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特開2023-117534加熱式接合装置および加熱式接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117534
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】加熱式接合装置および加熱式接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230817BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20230817BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230817BHJP
   B23K 3/04 20060101ALI20230817BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01L21/60 311R
H05K1/14 C
B23K1/00 330E
B23K3/04 Z
H05K3/34 504Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020145
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 峻吾
(72)【発明者】
【氏名】安藤 元彦
【テーマコード(参考)】
5E319
5E344
5F044
【Fターム(参考)】
5E319AC03
5E319CC53
5E319CC58
5E319GG11
5E344AA02
5E344AA22
5E344BB02
5E344DD02
5E344DD10
5E344EE21
5E344EE26
5F044KK02
5F044LL07
5F044NN13
5F044NN20
5F044PP12
(57)【要約】
【課題】基材に対して加熱による損傷を与えることなく、基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合することが可能な加熱接合装置および加熱接合方法を提供する。
【解決手段】基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合するための加熱式接合装置であって、前記2つの電子部品を所定状態で載置するためのステージと、前記2つの電子部品の積層部を前記ステージとの間に挟持して加圧するための加圧チップと、前記加圧チップとの間に所定の間隔を設けたて配置され、前記ステージとの間に前記2つの電子部品の少なくとも一方を挟持して加熱するための加熱チップとを備えた加熱式接合装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合するための加熱式接合装置であって、
前記2つの電子部品を所定状態で載置するためのステージと、
前記2つの電子部品の積層部を前記ステージとの間に挟持して加圧するための加圧チップと、
前記加圧チップとの間に所定の間隔を設けたて配置され、前記ステージとの間に前記2つの電子部品の少なくとも一方を挟持して加熱するための加熱チップとを備えた
加熱式接合装置。
【請求項2】
前記ステージ上には、導電性の接着層を介して前記2つの電子部品の前記導電層が積層され、かつ前記2つの電子部品の前記基材の一部同士が積層されるように、前記2つの電子部品が重ねて載置され、
前記加圧チップは、前記2つの電子部品の前記基材が積層された位置を、前記ステージとの間で挟持する位置に設けられ、
前記加熱チップは、前記2つの電子部品のうちの上部に配置された電子部品の基材から外れた位置で、かつ前記2つの電子部品のうちの下部に配置された電子部品の導電層上に前記接着層が積層された積層部を、前記ステージとの間で挟持する位置に設けられた
請求項1に記載の加熱式接合装置。
【請求項3】
前記ステージに対して前記加熱チップと前記加圧チップとを昇降させる昇降駆動部を備えた
請求項1または2に記載の加熱式接合装置。
【請求項4】
前記ステージに対して前記加圧チップを昇降させる昇降駆動部と、
前記ステージに対して前記加熱チップを昇降させる昇降駆動部とを個別に備えた
請求項1~3のうちの何れか1項に記載の加熱式接合装置。
【請求項5】
前記昇降駆動部は、前記加圧チップおよび前記加熱チップに所定の荷重が印加されるように、前記加圧チップおよび前記加熱チップを昇降させる
請求項3または4に記載の加熱式接合装置。
【請求項6】
前記加圧チップは、放熱材料によって構成さている
請求項1~5のうちの何れか1項に記載の加熱式接合装置。
【請求項7】
前記加熱チップにパルス電流を供給する加熱電源を備えた
