(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117527
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】起泡ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/02 20060101AFI20230817BHJP
B05B 7/10 20060101ALI20230817BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B05B1/02 101
B05B7/10
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020135
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 諭志
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033BA02
4F033BA03
4F033DA03
4F033DA05
4F033EA01
4F033KA02
4F033KA03
4F033LA00
4F033LA01
4F033NA01
4F033QA10
4F033QB02X
4F033QB03X
4F033QB17
4F033QC05
4F033QD08
4F033QD14
4F033QD19
4F033QD25
(57)【要約】
【課題】液剤の使用量の低減を図りつつ広範囲に吐出しやすい技術を提供する。
【解決手段】起泡ノズル10は、流路30と、液剤吐出部40と、エア噴出部50と、を備える。流路30には、吐出口31が形成されている。液剤吐出部40は、流路30内に液剤を吐出する。エア噴出部50は、流路30内にエアを噴出させる。エア噴出部50から噴出されたエアによって、流路30の内周面32に沿って吐出口31側に螺旋状に旋回するエアの旋回流を発生させ、液剤吐出部50から吐出された液剤を流路30内で泡状にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口が形成された流路と、
前記流路内に液剤を吐出する液剤吐出部と、
前記流路内にエアを噴出させるエア噴出部と、を備え、
前記エア噴出部から噴出されたエアによって、前記流路の内周面に沿って前記吐出口側に螺旋状に旋回するエアの旋回流を発生させ、前記液剤吐出部から吐出された液剤を前記流路内で泡状にする起泡ノズル。
【請求項2】
前記液剤吐出部から吐出される液剤が前記旋回流に引き込まれるように負圧を発生させる負圧発生部を備える請求項1に記載の起泡ノズル。
【請求項3】
前記負圧発生部は、前記流路内に配置され、前記流路の一部を狭くする負圧発生部材である請求項2に記載の起泡ノズル。
【請求項4】
前記液剤吐出部は、前記流路内において前記吐出口側に向けて筒状に突出する筒部を有し、
前記筒部の内側には、液剤が流れる液剤流路が形成されており、
前記筒部の突出端面には、前記液剤流路を流れる液剤を吐出させる液剤吐出口が形成されており、
前記エア噴出部は、前記流路の内周面と前記筒部の外周面との間にエアを噴出可能であり、
前記負圧発生部材は、多孔質体であり、前記筒部の突出端部に隣接し、前記エア噴出部から噴出されたエアが通る経路に配置される請求項3に記載の起泡ノズル。
【請求項5】
前記液剤吐出部は、前記流路内において前記吐出口側に向けて筒状に突出する筒部と、前記筒部の突出端部から径方向外側に張り出す張出部と、を有し、
前記筒部の内側には、液剤が流れる液剤流路が形成されており、
前記筒部の突出端面には、前記液剤流路を流れる液剤を吐出させる液剤吐出口が形成されており、
前記エア噴出部は、前記張出部よりも前記吐出口側とは反対側において、前記流路の内周面と前記筒部の外周面との間にエアを噴出可能であり、
前記負圧発生部は、前記流路の内周面と前記張出部とによって形成されている請求項2に記載の起泡ノズル。
【請求項6】
前記筒部及び前記張出部の前記吐出口側の端面には、前記液剤吐出口の外周縁から径方向外側に放射状に延びる溝部が形成されている請求項5に記載の起泡ノズル。
【請求項7】
前記張出部の外周面には、周方向に並んで配置される複数の凸部が設けられている請求項5に記載の起泡ノズル。
【請求項8】
