IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IDEC株式会社の特許一覧

特開2023-117430アクチュエータユニットおよび安全スイッチ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117430
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】アクチュエータユニットおよび安全スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 27/00 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H01H27/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020006
(22)【出願日】2022-02-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(57)【要約】
【課題】 アクチュエータ挿入孔に対する位置ずれを挿入方向と交差する任意の方向において吸収でき、耐久性を向上でき、位置ずれの吸収をスムーズに行えるようにする。
【解決手段】 アクチュエータユニット3において、アクチュエータ挿入孔20に挿入可能な先端部30を有するアクチュエータ3Aと、アクチュエータ挿入孔20への挿入方向である矢印A方向と交差する矢印B方向にアクチュエータ3Aの基端側端部35Bを移動自在に支持する支持部4とを設ける。支持部4は、ボール40と、これを自転自在に保持し、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bと別体に設けられ、矢印B方向に移動可能なリテーナ41とを有する。アクチュータ3Aの先端部30とアクチュエータ挿入孔20との位置ずれδは、リテーナ41の矢印B方向への移動およびリテーナ41に対するアクチュエータ3Aの基端側端部35Bの矢印B方向への相対移動により吸収される。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータユニットであって、
アクチュエータ挿入孔に挿入可能な先端部を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータの基端側端部を前記アクチュエータ挿入孔に対する前記アクチュエータの挿入方向である第1の方向と交差する第2の方向に移動自在に支持する支持部とを備え、
前記支持部が、ボールと、前記ボールを自転自在に保持し、前記アクチュエータの前記基端側端部と別体に設けられるとともに、前記第2の方向に移動可能な保持部とを有し、
前記アクチュエータの前記先端部と前記アクチュエータ挿入孔との位置ずれが、前記保持部の前記第2の方向への移動および前記保持部に対する前記アクチュエータの前記基端側端部の前記第2の方向への相対移動により、吸収されるようになっている、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクチュエータの前記先端部と前記アクチュエータ挿入孔との位置ずれをδとし、前記保持部の前記第2の方向への移動量をh、前記保持部に対する前記アクチュエータの前記基端側端部の前記第2の方向への相対移動量をbとするとき、
δ=h+b
の関係式が成立している、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項3】
請求項1において、
前記アクチュエータには、当該アクチュエータを前記第2の方向において弾性的に支持する第1の弾性支持部材が設けられている、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項4】
請求項1において、
前記支持部には、前記保持部を前記第2の方向において弾性的に支持する第2の弾性支持部材が設けられている、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項5】
請求項1において、
前記アクチュエータが前記先端部および前記基端側端部の間に延びており、前記基端側端部および前記支持部がケースに収容されるとともに、前記ケースが前記アクチュエータの前記第2の方向への移動を許容する開孔を有している、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項6】
請求項1において、
前記アクチュエータの前記先端部がテーパー状面または凸円弧状面を有している、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項7】
請求項1において、
前記アクチュエータの前記先端部が係止孔を有しており、前記係止孔が、前記アクチュエータ挿入孔を有するスイッチ本体の内部の係止部材に係止されるようになっている、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項8】
請求項1において、
前記アクチュエータが前記先端部および前記基端側端部の間に延びる軸部を有し、前記軸部と前記先端部との間に段差が形成されており、前記段差が、前記アクチュエータ挿入孔を有するスイッチ本体の内部の係止部材に係止されるようになっている、
ことを特徴とするアクチュエータユニット。
【請求項9】
請求項1に記載の前記アクチュエータユニットと、
前記アクチュエータ挿入孔を有するスイッチ本体と、
を備えた安全スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータユニットおよびこれを備えた安全スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械や産業用ロボットなどの産業用機械が設置された危険区域の出入口には、扉の開閉状態に応じてオン/オフする安全スイッチが設けられている。
【0003】
一般に、安全スイッチは、扉側に配置されるアクチュエータと、壁側に配置され、アクチュエータ挿入孔を有するとともに、内部の操作ロッドの動きに応じて接点が切り替えられるスイッチ本体とを備えており、扉の閉塞時に扉側のアクチュエータが壁側のスイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に挿入され、スイッチ本体の内部の操作ロッドが移動して接点が切り替えられるようになっている。