請求項1~6のうちの何れか1項に記載の加熱式接合装置。
【請求項8】
前記加熱電源は、前記加熱チップが所定温度に加熱されるように、前記加熱チップにパルス電流を供給する
請求項7に記載の加熱式接合装置。
【請求項9】
基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合するための加熱式接合方法であって、
前記2つの電子部品を所定状態でステージ上に載置し、
前記2つの電子部品の積層部を加圧チップと前記ステージとの間に挟持して加圧し、
前記加圧チップとの間に所定の間隔を設けたて配置され加熱チップと前記ステージとの間に前記2つの電子部品の少なくとも一方を挟持して、前記加熱チップにより加熱する
加熱式接合方法。
【請求項10】
導電性の接着層を介して前記2つの電子部品の前記導電層が積層され、かつ前記2つの電子部品の前記基材の一部同士が積層されるように、前記2つの電子部品をステージ上に重ねて載置し、
前記2つの電子部品の前記基材が積層された位置を、前記ステージと加圧チップとの間で挟持して加圧し、
前記2つの電子部品のうちの上部に配置された電子部品の基材から外れた位置で、かつ前記2つの電子部品のうちの下部に配置された電子部品の導電層上に前記接着層が積層された積層部を、前記ステージと加熱チップとの間で挟持するとともに前記加熱チップによって加熱する
請求項9に記載の加熱式接合方法。
【請求項11】
前記2つの電子部品のうちの一方の電子部品は、前記基材の少なくとも一主面上に前記導電層とその上部の前記接着層とが設けられたものであり、
前記2つの電子部品のうちの他方の電子部品は、前記基材の少なくとも一主面上に前記導電層が設けられたものであり、
前記ステージ上に前記2つの電子部品を載置する際には、前記接着層を介して前記2つの電子部品の前記導電層を対向させる状態で前記一方の電子部品の上部に前記他方の電子部品を配置し、かつ前記他方の電子部品の基材から前記接着層の一部を露出させる
請求項10に記載の加熱式接合方法。
【請求項12】
前記2つの電子部品のうちの一方の電子部品は、前記基材の少なくとも一主面上に前記導電層が設けられたものであり、
前記2つの電子部品のうちの他方の電子部品は、前記基材で挟持した前記導電層を前記基材の外側に延設したものであり、
前記ステージ上に前記2つの電子部品を載置する際には、前記一方の電子部品の上部に前記他方の電子部品を配置し、前記他方の電子部品の導電層において基材から延設された位置において前記接着層を介して前記2つの電子部品の前記導電層を積層させる
請求項10に記載の加熱式接合方法。
【請求項13】
前記加熱チップによる加熱の際には、前記加圧チップおよび前記加熱チップに所定の荷重が印加されるように、昇降駆動部によって前記加圧チップおよび前記加熱チップを前記ステージに対して昇降させる
請求項9~12のうちの何れか1項に記載の加熱式接合方法。
【請求項14】
放熱材料で構成された前記加圧チップから、前記基材が積層された位置の熱を放熱する
請求項9~13の何れか1項に記載の加熱式接合方法。
【請求項15】
加熱電源により、前記加熱チップにパルス電流を供給して前記加熱チップを発熱させることにより、前記接着層を介して前記導電層が積層された積層部を加熱する
請求項9~14のうちの何れか1項に記載の加熱式接合方法。
【請求項16】
前記加熱チップが所定温度に加熱されるように、前記加熱電源によって前記加熱チップにパルス電流を供給する
請求項15に記載の加熱式接合方法。
【請求項17】
前記2つの電子部品のうちの上部に配置される電子部品の基材は、フィルム基板である
請求項9~16のうちの何れか1項に記載の加熱式接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式接合装置および加熱式接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの電子部品に形成された導電層間を加熱式接合装置および加熱式接合方法によって接合する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、ヒータチップと保持台とによって、被接合物である導電体、はんだ、および端子を重ねて上下方向から挟み込んで加圧し、ヒータチップにパルス電流を供給して発熱させてはんだを溶融させると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-15080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、通信速度の高速化にともない、電子部品において端子や配線などの導電層を支持する基材に対し、低誘電率化が求められている。しかしながら、誘電率が低い基材は、一般的に耐熱性が低い。このため、上述したヒータチップによる加熱において、ヒータチップに近接して基材が配置されていたり、基材を介して導電体、はんだ、および端子の積層部をヒータチップで加圧した状態で加熱したりすると、基材が変形したり内部に気泡が発生するなどの損傷が発生する。