前記流路の内周面は、前記吐出口側に向けて縮径する傾斜面を有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の起泡ノズル。
【請求項9】
前記流路の内周面には、螺旋状の溝が形成されている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の起泡ノズル。
【請求項10】
前記液剤吐出部から吐出される液剤は、油性の液剤に水と界面活性剤を混ぜ合わせた離型剤である請求項1から請求項9のいずれか一項に起泡ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は起泡ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液剤を吐出させるノズルが知られている。ノズルから液剤を広範囲に吐出させる方法として、流路の径を大きくし、流路が埋まるように液剤を流すことが考えられる。しかし、この方法では、液剤の使用量が多くなりやすい。別の方法として、ノズルから吐出される液剤に対し、液剤の周囲から高圧エアを吹き付けることで、吐出範囲を広げることが考えられる。しかし、吐出される液剤自体が少量であれば、高圧エアを吹き付けても吐出範囲の広がりは限定的である。また、高圧エアを吹き付けることで、液剤が対象物に付着しにくくなることが懸念される。そこで、特許文献1のように、液剤中に気泡を含ませることで、液剤の使用量を低減させつつ、液剤を広範囲に吐出させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術を用いたとしても、気液混合体中の大部分が液剤であるため、液剤の使用量を低減させる効果に乏しい。
【0005】
本発明は、液剤の使用量の低減を図りつつ広範囲に吐出しやすい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の起泡ノズルは、
吐出口が形成された流路と、
前記流路内に液剤を吐出する液剤吐出部と、
前記流路内にエアを噴出させるエア噴出部と、を備え、
前記エア噴出部から噴出されたエアによって、前記流路の内周面に沿って前記吐出口側に螺旋状に旋回するエアの旋回流を発生させ、前記液剤吐出部から吐出された液剤を前記流路内で泡状にする。
【0007】
この構成によれば、液剤が流路内で泡状になるため、少量の液剤であっても流路内全体に広がりやすい。したがって、この構成によれば、液剤の使用量の低減を図りつつ広範囲に吐出しやすい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液剤の使用量の低減を図りつつ広範囲に吐出しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1の起泡ノズルの側断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の起泡ノズルの正面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の起泡ノズルの作用を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、実施例2の起泡ノズルの側断面図である。
【
図5】
図5は、実施例2の液剤吐出部の斜視図である。
【
図6】
図6は、比較例の液剤吐出部から液剤が飛散する様子をあらわす説明図である。
【
図7】
図7は、実施例2の液剤吐出部から液剤が飛散する様子をあらわす説明図である。
【
図8】
図8は、実施例3の液剤吐出部の斜視図である。
【
図9】
図9は、実施例3の液剤吐出部から液剤が飛散する様子をあらわす説明図である。
【
図12】
図12は、比較例の起泡ノズルから液剤が吐出される様子をあらわす説明図である。
【
図13】
図13は、実施例5の起泡ノズルから液剤が吐出される様子をあらわす説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本発明は、上記液剤吐出部から吐出される液剤が上記旋回流に引き込まれるように負圧を発生させる負圧発生部を備えていてもよい。
この構成によれば、液剤が旋回流に引き込まれやすくなり、その結果、より効率的に液剤を泡状にすることができる。
【0011】
(2)上記(1)において、上記負圧発生部は、上記流路内に配置され、上記流路の一部を狭くする負圧発生部材であってもよい。
