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特開2023-117429人工知能機能付きの着用型自動除細動器(WCD)
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  • 特開-人工知能機能付きの着用型自動除細動器(WCD) 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117429
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】人工知能機能付きの着用型自動除細動器(WCD)
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20230817BHJP
   A61B 5/332 20210101ALI20230817BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20230817BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/332
A61B5/33 120
A61B5/33 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022020005
(22)【出願日】2022-02-11
(71)【出願人】
【識別番号】522262186
【氏名又は名称】ウェスト・アファム・ホールディングス・ディーエーシー
【氏名又は名称原語表記】West Affum Holdings DAC
【住所又は居所原語表記】32 Molesworth Street, Dublin 2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110003786
【氏名又は名称】HIPF弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ・エル・サリバン
(72)【発明者】
【氏名】ゾイ・アール・イングマン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ピー・フィンチ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・エム・グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ディー・フーシェイ・ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ18
4C053JJ23
4C053JJ40
4C127AA02
4C127BB03
4C127BB05
4C127JJ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より患者特有のアプローチをもたらし、より少ない誤警報をもたらす着用型自動除細動器が開示される。
【解決手段】プロセッサは、着用型医療機器が装着されている間に1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された患者固有情報を記録し、記録された情報を分析するためのアルゴリズムを実行するように構成され、アルゴリズムは、複数の異なる人から収集されたデータに基づく。プロセッサは、記録された情報の人工知能解析を実行し、導出された情報の人工知能解析から導出された更新情報でアルゴリズムを更新し、更新されたアルゴリズムを使用して、着用型医療機器が装着されている間に1つ以上のセンサによって出力される後続の信号を分析するようにさらに構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者固有の除細動器システムであって、
1つ以上のセンサと、
エネルギー貯蔵装置と、
1つ以上の治療電極と、
前記1つ以上のセンサ、前記エネルギー貯蔵装置、および前記治療電極に結合されたプロセッサを含み、
前記プロセッサが、
前記患者固有の除細動器システムが装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力される信号から導出される情報を解析するためのアルゴリズムを使用し、前記アルゴリズムは、前記患者固有の除細動器による治療の必要性を判定するために使用され、
前記アルゴリズムは、前記複数の異なる人から収集された前記データに対して実行された人工知能解析を使用して計算された係数を含み、
前記アルゴリズムはまた、前記1つ以上のセンサを使用して前記患者から収集されたデータに対して実行された前記人工知能解析から少なくとも部分的に導出される
ように構成された、
システム。
【請求項2】
前記プロセッサがローカルプロセッサを含み、
前記ローカルプロセッサが、ネットワークを介してリモートプロセッサと通信するようにさらに構成された、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アルゴリズムが、前記リモートプロセッサによる、前記複数の異なる人から収集された前記データの人工知能処理に少なくとも部分的に基づく、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記人工知能処理がロジスティック回帰分析を含む、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記アルゴリズムが以下の式に従ってインデックスを決定するように構成され、
インデックス=A*HR2+B*HR+C*幅2+D*幅+E、
ここで、HRは心拍数を指し、幅はQRSコンプレックスの幅を指し、係数A、B、C、D、およびEは、前記複数の異なる人から収集されたデータに適用される人工知能分類アルゴリズムを使用して決定される、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記解析および分類された情報の人工知能処理から導出された情報を用いて前記アルゴリズムを更新することが、前記ローカルプロセッサ上で前記人工知能解析を実行することを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記人工知能処理がロジスティック回帰分析を含む、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ローカルプロセッサが、前記解析された情報を前記ネットワークを介して前記リモートプロセッサに送信するようにさらに構成された、
請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記ローカルプロセッサが、前記解析および分類された情報の前記人工知能解析から導出された前記情報を前記リモートプロセッサから受信するようにさらに構成された、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記治療が、前記エネルギー貯蔵装置から前記1つ以上の治療電極を通して送達されるショックを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、
患者による行動が発生したか否かに基づいて、前記解析された情報を分類し、
前記分類に基づいて、前記解析され分類された情報の前記人工知能解析から導出された情報で前記アルゴリズムを更新し、
前記更新されたアルゴリズムを使用して、前記患者固有の除細動器が装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された後続の情報を解析するようにさらに構成された、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記患者による前記動作が、ショックが送達されようとしているという警告に対する応答を構成する、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記応答が、前記着用型体外式除細動器が前記治療電極を使用して前記エネルギー貯蔵装置から患者にショックを送達してはならないという指示を構成する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
1つ以上のセンサと
前記1つ以上のセンサに結合されたプロセッサを含み、
前記プロセッサが、
前記着用型医療機器が装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された患者固有情報を記録し、
前記記録された情報を解析するためのアルゴリズムを実行し、前記アルゴリズムは、複数の異なる人から収集されたデータに少なくとも部分的に基づき、
前記記録された情報の人工知能解析を実行し、
前記導出された情報の前記人工知能解析から導出された更新情報で前記アルゴリズムを更新し、
前記更新されたアルゴリズムを使用して、前記着用型医療機器が装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された後続の情報を解析するように構成された、
着用型医療機器。
【請求項15】
前記プロセッサが、ローカルプロセッサを含み、
前記ローカルプロセッサが、ネットワークを介してリモートプロセッサと通信するようにさらに構成された、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ローカルプロセッサが、前記記録された患者固有情報を前記リモートプロセッサに送信するようにさらに構成され、
前記リモートプロセッサが、前記記録された情報の前記人工知能解析を実行するように構成された、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記着用型医療機器が、着用型自動除細動器(WCD)を含み、前記WCDが、エネルギー貯蔵装置および治療電極をさらに含み、さらに、前記プロセッサは、前記ショックが送達されるべきであることを示す前記アルゴリズムに部分的に基づいて、前記エネルギー貯蔵装置に、前記治療電極を通してショックを放電させるようにさらに構成された、
請求項14に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2021年2月12日に出願された「Wearable External Defibrillator」という名称の米国仮特許出願第63/149050号の利益を主張するものであり、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、2020年6月24日に出願された「Wearable Cardioverter Defibrillator With AI-Based Features」という名称の米国特許出願第16/946512号に関連していることが分かり、この出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0003】
開示の概要および背景情報
人がいくつかのタイプの心不整脈を患っている場合、結果として、身体の様々な部分への血流が減少する可能性がある。いくつかの不整脈は、突然の心停止(SCA)さえもたらし得る。SCAは、その間に処置されない限り、非常に迅速に、例えば10分以内に死に至り得る。SCAは心臓発作と同じであると考えてきた観察者もいるが、そうではない。
【0004】
SCAのリスクが高い人もいる。そのような人々には、心臓発作または以前のSCA発症を有していた患者が含まれる。これらの人々に対する頻繁な推奨は、埋め込み型除細動器(ICD)を受けることである。ICDは、胸部に外科的に埋め込まれ、患者の心電図(ECG)を連続的に監視する。特定のタイプの心不整脈が検出された場合、ICDは、心臓を通して電気ショックを送達する。
【0005】
