(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117434
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】昆虫の粉砕装置
(51)【国際特許分類】
B02C 13/08 20060101AFI20230817BHJP
B02C 1/14 20060101ALI20230817BHJP
B02C 4/02 20060101ALI20230817BHJP
A61L 2/06 20060101ALN20230817BHJP
A61L 2/07 20060101ALN20230817BHJP
A61L 2/08 20060101ALN20230817BHJP
【FI】
B02C13/08 Z
B02C1/14
B02C4/02
A61L2/06
A61L2/07
A61L2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020012
(22)【出願日】2022-02-11
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(72)【発明者】
【氏名】林 拓未
【テーマコード(参考)】
4C058
4D063
4D065
【Fターム(参考)】
4C058AA21
4C058BB04
4C058BB05
4C058EE02
4C058JJ16
4C058KK01
4D063AA15
4D063CC01
4D065CA12
4D065CB06
4D065CC01
4D065CC08
4D065DD15
4D065EB07
4D065EB20
4D065ED06
4D065ED14
4D065ED16
4D065ED31
4D065ED38
4D065ED39
4D065EE08
4D065EE15
(57)【要約】
【課題】乾燥と粉砕を一つの装置で実施するともに、気流式の粉砕装置を利用することによって、コンタミレス、昆虫が有する油分や水分等に起因した洗浄回数の減少、さらに、粉末の回収率を向上させることができる昆虫の粉砕装置を提供する。
【解決手段】本発明の昆虫の粉砕装置は、昆虫原料を圧送する原料タンクと、昆虫原料を乾燥する乾燥ユニットと、昆虫原料を粉砕する粉砕ユニットと、を有し、粉砕ユニットは、粉砕室内に、昆虫原料を粉砕するための第一の回転体と、第二の回転体と、を配置し、粉砕ユニットで発生する気流に昆虫原料を乗せ、昆虫原料同士、昆虫原料と第一の回転体および第二の回転体、または/および粉砕室内壁への衝突を繰り返すことにより、昆虫原料を粉砕する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫原料を圧送する原料タンクと、前記昆虫原料を乾燥する乾燥ユニットと、前記昆虫原料を粉砕する粉砕ユニットと、を有し、
前記粉砕ユニットは、粉砕室内に、前記昆虫原料を粉砕するための第一の回転体と、第二の回転体と、を配置し、前記粉砕ユニットで発生する気流に前記昆虫原料を乗せ、前記昆虫原料同士、前記昆虫原料と前記第一の回転体および前記第二の回転体、または/および前記粉砕室内壁への衝突を繰り返すことにより、前記昆虫原料を粉砕する昆虫の粉砕装置。
【請求項2】
前記昆虫原料を粗粉砕する粗粉砕ユニットと、を有する請求項1記載の昆虫の粉砕装置。
【請求項3】
前記粉砕ユニット内を滅菌する滅菌処理部と、を有する、請求項1または請求項2に記載の昆虫の粉砕装置。
【請求項4】
前記粉砕ユニットは、前記昆虫原料を投入する粉砕ユニット用投入口と、前記昆虫原料を排出する粉砕ユニット用排出口を備え、
前記粉砕ユニット用投入口および前記粉砕ユニット用排出口には、少なくとも一方に、前記粉砕ユニットの粉砕室を封止する粉砕ユニット用シール部が配置される、請求項1~3のいずれかに記載の昆虫の粉砕装置。
【請求項5】
前記昆虫原料を搬送する搬送ユニットと、を有し、前記乾燥ユニットおよび前記粗粉砕ユニットで乾燥および粗粉砕された前記昆虫原料を搬送する請求項1~4のいずれかに記載の昆虫の粉砕装置。
【請求項6】
前記乾燥ユニットは、前記昆虫原料を加温するヒーターと、基台上にスライドできる移動台と、前記移動台を取入れおよび取り出しのための開閉扉と、を有する請求項1~5のいずれかに記載の昆虫の粉砕装置。