【0004】
このような安全スイッチにおいては、扉のガタツキや扉自体の位置ずれ等によって、アクチュエータがアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれを生じ、その結果、扉の閉塞時にアクチュエータがアクチュエータ挿入孔に対してスムーズに挿入できない場合が起こり得る。そこで、このような事態の発生を防止するために、これまで種々の方策が講じられてきた。
【0005】
たとえば、特開2017-91877号公報に記載のアクチュエータにおいては、操作キー(2)をベース(3)に揺動可能に支持させるとともに、ねじりコイルばね(41)の付勢力によって、揺動後の操作キー(2)を基準位置に復帰させるようにしたことにより、扉のがたつきが大きい場合でも、操作キー(2)の挿入時には操作キー(2)が揺動することで、操作キー(2)がスイッチ本体のキー挿入口(103、104)に差し込まれるようにしている(同公報の段落[0037]、[0038]、[0044]、図1図13図15参照)。
【0006】
特開平8-138500号公報に記載のキースイッチにおいては、操作キー(3)のキー本体(9)をホルダー部(8)の支軸部(12)にスライド自在に設けるとともに、弾性体(13)の付勢力によって、キー本体(9)をスライド中立位置に配置させるようにしたことにより、操作キー(3)およびスイッチ本体(2)に組付け誤差や位置ずれが生じた場合でも、操作キー(3)の挿入時には操作キー(3)がスライド移動することで、操作キー(3)がスイッチ本体(2)のキー孔(6)に挿入されるようにしている(同公報の段落[0009]、[0020]、図1図3参照)。
【0007】
特開平11-317132号公報に記載の安全スイッチ用駆動子においては、キー(2)の基部(3)を円形のPTFE製スライドベアリング(またはローラーベアリング)(9)を介してホルダー(1)に摺動し得るように取り付けるとともに、ばね(10)によってキー(2)を中心位置に付勢するようにしたことにより、キー(2)の基部(3)をスライドベアリング(9)の取付面に沿って変位させることで、駆動子と安全スイッチの挿入スロットとの間の不整合が補正されるようにしている(同公報の請求項1、段落[0011]、[0012]、図1図3図4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開2017-91877号公報に記載のものでは、操作キー(2)とスイッチ本体(100)のキー挿入口(103、104)との間に位置ずれがあるとき、操作キー(2)のキー挿入口(103、104)への挿入時に操作キー(2)が揺動することで位置ずれを吸収するようになっているので、操作キー(2)の揺動方向(つまり揺動面内)の位置ずれに対しては対応可能であるが、揺動方向と交差(たとえば直交)する方向の位置ずれには対応できない。
【0009】
特開平8-138500号公報に記載のものでは、操作キー(3)のキー本体(9)とスイッチ本体(2)のキー孔(6)との間に位置ずれがあるとき、キー本体(9)のキー孔(6)への挿入時にキー本体(9)がスライド移動することで位置ずれを吸収するようになっているので、キー本体(9)のスライド方向(つまりスライド面内)の位置ずれに対しては対応可能であるが、スライド方向と交差(たとえば直交)する方向の位置ずれには対応できない。
【0010】
これに対して、特開平11-317132号公報に記載のものでは、キー(2)と安全スイッチの挿入スロットとの間に位置ずれがあるとき、キー(2)の挿入スロットへの挿入時にキー(2)がスライドベアリング(9)の取付面に沿って移動することで位置ずれを吸収するようになっているので、任意の方向の位置ずれに対応可能である。
【0011】
しかしながら、キー(2)と安全スイッチの挿入スロットとの間に位置ずれがある状態で扉を閉めたとき、キー(2)の基部(3)には、扉の慣性に伴う過大な衝撃荷重が作用し、これがそのままPTFE製スライドベアリングに作用するため、PTFE製スライドベアリングが破損する恐れがあり、耐久性に問題がある。なお、特開平11-317132号公報に記載のものでは、PTFE製スライドベアリングの代わりにローラーベアリングを用いてもよい旨記載されているが、ローラーベアリングを用いた場合には、キー(2)の基部(3)がローラーベアリングの転動方向にしか変位することができないため、転動方向の位置ずれに対しては対応可能であるが、転動方向と交差(たとえば直交)する方向の位置ずれには対応できない。
【0012】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、アクチュエータ挿入孔に対する位置ずれを挿入方向と交差する任意の方向において吸収できるだけでなく、耐久性を向上でき、さらに、位置ずれの吸収をスムーズに行うことができるアクチュエータユニットおよびこれを備えた安全スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るアクチュエータユニットは、アクチュエータ挿入孔に挿入可能な先端部を有するアクチュエータと、アクチュエータの基端側端部をアクチュエータ挿入孔に対するアクチュエータの挿入方向である第1の方向と交差する第2の方向に移動自在に支持する支持部とを備えている。支持部は、ボールと、ボールを自転自在に保持し、アクチュエータの基端側端部と別体に設けられるとともに、第2の方向に移動可能な保持部とを有している。アクチュエータの先端部とアクチュエータ挿入孔との位置ずれは、保持部の第2の方向への移動および保持部に対するアクチュエータの基端側端部の第2の方向への相対移動により、吸収されるようになっている。
【0014】