さらなる予防措置として、SCAのリスクが高いと特定された人々には、ICDが埋め込まれるまで装着するための着用型自動除細動器(WCD)システムが提供されることがある。このようなシステムの初期のバージョンは、着用型除細動器システムと呼ばれていた。WCDシステムは、典型的には、患者が着用するハーネス、ベスト、またはベルトなどの衣服を含む。WCDシステムはさらに、衣服に結合された除細動器および電極などの電子部品を含む。患者がWCDシステムを装着すると、電極は患者の皮膚と電気的に接触し、したがって患者のECGを感知するのを助けることができる。ショック適応心臓不整脈(例えば、心室細動またはVF)がECGから検出される場合、除細動器は、患者の身体を通して、したがって心臓を通して適切な電気ショックを送達する。送達されたショックは、患者の心臓を再始動させ、したがって患者の生命を救うことができる。
【0006】
本開示の実施形態によれば、1つ以上のセンサと、1つ以上のセンサに結合されたプロセッサとを含む着用型医療機器が開示される。実施形態では、プロセッサは、着用型医療機器が装着されている間に1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された患者固有情報を記録し、記録された情報を分析するためのアルゴリズムを実行するように構成され、アルゴリズムは、複数の異なる人から収集されたデータに少なくとも部分的に基づく。プロセッサは、記録された情報の人工知能解析を実行し、導出された情報の人工知能解析から導出された更新情報でアルゴリズムを更新し、更新されたアルゴリズムを使用して、着用型医療機器が装着されている間に1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された後続の情報を分析するようにさらに構成される。
【0007】
このセクションで議論される主題のいずれも、必ずしも先行技術ではなく、単に本節に提示されるため、先行技術であると仮定されなくてもよい。加えて、本明細書における任意の先行技術への任意の参照は、そのような先行技術が任意の国における任意の技術において共通の一般知識の一部を形成することの承認または任意の形態の示唆ではなく、またそのように解釈されるべきではない。これらの線に沿って、この節で議論されるかまたはそのような主題に関連する先行技術における問題の認識は、先行技術であると明示的に述べられない限り、先行技術として扱われるべきではない。むしろ、このセクションにおける任意の主題の議論は、特定された特定の問題を解決することに向けて取られたアプローチの一部として扱われるべきである。このアプローチは、それ自体、発明的であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の実施形態は、添付の図面の図において限定としてではなく例として最もよく示され、以下で簡単に説明され、同様の参照番号は同様の要素を示す。本開示における「1つの(an)」または「1つの(one)」実施形態への言及は、必ずしも同じ実施形態への言及ではなく、それらの用語は、少なくとも1つを意味するが、必ずしも1つを意味しないことに留意されたい。
図1】実施形態に従って作られた例示的なWCDを装着している患者の概念図である。
図2】実施形態に従って作製された体外式除細動器のサンプル構成要素を示す図である。
図3】本開示に従って作られたWCDシステムの構成要素のサンプル実施形態の図である。
図4】実施形態による、異なるベクトルに沿ってECG信号を検知するためにWCDシステムの複数の電極がどのように使用され得るかを示す概念図である。
図5】患者がショック適応イベントを経験しているかどうかを一般に示す値のショック範囲を一般に示す概念図である。
図6】ショック適応またはショック非適応のいずれかとして注釈された1592個のECGセグメントのデータセットを表す散布図である。
図7A】本開示の実施形態による、ロジスティック回帰法を使用して計算された係数を伴うショックインデックス式を使用して計算されたショックインデックスを図示する、異なるズームレベルにおけるヒストグラムである。
図7B】本開示の実施形態による、ロジスティック回帰法を使用して計算された係数を伴うショックインデックス式を使用して計算されたショックインデックスを図示する、異なるズームレベルにおけるヒストグラムである。
図8】本開示の教示に従って構成された医療機器が、本開示の実施形態による、人工知能方法に基づいて患者固有データを評価するために使用されるWCD環境の概念図である。
図9図8に示すWCD環境の動作を一般的に示す動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実装され得ることが理解される。いくつかの例では、周知の回路、構造、および技術は、この説明の理解を不明瞭にすることを避けるために示されていない。
【0010】
図1は、本開示の実施形態による、患者82によって装着されている例示的なWCDシステムを示す。患者82は、WCDシステムの構成要素を装着しているので、人および/または装着者と呼ばれることもある。患者82は歩行可能であり、これは、WCDシステムの装着可能部分を装着している間、患者82は歩き回ることができ、必ずしも寝たきりではないことを意味する。患者82もWCDシステムの「ユーザ」であると考えられるが、これは必要条件ではない。例えば、着用型自動除細動器(WCD)のユーザは、医師、看護師、救急救命士(EMT)、又は他の同様にタスクを課された個人若しくは個人のグループなどであってもよい。場合によっては、ユーザは、傍観者であってもよい。本明細書内のこれらおよび他の関連用語の特定の文脈は、それに応じて解釈されるべきである。
【0011】
実施形態によるWCDシステムは、WCDシステムの指定された部品を装着している患者を除細動するように構成され得る。除細動は、WCDシステムが電気ショックの形態で患者の体に送達するWCDシステムによって行うことができる。電気ショックは、1つ以上のパルスで送達され得る。
【0012】
図1はまた、実施形態に従って作られたWCDシステムの構成要素を示す。1つのそのような構成要素は、歩行可能な患者82によって装着可能な支持構造170である。したがって、支持構造170は、1日当たり少なくとも数時間、少なくとも数日間、さらには数ヶ月間、歩行患者82によって装着されるように構成される。支持構造170は、図1では一般的にのみ示されており、実際には部分的に概念的に示されていることが理解されよう。図1は、単に支持構造170に関する概念を示すために提供されており、支持構造170がどのように実装されるか、またはどのように装着されるかを限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
支持構造170は、多くの異なる方法で実施することができる。例えば、単一の構成要素または複数の構成要素の組合せで実施することができる。実施形態では、支持構造170は、ベスト、ハーフベスト、衣類などを含むことができる。そのような実施形態では、そのようなアイテムは、類似の衣類物品と同様に着用することができる。実施形態では、支持構造170は、ハーネス、1つまたは複数のベルトまたはストラップなどを含むことができる。そのような実施形態では、そのようなアイテムは、胴体、臀部の周り、肩の上などに患者によって装着され得る。実施形態では、支持構造170は、防水性であってもよい容器または筐体を含むことができる。そのような実施形態では、支持構造は、例えば米国特許第8024037号に示され記載されているように、接着材料によって患者の身体に取り付けられることによって着用され得る。支持構造170は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0056682号明細書の支持構造について記載されているように実施することもできる。もちろん、そのような実施形態では、当業者は、WCDシステムの追加の構成要素が、例えば米国特許出願公開第2017/0056682号明細書に記載されているように、支持構造の外部に取り付けられる代わりに、支持構造のハウジング内にあってもよいことを認識するであろう。他の例もあり得る。
【0014】
図1に示すシステムは、サンプル体外式除細動器100を含む。本明細書において後でより詳細に説明するように、体外式除細動器100のいくつかの態様は、ハウジングと、ハウジング内のエネルギー貯蔵モジュールとを含む。したがって、WCDシステムの文脈では、除細動器100は主電子モジュールと呼ばれることもある。エネルギー貯蔵モジュールは、電荷を貯蔵するように構成することができる。他の構成要素は、患者を通して1つ以上の除細動ショックを送達するように、貯蔵された電荷の少なくとも一部を電極を介して患者を通して放電させることができる。
【0015】
図1はまた、電極リード105を介して体外式除細動器100に結合されたサンプル除細動電極104、108を示す。除細動電極104、108は、多くの方法で患者82によって装着されるように構成することができる。例えば、除細動器100及び除細動電極104、108は、支持構造170に直接的又は間接的に結合され得る。換言すれば、支持構造170は、患者82が動き回っている間などに、歩行可能患者82の身体上に電極104、108のうちの少なくとも1つを維持するように、歩行可能患者82によって装着されるように構成され得る。したがって、電極は、患者82の皮膚に取り付けられ、皮膚に直接または衣服などを介して単に押し付けられることによって、身体上に維持することができる。いくつかの実施形態では、電極は、必ずしも皮膚に押し付けられる必要はなく、WCDシステムによる介入に有利となり得る状態を感知すると、そのようにバイアスされる。さらに、除細動器100の構成要素の多くは、除細動電極104、108の少なくとも1つを介して直接的または間接的に支持構造170に結合されていると考えることができる。
【0016】
除細動電極104、108が患者82の身体と良好に電気的に接触すると、除細動器100は、電極104、108を介して、身体を通して短時間の強い電気パルス111を投与することができる。パルス111は、ショック、除細動ショック、治療、電気治療、治療ショックなどとしても知られている。パルス111は、患者82の生命を救うために、心臓85を通過して再始動させることを意図している。パルス111は、必要に応じて心臓85を単純にペーシングするために、より小さい大きさの1つまたは複数のペーシングパルスをさらに含むことができ、以下同様である。
【0017】
除細動器は、典型的には、患者のECG信号に基づいて除細動するか否かを決定する。しかしながら、体外式除細動器100は、ECG信号が単にこれらの入力のうちの1つである様々な入力に基づいて、除細動を開始するか、又は除細動を保留(ホールドオフ)することができる。
【0018】
実施形態によるWCDシステムは、患者82からデータを取得することができる。そのようなデータを収集するために、WCDシステムは、任意選択で、少なくとも外部監視機器180を含むことができる。装置180は、例えば除細動器100の筐体内ではなく、スタンドアロン装置として提供され得るため、「外部」装置と呼ばれる。装置180は、少なくとも1つのローカルパラメータを感知または監視するように構成され得る。ローカルパラメータは、患者82のパラメータ、またはWCDシステムのパラメータ、または環境のパラメータとすることができ、これについては本明細書で後述する。
【0019】
これらのパラメータのいくつかについて、装置180は、1つ以上のセンサまたはトランスデューサを含み得る。そのようなセンサの各々は、患者82のパラメータを感知し、感知されたパラメータに応答して入力をレンダリングするように構成され得る。いくつかの実施形態では、入力は、感知されたパラメータの値などの定量的なものであり、他の実施形態では、入力は、閾値を超えたか否かを知らせるなどの定性的なものである。患者82に関するこれらの入力は、本明細書では生理学的入力および患者入力とも呼ばれることがある。実施形態では、センサは、多くの個々のセンサを包含するものとして、より広く解釈することができる。