【0005】
そこで本発明は、基材に対して加熱による損傷を与えることなく、基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合することが可能な加熱接合装置および加熱接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合するための加熱式接合装置であって、2つの電子部品を所定状態で載置するためのステージと、2つの電子部品の積層部をステージとの間に挟持して加圧するための加圧チップと、加圧チップとの間に所定の間隔を設けたて配置され、ステージとの間に2つの電子部品の少なくとも一方を挟持して加熱するための加熱チップとを備えた加熱式接合装置である。また、この加熱式接合装置を用いた加熱式接合方法でもある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基材に対して加熱による損傷を与えることなく、基材によって導電層を支持した2つの電子部品を接合することが可能な加熱接合装置および加熱接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る加熱式接合装置の全体構成を示す図である。
図2】実施形態に係る加熱式接合装置を用いて接合する2つの電子部品の一例を示す断面図である。
図3】実施形態に係る加熱式接合方法を示すフローチャートである。
図4】実施形態に係る加熱式接合方法を説明するための断面図(その1)である。
図5】実施形態に係る加熱式接合方法を説明するための断面図(その2)である。
図6】実施形態に係る加熱式接合方法を説明するための断面図(その3)である。
図7】実施形態に係る加熱式接合方法を説明するための断面図(その4)である。
図8】実施形態に係る加熱式接合装置を用いて接合する2つの電子部品の他の例を示す断面図である。
図9】実施形態に係る加熱式接合方法を電子部品の他の例に適用した場合の断面図である。
図10】実施形態に係る加熱式接合装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
≪加熱式接合装置≫
図1は、実施形態に係る加熱式接合装置1の全体構成を示す図である。この図1に示す加熱式接合装置1は、2つの電子部品100,200を接合するための装置である。ここでは先ず、実施形態に係る加熱式接合装置1の構成を説明する前に、この加熱式接合装置1を用いて接合する各電子部品100,200の構成を説明する。
【0011】
<電子部品100,200>
図2は、実施形態に係る加熱式接合装置1を用いて接合する2つの電子部品100,200の一例を示す断面図である。
【0012】
図2に示す2つの電子部品100,200は、基材と、基材によって支持された導電層とを備えたものであり、例えば一方の電子部品100は硬質プリント板であり、他方の電子部品200はフレキシブルプリント回路基板(FPC:Flexible printed circuits)である。以下においては、電子部品100を硬質プリント板100とも称し、電子部品200をFPC200とも称して説明する。
【0013】
-硬質プリント板100-
硬質プリント板100は、硬質材料からなる硬質基板101を基材とし、この硬質基板101の少なくとも一主面上に、例えば配線として形成された導電層102を有する。この硬質プリント板100は、導電層102に接続される状態で電子部品が実装されるものであるが、ここで用いる硬質プリント板100は、典型的には電子部品を実装する前のプリント基板(PWB:Printed Wired Board)であるものとする。このような硬質プリント板100を構成する硬質基板101は、例えばガラスエポキシ基板、ガラスポリイミド基板やその他の硬質材料からなり、耐熱性に優れたものである。
【0014】
また導電層102は、例えば銅のような導電性に優れた材料からなる薄膜を配線形状にパターニングしたものである。この導電層102は、例えば硬質基板101の端縁に引き出された部分が、FPC200との接続用の端子102aとして形成されている。
【0015】
端子102aの上部には、接着層103が形成されている。接着層103は、加熱によって粘着性を発揮し、その後の冷却によって硬化する導電性接着材料で構成されている。このような導電性接着材料としては、例えばはんだが用いられる。なお、導電層102の大部分は、接着層103および端子102aを露出させた状態で、硬質基板101の主面上に設けた保護フィルム(図示省略)で覆われていてよい。
【0016】
-FPC200-