本発明によれば、アクチュエータの基端側端部が、自転自在なボールおよびこれを保持しかつ第2の方向に移動可能な保持部を備えた支持部により、アクチュエータの挿入方向である第1の方向と交差する第2の方向に移動自在に支持されるとともに、アクチュエータの先端部とアクチュエータ挿入孔との位置ずれが、アクチュエータの基端側端部および保持部の第2の方向への移動により吸収されるので、アクチュエータ挿入孔に対する位置ずれを挿入方向と交差する任意の方向において吸収できるようになる。しかも、本発明によれば、アクチュエータの基端側端部が自転自在なボールを有する支持部により支持されているので、アクチュエータ挿入孔に対する位置ずれの発生時にアクチュエータの先端部に過大な荷重が作用することでアクチュエータの基端側端部に過大なスラスト荷重が作用した場合でも、アクチュエータの基端側端部を支持部のボールにより確実に支承でき、これにより、アクチュエータユニットの耐久性を向上できる。また、転がり摩擦は滑り摩擦よりもはるかに小さいため、ボールを用いることにより、スライドベアリングを用いる場合よりも摩擦係数を小さくでき、これにより、アクチュエータの円滑な動きを実現でき、耐久性を一層向上できる。
【0015】
さらに、本発明によれば、ボールを自転自在に保持しかつ第2の方向に移動可能な保持部がアクチュエータの基端側端部と別体に設けられているので、アクチュエータの挿入時にアクチュエータの先端部がアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれを生じている際には、保持部がボールの自転を許容しつつアクチュエータの基端側端部に拘束されることなく第2の方向に移動する。これにより、アクチュエータの基端側端部が第2の方向にスムーズに移動することができ、位置ずれの吸収をスムーズに行えるようになる。
【0016】
本発明では、アクチュエータの先端部とアクチュエータ挿入孔との位置ずれをδとし、保持部の第2の方向への移動量をh、保持部に対するアクチュエータの基端側端部の第2の方向への相対移動量をbとするとき、δ=h+bの関係式が成立している。
【0017】
本発明では、アクチュエータを第2の方向において弾性的に支持する第1の弾性支持部材がアクチュエータに設けられている。この場合には、移動後のアクチュエータを第1の弾性支持部材の付勢力で移動前の元の位置に戻すことができる。
【0018】
本発明では、保持部を第2の方向において弾性的に支持する第2の弾性支持部材が支持部に設けられている。この場合には、移動後の保持部を第2の弾性支持部材の付勢力で移動前の元の位置に戻すことができる。
【0019】
本発明では、アクチュエータが先端部および基端側端部の間に延びており、基端側端部および支持部がケースに収容されるとともに、ケースがアクチュエータの第2の方向への移動を許容する開孔を有している。
【0020】
本発明では、先端部がテーパー状面または凸円弧状面を有している。この場合には、位置ずれにより先端部がアクチュエータ挿入孔の開口縁部に当接したとき、アクチュエータの基端側端部が位置ずれを吸収する側にスムーズに移動できるようになる。
【0021】
本発明では、アクチュエータの先端部が係止孔を有しており、当該係止孔が、アクチュエータ挿入孔を有するスイッチ本体の内部の係止部材に係止されるようになっている。
【0022】
本発明では、アクチュエータが先端部および基端側端部の間に延びる軸部を有し、軸部と先端部との間に段差が形成されており、段差が、アクチュエータ挿入孔を有するスイッチ本体の内部の係止部材に係止されるようになっている。
【0023】
本発明に係る安全スイッチは、本発明に係るアクチュエータユニットと、アクチュエータ挿入孔を有するスイッチ本体とを備えている。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、アクチュエータの先端部とアクチュエータ挿入孔との位置ずれを挿入方向と交差する任意の方向において吸収できるようになる。しかも、本発明によれば、位置ずれの発生時にアクチュエータの先端部に過大な荷重が作用することでアクチュエータに過大なスラスト荷重が作用した場合でも、アクチュエータの基端側端部を支持部のボールにより確実に支承でき、アクチュエータユニットの耐久性を向上できる。さらに、本発明によれば、アクチュエータの基端側端部が第2の方向にスムーズに移動することができ、位置ずれの吸収をスムーズに行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例によるアクチュエータユニットおよびスイッチ本体を備えた安全スイッチを前方側から見た全体斜視図である。
図2】前記安全スイッチ(図1)を後方側から見た全体斜視図である。
図3】前記安全スイッチ(図1)の正面図である。
図4】前記安全スイッチ(図1)の平面図である。
図5】前記アクチュエータユニット(図1)の縦断面図である。
図6】前記アクチュエータユニット(図5)を前方側斜め上方から見た図である。
図7】前記アクチュエータユニット(図5)を斜め上方から見た図である。
図8】前記アクチュエータユニット(図5)においてアクチュエータを取り除いた状態を前方側斜め上方から見た図である。
図9】前記アクチュエータユニット(図5)において、アクチュエータおよびパッキンを取り除いた状態を示す図である。
図10図9のX-X線横断面図である。
図11図9のXI-XI線横断面図である。
図12】前記アクチュエータユニット(図11)を斜め後方から見た図である。
図13】前記アクチュエータユニット(図11)において、ボールおよびリテーナを含むボールベアリング構造体の全体斜視図である。
図14】前記アクチュエータユニット(図5)の模式図である。
図15】前記アクチュエータユニット(図14)のアクチュエータがスイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれがある場合において、前記アクチュエータの移動後の状態を示す模式図である。
図16図15をさらに簡略化して示す図であって、(a)はアクチュエータの移動前の状態を示し、(b)はアクチュエータの移動後の状態を示している。
図17】前記安全スイッチ(図1)において、前記アクチュエータユニットが前記スイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれがない状態を示す図である。
図18】前記安全スイッチ(図1)において、前記アクチュエータユニットが前記スイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれがある場合において、アクチュエータの移動を時系列的に示す図であって、前記アクチュエータの挿入前の状態を示している。
