エッジを備えるが、この構成は本発明の実施形態を限定するものではない。計装ビーム26は、薄い特徴を含まず、トルクセンサ10の製造コストを単純化し、低減する。
【0038】
図5に示されるように、歪みゲージ30は、各計装ビーム26に取り付けられる。図1に示す実施形態では、放射状スロット28は(放射方向に)略直線状の側面を有し、隣接する空隙24は、湾曲した側面を有するので、計装ビーム26は非対称であり、加えられた負荷からの歪みは、計装ビーム26に沿って放射方向に集中するか、または不均一である。本明細書でより完全に説明されるように、歪みゲージ30は、軸方向トルクTzから大きな応力を受けるが、軸外トルクTx、Tyからの応力がほとんどなく、軸外トルクTz測定に対する軸外負荷の悪影響を軽減するエリアで計装ビーム26に取り付けられる。
【0039】
トランスデューサプレート12、はスポーク22と、中心領域14と周辺部16とを接続する計装ビーム26とを有し、軸方向トルクTzの下でわずかな機械的コンプライアンスまたは変形を示す。しかしながら、トランスデューサプレート12は、軸外負荷の下ではるかに高い相対剛性を示す。そのため、トランスデューサプレート12は、その平面からの変形(例えば、軸外トルクTx、Tyの下)に抵抗するか、または中心領域14を周辺部16に向かって、もしくはそれから離れるように、任意の放射方向(例えば、軸外力Fx、Fy)に動かすこと、またはそれらを軸方向(Fz)に動かすことを試みる。
【0040】
当業者が容易に理解するように、トルクセンサ10は、追加の特徴を含むことができる。例えば、図1は、固定抵抗器、アナログ-デジタル変換器、マイクロプロセッサ、メモリ等のような電子部品のための保護された空間を提供する、電子機器取付孔32を示す。さらに、図1は位置決めダボ孔34を示し、これは、例えばロボットアームに組み立てられたときにトルクセンサ10の適切な位置決めおよび位置合わせを確実にするために、対応するダボを受け入れる。
【0041】
隣接する空隙24を穿孔することによるスポーク22の形成、および空隙24に隣接する放射状スロット28を形成することによる計装ビーム26の形成は、単純かつ製造コストが安価でありながら、上述の所望の目標コンプライアンスおよび剛性を有するコンパクトなトランスデューサプレート12をもたらす。しかしながら、当業者は、トルクセンサ10の実施形態が、図1に示される特定のトランスデューサプレート12に限定されないことを容易に認識するのであろう。
【0042】
図2A~2Dは、トルクセンサ10の様々な実施形態のためのトランスデューサプレート12の代替設計を示している。簡単にするために、図2A~2Dは、隣接する空隙24とともに計装ビーム26を画定する、スポーク22を形成する空隙24、および放射状スロット28のみを示す。取付孔18、20及び他の特徴は、省略されている。空隙24は、図1図2A図2C、および図2Dに示されるように、単純な貫通孔であってもよく、図2Bに示されるように、アークスロットであってもよく、または任意の他の形状であってもよい。同様に、放射状スロット28は、図1および図2Bに示されるように、平行な放射状側面を有する矩形であってもよい。代替的に、放射方向側面は、図2Aに示されるように、非平行(例えば、実際の半径と整列)であってもよい。図2Cは、両方のタイプの放射状スロット28を示すことに留意されたい。他の形状も本発明の広い範囲内で可能である。例えば、図2Dでは放射状スロット28は、貫通孔であり、計装ビーム26は、両側(両方の側面)に凹状の円弧状エッジを含む。
【0043】
空隙24の間に形成されたスポーク22は、軸方向トルクTzの下で最も柔軟である。スポーク22は、軸外負荷(すなわち、力Fx、Fy、FzおよびトルクFx、Fy)下で剛性を加える。これは、軸方向トルクTzの測定に対する軸外負荷の影響を低減する。スポーク22は、図1図2A図2C、および図2Dにおいて、貫通孔の形態の空隙24から形成されるように示されている。これは、コスト低減及び製造の容易性に寄与する。しかしながら、本発明の実施形態は、この形状に限定されない。図2Bに示すように、アークスロットは、製造コストを大幅に増加させることなく、付加的な設計の柔軟性を提供する。さらに、薄い特徴がないことは、コスト低減および製造の容易さに寄与する。トルクセンサ10は、ゼロスポーク22、すなわち、トランスデューサプレート12に形成された空隙24がない状態で機能するが、約4~10個のスポークは、軸方向トルクTzの下で望ましい感度と、軸外負荷Fx、Fy、Fx、Tx、およびTyにおける剛性を提供する。
【0044】