【請求項7】
前記粗粉砕ユニットは、前記昆虫原料を押圧する粗粉砕ユニット用押圧体と、を有する請求項2~6のいずれかに記載の昆虫の粉砕装置。
【請求項8】
前記粗粉砕ユニットは、前記昆虫原料を重力方向のエネルギーを用いて予備粉砕する縦型のユニットであるとともに、
前記粉砕ユニットは、前記昆虫原料自体の衝突エネルギーを用いて粉末化する横型のユニットである、請求項2~7のいずれかに記載の昆虫の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫の粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界人口の増加、豪雨や干ばつといった異常気象等が今後の課題として取り上げられている。その中で、ヒトが生存するためには、食事(栄養の摂取)が必要不可欠である。人工的に製造できる食品等もあるが、人工的に製造する食品には、天然由来の栄養素に限界があることや、添加物の添加による弊害等も存在する。
【0003】
その中で、昆虫を、食品の代替的なタンパク質源として活用する取り組みがされている。昆虫には、タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラル、および水などの栄養素が含まれている。昆虫としては、ミミズ、バッタ、ミツバチ、ハチ、コオロギ等である。昆虫農場で生育される昆虫は、動植物(牛や豚等)と較べて、飼育スペースや飼育コスト(電気代や餌代等)が低いというメリットも叫ばれている。
【0004】
特許文献1に記載の昆虫を処理するための方法では、昆虫の温度を、0.5秒~45分以内に、-10℃以下に低下させることで、栄養素の損失、色(褐変)、および風味の変化の原因となる酵素の活性が低下し、好ましくは停止させることが開示されている。
【0005】
また、昆虫を粉末形状に加工することで、見た目や味等の面で消費者に受け入れられやすくすることを想定すると、乾燥と粉砕の両方の機能を有する装置が求められる。
【0006】
乾燥に関して、市販のオーブンや乾燥機等がある。粉砕に関して、農産物、食品、鉱物、医薬品などの被粉砕物を粉砕する湿式粉砕機や乾式粉砕機がある。
湿式粉砕機は、スラリー状の被粉砕物同士を衝突させることで、被粉砕物を乳化や微粒子化する。乾式粉砕機は、粉砕室内に二つの回転翼を対向して配置し、両回転翼を回転させることで粉砕室内に気流を発生させ、被粉砕物同士、被粉砕物と回転翼、被粉砕物と粉砕室の内壁といった各種衝突を繰り返すことで被粉砕物を粉砕する。
【0007】
特許文献2に記載の粉砕機では、架台及びケーシングが、第1分割体と、第2分割体と、に分割及び接合可能に設けられていることによって、粉砕室が二つに分離した状態に開放されて粉砕室内を容易に洗浄することができるものが開示されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2021-500033号公報
【特許文献2】特許第5872242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、各種処理工程は開示されているものの、昆虫を急速に冷凍することによって、栄養素を損なわないことを主眼としており、粉砕処理時の工程や粉砕機(粉砕装置)に関する詳細な(具体的な)記載はない。
【0010】
特許文献2は、農産物、食品、鉱物、医薬品などの被粉砕物を粉砕することを目的としているが、昆虫を粉砕して、食用に用いることは想定されていなかった。
そのため、昆虫が有する油分や水分等を事前に処理しておかなければ、粉砕機内の表面に付着する油分や水分を除去しなければならず、特に、動物性の油分の場合、一度付着すると除去するためには、時間を要するという課題があった。
【0011】
さらに、乾燥と粉砕を実現する装置は、別々に存在しているが、一連のシステムとして提供することは想定されていなかった。
【0012】