図19】前記安全スイッチ(図1)において、前記アクチュエータユニットが前記スイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれがある場合において、アクチュエータの挿入時の作動を時系列的に示す図であって、前記アクチュエータの挿入途中の状態を示している。
図20】前記安全スイッチ(図1)において、前記アクチュエータユニットが前記スイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれがある場合において、アクチュエータの挿入時の作動を時系列的に示す図であって、前記アクチュエータの挿入後の状態を示している。
図21図20のXXI-XXI線断面概略図である。
図22】本発明の変形例によるアクチュエータユニットおよびスイッチ本体を備えた安全スイッチにおいて、前記アクチュエータユニットが前記スイッチ本体のアクチュエータ挿入孔に対して位置ずれがある場合において、アクチュエータの挿入前の状態を示している。
図23】前記安全スイッチ(図22)において、前記アクチュエータの挿入後の状態を示しており、前記実施例の図21に相当している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図4は、本発明の一実施例によるアクチュエータユニットおよびこれを備えた安全スイッチを説明するための図であって、各図は安全スイッチの外観を示しており、図1および図2は安全スイッチの斜視図、図3はその正面図、図4は平面図である。
【0027】
図1ないし図4に示すように、本実施例による安全スイッチ1は、たとえば壁または固定扉(図示せず)に取り付けられるスイッチ本体2と、たとえばスライド式の可動扉(図示せず)に取り付けられ、スイッチ本体2に対して抜き差し可能に設けられたアクチュエータユニット3とを備えている。各図中、矢印Aはアクチュエータユニット3の挿入方向(第1の方向)を示している。
【0028】
スイッチ本体2は、一つまたは複数のアクチュエータ挿入孔20を有している。アクチュエータ挿入孔20は、スイッチ本体2の壁部を貫通する、たとえば横断面矩形状の貫通孔であって、その開口縁部は、スイッチ本体2の壁部の外表面からスイッチ本体2の内方に向かうにしたがい徐々に開口幅が小さくなるテーパー面20aを有している。図4中、一点鎖線2Cは、アクチュエータ挿入孔20の中心線を示している。なお、図示していないが、スイッチ本体2の内部には、切替え可能な接点が設けられるとともに、挿入されたアクチュエータユニット3に係止する係止部材(後述)が設けられている。
【0029】
アクチュエータユニット3は、スイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20に挿入可能な先端部30を有するアクチュエータ3Aと、アクチュエータ3Aの基端側端部(後述)を収容するベース部3Bとを有している。先端部30は、たとえば板状(つまり横断面矩形状)であって、その先端側の各角部には、面取りによる平坦状の傾斜面30tがそれぞれ形成されており、先端側部分は先端に向かうにしたがい徐々に先細りとなるテーパー状面を有している。なお、傾斜面の代わりにアール面(つまり凸円弧状面)を形成するようにしてもよく、また、先端側部分全体が凸円弧状面を形成するようにしてもよい。先端部30には、先端部30を厚み方向に貫通する、たとえば矩形状の係止孔30bが形成されている。図4中、一点鎖線3Cは、アクチュエータ3Aの長手方向の中心線を示しており、この例では、中心線3Cがスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20の中心線2Cと一致した状態が示されている。
【0030】
ベース部3Bは、アクチュエータ3Aの基端側端部(後述)を収容する箱状のケース32と、ケース32においてアクチュエータ3A側と逆側の背面側開口を覆う薄板状の蓋体33とを有している。ケース32および蓋体33には、アクチュエータユニット3を可動扉に取り付けるための取付ねじ(図示せず)が挿入される複数のねじ挿入孔32b、33bがそれぞれ形成されている。なお、図2中の符号33cは、蓋体33をケース32に固定するための取付ねじ(図示せず)が挿入されるねじ挿入孔である。
【0031】
次に、アクチュエータ3Aの基端側端部およびこれを支持する支持部の詳細について、図5ないし図13を用いて説明する。図5ないし図9はアクチュエータユニット3の縦断面を示し、図10ないし図12はその横断面を示し、図13は支持部の全体構成を示している。なお、各断面図のうち、図5においてのみ断面をハッチングで示しており、他の図ではハッチングを省略している。
【0032】
図5ないし図9に示すように、アクチュエータ3Aの基端部31は、半径方向外方に延びる略菱形状の板状部から構成されており(図1参照)、その中央のボス部31Cには、軸方向に延びるねじ穴(雌ねじ)31cが形成されている。一方、ケース32内には、軸方向に延びるねじ34が配設されており、ねじ34の軸部(雄ねじ)34aはボス部31Cのねじ穴31cに螺合して固着されている。ねじ34の軸部34aの外周には、フランジ部材35が固定されている。フランジ部材35は、基端側において軸方向の間隔35Cを隔てて配置されるとともにそれぞれ半径方向外方に張り出すフランジ部35B、35B’を有している。フランジ部35Bが最基端側に配置されている。
【0033】
ねじ34の軸部34aおよびフランジ部材35は、ケース32の一端側の壁部32Aに貫通形成された開孔32aを挿通してケース32の外部まで延びている。開孔32aの内径は、開孔32a内に配置されたフランジ部材35の外径よりも大きくなっており、開孔32aとフランジ部材35の間には、フランジ部材35の半径方向の移動を許容し得るクリアランスが形成されている。フランジ部材35の先端部35Aは、アクチュエータ3Aの基端部31に形成された凹部31d内に配置されている。凹部31d内には、たとえばゴム製のパッキン36が設けられており、パッキン36の一端は、フランジ部材35の先端部35Aに固着されている。パッキン36の他端は、たとえば樹脂製のリング状のシール部材37に固着されている。シール部材37は、ケース32の壁部32Aに形成された開孔32aの外周側に配置されており、壁部32Aの外側面32c上を開孔32aの任意の半径方向にスライド可能に設けられている。