この構成によれば、流路内に負圧発生部材を設置するだけで、負圧発生部を構成することができる。
【0012】
(3)上記(2)において、上記液剤吐出部は、上記流路内において上記吐出口側に向けて筒状に突出する筒部を有していてもよい。上記筒部の内側には、液剤が流れる液剤流路が形成されていてもよい。上記筒部の突出端面には、上記液剤流路を流れる液剤を吐出させる液剤吐出口が形成されていてもよい。上記エア噴出部は、上記流路の内周面と上記筒部の外周面との間にエアを噴出可能であってもよい。上記負圧発生部材は、多孔質体であり、上記筒部の突出端部に隣接し、上記エア噴出部から噴出されたエアが通る経路に配置されてもよい。
この構成によれば、エア噴出部から噴出されたエアが多孔質体内を通ることで筒部の突出端部周辺に負圧が発生するため、液剤吐出口から吐出された液剤が旋回流に引き込まれやすい。
【0013】
(4)上記(1)において、上記液剤吐出部は、上記流路内において上記吐出口側に向けて筒状に突出する筒部と、上記筒部の突出端部から径方向外側に張り出す張出部と、を有していてもよい。上記筒部の内側には、液剤が流れる液剤流路が形成されていてもよい。上記筒部の突出端面には、上記液剤流路を流れる液剤を吐出させる液剤吐出口が形成されていてもよい。上記エア噴出部は、上記張出部よりも上記吐出口側とは反対側において、上記流路の内周面と上記筒部の外周面との間にエアを噴出可能であってもよい。上記負圧発生部は、上記流路の内周面と上記張出部とによって形成されていてもよい。
この構成によれば、部品点数を増加させることなく、負圧発生部を構成することができる。
【0014】
(5)上記(4)において、上記筒部及び上記張出部の上記吐出口側の端面には、上記液剤吐出口の外周縁から径方向外側に放射状に延びる溝部が形成されていてもよい。
この構成によれば、液剤吐出口から吐出される液剤が、負圧発生部による負圧によって、溝部に沿って径方向外側に移動し、溝部の端部から飛散する。このため、飛散する液剤の粒子の大きさが安定しやすく、その結果、液剤から形成される泡の大きさが安定しやすい。
【0015】
(6)上記(4)において、上記張出部の外周面には、周方向に並んで配置される複数の凸部が設けられていてもよい。
この構成によれば、液剤吐出口から吐出される液剤が、負圧発生部による負圧によって、液剤吐出部の吐出部側の端面に沿って径方向外側に移動し、外周面の凸部の先端から飛散する。このため、飛散する液剤の粒子の大きさが安定しやすく、その結果、液剤から形成される泡の大きさが安定しやすい。
【0016】
(7)上記流路の内周面は、上記吐出口側に向けて縮径する傾斜面を有していてもよい。
この構成によれば、エアの旋回流の勢いが吐出口側でも低下しにくくなる。
【0017】
(8)上記流路の内周面には、螺旋状の溝が形成されていてもよい。
この構成によれば、螺旋状の旋回流を形成しやすい。
【0018】
(9)上記液剤吐出部から吐出される液剤は、油性の液剤に水と界面活性剤を混ぜ合わせた離型剤であってもよい。
この構成によれば、液剤を泡状にしやすい。
【0019】
<実施例1>
以下では、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図3を参照して説明する。
【0020】
[起泡ノズルの構成]
図1に示す起泡ノズル10は、ノズル本体20と、流路30と、液剤吐出部40と、エア噴出部50と、負圧発生部材60と、を備えている。
【0021】
ノズル本体20は、例えば金属製である。ノズル本体20は、基部21と、エアキャップ22と、ナット23と、を有している。エアキャップ22は、ナット23を用いて基部21の先端側に保持されている。
【0022】
流路30は、ノズル本体20の内側に形成されている。流路30は、前後方向に延びている。流路30の前端には、吐出口31が形成されている。吐出口31は、ノズル本体20の前面に開口している。流路30の延び方向と直交する方向に切断した流路30の断面の形状は、円形である。流路30の内周面32は、吐出口31側に向けて縮径する傾斜面33と、径が一定の定径面34と、を有している。定径面34は、傾斜面33よりも吐出口31側に配置されている。定径面34の後端は、傾斜面33の前端に連なっている。定径面34の前端には、上述した吐出口31が形成されている。
【0023】
液剤吐出部40は、ノズル本体20に固定され、流路30内に液剤90(