【0020】
任意選択で、装置180は、支持構造170に物理的に結合される。さらに、装置180は、支持構造170に結合された他の構成要素と動作可能に通信することができる。このような通信は、この説明を考慮して当業者によって適用可能であるとみなされるように、通信モジュールによって実施することができる。
【0021】
実施形態では、示されたWCDシステムの構成要素のうちの1つまたは複数は、患者82のためにカスタマイズされ得る。このカスタマイズは、いくつかの態様を含むことができる。例えば、支持構造170は、患者82の身体に取り付けることができる。別の例では、安静時、歩行中の患者82の心拍数、歩行中の運動検出器出力など、患者82のベースライン生理学的パラメータを測定することができる。患者の身体は互いに異なるため、そのようなベースライン生理学的パラメータの測定値を使用してWCDシステムをカスタマイズして、その診断をより正確にすることができる。もちろん、そのようなパラメータ値は、WCDシステムのメモリなどに記憶され得る。さらに、実施形態によれば、ベースライン生理学的パラメータのそのような測定値を受け取るプログラミングインターフェースを作成することができる。このようなプログラミングインターフェースは、これらを他のデータと共にWCDシステムに自動的に入力することができる。
【0022】
図2は、実施形態に従って作製された体外式除細動器200の構成要素を示す図である。これらの構成要素は、例えば、図1の体外式除細動器100に含まれ得る。図2に示す構成要素は、ケーシング201とも呼ばれるハウジング201内に設けることができる。
【0023】
体外式除細動器200は、図1の歩行可能患者82など、体外式除細動器を装着している患者を対象とする。除細動器200は、ユーザ282のためのユーザインターフェース280を更に含んでもよい。ユーザ282は、着用者82としても知られる患者82であり得る。あるいは、ユーザ282は、支援を提供する可能性がある傍観者、または訓練された人など、現場のローカル救助者とすることができる。あるいは、ユーザ282は、WCDシステムと通信する遠隔に位置する訓練された介護者であってもよい。
【0024】
ユーザインターフェース280は、いくつかの方法で作成することができる。ユーザインターフェース280は、画像、音、または振動を出力することによってユーザに通信するための、視覚的、聴覚的、または触覚的であり得る出力装置を含み得る。画像、音、振動、およびユーザ282によって知覚され得る任意のものは、人間知覚可能指示(HPI)とも呼ばれ得る。出力装置には多くの例がある。例えば、出力装置は、感知され、検出され、および/または測定されたものを表示し、蘇生の試みなどのために救助者282に視覚フィードバックを提供するためのライトまたは画面であり得る。別の出力装置はスピーカであってもよく、スピーカは、音声プロンプト、ビープ音、大きなアラーム音、および/または傍観者に警告するための言葉などを発するように構成され得る。
【0025】
ユーザインターフェース280は、ユーザからの入力を受信するための入力装置をさらに含み得る。そのような入力装置は、プッシュボタン、キーボード、タッチスクリーン、1つまたは複数のマイクロフォンなど、様々なコントロールを含み得る。入力装置は、「私は生きている」スイッチまたは「生きている人」スイッチと呼ばれることもあるキャンセルスイッチとすることができる。いくつかの実施形態では、キャンセルスイッチを作動させることにより、ショックの差し迫った送達を防止することができる。
【0026】
除細動器200は、内部監視装置281を含むことができる。装置281は、ハウジング201内に組み込まれているので、「内部」装置と呼ばれる。監視装置281は、患者の生理学的パラメータ、システム、および/または環境パラメータなどの患者パラメータを感知または監視することができ、これらのすべてを患者データと呼ぶことができる。換言すれば、内部監視装置281は、図1の外部監視装置180に対して補完的または代替的であり得る。どのパラメータがどの監視装置180、281によって監視されるべきかの割り当ては、設計考慮事項に従って行うことができる。装置281は、本明細書の他の箇所でも説明するように、1つまたは複数のセンサを含むことができる。
【0027】
患者パラメータは、患者の生理学的パラメータを含むことができる。患者の生理学的パラメータは、例えば、限定するものではないが、患者がショック又は他の介入若しくは支援を必要としているか否かを検出する際に任意の助けとなり得る生理学的パラメータを含み得る。患者の生理学的パラメータはまた、任意選択で、患者の病歴、イベント履歴などを含むことができる。そのようなパラメータの例は、患者のECG、血液酸素レベル、血流、血圧、血液灌流、灌流組織の光透過または反射特性の拍動性変化、心音、心臓壁運動、呼吸音および脈拍を含む。したがって、監視装置180、281は、患者の生理学的信号を取得するように構成された1つまたは複数のセンサを含むことができる。そのようなセンサまたはトランスデューサの例は、ECGデータを検出するための1つまたは複数の電極、灌流センサ、パルスオキシメータ、血流を検出するための装置(例えば、ドップラー装置)、血圧を検出するためのセンサ(例えば、カフ)、光学センサ、組織の色変化を検出するための光源とおそらく協働する照明検出器およびセンサ、モーションセンサ、心臓壁の動きを検出することができる装置、音センサ、マイクロフォンを有する装置、SpO2センサなどを含む。本開示を考慮すると、そのようなセンサは、患者の脈拍を検出するのに役立つことができ、したがって、脈拍検出センサ、脈拍センサ、および脈拍数センサとも呼ばれ得ることが理解されよう。加えて、当業者は、パルス検出を実行する他の方法を実装してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、ローカルパラメータは、患者282の監視される生理学的パラメータにおいて検出され得る傾向である。傾向は、短期および長期にわたる異なる時間におけるパラメータの値を比較することによって検出することができる。検出された傾向が心臓リハビリテーションプログラムを特に助けることができるパラメータには、(a)心臓機能(例えば、駆出分画率、1回拍出量、拍出量など)、(b)安静時または運動中の心拍数変動、(c)運動中の心拍数プロファイル、および加速度計信号のプロファイルからなどの適応レートペースメーカ技術から通知される活動力の測定、(d)心拍数傾向、(e)SpO2、CO2などからなどの灌流、または上述したものなどの他のパラメータ、(f)呼吸機能、呼吸数など、(g)運動、活動レベルなどを含む。傾向が検出されると、それを記憶し、および/または通信リンクを介して報告することができ、場合によっては保証される場合には警告とともに報告することができる。報告から、患者282の進行を監視する医師は、改善していないかまたは悪化しているかのいずれかである状態について知る。
【0029】
患者状態パラメータは、患者282の記録された態様、例えば運動、姿勢、患者が最近話したか否か、およびおそらく患者が言ったことなど、ならびに任意選択でこれらのパラメータの履歴を含むことができる。あるいは、これらの監視装置のうちの1つは、全地球測位システム(GPS)位置センサなどの位置センサを含むことができる。そのようなセンサは、位置を検出することができ、速度は、経時的な位置の変化率として決定することができる。多くの動き検出器は、検出器の動き、したがって患者の身体の動きを示す動き信号を出力する。患者状態パラメータは、SCAが実際に起こっているかどうかの決定を絞り込む際に非常に有用であり得る。
【0030】
したがって、実施形態に従って作られたWCDシステムは、動き検出器を含むことができる。実施形態では、運動検出器は、監視装置180または監視装置281内に実装されることができる。このような動き検出器は、例えば加速度計を使用するなど、当技術分野で知られている多くの方法で作製することができる。この例では、動き検出器287は、監視装置281内に実装される。実施形態によるWCDシステムの動き検出器は、動きイベントを検出するように構成され得る。運動イベントは、例えば、ベースライン運動または安静からの運動の変化など、便利なように定義することができる。そのような場合、感知される患者パラメータは運動である。
【0031】
WCDシステムのシステムパラメータは、システム識別、バッテリ状態、システム日時、自己試験の報告、入力されたデータの記録、エピソードおよび介入の記録などを含むことができる。検出された動きイベントに応答して、動き検出器は、検出された動きイベントまたは動きから、後続の装置または機能によって受信され得る動き検出入力をレンダリングまたは生成し得る。
【0032】
環境パラメータは、周囲温度および圧力を含むことができる。さらに、湿度センサは、雨が降る可能性があるか否かに関する情報を提供することができる。推定される患者の位置は、環境パラメータと考えることもできる。監視装置180または281が上記のようにGPS位置センサを含む場合、および患者がWCDシステムを装着していると推定される場合、患者位置を推定することができる。
【0033】
除細動器200は、典型的には、ハウジング201内のソケットであり得る除細動ポート210を含む。除細動ポート210は、電気ノード214、218を含む。図1のリード105などの除細動電極204、208のリードは、それぞれノード214、218と電気的に接触するように除細動ポート210に差し込むことができる。代わりに、除細動電極204、208を除細動ポート210に連続的に接続することも可能である。いずれにしても、除細動ポート210は、電極を介して、本明細書において後でより完全に説明されるエネルギー貯蔵モジュール250に貯蔵された電荷の少なくとも一部を装着者に誘導するために使用されることができる。電荷は、除細動、ペーシングなどのためのショックとなる。
【0034】
除細動器200は、場合によっては、ハウジング201内にセンサポート219を有することもでき、これはECGポートとしても知られている。センサポート219は、ECG電極およびECGリードとしても知られる検知電極209を差し込むように適合され得る。代わりに、検知電極209をセンサポート219に連続的に接続することも可能である。検知電極209は、特に患者の身体、特に患者の皮膚と良好な電気的接触を行う場合に、ECG信号、例えば12リード信号、又は異なる数のリードからの信号を検知するのに役立ち得るタイプのトランスデューサである。除細動電極204、208と同様に、支持構造は、患者282の身体上に感知電極209を維持するように、患者282によって装着されるように構成することができる。例えば、感知電極209は、除細動電極204、208と同様に、患者との良好な電気的接触を行うために支持構造170の内側に取り付けることができる。
【0035】
任意選択で、実施形態によるWCDシステムはまた、電極と患者の皮膚との間に自動的に展開することができる流体を含む。流体は、電極と皮膚との間のより良好な電気的接触を確立するために、電解質を含むことなどによって導電性であり得る。電気的に言えば、流体が展開されると、各電極と皮膚との間の電気インピーダンスが減少する。機械的に言えば、流体は、低粘度ゲルの形態であってもよく、その結果、流体は、展開された後、電極の近くで放出された位置から流出しない。流体は、除細動電極204、208及び検知電極209の両方に使用することができる。
【0036】