【0034】
アクチュエータ3A、ねじ34、フランジ部材35、パッキン36およびシール部材37は、全体として一体に構成されており、よって、フランジ部材35の最基端側のフランジ部35Bが実質的にアクチュエータ3Aの基端側端部を構成している。フランジ部材35の最基端側のフランジ部35Bと蓋体33との間には、最基端側のフランジ部(すなわち、アクチュエータ3Aの基端側端部)35Bと別体で設けられ、フランジ部35Bを任意の半径方向にスライド可能に支持する支持部4が設けられている。支持部4は、複数のボール40を有し、アクチュエータ3Aの挿入方向である矢印A方向(第1の方向)と交差する(好ましくは直交する)矢印B方向(第2の方向)に移動可能なボールベアリング構造体から構成されており、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bを矢印B方向に移動自在に支持している(詳細は後述)。なお、矢印B方向としては、図5の紙面内に限らず、矢印A方向と交差(好ましくは直交)する任意の方向、すなわち、軸方向と交差(好ましくは直交)する任意の半径方向を含む。
【0035】
ケース32の内部空間32C内には、フランジ部材35およびねじ34を介してアクチュエータ3Aを矢印B方向において弾性的に支持するねじりコイルばね(第1の弾性支持部材)38、38’が設けられている。ねじりコイルばね38、38’は、フランジ部材35の各フランジ部35B、35B’の間に配設されており、たとえばピアノ線のような高張力鋼線やその他の鋼線、金属線等から構成されている。
【0036】
図9のX-X線断面である図10に示すように、ねじりコイルばね38は、左右一対のねじりコイルばね38、38から構成されており、各ねじりコイルばね38、38は、ケース32の壁面から延びる柱状のポスト39、39にそれぞれ取り付けられている。各ねじりコイルばね38、38の一方のアーム部はケース32の上側の内壁面に係止され、他方のアーム部はフランジ部材35の外周面に左右から挟持するように弾性的に当接している。同様に、ねじりコイルばね38’は、左右一対のねじりコイルばね38’、38’から構成されており、各ねじりコイルばね38’、38’は、ケース32の壁面から延びるポスト39’、39’にそれぞれ取り付けられている。各ねじりコイルばね38’、38’の一方のアーム部はケース32の下側の内壁面に係止され、他方のアーム部はフランジ部材35の外周面に左右から挟持するように弾性的に当接している。
【0037】
この構成により、フランジ部材35は(したがって、アクチュエータ3Aについても)外周側から弾性的に支持されており、フランジ部材35が半径方向のいずれの方向(つまり矢印B方向)に移動した場合でも、ねじりコイルばね38、38、38’、38’のアーム部の弾性変形に伴う弾性反発力の作用により、フランジ部材35(したがってアクチュエータ3A)が元の位置に戻るようになっている。よって、ねじりコイルばね38、38、38’、38’はアクチュエータ3Aに対する自動調心機能を有している。
【0038】
図9およびそのXI-XI線断面である図11、ならびに図12および図13に示すように、支持部4は、フランジ部35Bの側面35dに当接し得る、たとえば鋼鉄製の複数(この例では6個)のボール(つまり鋼球)40と、各ボール40をそれぞれ自転自在に支持するためのたとえば樹脂製のリテーナ(保持部)41とを有している。各ボール40は、蓋体33の内側面に対しても当接し得るように設けられている。なお、図5ないし図8では、図示の便宜上、各ボール40とフランジ部35Bの側面35dとの間に間隙が形成されたものが示されているが、各ボール40は、図9に示すように、フランジ部35Bの側面35dに当接しているのが好ましい。
【0039】
リテーナ41は、フランジ部材35の最基端側のフランジ部(すなわち、アクチュエータ3Aの基端側端部)35Bと別体に設けられた概略リング状の部材であって、各ボール40をそれぞれ自転自在に支持する円筒状の複数(この例では6個)の保持孔41aを有している。各保持孔41aは、円周上に好ましくは均等間隔で配置されている。リテーナ41は、リテーナ41の内部空間に延びるとともに、樹脂板ばねとして作用し得る複数(この例では3個)の板状のアーム状部材(第2の弾性支持部材)42を有しており、各アーム状部材42の一端はリテーナ41の外周側のリング状部に固着され、他端(自由端)はリテーナ41の中央に配置されている。また、リテーナ41は、リテーナ41の内部空間に配設された複数(この例では3個)の圧縮ばね(第2の弾性支持部材)43を有しており、各圧縮ばね43の一端はリテーナ41の外周側のリング状部に圧接し、他端はリテーナ41の中央に配置されて、対応する各アーム状部材42の他端に圧接している。これにより、各アーム状部材42の他端は、ねじ34の外周面に弾性的に当接している。
【0040】
この構成により、リテーナ41は内周側から弾性的に支持されており、リテーナ41が半径方向のいずれの方向に移動した場合でも、各アーム状部材42および各圧縮ばね43の弾性変形に伴う弾性反発力の作用により、リテーナ41が移動前の元の位置に戻るようになっている。よって、各アーム状部材42および各圧縮ばね43はリテーナ41に対する自動調心機能を有している。
【0041】
次に、本実施例の作用効果について、図1ないし図4を参照しつつ、図14ないし図21を用いて説明する。なお、図14ないし図16は、図5を簡略化して示す模式図であり、図17ないし図21は、アクチュエータ挿入時の作動を時系列的に示す図である。
【0042】