本発明は、乾燥と粉砕を一つのシステムで実施するともに、気流式の粉砕装置を利用することによって、コンタミレス、昆虫が有する油分や水分等に起因した洗浄回数の減少、さらに、粉末の回収率を向上させることのできる昆虫の粉砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の昆虫の粉砕装置は、昆虫原料を圧送する原料タンクと、昆虫原料を乾燥する乾燥ユニットと、昆虫原料を粉砕する粉砕ユニットと、を有し、粉砕ユニットは、粉砕室内に、昆虫原料を粉砕するための第一の回転体と、第二の回転体と、を配置し、粉砕ユニットで発生する気流に昆虫原料を乗せ、昆虫原料同士、昆虫原料と第一の回転体および第二の回転体、または/および粉砕室内壁への衝突を繰り返すことにより、昆虫原料を粉砕する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の昆虫の粉砕装置によれば、乾燥と粉砕を一つの装置で実施するとともに、気流式の粉砕装置を利用することによって、コンタミレス、昆虫が有する油分や水分等に起因した洗浄回数の減少、さらに、粉末の回収率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本実施形態の乾燥ユニットの(a)開閉扉を閉じて乾燥する状態、(b)開閉扉を開いて昆虫原料の出し入れを行う状態を示す断面図
【
図4】本実施形態の粗粉砕ユニットの別実施例を示す断面図
【
図6】本実施形態の粉砕ユニットの別実施例を示す断面図
【
図7】本実施形態の昆虫の粉砕装置の別実施例(第二実施例)を示す断面図
【
図8】本実施形態の昆虫の粉砕装置の別実施例(第三実施例)を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0017】
(昆虫の粉砕装置の構成)
本実施形態の粉砕装置1は、処理対象の昆虫原料Oを乾燥および粉砕する装置である。
図1~
図8に示すように、粉砕装置1は、原料タンク2と、乾燥ユニット3と、粗粉砕ユニット4と、粉砕ユニット5と、処理原料タンク6と、を有する。
【0018】
原料タンク2は、昆虫原料Oを貯留する部位である。原料タンク2の大きさや形状は、処理量、昆虫原料Oの物性、および添加媒体の性質(酸性、中性、アルカリ性等)に応じて、変更できる。また、昆虫原料Oが生存した状態等に応じて、温度調整や密閉機能を付加できる。
【0019】
乾燥ユニット3は、昆虫原料Oの体内成分である油分や水分を乾燥させる。粉砕室、各種タンク、それらを接続する配管等の表面に油分や水分が付着した場合、動物性油に近い成分のため、非常に落ちにくく、連続/断続運転する際に、確実な洗浄工程が必要になるため、製造効率が上がらない。そうした悪影響を回避するために、事前に乾燥ユニット3で乾燥することによって、昆虫原料Oの体内成分である油分や水分の割合を10%未満の状態として、トータルの処理の効率向上を図ることができる。
【0020】
図1および
図2(a)、(b)に示すように、乾燥ユニット3は、ヒーターHによる乾燥ユニット3内の加温によって、昆虫原料Oを乾燥させる。また、開閉扉10の開閉によって、基台8の上部に配置する移動台9を出し入れすることで、昆虫原料Oが入った原料トレイTの取入れおよび取り出しを行うことができる。さらに、乾燥ユニット用モータM1によって、乾燥ユニット用回転軸S1を回転させ、乾燥ユニット用回転軸S1と固定されている基台8または移動台9を回転させることで、乾燥効率を向上できる。なお、ヒーターHによる乾燥速度は、適宜設定できる。
【0021】
粗粉砕ユニット4は、乾燥前または乾燥後の昆虫原料Oを本粉砕前に、粗粉砕する。事前に粗粉砕することによって、粉砕速度や乾燥速度を向上できる。
図3に示すように、粗粉砕ユニット4は、原料トレイTに入った昆虫原料Oを粗粉砕ユニット用押圧体11aによって潰すことによって、粗粉砕する。粗粉砕ユニット用押圧体11aは、不図示の圧力供給源から供給される流体によって、上下移動する圧力シリンダ11bと、圧力シリンダ11bの先端に配置する押圧部11cが下方に配置される昆虫原料Oを押圧し、粗粉砕する。
【0022】
粗粉砕ユニット4においては、昆虫原料Oが処理されていない状態を粗粉砕するため、重力方向のエネルギーを用いて押しつぶすことやすりつぶすことによって、予備粉砕することができる。粗粉砕ユニット4は、縦型、横型等を適宜選択できるが、縦型が望ましい。
【0023】