FPC200は、フレキシブルに屈曲する絶縁性のフィルム基板201を基材とし、このフィルム基板201の少なくとも一主面上に、例えば配線として形成された導電層202を有する。FPC200は、導電層202に接続される状態で電子部品が実装される場合もあるが、ここで用いるFPC200は、典型的には電子部品を実装する前のものであるものとする。このようなFPC200を構成するフィルム基板201は、例えば、高速通信用であれば液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)およびフッ素樹脂(例えばPTFE:polytetrafluoroethylene)のような低誘電率の可塑性樹脂からなるものであり、それ以外の用途であれば、ポリイミドまたはPET(polyethylene terephthalate)等からなるものであってもよい。
【0017】
また導電層202は、例えば銅や銀のような導電性に優れた材料からなる薄膜を配線形状にパターニングしたものである。この導電層202は、フィルム基板201の端縁に引き出された部分が、硬質プリント板100との接続用の端子202aとして形成されている。端子202aにおいてフィルム基板201の端縁に引き出された方向の長さ[L2]は、硬質プリント板100側の端子102aの長さ[L1]よりも短くて良い。
【0018】
次に、図1および図2を参照し、上述した硬質プリント板100とFPC200を接合するための加熱式接合装置1を説明する。加熱式接合装置1は、ステージ10、加圧部20、加熱部30、および制御部40を備えている。以下、これらを順に説明する。
【0019】
<ステージ10>
ステージ10は、硬質プリント板100とFPC200とを、積層した状態で載置する。硬質プリント板100とFPC200とは、端子102aと端子202aとが、接着層103を介して積層されるように、ステージ10上に載置される。硬質プリント板100とFPC200との積層状態の詳細は、以降の加熱式接合方法において説明する。また、このステージ10上には、硬質プリント板100とともにFPC200を支持するためのスペーサ10aが配置される。
【0020】
<加圧部20>
加圧部20は、硬質プリント板100とFPC200との積層部を、ステージ10との間に挟み込んで加圧するためのものである。この加圧部20は、加圧ジグ21と、昇降駆動部22とを備える。
【0021】
[加圧ジグ21]
加圧ジグ21は、次に説明する昇降駆動部22の下方に延設されたもので、下端部に加圧チップ21aを備えている。加圧ジグ21および加圧チップ21aは、昇降駆動部22の駆動によって上下方向に自在に昇降する。加圧チップ21aは、昇降駆動部22の駆動により、硬質プリント板100とFPC200との積層部を、ステージ10との間に挟持して加圧する。
【0022】
加圧ジグ21およびその下端の加圧チップ21aは、硬質プリント板100とFPC200との積層部が、加圧チップ21aによって均等に加圧されるような形状を有しているものとする。また加圧チップ21aは、硬質プリント板100の硬質基板101とFPC200のフィルム基板201とが積層された位置であって、かつ硬質プリント板100とFPC200のうち上部に配置されるFPC200のフィルム基板201の端縁部を、ステージ10との間で挟持する位置に設けられている。
【0023】
また加圧チップ21aは、例えば金属材料のような熱伝導性の高い放熱材料によって構成されていることが好ましい。これにより、次に説明する加熱部30の駆動によって生じる熱が、FPC200のフィルム基板201に伝わった場合に、加圧チップ21aを介して加圧ジグ21から放熱され、FPC200のフィルム基板201の加熱による損傷が防止される。
【0024】
[昇降駆動部22]
昇降駆動部22は、ステージ10に対して加圧ジグ21および加圧チップ21aを昇降させることにより、硬質プリント板100とFPC200との積層部をステージ10と加圧チップ21aとの間に挟持して圧力を加えるための駆動部である。この昇降駆動部22は、加圧チップ21aに加わる荷重を検出するための荷重検出器(図示省略)を備える。昇降駆動部22による加圧チップ21aの昇降は、加圧チップ21aに加わる荷重に基づいて、積層部に対して予め設定された荷重が印加されるように、以降に説明する制御部40によって制御される。
【0025】
<加熱部30>
加熱部30は、硬質プリント板100における硬質基板101と端子102aと接着層103との積層部を、ステージ10との間に挟み込んで加熱するためのものである。この加熱部30は、加熱チップ31と、昇降駆動部32と、加熱電源33と、電源制御部34と、温度センサ35とを備える。
【0026】
[加熱チップ31]