図1ないし図4に示す状態から、可動扉を閉塞方向に移動させると、アクチュエータユニット3のアクチュエータ3Aが矢印A方向に移動し、図17および図21に示すように、アクチュエータ3Aがスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20を通ってスイッチ本体2の内部に挿入される。この挿入の際には、アクチュエータ3Aの中心線3Cはスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20の中心線2Cと一致しており(図4図17参照)、そのため、アクチュエータ3Aの先端部30は、アクチュエータ挿入孔20のテーパー面20aと干渉することなく、スイッチ本体2の内部にスムーズに挿入される。アクチュエータ3Aの挿入後は、図21に示すように、スイッチ本体2の内部の係止部材SRにより、アクチュエータ3Aの先端部30の係止孔30bが係止され、これにより、アクチュエータ3Aがロックされて抜け止めがなされる。この状態から、スイッチ本体2の内部の接点(図示せず)が切り替わって、ロボット等の機械の駆動が開始される。
【0043】
次に、図18に示すように、アクチュエータ3Aの中心線3Cがスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20の中心線2Cに対して位置ずれを起こしていたとし、そのときの位置ずれの量(位置ずれ)をδとする。ここでは、中心線3Cが中心線2Cに対して下方に距離δだけ位置ずれを起こしている場合を例にとる。
【0044】
この状態から、可動扉を閉塞方向に移動させると、アクチュエータユニット3のアクチュエータ3Aが矢印A方向に移動し、図19に示すように、アクチュエータ3Aの先端部30がスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20のテーパー面20aに当接する。このとき、テーパー面20aには先端部30の傾斜面30tが当接しており、そのため、可動扉の閉塞中には、先端部30の傾斜面30tがテーパー面20aに沿ってテーパー面20a上を摺動しつつ図示斜め上方に移動しようとする。このとき、アクチュエータ3Aは、ベース部3Bと一体となって前方(図19左方)に移動するとともに、ベース部3Bに対して矢印A方向と交差(好ましくは直交)する矢印B方向に相対移動する(図20参照)。
【0045】
ここで、上述したように、アクチュエータ3Aは、ねじ34、フランジ部材35、パッキン36およびシール部材37と一体に構成されており、そのため、アクチュエータ3Aの矢印B方向への移動の際には、アクチュエータ3A、ねじ34、フランジ部材35、パッキン36およびシール部材37が一体となって(したがって、シール部材37はケース32の壁部32Aの外側面32c上をスライドしつつ)移動する。
【0046】
このときのアクチュエータユニット3の作動を図14ないし図16の模式図を用いて説明する。
図14図18および図19に対応し、図15図20に対応している。また、図16(a)は図18および図19に対応し、図16(b)は図20に対応している。
【0047】
アクチュエータ3Aの先端部30がスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20のテーパー面20aに当接する前の状態においては、図14に示すように、アクチュエータ3Aはケース32の開孔32aの中央(または略中央)に配置され、各ねじりコイルばね38、38’により開孔32aの中央で弾性支持されている。また、支持部4のリテーナ41は、各圧縮ばね43によりアクチュエータ3Aと同心(または略同心)に弾性支持されている。
【0048】
次に、アクチュエータ3Aの先端部30がスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20のテーパー面20aに当接すると、図14において、アクチュエータ3Aと一体に設けられたフランジ部材35の最基端側のフランジ部(すなわち、アクチュエータ3Aの基端側端部)35Bが支持部4のボール40に圧接して、ボール40がフランジ部35Bおよび蓋体33間で挟持される。
【0049】
この状態から、アクチュエータ3Aが矢印B方向に移動を開始すると、図15に示すように、アクチュエータ3Aとともにフランジ部35Bが同方向に移動することにより、フランジ部35Bがボール40を図示右方(つまり矢印B方向)に転がり運動させる。この転がり運動の際には、ボール40は蓋体33の上を転がり移動するが、ボール40を支持するリテーナ41がフランジ部35Bと別体に設けられているので、リテーナ41はフランジ部35Bに拘束されることなく矢印B方向に移動する。このとき、リテーナ41およびボール41を含む支持部4全体が移動するので、フランジ部35Bも矢印B方向に移動する。また、ボール40の転がり運動の際には、ボール40がリテーナ41内で自転する。ボール40の自転により、ボール40がころがり接触するフランジ部35Bが矢印B方向に移動する。このフランジ部35Bの移動は、リテーナ41に対する相対移動である。
【0050】
このように、アクチュエータ3Aが矢印B方向に移動する際には、アクチュエータ3Aとともに移動するフランジ部35Bの移動量は、リテーナ41(したがって、支持部4)が矢印B方向に移動することによる移動量に、フランジ部35Bがリテーナ41に対して相対移動することによる移動量を加えたものになる。そして、フランジ部35Bのトータルの移動量がアクチュエータ3Aの位置ずれδに等しくなったとき、アクチュエータ3Aの位置ずれが吸収されたことになる。このとき、図20に示すように、アクチュエータ3Aがアクチュエータ挿入孔20を通ってスイッチ本体2の内部に挿入されており、スイッチ本体2の内部の係止部材SRにより、アクチュエータ3Aの先端部30の係止孔30bが係止されて、アクチュエータ3Aがロックされる(図21参照)。
【0051】
ここで、図16(a)はアクチュエータ3Aの移動前の状態を、同図(b)はアクチュエータ3Aの移動後の状態をそれぞれ模式的に示している。各図中、ボール40とフランジ部35Bおよび蓋体33との各接触点を黒丸で示すとともに、各接触点を線分dで結んでおり、ボール40の直径をd(半径をr)とする。また、白抜きの三角は、フランジ部35Bおよび蓋体33において、黒丸に対応する位置をそれぞれ示している。
【0052】
図16(b)において、ボール40が蓋体33上を転がり運動することによるボール40の蓋体33に対する移動量をhとし、このときのボール40の回転角をθとすると、
=rθ …(1)
と表せる。ボール40の転がり運動によるリテーナ41の移動量をhとすると、
=h …(2)