流体は、図2に示されていない流体リザーバ内に最初に貯蔵されてもよい。このような流体リザーバは、支持構造に結合することができる。加えて、実施形態によるWCDシステムは、流体展開機構274をさらに含む。流体展開機構274は、流体の少なくとも一部をリザーバから放出させ、電極204、208が患者に取り付けられるように構成された患者位置の一方または両方の近くに展開させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、流体展開機構274は、プロセッサ230から起動信号ASを受信することに応答して、放電の前に起動され、これは、本明細書においてより完全に後述される。
【0037】
いくつかの実施形態では、除細動器200はまた、そのセンサまたはトランスデューサとともに動作するもののうちの1つ以上として、測定回路220を含む。測定回路220は、提供される場合、センサポート219から患者の1つ以上の電気生理学的信号を感知する。除細動器200がセンサポート219を欠いていても、測定回路220は、除細動電極204、208が患者に取り付けられたときに、代わりにノード214、218を介して生理学的信号を任意に取得してもよい。これらの場合、入力はECG測定値を反映する。患者パラメータは、電極204、208間の電圧差として感知され得るECGであり得る。加えて、患者パラメータはインピーダンスであってもよく、これは電極204、208間および/またはペアで考慮されるセンサポート219の接続間で検知され得る。インピーダンスを感知することは、とりわけ、これらの電極204、208および/または感知電極209が患者の身体と良好な電気的接触をしていないかどうかを検出するために有用であり得る。これらの患者の生理学的信号は、利用可能なときに感知され得る。次いで、測定回路220は、それらに関する情報を入力、データ、他の信号などとしてレンダリングまたは生成することができる。したがって、測定回路220は、センサによって感知された患者パラメータに応答して患者入力をレンダリングするように構成することができる。いくつかの実施形態では、測定回路220は、感知電極209によって感知されたECG信号に応答して、ECG信号の値などの患者入力をレンダリングするように構成することができる。より厳密に言えば、測定回路220によってレンダリングされた情報は、そこから出力されるが、この情報は、後続の装置または機能によって入力として受信されるので、入力と呼ぶことができる。
【0038】
除細動器200はまた、プロセッサ230を含む。プロセッサ230は、様々な実施形態においていくつかの方法で実装され得る。そのような方法は、限定ではなく例として、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサ(DSP)などのデジタルおよび/またはアナログプロセッサ、マイクロコントローラなどのコントローラ、マシン内で動作するソフトウェア、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、フィールドプログラマブルアナログアレイ(FPAA)、プログラマブル論理装置(PLD)、特定用途向け集積回路(ASIC)などのプログラマブル回路、これらのうちの1つまたは複数の任意の組合せなどを含む。
【0039】
プロセッサ230は、本明細書でより完全に後述するメモリ238などの非一時的記憶媒体を含むか、またはそれにアクセスすることができる。そのようなメモリは、機械可読命令および機械実行可能命令の記憶のための不揮発性部品を有することができる。このような命令の集合をプログラムと呼ぶこともできる。「ソフトウェア」とも呼ばれ得る命令は、概して、本明細書で開示されるか、または開示される実施形態を考慮して当業者によって理解され得るような行為、動作、および/または方法を実行することによって機能を提供する。いくつかの実施形態では、および本明細書で使用される慣例の問題として、ソフトウェアのインスタンスは、「モジュール」および他の同様の用語によって参照され得る。一般に、モジュールは、特定の機能を提供または実現するように、命令のセットを含む。モジュールおよび提供される機能の実施形態は、本明細書に記載される実施形態によって限定されない。
【0040】
プロセッサ230は、いくつかのモジュールを有すると考えることができる。1つのそのようなモジュールは、検出モジュール232であり得る。検出モジュール232は、心室細動(VF)検出器を含むことができる。入力、値を反映するデータ、または他の信号の値として利用可能であり得る、測定回路220からの患者の感知されたECGは、患者がVFを経験しているかどうかを判定するために、VF検出器によって使用されてもよい。VFは典型的にはSCAをもたらすため、VFを検出することは有用である。検出モジュール232はまた、心室頻拍(VT)検出器などを含むことができる。
【0041】
プロセッサ230内の別のそのようなモジュールは、何をすべきかについての勧告を生成する勧告モジュール234であり得る。勧告は、検出モジュール232の出力に基づくことができる。実施形態に従って多くのタイプの勧告があり得る。いくつかの実施形態では、勧告は、プロセッサ230が例えば勧告モジュール234を介して行うことができるショック/非ショック判定である。ショック/非ショック判定は、記憶されたショック勧告アルゴリズムを実行することによって行うことができる。ショック勧告アルゴリズムは、実施形態に従って捕捉された1つ以上のECG信号からショック/非ショック判定を行い、ショック基準が満たされるか否かを判定することができる。この判定は、捕捉されたECG信号のリズム解析又は他の方法から行うことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、判定がショックである場合、電荷が患者に送達される。電荷の送達は、患者への放電およびショックとしても知られている。上述したように、これは、除細動、ペーシングなどのためであり得る。
【0043】
理想的な状態では、患者の検知されたECG信号のセグメントから、非常に信頼性の高いショック/非ショック判定を行うことができる。しかしながら、実際には、ECG信号はしばしば電気的ノイズによって損なわれ、解析を困難にする。ノイズが多すぎると、心不整脈の誤検出を引き起こすことがあり、患者に誤報をもたらす。ノイズの多いECG信号は、2018年7月17日に出願され、米国特許出願公開第2019/0030351A1号として公開されて以来の米国特許出願第16/037,990号、および2018年7月17日に出願され、米国特許出願公開第2019/0030352A1号として公開されて以来の米国特許出願第16/038,007号に記載されているように扱うことができ、両方とも同じ出願人によるものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
プロセッサ230は、他の機能のために、他のモジュール236などの追加のモジュールを含むことができる。さらに、内部監視装置281が実際に設けられている場合、プロセッサ230はその入力などを受信することができる。
【0045】
除細動器200は、任意選択で、プロセッサ230と協働することができるメモリ238をさらに含む。メモリ238は、いくつかの方法で実装され得る。そのような方法は、限定ではなく例として、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(NVM)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、スマートカード、フラッシュメモリ装置、これらの任意の組合せなどを含む。したがって、メモリ238は、非一時的記憶媒体である。メモリ238は、提供される場合、プロセッサ230のためのプログラムを含むことができ、プロセッサ230は、プログラムを読み出して実行することができる。より具体的には、プログラムは、コードの形式で命令のセットを含むことができ、プロセッサ230は、それを読み取ると実行し得る。プログラムはまた、構成データ、プロファイル、スケジューリングなど、命令に従って実行できる他の情報を含んでもよい。実行することは、物理量の物理的操作によって実行され、実行されるべき機能、動作、プロセス、行為、アクションおよび/もしくは方法、ならびに/または他の装置もしくは構成要素もしくはブロックにそのような機能、動作、プロセス、行為、アクションおよび/もしくは方法を実行させるプロセッサをもたらし得る。プログラムは、プロセッサ230の固有の必要性に対して動作することができ、勧告モジュール234によって決定を行うことができるプロトコルおよび方法を含むこともできる。さらに、メモリ238は、ユーザ282がローカル救助者である場合、このユーザに対するプロンプトを記憶することができる。さらに、メモリ238はデータを記憶することができる。このデータは、例えば内部監視装置281及び外部監視装置180によって学習された患者データ、システムデータ及び環境データを含むことができる。データは、除細動器200から送信される前にメモリ238に記憶されてもよいし、除細動器200によって受信された後にそこに記憶されてもよい。
【0046】
除細動器200は、遠隔支援センター、緊急医療サービス(EMS)などの他のエンティティの他の装置との1つ以上の有線または無線通信リンクを確立するための通信モジュール290を任意選択で含むことができる。通信リンクは、データおよびコマンドを転送するために使用することができる。データは、患者データ、イベント情報、試みられた治療、CPRパフォーマンス、システムデータ、環境データなどであってもよい。例えば、通信モジュール290は、例えば米国特許出願公開第20140043149号明細書に記載されているように、無線で、例えば毎日、心拍数、呼吸数、及び他のバイタルサインデータを、インターネットを介してアクセス可能なサーバに送信することができる。このデータは、患者の医師によって直接分析することができ、また、発症しつつある病気を検出し、次いでテキスト、電子メール、電話などを介して医療関係者に通知するように設計されたアルゴリズムによって自動的に分析することもできる。モジュール290はまた、当業者によって必要とみなされ得るような相互接続されたサブコンポーネント、例えば、アンテナ、プロセッサの一部、サポート電子機器、電話またはネットワークケーブル用のコンセントなどを含んでもよい。
【0047】
除細動器200はまた、電源240を含んでもよい。除細動器200の携帯性を可能にするために、電源240は典型的にはバッテリを含む。このようなバッテリは、典型的には、再充電可能であってもなくてもよいバッテリパックとして実装される。再充電可能な電池パックと再充電不可能な電池パックとの組み合わせが使用されることもある。電源240の他の実施形態は、AC電力が利用可能である場合のためのAC電力オーバーライド、エネルギー貯蔵コンデンサ等を含むことができる。電源240を充電または交換するための適切な構成要素が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、電源240は、プロセッサ230によって制御および/または監視される。
【0048】
除細動器200は、エネルギー貯蔵モジュール250をさらに含むことができる。エネルギー貯蔵モジュール250は、WCDシステムの支持構造に、例えば直接的に、または電極およびそれらのリード線を介して結合され得る。モジュール250は、ショックを与えるために放電の準備をするときに、いくらかの電気エネルギーを電荷の形態で一時的に貯蔵することができる場所である。実施形態では、モジュール250は、プロセッサ230によって制御されるように、電源240から所望の量のエネルギーまで充電されることができる。典型的な実装形態では、モジュール250は、単一のコンデンサまたはコンデンサのシステムなどであり得るコンデンサ252を含む。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵モジュール250は、ウルトラキャパシタなどの高電力密度を示す装置を含む。上述のように、コンデンサ252は、患者に送達するために、電荷の形態でエネルギーを貯蔵することができる。