加熱チップ31は、次に説明する昇降駆動部32の下方に延設されたもので、昇降駆動部32の駆動によって上下方向に自在に昇降する。加熱チップ31は、昇降駆動部32から垂下された下端部31aにおいて、FPC200のフィルム基板201を外れた位置で、硬質基板101と端子102aと接着層103との積層部を加圧した状態で加熱する。このような加熱チップ31は、昇降駆動部32側の基端部が二股に分割された形状を有する。加熱チップ31は、分割された各部のそれぞれが電極端子31bとして用いられ、電極端子31b-31b間に電流を流すことで下端部31aにジュール熱を発生させる。このため、加熱チップ31は、少なくとも下端部31aが例えばモリブデン等の高抵抗材料によって構成されているものとする。
【0027】
また加熱チップ31は、加圧部20の加圧チップ21aとの間に、所定の間隔[d]を有して設けられる。この間隔[d]は、加熱チップ31の発熱が、FPC200のフィルム基板201に対して影響を及ぼすことのない大きさに設定されるが、加熱チップ31によって接着層103の全域がむらなく加熱される程度に小さいことが好ましい。このため、この間隔[d]は、例えば0.5mm~1.0mm程度に設定されていることが好ましい。
【0028】
[昇降駆動部32]
昇降駆動部32は、加熱チップ31を昇降させることにより、硬質基板101と端子102aと接着層103との積層部に、加熱チップ31の下端部31aを接触させて加圧するための駆動部である。この昇降駆動部32は、加熱チップ31の昇降によって加熱チップ31に加わる荷重を検出するための荷重検出器(図示省略)を備える。昇降駆動部32による加熱チップ31の昇降は、加熱チップ31に加わる荷重に基づいて、積層部に対して予め設定された荷重が印加されるように、以降に説明する制御部40によって制御される。
【0029】
[加熱電源33]
加熱電源33は、加熱チップ31の電極端子31b-31b間にパルス電流を流すための電源である。この加熱電源33は、次に説明する電源制御部34からの信号に基づいて、電源のオンオフが制御される。
【0030】
[電源制御部34]
電源制御部34は、制御部40からの指示、および次に説明する温度センサ35で測定された加熱チップ31の下端部31aの温度に基づいて、加熱電源33のオン/オフを制御し、加熱電源33から加熱チップ31にパルス電流を供給する。この際、電源制御部34は、制御部40からの指示に基づき、加熱チップ31の温度が予め設定された温度プロファイルと一致するように加熱電源33のオン/オフを制御する。この電源制御部34は、以降に説明する制御部40に組み込まれたものであってもよい。
【0031】
[温度センサ35]
温度センサ35は、加熱チップ31の下端部31aの温度を検出するものであり、例えば熱電対である。この温度センサ35は、電源制御部34に接続され、検出した加熱チップ31の下端部31aの温度を電源制御部34に送信する。
【0032】
<制御部40>
制御部40は、加圧部20における昇降駆動部22および加熱部30における昇降駆動部32の駆動を制御するとともに、電源制御部34に対して加熱電源33のオン/オフの制御の開始を指示する。制御部40は、計算機によって構成される。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアであって、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性の記憶部を備える。制御部40は、記憶部に保存されたプログラムに基づいて、昇降駆動部22,32の駆動を制御するとともに、電源制御部34に対して加熱電源33のオン/オフの開始を指示する。したがって、制御部40は、本実施の形態の加熱式接合装置1、および次に説明する加熱式接合方法を実施するためのプログラムを用いた制御全体を行う主要部となる。
【0033】
≪加圧式接合方法≫
図3は、実施形態に係る加熱式接合方法を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、図1を用いて説明した加熱式接合装置1を用いた2つの電子部品100,200の接合方法であって、制御部40が有するプログラムに基づいて実施される手順を示している。また図4図7は、実施形態に係る加熱式接合方法を説明するための断面図(その1)~(その4)である。以下、図3のフローチャートに示す順に、図1図2、および図4図7を参照しつつ実施形態に係る加熱式接合方法を説明する。
【0034】
先ず加熱式接合装置1を動作させる前に、加熱式接合装置1のステージ10上に、硬質プリント板100とFPC200とを、それぞれの端縁同士を積層させた状態で載置する(図4参照)。この際、硬質プリント板100は、導電層102および接着層103の形成面を上方に向けた状態でステージ10上に載置される。またFPC200は、導電層202の形成面を下方に向け、硬質プリント板100の導電層102とFPC200の導電層202とを対向させる状態で接着層103を挟むように配置される。