図3参照)を吐出させる機能を有する。液剤90は、例えば離型剤である。離型剤は、例えば油性の液剤に水と界面活性剤を混ぜ合わせたものである。この構成によれば、離型剤が泡状になりやすい。液剤吐出部40は、筒部41を有している。筒部41は、流路30内に配置され、吐出口31側に向けて筒状に突出している。筒部41の内側には、液剤90が流れる液剤流路42が形成されている。筒部41の突出端面には、液剤流路42を流れる液剤90を吐出させる液剤吐出口43が形成されている。液剤吐出部40は、液剤吐出口43から液剤90を吐出させる。筒部41の外周面44は、吐出口31側に向かうにつれて筒部41の外径が小さくなるように傾斜した外周傾斜面45を有している。
【0024】
エア噴出部50は、ノズル本体20に形成されており、流路30内にエアを噴出させる。エア噴出部50は、エアノズル51を有しており、エアノズル51の先端52からエアを噴出させる。エアノズル51の先端52は、流路30の内周面32に開口している。エア噴出部50は、流路30の内周面32と、筒部41の外周面44との間にエアを噴出させる。エア噴出部50は、流路30の内周面32に沿うようにエアを噴出させる。エア噴出部50から噴出されたエアは、流路30の内周面32に沿って吐出口31側に螺旋状に旋回する旋回流となる。
【0025】
負圧発生部材60は、例えば多孔質体であり、流路30及び液剤吐出部40とは別体として構成されている。負圧発生部材60は、流路30内に配置される。負圧発生部材60は、前後方向に厚さを有する円板状をなしている。負圧発生部材60は、筒部41の突出端面に隣接して配置される。負圧発生部材60は、エア噴出部50から噴出されたエアが通る経路に配置される。具体的には、エアノズル51の先端52と吐出口31との間に配置される。負圧発生部材60には、エアが前後方向に通過可能な孔が形成されている。この孔は、液剤吐出部40の液剤吐出口43に連通している。
【0026】
起泡ノズル10は、
図1及び
図2に示すように、パターン用エアノズル70を備えている。パターン用エアノズル70は、ノズル本体20の内側に形成されている。パターン用エアノズル70の先端は、ノズル本体20の前面において、吐出口31よりも径方向外側の位置で開口している。パターン用エアノズル70は、流路30の外周を囲むように、周方向に間隔をあけて複数設けられている。複数のパターン用エアノズル70は、丸吹用のノズルを構成している。パターン用エアノズル70は、
図2に示すように、前方に向かうにつれて、流路30の径方向と平行な仮想線VLに対して、流路30内に発生するエアの旋回流の旋回方向Tにずれるように傾斜している。この構成によれば、パターン用エアノズル70から噴射されるエアが、吐出口31から吐出される旋回流の旋回を阻害しにくい。このため、パターン用エアノズル70から噴射されるエアによって形成されるパターンの径が小さくなる。
【0027】
[起泡ノズルの作用]
起泡ノズル10は、
図3に示すように、液剤吐出部40から液剤90を吐出させるとともに、エア噴出部50からエアを噴出させる。エア噴出部50から噴出されたエアは、流路30の内周面32に沿って吐出口31側に向けて螺旋状に旋回する。これにより、流路30内にエアの旋回流が発生する。エアの旋回流は、吐出口31側に向けて縮径する傾斜面33に沿って旋回する。このため、エアの旋回流の勢いが低下しにくくなっている。
【0028】
液剤吐出部40から吐出される液剤90は、エアの旋回流の中心に吐出され、旋回流に引き込まれる。特に、本実施例では、流路30内に、負圧発生部材60が配置されている。エアの旋回流は、負圧発生部材60内を通過することで、流速が早くなる。これにより、エアの旋回流に負圧が生じる。このため、液剤吐出口43から吐出される液剤90は、エアの旋回流に引き込まれやすくなっている。更に、負圧発生部材60におけるエアを通過させる孔は、液剤吐出口43に連通している。このため、液剤吐出口43から吐出された液剤90が、負圧発生部材60内を通って、エアの旋回流に引き込まれやすくなっている。
【0029】
液剤90は、旋回流に引き込まれた後、又は引き込まれる過程で、分裂して液滴となる。液滴は、液滴の中心側ほどエアの圧力を受けやすく、外周側ほどエアの圧力を受けにくい。このため、液滴は、エアを受けることで、背面側の中心が凹む。液滴は、更に、エアの圧力を受けることで、徐々に薄い膜となり、風船のように膨らむ。風船のように膨らんだ液膜は、流路30の内周面32に衝突して開口が閉じることで、あるいは、他の液膜と衝突して合体することで泡状になる。