【0049】
ショックの決定は、以下に説明するように、ショック基準が満たされたことに応答して行うことができる。決定がショックである場合、プロセッサ230は、患者82にショック111を送達するように、支持構造が患者82によって装着されている間に、モジュール250に貯蔵された電荷の少なくとも一部または全部を患者82を通して放電させるように構成することができる。
【0050】
放電を引き起こすために、除細動器200はさらに放電回路255を含む。決定がショックである場合、プロセッサ230は、放電回路255を制御して、エネルギー貯蔵モジュール250に貯蔵された電荷の少なくとも一部または全部を患者を通して放電させるように構成することができる。放電はノード214、218に対して行うことができ、そこから除細動電極204、208に対して行うことができ、これにより患者にショックを与えることができる。回路255は、1つ以上のスイッチ257を含むことができる。スイッチ257は、Hブリッジ等のような多くの方法で作ることができる。回路255は、プロセッサ230および/またはユーザインターフェース280を介して制御することもできる。
【0051】
このように放電回路255を制御することにより、放電の時間波形を制御することができる。放電のエネルギーの量は、どれだけのエネルギー貯蔵モジュールが充電されたかによって、また、どれだけの時間放電回路255が開いたままであるように制御されるかによってすることができる。除細動器200は、任意選択で他の構成要素を含むことができる。
【0052】
図3は、例示的なWCDシステムのコンポーネントのサンプル実施形態の図である。この特定の例では、支持構造370は、ベスト状の着用可能な衣類を含む。支持構造370は、後側371と、患者の胸部の前で閉じる前側372とを有する。
【0053】
図3のWCDシステムはまた、体外式除細動器300を含む。図3は、体外式除細動器300のための支持体を示しておらず、体外式除細動器は、財布の中で、ベルト上で、肩を覆うストラップによって、などで担持され得る。ワイヤ305は、体外式除細動器300を電極304、308、309に接続する。これらのうち、電極304、308は除細動電極であり、電極309はECG検知電極である。
【0054】
支持構造370は、患者の身体上に電極304、308、309を維持するように、歩行可能患者によって装着されるように構成される。実際、後側除細動電極308はポケット378内に維持される。当然のことながら、ポケット378の内側は緩いネットで作られてもよく、その結果、電極308は、特に展開された導電性流体の助けを借りて患者の背中に接触することができる。さらに、検知電極309は、患者のECG信号および/またはインピーダンスを検知するために、患者の胴体を囲む位置に維持される。
【0055】
WCDシステムにおけるECG信号は、有用であるには多すぎる電気ノイズを含み得る。この問題を改善するために、多くの選択肢をプロセッサ230に提示するために、複数のECG検知電極309が設けられる。これらのオプションは、ここでより詳細に説明するように、ECG信号を検知するための異なるベクトルである。
【0056】
図4は、実施形態による、異なるベクトルに沿ってECG信号を検知するためにWCDシステムの複数の電極がどのように使用され得るかを示す概念図である。図4では、胴体、電極、および心臓のサイズ/形状/位置は近似しており、縮尺通りではない。心臓485を有する患者482の断面が示されている。図4では、患者482は上から見ており、患者482は下向きであり、図4の平面は患者の胴で患者482と交差する。
【0057】
4つのECG検知電極491、492、493、494は、患者482の胴体上に維持され、それぞれのワイヤリード461、462、463、464を有する。電極491、492、493、494は、図3の例における検知電極309と同様に、胴体を囲むことが認識されるであろう。
【0058】
これら4つのECG検知電極491、492、493、494の任意の対がベクトルを画定し、このベクトルに沿ってECG信号を検知および/または測定することができる。したがって、電極491、492、493、494は、6つのベクトル471、472、473、474、475、476を画定する。したがって、図4は、マルチベクトル実施形態を示す。
【0059】
これらのベクトル471、472、473、474、475、476は、それぞれチャネルA、B、C、D、E、Fを定義する。したがって、ECG信号401、402、403、404、405、406は、それぞれチャネルA、B、C、D、E、Fから、具体的には各チャネルに対するワイヤリード461、462、463、464の適切な対から感知および/または測定され得る。
【0060】
図4では、電極491、492、493、494は、簡略化のために、また好ましいように、同じ平面上にあるように描かれているが、必ずしもそうである必要はないことが理解されよう。したがって、ベクトル471、472、473、474、475、476も必ずしも同一平面上にある必要はない。
【0061】
実施形態では、ショック/非ショック判定をより正確に行うために、WCDは、ECG信号401、402、403、404、405、406のうちのどれがリズム解析および解釈に最良であるかを評価することができる。例えば、最も多くのノイズを有するECG信号は、無視され、破棄され、考慮されず、残りのECG信号をショック/非ショック判定を行うための候補として残してもよい。
【0062】
他の実施形態では、ベクトルは、患者の心拍数および/またはRR間隔を決定するために集約されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、集約は、2017年9月12日に発行された「Wearable Cardioverter Defibrillator Components Making Aggregate Shock/No Shock Determination From Two Or More ECG Signals」という名称の米国特許第9757581号に開示されているように実施することができ、これはあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
WCDは歩行可能患者によって装着されるので、患者の動きは、電極-皮膚界面で変化を引き起こし、ECG信号上にノイズをもたらす可能性がある。このノイズは、ECG解釈を妨げることによって重大な問題となり得る。
【0064】
実施形態では、WCD装置は、6つの差動ECGベクトルを生成することができる4つのモニタリング電極を使用する。WCDを装着している患者が動いているとき、いくつかのECG電極は、他のものよりも多く動くことがあり、その結果、いくつかのECGベクトルは、他のECGベクトルよりも多くのノイズを有する。実施形態では、全てのECGベクトルに対して異なる評価方法が使用される。ECGベクトルの評価が同様の結果を有する場合、ECGベクトルは信頼性があるとみなされる。信頼性があるとみなされたECGベクトルは、次いで、リズム解析において使用されることができ、より正確な結果をもたらす。
【0065】
単一のECGベクトルのみが使用されるいくつかの実施形態では、異なる査定方法が、単一のベクトルに対して使用されることができ、信頼性があるとみなされるECG信号の部分のみが、リズム解析において使用される。拡張として、WCD装置は、信頼できないとみなされるECG部分の数が閾値を超える場合に活動を低減するように患者に促すように構成され得る。これは、患者の動きによって生成されるノイズの量を低減し、信頼性があるとみなされるECG部分の数を増加させることができる。
【0066】
閾値に基づくショック解析
一般的に述べると、WCDは、患者にいつショックを与えるかを決定するときに患者パラメータを分析するためのアルゴリズムを実装する。例えば、除細動器アルゴリズムは、いつショックを与えるかを決定するために、上室頻拍(SVT)弁別器(QRS幅または形態など)と組み合わせて患者の心拍数を使用し得るが、アルゴリズムの個人化は限定され得る。心拍数閾値および装置応答時間は、調節され得るが、そうでなければ、アルゴリズムは、典型的には、各患者に対して主に固定され、比較的同一であるパラメータを使用する。閾値ベースのショック解析の実施形態は良好に機能し得るが、本開示は、不必要なアラーム、アラート、およびエピソードを低減するために、着用者の患者パラメータに基づいてショック決定アルゴリズムを動的に調整するように構成されたWCDシステムの実施形態を説明する。
【0067】
回帰に基づくショック解析
本開示の一実施形態によれば、ショック決定を行うことは、患者パラメータの測定値に基づくショック判定指標を計算し、次いでショック決定をショックインデックスの値に基づかせることによって達成され得る。例えば、「ショックインデックス」は、以下の式を用いて計算することができる。
【0068】
ショックインデックス=A*心拍数^2+B*心拍数+C*幅^2+D*幅+E
【0069】
この式において、心拍数は装着患者の心拍数に対応し、幅は装着患者のECGのQRS幅に対応する。さらに、変数A、B、C、D、およびEは、式の各個々の成分を微調整するか、またはその重要性にわずかに影響を与えるために使用される「重み付け変数」(係数とも呼ばれる)である。これらの係数の各々は、ショック適応信号およびショック非適応信号の大規模データベースに適用される「分類アルゴリズム」を使用して導出され得る。言い換えると、分類アルゴリズムは、機械学習技術を実行して、ショック適応またはショック非適応イベントのいずれかを表すことが知られている記録された患者パラメータのデータベースを評価することができる。このようにして、分類アルゴリズムは、既知の良好なイベントデータのそのデータベースにわたって反復して、患者がショック適応イベントを経験している可能性を正確に表す最も高い(実際の決定内の)確率を達成する計算されたショックインデックスをもたらす係数を達成し得る。
【0070】
示された例示的な式は、両方のパラメータの二乗値を含む。他の式は、一方または両方のパラメータの二乗値を含まなくてもよい。他の式は、3乗または4乗などの他の累乗に対するパラメータを含むことができ、または対数または累乗などの非線形演算を含むことができる。当業者は、ロジスティック回帰式が、線形入力をバイナリ出力に関連付ける機械学習技法の一例にすぎないことを理解するであろう。
【0071】
上述のショックインデックス式は、整数または小数形式の値の範囲を生成することに留意されたい。しかしながら、他の機械学習技術を実装する代替実施形態は、バイナリ回答(すなわち、直接「ショック適応」または「ショック非適応」結果)をもたらし得る。これらおよび他の実装形態は、本開示の検討から明らかになるであろう。
【0072】
一般的に述べると、分類アルゴリズムの様々な実施形態は、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、単純ベイズ分類器、k近傍法、決定木、または他の同様の技法を使用して実装され得る。複数の出力の「バギング」、ブースティング、スタッキング、または平均化などの方法を使用する「アンサンブル」技法を使用することもできる。これらおよび/または他の人工知能技術の実装は、しばしば「機械学習」と呼ばれる。
【0073】