図4に示すように、別の実施例として、粗粉砕ユニット4は、不図示の回転駆動源によって、複数の(例えば、3本の)粗粉砕ユニット用回転軸S2が回転する構造である。粗粉砕ユニット用投入口12に投入される昆虫原料Oが、複数の粗粉砕ユニット用回転体14の隙間で粗粉砕され、粗粉砕ユニット用排出口13から排出される。なお、複数の粗粉砕ユニット用回転体14は、すべて同じ回転方向とはせずに、正転と逆転を交互またはランダムに設定することやそれぞれの回転速度を異ならせることで、昆虫原料Oの粗粉砕を調整できる。
【0024】
その他、別の実施例として、粗粉砕ユニット4は、処理容器の中で、モータ等の駆動源によって回転翼を回転させることで、昆虫原料Oを粗粉砕するものであってもよい。この場合、市販のミキサー等を利用できる。
【0025】
粉砕ユニット5は、乾燥および/または粗粉砕した昆虫原料Oが粉砕ユニット用投入口17に投入され、粉砕室16内の主回転体19が回転することで発生する気流に乗せて昆虫原料Oを粉砕し、粉砕ユニット用排出口18から排出する。
【0026】
粉砕ユニット5においては、粗粉砕した状態の昆虫原料Oを粉砕するため、粗粉砕の段階よりも、小さな(細かな)サイズになっており、押しつぶすことやすりつぶすことではなく、昆虫原料O自体の衝突エネルギーを利用して、微細化することで、粉末化を促すことができる。粉砕ユニット5は、縦型、横型等を適宜選択できるが、横型が望ましい。
【0027】
縦型の粗粉砕ユニット4で昆虫原料Oを重力方向のエネルギーを用いて予備粉砕し、横型の粉砕ユニット5で昆虫原料O自体の衝突エネルギーを用いて粉末化することによって、昆虫原料Oを微細化し、粉末化した状態で、処理することができる。
【0028】
粉砕室16は、昆虫原料Oを粉砕する。粉砕室16内の対向した二つの主回転体(投入側:第一の主回転体19a、吐出側:第二の主回転体19b)を回転させることによって発生する気流に昆虫原料Oを乗せ、昆虫原料O同士、昆虫原料Oと主回転体19、または/および粉砕室16内壁への衝突を繰り返すことにより、昆虫原料Oを細かく粉砕する。
【0029】
主回転体19は、表面が均一形状、凹凸形状等、適宜変更できる。主回転体19は、例えば、5~12枚程度の羽を有するインペラからなり、表面にコーティングが施され、3,000から10,000rpmの回転速度で回転する。昆虫原料Oを粉砕するにあたり、衛生面に配慮して、コンタミの混入を防止できる構造となるように、主回転体19の全体または一部をジルコニア等のセラミックで形成することもできる。主回転体19は、随時交換することもできる。
【0030】
粉砕ユニット用回転軸S3は、
図5に示す一軸式とすることや、
図6に示す二軸式とすること等適宜選択でき、同一または別々の駆動源(不図示)によって駆動(回転)する形態であってもよい。そのほか、回収にあたり、吸引機能を強化したい場合は、外部に吸引装置(不図示)を配置することで、吸引力を調整できる。
【0031】
図1において、粉砕ユニット5は、1台として表示しているが、台数を増やすこともできる。台数を増やすことで、粉砕量を増やすことや、粉砕段階(昆虫原料Oの粒度の大小等)に分けて、昆虫原料Oを生成することができる。そのほか、各粉砕ユニット5における粉砕室16や主回転体19の仕様(大きさ、回転数など)を変えて組むことができることは言うまでもない。
【0032】
処理原料タンク6は、粉砕ユニット5で処理した昆虫原料Oを回収する。処理原料タンク6の大きさや形状は、処理量、昆虫原料Oの物性、および添加媒体の性質(酸性、中性、アルカリ性等)に応じて、変更できる。また、昆虫原料Oが生存した状態等に応じて、温度調整や密閉機能を付加できる。
【0033】
図7に示すように、搬送ユニット7を配置することによって、乾燥、粗粉砕、粉砕、回収等の工程を自動化できる。搬送ユニット7は、ベルト等の搬送用移動部15aが不図示の駆動源の動力を用いて回転する搬送用回転部15bに連動して稼動するベルトコンベアやフィーダー(送り機構)である。搬送ユニット7を、原料タンク7と乾燥ユニット3の間、乾燥ユニット3と粗粉砕ユニット4の間、粗粉砕ユニット4と粉砕ユニット5の間等に配置することによって、自動化を図り、昆虫原料Oの大量生産を行うことができる。