【0035】
また、この配置を行う際には、以下の点に注意を払うことが重要である。すなわち、第1に、FPC200のフィルム基板201から接着層103の一部が露出するように、硬質プリント板100上にFPC200を配置する。第2に、接着層103の露出部が加熱チップ31の下方に配置され、硬質プリント板100とFPC200の積層部が加圧チップ21aの下方に配置されるように、硬質プリント板100とFPC200とを配置する。さらに、ステージ10とFPC200との間にはスペーサ10aを配置することで、スペーサ10aによってFPC200を支持することが好ましい。
【0036】
以上のような状態において、例えばここでの図示を省略した入力部によって処理の開始のトリガーを制御部40に与えることにより、制御部40は以下の手順で加熱式接合装置1を動作させる。
【0037】
<ステップS101>
ステップS101において、制御部40は、加圧部20の昇降駆動部22に対して、加圧チップ21aの降下を指示する。これにより、昇降駆動部22は、加圧ジグ21とその先端の加圧チップ21aとを下降させ、加圧チップ21aとステージ10との間に、フィルム基板201の端縁において硬質プリント板100とFPC200の積層部を挟み込む(図5参照)。この際、制御部40は、加圧チップ21aによって予め設定された荷重が積層部に印加されるように昇降駆動部22を制御する。
【0038】
<ステップS102>
ステップS102において、制御部40は、加熱部30の昇降駆動部32に対して、加熱チップ31の降下を指示する。これにより、昇降駆動部32は、加熱チップ31を下降させ、加熱チップ31の下端部31aとステージ10との間に、フィルム基板201を外れた位置において、硬質プリント板100の硬質基板101と、端子102aと、接着層103との積層部を挟み込む(図6参照)。この際、制御部40は、積層部に対して予め設定された荷重が印加されるように昇降駆動部32を制御する。なお、ステップS101とステップS102は、逆の手順で実施してもよいし同時に実施してもよい。
【0039】
<ステップS103>
ステップS103において、制御部40は、加熱部30の電源制御部34に対して、加熱電源33から加熱チップ31へのパルス電流の供給を開始させる。これにより電源制御部34は、温度センサ35で測定された加熱チップ31の下端部31aの温度に基づいて、下端部31aが予め設定された温度プロファイルと一致するように加熱電源33のオン/オフ制御を開始する。
【0040】
また加熱チップ31へのパルス電流の供給により、加熱チップ31が発熱して接着層103が加熱される。加熱チップ31から接着層103に加えられた熱は、接着層103および導電層102から接着層103の全域に伝わり、接着層103の全域が溶融する。なお、ここでは接着層103を介して、硬質プリント板100の導電層102およびFPC200の導電層202も加熱される。このため、上述した温度プロファイルは、導電層102,202に影響を及ぼすことの無い範囲で設定されていることとする。また、この際、フィルム基板201に伝わった熱は、放熱材料からなる加圧チップ21aを介して放熱される。
【0041】
<ステップS104>
ステップS104において、制御部40は、加熱チップ31による加熱を終了するか否かの判断を実施する。制御部40は、記憶されたプログラムにしたがってこの判断を実施する。例えば、制御部40は、温度センサ35で測定された加熱チップ31の下端部31aの温度が、予め設定された温度に到達してからの経過時間が予め設定された時間に達した場合に加熱終了(YES)と判断する。制御部40は、加熱終了でない(NO)と判断した場合には、ステップS4の判断を繰り返す。そして、制御部40は、加熱終了(YES)と判断した場合には、次のステップS105に進む。
【0042】
なお、制御部40による加熱終了の判断は、これに限定されることない。例えばこの加熱式接合装置1の加圧部20が加圧チップ21aの変位計を備えている場合、制御部40は、加圧チップ21aの下方向への変位量に基づいてこの判断を実施することができる。この場合、制御部40は、変位量が予め設定された所定値に達した時点からの経過時間が、予め設定された時間に達した場合に、加熱終了(YES)と判断する。
【0043】
<ステップS105>
ステップS105において、制御部40は、加熱部30の電源制御部34に対して、加熱終了処理を実施させる。この際、制御部40は、電源制御部34に対して、加熱電源33から加熱チップ31へのパルス電流の供給を終了させる。または制御部40は、予め設定された温度プロファイルにしたがって加熱チップ31の下端部31aの温度が低下するように、加熱電源33から加熱チップ31へのパルス電流の供給を段階的に低下させてもよい。
【0044】