である。また、ボール40の転がり運動の際の自転により、ボール40が転がり接触するフランジ部35の移動量をbとすると、
b=rθ …(3)
と表せる。(1)ないし(3)式より、
b=h …(4)
となる。アクチュエータ3Aのトータルの移動量δは、
δ=h+b=2h (∵(4)式)
であり、ここで、hをhで置き換えると、
δ=2h
∴h=δ/2 …(5)
となる。
(5)式は、アクチュエータ3Aに位置ずれがあるとき、リテーナ41がその半分の距離だけ移動すれば、アクチュエータ3Aの位置ずれが吸収できるということを表している。なお、図16では、h=h=2.5(mm)、b=2.5(mm)、δ=5.0(mm)の例を示している。
【0053】
以上をまとめると、アクチュエータ3Aの先端部30とスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20との位置ずれδは、リテーナ41の矢印B方向への移動およびリテーナ41に対するアクチュエータ3Aの基端側端部であるフランジ部35Bの矢印B方向への相対移動により吸収されるようになっており、位置ずれδは、リテーナ41の矢印B方向への移動量をh、リテーナ41に対するフランジ部35Bの矢印B方向への相対移動量をbとするとき、δ=h+bの関係式を満足している。さらに、ボール40とフランジ部35Bおよび蓋体33との間に滑りがない場合、h=bであることにより、δ=2hの関係式が成立している。
【0054】
このように本実施例によれば、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bが、自転自在なボール40およびこれを保持しかつ基端側端部35Bと別体のリテーナ41を備えた支持部4により、アクチュエータ3Aの挿入方向である矢印A方向と交差する矢印B方向に移動自在に支持されるとともに、アクチュエータ3Aの先端部30とアクチュエータ挿入孔20との位置ずれが、リテーナ41の矢印B方向への移動およびリテーナ41に対する基端側端部35Bの矢印B方向への相対移動により吸収されるので、アクチュエータ挿入孔20に対する位置ずれを挿入方向と交差する任意の方向において吸収できるようになる。
【0055】
しかも、本実施例によれば、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bが自転自在なボール40を有する支持部4により支持されているので、アクチュエータ挿入孔20に対する位置ずれの発生時にアクチュエータ3Aの先端部30に過大な荷重が作用することでアクチュエータ3Aの基端側端部35Bに過大なスラスト荷重が作用した場合でも、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bを支持部4のボール40により確実に支承でき、これにより、アクチュエータユニット3の耐久性を向上できる。また、転がり摩擦は滑り摩擦よりもはるかに小さいため、ボール40を用いることにより、スライドベアリングを用いる場合よりも摩擦係数を小さくでき、これにより、アクチュエータ3Aの円滑な動きを実現でき、耐久性を一層向上できる。
【0056】
さらに、本実施例によれば、ボール40を自転自在に保持しかつ矢印B方向に移動可能なリテーナ41がアクチュエータ3Aの基端側端部35Bと別体に設けられているので、アクチュエータ3Aの挿入時にアクチュエータ3Aの先端部30がアクチュエータ挿入孔20に対して位置ずれを生じている際には、リテーナ41がボール40の自転を許容しつつアクチュエータ3Aの基端側端部35Bに拘束されることなく矢印B方向に移動する。これにより、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bが矢印B方向にスムーズに移動することができ、位置ずれの吸収をスムーズに行えるようになる。
【0057】
また、アクチュエータ3Aの先端部30がスイッチ本体2の内部に挿入されたとき、アクチュエータ3Aはベース部3Bに対して上方に移動しているが(図20参照)、このとき、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bも上方に移動しており、図10中の上側のねじりコイルばね38、38を上方に弾性変形させている。よって、このとき、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bの外周面には、ねじりコイルばね38、38の弾性変形にともなう弾性反発力が下方に作用している。
【0058】
そのため、可動扉の開放の際、可動扉の移動にともなってアクチュエータ3Aの先端部30がスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20から離反するとき、アクチュエータ3Aの基端側端部35Bに作用するねじりコイルばね38、38の弾性反発力により、アクチュエータ3Aは下方に移動して、挿入前の状態に戻る。
【0059】
前記実施例では、アクチュエータ3Aがアクチュエータ挿入孔20に対して下方に位置ずれを起こしていることにより、位置ずれの吸収時にアクチュエータ3Aの基端側端部35Bが上側のねじりコイルばね38、38を上方に弾性変形させる場合を例にとって説明したが、上方への位置ずれの場合には、基端側端部35Bが下方のねじりコイルばね38’、38’に当接してこれらを下方に弾性変形させ、左右への位置ずれの場合には、基端側端部35Bがねじりコイルばね38、38’または38、38’に当接してこれらのねじりコイルばねを左右に弾性変形させることになる。
【0060】
また、アクチュエータ3Aのアクチュエータ挿入孔20への挿入時にリテーナ41が矢印B方向に移動したとき、図11において、リテーナ41がねじ34に対して相対移動する。その結果、対応する圧縮ばね43が弾性変形して、アーム状部材42とリテーナ41の外周側のリング状部との間で弾性反発力を作用させる。この弾性反発力の作用により、アクチュエータ3Aがアクチュエータ挿入孔20から離反した際には、リテーナ41が元の位置に戻る。
【0061】
前記実施例では、第1の弾性支持部材としてねじりコイルばね38、38’を用い、第2の弾性支持部材として圧縮コイルばね43を用いた例を示したが、本発明の適用はこれらに限定されない。その他のばねや各種弾性体による弾性支持部材を採用するようにしてのよい。