図3は、計装ビーム26の拡大図である。本明細書に示される計装ビーム26は概して、1つの直線状の側面(放射状スロット28の側面)および1つの円弧状側面(貫通孔の空隙24の側面)を有するが、これは本発明の実施形態を限定するものではない。空隙24および放射状スロット28は、好ましくは非対称の計装ビーム26を形成する。図3が示すように、放射方向における計装ビーム26の非対称性は、加えられる軸方向トルクTzに対して歪みの集中(斜線で示されている)をもたらす。歪みゲージ30は、軸方向トルクTzから生じる最大歪みの位置で計装ビーム26に取り付けられる。
【0045】
図4Aは、トルクセンサ10が軸方向トルクTzを受けるときの、歪みゲージ30の配置と、計装ビーム26内の歪みの分布とを示す。小さなドットで陰影を付けられた領域は張力がかかっており、大きなドットで陰影を付けられた領域は圧縮されているが、逆方向の軸方向トルクでは歪みは逆になる。歪みゲージ30は、軸方向トルクTzの下で最大歪みを受ける領域において、計装ビーム26に沿って配置される。
【0046】
図4Bに見られるように、歪みの分布は、平面曲げトルクTyの下で著しく異なる。ここでも、小さなドットで陰影を付けられた領域は張力がかかっており、大きなドットで陰影を付けられた領域は、描かれた特定の方向Tyに対して圧縮されている。歪みゲージ30の配置は、それらがこの歪みをほとんど受けず、したがって、この軸外負荷に対して最小限の出力を生成する。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態では、歪みゲージ30は、Tzの下で最大の歪みおよび同時にTx、Tyの下で最小の歪みの部位である位置で、計装ビーム26に取り付けられる。これは、単一表面ゲージ配置においては、すべての歪みゲージがすべての加えられた負荷に対する応答を生成する傾向があるので、重要である。これらの実施形態では、トランスデューサプレート12の設計および歪みゲージ30の配置は、軸方向トルクTzを測定する際の軸外負荷の悪影響の軽減に大きく寄与する。図示の実施形態では、歪みゲージ30の取付位置は、放射状スロット28の直線状エッジに沿っており、これはまた、歪みゲージ30の配向のための基準を提供することによって製造を容易にする。薄い直列屈曲部が無いことはさらに、製造可能性およびコスト低減を支援する。
【0048】
図5は、一実施形態によるトルクセンサ10上の4つの歪みゲージ30の配置を示す。図4Aおよび図4Bのように、この実施形態では、歪みゲージ30-0、30-1、30-2、および30-3はそれぞれ、軸方向トルクTzの下で最大歪みを受けるが、曲げトルクTx、Tyの下で最小歪みを受ける位置で、異なる計装ビーム26の同じ側面(上面)に取り付けられる。4つの歪みゲージ30すべてを上面に取り付けることで製造が大幅に容易になる。本明細書でより完全に説明されるように、図5に示されるようなトランスデューサプレート12の設計、および歪みゲージ30の配置は、軸外負荷FxとTyとの間、ならびにFyとTxとの間の線形依存性をもたらす。これは、Fzを測定するのに必要な歪みゲージ30の個数を、従来技術における単一表面実装に必要な6個から、わずか4個に減少させる。これは、コストおよび製造の複雑さをさらに低減する。
【0049】
しかし、本発明は、単一表面の歪みゲージ30の取り付けに限定されない。図6は、放射状スロット28の内側(内部側面)を形成する計装ビーム26の側面に取り付けられた歪みゲージ30-0および30-3を示す(対応する歪みゲージ30-1および30-2は、図6では見えない放射状スロット28の内側(内側表面)に同様に取り付けられている)。この実施形態では、各歪みゲージ30-0、30-1、30-2、および30-3は異なる計装ビーム26に取り付けられ、計装ビーム26のその表面の中立軸に沿って取り付けられる。計装ビーム26の中立軸は、表面の一方の側が張力状態にあり、他方の側が圧縮状態にあるときに、歪みを受けない線(ライン)である。この位置では、歪みゲージ30は、主に、計装ビーム26の表面に沿って長手方向に整列した歪みに応答する。したがって、この実施形態では、トルクセンサ10は、図4A図4B、および図5に示される実施形態よりも、軸外負荷(すなわち、Fz、Tx、Ty)に対する感度が低い。しかしながら、これらの位置に歪みゲージ30を取り付けることは、より困難であり、したがって、製造コストを増大させる。
【0050】