【0034】
制御部20を配置し、原料タンク2から圧送する昆虫原料Oの分量、乾燥ユニット3の乾燥温度と乾燥時間、粗粉砕ユニット4の押圧力と処理時間、粉砕ユニット5の回転数と処理時間、等を遠隔で制御できる。
【0035】
図8に示すように、滅菌流体供給部21を配置し、分岐バルブ23の切り替えによって、粗粉砕ユニット4および/または粉砕ユニット5内部に高温の蒸気やガス等の滅菌流体を充満させることで、各粉砕室を滅菌することもできる。常時滅菌することや、粉砕前に滅菌することによって、粗粉砕ユニット4および/または粉砕ユニット5において、雑菌や細菌が繁殖しない状況を作り、安全性の高い昆虫原料Oの粉砕を実現できる。
【0036】
または、
図8に示すように、粗粉砕ユニット4、粉砕ユニット5の粉砕室外周に粗粉砕ユニット用滅菌処理部(滅菌処理部)26や粉砕ユニット用滅菌処理部(滅菌処理部)25を配置することで、内部を滅菌処理できる。滅菌処理の方法としては、高周波、マイクロ波、赤外線、遠赤外線、紫外線等を各粉砕室内に照射することによって、雑菌や細菌が繁殖しない状況を作り、安全性の高い昆虫原料Oの粉砕を実現できる。
【0037】
粗粉砕ユニット4には、昆虫原料Oを投入する粗粉砕ユニット用投入口12、と、昆虫原料Oを排出する粗粉砕ユニット用排出口13に、粗粉砕ユニット用シール部23を配置することで、密閉性を向上できる。
【0038】
粉砕ユニット5には、昆虫原料Oを投入する粉砕ユニット用投入口17、と、昆虫原料Oを排出する粉砕ユニット用排出口18に、粉砕ユニット用シール部24を配置することで、密閉性を向上できる。粗粉砕ユニット用シール部23や、粉砕ユニット用シール部24が配置されていることで、各粉砕室内を密閉した状態で滅菌処理できる。なお、粗粉砕ユニット用シール部23および粉砕ユニット用シール部24は、昆虫原料Oの投入口や排出口をシールする耐熱性のある樹脂等のシールである。口径、個数、角度、形状、材質などは適宜選択できる。
【0039】
滅菌流体供給部21から供給される上記の量を調整する場合には、粗粉砕ユニット用シール部23、粉砕ユニット用シール部24の貫通孔と連結する滅菌流体調整バルブをそれぞれまたは一方に配置することもできる。なお、滅菌流体調整バルブの調整は、滅菌流体量を調整するだけでなく、粉砕後の昆虫原料Oの排出量を調整することにもつながる。言い換えると、粗粉砕ユニット4、粉砕ユニット5内における昆虫原料Oの粉砕回数や粉砕度合いを調整することができる。
【0040】
さらに、粗粉砕ユニット用シール部23および/または粉砕ユニット用シール部24にフィルタを配置することによって、処理後の昆虫原料Oの大きさ等を均一に回収することもできる。該フィルタは、市販のメッシュ形状を有するものであればよく、昆虫原料Oのうち、不要なサイズの粉末を分級することで、品質の高い昆虫原料Oの粉末を回収できる。なお、各粉砕室内に残る不要なサイズの粉末は、粉砕室の一部に回収箇所を配置すること等によって、清掃のし易さを改善することもできる。
【0041】
その他、粗粉砕ユニット4、粉砕ユニット5の内部をコーティングすることや、一定時間、粉砕処理した後に交換できる表面シート等を配置することによって、衛生面を保つことや交換容易性を向上できる。
【0042】
図1や
図8に示すように、粉砕装置1内の要素をすべてクリーンルームや密閉性の高い空間内に配置することによって、雑菌や細菌が繁殖しない状況を作り、安全性の高い昆虫原料Oの粉砕を実現できることは言うまでもない。
【0043】
以下、本実施形態の昆虫の粉砕装置1における粉砕方法(乾燥、粗粉砕、粉砕、回収の工程)について説明する。
【0044】
<乾燥工程(P1)>
原料タンク2から供給される昆虫原料O(原料トレイTに入った状態)を乾燥する(P1)。
図2(b)に示すように、開閉扉10を開いた状態で、移動台9上に原料トレイTに入った昆虫原料Oを配置する。移動台9を乾燥ユニット3の内部に取り入れて、開閉扉10を
図2(a)に示すように閉じる。そして、乾燥ユニット3のヒーターHによって、昆虫原料Oを加温し、乾燥する。例えば、ヒーターHの温度は10~60℃、乾燥時間は30分~1時間等、適宜設定できる。
【0045】
<粗粉砕工程(P2)>