図5を簡単に参照すると、上記の式を使用して計算されたショックインデックスは、「ショック範囲」と比較されて、ショックを与えるかどうかを決定する。この特定の実施形態では、ショック範囲は、0と1との間であってもよく、感知された患者パラメータがショック適応イベントを表す一連の尤度を表してもよい。この特定の例では、単純なショック/非ショック判定閾値として0.5のショックインデックスを使用することができる。代替として、0と0.33との間のショックインデックスは、ショックが不要であることを示すことができ、0.67と1との間のショックインデックスは、ショックが必要であることを示すことができ、0.33と0.67との間のショックインデックスは、ショックが必要であるかどうかが不確実であることを示すことができる。そのようなアプローチでは、不確実な範囲内のショックインデックス値は、ショックアラートを発行するが、アラートに応答するためにより多くの時間を被験者に提供することによる等、種々の方法で処理され得るか、または付加的プロンプトが、被験者に提供されてもよい。
【0074】
この方法の1つの利点は、いずれかのパラメータが単独で有するよりも、ショック適応セグメントとショック非適応セグメントとの間のより良好な分離を提供することである。換言すれば、このアプローチは、最も高い感度を維持しながら、不適切なショックを与える可能性が低い。
【0075】
この場合も、バイナリ結果を返すショック決定式が使用される実装形態では、ショック範囲は、単にバイナリ決定点を表すことができる。例えば、ショック決定式が0は、例えば、ショックが現在勧告されていないことを示し得る。例えば、ショック決定式が1は、ショックが現在必要であるとみなされることを示し得る。さらに他の代替実施態様も可能である。
【0076】
ここで、1つの特定の例を用いて、上述したアプローチの有効性を説明する。図6を参照すると、散布図601が表示されており、これは、ショック適応またはショック非適応のいずれかとして注釈が付けられた1592個のECGセグメントのデータセットを表す。散布図601は、経時的に多数の患者から蓄積された現実世界のデータを表す。赤色でプロットされた点は、ショック非適応ECGセグメントを表し、青色でプロットされた点は、ショック適応ECGセグメントを表す。
【0077】
本開示の実施形態によれば、ロジスティック回帰法を使用して、上に列挙した式の係数(または重み付け変数)を計算する。このロジスティック回帰法の結果は、以下のショックインデックス式である。
【0078】
ショックインデックス=-0.0005*HR^2+0.33*HR-0.0014*幅^2+0.32*幅-59.64
【0079】
再び、前述の式において、HRは心拍数に対応し、WidthはQRS幅に対応する。ここで図7Aおよび7Bを参照すると、ヒストグラムは、このショックインデックス式を使用して計算されたショックインデックスを示し、係数は今説明したロジスティック回帰法を使用して計算された。このアプローチは、ショック適応セグメントとショック非適応セグメントとを区別した。0.5の単一のショックインデックス閾値(例えば、図5参照)を使用することは、2つの偽陽性ショック決定(702)および4つの偽陰性ショック決定(705)のみをもたらす。
【0080】
この例示的な実施形態では、心拍数およびQRS幅が、測定された患者パラメータとして使用される。しかし、他の実施形態では、多くの他の特徴を測定して含めることができる。例としては、心拍数安定性、心拍数の変化率、QRS幅の一貫性、記憶されたテンプレートとの形態の類似性、QRS構成、ベースライン付近で費やされた時間の割合、周波数成分、および他のパラメータが挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、パラメータはまた、加速度計信号から、呼吸信号から、パルスオキシメータ信号から、口頭または周囲の音声入力から、または他の装置から抽出され得る。信号の持続時間も因子であり得る。複数のパラメータを「ショックインデックス」式に含めることができ、最適なパラメータを計算することができる。
【0081】
さらなる実施形態は、VTを遅いVFから区別するための方法を含み得る。これは、心拍数のみに基づいて(例えば、VF閾値200BPMを使用して)行われ得るか、または「Methods and Systems for Distinguishing VT from VF」と題された2019年8月28日に出願された米国特許出願第16/554410号に記載されるようなQRS構成などの要因を考慮し得る。徐脈および心静止は、心拍数に基づいて識別することもできる。
【0082】
前述の議論は、ショック/非ショック決定を行う際に使用され得るショックインデックスを計算するための改善されたアルゴリズムを開発するために人工知能を利用する実施形態を記載する。以下は、人工知能を利用してショック/非ショック判定アルゴリズムをさらに改善する追加の実施形態である。
【0083】
個人化分類アルゴリズム
一実施態様では、ショック適応ECGセグメントとショック非適応ECGセグメントのセットが収集され、上述したような分類アルゴリズムを使用して適切な係数を計算することができる。このようなアプローチは、ほとんどの人に対して良好に機能し得るが、個々の患者に対してアルゴリズムを調整しない。各患者についてより良い性能を達成するために、本開示の実施形態は、図8に示されるように、所与の患者から信号を収集し、信号を患者固有のデータベースに追加して新しいデータセットを形成し、次いで新しいデータセットを使用して係数を再計算するように構成された着用型機器を含む。
【0084】
概要として、図8に示すように、WCD環境800は、少なくともWCDシステム821、一般データベース811、患者固有データベース801、および分類アルゴリズム850を含む。追加の構成要素が含まれてもよいが、この議論に有用なもののみがこの例に含まれる。
【0085】
一般データベース811は、多数の患者から収集され、そのような患者データがショック適応イベントまたはショック非適応イベントに対応するかどうかを判定するために評価された一般患者データ(「特徴測定値」と呼ばれる)を含む。様々な実施形態では、患者データは、WCDシステム821のバージョンを装着した多数の患者からのECG読取値を含むことができる。患者データは、この例では、各ECG読取値が、ショック適応ECG読取値、ショック非適応ECG読取値、またはおそらくECG信号上のノイズを構成するかどうかを示すように注釈が付けられている。代替的な実施形態はまた(又は代替的に)、ほんの一例として、SpO2、etCO2、呼吸、心音、又は他の信号若しくは入力などの多くの他の測定パラメータを含んでもよい。これらの追加パラメータから導出された値もアルゴリズムに含めることができる。一般データベース811は、多数の人々からの信号と、医師などの臨床専門家からの判定(すなわち、ショック/非ショック分類)とを含む。様々な実施形態では、一般データベース811は、固定され得るか、または新しい一般患者データが取得されるにつれて周期的に更新され得る。
【0086】
分類アルゴリズム850は、上述したようなショックインデックス式の係数を構築するために、患者データ(例えば、一般データベース811からの特徴測定値812)を評価するように構成された人工知能(または機械学習)サービスである。上述したように、分類アルゴリズム850は、正確なショック/非ショック判定の可能性を最大化するショックインデックス式の係数を決定するために、測定された患者データを評価するために機械学習技術を使用する。分類アルゴリズム850は、一般的な患者データを使用して、患者固有データを使用して、または一般的な患者データと患者固有データの両方の何らかの組合せを使用して、そのような評価を実行するように構成される。
【0087】
この実施形態のWCDシステム821は、決定アルゴリズム822を含む。決定アルゴリズム(例えば、図2のショック勧告アルゴリズム)は、ショック/非ショック判定を行うために、上述のようにショックインデックス式を実装してもよい。特定の実施形態では、ショックインデックス式は、感知されている特定のイベントがショック適応イベントであるかどうかをより良く推定するために、ショックインデックス式の構成要素に様々な重みをそれぞれ割り当てる係数を含む。
【0088】
様々な実施形態では、WCDシステム821は、WCDシステム821が最初に展開されるときなどに、分類アルゴリズム850によって提供されるショックインデックス式のための係数を用いて事前構成される。WCDシステム821はまた、分類アルゴリズム850によって提供された新しい係数を用いてショックインデックス式のための係数を動的に更新し得る。さらに他の実施形態では、WCDシステム821は、新しいデータを受信または測定するときに係数を局所的に計算および再計算するように構成され得る。
【0089】
WCDシステム821はまた、患者のECG測定値、WCDシステム821に関する環境データ(例えば、動きデータ)、および患者によって提供されるフィードバック(例えば、アラートまたは他のプロンプトに対する患者の応答)など、様々な患者固有データを収集するように構成される。WCDシステム821はさらに、以下で説明するように、患者固有データの一部または全部を解析し、WCD関連情報の中央リポジトリに送信するように構成される。そのような患者固有データは、分類アルゴリズム850にアクセス可能な患者固有データベース801に記憶され得る。
【0090】
患者固有データベース801は、特定の患者に固有であり、患者データ(例えば、ECGセグメント)がショック適応イベントに対応するかどうかを識別するために注釈が付けられている患者データを含む。患者データに注釈を付けるのを助ける1つの技術は、患者から受け取った入力を含むことである。例えば、患者の特定のECGセグメントが、ショックが施されるべきであることを示唆する場合、ショックアラームは、患者が応答ボタンを押してショックをキャンセルすることができるように、ショックを送達する前に発せられてもよい。その患者フィードバックは、WCDシステム821が、その特定のECGセグメントをショック非適応として識別することを可能にする。したがって、その特定のECGセグメントは、患者固有データベース801に記録され、ショック非適応セグメントとして識別され得る。この技術は、事実上、患者が審判者としての役割を果たすため、別個の判定ステップを有利に回避することができる。
【0091】
WCDなどの着用型医療機器の性質は、本開示の実施形態をそのような装置に特に有益にすることに留意されたい。例えば、WCDは、通常、特定の患者に処方され、長期間装着される。したがって、WCDは、処方された患者から学習し、経時的に適応する機会を有する。対照的に、自動体外式除細動器(AED)は、AEDが以前に遭遇していない患者に対して最も頻繁に使用され、したがって、AEDは、心停止イベントに先立ってそれらの患者から学習する機会を有していない。少なくともその理由から、本開示の患者固有データベース801は、着用型医療機器と併せて有利に使用される。
【0092】
ショック非適応セグメントを識別する別の方法は、介入なしでリズムがそれ自体を解決するかどうかを見ることである。疑わしい心調律を経験している患者にショックが与えられず、患者が正常な心調律に戻る場合、明らかに、患者はショックを必要としなかった。このようにして、ショック非適応セグメントの大きな集合を収集することができる。このさらなる技術はまた、事実上、WCDが審判者として機能しているので、別個の追加の判定ステップを有利に回避することができる。
【0093】
時間とともに、装置は、ショック非適応であることが分かっている患者固有のセグメントを収集することが可能である。ショック適応セグメントのセットを収集することも可能であるが、WCDショックは一般的ではないので、ほとんどの患者はそれらの多くを得ることができない。さらに、セグメント収集は、高レートリズム、ワイドコンプレックス、またはアルゴリズム精度を改善するのに役立つ他の境界条件を強調し得る。
【0094】