図7に示すさらに別の実施形態では、2つの歪みゲージ30が、中立軸から離間した2つの計装ビーム26のそれぞれの内面に取り付けられている。この配置では、歪みゲージ30は、放射状スロット28の内面に異なる歪みを与える、加えられた負荷に対する出力を生成する。図6の実施形態と同様に、この実施形態では、トルクセンサ10は、図4A図4B、および図5に示される実施形態よりも軸外負荷(すなわち、Fz、Tx、Ty)に対する感度が低い。しかしながら、これらの位置に歪みゲージ30を取り付けることも、より困難であり、したがって、製造コストが増大する。
【0051】
一般に、わずか1つの歪みゲージ30で機能的なトルクセンサ10が得られるが、軸外負荷による歪みゲージ30の出力を補償する方法は存在しない。一般に、より多くの歪みゲージ30を追加することにより、トルクセンサ10の精度および分解能が増加し、トランスデューサプレート12の設計および歪みゲージの配置の考慮と共に、軸方向トルクTzの測定から軸外負荷を排除または軽減することが可能になる。例えば、4つを超える歪みゲージ30は、感度の向上をもたらすことができ、他方で、追加の歪みゲージ30は、コストを増大させる。上記に組み込まれた'707特許に記載されているように、歪みゲージ30は、トルクセンサ10の無応力部材に取り付けることができ、その出力は、温度変化に伴う歪みゲージ30の出力の変動を補償するために使用することができる。
【0052】
トルクセンサに限定されず、本明細書に記載される任意の特定の実施形態に限定されない、本発明の1つの新規な概念は、歪みゲージ30応答結合(カップリング)である。本明細書で使用される場合、応答「結合」は、センサ本体の機械的特徴、センサ本体上への歪みゲージの配置、およびゲージ応答が得られる歪みゲージ回路を含んだ、力/トルクセンサの設計を指し、ある力またはトルクの下での歪みゲージ応答は、別のトルクまたは力からの歪みゲージ応答に線形に依存する。一方の歪みゲージ応答ベクトルが他方の歪みゲージ応答ベクトルの倍数である場合、2つの歪みゲージ応答が結合される。歪みゲージ応答は、1つの歪みゲージ応答ベクトルが1つ以上の異なる歪みゲージ応答ベクトルの倍数である場合、線形に依存する。
【0053】
本発明の実施形態では、歪みゲージ30の応答結合は、軸方向トルクTzを独立して測定するのに必要な歪みゲージ30の個数を、6つの歪みゲージ30の従来の要件からわずか4つに低減し、その場合でも、4つの歪みゲージ30は、6つの力およびトルク(例えば、単一表面配置の場合など)のすべてに敏感である(感度がよい)。
【0054】
表1は、6つの全ての加えられた力およびトルクの下での、歪みゲージ30-0~30-3の出力の代表例を示す。ゲージ信号は、歪みゲージ30回路の出力電圧である。ゲージ応答は、無負荷状態と、指定された軸に加えられた指定された大きさの負荷との間のゲージ信号の変化である。
【表1】
表1:代表的な負荷の歪みゲージ応答
【0055】
例えば、Fxゲージ応答ベクトル<1,1,-1,-1>は、歪みゲージ30-0,30-1のゲージ回路の出力電圧が、無負荷状態からx軸に沿って1Nの力が加えられたときに1ボルト増加し、歪みゲージ30-2,30-3のゲージ回路の出力電圧が、センサ10の負荷の同じ変化に対して1ボルト減少する(明らかな温度の変化は無い)ことを意味する。
【0056】
この例では、FyおよびTxのゲージ応答が結合されるか、または線形に依存する。Txについてのゲージ応答は、各歪みゲージ30について、Fyについてのゲージ応答の5倍である。例えば、力ベクトル<5,-5,-5,5>について、加えられた負荷に関する情報がない場合、5Nの力がFyにおいて加えられたか、または1NmのトルクがTxにおいて加えられたかを区別することができない。力FyおよびトルクTxは、一方のゲージ応答ベクトルが他方のゲージ応答ベクトルの倍数であるという点で、線形に依存するか、または結合される。この代表的な例では、FxとTyのゲージ応答も結合されており、それらは-1の倍数で異なることに留意されたい。
【0057】
力とトルクの2つの対が結合されるので、それらはそれぞれ組み合わせることができ、全ての加えられた負荷からのゲージ応答は4×4線形システム、すなわち、4つの力/トルク負荷(個々のまたは結合された)が、4つの固有の歪みゲージ応答ベクトルを生じる、として表される。このシステムは、歪みゲージ応答ベクトルを力およびトルクにマッピングするために反転させることができる。表2は、4つの固有のゲージ応答、ならびにそれらを生じさせる直接または結合力およびトルクを示す。
【表2】
表1:結合力/トルク対を用いた歪みゲージ応答
【0058】