【0030】
泡状になった液剤90は、流路30内で径方向に広がり、吐出口31から吐出される。つまり、この起泡ノズル10によれば、液剤90が流路30内で泡状になるため、少量の液剤90であっても流路30内全体に広がりやすい。したがって、この構成によれば、液剤90の使用量の低減を図りつつ広範囲に吐出しやすい。
【0031】
<実施例2>
以下では、本発明を具体化した実施例2を
図4~
図7を参照して説明する。
【0032】
実施例1では、流路及び液剤吐出部とは別体の負圧発生部材によって、液剤が旋回流に引き込まれるように負圧を発生させる構成について説明した。これに対し、実施例2では、別体の負圧発生部材を設けることなく負圧を発生させる構成について説明する。なお、以下の説明では、実施例1と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0033】
図4には、実施例2の起泡ノズル210が示されている。起泡ノズル210は、ノズル本体20と、流路30と、液剤吐出部240と、エア噴出部50と、負圧発生部材60と、パターン用エアノズル70と、を備えている。
【0034】
液剤吐出部240は、ノズル本体20に固定されており、流路30内に液剤90を吐出させる。液剤吐出部240は、
図4及び
図5に示すように、筒部241と、張出部246と、を有している。筒部241は、流路30内に配置され、吐出口31側に向けて筒状に突出している。筒部241の内側には、液剤90が流れる液剤流路42が形成されている。筒部241の突出端面には、液剤流路42を流れる液剤90を吐出させる液剤吐出口43が形成されている。液剤吐出部240は、液剤吐出口43から液剤90を吐出させる。筒部241の外周面244は、吐出口31側に向かうにつれて筒部41の外径が小さくなるように傾斜した外周傾斜面245を有している。
【0035】
張出部246は、筒部241の突出端部から全周にわたって径方向外側に張り出している。張出部246は、環状をなしている。張出部246は、第1外周面247と、第2外周面248と、を有している。第1外周面247は、前後方向に外径が一定である。第2外周面248は、第1外周面247よりも後方の位置に配置されており、前方に向かうにつれて外径が大きくなるように傾斜している。第2外周面248の前端は、第1外周面247の後端に連なっている。第2外周面248の後端は、筒部241の外周傾斜面245の前端に連なっている。張出部246は、筒部241の外周面244と流路30の内周面32との間の経路を狭くしている。つまり、張出部246は、流路30の内周面32とともに負圧発生部を構成している。
【0036】
筒部241及び張出部246の吐出口31側の端面250には、液剤吐出口43の外周縁から放射状に延びる溝部251が形成されている。溝部251は、張出部246の外周縁まで延びている。溝部251の径方向外側の端部は、第1外周面247の前端に連なっている。溝部251は、複数設けられ、周方向に並んで配置されている。
【0037】
エア噴出部50のエアノズル51の先端52は、張出部246よりも後方の位置において、流路30の内周面32に開口している。エア噴出部50は、流路30の内周面32と、筒部241の外周面244との間にエアを噴出させる。エア噴出部50は、液剤吐出部240の外周傾斜面245に沿うようにエアを噴出させる。エア噴出部50は、流路30の内周面32に沿って吐出口31側に螺旋状に旋回するエアの旋回流を発生させる。
【0038】
[起泡ノズルの作用]
起泡ノズル210は、実施例1の起泡ノズル10と同様に、液剤吐出部40から液剤90を吐出させるとともに、エア噴出部50からエアを噴出させる。エア噴出部50から噴出されたエアは、流路30の内周面32に沿って吐出口31側に向けて螺旋状に旋回する。これにより、張出部246よりも後方の位置から前方側に向けて、旋回流が発生する。旋回流は、流路30の内周面32と張出部246の外周面(より具体的には、第1外周面247)との間の狭い経路を通過する際、速度が速くなり、負圧を発生させる。これにより、液剤吐出部40から吐出される液剤90が、旋回流に引き込まれる。
【0039】
液剤吐出口43から吐出される液剤90は、端面250に形成された溝部251に沿って旋回流に引き込まれる。このとき、