エピソードを分類するさらに別の方法は、専門家注釈または医療専門家を使用して、記憶されているエピソードに注釈を付けるか、またはそれらをレビューすることである。注釈は、レビューツールを使用して主治医によって実行され得るか、または患者集団によって生成されたエピソードをレビューすることに専念する専門家であり得る。そのような専門家は、例えば、多くの誤警報を受信している患者のエピソードに注釈を付けることに焦点を合わせることができ、または、アルゴリズムが適切に訓練されることを確実にするために新しい患者に焦点を合わせることができる。専門家は、上述の方法によって自動的に分類されたエピソードをレビューすることもできる。
【0095】
他の実施形態はまた、患者の人口統計(デモグラフィック)情報を使用して、リズム分類を支援し得る。患者の年齢、性別、体重、肥満度指数、および他の情報は、アルゴリズム訓練における要因として考慮され得る。さらに、患者の病歴を考慮することができる。VT/VFの既往歴または心房細動などの重要な因子は、アルゴリズム識別に役立ち得る。完全な病歴は、多くの因子PQRST測定値、ベースライン血圧、糖尿病の病歴、およびアルゴリズム識別を支援し得る他の因子を含み得る。
【0096】
図9は、図8に示すWCD環境800の動作を一般的に示す動作フロー図である。動作中、ステップ901において、WCDシステム821が最初に装着されたとき、被験者は、ECG履歴または既に利用可能な被験者固有データのデータベースを有していない可能性があり、したがって、ショックインデックス式は、汎用データベース811のみから導出されたアルゴリズム係数に基づき得る。
【0097】
ステップ903において、分類アルゴリズム850は、そのとき利用可能な患者パラメータデータに基づいて係数を計算する。上述したように、任意の患者固有データが利用可能になる前に、分類アルゴリズム850は、一般データベース811からの一般患者データに基づいて係数を計算することができる。
【0098】
ステップ905において、WCDシステム821は、患者がWCDシステム821を装着しているときに患者固有データの収集を開始する(または場合によっては継続する)。患者固有データの収集は、図1図4に関連して上述した方法のいずれかで達成することができる。特に、患者固有データは、ECGセグメント、それらのECGセグメントに関する解析情報、それらのECGセグメントに基づく決定に対する患者応答などを含むことができる。
【0099】
ステップ907において、WCDシステム821は、(1)現在の係数を有するショックインデックス式と、(2)ステップ905においてWCDシステム821によって収集されている患者固有データとを使用してショックインデックスを計算する。上述したように、好ましい実施形態のWCDシステム821は、ショックインデックス式を実施する決定アルゴリズム(例えば、図2のショック勧告アルゴリズム)を含む。ショックインデックスをインデックス範囲と比較することによって(例えば、図5および対応する議論を参照)、WCDシステム821は、患者データの各項目(例えば、「患者パラメータ」、図2および対応する議論)についてショック/非ショック決定を行うことができる。
【0100】
ステップ909において、解析された患者固有データが報告される。様々な実施形態では、患者固有データを報告することは、患者固有データベース801に含めるために、患者固有データを遠隔支援センターなどに送信することを含むことができる。患者固有データは、ステップ905で収集された患者データの全部または一部を含むことができる。さらに、好ましくは、患者固有データは、ステップ907で実行されたショックインデックス解析の結果と共に送信される。さらに、患者固有データは、患者固有データに対応する患者応答および他の環境データなどの追加情報をさらに含むことができる。
【0101】
ステップ911では、ショックインデックス式の係数が患者固有データに従って更新され、プロセスはステップ903に戻る。一実施形態では、係数の更新は、患者固有データを患者固有データベース801に返すことによって達成され、その結果、分類アルゴリズムは、一般的な患者データと患者固有データの両方に対して一緒に動作することができる。別の実施形態では、患者固有データは、WCDシステム821にローカルに記憶されてもよく、WCDシステム821に常駐するショックインデックスアルゴリズムのインスタンスは、着用している患者のための特注の係数を用いてローカルに実行する分類式を更新してもよい。十分な患者固有のデータが収集された場合、そのデータは、一般的なデータベースからのデータを置き換えることさえできる。このようにして、患者は、「応答」ボタンを押すことが有用であることを学習することができる。なぜなら、患者が「応答」ボタンを押すことが多いほど、アルゴリズムは患者の信号をよりよく学習するからである。
【0102】
ステップ903に戻ると、分類アルゴリズム850は、一般データベース811からの一般患者データおよび患者固有データベース801からの患者固有データを使用して、ショックインデックス式の係数を再び計算することができる。特定の実施形態では、患者固有データは、一般データベース811内のデータよりも大きな重みを与えられ得る。例えば、分類アルゴリズム850が患者ごとに係数を計算するように動作する場合、調整された係数は、WCDシステムが割り当てられる各患者について計算され得る。
【0103】
様々な他の実施形態および用途
上記で詳細に説明したように、本開示の実施形態は、ショック/非ショック決定において、機械学習とも呼ばれる人工知能方法を実施することができる。加えて、そのようなまたは同様の方法は、本開示の検討から当業者に明らかになるであろう種々の他の用途においても使用されることができる。2つのそのような用途は、(1)警告の訓練および/または管理、および(2)本明細書で説明されるような上室頻拍識別を含む。
【0104】
ショック警告トレーニングおよび管理
ノイズ検出アルゴリズムを使用して、ノイズが不適切なショックおよび不要なノイズアラートを引き起こすことを防止することができる。機械学習は、ノイズを識別し、ノイズがアルゴリズムによって誤って解釈されることを防止するのに役立ち得る。一実施例では、2段階プロセスは、(1)ノイズのある信号を識別して解析から除外することと、(2)ノイズのない信号を解析してショック/非ショック決定を行うこととを含む。一例では、(上述したような、または任意の他の方法による)アルゴリズムが、ショック/ノーショック決定において使用され得る。しかしながら、ある場合には、そのアルゴリズムで使用されるECG信号は、時には不十分に取り付けられたECGリードによって、または他の理由で引き起こされるノイズを受けやすいことがある。ノイズが長時間(例えば、5分間)持続する場合、患者は、彼らの衣服を調節するように警告され得る。
【0105】
ECG信号中のノイズを検出するための多くの技術が存在する。アルゴリズムは、例えば、ピークピーク振幅がノイズ閾値(例えば、5mV)よりも大きい場合、信号をノイズを有するものとして分類し得る。ノイズはまた、0交差をカウントすることによって、あるいは信号の周波数成分を調べることによって検出することができる。ノイズメトリックは、クリーンな信号とノイズの多い信号とを区別するために、個別にまたは併せて使用することができる。また、ノイズメトリックは、精度を改善するために、R-R変動性、QRS幅変動性、およびQRS構成などのECG測定値と組み合わせることもできる。チャネル間の心拍数の差は、ノイズを示し得る。1つまたは複数のリードをオフにすることはまた、雑音普及率(prevalence)を増加させ得る。
【0106】
加速度計解析はまた、ノイズ検出技術に含まれ得る。加速度計の周波数、振幅、デューティサイクル、および他の測定値を3つの軸で使用して、特定の患者活動の「シグネチャ」を得ることができる。歩行もしくはランニング、または歩き方のシグネチャは、衣服が装着されたときに生成され、将来の参照のために使用され得る。簡単に言えば、歩いたり走ったりする人は心停止していない。
【0107】
特定の実施形態によれば、心拍数「一致」は、マルチチャネルシステムの他のチャネル(チャネル「y」)が同様の心拍数を示すかどうかに基づいて各チャネル(チャネル「x」)に与えられるスコアである。高い一致スコアを有するチャネルは、正しい心拍数を有する可能性が最も高い。
【0108】
ここでは、4チャネルシステムの式の例を示す。
【0109】
【数1】
【0110】
所与のチャネルは、同じ心拍数を有する他のすべてのチャネルについて1の一致スコアを受け取る。類似しているが同一ではないチャネルは、部分スコアを受け取ることができる。4チャネルシステムでは、一致スコアは0~3の範囲であり得る。
【0111】
例えば、4つのチャネルの心拍数が100、120、105、および200である場合、上記の式を使用して計算される一致値は、それぞれ0.74、0.47、0.86、0.034である。
【0112】
雑音関連パラメータのセットが識別されると、機械学習を使用して、クリーン信号および雑音信号のデータベースを使用して「最良の」識別アルゴリズムを見つけることができる。例えば、1つのノイズ検出アルゴリズムは、以下の擬似式を使用することができる。
【0113】
ピーク-ピーク振幅>5mVの場合、信号はノイズが多い。
そうでない場合、
ノイズインデックス=A+B*構成+C*一致+D*構成*一致+E*構成^2+F*一致^2
ノイズインデックス>閾値の場合、信号はノイズが多い。
そうでなければ、信号はノイズが多くない。
【0114】
係数A、B、C、D、E、およびFの値は、信号の一般的なデータベースに基づく機械学習によって決定することができる。そのような係数の例示的な値は、以下であり得る。
【0115】
A=115、B=-75、C=-56、D=19、E=9.9、F=6.9。
【0116】
ノイズインデックス値を閾値と比較して、信号にノイズがあるかどうかを判定する。閾値の一例は、例えば25であってもよい。この例では、ノイズインデックス>25の信号は雑音が多いと考えられ得る。
【0117】
信号の大きなデータベースから導出されるこの実施形態は、適用可能な一例である。さらなる実施形態では、方法はまた、上述の教示を使用して個々の患者に対してさらに調整されてもよい。ある人が生成する雑音の性質、パターン、またはシグネチャは、別の人と同じでない場合があり、したがって、固定された閾値は、最適な性能を与えない場合がある。
【0118】
一実施形態では、雑音検出基準は、所与の患者についてクリーン信号のセットおよび雑音信号のセットを収集し、機械学習技法を使用してそれらを分類することによって、特定の患者信号に合わせて調整することができる。分類のためのデータセットは、単一の患者から収集された信号であり得るか、または患者のより大きな一般的データベースからのデータセットと組み合わされ得るか、またはその両方であり得る。
【0119】
様々な実施形態は、上記の説明に戻って参照すると、一般データベースは、信号を「ノイズの多い」または「ノイズの多くない」として分類するために専門家によって注釈を付けることができる。一般的なデータベースには、ショック適応リズムおよびショック非適応リズムの両方を含む、広範囲のECGリズムを含むことができる。好ましい実施形態では、クリーンな心室細動(VF)はノイズと区別することが困難であり得るので、心室細動(VF)も一般的なデータベースに含まれ得る。
【0120】
加えて、患者固有データベースは、自動測定、患者入力、および/または事後専門家解析の組み合わせ等の種々の基準に基づいて、「ノイズの多い」および「ノイズの多くない」として分類されてもよい。ノイズの多くない信号は、衣服が装着されている間に、および/または加速度計が動きを示さない静止期間中に、および/またはノイズインデックスが5以下などの低いノイズ値を示すときなどに、識別され得る。ノイズの多い信号は、(a)ノイズ閾値を超えることと、(b)不適切にショックアラームをもたらすこととの組み合わせによって識別することができる。ショックアラームは、患者が応答ボタンを押した場合、またはショックが与えられないが患者が後に正常なリズムに戻った場合に不適切であることが知られている。