2対の結合力/トルクのために、歪みゲージ30の応答は、フルランク線形システムを提供し、4つの歪みゲージ30の応答ベクトルは、4つの機械的負荷、すなわち、Tz、Fz、FyTx結合、およびFxTy結合、を一意的に識別し、少なくとも部分的に定量化する。トルクセンサ10では、軸方向力および結合力/トルク分解は無視され、所望の軸方向トルクTzは、デカップリング行列によって直接分解される。Fz、FyTx結合、および/またはFxTy結合の負荷についての情報が有用であり得る他の用途では、これらはデカップリング行列によっても直接分解することができるが、結合負荷の場合、潜在的な力またはトルクが識別されるが、大きさは定量化することができない。場合によっては、ロボットアームのセグメントに関する位置情報を使用して、結合された負荷をデカップリングし、より完全な解像度を可能にすることができる。このような位置情報がなくても、軸方向力Fzは、直接的かつ完全に分解されるので、トルクセンサ10は、実質的に軸方向(z)軸のための力/トルクセンサである。
【0059】
図8Aは、ホイートストンクォーターブリッジ回路における4つの歪みゲージ30-0、30-1、30-2、および30-3を示す。歪みゲージ30は、ソース電圧と接地との間に固定抵抗器と直列に接続され、ゲージ回路出力電圧は、中心ノードで取られる。上述のように、このようにして測定されたゲージ応答は、Tz、Fz、FyTx結合、およびFxTy結合を独立して分解することができる。上記に組み込まれた'707特許に記載されているように、温度によるゲージ出力の変化のための基準として、無応力歪みゲージを含めることができる。本開示の譲受人に譲渡され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、本明細書と同時に出願された、「quarter-Bridge Hardware Temperature Compensation for Force/Torque Sensor(力/トルクセンサのためのクォーターブリッジハードウェア温度補償)」という名称の米国特許出願は耐負荷歪みゲージおよび無応力歪みゲージにわたるトリミング抵抗器の値を追加および調整することによって、クォーターブリッジ回路における歪みゲージの動作を線形化するシステムおよび方法を記載しており、これにより、所定の温度範囲にわたって実質的に平坦な歪みゲージ応答を提供する。また、クォーターブリッジ回路は、予不負荷の補償も可能にする。例えば、軸方向トルクが測定される前にトルクセンサに軸外負荷が加えられる場合、クォーターブリッジゲージ回路の出力は、予負荷と軸方向トルクとの両方を分解することができ、後者の測定の精度を高めることができる。
【0060】
クォーターブリッジ構成は、本発明の実施形態において有用な唯一の回路トポロジではない。図8Bは、ホイートストンハーフブリッジ回路における歪みゲージ30-0、30-1、30-2、および30-3を示す。この回路は、図8Aのクォーターブリッジ回路よりも温度に対して安定している。しかしながら、それは、TzおよびFzを同時に独立して分解することはできず、センサの予負荷によって引き起こされる利得変化に敏感である。
【0061】
図8Cは、ホイートストンフルブリッジ回路における歪みゲージ30-0、30-1、30-2、および30-3を示す。この回路も、図8Aのクォーターブリッジ回路よりも温度に対して安定している。しかしながら、それは、TzおよびFzを同時に独立して分解することができず、センサの予負荷によって引き起こされる利得変化に敏感である。
【0062】
図9は、本発明の実施形態によるトルクセンサ10を製造する方法100におけるステップを示す。略円形で略平面のトランスデューサプレート12が提供される(ブロック102)。トランスデューサプレート12は、垂直な中心軸zを有する中心領域14と、周辺部16とを有する。1つ以上の第1の取付孔18が、中心領域14に近接して形成される(ブロック104)。第1の取付孔18は、第1の物体(ロボットアームの第1のセグメントなど)に取り付けられるように構成される。1つ以上の第2の取付孔20が、周辺部16に近接して形成される(ブロック106)。第2の取付孔は、第2の物体(ロボットアームの第1のセグメントとロボットアームの第2のセグメントとの間の運動(動き)を制御するモータなど)に取り付けられるように構成される。複数の空隙24が、中心領域と周辺部との間のトランスデューサプレート12を貫通して形成される(ブロック108)。隣接する空隙24は、中心領域14と周辺部16とを接続するスポーク22を画定する。1つ以上の放射状スロット28が、中心領域14と周辺部16との間のトランスデューサプレート12を貫通して形成される(ブロック110)。各放射状スロット28は、少なくとも1つの空隙24に隣接している。放射状スロット28と空隙24との間のトランスデューサプレート12は、中心領域14と周辺部16とを接続する計装ビーム26を画定する。歪みゲージ30が、計装ビーム24に取り付けられる(ブロック112)。歪みゲージ30は、歪みゲージ30の歪み依存抵抗値に依存する電圧を出力する歪みゲージ回路に接続される(ブロック114)。