図6に示す端面250Rのように溝部が形成されていない場合、端面250Rから飛散する液滴の大きさや形状がばらつきやすい。これに対し、本実施例の構成では、
図7に示すように、液剤吐出口43から吐出された液剤90は、溝部251に沿って径方向外側に移動し、溝部251の径方向外側の端部から液滴となって飛散する。このため、飛散する液滴の大きさ及び形状が安定しやすく、その結果、均一な泡を形成しやすい。
【0040】
端面250から飛散した液滴は、エアの旋回流によって泡状になる。泡状になった液剤90は、流路30内で径方向に広がり、吐出口31から吐出される。つまり、この起泡ノズル10によれば、液剤90が流路30内で泡状になるため、少量の液剤90であっても流路30内全体に広がりやすい。したがって、この構成によれば、液剤90の使用量の低減を図りつつ広範囲に吐出しやすい。
【0041】
<実施例3>
以下では、本発明を具体化した実施例3を
図8及び
図9を参照して説明する。
【0042】
実施例3の起泡ノズルは、液剤吐出部が張出部を有する点で、実施例2の起泡ノズルと共通する。しかし、実施例3の起泡ノズルは、液剤吐出部から飛散する液滴の大きさ及び形状を安定させるための構造が、実施例2の起泡ノズルとは異なる。なお、以下の説明では、実施例2と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0043】
実施例3の起泡ノズルの液剤吐出部340は、
図8に示すように、筒部341と、張出部346と、を有している。筒部341及び張出部346の吐出口31側の端面350は、平坦な面である。筒部341は、吐出口31側の端面に溝部251が形成されていない点を除き、実施例2の筒部241と同じ形態である。張出部346は、第1外周面347と、実施例2で説明した第2外周面248と、を有している。第1外周面347の後端は、第2外周面248の前端に連なっている。第1外周面347には、周方向に並んで配置される複数の凸部351が設けられている。凸部351は、径方向外側に向けて突出しており、突出端に向けて断面積が小さくなっている。凸部351は、第1外周面247の前端から後端にわたって連続して形成されている。張出部346は、吐出口31側の端面に溝部251が形成されていない点、及び凸部351が設けられている点を除き、実施例2の張出部246と同じ形態である。
【0044】
[起泡ノズルの作用]
実施例3の液剤吐出部340では、
図9に示すように、液剤吐出口43から吐出された液剤90は、端面350に沿って径方向外側に移動し、凸部351の先端から液滴となって飛散する。このため、飛散する液滴の大きさ及び形状が安定しやすく、その結果、均一な泡を形成しやすい。特に、凸部351が径方向外側に向かうにつれて断面積が小さくなっているため、飛散する液滴の大きさ及び形状がより安定しやすい。
【0045】
<実施例4>
以下では、本発明を具体化した実施例4を
図10及び
図11を参照して説明する。
【0046】
実施例1~3では、パターン用エアノズルが丸吹用であったが、丸吹用でなくてもよい。実施例4では、パターン用エアノズルが平吹用である例について説明する。なお、以下の説明では、実施例1と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0047】
図10に示す起泡ノズル410は、ノズル本体420と、流路30と、液剤吐出部40と、エア噴出部50と、整流器480と、を備えている。ノズル本体420は、基部21と、平吹用のエアキャップ422と、ナット23と、を有している。
【0048】
エアキャップ422は、
図10及び
図11に示すように、平吹用のパターン用エアノズル470を有している。パターン用エアノズル470は、流路30を径方向の両側から挟むように、対をなして設けられている。パターン用エアノズル470の先端471は、吐出口31の径方向両側に対をなして設けられている。パターン用エアノズル470は、吐出口31から吐出された液剤90に向けて径方向の両側からエアを噴出する。
【0049】
整流器480は、流路30内の吐出口31近傍に配置され、エアの旋回流を整流にする。整流器480は、流路30の傾斜面33と定径面34とに跨って配置されている。整流器480は、
図11に示すように、4つのブロック472を有しており、4つのブロック472によって十字型の貫通孔473を形成している。
【0050】
[起泡ノズルの作用]