【0121】
特定の実施形態では、患者がECGノイズを生成する共通の活動を有する場合、アルゴリズムは、それらの活動に対する不必要なアラートを回避するように訓練され得る。例えば、歯を磨いている間、芝生を刈っている間、またはオートバイに乗っている間にアラートが生成された場合、それらの信号は記録され、アラートを必要としない既知の活動として識別され得る。
【0122】
上室頻拍(SVT)識別
さらに他の実施形態では、AI法を用いてSVTをVTから識別することができる。従来のリズム解析アルゴリズムは、VT(ショックを必要とする)をSVT(ショックを受けるべきではない)と区別するために、QRS幅などの測定値を使用し得る。VTは一般に広いQRSコンプレックスを有するが、SVTは一般に狭い。120mSの閾値を臨床的に使用して、広いコンプレックスと狭いコンプレックスとを区別する。
【0123】
SVTをVTから識別する方法は、「テンプレート」、すなわちベースラインリズムとも呼ばれる正常なECGのスナップショットを使用することである。患者の測定されたECG信号の形態が変化する場合、VTであると疑われ得る。SVTは、典型的には、ベースラインリズムと同じ形態を有する。
【0124】
従来、SVT識別器はVTゾーンに適用される。VTゾーンは、170~200BPMの心拍数として定義することができるが、より低いまたはより高い限界も使用されている。
【0125】
何人かの患者は、常に広いコンプレックスを有し、したがって、QRS幅は、その患者らについてVTを区別し得る。しかしながら、一部の患者は、心拍数とともに変化する形態を有し、したがって、テンプレートは、それらの患者に対して機能しない場合がある。また、QRS形態は姿勢によって幾分変化するので、テンプレートベースの弁別器は、姿勢変化に基づくトリッピングを回避するのに十分に緩い限界を有する必要がある。
【0126】
本明細書に開示されるようなSVT識別の改善された方法は、機械学習を使用して、特定の患者についてVTをSVTからより良好に分離することである。一実施形態では、再び上記の議論を参照すると、本明細書に開示される方法は、一般的データベースからの既知のショック適応セグメントのセットを、特定の患者に対する既知のショック非適応セグメントのセットと組み合わせる。ECGセグメントは、患者が応答ボタンを押したため、またはショックが送達されず、患者のリズムが最終的にそれ自体で正常に戻ったためなど、上述のようにショック非適応として識別され得る。
【0127】
別の実施形態では、SVT識別法は、パラメータを組み合わせて処理し、上述したショックインデックスおよび/またはノイズインデックスに類似し得るSVTインデックスにする。因子としては、QRS幅、記憶されたテンプレートとの類似性、R-R間隔変動性、および開始時の心拍数の変化率が挙げられるが、これらに限定されない。もちろん、他の因子も含まれ得る。
【0128】
1つの特定の実施形態では、SVT弁別器は、VTゾーンに入るリズムにのみ適用され得る。別の実施形態では、SVT弁別器は、心拍数の全範囲にわたって適用され得る。SVT弁別器がVTゾーン内のリズムのみに適用される実施形態では、検出されたレートがVTゾーン内に入る場合、適切なデータベースおよび機械学習方法が使用され得る。例えば、ショック決定は、以下と同様の決定点を含むことができる。
【0129】
VT閾値未満の心拍数:ショックなし。
VF閾値を超える心拍数:ショック。
VTゾーンにおける心拍数:リズムが機械学習によって定義された基準を満たす場合にショック。そうでなければショックなし。
【0130】
開示された技術のさらに他の用途
本開示は、WCDによって使用され得る実施形態を説明するために書かれているが、他の実施形態は、特定の条件を検出するためにセットアップされた任意の長期モニタにおいて実装され得る。例えば、MCOT装置は、患者によって一定期間装着され、心房細動、心房粗動、心室期外収縮(PVC)、および他の異常を自動的に検出する。健康状態を監視および/または治療するように構成され得るシステムおよび方法は、検出の精度を改善するために、患者固有データベースと組み合わされた汎用データベースを使用して訓練され得る。
【0131】
WCD内では、AI学習を使用して、レート閾値未満および/または閾値境界(penumbra)の不整脈を検出して、変化の認識および決定信頼度をさらに高めることができる。例えば、高レート心房細動の陽性例が識別され分類された場合、この情報は患者固有のデータベースに格納することができる。その情報は、そうでなければ識別することが困難であり得る低レート心房細動を識別する際に有用であり得る。
【0132】
他の実施形態は、例えば、記載された実施形態とは異なる順序で特徴を提供または適用すること、一実施形態から個々の特徴を抽出し、そのような特徴を別の実施形態に挿入すること、一実施形態から1つ以上の特徴を除去すること、または一実施形態から1つ以上の特徴を除去し、1つ以上の他の実施形態から抽出された1つ以上の特徴を追加することの両方と等価である一方で、そのような組み合わせおよび部分的組み合わせに組み込まれた特徴の利点を提供する実施形態を含む、本明細書の図面に記載または図示される特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせを含む。この段落で使用されるように、1つまたは複数の特徴は、装置、製品またはシステムの構造および/または機能、および/または方法のステップ、動作、またはモダリティを指すことができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者固有の除細動器システムであって、
1つ以上のセンサと、
エネルギー貯蔵装置と、
1つ以上の治療電極と、
前記1つ以上のセンサ、前記エネルギー貯蔵装置、および前記治療電極に結合されたプロセッサを含み、
前記プロセッサが、
前記患者固有の除細動器システムが装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力される信号から導出される情報を解析するためのアルゴリズムを使用し、前記アルゴリズムは、前記患者固有の除細動器による治療の必要性を判定するために使用され、
前記アルゴリズムは、前記複数の異なる人から収集された前記データに対して実行された人工知能解析を使用して計算された係数を含み、
前記アルゴリズムはまた、前記1つ以上のセンサを使用して前記患者から収集されたデータに対して実行された前記人工知能解析から少なくとも部分的に導出される
ように構成された、
システム。
【請求項2】
前記プロセッサがローカルプロセッサを含み、
前記ローカルプロセッサが、ネットワークを介してリモートプロセッサと通信するようにさらに構成された、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アルゴリズムが、前記リモートプロセッサによる、前記複数の異なる人から収集された前記データの人工知能処理に少なくとも部分的に基づく、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記人工知能処理がロジスティック回帰分析を含む、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記アルゴリズムが以下の式に従ってインデックスを決定するように構成され、
インデックス=A*HR2+B*HR+C*幅2+D*幅+E、
ここで、HRは心拍数を指し、幅はQRSコンプレックスの幅を指し、係数A、B、C、D、およびEは、前記複数の異なる人から収集されたデータに適用される人工知能分類アルゴリズムを使用して決定される、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ローカルプロセッサが、前記解析された情報を前記ネットワークを介して前記リモートプロセッサに送信するようにさらに構成された、
請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ローカルプロセッサが、前記解析および分類された情報の前記人工知能解析から導出された前記情報を前記リモートプロセッサから受信するようにさらに構成された、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記治療が、前記エネルギー貯蔵装置から前記1つ以上の治療電極を通して送達されるショックを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、
患者による行動が発生したか否かに基づいて、前記解析された情報を分類し、
前記分類に基づいて、前記解析され分類された情報の前記人工知能解析から導出された情報で前記アルゴリズムを更新し、
前記更新されたアルゴリズムを使用して、前記患者固有の除細動器が装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された後続の情報を解析するようにさらに構成された、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記解析および分類された情報の人工知能処理から導出された情報を用いて前記アルゴリズムを更新することが、前記ローカルプロセッサ上で前記人工知能解析を実行することを含む、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記人工知能処理がロジスティック回帰分析を含む、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記患者による前記動作が、ショックが送達されようとしているという警告に対する応答を構成する、
請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記応答が、前記患者固有の除細動器システムが前記治療電極を使用して前記エネルギー貯蔵装置から患者にショックを送達してはならないという指示を構成する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
1つ以上のセンサと
前記1つ以上のセンサに結合されたプロセッサを含み、
前記プロセッサが、
前記着用型医療機器が装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された患者固有情報を記録し、
前記記録された情報を解析するためのアルゴリズムを実行し、前記アルゴリズムは、複数の異なる人から収集されたデータに少なくとも部分的に基づき、
前記記録された情報の人工知能解析を実行し、
前記導出された情報の前記人工知能解析から導出された更新情報で前記アルゴリズムを更新し、
前記更新されたアルゴリズムを使用して、前記着用型医療機器が装着されている間に前記1つ以上のセンサによって出力された信号から導出された後続の情報を解析するように構成された、
着用型医療機器。
【請求項15】
前記プロセッサが、ローカルプロセッサを含み、
前記ローカルプロセッサが、ネットワークを介してリモートプロセッサと通信するようにさらに構成された、
請求項14に記載の機器
【請求項16】
前記ローカルプロセッサが、前記記録された患者固有情報を前記リモートプロセッサに送信するようにさらに構成され、
前記リモートプロセッサが、前記記録された情報の前記人工知能解析を実行するように構成された、
請求項15に記載の機器
【請求項17】
前記着用型医療機器が、着用型自動除細動器(WCD)を含み、前記WCDが、エネルギー貯蔵装置および治療電極をさらに含み、さらに、前記プロセッサは、前記ショックが送達されるべきであることを示す前記アルゴリズムに部分的に基づいて、前記エネルギー貯蔵装置に、前記治療電極を通してショックを放電させるようにさらに構成された、
請求項14に記載の機器
【外国語明細書】