【0063】
本発明の実施形態は、従来技術を超える多数の利点を提示する。トランスデューサプレート12の設計は、軸方向トルクに従うが、軸外負荷に対して高い相対剛性を示すトルクセンサ10を可能にし、センサ10を軸外負荷の有害な影響に対して感度をはるかに低くすることができる。一実施形態では、歪みゲージ30は、トランスデューサプレート12の上面のみに取り付けられ、製造コストが低くなるようにする。トランスデューサプレート12は、製造を容易にするために、単純な幾何学的形状および容易に形成される空隙24および軸方向スロット28を採用する。結果として得られるスポーク22および計装ビーム26は、複雑で高価な薄い特徴を採用しない。計装ビーム26は非対称であり、軸外負荷によって生じる歪みに敏感でない位置を作り出し、曲げトルクTx、Tyにほとんど敏感でない上面ゲージングを可能にする。トランスデューサプレート12は、ロボットアームセグメント間のユーティリティまたは機械的結合の通過のために、大きな中心貫通孔を可能にする。トランスデューサプレート12の設計、歪みゲージ30の配置、および、一実施形態では、クォーターブリッジ回路トポロジが、4つの歪みゲージ30のみを使用して、軸方向トルクTz(および、所望であれば、Fz、FyTx結合、およびFxTy結合)の直接分解を可能にする。
【0064】
一般に、本明細書で使用されるすべての用語は異なる意味が明確に与えられ、かつ/またはそれが使用される文脈から暗示されない限り、関連する技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。a/an/the要素、装置、構成要素、手段、ステップなどへのすべての言及は、明示的に別段の定めがない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つのインスタンスを指すものとしてオープンに解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法のステップは、ステップが別のステップに続くまたは先行すると明示的に記載されない限り、および/またはステップが別のステップに続くまたは先行しなければならないことが暗示的である場合を除き、開示される正確な順序で実行される必要はない。本明細書に開示される実施形態のいずれかの任意の特徴は、適切な場合にはいつでも、任意の他の実施形態に適用され得る。同様に、任意の実施形態の任意の利点は、任意の他の実施形態に適用することができ、逆もまた同様である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ように構成される」という用語は、特定の方法で動作するように設定され、編成され、適合され、または配置されることを意味し、この用語は「ように設計される」と同義である。本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、ほぼまたは本質的に、しかし必ずしも完全ではないが、この用語は、機械的または部品値の公差、測定誤差、ランダム変動、および不正確さの同様のソースを包含し、説明する。本明細書で使用される場合、用語「略円形」は、中心領域及び中心からほぼ等距離の周辺を有する形状を指すが、必ずしも幾何学的円に限定されない。例えば、六角形、八角形などは「略円形」である多角形である。本明細書で使用される場合、「略平面」という用語は、対向する平面的な表面を有する形状を指すが、リム、リップ、フランジなどの非平面的な特徴を排除するものではない。
【0066】
もちろん、本発明は、本発明の本質的な特徴から逸脱することなく、本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法で実施されてもよい。本実施形態はすべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入るすべての変更は、その中に包含されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
【外国語明細書】