<ステップS106>
ステップS106において、制御部40は、加圧部20の昇降駆動部22に対して加圧チップ21aの上昇を指示し、加熱部30の昇降駆動部32に対して加熱チップ31の上昇を指示する。これにより、加圧チップ21aおよび加熱チップ31が、硬質プリント板100とFPC200との積層部から引き上げられる(図7参照)。そして、硬質プリント板100とFPC200とが、接着層103を介して端子102a-202a間で接合された接合体300が得られる。
【0045】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、硬質プリント板100とFPC200との接合において、接着層103の加熱に用いる加熱チップ31とは別に、加圧チップ21aを設けたことにより、FPC200のフィルム基板201を外れた位置において接着層103が加熱される。これにより、フィルム基板201が加熱チップ31での加熱による影響を受けることを防止でき、フィルム基板201を構成する材料に対する耐熱性の自由度を向上させることが可能となる。
【0046】
この結果、例えば液晶ポリマーやフッ素樹脂のように、低誘電率ではあるが耐熱性が低い材料をフィルム基板201に用いることができるため、高速通信に対応するFPC200およびFPC200を用いた電子部品の接合体を実現することが可能となる。また、PET樹脂のような低価格ではあるが耐熱性が低い材料をフィルム基板201に用いることができるため、FPC200およびFPC200を用いた電子部品の接合体の低コスト化を図ることも可能である。
【0047】
≪他の電子部品への適用≫
図8は、実施形態に係る加熱式接合装置を用いて接合する2つの電子部品の他の例を示す断面図である。図1に示した実施形態に係る加熱式接合装置1を用いて接合する電子部品の他の例として、図8に示す2つの電子部品100,200’を例示することができる。これらの電子部品100,200’のうちの一方は、先の実施形態で説明したものと同様の硬質プリント板100であり、他方の電子部品200’はフレキシブルフラットケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)である。以下においては、電子部品100を硬質プリント板100とも称し、電子部品200’をFFC200’とも称して説明する。
【0048】
-硬質プリント板100-
硬質プリント板100は、図2を用いて説明した硬質プリント板100と同様の構成のものであり、硬質基板101の一主面上に導電層102および接着層103を有するものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
-FFC200’-
FFC200’は、フレキシブルに屈曲する絶縁性のフィルム基板201を基材とし、このフィルム基板201によって挟持された導電層202を有する。このようなFFC200’を構成するフィルム基板201は、例えば、高速通信用であれば液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)およびフッ素樹脂(例えばPTFE:polytetrafluoroethylene)のような低誘電率の可塑性樹脂からなるものであり、それ以外の用途であれば、ポリイミドまたはPET(polyethylene terephthalate)等からなるものであってもよい。
【0050】
また導電層202は、例えば配線として形成されたものであって、銅または銀からなる。この導電層202は、フィルム基板201の端縁から外側に延設される状態で引き出された端部が、硬質プリント板100との接続用の端子202aとして形成されている。
【0051】
なお、硬質プリント板100の接着層103は、FFC200’の端子202a上に設けられた構成であってもよい。この場合、硬質プリント板100は、接着層103を有している必要はない。
【0052】
図9は、実施形態に係る加熱式接合方法を電子部品の他の例に適用した場合の断面図であり、図8に示した電子部品100,200’を、図1に示した実施形態に係る加熱式接合装置1を用いて接合する場合を示している。
【0053】
この場合、図9に示すように、先ず加熱式接合装置1を動作させるのに先立ち、加熱式接合装置1のステージ10上に、硬質プリント板100とFFC200’とを、それぞれの端縁同士を積層させた状態で載置する。この際、硬質プリント板100は、導電層102および接着層103の形成面を上方に向けた状態でステージ10上に載置される。またFFC200’は、導電層202の端子202aと、硬質プリント板100の導電層102とで接着層103を挟んで積層されるように配置される。
【0054】