乾燥後の昆虫原料Oを粗粉砕ユニット4で粗粉砕する(P2)。
図3に示すように、粗粉砕ユニット4は、昆虫原料Oを粗粉砕ユニット用押圧体11aによって潰すことによって、粗粉砕する。粗粉の押圧力や押圧時間は、適宜設定できる。粗粉砕ユニット4において、昆虫原料Oを重力方向のエネルギーを用いて押しつぶすことやすりつぶすことによって、予備粉砕できる。
【0046】
<粉砕工程(P3)>
粗粉砕した昆虫原料Oを粉砕ユニット5で粗粉砕する(P3)。乾燥および/または粗粉砕した昆虫原料Oを粉砕ユニット用投入口17に投入し、粉砕室16内の主回転体19(第一の主回転体19a、第二の主回転体19b)が回転することで発生する気流に乗せて昆虫原料Oを粉砕し、粉砕ユニット用排出口18から排出する。粉砕ユニット5において、昆虫原料O自体の衝突エネルギーを利用して、微細化することで、粉末化を促すことができる。
【0047】
<回収工程(P4)>
基本的には、粉砕工程(P3)によって処理後の昆虫原料Oを排出する(P4)。回収にあたり、吸引機能を強化したい場合は、外部に吸引装置(不図示)を配置することで、吸引力を調整できる。
粗粉砕ユニット用シール部23や粉砕ユニット用シール部24の貫通孔の径を調整することや、フィルタによる分級を行うことで、粉末サイズの安定化を図ることもできる。
【0048】
また、乾燥工程(P1)の前に、滅菌工程(P0)を実施することもできる。粗粉砕ユニット用投入口12および排出口13に配置される粗粉砕ユニット用シール部23と、粉砕ユニット用投入口17および排出口18に配置される粉砕ユニット用シール部24で、それぞれの粉砕室を密閉状態にした後、滅菌流体供給部21から、滅菌流体を粗粉砕ユニット4および/または粉砕ユニット5内部に充満させることで、各粉砕室を滅菌する。
【0049】
また、滅菌工程(P0)の別の方法としては、粗粉砕ユニット用投入口12および排出口13に配置される粗粉砕ユニット用シール部23と、粉砕ユニット用投入口17および排出口18に配置される粉砕ユニット用シール部24で、それぞれの粉砕室を密閉状態にした後、粗粉砕ユニット4、粉砕ユニット5の粉砕室外周に粗粉砕ユニット用滅菌処理部26や粉砕ユニット用滅菌処理部25を配置することで、内部を滅菌処理することもできる。粗粉砕ユニット用滅菌処理部26および/または粉砕ユニット用滅菌処理部25は、高周波、マイクロ波、赤外線、遠赤外線、紫外線等を照射するものであり、各粉砕室を滅菌する。
【0050】
(評価試験1)
本発明による粉砕装置1を用いて、実際に評価試験1を実施した。評価試験1の処理条件としては、乾燥ユニット3で乾燥後の昆虫原料Oを、粉砕ユニット5(株式会社スギノマシン製DB-180W)で回転数(第一の回転体19aおよび第二の回転体19b):8,000min-1で、粉砕処理を行った。
【0051】
(評価試験2)
また、粉砕前の昆虫原料Oと、本発明による粉砕装置1を用いた粉砕後の昆虫原料Oの見た目、食感、味について、官能試験を実施した(表1)。昆虫原料Oを乾燥および粉砕することによって、見た目等の問題が解消され、食感や味も良くなったという意見があった。
【表1】
【0052】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 粉砕装置
2 原料タンク
3 乾燥ユニット
4 粗粉砕ユニット
5 粉砕ユニット
6 処理原料タンク
7 搬送ユニット
8 基台
9 移動台
10 開閉扉
11a 粗粉砕ユニット用押圧体
11b 圧力シリンダ
11c 押圧部
12 粗粉砕ユニット用投入口
13 粗粉砕ユニット用排出口
14 粗粉砕ユニット用回転体
15a 搬送用移動部
15b 搬送用回転部
16 粉砕室
17 粉砕ユニット用投入口
18 粉砕ユニット用排出口
19 主回転体
19a 第一の主回転体
19b 第二の主回転体
20 制御部
21 滅菌流体供給部
22 分岐バルブ
23 粗粉砕ユニット用シール部
24 粉砕ユニット用シール部
25 粉砕ユニット用滅菌処理部
26 粗粉砕ユニット用滅菌処理部
O 昆虫原料
H ヒーター
M1 乾燥ユニット用モータ
M2 粗粉砕ユニット用モータ
S1 乾燥ユニット用回転軸
S2 粗粉砕ユニット用回転軸
S3 粉砕ユニット用回転軸