エア噴出部50から噴出されたエアは、旋回流を発生させ、液剤90を泡状にする。泡状の液剤90を含むエアの旋回流は、整流器480によって整流に変化する。泡状の液剤90は、整流に変化した後、吐出口31から吐出され、平吹用のパターン用エアノズル470から噴出されるエアを受けて直線状に延びる扁平形状となる。
【0051】
<実施例5>
以下では、本発明を具体化した実施例5を
図12及び
図13を参照して説明する。
【0052】
実施例5では、霧化エアを噴出させる構成について説明する。
図12に示す起泡ノズル510R及び
図13に示す起泡ノズル510は、それぞれ実施例1で説明した吐出口31と、実施例4で説明したパターン用エアノズル470と、霧化エア吐出口570と、を有している。霧化エア吐出口570は、吐出口31の径方向外側に配置されており、吐出口31から吐出される液剤90に向けて霧化エアを噴出させ、液剤90を微粒化させる。パターン用エアノズル470は、微粒化した液剤90に向けてパターンエアを噴出させ、液剤90を広範囲に広げる。
【0053】
図12に示す比較例では、吐出口31から泡状になっていない少量の液剤90が吐出されている。液剤90は、液柱が細いため、軸心Xに近い位置でのみ液剤90が微粒化する。このため、パターンエアが吹き付けられても、軸心Xから離れた位置に広がりにくい。
【0054】
これに対し、
図13に示す例では、吐出口31から泡状になった液剤90が吐出されている。液剤90は、液柱が太いため、軸心Xに近い位置だけでなく軸心Xから遠い位置でも液剤90が微粒化する。このため、パターンエアが吹き付けられることで、軸心Xから離れた位置に広がりやすい。
【0055】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば 次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
上記実施例1では、負圧発生部材が液剤吐出口を覆う構成であったが、負圧発生部材が液剤吐出口を覆わない構成であってもよい。また、上記実施例1の起泡ノズルにおいて、負圧発生部材を備えない構成としてもよい。これらの構成であっても、液剤吐出部から吐出された液剤を旋回流に引き込むことは可能である。
【0057】
上記実施例1では、パターン用エアノズルが仮想線に対して傾斜する構成であったが、傾斜しない構成であってもよい。また、パターン用エアノズルが仮想線に対して実施例1の構成とは反対側に傾斜する構成であってもよい。つまり、パターン用エアノズルが、前方に向かうにつれて仮想線に対してエアの旋回流の旋回方向とは反対方向にずれるように傾斜する構成であってもよい。この構成によれば、パターン用エアノズルから噴射されるエアが、吐出口から吐出されるエアの旋回流を弱めるように働くため、パターンの径が大きくなる。
【0058】
流路の内周面には、螺旋状の溝が形成されていてもよい。この構成によれば、螺旋状の旋回流を形成しやすい。
【0059】
エア噴出部は、複数設けられていてもよい。エア噴出部が複数設けられる場合、
図14に示すエア噴出部650A,650Bのように、エアノズル651A,651Bの径が互いに異なっていてもよい。
【0060】
上記実施例3では、凸部の先端が尖っていないが、尖った形状であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…起泡ノズル
20…ノズル本体
21…基部
22…エアキャップ
23…ナット
30…流路
31…吐出口
32…内周面
33…傾斜面
34…定径面
40…液剤吐出部
41…筒部
42…液剤流路
43…液剤吐出口
44…外周面
45…外周傾斜面
50…エア噴出部
51…エアノズル
52…先端
60…負圧発生部材
70…パターン用エアノズル
90…液剤
210…起泡ノズル
240…液剤吐出部
241…筒部
244…外周面
245…外周傾斜面
246…張出部
247…第1外周面
248…第2外周面
250…端面
250R…端面
251…溝部
340…液剤吐出部
341…筒部
346…張出部
350…端面
351…凸部
410…起泡ノズル
420…ノズル本体
422…エアキャップ
470…パターン用エアノズル
471…先端
472…ブロック
473…貫通孔
480…整流器
510…起泡ノズル
510R…起泡ノズル
570…霧化エア吐出口
650A…エア噴出部
650B…エア噴出部
651A…エアノズル
651B…エアノズル
VL…仮想線
X…軸心