【0062】
なお、前記実施例によるアクチュエータユニット2では、図1ないし図4に示すように、アクチュエータ3Aの基端部31の背面の上下端において、ケース32側に突出する突起30p、30p’がそれぞれ設けられるとともに、ケース32の外側面32cの上下端において、アクチュエータ3A側に突出する左右一対の突起32p、32p’がそれぞれ設けられている。各突起32pは突起30pの左右両側に間隔を隔てて配置され、各突起32p’は突起30p’の左右両側に間隔を隔てて配置されている。これらの突起は、アクチュエータ3Aが使用中に中心線3Cの回りに回転するのを規制するためのものであり、また、突起32p、32p’で規制されている範囲内でアクチュエータ3Aを回転可能とするものである。これにより、アクチュエータ挿入孔20に対してアクチュエータ3Aの先端部30が中心線3Cの回りに多少の回転ずれ(すなわち、先端部30が中心線3Cの回りを周方向にいくらか回転していることによるずれ)を生じていたとしても、アクチュエータ3Aが中心線3CLの回りに回転することでずれを吸収できるようになっている。
【0063】
<変形例>
前記実施例では、アクチュエータ3Aの先端部30が板状(つまり横断面矩形状)の場合を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。図22および図23は、本発明の変形例によるアクチュエータユニットおよびスイッチ本体を備えた安全スイッチを示している。これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0064】
図22に示すように、アクチュエータ3Aの先端部30は、たとえば半球状の突部であって、先端側に配置された凸円弧状面30rと、後端側に配置された平坦状面30cとを有しており、平坦状面30cには、軸方向に延びるたとえば円柱状の軸部31Jの先端が一体に連設されている。軸部31Jは先端部30よりも小径の部材であって、平坦状面30cは軸部31Jの先端に対して段差を形成している。軸部31Jの他端側には、アクチュエータ3Aの基端側端部(図示せず)が設けられている。すなわち、軸部31Jは、アクチュエータ3Aの先端部30および基端側端部間に延びている。スイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20は、スイッチ本体2の壁部を貫通するたとえば円形のテーパー孔であって、スイッチ本体2の壁部の外表面からスイッチ本体2の内方に向かうにしたがい、徐々に小径となっており、テーパー面20aを有している。なお、図示していないが、ベース部3Bの内部の構造は前記実施例のものと同様であり、アクチュエータ3Aの基端側端部に対して別体で設けられる支持部の構成についても前記実施例と同様である。
【0065】
図22は、アクチュエータ3Aの先端部30がスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20に対して下方に位置ずれδを起こしている場合において、アクチュエータ3Aの挿入前の状態を示している。同図に示す状態から、可動扉を閉塞方向に移動させると、アクチュエータ3Aが矢印A方向に移動して、アクチュエータ3Aの先端部30の凸円弧状面30rがスイッチ本体2のアクチュエータ挿入孔20のテーパー面20aに当接し、先端部30の凸円弧状面30rがテーパー面20aに沿ってテーパー面20a上を摺動しつつ図示斜め上方に移動しようとする。このとき、アクチュエータ3Aには、矢印A方向と逆向きの押付力に加えて、矢印A方向と交差(好ましくは直交)する矢印B方向の押付力が作用する。
【0066】
これにより、前記実施例の図14ないし図16を用いて説明したように、アクチュエータ3Aの基端側端部が支持部のボールを転がり運動させるとともに自転させることにより、アクチュエータ3Aの位置ずれδを吸収できる。アクチュエータ3Aがアクチュエータ挿入孔20内に挿入されると、図23に示すように、スイッチ本体2の内部の係止部材SRが、アクチュエータ3Aの先端部30と軸部31Jとの間の段差を形成する平坦状面30cを係止することにより、アクチュエータ3Aがロックされる。
【0067】
なお、前記実施例では、アクチュエータ3Aが使用中に中心線3Cの回りに回転するのを規制するために突起30p、30p’、32p、32p’を設けたが、この変形例においては、アクチュエータ3Aの先端部30および軸部31Jの各横断面形状が円形であることにより、このような突起を設ける必要はない。
【0068】
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、アクチュエータユニットおよびこれを備えた安全スイッチに有用である。
【符号の説明】
【0070】
1: 安全スイッチ

2: スイッチ本体
20: アクチュエータ挿入孔

3: アクチュエータユニット
3A: アクチュエータ
30: 先端部
30b: 係止孔
30t: テーパー状面
30r: 凸円弧状面
31J: 軸部
32: ケース
32a: 開孔
35B: 最基端側のフランジ部(アクチュエータの基端側端部)
38、38’: ねじりコイルばね(第1の弾性支持部材)

4: 支持部
40: ボール
41: リテーナ(保持部)
42: アーム状部材(第2の弾性支持部材)
43: 圧縮ばね(第2の弾性支持部材)

SR: 係止部材

A: アクチュエータ挿入方向(第1の方向)
B: アクチュエータ挿入方向との交差方向(第2の方向)

δ: 位置ずれ
h: リテーナの移動量
b: リテーナに対するアクチュエータの相対移動量
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2017-91877号公報(段落[0037]、[0038]、[0044]、図1図13図15参照)
【特許文献2】特開平8-138500号公報(段落[0009]、[0020]、図1図3参照)
【特許文献3】特開平11-317132号公報(請求項1、段落[0011]、[0012]、図1図3図4参照)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23