またこの際に重要なことは、導電層102-202間に接着層103を挟持した積層部が加熱チップ31の下方に配置され、硬質プリント板100の硬質基板101とFFC200’のフィルム基板201の積層部が加圧チップ21aの下方に配置されるように、硬質プリント板100とFFC200’とを配置する。またステージ10とFFC200’との間にはスペーサ10aを配置することで、スペーサ10aによってFFC200’を支持することが好ましい。
【0055】
以上のような状態において、処理の開始のトリガーを制御部40(図1参照)に与えることにより、先に図3のフローチャートを用いて説明した手順で制御部40が加熱式接合装置1を動作させる。この際、ステップS104において制御部40がする加熱終了の判断は、予め設定された温度に到達してからの経過時間に基づく判断が実施される。
【0056】
またこのステップS104において、他の判断方法を適用する場合には、加熱チップ31の変位に基づく判断を実施する。この場合、加熱式接合装置1の加熱部30が加熱チップ31の変位計を備えており、制御部40は、加熱チップ31の下方向への変位量に基づいてこの判断を実施することができる。この場合、制御部40は、変位量が予め設定された所定値に達した時点からの経過時間が、予め設定された時間に達した場合に、加熱終了(YES)と判断する。
【0057】
このような硬質プリント板100およびFFC200’の接合においては、硬質プリント板100の硬質基板101とFFC200’のフィルム基板201との積層部を、加熱チップ31とは別に設けた加圧チップ21aによって加圧する。これにより、導電層202からフィルム基板201に伝わる熱を、加圧チップ21aを介して放熱することができる。これにより、フィルム基板201が加熱チップ31での加熱による影響を受けることを防止でき、フィルム基板201を構成する材料に対する耐熱性の自由度を向上させることが可能となる。
【0058】
この結果、例えば液晶ポリマーやフッ素樹脂のように、低誘電率ではあるが耐熱性が低い材料をフィルム基板201に用いることができるため、高速通信に対応するFFC200’およびFFC200’を用いた電子部品の接合体を実現することが可能となる。また、PET樹脂のような低価格ではあるが耐熱性が低い材料をフィルム基板201に用いることができるため、FFC200’およびFFC200’を用いた電子部品の接合体の低コスト化を図ることも可能である。
【0059】
≪変形例≫
図10は、実施形態に係る加熱式接合装置の変形例を示す図である。図10に示す加熱式接合装置1’が、図1を用いて説明した実施形態に係る加熱式接合装置1と異なるところは、加熱部30の昇降駆動部32が、加圧部20’の昇降駆動部を兼ねているところにあり、他の構成は同様である。
【0060】
すなわち、加圧部20’は、下端部に加圧チップ21aを備えた加圧ジグ21と、加圧ジグ21を保持した状態で加熱部30の昇降駆動部32に固定するための固定部22’とを備える。固定部22’は、加熱部30の昇降駆動部32の駆動により、加熱チップ31とともに加圧ジグ21が昇降するように、加圧ジグ21を保持する。またこの場合、加圧ジグ21および加熱チップ31の下方向への延設長さは、電子部品100,200の各厚みに対応させて自在に設定され、固定されるものとする。
【0061】
このような構成の加熱式接合装置1’を用いた電子部品100と電子部品200との接合は、第1実施形態で説明した手順と同様に実施される。ただし、図3のフローチャートに示したステップS101とステップS102とは同時に実施される。また、昇降駆動部32による加熱チップ31および加圧ジグ21の昇降制御は、加圧チップ21aまたは加熱チップ31の何れかに加わる荷重に基づいて実施されることとする。
【0062】
以上のような加熱式接合装置1’であっても接着層103の加熱に用いる加熱チップ31とは別に、加圧チップ21aを設けたことにより、実施形態の加熱式接合装置1を用いた接合と同様の効果を得ることができる。またこの加熱式接合装置1’は、図8に示した電子部品100,200’の接合にも同様に用いることができ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1,1’…加熱式接合装置
10…ステージ
10a…スペーサ
20,20’…加圧部
21…加圧ジグ
21a…加圧チップ
22,32…昇降駆動部
22’…固定部
30…加熱部
31…加熱チップ
31a…下端部
31b…電極端子
33…加熱電源
34…電源制御部
35…温度センサ
40…制御部
100…硬質プリント板(電子部品)
101…硬質基板(基材)
102,202…導電層
102a,202a…端子(導電層)
103…接着層
200…FPC(電子部品)
200’…FFC(電子部品)
201…フィルム基板(基材)
300…接合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10